JP2023069045A - 食用クリーム - Google Patents

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Yoriko Endo
喜之 將野
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Abstract

【課題】コク味が強められた植物油脂を含むクリームを提供することである。また、コク味が強められた植物油脂を含むクリームを得るための簡易な方法を提供することである。【解決手段】油脂を含む食用クリームであって、前記油脂は、植物油脂を含み、前記油脂に含まれるγ-オリザノールの含有量が、0.002~0.2質量%である、前記食用クリーム。前記油脂が、植物油脂としてラウリン系油脂を含む、食用クリーム。前記油脂が、植物油脂としてパーム中融点部を含む、食用クリーム。【選択図】なし

Description

本発明は、植物油脂を含む食用クリームに関する。
ヤシ油、パーム油などの植物油脂を使用した、ホイップクリーム、アイスクリーム、バタークリームなどの植物性クリームの風味は、生クリームと比べて、コク味や濃厚感に乏しく、あっさりとしている。そこで、植物性クリームに生クリームの風味(乳様のコク味や濃厚感)を補うため、乳脂肪と植物油脂とを含有する、コンパウンドタイプのクリームも開発されている。
上記のように、植物性クリームや乳脂肪含有率の低いコンパウンドクリームの開発における主要な課題の1つは、(特に、乳様の)コク味や濃厚感の強化である。そして、植物性クリームやコンパウンドクリームの乳風味を強化する各種提案がなされている。例えば、特許文献1は、一定量以上のカリウム含量とし、且つ、蛋白質/カリウムの値を一定範囲とする濃厚でありながらすっきりした乳風味を有する加糖ホイップクリームを開示する。また、特許文献2は、乳に由来する蛋白を0.5~3重量%含有し、遠心分離した水相部に含まれるカルシウムイオンが30~100mg/100gに調整された、油脂含量15~50重量%の起泡性水中油型乳化物を開示する。
特開2017-184637号公報 WO2010/084541
しかしながら、上記提案は、関与成分の含有量や比率を細かく調整するものであり、簡易に採用できるものではない。したがって、クリームのコク味を強める簡易な方法が求められている。
本発明の課題は、コク味が強められた植物油脂を含むクリームを提供することである。また、コク味が強められた植物油脂を含むクリームを得るための簡易な方法を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、植物油脂を含むクリームに含まれる油脂に、特定量のγ-オリザノールを含有させることにより、上記課題が解決できることを見出した。これにより本発明は完成された。すなわち、本発明は以下の態様であり得る。
[1]油脂を含む食用クリームであって、
前記油脂は、植物油脂を含み、前記油脂に含まれるγ-オリザノールの含有量が、0.002~0.2質量%である、前記食用クリーム。
[2]前記油脂が、植物油脂としてラウリン系油脂を含む、[1]の食用クリーム。
[3]前記油脂が、植物油脂としてパーム中融点部を含む、[1]または[2]の食用クリーム。
[4]前記油脂が、植物油脂としてエステル交換油脂を含む、[1]~[3]の何れか1つの食用クリーム。
[5]水中油型乳化物である、[1]~[4]の何れか1つの食用クリーム。
[6]乳固形分を含有する、[1]~[5]の何れか1つの食用クリーム。
[7][1]~[6]の何れか1つの食用クリームを含む食品。
[8]植物油脂を含む食用クリームのコク味を強める方法であって、
前記食用油脂に含まれる油脂のγ-オリザノール含有量を0.002~0.2質量%とする、前記方法。
本発明により、コク味が強められた、植物油脂を含む食用クリームを提供できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、A(数値)~B(数値)は、A以上B以下を意味する。そして、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様などは、「好ましい」や「より好ましい」などの表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、「好ましい」や「より好ましい」などの表現にかかわらず各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。
