JP7515269B2 - フィリング用油脂組成物、ならびに、それを含む冷菓用フィリングおよび複合冷菓 - Google Patents

フィリング用油脂組成物、ならびに、それを含む冷菓用フィリングおよび複合冷菓 Download PDF

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Description

本発明は、フィリング用油脂組成物、ならびに、それを含む冷菓用フィリングおよび複合冷菓に関する。
アイスクリームやアイスケーキ等の冷菓(複合冷菓を含む。)には、商品の味、香り、食感および外観に変化を与えることを目的として、各種フィリングが用いられる。以下、そのような冷菓に用いられるフィリングを「冷菓用フィリング」とも称する。
通常、冷菓は、チルド温度域(例えば0~5℃)または冷凍温度域(例えば0℃未満、特に-18℃以下)で、製造、保管および喫食される。このため、製菓用やベイキング用などの常温(例えば25℃付近)以上で使用されるフィリング(例えば、ホイップクリームやフラワーペーストなど)をそのまま冷菓に使用すると、フィリング中の油脂や水分が凝固し硬くなりすぎて、フィリングひいては冷菓の食感が損なわれる。したがって、冷菓用フィリングでは、常温以上で使用されるフィリングとは異なる特性が要求される。
従前検討されてきた冷菓用フィリングとしては、例えば下記のような例がある。
・不飽和脂肪酸中に占める多価不飽和脂肪酸の割合が、60%以上の油脂に対してトリ飽和脂肪酸グリセリドを0.15~4.5重量%含有することを特徴とするフィリング用油脂組成物を使用した油性ソース(特許文献1)。
・-20℃で流動性を有する油脂を20~35重量%含有する冷菓用塩味系フィリング(特許文献2)。
・特定量の粉乳を含有する低水分活性のアイスクリーム用ソース(特許文献3)。
・特定の組成と物理特性を有する油脂を含有する冷菓用の水中油型エマルジョン(特許文献4)。
また、冷菓の味や外観に変化を与える手法として、コーティングソースで冷菓を被覆する手法(例えば特許文献5)もある。
特開2002-020785号公報 特開2014-198033号公報 特開2012-100569号公報 特開平7-087895号公報 特開2019-107014号公報
近年、冷菓の用途や消費者の嗜好に応じて、油脂を含む様々な種類の冷菓用フィリングがある中、ソフトでなめらかな食感を呈する油脂を含む冷菓用フィリングが好まれる場合がある。また、冷菓において、喫食した際に口の中で適度にゆっくりと溶け広がる油脂の口どけ感(以下、単に「口どけ」ともいう。)も、冷菓用フィリングおよび冷菓のおいしさに影響を与える重要な特性である。
このような観点からみると、例えば、特許文献1および2の冷菓用フィリングでは、冷凍温度域で流動性を示す油脂が使用されており、そのような冷菓用フィリングを含む冷菓を喫食しても、喫食する前からフィリング中の油脂が液状であるため、油脂のソフトでなめらかな食感および良好な口どけは得られにくい。また、特許文献3および4には、主に、氷結晶を含むフィリングの食感や外観の改善を目的とした冷菓用フィリングが開示されており、油脂自体の食感および口どけについては特段検討されていない。さらに、特許文献5の発明は、コーティングチョコレートの固化性の高さ、被覆後の乾き時間の短さ、および、ひび割れの抑制といった課題の解決を図るものであり、仮に、そのようなチョコレートを冷菓用フィリングとして使用しても、ソフトでなめらかな食感および良好な口どけは得られない。
そこで、冷菓用フィリングに使用される油脂組成物において、ソフトでなめらかな食感および良好な口どけを両立することができれば、消費者に冷菓の新しいおいしさを提供することができる。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、冷菓用フィリングに使用される油脂組成物であって、ソフトでなめらかな食感および良好な口どけを両立する油脂組成物の提供を目的とする。また、本発明は、上記油脂組成物を含む冷菓用フィリングおよび複合冷菓の提供を目的とする。
上記課題は、油脂組成物中の油相が、特定のトリグリセリド組成と特定の構成脂肪酸組成を有し、かつ、特定範囲のSFCを有するように、油相の結晶多形を制御することにより、解決できた。具体的には、以下の手段<1>により、好ましくは<2>以降の手段により、上記課題は解決された。
<1>
以下の条件(a)~(d)を満たすフィリング用油脂組成物;
(a)油脂組成物中の油相のトリグリセリド組成において、CN50~58のトリグリセリドの含量が、20~97質量%である;
(b)油相の構成脂肪酸組成において、多価不飽和脂肪酸の含量が8~45質量%である;
(c)10℃における油相のSFCが4~20%であり、かつ0℃における油相のSFCが8~30%である;
(d)油相の構成脂肪酸組成において、炭素数18の飽和脂肪酸の含量に対する炭素数16の飽和脂肪酸の含量の質量比が、0.05~5である。
<2>
さらに次の条件(e)を満たす、<1>に記載の油脂組成物;
(e)油相の構成脂肪酸組成において、不飽和脂肪酸の含量に対する飽和脂肪酸の含量の質量比が、0.1~0.4である。
<3>
さらに次の条件(f)を満たす、<1>または<2>に記載の油脂組成物;
(f)油相のトリグリセリド組成において、CN34~38のトリグリセリドの含量に対するCN50~58のトリグリセリドの含量の質量比が、40~100である。
<4>
ノーテンパリング型である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の油脂組成物。
<5>
<1>~<4>のいずれか1つに記載の油脂組成物を含有する冷菓用フィリング。
<6>
油相全体の質量に対し3~20質量%のカカオ脂を含有する、<5>に記載の冷菓用フィリング。
<7>
<5>または<6>に記載の冷菓用フィリングと冷菓を含む複合冷菓。
本発明のフィリング用油脂組成物により、フィリング用油脂組成物がチルド温度域または冷凍温度域にあっても、油脂組成物のソフトでなめらかな食感および良好な口どけを両立することができる。
<冷菓用フィリングに使用される油脂組成物(フィリング用油脂組成物)>
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明のフィリング用油脂組成物は、以下の条件(a)~(d)を満たす;
(a)油脂組成物中の油相のトリグリセリド組成において、CN50~58のトリグリセリドの含量が、20~97質量%である;
(b)油相の構成脂肪酸組成において、多価不飽和脂肪酸の含量が8~45質量%である;
(c)10℃における油相のSFCが4~20%であり、かつ0℃における油相のSFCが8~30%である;
(d)油相の構成脂肪酸組成において、炭素数18の飽和脂肪酸の含量に対する炭素数16の飽和脂肪酸の含量の質量比が、0.05~5である。
なお、本明細書において、「トリグリセリド組成」は、油相に含まれるトリグリセリドの種類に基づいた構成割合を意味し、「構成脂肪酸組成」は、グリセリドを構成する脂肪酸(より具体的には、脂肪酸残基。以下同様とする。)の種類に基づいた構成割合を意味する。また、トリグリセリドについて、「CN」は、トリグリセリドの構成脂肪酸中の炭素数(或いは炭素原子数)の合計を意味する。したがって、上記の「CN50~58のトリグリセリド」は、構成脂肪酸の炭素数の合計が50~58個であるトリグリセリドを意味し、他の数値を有する場合にも同様とする。また、SFCは、固体脂含量(Solid fat contents)を意味する。「多価不飽和脂肪酸」は、二価以上(つまり、二重結合が2つ以上)の不飽和脂肪酸を意味する。
本発明のフィリング用油脂組成物が上記のような構成を有することにより、フィリング用油脂組成物がチルド温度域または冷凍温度域(以下、単に「チルド温度域以下」ともいう。)にあっても、油脂組成物のソフトでなめらかな食感および良好な口どけ(以下、単に「良好な食感および口どけ」ともいう。)を両立することができる。
この理由は、定かではないが、次のように推定できる。
油脂の食感の要因の1つは、喫食する際の油脂の結晶状態であると考えられる。つまり、油脂の結晶状態において、硬い結晶の割合が多ければ、油脂は硬い食感を示すようになり、軟らかい結晶の割合が多ければ、油脂は軟らかい食感を示すようになると考えられる。油脂の結晶状態は、トリグリセリドの種類、さらには構成脂肪酸の炭素数や炭素鎖の構造(飽和か不飽和か)等によって変化するところ、本発明において、上記(a)~(d)の要件が満たされることによって、チルド温度域以下において適度に軟らかい結晶状態が実現されたと考えられる。
また、油脂の口どけの要因の1つは、喫食から嚥下までの口中において、結晶状態の油脂が溶けていくという物理状態の変化であると考えられる。したがって、チルド温度域以下において油脂中の結晶量が過度に少なく、油脂が流動性を示すような場合には、上記物理状態の変化が生じないか或いは少ないため、喫食者は、その変化を知覚しにくく、良好な口どけを得にくいと考えられる。一方、チルド温度域以下において油脂中の結晶量が過度に多い場合には、口中に油脂結晶が残存しやすくなるため、喫食者は良好な口どけを得にくいと考えられる。所定温度における結晶量や物理状態の変化のしやすさも、トリグリセリドの種類、さらには構成脂肪酸の炭素数や炭素鎖の構造(飽和か不飽和か)等によって変化するところ、本発明において、上記(a)~(d)の要件が満たされることによって、チルド温度域以下において、適度に溶けやすい結晶状態が実現されたと考えられる。
また、本発明のフィリング用油脂組成物は、上記(a)~(d)の要件が、より好ましい範囲に調整された場合に、油脂ひいては冷菓用フィリングや冷菓の風味および匙どおりも改善するという効果も奏する。その理由は定かではないが、風味については、油脂結晶の溶けやすさの改善に伴い、油脂中の風味成分が発現しやすくなったためと考えられ、匙どおりについては、油脂結晶の硬さの改善に伴い、スナップ性が低下したためと考えられる。なお、本発明における「匙どおり」とは、-10℃以下の冷菓に対するアイスクリームスクープやスプーン等の匙の通りやすさを意味する。このときの匙の材質は、汎用的なスプーンや薬匙などで使用される金属とし、匙の温度は大気温(23~25℃)程度とする。
以下、本発明のフィリング用油脂組成物の構成ごとに詳細に説明する。
<<条件(a)>>
