JPH0633087A - 粉末油脂組成物 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 中鎖飽和脂肪酸トリグリセリドおよび／また
はこれらの中鎖飽和脂肪酸トリグリセリドを主成分とし
た食用油脂と、デキストロース当量が２〜３０の澱粉加
水分解物及び有機酸モノグリセリドを主成分としてなる
粉末油脂組成物。 【効果】 油脂、炭水化物を含有し、栄養的には高カロ
リー、低蛋白質、低ミネラル成分からなり栄養的に優
れ、疾患病態等により蛋白質、多糖類、ミネラルの制限
を受けているが、食物栄養補給等が必要である治療者等
の治療食加工等に使用でき、かつ、粉末化工程の作業性
に優れ、また、粉体性能として重要な非ケーキング性、
保存安定性、食味性、溶解性、分散性にも優れた特性を
持ち、各種加工食品用素材として優れた利用特性を有す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、一般加工食品、ライフ
ケアー、ヘルスケアー、メディカルケアー、または、食
品類の加工用素材として利用できる粉末油脂組成物に関
し、さらに詳しくは、公知の蛋白質またはこれらの関連
物質をまったく使用することなく、油脂、炭水化物を含
有し、栄養的には高カロリー、低蛋白質、低ミネラル成
分からなる栄養的に優れた粉末油脂組成物に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の粉末油脂としては下記のものが挙
げられる。 （１）カゼインナトリウムを使用し、スプレードライ方
法により粉末油脂を得る方法（特開昭５０−１１０４０
３号公報）。 （２）タンパン質として、牛乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、
ホエー、カゼイン、カゼインナトリウム、ゼラチン、大
豆タンパクを使用して製造した粉末油脂（特開昭５７−
１５９８９６号公報）。 （３）アルギン酸ナトリウム、寒天、カラギーナン等の
海藻抽出物、ローカストビーンガム、グアーガム、タマ
リンドガム等の植物性種子粘着物を使用して製造するこ
とを特徴とする粉末化基材（特開昭５９−７６５３８号
公報、特開昭５９−７６５３９号公報）。 （４）油脂のＳＦＩを特定の範囲に限定し、親水性の乳
化剤、ゼラチン、カゼイン、アラビアゴム、カラギーナ
ン、アルギン酸を使用して製造することを特徴とする粉
末油脂（特開昭５８−１５２０９７号公報、特開昭５８
−１７９４４３号公報）。 （５）酸または酵素にて部分加水分解した大豆タンパク
質を使用して製造する事を特徴とする粉末油脂（特開昭
６０−３９６号公報）。 （６）融点２５〜３５℃の溶解した油脂を低温室内に噴
霧し、凍結することを特徴とする油脂以外の成分を含ま
ない粉末状食用油脂の製造方法（特開昭５４−１２６２
０７号公報）。 （７）グルコース、キシロース、ガラクトース等の単糖
類、シュークロース、ラクトース、マルトース等の二糖
類、ラフィノース等の三糖類、スタキオース等の四糖
類、デキストリン等の糖類を加熱処理して多孔質状の不
定型粒とし、これに液状油脂を吸着することを特徴とし
た粉末油脂の製造方法（特開昭５６−１０４９９８号公
報）。 （８）油脂、水、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、塩
基および／または塩を含有した水中油滴型乳化脂を粉末
化する方法（特開昭６３−３０９１４１号公報）。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、いずれの粉末
油脂も、蛋白質や海藻抽出物や植物性種子粘着物等の多
糖類やミネラル成分を多く含有するもので、蛋白質、ミ
ネラル成分の摂取を制限された、例えば、腎不全、透
析、手術後等の栄養吸収障害者、難治性てんかん治療
者、その他、通常の食用油脂（以下ＬＣＴと略称）等の
摂取等に食事制限が必要な膵臓、胆疾病患者等には使用
できなかった。

【０００４】また、特開昭５６−１０４９９８号公報
は、蛋白質を用いないで粉末油脂を製造しているが、糖
類又は糖類主体の粉末化において糖類に少量の水を加え
て溶解し、糖粒子の表面部分だけ溶解後、加熱処理して
溶解表面部分を結晶化させて多孔質状の不定型粒とし、
これに液状油脂を吸着している。しかしこの様な方法で
製造した粉末油脂は製品中の油脂が表面に露出してお
り、酸化されやすく、また吸着油脂量にも限界があり、
特に油脂含量を高めるためにカゼインソーダ、リン酸
塩、ガム質等の添加が必要となっていた。

