JPH0635767Y2 - シートスライド装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、車両用シート等においてシート本体を前後方
向に移動調整可能に支持するために用いて好適なシート
スライド装置の改良に関する。

〔従来の技術〕

一般に、車両用シートは、シートクッションおよびその
後方で回動調整自在に立設されたシートバックなどらな
るシート本体を備えてなり、かつこのシート本体を構成
するシートクッション等を車体床面上で前後スライド機
構により支持することで、車体の前後方向にスライド移
動調整し得るように構成され、着座者の体型や好み等に
対処できるようになっている。そして、このようなシー
トの前後スライド機構として、車体床面側に固定される
ロアーレールとシート本体側に取付け固定されるアッパ
ーレールとからなるシートスライド装置が用いられてい
る。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところで、この種のシートスライド装置においてロアー
レールとアッパーレールとは、金属板材を略コ字状を呈
する中央部とその開放両端から外方または内側に延設さ
れたフランジ部とからなる略断面形状をもつように折曲
げ形成することで形成され、かつこれらを組合わせるこ
とでロアーレール上でアッパーレールを長手方向に摺動
動作可能に案内支持してなる構成であった。

そして、最も簡易型のものは、上述したレールを金属面
同士の摺動によってスライド機構を得ているが、このよ
うな構造では、各レールの折曲げ加工時の曲がりやねじ
れ、さらに各レールの取付け状態による相対的なねじれ
等によって、スライド抵抗が急激に増大したり減少した
りする等の問題があり、作動時に異音や負荷による摺動
抵抗の変動による動作不良などが生じ易く、実用面で問
題であった。

特に、このような構成では、各レールの加工時における
ばらつきを考慮し、長手方向から圧入等による嵌合が行
なえるように各部の寸法を充分に余裕をもって形成する
ことが一般的であり、このためこれらを長手方向から嵌
合させたとき両レール間に左右方向や上下方向において
がた付きが生じ易く、異音問題が顕著となるばかりでな
く、衝撃等が加わったときの剥離方向での強度を確保し
なければならない等の問題もあった。

また、上述したレール間にボールベアリングやローラー
等を介在させ、ころがり摺動を利用したスライド構造を
採用したものも知られているが、前述したようなレール
加工時や取付け時におけるねじれ等による異音や摺動抵
抗の変動を生じることが避けられないばかりでなく、各
部の寸法精度面からの左右方向や上下方向でのがた付き
に対しての対策も不充分で、これらの問題点を一掃し得
る何らかの対策を講じることが求められている。

特に、この種のシートスライド装置として必要とされる
ことは、各部の加工等が簡単で、しかも左右方向や上下
方向でのがた付き等による問題も解消でき、機械的強度
面でも優れ、円滑で安定した摺動動作を行なえるスライ
ド構造を得ることができ、また着座者の重量等をも適切
に支持し得る構造で、しかも簡単に形成できコスト的に
も安価であることで、これらの点を考慮しなければなら
ない。

〔課題を解決するための手段〕

このような要請に応えるために本考案に係るシートスラ
イド装置は、シート載置用床面上に固定されるロアーレ
ールを、上向きコ字状を呈する中央部とその開放両端か
ら所定の厚みと曲率とをもって湾曲形成された湾曲部を
介して下方に垂下された左、右折曲げ部とからなる断面
形状をもって形成するとともに、このロアーレール上で
長手方向に摺動自在に案内支持されシート本体側に取付
け固定されるアッパーレールを、ロアーレール上方に被
冠される下向きコ字状を呈する中央部とその開放両端か
ら所定の厚みと曲率とをもって湾曲部を介して前記ロア
ーレールの中央部両側壁と左、右折曲げ部間に形成され
る溝内に係入するごとく上方に立設された左、右折返し
部とからなる断面形状をもって形成し、かつ前記ロアー
レールの左、右折曲げ部先端とアッパーレールの左、右
折返し部先端との少なくも一方を、所定の厚みと曲率と
をもって湾曲して折返した湾曲端部として形成し、この
湾曲端部を相手側の湾曲部内側に左右方向および上下方
向においてがた付きを生じない状態で当接させて前後に
摺動自在に嵌合させるようにしたものである。

