JP7063633B2 - 冷やして食べる焼菓子用油脂組成物 - Google Patents

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本発明は、冷蔵・冷凍して食べても美味しい焼菓子用油脂組成物、該油脂組成物を含有する焼菓子生地、及び該焼菓子生地を焼成して得られる、冷やして食べる焼菓子に関する。
消費者の嗜好の多様化から、これまでにないジャンルのベーカリー製品が次々と登場するようになり、新しい食感を付与した製品や、意外性のある素材を組合せた製品が販売されている。近年では、通常は常温で食べるベーカリー製品を0~10℃程度のチルド条件で保存して食べるパン(チルドパン)が登場し人気を博している。ベーカリー製品の冷蔵保存は、澱粉質の老化が最も進行しやすい条件として敬遠されていたものであったため、チルドパンは驚きとともに受け入れられ、現在では一つの新しいジャンルを形成しつつある。冷凍条件下で食べるベーカリー製品として、これまで、例えば下記のようなベーカリー製品が提案がされている。
焼成して得られたパンに生クリームを入れ、生クリームの凍結が70分以内に完了するよう常温から急冷する工程を含む、冷凍パンの製造方法(特許文献1)。
油脂成分として-10℃以下で流動性を有する油脂組成物を用いた冷凍パン(特許文献2)。
一方、クッキー等の焼菓子においても、夏の長期化や気温上昇に伴い、室温だけでなく冷蔵・冷凍下で更に美味しく食べることのできる製品が販売され注目を集めている。焼菓子はパン等の焼菓子ベーカリーに比べて油脂の配合量が多く、使用する油脂の硬さの影響を受けやすいため、通常の焼菓子に使用されている油脂を使用した場合は冷蔵・冷凍下では菓子が硬くなりすぎてしまい、喫食時に菓子として好まれる食感は失われてしまう。そのため、室温から冷蔵・冷凍下という幅広い温度域で良好な食感を有するようにするには課題が多く残されている。
また、一般に焼菓子では歯切れの良さと口中で粉れた焼菓子が短時間のうちに広がっていくこと、即ち口どけの良さとが求められる。焼菓子を冷蔵以下で保存した場合、組織が結着し、口どけが悪くなりやすい。焼菓子の食感が硬くなりすぎないよう単に液状油を増やしただけでは、焼菓子がねちゃつきや油性感の強いものとなってしまったり、焼成条件によっては油浮きが生じ製造ラインを汚してしまう場合がある他、油分が抜けたパサついた食感となってしまうという問題もあった。このように、冷やして食べる焼菓子は新しいジャンルとして期待されるものの、課題が多く残されているのが現状である。
特開平7-92号公報 特開平6-276919号公報
従って、本発明の課題は、冷蔵・冷凍下において、良好な歯切れと、ねちゃつかない口どけの良さとを有する焼菓子を効率的に提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく種々検討した結果、特定の条件を満たす油脂組成物を用いることで、製造時の油浮きがなく、また冷蔵・冷凍下において、良好な歯切れとねちゃつかない口どけの良さを有する焼菓子が得られることを知見した。
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記の(a)~(c)を満たす、冷やして食べる焼菓子用油脂組成物を提供するものである。
(a)UUU型トリグリセリドの占める割合が50~80質量%(油相基準)
(b)SSS型トリグリセリドの占める割合が2~7質量%(油相基準)
(c)下記油脂Aの占める割合が5~30質量%(油相基準)

Uは炭素数16~22の不飽和脂肪酸残基を示し、
Sは炭素数16~22の飽和脂肪酸残基を示し、
UUU型トリグリセリドはUが3分子結合しているトリグリセリドを示し、
SSS型トリグリセリドは、Sが3分子結合しているトリグリセリドを示し、
油脂Aは10℃のSFC(固体脂含量)が5~45%であるランダムエステル交換油脂である。
本発明によれば、冷蔵・冷凍下において、良好な歯切れと、ねちゃつかない口どけの良さを有する焼菓子を得ることができる。
以下、本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物について詳述する。
本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物は、下記(a)~(c)を満たすものである。
(a)UUU型トリグリセリドの占める割合が50~80質量%(油相基準)