本発明のフィリング用油脂組成物は、その油相のトリグリセリド組成において、CN50~58のトリグリセリドの含量が20~97質量%である。本発明では、CN50~58のトリグリセリドの含量が上記範囲内にあることにより、本発明の油脂組成物ひいては冷菓用フィリングや冷菓において、ソフトでなめらかな食感および良好な口どけを両立することができる。CN50~58のトリグリセリドは、一般的な油脂において、比較的炭素数が多いトリグリセリド表す。したがって、CN50~58のトリグリセリドの含量が、20質量%以上であることにより、相対的にCNの値の小さなトリグリセリドの量が増加することを防ぎ、油脂が軟らかすぎる物性となることを防ぐことができる。また、CN50~58のトリグリセリドの含量が、97質量%以下であることにより、油脂が硬すぎる物性となることを防ぐことができる。
CN50~58のトリグリセリドの含量は、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、38質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、53質量%以上であることがさらに好ましい。また、CN50~58のトリグリセリドの含量は、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、94質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、86質量%以下であることがさらに好ましい。また、CN50~58のトリグリセリドの含量がより好ましい上記範囲にあることにより、油脂ひいては冷菓用フィリングや冷菓の風味および匙どおりも改善する。
CN50~58のトリグリセリドにおいて、炭素数が50~58であれば、トリグリセリドの種類、つまり構成脂肪酸の組み合わせは、特に限定されない。CN50~58のトリグリセリドは、1種類のトリグリセリドからなってもよいが、通常は、複数種類のトリグリセリドから構成される。CN50~58のトリグリセリドについて、3つの構成脂肪酸の炭素数の好ましい組み合わせは、例えば、[16,16,18](50)、[16,18,18](52)、[18,18,18](54)、[16,18,20](54)、[18,18,20](56)、[16,18,22](56)および[18,18,22](58)等である。ここで、角括弧内の数値は、トリグリセリド上の1位~3位の任意の位置に対応する構成脂肪酸中の炭素数をそれぞれ表し、丸括弧内の数値は、構成脂肪酸中の炭素数の合計を表す。
CN50~58のトリグリセリドにおいて、構成脂肪酸のそれぞれは、上記(b)から(d)の条件を満たす範囲で、飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもよい。いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、CN50~58のトリグリセリドは、不飽和脂肪酸を少なくとも1種含むことが好ましく、C18:1脂肪酸およびC18:2脂肪酸の少なくとも1種を含むことがより好ましく、その両方を含むことがさらに好ましい。なお、「C18:1」といった記載において、左側は脂肪酸中の炭素数を表し、右側は脂肪酸中の二重結合の数を表す。具体的には、「C18:1脂肪酸」は、炭素数が18で二重結合を1つ有する脂肪酸を意味し、他の数値を有する場合にも同様とする。
<<条件(b)>>
本発明のフィリング用油脂組成物は、その油相の構成脂肪酸組成において、多価不飽和脂肪酸の含量が8~45質量%である。本発明では、多価不飽和脂肪酸の含量が上記範囲内にあることにより、本発明の油脂組成物ひいては冷菓用フィリングや冷菓において、ソフトでなめらかな食感および良好な口どけを両立することができる。一般に油脂において、多価不飽和脂肪酸の含量が多いほど、油脂の融点が低くなり油脂が軟らかな物性を有しやすくなる。したがって、多価不飽和脂肪酸の含量が、8質量%以上であることにより、油脂が硬すぎる物性となることを防ぐことができる。また、多価不飽和脂肪酸の含量が、45質量%以下であることにより、油脂が軟らかすぎる物性となることを防ぐことができる。
多価不飽和脂肪酸の含量は、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、9質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、多価不飽和脂肪酸の含量は、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、35質量%以下であることが好ましく、27質量%以下であることがより好ましい。また、多価不飽和脂肪酸の含量がより好ましい上記範囲にあることにより、油脂ひいては冷菓用フィリングや冷菓の風味および匙どおりも改善する。
いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、油相の構成脂肪酸組成において、C18:2の二価不飽和脂肪酸の含量は、8~30質量%であることが好ましい。そして、C18:2の二価不飽和脂肪酸の含量は、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、9質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、C18:2の二価不飽和脂肪酸の含量は、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、油相の構成脂肪酸組成において、C18:3の三価不飽和脂肪酸の含量は、1~15質量%であることが好ましい。C18:3の三価不飽和脂肪酸の含量は、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。また、C18:3の三価不飽和脂肪酸の含量は、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。
いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、C18:2の二価不飽和脂肪酸の含量に対するC18:1の一価不飽和脂肪酸の含量の質量比(以下、単に「O/L比」と記載する場合がある。)は、2.5~7.0であることが好ましい。そして、O/L比は、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、3.0以上であることがより好ましく、4.0以上であることがさらに好ましい。また、O/L比は、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、6.0以下であることがより好ましく、5.0以下であることがさらに好ましい。
<<条件(c)>>
本発明のフィリング用油脂組成物は、10℃における油相のSFCが4~20%であり、かつ0℃における油相のSFCが8~30%である。本発明において、油相の各温度におけるSFCが、それぞれ上記範囲内にあることにより、本発明の油脂組成物ひいては冷菓用フィリングや冷菓において、ソフトでなめらかな食感および良好な口どけを両立することができる。
10℃における油相のSFCは、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、6%以上であることが好ましく、8%以上であることがより好ましく、また、18%以下であることが好ましく、17%以下であることがより好ましい。0℃における油相のSFCは、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、また、28%以下であることが好ましく、27%以下であることがより好ましい。さらに、油相の各温度におけるSFCがより好ましい上記範囲にあることにより、油脂ひいては冷菓用フィリングや冷菓の風味および匙どおりも改善する。
本発明において、SFCの値は、AOCS official methodのcd16b-93に記載のパルスNMR(ダイレクト法)にて、測定対象となる試料(油脂又は油脂組成物)のSFCを測定した後、測定値を油相量に換算した値である。即ち、水相を含まない試料を測定した場合は、測定値がそのままSFCとなり、水相を含む試料を測定した場合は、測定値を油相量に換算した値をSFCとする。
<<条件(d)>>
本発明のフィリング用油脂組成物は、油相の構成脂肪酸組成において、炭素数18の飽和脂肪酸の含量に対する炭素数16の飽和脂肪酸の含量の質量比(以下、単に「P/St比」と記載する場合がある。)は、0.05~5である。本発明において、P/St比が、上記範囲内にあることにより、本発明の油脂組成物ひいては冷菓用フィリングや冷菓において、ソフトでなめらかな食感および良好な口どけを両立することができる。
P/St比は、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、0.1以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましく、0.2以上であることが特に好ましい。また、P/St比は、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、3.5以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.0以下であることが特に好ましい。さらに、P/St比がより好ましい上記範囲にあることにより、油脂ひいては冷菓用フィリングや冷菓の風味および匙どおりも改善する。
油脂ひいては冷菓用フィリングや冷菓のより良好な匙どおりを得る観点から、油相の構成脂肪酸組成において、炭素数16の飽和脂肪酸の含量は、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。炭素数16の飽和脂肪酸の含量は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上でも3質量%以上でもよい。さらに、油脂ひいては冷菓用フィリングや冷菓のより良好な食感と良好な匙どおりを両立する観点から、油相の構成脂肪酸組成において、炭素数18の飽和脂肪酸の含量は、28質量%以下であることが好ましく、22質量%以下であることがより好ましく、18質量%以下であることがさらに好ましい。炭素数18の飽和脂肪酸の含量は、5質量%以上であることが好ましく、6質量%以上でも7質量%以上でもよい。