また、本考案に係るシートスライド装置は、ロアーレー
ルの中央部開放両端から左、右折曲げ部に至る湾曲部に
対設されるアッパーレール側の下向きコ字状を呈する中
央部上端面部分に、該湾曲部に対向するように内側に突
出する湾曲突条部を有するビード部を設け、かつロアー
レールの湾曲部とこれに対向するアッパーレール中央部
上端面のビード部による湾曲突条部との間に、鼓形ロー
ラを転動自在に保持した状態で介在させて設けるように
したものである。

〔作用〕

本考案によれば、ロアーレール側の左、右折曲げ部先端
とアッパーレールの左、右折返し部先端との少なくとも
一方を所定の厚みと曲率とをもって湾曲して折返した湾
曲端部として形成し、この湾曲端部を相手側の湾曲部内
側に左右方向、上下方向でのがた付きを生じないように
当接させて前後に摺動自在に嵌合させることにより、加
工時における多少の寸法精度誤差は吸収でき、これら両
レールを適切な圧入状態でがた付きのない嵌合が簡単か
つ適切に行なえる。

また、本考案によれば、ロアーレールの中央部開放両端
から左、右折曲げ部に至る湾曲部とこれに対設されるア
ッパーレール側の下向きコ字状を呈する中央部上端面に
形成したビード部内側の湾曲突条部との間に転動可能に
保持させた状態で介在させた鼓形ローラによって、上
下、左右方向でのがた付きのない状態での組立てが行な
え、両レールの安定したスライド動作を行なえる。

〔実施例〕

以下、本考案を図面に示した実施例を用いて詳細に説明
する。

第１図および第２図は本考案に係るシートスライド装置
の一実施例を示し、その要部とするスライドレール機構
部のみを示し、それ以外の構成等は省略している。

これらの図において、全体を符号１で示すシートスライ
ド装置は、図示は省略したが、車体床面上にシートクッ
ション、シートバック等により構成されるシート本体と
の間に介在して設けられ、該シート本体をシート前後方
向に摺動自在に支持するために用いられることは周知の
通りである。

さて、本考案によれば、シート載置用床面上に固定され
るロアーレール２と、このロアーレール２上で長手方向
に摺動自在に案内支持されシート本体側に取付け固定さ
れるアッパーレール３とからなるシートスライド装置１
において、ロアーレール２とアッパーレール３とを、以
下のように構成したところ特徴を有している。

すなわち、前記ロアーレール２を、上向きコ字状を呈す
る中央部20とその開放両端から所定の厚みと曲率とをも
って湾曲形成した湾曲部21,22を介して下方に垂下され
た左、右折曲げ部23,2摺動とからなる断面形状をもって
形成するとともに、このロアーレール２上で長手方向に
摺動自在に案内支持されシート本体側に取付け固定され
るアッパーレール３を、ロアーレール２上方に被冠され
る下向きコ字状を呈する中央部30とその開放両端から所
定の厚みと曲率とをもって湾曲形成した湾曲部31,32を
介して前記ロアーレール中央部20の両側壁と左、右折曲
げ部23,24間に形成される溝23a,24a内に係入するごとく
上方に立設された左、右折返し部33,34とからなる断面
形状をもって形成している。

そして、前記ロアーレール２側左、右折曲げ部23,24先
端とアッパーレール３側の左、右折返し部33,34先端と
の少なくとも一方、本実施例ではロアーレール２側を、
所定の厚みと曲率とをもって湾曲させて折返した湾曲端
部40,41として形成し、この湾曲端部40,41を相手側であ
るアッパーレール３側の湾曲部31,32内側に左右方向、
さらには上下方向においてがた付きを生じないように当
接させて前後に摺動自在に嵌合させるようにしたところ
に特徴を有している。

このような構成によれば、ロアーレール２側の左、右折
曲げ部23,24先端の所定の厚みと曲率とをもって湾曲形
成して折返した湾曲端部40,41を、相手側の湾曲部31,32
の内側に左右方向、さらには上下方向においてがた付き
を生じないように当接させて長手方向から嵌合させるこ
とで、加工時における多少の寸法精度誤差は吸収でき、
これら両レール2,3を適切な圧入状態で、特に左右方
向、さらには上下方向においてがた付きのない嵌合が簡
単かつ適切に行なえる。