本発明の食用クリームは油脂を含有する。食用クリームに含まれる油脂は、本発明の効果を妨げない食用に適する油脂であれば特に限定されない。食用クリームに含まれる油脂としては、例えば、パーム油、ココアバター、シア脂、サル脂、アランブラッキア脂、モーラー脂、イリッペ脂、マンゴー核油、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、ヤシ油、パーム核油、乳脂肪、牛脂、豚脂、中鎖脂肪酸トリグリセリドなど、ならびに、これらを、混合、水素添加、エステル交換、分別などの1以上の加工をした油脂(加工油脂)、などが挙げられる。しかし、本発明の食用クリームは、少なくとも1種以上の植物油脂を含有する。植物油脂は、植物原料由来であれば、合成油脂や加工油脂であってもよい。本発明の食用クリームに含まれる油脂に占める植物油脂の含有量は、好ましくは20~100質量%であり、より好ましくは50~100質量%であり、さらに好ましくは70~100質量%であり、ことさらに好ましくは80~100質量%である。
本発明の好ましい実施の形態によれば、食用クリームは、植物油脂として、好ましくは、ラウリン系油脂を含有する。ラウリン系油脂は、油脂を構成する脂肪酸全量に占めるラウリン酸の含有量が30質量%以上である油脂である。すなわち、ヤシ油、パーム核油、ババス油など、ならびに、それらに、混合、硬化、エステル交換、分別のうち1以上の処理がなされた加工油脂(例えば、パーム核オレインやパーム核ステアリン)、などが挙げられる。なお、油脂を構成する脂肪酸の含有量は、ガスクロマトグラフィー法(例えば、AOCS Ce1f-96)に準じて測定できる。
本発明の好ましい実施の形態によれば、食用クリームは、植物油脂として、好ましくは、パーム中融点部を含有する。パーム中融点部(以下、PMFともいう)は、パーム油を分別することにより、低融点部(オレイン部)と高融点部(ステアリン部)とを除いた中間画分である。分別には、乾式分別、乳化分別、溶剤分別、などが用いられる。パーム中融点部のヨウ素価は、好ましくは30~48であり、より好ましくは32~46である。パーム中融点部に含まれるPOP(1,3-ジパルミトイル-2-オレオイルグリセロール)の含有量は、好ましくは35~70質量%であり、より好ましくは40~65質量%である。
本発明の好ましい実施の形態によれば、食用クリームは、植物油脂として、好ましくは、植物油脂のみを原料油脂とするエステル交換油脂を含有する。エステル交換油脂は、油脂を構成する脂肪酸全量に占めるラウリン酸の含有量が、好ましくは5質量%以上30質量%未満であり、より好ましくは10~25質量%であり、さらに好ましくは13~22質量%である。エステル交換油脂は、上記のラウリン系油脂と、油脂を構成する脂肪酸全量のうち90質量%以上が炭素数16以上の脂肪酸である非ラウリン系油脂と、を含む混合油脂をエステル交換反応処理した油脂であってもよい。当該混合油脂は、ラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とを、好ましくは10:90~65:35の質量比で含み、より好ましくは、20:80~57:43の質量比で含み、さらに好ましくは30:70~52:48の質量比で含む。当該混合油脂に含まれるラウリン系油脂は2種類以上であってもよいし、非ラウリン系油脂も2種類以上であってもよい。エステル交換方法は、リパーゼ(製剤)を触媒とした酵素エステル交換方法でも、ナトリウムメチラートなどの化学触媒を使用したケミカルエステル交換方法でも、どちらでも適用できる。
上記の非ラウリン系油脂は、好ましくはパーム系油脂を含む。ここで、パーム系油脂は、パーム油、および、パーム油に由来する、混合、水素添加、エステル交換、分別などの1以上の加工をした油脂、を意味する。パーム系油脂としては、具体的には、パーム油の1段分別油であるパームオレインおよびパームステアリン、パームオレインの2段分別油であるパームオレイン(パームスーパーオレイン)およびパームミッドフラクション、パームステアリンの2段分別油であるパームオレイン(ソフトパーム)およびパームステアリン(ハードステアリン)、などが挙げられる。
本発明の食用クリームは、植物油脂として、上記の、ラウリン系油脂、パーム中融点部、エステル交換油脂、から選ばれる1種以上を、食用クリームに含まれる油脂全体に対して、好ましくは20~100質量%、より好ましくは50~100質量%、さらに好ましくは70~100質量%、ことさらに好ましくは80~100質量%、含有する。
本発明の食用クリームに含まれる油脂は、0.002~0.2質量%のγ-オリザノールを含有する。γ-オリザノールは、数種のトリテルペンアルコールや各種ステロールとのフェルラ酸エステルであり、こめ油(こめ胚芽油)から発見されている。こめ油のγ-オリザノール含有量は1.5~2.9質量%であると報告されていており、油脂類に1質量%程度溶解することが示されている。γ-オリザノールは、成長促進、性腺刺激、卵包ホルモン様作用が認められ、更年期症候群の治療に効果があるとされている。γ-オリザノールは、上記の通り、こめ糠からの抽出原油に1~3質量%程度含まれているが、精製こめ油には0.2質量%程度しか含まれていない。γ-オリザノールの定量法としては、UV吸光度法、HPLC法、などの公知の方法を適宜用いることができる。例えば、Journal of Oleo Science 58(10): 511-518, 2009.に記載の方法が適用できる。