本発明のフィリング用油脂組成物は、上記条件(a)~(d)に加えて、下記の条件(e)および条件(f)の少なくとも1つを満たすことが好ましく、条件(e)および条件(f)の両方を満たすことがさらに好ましい。これにより、とりわけ良好な食感、口どけ、風味および匙どおりを有する油脂ひいては冷菓用フィリングや冷菓を得ることができる。
(e)油相の構成脂肪酸組成において、不飽和脂肪酸の含量に対する飽和脂肪酸の含量の質量比が、0.1~0.4である。
(f)油相のトリグリセリド組成において、CN34~38のトリグリセリドの含量に対するCN50~58のトリグリセリドの含量の質量比が、40~100である。
<<条件(e)>>
上記のとおり、本発明のフィリング用油脂組成物では、油相の構成脂肪酸組成において、不飽和脂肪酸の含量に対する飽和脂肪酸の含量の質量比(以下、単に「S/U比」と記載する場合がある。)は、0.1~0.4であることが好ましい。本発明において、S/U比が、上記範囲内にあることにより、とりわけ良好な食感、口どけ、風味および匙どおりを有する油脂ひいては冷菓用フィリングや冷菓を得ることができる。一般に油脂において、不飽和脂肪酸の含量が多いほど、油脂の融点が低くなり油脂が軟らかな物性を有しやすくなる。したがって、S/U比が上記範囲内にあることにより、油脂の適切な軟らかさが実現できると考えられる。
S/U比は、いっそう良好な食感等を得る観点から、0.20以上であることが好ましく、0.25以上であることがより好ましい。また、S/U比は、いっそう良好な食感等を得る観点から、0.37以下であることが好ましく、0.35以下であることがより好ましい。
いっそう良好な食感等を得る観点から、油相の構成脂肪酸組成において、飽和脂肪酸の含量は、10~35質量%であることが好ましい。飽和脂肪酸の含量は、12質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。また、飽和脂肪酸の含量は、30質量%以下であることが好ましく、27質量%以下であることがより好ましい。
<<条件(f)>>
上記のとおり、本発明のフィリング用油脂組成物では、油相のトリグリセリド組成において、CN34~38のトリグリセリドの含量に対するCN50~58のトリグリセリドの含量の質量比(以下、単に「CN50~58/CN34~38比」と記載する場合がある。)は、40~100であることが好ましい。本発明において、CN50~58/CN34~38比が、上記範囲内にあることにより、とりわけ良好な食感、口どけ、風味および匙どおりを有する油脂ひいては冷菓用フィリングや冷菓を得ることができる。これは、CN50~58/CN34~38比が、40以上であることにより油脂が軟らかすぎる物性となることを防ぎ、100以下であることにより油脂が硬すぎる物性となることを防ぐことができるためと考えられる。
CN50~58/CN34~38比は、いっそう良好な食感等を得る観点から、50以上であることが好ましく、60以上であることがより好ましい。また、CN50~58/CN34~38比は、いっそう良好な食感等を得る観点から、90以下であることが好ましく、80以下であることがより好ましい。
本発明のフィリング用油脂組成物において、より良好な食感および口どけを実現しつつ、良好な匙どおりを得る観点から、CN34~38のトリグリセリドの含量は、5質量%以下であることが好ましい。また、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、CN34~38のトリグリセリドの含量は、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。CN34~38のトリグリセリドの含量は0質量%でもよく、1質量%程度でもよい。
<<その他の特性>>
いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、油相の構成脂肪酸組成において、一価不飽和脂肪酸の含量は、25~75質量%であることが好ましい。一価不飽和脂肪酸の含量は、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることが特に好ましい。また、一価不飽和脂肪酸の含量は、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。
いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、油相の構成脂肪酸組成において、C18:1の一価不飽和脂肪酸の含量は、25~70質量%であることが好ましい。C18:1の一価不飽和脂肪酸の含量は、30質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以上であることが特に好ましい。また、C18:1の一価不飽和脂肪酸の含量は、67質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。
いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、油相の構成脂肪酸組成において、炭素数20以上の飽和脂肪酸の含量は、0.3~15質量%であることが好ましい。炭素数20以上の飽和脂肪酸の含量は、0.5質量%以上であることが好ましく、0.7質量%以上であることがより好ましい。また、炭素数20以上の飽和脂肪酸の含量は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
本発明のフィリング用油脂組成物は、実質的にトランス脂肪酸を含まないことが好ましい。ここでいう「実質的にトランス脂肪酸を含まない」とは、油相中、構成脂肪酸組成において、トランス脂肪酸の含量が、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下であることを意味する。
実質的にトランス脂肪酸を含まないことが好ましい理由は、次のとおりである。水素添加は、油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、水素添加油脂は、完全水素添加油脂を除いて、通常、トランス脂肪酸が10~50質量%程度含まれている。一方、天然油脂中にはトランス脂肪酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。したがって、近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス脂肪酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものが要求されている。
<<油脂>>
本発明のフィリング用油脂組成物は、主成分として油脂を含む。いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、フィリング用油脂組成物において、油脂の含量は、70~100質量%であることが好ましい。油脂の含量は、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、85質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以上でもよい。また、油脂の含量は、98質量%以下、97質量%以下および96質量%以下のいずれでもよい。
まず、本発明のフィリング用油脂組成物に使用することができる油脂について述べる。本発明のフィリング用油脂組成物に使用できる油脂は、フィリング用油脂組成物の油相が、上記条件(a)~(d)を少なくとも満たす範囲において、特に制限されず、公知の油脂を使用できる。油脂は、植物油脂でもよく、動物油脂でもよいが、植物油脂であることが好ましい。本発明のフィリング用油脂組成物に使用できる油脂は、例えば、大豆油、菜種油(キャノーラ油、ハイエルシン菜種油なども含む。)、パーム油、パーム核油、ヒマワリ油(ハイオレイックヒマワリ油なども含む。)、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、ゴマ油、紅花油(ハイオレイック紅花油なども含む。)、カポック油、月見草油、カラシ油、ヤシ油、マンゴ脂、カカオ脂、シア脂、サル脂、乳脂、牛脂、豚脂、魚油および鯨油等の各種油脂である。また、例えばハイオレイック種のヒマワリ油や紅花油のように、構成脂肪酸組成において特定の脂肪酸種が多く含まれる油脂も、使用できる。本発明のフィリング用油脂組成物において、原料となる油脂は、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、綿実油およびオリーブ油の少なくとも1種であることが好ましく、大豆油および菜種油の少なくとも1種であることがより好ましい。また、本発明のフィリング用油脂組成物において、水素添加、分別およびエステル交換等の物理的又は化学的処理のうち1種または2種以上の処理を、上記油脂を含む原料に施して得られる油脂を使用することもより好ましい。なお、そのような処理(特にエステル交換)の原料の一つとして、脂肪酸エステルを使用することもできる。使用できる脂肪酸エステルの例としては、例えばステアリン酸エチルを挙げることができる。
特に、良好な食感および口どけを容易に両立する観点から、本発明のフィリング用油脂組成物の原料油脂として、下記の油脂(A)と油脂(B)の混合油脂、油脂(A)と油脂(C)の混合油脂または油脂(A)と油脂(D)の混合油脂を使用することが好ましく、油脂(A)と油脂(B)の混合油脂または油脂(A)と油脂(C)の混合油脂を使用することがより好ましく、油脂(A)と油脂(B)の混合油脂を使用することがさらに好ましい。
・油脂(A)液状油(下記B~Dに該当する油脂を除く。)。
・油脂(B)カカオ脂の分別軟部油、シア脂の分別軟部油、サル脂の分別軟部油、および、1,3-位置特異性を有するリパーゼを用いてハイオレイックヒマワリ油とステアリン酸エチルをエステル交換することにより得られるエステル交換油の分別軟部油(以下、単に「ハイオレイックヒマワリ油由来のエステル交換分別軟部油」ともいう。)から選択される少なくとも1種の油脂。
・油脂(C)液状油と極度硬化油の混合油をランダムエステル交換して得られるランダムエステル交換油脂であって、SFCが、0℃で5~25%であり、10℃で1~20%であるランダムエステル交換油脂。
・油脂(D)構成脂肪酸組成において、オレイン酸を45~80質量%、炭素数20~22の脂肪酸を5~25質量%含有し、構成脂肪酸組成における不飽和脂肪酸の含量に対するオレイン酸の含量の質量比(以下、単に「O/U比」と記載する場合がある。)が0.80以上である、ランダムエステル交換油脂。