【０００５】また、特開昭６３−３０９１４１号公報
は、蛋白質を用いないがカルシウム、ナトリウム、マグ
ネシウム、カリウム等のミネラル成分を含み、ミネラル
成分の摂取を制限された食事制限者には使用できなかっ
た。

【０００６】本発明は、従来から公知の蛋白質またはこ
れらの関連物質をまったく使用することなく、油脂、炭
水化物を含有し、栄養的には高カロリー、低蛋白質、低
ミネラル成分からなり栄養的に優れた粉末油脂組成物を
提供し、疾患病態等により蛋白質、多糖類、ミネラルの
制限を受けているが、食物栄養補給等が必要である栄養
障害者、治療者等の治療食加工等に使用でき、かつ、油
脂の粉末化に際し、加工上の特性である作業性能、粉体
性能、臭味、安定性等の改善性を計り、かつ、加工食品
素材、及び調製加工食品の補完貯蔵中での品質保持性能
を向上させ、加工食品の嗜好性等も改善向上させ得る組
成物を提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは、
前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、高カロ
リー補給食品用粉末油脂組成物の製造に際し、従来から
使用されてきた牛乳、粉乳、カゼイン、ゼラチン、植物
性蛋白質、レシチン、その他の蛋白質加工誘導物質、海
藻類抽出物等の被膜剤、吸着剤、ミネラル等の基材はい
っさい使用せずに、主要成分の油脂と特定成分をもつ澱
粉加水物とともに少量の有機酸モノグリセリド類等を粉
末化助剤に使用し、必要に応じ低糖化還元水飴等を使用
して、油脂を粉末化すれば、前記課題が解決され栄養的
に優れた粉末油脂組成物が提供できるとの知見を得て本
発明を完成した。

【０００８】つまり、本発明は、中鎖飽和脂肪酸トリグ
リセリド（以下ＭＣＴと略称する）および／またはこれ
らのＭＣＴを主成分とした食用油脂と、低糖化澱粉加水
分解物、及び、有機酸モノグリセリドを主成分とする粉
末油脂組成物を提供する。

【０００９】さらに具体的には、栄養的に優れた粉末油
脂組成物の製造に際し、特にＭＣＴおよび／またはこれ
らを主体とした油脂に、ジアセチル酒石酸モノグリセリ
ド、クエン酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド
の一種またはこれらの混合物の有機酸モノグリセリド
と、ＤＥ２〜３０の低糖化澱粉加水分解物および／また
はこれらの水素添加処理によって得られた低糖化還元澱
粉加水分解物を粉末化加工助剤に使用することにより、
従来から公知の蛋白質またはこれらの関連物質をまった
く使用することなく、油脂、炭水化物を含有し、栄養的
には高カロリー、低蛋白質、低ミネラル成分からなる栄
養的に優れた粉末油脂組成物の開発に成功し、また、該
粉末油脂組成物は、特に粉末化工程の作業性に優れ、さ
らに、粉体性能として重要な非ケーキング性、保存安定
性、食味性、溶解性、分散性にも優れた特性を持ち、か
つ各種加工食品用素材として優れた利用特性を発揮でき
る組成物を提供することができる。

【００１０】以下、本発明の粉末油脂組成物を製造する
上で必要とする原料について説明する。

【００１１】本発明に使用する油脂成分のＭＣＴは、カ
プリル酸、カプリン酸が主体で９０重量％以上を占め、
その他の成分は全油脂成分比で１０重量％以下が好まし
く、さらに好ましくは、そのうちＣ１４〜Ｃ２２の飽和
脂肪酸成分の含有量は、２重量％以下が望ましい。

【００１２】また、必要に応じて必須脂肪酸成分等を併
用する場合、油脂成分中、ω−３、ω−６酸等の必須脂
肪酸成分および／またはパルミトオレイン、オレイン等
のω−７、ω−９酸等のモノ不飽和脂肪酸成分を強化す
る場合、全カロリー比で各々５％以下であることが好ま
しく、また、全粉末油脂組成物に対しω−３、ω−６酸
成分および／または、ω−７、ω−９酸等のモノ不飽和
酸含有量は１０重量％以下が好ましい。