本発明の食用クリームに含まれるγ-オリザノールは、食用に適する限り、その由来は問わない。上記のように、こめ油を使用することにより、こめ油に含まれるγ-オリザノールを利用してもよい。しかし、こめ油の配合量が多くなると、こめ油の風味が強くなり過ぎる。そのため、γ-オリザノールとしては、好ましくは、こめ油由来のγ-オリザノール製剤が適用される。こめ油由来のγ-オリザノール製剤としては、γ-オリザノール(オリザ油化株式会社製)、米胚芽油GX-N(築野食品工業株式会社製)などが挙げられる。γ-オリザノール製剤に含まれるγ-オリザノールの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。なお、上記の理由から、本発明の食用クリームに含まれる油脂に占めるこめ油の含有量は、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
本発明の食用クリームに含まれる油脂のγ-オリザノールの含有量は、好ましくは0.008~0.14質量%であり、より好ましくは0.010~0.10質量%であり、さらに好ましくは0.012~0.08質量%であり、ことさらに好ましくは0.013~0.06質量%であり、最も好ましくは0.014~0.05質量%である。本発明の食用クリームに含まれる油脂のγ-オリザノールの含有量が上記範囲程度であると、植物油脂を含む食用クリームのコク味が、クリーム本来の風味を損なわずにほどよく強まる。また、コク味が強まることで、より濃厚な風味に感じられる(より濃厚感が得られる)。
本発明の好ましい実施の形態によれば、食用クリームは、バタークリーム、ホイップクリーム、アイスクリーム、液状ホワイトナー、フラワーペースト、粉末クリーム、などであり得る。
上記のバタークリームは、例えば、油脂と糖類とを含み、練り合わされたクリームである。無水の場合は、シュガークリームとも言われ、別分類とされることもある。しかし、バタークリームは、ショートニングやマーガリンに液糖を加えて起泡化する油中水(W/O)型クリームの形態が多い。バタークリームに含まれる油脂の含有量は、好ましくは20~70質量%であり、より好ましくは30~60質量%であり、さらに好ましくは35~55質量%である。
上記のホイップクリームは、油脂と水とを含み、水中油(O/W)型クリームの形態が一般的である。ホイップクリームは、例えば、糖類などの甘味料を配合して起泡化することにより、もしくは、予め糖類などの甘味料が配合された加糖ホイップクリームを起泡化することにより、ホイップドクリームとして使用される。また、ホイップクリームまたは類似のクリームは、生クリームの替わりに調理用クリームとして使用され得る。ホイップクリームに含まれる油脂の含有量は、好ましくは20~60質量%であり、より好ましくは25~55質量%であり、さらに好ましくは30~50質量%である。
上記のアイスクリームは、油脂と水とを含み、水中油(O/W)型クリームの形態が一般的である。アイスクリームは、好ましくは、乳等省令および公正競争規約で定められているところのアイスクリーム類の分類による、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスである。アイスクリームは、好ましくは、アイスミックス(水中油型乳化物)が凍結含気泡化(フリージング)されることにより得られる。アイスミックスまたは類似のクリームは、プリンなどへの練り込みやゼリーなどへのトッピングにも使用され得る。アイスクリームに含まれる油脂の含有量は、好ましくは2~40質量%であり、より好ましくは4~30質量%であり、さらに好ましくは6~25質量%である。
上記の液状ホワイトナーは、油脂と水とを含み、水中油(O/W)型クリームの形態が一般的である。液状ホワイトナーは、コーヒー飲料や紅茶飲料など、飲料用クリームとして使用され得る。また、液状ホワイトナーまたは類似のクリームは、プリンなどへの練り込みやゼリーなどへのトッピングにも使用され得る。液状ホワイトナーに含まれる油脂の含有量は、好ましくは5~50質量%であり、より好ましくは10~40質量%であり、さらに好ましくは15~30質量%である。
上記のフラワーペーストは、油脂と水と、さらに澱粉(穀物粉に含まれる澱粉も含む)を含み、澱粉を加熱糊化することによってボデーを付与した、水中油(O/W)型クリームの形態が一般的である。フラワーペーストに含まれる油脂の含有量は、好ましくは1~60質量%であり、より好ましくは3~55質量%であり、さらに好ましくは5~50質量%である。