<<<油脂(A)>>>
油脂(A)は、上記のとおり、液状油である。ただし、油脂(B)~(D)に該当する油脂は、油脂(A)から除かれる。本発明において、「液状油」とは、30℃で液状である油脂を意味する。液状油の融点は、20℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましい。油脂(A)として、例えば大豆油、菜種油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、ゴマ油、紅花油等、30℃で液状である油脂を使用できる。また、油脂(A)として、30℃で固体の油脂(例えばパーム油、パーム核油、ヤシ油、マンゴ脂、乳脂、牛脂、豚脂、魚油および鯨油等)を分別することで得られた軟部油であって30℃で液状である油脂を使用することもできる。油脂(A)は、上記した油脂から選択される1種のみの油脂であってもよく、上記した油脂から選択される2種以上の混合油脂であってもよい。本発明において、よりソフトでなめらかな食感およびより良好な口どけを得る観点から、油脂(A)は、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、米油、ゴマ油および紅花油の中から選択される少なくとも1種の油脂であることが好ましく、大豆油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックヒマワリ油、米油、ゴマ油およびハイオレイック紅花油の中から選択される少なくとも1種の油脂であることがより好ましく、大豆油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックヒマワリ油およびハイオレイック紅花油の中から選択される少なくとも1種の油脂であることがさらに好ましい。
油脂(A)の0℃におけるSFCは、好ましくは0~3%である。このSFCの上限は、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。油脂(A)の10℃におけるSFCは、好ましくは0~3%である。このSFCの上限は、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。油脂(A)の20℃におけるSFCは、好ましくは0~3%である。このSFCの上限は、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。
<<<油脂(B)>>>
油脂(B)は、上記のとおり、カカオ脂の分別軟部油、シア脂の分別軟部油、サル脂の分別軟部油、および、ハイオレイックヒマワリ油由来のエステル交換分別軟部油から選択される少なくとも1種の油脂である。「分別軟部油」とは、分別により高融点油脂を分離除去して得られた低融点油脂を意味する。油脂(B)は、カカオ脂の分別軟部油、シア脂の分別軟部油、サル脂の分別軟部油、および、ハイオレイックヒマワリ油由来のエステル交換分別軟部油のうち、1種のみからなる油脂でもよく、2種以上の混合油脂でもよい。油脂(B)は、その一部または全部が液状油でない油脂でもよいが、良好な食感および口どけをより容易に両立する観点から、その全部が液状油であることが好ましい。
カカオ脂、シア脂、サル脂から分別軟部油を得る際の分別方法は、特に限定されず、公知の方法が使用できる。そのような方法としては、例えば、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、および、晶析等の無溶剤分別などがある。分別は必要に応じて複数回行ってもよく、各回の分別条件を変えてもよい。また、溶剤分別と無溶剤分別を組み合わせてもよい。
また、ハイオレイックヒマワリ油由来のエステル交換分別軟部油は、ハイオレイックヒマワリ油とステアリン酸エチルとを、前者:後者で好ましくは1:2~2:1の質量比で混合したものに、1,3-位置特異性を有するリパーゼを加えて常法によりエステル交換し、上述したような公知の方法で分別することにより得られる。
本発明において、カカオ脂の分別軟部油、シア脂の分別軟部油、サル脂の分別軟部油、および、ハイオレイックヒマワリ油由来のエステル交換分別軟部油それぞれのヨウ素価数は、40以上であることが好ましく、50~75であることが好ましい。
油脂(B)の種類は、用途や嗜好に応じて、適宜選択されることも好ましい。例えば、本発明のフィリング用油脂組成物が、チョコレートやココアといったカカオ由来の風味を有する冷菓用フィリングに用いられる場合には、油脂(B)として、カカオ脂、シア脂およびサル脂のいずれの分別軟部油を使用してもよい。また、例えば、本発明のフィリング用油脂組成物が、ミルク風味、抹茶風味および果実の風味等、カカオ由来の風味以外の風味を有する冷菓用フィリングに用いられる場合には、油脂(B)として、シア脂の分別軟部油、および、ハイオレイックヒマワリ油由来のエステル交換分別軟部油を使用することが好ましい。
なお、本発明のフィリング用油脂組成物の原料油脂として、カカオ脂の分別軟部油を使用する場合には、そのカカオ脂の分別軟部油は、後述の風味付け用のカカオ脂としては扱わない。
油脂(B)の0℃におけるSFCは、好ましくは35~65%である。このSFCの下限は、より好ましくは40%以上であり、さらに好ましくは45%以上である。このSFCの上限は、より好ましくは60%以下であり、さらに好ましくは55%以下である。油脂(B)の10℃におけるSFCは、好ましくは15~45%である。このSFCの下限は、より好ましくは20%以上であり、さらに好ましくは25%以上である。このSFCの上限は、より好ましくは40%以下であり、さらに好ましくは35%以下である。油脂(B)の20℃におけるSFCは、好ましくは5~30%である。このSFCの下限は、より好ましくは8%以上であり、さらに好ましくは10%以上である。このSFCの上限は、より好ましくは25%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。油脂(B)の30℃におけるSFCは、好ましくは0~4%であり、より好ましくは0~3%であり、さらに好ましくは0~2%である。油脂(B)の40℃におけるSFCは、好ましくは0~2%であり、より好ましくは0~1%であり、さらに好ましくは0%である。
<<<油脂(C)>>>
油脂(C)は、上記のとおり、液状油と極度硬化油の混合油脂(以下、「混合油脂(Cm)」と記載する場合がある。)をランダムエステル交換して得られるランダムエステル交換油脂であって、SFCが、0℃で5~25%であり、10℃で1~20%であるランダムエステル交換油脂である。油脂(C)の0℃におけるSFCは、7%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、また、20%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。油脂(C)の10℃におけるSFCは、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、また、18%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましい。油脂(C)の20℃におけるSFCは、1~5%であることが好ましく、1~4%であることがより好ましく、1~3%であることがさらに好ましい。油脂(C)の30℃におけるSFCは、0~4%であることが好ましく、0~3%であることがより好ましく、0~2%であることがさらに好ましい。油脂(C)の40℃におけるSFCは、0~2%であることが好ましく、0~1%であることがより好ましく、0%であることがさらに好ましい。
混合油脂(Cm)の作製に使用できる液状油は、特に制限されず、種々の液状油を使用できる。そのような液状油は、例えば大豆油、菜種油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、ゴマ油および紅花油等、30℃で液状である油脂であり、さらには、30℃で固体の油脂(例えばパーム油、パーム核油、ヤシ油、マンゴ脂、カカオ脂、シア脂、サル脂、乳脂、牛脂、豚脂、魚油および鯨油等)を分別することで得られた軟部油であって30℃で液状である油脂を使用することもできる。また、水素添加、分別およびエステル交換等の物理的又は化学的処理のうち1種または2種以上の処理を上記油脂に施した油脂も、得られる加工油脂が30℃で液状である範囲内において、上記液状油として使用することができる。本発明においては、これらの液状油を単独で用いることもでき、または2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、例えばハイオレイック種のヒマワリ油や紅花油のように、構成脂肪酸組成において特定の脂肪酸種が多く含まれる液状油も使用できる。
本発明のフィリング用油脂組成物において、混合油脂(Cm)の作製に使用できる液状油は、大豆油、菜種油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、紅花油、ヒマワリ油であることが好ましく、菜種油であることがより好ましく、キャノーラ油であることがさらに好ましい。
混合油脂(Cm)の作製に使用できる上記極度硬化油は、油脂に水添を実施することで固形化させた油脂であれば、特に制限されず、種々の公知の油脂が使用できる。上記極度硬化油は、例えば、食用油脂に対し、ヨウ素価が例えば5以下(好ましくは2以下、より好ましくは1以下)となるまで水素添加することによって得られる水素添加油脂などである。水素添加に用いる食用油脂は、例えば、30℃で液状の油脂(液状油)および30℃で固体の油脂の他、水素添加、分別およびエステル交換等の物理的又は化学的処理のうち1種または2種以上の処理をそれらの油脂に施した油脂でもよい。ここで、30℃で液状の油脂(液状油)および30℃で固体の油脂はそれぞれ、混合油脂(Cm)の作製に使用できる液状油の説明の中で示した液状油および30℃で固体の油脂と同様である。水素添加に用いる上記食用油脂は、1種単独の油脂でもよく、2種以上の混合油脂でもよい。また、上記極度硬化油は、1種単独の油脂でもよく、2種以上の混合油脂でもよい。