【００１３】また、これらの油脂の製造方法は、特に制
限はないが、グリセリンとカプリル酸、カプリン酸等と
の直接エステル化、またはこれらの成分等から成る混酸
グリセライドとカプリル酸等の飽和脂肪酸または不飽和
脂肪酸を含有する油脂等との間でのエステル化、または
エステル交換反応などの処理から得るのが好ましい。

【００１４】本発明に使用するＭＣＴの消化吸収経路
は、ＬＣＴの場合のように腸管内で胆汁酸との複合ミセ
ルを形成せず、また、リンパ管−血流−肝臓といったＬ
ＣＴのような経路を通ることなく非常に単純で、直接、
門脈−肝臓といった経路を通り、吸収速度はＬＣＴの約
３〜４倍にもなる。このようにＭＣＴは、リンパ管を経
由することなく糖類などの他の栄養素と同様に、腸上皮
細胞から門脈を経て肝臓に運ばれて、そこですぐに酸化
分解されてエネルギーに変換される。

【００１５】このため本発明に使用するＭＣＴは、エネ
ルギー補給用としては吸収が早く、食事療法による栄養
補給等が必要である栄養障害者、治療者等の治療食加工
等にカロリー源として利用するのに有効な油脂である。

【００１６】ＭＣＴを主体とした油脂の添加量は、好ま
しくは５〜８０重量％であるが、特に好ましくは３０〜
７０重量％である。このとき、添加量が５重量％未満で
は食品加工素材適正に欠け、また８０重量％を超えると
粉体の加工素材のうち特に乳化分散性低下の他、被膜性
の低下等、粉末油脂の粉体性状が悪くなるので好ましく
ない。

【００１７】本発明に使用し得る澱粉加水分解物は、塩
酸等の無機酸による澱粉分解物、または酸分解と酵素糖
化処理とを併用した加水分解物でもよいが、これらのも
のは触媒の酸成分を中和処理する際に食塩等の塩類を形
成するので、脱塩処理したものが好ましく、特に好まし
い分解物はアミラーゼで液化および糖化処理もして得ら
れるＤＥ２〜３０の低糖化澱粉である。

【００１８】このとき、澱粉加水分解物がＤＥは２以下
の物は、被膜性が強く、澱粉臭等による臭味が残り、ま
たスプレードライ時に作業性も低下し、良質の粉末油脂
組成物が得られず、また、ＤＥが３０を超えると、乳化
分散性が低く、被膜性も乏しく、また、スプレードライ
時に良質な粉末油脂組成物が得られなくなるので好まし
くない。

【００１９】また、必要に応じて、これら加水分解物を
さらに水素添加処理して得られる低糖化還元麦芽糖水飴
成分等から構成されるマルトデキストリンの還元糖化物
も併用することが出来る。

【００２０】これらの澱粉分解物には澱粉臭がなく、酸
糖化法によるものより酵素処理法によるものが適当であ
る。

【００２１】これらの低糖化澱粉加水分解物は、水溶液
において適度の粘性とともに、溶解性、分散性、耐酸、
耐塩性等を具備している他、有機酸モノグリセリド類と
の共用により油脂の粉末化に際し噴霧乾燥の前処理行程
の予備乳化作業が容易な上、乳化液の均質化、噴霧処理
の作業性能が向上し、粉質の改善、特に粉体の溶解性、
分散性、賦形性、非ケーキング性、非結晶性、低甘味性
等も改質され、これらの澱粉分解物は、処理により粉末
油脂の組織改良と共に、澱粉臭等の異臭味、甘味等の粉
質改善効果が得られる。

【００２２】ＤＥ２〜３０の低糖化澱粉分解物に対し
て、必要に応じ食物繊維質を１〜１０重量％使用する
と、粉体のウエット感の改良効果があり好ましい。

【００２３】澱粉加水分解物の添加量は、２０〜８０重
量％の範囲が好ましく、特に好ましくは２０〜６０重量
％である。２０重量未満ではＭＣＴや有機酸モノグリセ
リドが相対的に多くなり粉末油脂の状態、食味性が悪く
なり、８０重量％超えると油脂組成物の性能低下をおこ
し不適当である。

【００２４】有機酸モノグリセリドとして、ジアセチル
酒石酸モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、コハ
ク酸モノグリセリドの１種またはこれらの混合物を使用
した乳化剤は、０．０５〜５重量％添加することが好ま
しく、特に好ましくは０．１〜５重量％である。０．０
５重量％未満では乳化が悪く、特に粉末油脂の溶解性、
分散性、賦形性能等の低下と共に粉体の性状等も悪化す
る。また、５重量％を超えると粉末油脂の食味が悪くな
るので好ましくない。