上記の粉末クリームは、油脂と水と賦形剤(たんぱく質、デキストリンなど)を含む水中油(O/W)型クリームが噴霧乾燥された形態が一般的である。粉末クリームは、飲料に使用されたり、ベーカリー生地に使用されたり、各種用途に使用される。粉末クリームに含まれる油脂の含有量は、好ましくは10~85質量%であり、より好ましくは20~80質量%であり、さらに好ましくは25~75質量%である。
本発明の食用クリームに含まれる油脂の含有量は、食用クリームの形態により、好ましい範囲が異なり得る。しかし、本発明の食用クリームに含まれる油脂は、好ましくは1~85質量%であり、より好ましくは2~80質量%であり、さらに好ましくは3~75質量%である。
本発明の好ましい実施の形態によれば、本発明の食用クリームは、水中油型の乳化物であり得る。本発明の食用クリームが水中油型である場合、食用クリームに含まれる油脂の含有量は、好ましくは1~60質量%であり、より好ましくは2~55質量%であり、さらに好ましくは3~50質量%である。また、食用クリームに含まれる水の含有量は、好ましくは10~90質量%であり、より好ましくは15~85質量%であり、さらに好ましくは20~80質量%である。なお、食用クリームの油脂の含有量の測定には、ソックスレー法、バブコップ法など、従来公知の方法が適用できる。また、食用クリームの水の含有量の測定には、常圧加熱乾燥法、カールフィッシャー法など、従来公知の方法が適用できる。
本発明の食用クリームが水中油型のクリームである場合、例えば、ホイップクリームに含まれる水の含有量は、好ましくは25~75質量%であり、より好ましくは30~70質量%であり、さらに好ましくは35~65質量%である。アイスクリームに含まれる水の含有量は、好ましくは40~90質量%であり、より好ましくは45~80質量%であり、さらに好ましくは50~70質量%である。液状ホワイトナーに含まれる水の含有量は、好ましくは45~90質量%であり、より好ましくは50~85質量%であり、さらに好ましくは55~80質量%である。フラワーペーストに含まれる水の含有量は、好ましくは10~80質量%であり、より好ましくは15~75質量%であり、さらに好ましくは20~70質量%である。
本発明の好ましい実施の形態によれば、食用クリームは、油脂以外の他の成分を含有することができる。他の成分としては、水、乳化剤、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、蔗糖、ソルビトール、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β-カロテン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白、大豆蛋白等の植物蛋白、卵及び各種卵加工品、香料、脱脂粉乳やホエーパウダー等の乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、香辛料、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
上記乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、縮合リシノレイン脂肪酸エステル、グリセリドエステル等の合成乳化剤や、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の合成乳化剤でない乳化剤等が挙げられる。乳化剤は、これらの1種または2種以上が用いられてもよい。
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、澱粉、ゼラチン等が挙げられる。増粘安定剤は、これらの1種または2種以上が用いられてもよい。
上記澱粉としては、小麦、コーン、ジャガイモ、サツマイモ、米、もち米、タピオカ等由来の澱粉が挙げられ、またそれらに、エステル化、リン酸架橋、α化、酸化、熱処理等の化学的、物理的処理を施した化工澱粉乃至加工澱粉が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。例えば、フラワーペーストの含材料に占める澱粉の含有量は、好ましくは1~10質量%であり、さらに好ましくは2~8質量%である。
上記甘味料としては、ショ糖(砂糖、粉糖)、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、還元澱粉糖化物、液糖、酵素転化水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、還元糖ポリデキストロース、オリゴ糖、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトース、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラフィノース、デキストリン、などの糖類・糖アルコール類が挙げられる。また、甘味料は、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムK、などの高甘味度甘味料であってもよい。甘味料は、これらの1種または2種以上が用いられてもよい。