本発明では、上記極度硬化油において、炭素数16の飽和脂肪酸の含量は、10~35質量%であることが好ましい。また、炭素数16の飽和脂肪酸の含量は、15質量%以上であることが好ましく、25質量%以下であることが好ましい。さらに、炭素数20以上の飽和脂肪酸の含量は、15~50質量%であることが好ましい。また、炭素数20以上の飽和脂肪酸の含量は、25質量%以上であることが好ましく、45質量%以下であることが好ましい。炭素数16および20以上の各飽和脂肪酸の含量が、上記範囲内にあることにより、より良好な口どけおよび匙どおりを示す油脂が得られる。
上記特定の脂肪酸比を有する極度硬化油を得る方法は、特に限定されないが、例えば、次のような方法がある。
・炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂の極度硬化油と、炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂の極度硬化油とを混合する方法。
・炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂と炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂との混合油脂を水素添加により極度硬化油とする方法。
炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂は、例えば、パーム油、または、パーム油に水素添加、分別およびエステル交換等の物理的又は化学的処理のうち1種または2種以上の処理を施した油脂である。炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂は、特に、パーム油またはパーム油の分別硬部油であることが好ましい。また、炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂は、例えば、ハイエルシン菜種油およびカラシ油、ならびに、これらの油脂に対し水素添加、分別およびエステル交換等の物理的又は化学的処理のうち1種または2種以上の処理を施した油脂である。炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂は、特に、ハイエルシン菜種油であることが好ましい。
本発明では、液状油と極度硬化油を含む混合油脂(Cm)において、より良好な食感および口どけを得る観点から、極度硬化油の配合割合が、5~35質量%であることが好ましい。また、この配合割合の下限は、10質量%以上であることが好ましく、12質量%以上であることがより好ましい。この配合割合の上限は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。極度硬化油の配合割合が5質量%以上であることにより、より良好な口どけおよび匙どおりが得られやすくなり、35質量%以下であることにより、より良好な食感および口どけが得られやすくなる。
また、混合油脂(Cm)のエステル交換の反応は、ランダムエステル交換反応であれば、特に制限されず、常法に従って行うことができる。そのような反応を得るための方法は、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよい。上記化学的触媒は、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒であることが好ましい。また、上記酵素は、位置選択性のない酵素、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼであることが好ましい。なお、上記のようなリパーゼは、ケイ藻土およびセラミック等の担体に又はイオン交換樹脂に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもでき、粉末の形態で用いることもできる。
<<<油脂(D)>>>
油脂(D)は、上記のとおり、構成脂肪酸組成において、オレイン酸を45~80質量%、炭素数20~22の脂肪酸を5~25質量%含有し、不飽和脂肪酸の含量に対するオレイン酸の含量の質量比(O/U比)が0.80以上である、ランダムエステル交換油脂である。
油脂(D)中の構成脂肪酸組成において、オレイン酸の含量の下限は、47質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。また、オレイン酸の含量の上限は、75質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。油脂(D)中の構成脂肪酸組成において、炭素数20~22の脂肪酸の含量の下限は、7質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、炭素数20~22の脂肪酸の含量の上限は、22質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
さらに、より良好な食感を得る観点から、油脂(D)中の構成脂肪酸組成において、O/U比は、0.85以上であることが好ましく、0.87以上であることがより好ましい。また、O/U比の上限は、0.95以下であることが実際的であり、0.93以下でもよい。
油脂(D)中の構成脂肪酸組成において、オレイン酸の含量、炭素数20~22の脂肪酸の含量、及びO/U比が、それぞれ上記範囲内にあるエステル交換油脂を用いることにより、より良好な食感および口どけが得られ、かつ、風味もより向上する。さらに、上記要件を満たすとともに、油脂(D)中のトリグリセリド組成において、BO2(モノベヘニルジオレオイルグリセロール)の含量は、7~25質量%であることが好ましい。これにより、匙どおりもより向上する。また、BO2の含量は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以下であることが好ましい。
油脂(D)は、構成脂肪酸中にオレイン酸を多く含有する油脂と、構成脂肪酸中に炭素数20~22の脂肪酸を多く含有する油脂との混合油脂(以下、「混合油脂(Dm)」と記載する場合がある。)をランダムエステル交換することによって得ることができる。
上記のオレイン酸を多く含有する油脂は、特に制限されず、例えば、30℃で液状の油脂(液状油)および30℃で固体の油脂の他、水素添加、分別およびエステル交換等の物理的又は化学的処理のうち1種または2種以上の処理をそれらの油脂に施した油脂でもよい。なお、分別処理を施す場合には、分別軟部油を選択することが好ましい。ここで、30℃で液状の油脂(液状油)および30℃で固体の油脂はそれぞれ、混合油脂(Cm)の作製に使用できる液状油の説明の中で示した液状油および30℃で固体の油脂と同様である。上記のオレイン酸を多く含有する油脂は、1種単独の油脂でもよく、2種以上の混合油脂でもよい。
構成脂肪酸中にオレイン酸を多く含有する油脂としては、構成脂肪酸組成においてオレイン酸を70質量%以上含有する油脂を選択することが好ましく、オレイン酸を75質量%以上含有する油脂を選択することがより好ましい。構成脂肪酸中にオレイン酸を多く含有する油脂は、具体的には、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイック紅花油、ハイオレイックキャノーラ油、及びそれらの加工油脂から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記の炭素数20~22の脂肪酸を多く含有する油脂としては、ハイエルシン菜種油、魚油、サル脂、カラシ油、および、これらの油脂に水素添加、分別およびエステル交換等の物理的又は化学的処理のうち1種または2種以上の処理を施した油脂を選択することが好ましい。
混合油脂(Dm)のランダムエステル交換方法は、特に限定されず、例えば混合油脂(Cm)のエステル交換方法と同様の方法により行うことができる。エステル交換によって得られる油脂(D)において、ヨウ素価は55以上であることが好ましく、57以上であることがより好ましく、59以上であることがさらに好ましい。
油脂(D)において、0℃におけるSFCは、好ましくは10~40%である。このSFCの下限は、より好ましくは15%以上であり、さらに好ましくは21%以上である。このSFCの上限は、より好ましくは39%以下であり、さらに好ましくは38%以下である。油脂(D)において、10℃におけるSFCは、好ましくは5~35%である。このSFCの下限は、より好ましくは10%以上であり、さらに好ましくは20%以上である。このSFCの上限は、より好ましくは33%以下であり、さらに好ましくは30%以下である。油脂(D)において、20℃におけるSFCは、好ましくは5~25%である。このSFCの下限は、より好ましくは8%以上であり、さらに好ましくは10%以上である。このSFCの上限は、より好ましくは21%以下であり、さらに好ましくは18%以下である。油脂(D)の30℃におけるSFCは、好ましくは0~4%であり、より好ましくは0~3%であり、さらに好ましくは0~2%である。油脂(D)の40℃におけるSFCは、好ましくは0~2%であり、より好ましくは0~1%であり、さらに好ましくは0%である。
<<<油脂(A)~(D)の配合比率>>>
本発明のフィリング用油脂組成物において、油脂(A)と油脂(B)~(D)のいずれかとの質量比率は、上記条件(a)~(d)を満たす範囲で任意の割合で混合することができる。また、上記質量比率は、いっそう良好な食感および口どけを得る観点から、前者対後者の表示で、20~80:80~20であることが好ましく、35~65:65~35であることがより好ましい。
<<その他の成分>>
本発明のフィリング用油脂組成物は、上記した油脂以外に、その他の成分を含んでもよい。以下、その他の成分について述べる。本発明のフィリング用油脂組成物に含有させることのできるその他の成分としては、特に制限されず、例えば次のような材料があり、それらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
・水、乳化剤。
・食塩や塩化カリウム等の塩味剤。
・クエン酸、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料。
・糖類や糖アルコール類。
・乳や乳製品。
・ステビア、アスパルテーム等の甘味料。
・β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料。
・トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤。