すなわち、このような構成では、予め設定した寸法より
も大きく形成されたとしても、上述したように所定の厚
みと曲率とをもって湾曲形成した湾曲部31,32や湾曲端
部40,41により寸法誤差を吸収し、長手方向からの圧入
によって所定の嵌合状態を得ることが可能となる。そし
て、上述したような左右方向でのがたを吸収すると、上
下方向でのがたも生じ難くなるもので、これにより従来
のような摺動抵抗の変動等を防ぎ、円滑かつ安定したス
ライド動作を得ることが可能となる。また、このような
構成では、湾曲部31,32や湾曲端部40,41での厚みや曲率
を比較的簡単に調整し得ることから、寸法誤差等に伴な
う左右、上下方向でのがた付きを防止する上での利点は
大きい。

また、上述した構成によれば、レール2,3間での左右、
上下方向でのたが付きを吸収し得ることから、両レール
2,3間での従来のような剥離方向での機械的強度面で優
れ、また各レール2,3に左、右折曲げ部23,24や左、右折
返し部33,34による補強部が形成されるために、この点
でも強度的に優れている。

また、本考案によれば、上述した構成において、ロアー
レール２の中央部20開放両端から左、右折曲げ部23,24
に至る所定の厚みと曲率とをもった湾曲部21、22とこれ
に対設されるアッパーレール３側の下向きコ字状を呈す
る中央部30における上端面内側との間に、鼓形ローラ4
2,43を転動自在に保持させた状態で介在させて設けるよ
うにした点にも特徴を有している。

ここで、図中44,45は上述したアッパーレール３におけ
る中央部30の上端面に、前記ロアーレール２の湾曲部2
1,22と対向する位置で、前記各レール2,3の相対的な移
動量に合せて内側に湾曲突条部として前記湾曲部21,22
の厚みと曲率に対応して突出形成したビード部で、これ
らビード部44,45による湾曲突条部と前記湾曲部21,22と
で、前記鼓形ローラ42,43における中央凹部を挟み込ん
で転動自在に保持しており、これら鼓形ローラ42,43の
位置ずれを防ぎ、その安定したころがり摺動動作を得る
上で、その利点は容易に理解されよう。また、このよう
なビード部44,45によれば、アッパーレール３自身の強
度が増大するという利点もある。

そして、このような構成によれば、ロアーレール２側の
湾曲部21,22とこれに対設されるアッパーレール３側上
端面におけるビード部44,45の湾曲突条部との間に転動
自在に保持された状態で介在されている鼓形ローラ42,4
3によって、上下、左右方向、特に左右方向でのがた付
きのない状態での組立てが行なえ、その結果安定したス
ライド動作を行なえるという利点を奏する。

なお、本考案は上述した実施例構造に限定されず、シー
トスライド装置１各部の形状、構造等を、必要に応じて
適宜変形、変更することは自由であり、たとえば第３図
に示すように、アッパーレール３側左、右折返し部33,3
4先端側を、所定の厚みと曲率とをもって湾曲して折返
した湾曲端部40,41として形成し、この湾曲端部40,41を
相手側であるロアーレール２側の湾曲部21,22内側に当
接させて組合わせたりしてもよいことは勿論である。

また、この場合、アッパーレール３側の左、右折返し部
33,34先端の湾曲端部40,41を、第４図に示すように、相
手側の湾曲部21,22に当接させるとともにその溝23a,24a
両側壁部にスプリング効果を利用して圧接させること
で、左右方向のがたを確実に吸収し得るものである。