本発明の好ましい実施の形態によれば、食用クリームは、乳固形分を含有する。乳固形分は、乳に含まれる水以外の成分である。乳は好ましくは牛より得られる。乳固形分を含む乳製品としては、例えば、生乳、牛乳、脱脂乳、加工乳、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、加糖練乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖脱脂練乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、クリームパウダー、サワークリーム、乳清蛋白質、ホエー、ホエーパウダー、ホエー蛋白質濃縮物、ミルクプロテイン濃縮物、バターミルク、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、ヨーグルト、乳酸菌飲料、乳飲料、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、乳清ミネラル、などが挙げられる。食用クリームに含まれる乳固形分の含有量は、好ましくは0.5~50質量%、より好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは、2~20質量%である。食用クリームの乳固形分含有量が上記範囲程度であると、食用クリームの、乳様のコク味が強められる。
本発明の好ましい実施の形態によれば、食用クリームの製造方法は、特に限定されるものではなく、バタークリーム、ホイップクリーム、アイスクリーム、液状ホワイトナー、フラワーペースト、粉末クリーム、などの製造に通常用いられる方法が適用できる。例えば、ホイップクリーム、アイスクリーム、液状ホワイトナーである場合、植物油脂を含む油脂に、油溶性のその他の成分を溶解または分散させて油相を調製する。一方で、水に、水溶性のその他の成分を溶解または分散させて調製した水相を調製する。そして、調製した水相に対して油相を混合して予備的に乳化させた乳化物を均質化処理することにより製造できる。また、必要に応じて殺菌処理することもできる。均質化処理は、殺菌処理の前に行う前均質であっても、殺菌処理の後に行う後均質であってもよく、また前均質および後均質の両者を組み合わせた二段均質を行うこともできる。均質化処理の後は、冷却、エージングの工程に供してもよい。
バタークリーム(含むシュガークリーム)の場合、例えば、植物油脂を含む油脂に、油溶性のその他の成分を溶解または分散させて油相を調製する。調製した油相に対し、必要に応じて、水に水溶性のその他の成分を溶解または分散させて調製した水相を混合乳化した後、冷却し(必要に応じてガスを注入してもよい)、結晶化させて可塑性油脂組成物を製造する。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられる。また、冷却する機器としては、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組合せも挙げられる。工程上、油相の溶解後又は混合乳化後に、殺菌処理することができる。殺菌は、タンクでのバッチ式や、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式で行うことができる。バタークリームは、得られた可塑性油脂組成物に、必要に応じて、粉糖、液糖などの糖類・糖アルコール類、及びその他副素材を添加混合して起泡化(ホイップ)することにより得られる。
フラワーペーストの場合、例えば、植物油脂を含む油脂を除く他の原料のすべてを温水に溶解混合し、次いで高速攪拌機にてホモジナイズして溶解物を得る。次に、植物油脂を含む油脂を加温溶解し、上記の溶解物に徐々に添加しながら、更に同条件で追加ホモジナイズを行なう。次いでホモミキサーにて均質化処理を行なう。これを攪拌付き加熱釜に移して攪拌しながら約90℃まで加熱・糊化させる。加熱終了後、シリンダー型掻き取り式熱交換機、たとえばボテーター、コンビネーター、パーフェクター等を使用し、約50℃まで予備冷却した後、充填し、室温まで自然放冷することにより得られる。高速攪拌機としては例えば特殊機化工業社製ホモジナイザーが挙げられ、ホモミキサーとしては、例えばSANWA MACHINE CO.INC製高圧ホモミキサーが挙げられる。