・小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白。
・卵及および各種卵加工品。
・増粘安定剤、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤等の他の食品添加物。
・果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材。
フィリング用油脂組成物において、上記その他の成分のうち水以外の成分の含量は、油脂の用途等に応じて適宜調整可能であり、例えば0~20質量%である。この含量の上限は、15質量%以下でもよく、10質量%以下でもよい。なお、成分が複数ある場合には、それらの合計量が上記範囲内にあることが好ましい。
<<フィリング用油脂組成物の形態>>
本発明のフィリング用油脂組成物の形態について述べる。本発明のフィリング用油脂組成物の形態は特に限定はされないが、可塑性を有することが好ましく、その形態は、フィリング用油脂組成物が作る油相および水相を含有するマーガリンタイプとすることも、水相を含有しないショートニングタイプとすることもできる。より良好な食感および口どけを得る観点から、本発明のフィリング用油脂組成物は、水相を含有しない形態であることが好ましい。
本発明のフィリング用油脂組成物が水相を含む場合には、水の含量は、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。また、この場合、水の含有量は、1質量%程度でも、5質量%程度でもよい。
また、フィリング用油脂組成物が乳化物である場合には、より良好な食感および口どけを得る観点から、その乳化形態は、連続層が油相である形態が好ましく、油中水型及び二重乳化型のいずれかであることがさらに好ましい。
本発明のフィリング用油脂組成物において、油相の含量は、75質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。この油相の含量の上限は、100質量%であるが、99質量%以下でも、98質量%以下でもよい。
本発明のフィリング用油脂組成物は、ノーテンパリング型であることが好ましい。これにより、作業性が向上し、かつ、油脂組成物ひいては冷菓用フィリングおよび冷菓の保存性が向上する。ノーテンパリング型の油脂組成物は、当該技術分野における常法によって得ることができる。例えば、油脂組成物中のS2U型のトリグリセリド(2つの飽和脂肪酸Sおよび1つの不飽和脂肪酸Uを含むトリグリセリド)において、SUS型(対称型)トリグリセリドの割合を減少させ、SSU型(非対称型)トリグリセリドの割合を増加させることにより、油脂組成物はノーテンパリング型となりやすい。
<フィリング用油脂組成物の製造方法>
次に、本発明のフィリング用油脂組成物の製造方法について述べる。本発明のフィリング用油脂組成物は、少なくとも上記条件(a)~(d)を満たす油相を調製した後、必要に応じ、水等の他の成分を添加して乳化し、冷却し、結晶化させることにより製造される。
詳しくは、先ず、少なくとも上記条件(a)~(d)を満たすことができるように、各種油脂を1種または2種以上選択して、加熱溶解し、混合および撹拌を行うことにより、油相を調製する。なお、油溶性のその他の成分については、必要により油相に含有させることができる。また、必要に応じて、水に水溶性のその他の成分を添加した水相を調製した後、この水相を油相に添加し、これを乳化してもよい。
次に、油相および必要に応じて水相を含む原料に殺菌処理を行うことが好ましい。殺菌方法は、特に限定されず、タンクでのバッチ式でもよく、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でもよい。
次に、原料を冷却し、必要により可塑化する。本発明において、冷却条件は、好ましくは0.5℃/分以上、さらに好ましくは5℃/分以上とする。冷却に用いる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組み合わせ等が挙げられる。
なお、本発明のフィリング用油脂組成物を製造する際のいずれかの製造工程で、任意に、窒素および空気等をフィリング用油脂組成物に含気させることができる。これにより、例えば、油性ソース(チョコレート等)に用いられるクリームタイプのフィリング(バタークリームおよびシュガークリーム等)を製造した場合に、より食感が柔らかくなり、かつ、より良好な口どけが得られやすくなるという効果が得られる。
<フィリング用油脂組成物の用途>
上記のようにして得られたフィリング用油脂組成物は、油脂を使用する任意の飲食品に使用することが出来る。本発明のフィリング用油脂組成物が適用される飲食品としては、例えば、マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド、風味ファットスプレッド、ホイップクリーム、ドレッシング、マヨネーズ等の油脂加工食品をはじめ、チョコレート、和菓子、パン、カレー、シチュー、グラタン、調味料、即席調理食品、畜産加工品、水産加工品、野菜加工品等を挙げることができる。また、本発明のフィリング用油脂組成物は、これらを適当な条件で冷凍して得られる冷凍食品を製造する際にも好適に使用される。
特に、本発明のフィリング用油脂組成物は、チルド温度域または冷凍温度域であっても、油脂組成物のソフトでなめらかな食感および良好な口どけが得られるという特徴を有する。したがって、本発明のフィリング用油脂組成物は、その特徴から、品温がチルド温度域または冷凍温度域で喫食されるような飲食品について好適に使用され、特に冷菓用フィリングに対して好ましく用いられる。冷菓用フィリングの詳細については後述する。
また、本発明のフィリング用油脂組成物は、可塑性を有するため、コーティングチョコレート等のように、冷菓を被覆する用途で使用してもよい。しかしながら、本発明のフィリング用油脂組成物は、条件(特に油相の構造)によっては、液だれが生じやすく、また、乾きにくいという形態を成すこともある。そのため、冷菓を被覆する用途で本発明のフィリング用油脂組成物を使用する場合には、可塑性の調整に留意する必要がある。
<冷菓用フィリング>
以下、本発明の冷菓用フィリングについて述べる。
本発明の冷菓用フィリングは、上記のようにして得られた本発明のフィリング用油脂組成物を用いて製造され、その結果として本発明のフィリング用油脂組成物を含有する。冷菓用フィリングとは、冷菓に用いられるフィリングを意味し、例えば、冷菓でサンドする用途や、冷菓にトッピングする用途、冷菓に分散する用途、冷菓に折り込む用途、および、冷菓に充填・注入する用途に用いられる。冷菓は、チルド温度域または冷凍温度域で、製造、保管および喫食等される菓子である。チルド温度域および冷凍温度域の解釈は様々であるが、概ね、チルド温度域は-1℃~10℃または0℃~5℃の範囲であり、冷凍温度域は、-10℃以下、-18℃以下または-20℃以下の範囲である。なお、冷凍温度域の下限は、特に制限されないが、例えば-30℃程度である。冷菓用フィリングは、冷菓の製造から喫食までの流れの少なくとも一部の期間にチルド温度域以下に置かれる。本発明の冷菓用フィリングは本発明のフィリング用油脂組成物を含有するため、そのような状況下であっても、油脂組成物のソフトでなめらかな食感および良好な口どけを両立することができる。
また、本発明の冷菓用フィリングは、可塑性を有するため、コーティングチョコレート等のように、冷菓を被覆する用途で使用してもよい。しかしながら、本発明の冷菓用フィリングは、条件(特に油相の構造)によっては、液だれが生じやすく、また、乾きにくいという形態を成すこともある。そのため、冷菓を被覆する用途で本発明の冷菓用フィリングを使用する場合には、可塑性の調整に留意する必要がある。
本発明において冷菓とは、主として、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓(アイスキャンディ等)、セミフレッドケーキ、冷凍ケーキ、冷凍パン、冷凍パイ、冷凍クッキー、アイス最中、アイスコーン等の冷やして食される菓子を意味し、冷凍パイ生地、冷凍パン生地、冷凍クッキー生地等の冷凍ベーカリー生地自体も含む意味である。
<<冷菓用フィリングに使用される油脂>>
本発明の冷菓用フィリングは、上記のとおり油脂として、上記において説明した本発明のフィリング用油脂組成物を含む。また、本発明の冷菓用フィリングは、本発明のフィリング用油脂組成物以外の油脂(以下、単に「その他の油脂」ともいう。)を含んでもよい。その他の油脂の詳細については後述する。そして、本発明のフィリング用油脂組成物、そのようなその他の油脂、および、油脂に溶解している他の成分が、全体として冷菓用フィリング中の油相を構成する。
本発明の冷菓用フィリングにおいて、油脂全体の含量は、特に制限されず、冷菓用フィリングに求める味、食感、風味および物性等によって適宜調製される。特に、より良好な食感および口どけを有する冷菓用フィリングを得る観点から、油脂全体の含量は、冷菓用フィリングの質量に対し20~90質量%であることが好ましい。この含量の下限は、25質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましい。また、この含量の上限は、85質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。なお、後述する冷菓用フィリングに用いられるその他の原料が油脂を含む場合には、そのような油脂を含めた油脂全体の含量が、上記の範囲にあることが好ましい。
また、冷菓用フィリング中の上記フィリング用油脂組成物の含量は、特に制限されず、冷菓用フィリングに求める味、食感、風味および物性等によって適宜調製される。特に、より良好な食感および口どけを有する冷菓用フィリングを得る観点から、本発明の上記フィリング用油脂組成物の含量は、冷菓用フィリング中の油脂全体の質量に対し70~100質量%であることが好ましい。この含量の下限は、75質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。また、この含量の上限は、95質量%以下でもよく、90質量%以下でもよい。また、上記フィリング用油脂組成物の含量が上記範囲内であることにより、副原料として含有させた風味成分の風味(例えば、乳風味、抹茶風味およびカカオ風味等)の発現性もより改善し、風味が感じられやすくなる。