〔考案の効果〕

以上説明したように本考案に係るシートスライド装置に
よれば、シート載置用床面上に固定されるロアーレール
を、上向きコ字状を呈する中央部とその開放両端から所
定の厚みと曲率とをもって湾曲形成した湾曲部を介して
下方に垂下された左、右折曲げ部とからなる断面形状を
もって形成するとともに、このロアーレール上で長手方
向に摺動自在に案内支持されシート本体側に取付け固定
されるアッパーレールを、ロアーレール上方に被冠され
る下向きコ字状を呈する中央部とをの開放両端から所定
の厚みと曲率とをもって湾曲形成した湾曲部を介して前
記ロアーレールの中央部両側壁と左、右折曲げ部間に形
成される溝内に係入するごとく上方に立設された左、右
折返し部とからなる断面形状をもって形成し、かつ前記
ロアーレールの左、右折曲げ部先端とアッパーレールの
左、右折返し部先端との少なくも一方を、所定の厚みと
曲率とをもって湾曲して折返した湾曲端部として形成
し、この湾曲端部を相手側の湾曲部内側に左右方向およ
び上下方向でのがた付きが生じない状態で当接させて前
後に摺動自在に嵌合させるようにしたので、簡単かつ安
価な構成にもかかわらず、以下のような実用上優れた効
果を奏する。

すなわち、所定の厚みと曲率をもって湾曲形成した湾曲
部や湾曲端部によって、加工時における多少の寸法精度
誤差は吸収でき、これら両レールを適切な長手方向から
の圧入状態で左右方向、上下方向においてがた付きのな
い嵌合が簡単かつ適切に行なえる。特に、湾曲部や湾曲
端部による湾曲状態を適宜調整すれば、その厚み等を任
意に設定でき、各部の寸法誤差等に対して簡単に対処し
得るものである。

そして、このような構成では、各レールを、左右、上下
方向でのがた付きやねじれ等の影響を適切に吸収した状
態で嵌合させることができ、異音等の問題を一掃し得る
とともに、機械的強度面でも優れ、しかも摺動抵抗が急
激に厚化するといった問題をも解消でき、安定したスラ
イド動作が得られる等の利点を奏するものである。

また、本考案によれば、ロアーレールの中央部開放両端
から左、右折曲げ部に至る所定の厚みと曲率とをもった
湾曲部とこれに対設されるアッパーレール側の下向きコ
字状を呈する中央部における上端面内側に突設したビー
ド部による湾曲突条部との間に、鼓形ローラを介在させ
て転動自在に保持するようにしたので、簡単かつ安価な
構成にもかかわらず、上下方向や左右方向でのがた付き
のない状態での組立てが行なえるばかりでなく、位置ず
れのない状態で介在して転動自在に保持されている鼓形
ローラによって、両レール間での安定したスライド動作
が可能となる等の利点を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係るシートスライド装置の一実施例を
示す要部断面図、第２図はその装置外観を示す概略斜視
図、第３図及び第４図は本考案の別の実施例をそれぞれ
示す要部断面図である。 図中、１…シートスライド装置、２…ロアーレール、３
…アッパーレール、20…ロアーレール中央部、21,22…
湾曲部、23,24…左、右折曲げ部、30…アッパーレール
中央部、31,32…湾曲部、33,34…左、右折返し部、40,4
1…湾曲端部、42,43…鼓形ローラ、44,45…ビード部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】シート載置用床面上に固定されるロアーレ
   ールと、このロアーレール上で長手方向に摺動自在に案
   内支持されシート本体側に取付け固定されるアッパーレ
   ールからなるシートスライド装置において、 前記ロアーレールは、上向きコ字状を呈する中央部とそ
   の開放両端から所定の厚みと曲率とをもって湾曲形成さ
   れた湾曲部とこれらの湾曲部を介して下方に垂下された
   左、右折曲げ部とからなる断面形状を有し、 かつ前記アッパーレールは、ロアーレール上方から被冠
   される下向きコ字状を呈する中央部とその開放両端から
   所定の厚みと曲率とをもって湾曲形成された湾曲部とこ
   れらの湾曲部を介して前記ロアーレールの中央部両側壁
   と左、右折曲げ部間に形成される溝内に係入するごとく
   上方に立設された左、右折返し部とからなる断面形状を
   有しており、 前記ロアーレールの湾曲部に対設される前記アッパーレ
   ールの中央部上端面部分に、該湾曲部に対向するように
   内側に突出する湾曲突条部を有するビード部を設け、 前記ロアーレールの湾曲部とこれに対向する前記アッパ
   ーレールの中央部上端面のビード部による湾曲突条部と
   の間に、鼓形ローラを転動自在に保持した状態で介在さ
   せて設けたことを特徴とするシートスライド装置。