本発明の好ましい実施の形態によれば、食用クリームは、クリーム単品として使用する他に、トッピング、コーティング、サンド、フィリング等の用途で、パン類(食パン、テーブルロール、菓子パン、調理パン、フランスパン、ライブレッドなど)、イースト菓子(シュトーレン、パネトーネ、クグロフ、ブリオッシュ、ドーナツなど)、ペストリー(デニッシュ、クロワッサン、パイなど)、ケーキ(バターケーキ、スポンジケーキ、ドーナツ、ブッセ、ホットケーキ、ワッフルなど)、和菓子(饅頭、乳菓、蒸しパン、カステラ饅頭、どら焼きなど)、クッキー、ビスケット、などの食品に使用できる。また、ホワイトニングや風味向上のために、飲料用クリームや調理用クリームとして、コーヒー・紅茶等の各種飲料や、ソース・ルウ等に使用できる。また、アイスクリーム、ババロア、プリン等の冷菓の練り込み用クリームとして使用できる。
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。しかし、本発明は以下の実施例の内容に何ら限定されない。
食用クリームには、主な原材料として、以下の素材が使用された。
(油脂)
ヤシ硬化油(略号:HCNO、ラウリン酸含有量46.5質量%)、日清オイリオグループ株式会社製
パーム核油(略号:PKO、ラウリン酸含有量46.8質量%)、日清オイリオグループ株式会社製
パーム核硬化油(略号:HPKO、ラウリン酸含有量46.2質量%)、日清オイリオグループ株式会社製
パーム中融点部(略号:PMF、ヨウ素価45、POP含有量43.0質量%)、日清オイリオグループ株式会社製
エステル交換油脂1(略号:IE1、ラウリン酸含有量18.5質量%、パーム油:パーム核油=60:40の混合油脂のランダムエステル交換油脂)、日清オイリオグループ株式会社製
(製剤)
γ-オリザノール製剤(略号:γ-ORY、商品名:米胚芽油GX-N、γ-オリザノール含有量30質量%、築野食品工業株式会社製)
<食用クリームの調製1>
表1の配合にしたがって、例1、2のラクトアイスを製造した。すなわち、脱脂粉乳、水あめ、砂糖、水など、水相の成分を混合し、温度70℃まで撹拌昇温した。その後、混合融解した油相の成分を加え、さらに80℃まで昇温した。次いでホモゲナイザーを用いて微細均質化し、例1、2のミックス(水中油型乳化組成物)を調製した。調製した各ミックスについて、アイスクリーマーを用いてフリージングを行い、オーバーランを50に調整して、例1、2のラクトアイスを得た。
Figure 2023069045000001

<食用クリームの風味評価1>
-20℃で24時間保管した例1、2のラクトアイスの風味について、5人の経験が豊富なパネルが試食して、コク味が強い方を選択したところ、5人すべてが、例2のラクトアイスの方のコク味が強いと回答した。結果を表1に示した。
<食用クリームの調製2>
表2の配合にしたがって、以下の製造手順で、例3、4のホイップクリームを調製した。

(ホイップクリームの製造手順)
1.油脂に、油脂以外の油相成分を混合し、70℃の油相を調製する。
2.水に、水以外の水相成分を混合し、70℃の水相を調製する。
3.水相に油相を投入して撹拌乳化しながら、80℃まで昇温する。
4.次いでホモゲナイザーを用いて6MPaの圧力下で微細均質化する。
5.その後、85℃、15分のバッチ殺菌を行う。
6.得られた乳化物を氷水に浸漬して冷却後、5℃で12時間以上静置する。
Figure 2023069045000002

<食用クリームの風味評価2>
例3、4の各ホイップクリームを500g計量し、品温を7℃に調整した。砂糖35gを加え、ホバートミキサー(ホバートジャパン社製)を用い、中速2(約120rpm)で10分立てまでホイップし、評価用の試料(ホイップドクリーム)とした。例3、4のホイップドクリームの風味について、5人の経験が豊富なパネルが試食して、コク味が強い方を選択したところ、5人すべてが、例4のホイップドクリームの方のコク味が強いと回答した。結果を表2に示した。

Claims (8)

  1. 油脂を含む食用クリームであって、
    前記油脂は、植物油脂を含み、前記油脂に含まれるγ-オリザノールの含有量が、0.002~0.2質量%である、前記食用クリーム。
  2. 前記油脂が、植物油脂としてラウリン系油脂を含む、請求項1に記載の食用クリーム。
  3. 前記油脂が、植物油脂としてパーム中融点部を含む、請求項1または2に記載の食用クリーム。
  4. 前記油脂が、植物油脂としてエステル交換油脂を含む、請求項1~3の何れか1項に記載の食用クリーム。
  5. 水中油型乳化物である、請求項1~4の何れか1項に記載の食用クリーム。
  6. 乳固形分を含有する、請求項1~5の何れか1項に記載の食用クリーム。
  7. 請求項1~6の何れか1項に記載の食用クリームを含む食品。
  8. 植物油脂を含む食用クリームのコク味を強める方法であって、
    前記食用油脂に含まれる油脂のγ-オリザノール含有量を0.002~0.2質量%とする、前記方法。
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