本発明の冷菓用フィリングは、風味、外観および物性等に変化を与えることを目的として、上記のとおり、その他の油脂を含むことができる。その他の油脂としては、特に制限されず、一般に風味付け等のために使用される油脂(例えばカカオ脂および乳脂など)を使用できる。例えば、従来の風味(チョコレート風味など)付き冷菓用フィリングやソースでは、油脂を多くすると硬くなりやすいため、油脂を含む風味成分(ココアパウダーなど)の添加量は色味付け程度が限度であり、風味を強くすることが難しかった。しかしながら、本発明のフィリング用油脂組成物を使用した場合には、そのような風味成分を多く含んでも硬くなりにくいので、風味の良好な冷菓用フィリングを製造することができる。このように、本発明の冷菓用フィリングは、従来のものに比べ、良好な食感および口どけを両立しながら、その他の油脂を高濃度に含有できるという利点もある。本発明の冷菓用フィリングにおいて、その他の油脂の含量は、冷菓用フィリングに求める味、食感、風味および物性等によって、冷菓用フィリング中のフィリング用油脂組成物の含量との関係で適宜調製される。
例えば、本発明の冷菓用フィリングにおいて、冷菓用フィリングに急峻な口どけを付与する観点や、冷菓用フィリングにチョコレート風味(カカオ由来の風味)を強める観点等から、カカオ脂を含有させることができる。本発明の冷菓用フィリングが、その他の油脂としてカカオ脂を含有する場合には、より良好な食感および口どけを両立する観点から、カカオ脂の含量は、冷菓用フィリング中の油脂全体の質量に対し、3~20質量%であることが好ましい。この含量の下限は、5質量%以上であることがより好ましく、8質量%以上であることがさらに好ましい。また、この含量の上限は、17質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。カカオ脂の含量が油脂全体の質量に対し3質量%以上であることにより、カカオ脂を含有させた効果がより発揮される。また、カカオ脂の含量が油脂全体の質量に対し20質量%以下であることにより、得られる冷菓用フィリングの物性が固くなり良好な匙どおりが得られにくくなること、および、スナップ性が高まって冷菓との食感の差異が大きくなってしまい、冷菓と冷菓用フィリングとを一体として喫食することが難しくなること等の問題を防止しやすくなる。
<<冷菓用フィリングに関するその他の構成>>
次に、本発明の冷菓用フィリングの油脂以外の構成について述べる。
本発明の冷菓用フィリングの種類は、冷菓に用いることができるものであれば特に限定されず、例えば、油性ソース、バタークリーム、シュガークリーム、フラワーペースト、ホイップクリーム等をあげることができる。
本発明の冷菓用フィリングが、乳化物の形態をとる場合は、油中水型乳化物であってもよく、水中油型乳化物であってもよく、二重乳化物等の多重乳化物であってもよい。氷結晶により食感が損なわれやすいため、乳化物の形態は、連続相が油相である形態が好ましく、油中水型乳化物であることがより好ましく、連続層が油相であって水相を含まないものがさらに好ましい。上記の冷菓用フィリングの種類のうち、連続相が油相であって油中水型乳化物であるものとしては、例えばバタークリームがあり、連続層が油相であって水相を含まないものとしては、例えば油性ソースやシュガークリームがある。
なお、本発明において油性ソースとは、上記のフィリング用油脂組成物に甘味料や固形風味材を加え、必要に応じて乳化剤を混合し、均一になるまで撹拌を行い、冷却を行うことにより得られるものである。
甘味料、乳化剤としては後述のその他原料のうちから、適当なものを任意に選択することができる。特に、甘味料は、例えばショ糖、麦芽糖、ブドウ糖、粉飴、果糖、乳糖、トレハロース等である。
固形風味材としては、例えば全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、バターミルクパウダー、チーズパウダー等の乳製品、ココアパウダー、調整ココアパウダー、カカオマス、カカオニブ等のカカオ原料、抹茶その他の茶粉末、コーヒー粉末、果汁や果実の粉末等の、食品原料から水分を除いたものを粉体や粒体としたものを挙げることができる。
なお、本発明の冷菓用フィリングが水分を含む場合において、後述のその他原料中の水分も合わせて、冷菓用フィリング中の水分含量は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。この水分含量の下限は、例えば3質量%以上であることが実際的であり、5質量%以上でもよい。
本発明の冷菓用フィリングは、上記のフィリング用油脂組成物の他、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲において、一般にフィリングに用いられるその他原料を含有することができる。
本発明の冷菓用フィリングに用いられるその他の原料は、例えば次のような材料があり、それらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
・水、乳化剤。
・食塩や塩化カリウム等の塩味剤。
・酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料。
・糖類や糖アルコール類。
・乳や乳製品。
・甘味料。
・β-カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料。
・トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤。
・小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白。
・卵および各種卵加工品。
・澱粉類。
・増粘安定剤、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、酵素等の他の食品添加物。
・果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、香辛料抽出物、カカオマス、ココアパウダー、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材。
上記の乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム及びポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の天然乳化成分を挙げることができる。また、乳化剤としては、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
なお、本発明の冷菓用フィリングに乳化剤を含有させる場合においては、その含量は、0.05~1質量%であることが好ましく、0.1~0.5質量%であることがより好ましい。
上記の乳や乳製品としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム、クリームパウダー、サワークリーム、乳清蛋白質、ホエイ、ホエイパウダー、脱乳糖ホエイ、脱乳糖ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物(WPC及び/又はWPI)、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、バターミルク、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、ヨーグルト、乳酸菌飲料、乳飲料、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエイプロテインコンセートレート、トータルミルクプロテイン及び乳清ミネラル等が挙げられる。また、本発明ではこれらの乳製品の中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
本発明の冷菓用フィリング中、乳や乳製品の総量の好ましい量は、固形分量として、0.1~10質量%であり、0.1~7質量%であることがさらに好ましい。
上記の甘味料としては、上白糖、グラニュー糖、粉糖、蔗糖、液糖、はちみつ、ブドウ糖、果糖、黒糖、麦芽糖、乳糖、シクロデキストリン、酵素糖化水飴、酸糖化水飴、還元澱粉糖化物、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、キシロース、トレハロース、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、アラビノース、パラチノースオリゴ糖、アガロオリゴ糖、キチンオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ヘミセルロース、モラセス、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、カップリングシュガー、ラフィノース、ラクチュロース、テアンデオリゴ糖、ゲンチオリゴ糖、高甘味度甘味料が挙げられる。また、甘味料としては、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることが出来る。
上記の卵及び各種卵加工品としては、全卵、卵黄、卵白、加塩全卵、加塩卵黄、加塩卵白、加糖全卵、加糖卵黄、加糖卵白、乾燥全卵、乾燥卵黄、乾燥卵白、凍結全卵、凍結卵黄、凍結卵白、凍結加塩全卵、凍結加塩卵黄、凍結加塩卵白、凍結加糖全卵、凍結加糖卵黄、凍結加糖卵白、酵素処理全卵、酵素処理卵黄などを用いることができる。また、卵及び各種卵加工品としては、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記澱粉類としては、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、タピオカ、馬鈴薯、甘藷、小麦、米、豆などの澱粉、これらの澱粉を原料とし、エステル化、エーテル化、架橋化、α化、熱処理等の化学的、物理的処理を施したもの、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉等の小麦粉類、ライ麦粉、米粉等のその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉等の堅果粉等があげられる。また、澱粉類としては、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられる。また、増粘安定剤としては、これらの中から選ばれた1種または2種以上を用いることができる。