【００２５】

【実施例】以下、本発明を実施例および比較例によって
さらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定され
るものではない。

【００２６】実施例１〜７、比較例１〜７ 攪拌機付きの溶解槽に５０〜６０℃の温水を入れ、表
１、表２に示す澱粉加水分解物、食用繊維質を溶解ある
いは分散し水相部を得る。これとは別にＭＣＴを含有し
た表１、２に示す食用油脂に乳化剤を添加し、６０〜７
０℃に昇温後完全溶解し、これを水相部に少しずつ添加
し、予備乳化を約２０分間行った。次いで、ピストン式
ホモジナイザーを用いて圧力１５０ｋｇ／ｃｍで乳化
し、その後、１９０℃の熱風にて噴霧乾燥して粉末油脂
組成物を得た。得られた粉末油脂組成物の粉末化特性を
試験し、その結果を表１、表２に示す。

【００２７】

【表１】

【００２８】

【表２】

【００２９】なお、表中の記号は下記に示す通りであ
る。 ＭＤＡ：ジアセチル酒石酸モノグリセリド ＭＣ ：クエン酸モノグリセリド ＭＳ ：コハク酸モノグリセリド また、ＭＣＴ、食用油脂、乳化剤、澱粉加水分解物、食
用繊維質の欄の数字は重量％を示す。さらに、粉末化特
性において、粉末の状態、粉末化特性の欄の記号は、下
記に示通りである。 ◎：さらさらな状態で非常に良好である。 ○：良好である。 △：粉末にはなるが油脂のしみ出し、ブロック、ダマが
多い。 ×：粉末にならない。

【００３０】

【効果】本発明の粉末油脂組成物は、従来から公知の蛋
白質またはこれらの関連物質をまったく使用することな
く、油脂、炭水化物を含有し、消化吸収性に優れ、栄養
的には高カロリー、低蛋白質、低ミネラル成分であるた
め、蛋白質、ミネラル成分等の摂取を制限された、例え
ば、腎不全、透析、手術後等の栄養吸収障害者、難治性
てんかん治療者、その他、通常の食用油脂等の摂取に食
事制限が必要な膵臓、胆疾病患者等の栄養障害者、治療
者等の治療食加工等に使用できる。

【００３１】また、特に粉末化工程の作業性に優れ、さ
らに、粉体性能として重要な非ケーキング性、臭味、食
味性、溶解性、分散性、調製加工食品の保管貯蔵中での
品質保持性能にも優れた特性を持ち、かつ一般調理食
品、製菓、製パン、冷菓、冷食、たれ、ソース、デザー
ト等の各種加工食品用素材として、また、加工食品の嗜
好性等も改善向上させ得る組成物を提供することができ
る。

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 中鎖飽和脂肪酸トリグリセリドおよび／
   またはこれらの中鎖飽和脂肪酸トリグリセリドを主成分
   とした食用油脂と、澱粉加水分解物及び有機酸モノグリ
   セリドを主成分としてなる粉末油脂組成物。
2. 【請求項２】 澱粉加水分解物のデキストロース当量が
   ２〜３０であることを特徴とする請求項１記載の粉末油
   脂組成物。
3. 【請求項３】 中鎖飽和脂肪酸トリグリセリドおよび／
   またはこれらの中鎖飽和脂肪酸トリグリセリドを主成分
   とした食用油脂５〜８０重量％と、澱粉加水分解物２０
   〜８０重量％、及び有機酸モノグリセリド０．０５〜５
   重量％を主成分としてなる粉末油脂組成物。
4. 【請求項４】 油脂成分中、ω−３、ω−６酸等の必須
   脂肪酸成分および／またはパルミトオレイン、オレイン
   等のω−７、ω−９酸等のモノ不飽和脂肪酸成分が全カ
   ロリー比で各５％以下であり、かつ、全粉末油脂組成物
   に対し１０％重量以下に構成されることを特徴とする請
   求項１から３項のいずれかに記載の粉末油脂組成物。
5. 【請求項５】 中鎖飽和脂肪酸トリグリセリドおよび／
   またはこれらの中鎖飽和脂肪酸トリグリセリドを主成分
   とした食用油脂、澱粉加水分解物、有機酸モノグリセリ
   ド、及び食物繊維質を主成分としてなる粉末油脂組成
   物。