<冷菓用フィリングの製造方法>
次に冷菓用フィリングの製造方法について、冷菓用フィリングの好ましい態様である油性ソースとシュガークリームについて述べる。
先ず、油性ソースの製造方法について述べる。
具体的には、先ず上記のフィリング用油脂組成物を溶解させた後、甘味料や固形風味材、必要に応じて乳化剤等を加えて、均一になるように撹拌し、50~70℃に加熱しながら、15~90分間撹拌を行う。
撹拌により得られた混合物をそのまま冷却し、油性ソースとすることもできるが、良好な食感や口どけを有する油性ソースを得る観点から、この混合物を、冷却するより前に、さらに微細化工程(ロール)、精錬工程(コンチング)に付することが好ましい。
この後、微細化工程、精錬工程に付された混合物に対して、必要に応じてテンパリング操作を行った後、常温まで冷却し、油性ソースを得ることができる。なお、各工程の条件は、チョコレートを製造する際の条件に従って、設定することができる。
次に、シュガークリームの製造方法について述べる。
具体的には、上記のフィリング用油脂組成物に甘味料を添加しクリーミングする方法、あるいはクリーミングした本発明のフィリング用油脂組成物に甘味料を添加する方法などが挙げられる。
なお、その他の原料を使用する場合はその添加時期は甘味料同様、クリーミング前であってもクリーミング後であってもよい。また、クリーミングの際に0℃以下となるように冷却したフィリング用油脂組成物を使用することが好ましく、クリーミングの際、品温が5℃以下となるように冷却しながら行うことが好ましい。
<複合冷菓>
次に、本発明の複合冷菓について述べる。本発明の複合冷菓とは、本発明の冷菓用フィリングと、冷菓が組み合わさったものである。複合させる冷菓については特に限定されず、市販の冷菓に対して複合させることもできる。特に、本発明の冷菓用フィリングが良好な食感や口どけを有しているという特徴を活かす観点から、本発明の冷菓用フィリングと、アイスクリームやアイスキャンディとを複合させることが好ましい。
本発明の複合冷菓における複合方法の例としては、例えばカップに入った冷菓に本発明の冷菓用フィリングを重層する方法、冷菓と混練する方法、冷菓の内部に充填する方法、冷菓の表面にトッピングする方法などが挙げられる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の範囲は、以下に示す具体例に限定されるものではない。
<原材料>
実施例で使用した油脂の詳細は以下のとおりである。各油脂を単に油脂A-1のように略して記載することがある。
(油脂A-1)
菜種油。上記の油脂(A)に相当する。
(油脂A-2)
大豆油。上記の油脂(A)に相当する。
(油脂B-1)
シア脂の分別軟部油(ヨウ素価65)。上記の油脂(B)に相当する。
(油脂C-1)
以下に述べる手法で得られたランダムエステル交換油脂。上記の油脂(C)に相当する。
菜種油83質量部、ヨウ素価が3以下となるまで水素添加を行ったパーム油の極度硬化油7質量部、同様に水素添加を行ったハイエルシンナタネ油の極度硬化油10質量部をそれぞれ加熱溶解した状態で混合して、油脂配合物を得た。次に、この油脂配合物に対して、ナトリウムメトキシドを触媒として、ランダムエステル交換反応を行った。この後、常法に従って、漂白(白土量は対油3質量%、処理温度85℃)及び脱臭(250℃、60分間、吹込み水蒸気量は対油5質量%)の精製処理を行い、ランダムエステル交換油脂である油脂C-1を得た。
(油脂D-1)
以下に述べる手法で得られたランダムエステル交換油脂。上記の油脂(D)に相当する。
ヨウ素価が3以下となるまで水素添加を行い、極度硬化油としたハイエルシン菜種油30質量部、ハイオレイックヒマワリ油(構成脂肪酸組成中のオレイン酸量が86.3質量%)70質量部を、それぞれ加熱溶解した状態で混合して、油脂配合物を得た。次に、この油脂配合物に対し、ナトリウムメトキシドを触媒として用い常法に従ってランダムエステル交換反応を行った。この後、常法に従って、漂白(白土量は対油3質量%、処理温度85℃)及び脱臭(250℃、60分間、吹込み水蒸気量は対油5質量%)の精製処理を行い、ランダムエステル交換油脂である油脂D-1を得た。
(油脂E-1)
以下に述べる手法で得られたランダムエステル交換油脂。
ヨウ素価が60のパームスーパーオレイン100質量部に対し、油脂C-1の製造と同様に常法に従って、ナトリウムメトキシドを触媒とするランダムエステル交換反応、漂白・脱臭の精製処理を行い、ランダムエステル交換油脂である油脂E-1(ヨウ素価65)を得た。
<フィリング用油脂組成物の製造>
表1~3に示す配合で、加温融解した原料油脂を混合し、均一になるように撹拌した後、-30℃/分で急冷可塑化させて、水相を含まず、ノーテンパリング型のフィリング用油脂組成物(比較例1~9、実施例1~10)をそれぞれ製造した。原料油脂について表中の値は質量部表示である。各フィリング用油脂組成物の分析値については、表1~3に示した。
フィリング用油脂組成物中のトリグリセリド組成および各成分の含量は、日本油化学会制定の「基準油脂分析試験法2.4.6.2-2013(トリアシルグリセリン組成)」に従い、高速液体クロマトグラフ法によって測定した。また、フィリング用油脂組成物中の構成脂肪酸組成および各成分の含量は、日本油化学会制定の「基準油脂分析試験法2.4.2.3-2013」や「基準油脂分析試験法2.4.4.3-2013」を参考に、キャピラリーガスクロマトグラフ法により測定した。
<冷菓用フィリングの製造>
上記のようにして得られた各フィリング用油脂組成物(比較例1~9および実施例1~10)を使用して、油性ソースの形態をとる冷菓用フィリングを製造した。具体的には、各フィリング用油脂組成物45質量部、砂糖39.07質量部、カカオマス(油分含量55質量部)6質量部、ココアパウダー(油分含量11質量部)9.5質量部、香料(バニリン)0.03質量部、レシチン0.4質量部を加えて65℃に加熱しながら30分混練し、これをロール掛けして、コンチングし、油性ソースを得た。得られた油性ソースの評価は以下のとおり行った。
<効果の評価法>
上記のようにして得られた油性ソースを、カップに充填したバニラアイスの上に5mm厚となるように重層し、本発明の複合冷菓を調製し、これを冷凍庫に保存した。これを3日後に取り出して、以下の評価基準で、フィリング用油脂組成物、冷菓用フィリングおよび冷菓について、ソフト性(噛みだしの食感)、口どけ、風味および匙どおりの4点から評価を行った。
ソフト性、口どけ、風味の食味に関する官能評価は、12名のパネラーにより実施した。評価に先立ち、事前にパネラー間で各点数に対応する官能の程度をすり合わせた。
また、匙どおりの評価基準については、専門のパネラーによる試験により評価を行った。
評価基準は下記のとおりである。評価結果を表1~3に示した。食味に関する官能評価の結果は、12名のパネラーの合計点に応じて、[54~60点:+++、44~53点:++、36~43点:+、18~35点:-、0~17点:--]として、表3に示した。「ソフト性」および「口どけ」の両方の項目において、プラス記号「+」が1つ以上であれば、本発明の課題達成レベルと言える。
<<ソフト性の評価基準>>
5点:可塑性のある良好なソフト性の噛みだしであった。
3点:やや良好なソフト性の噛みだしであった。
1点:可塑性に乏しく不良な噛みだしであった。
0点:過度なソフト性を有しているため、または、スナップ性を有しているために、不良な食感であった。
<<口どけの評価基準>>
5点:ゆっくりとなめらかに溶解し、極めて良好であった。
3点:なめらかに溶解し、良好であった。
1点:急峻な口どけであるため、やや不良であった。
0点:なかなか溶解しないために、口どけが悪く、不良であった。
<<風味の評価基準>>
5点:コクのある濃厚な風味がラストに感じられ、極めて良好であった。
3点:コクのある風味がラストに感じられ、良好であった。
1点:ラストに、僅かにコクのある風味が感じられるものの、やや不良であった。
0点:ラストに、僅かなコク味しか感じられず、もしくはコク味が感じられず、不良であった。
<<匙どおりの評価基準>>
5点:匙どおりが非常によい。
3点:匙どおりがよい。
1点:やや硬くて匙が通りにくい、または、やや軟らかくて手ごたえが薄い。
0点:硬くて匙が通らない、または、軟らかくて手ごたえがない。
Figure 0007515269000001
Figure 0007515269000002
Figure 0007515269000003
<評価結果>
上記実施例および比較例の結果から、本発明のフィリング用油脂組成物によれば、フィリング用油脂組成物がチルド温度域または冷凍温度域にあっても、油脂組成物ひいては冷菓用フィリングおよび冷菓のソフトでなめらかな食感および良好な口どけを両立できることが分かった。また、油相の構成を調整することにより、良好な食感および口どけに加えて、風味および匙どおりも改善することが分かった。

Claims (5)

  1. 以下の条件(a)~(d)および(f)を満たす冷菓用フィリング用の油脂組成物;
    (a)油脂組成物中の油相のトリグリセリド組成において、CN50~58のトリグリセリドの含量が、20~97質量%である;
    (b)前記油相の構成脂肪酸組成において、多価不飽和脂肪酸の含量が8~45質量%である;
    (c)10℃における前記油相のSFCが4~20%であり、かつ0℃における前記油相のSFCが8~30%である;
    (d)前記油相の構成脂肪酸組成において、炭素数18の飽和脂肪酸の含量に対する炭素数16の飽和脂肪酸の含量の質量比が、0.05~5である
    (f)前記油相のトリグリセリド組成において、CN34~38のトリグリセリドの含量に対するCN50~58のトリグリセリドの含量の質量比が、40~100である。
  2. さらに次の条件(e)を満たす、請求項1に記載の油脂組成物;
    (e)前記油相の構成脂肪酸組成において、不飽和脂肪酸の含量に対する飽和脂肪酸の含量の質量比が、0.1~0.4である。
  3. 請求項1または2に記載の油脂組成物を含有する冷菓用フィリング。
  4. 油相全体の質量に対し3~20質量%のカカオ脂を含有する、請求項3に記載の冷菓用フィリング。
  5. 請求項3または4に記載の冷菓用フィリングと冷菓を含む複合冷菓。
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