(b)SSS型トリグリセリドの占める割合が2~7質量%(油相基準)
(c)下記油脂Aの占める割合が5~30質量%(油相基準)
条件(a)ついて
本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物は、UUU型トリグリセリド(以下、UUUということもある。)の占める割合が、油相基準で、50~80質量%であり、好ましくは53~77質量%、より好ましくは55~75質量%である。ここで、Uは炭素数16~22の不飽和脂肪酸残基を示し、UUUはUが3分子結合しているトリグリセリドを示す。トリグリセリドに結合している3個のUは、炭素数16~22の不飽和脂肪酸残基である限り、同一である場合があり、異なっている場合がある。が本発明においてUUUの割合が50質量%よりも少ないと、最終的に得られる焼菓子の食感が硬いものとなってしまう。UUUが80質量%よりも多いと、最終的に得られる焼菓子の油性感が強くなったり、菓子生産時に油浮きが生じてしまい、製造上適さない油脂組成物となってしまう。
上記UUUで表されるトリグリセリドは、天然に存在するUUUで表されるトリグリセリドでも構わないし、天然に存在するUUUを分別してその純度を上げたものでも構わない。また、S(炭素数16~22の飽和脂肪酸残基)を含むトリグリセリドと脂肪酸及び/又は脂肪酸低級アルコールエステルに由来するU(炭素数16~22の不飽和脂肪酸残基)とをエステル交換し、更に蒸留や分別によりUUUで表されるトリグリセリドの純度を上げたもの等、どのような方法によって得られたものでも構わない。
条件(b)について
本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物は、SSS型トリグリセリド(以下、SSSということもある。)の占める割合が油相基準で2~7質量%であり、好ましくは2.5~6.5質量%、より好ましくは3~6質量%である。ここでSは炭素数16~22の飽和脂肪酸残基を示す、SSSはSが3分子結合しているトリグリセリドを示す。トリグリセリドに結合している3個のSは、炭素数16~22の飽和脂肪酸残基である限り、同一である場合があり、異なっている場合がある。
本発明においてSSSの割合が2質量%よりも少ないと、菓子生産時に油浮きが生じてしまい、製造上適さない油脂組成物となってしまう。また7質量%よりも大きいと、口中での粉れが悪く、良好な食感や口どけが得られなくなってしまう。
本発明においては、上記SSS型トリグリセリドのうち、その50質量%以上、好ましくは55質量%以上、より好ましくは60質量%以上が極度硬化油脂由来であることが好ましい。その上限は特に制限はなく、多いほど好ましい。
上記極度硬化油脂は、原料油脂に対し、ヨウ素価が好ましくは10以下、更に好ましくは5以下、最も好ましくは1未満となるまで水素添加し、実質的に構成成分である不飽和脂肪酸をほぼ完全に飽和することによって得られる油脂であって、その融点は、好ましくは50℃以上、より好ましくは55℃以上である。融点の上限は、特に制限されるものではないが、通常70℃程度である。
上記水素添加に用いる食用油脂としては、大豆油、菜種油(キャノーラ油)、ハイエルシン菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油、からし油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、サル脂、マンゴ脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の食用油脂、また、これらの油脂に対し水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することができる。本発明においては、上記水素添加に用いる油脂として、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を混合した混合油を用いることもできる。
また、上記極度硬化油脂としては、これらの油脂から上記のようにして得られた極度硬化油脂を更に分別した硬部油、或いは1種又は2種以上の極度硬化油脂をエステル交換したものを使用することもでき、また、極度硬化油脂と、飽和脂肪酸や、飽和脂肪酸を主体とする部分グリセリド等とをエステル交換したものを使用することもできる。本発明では、これら全てを極度硬化油脂として扱う。
本発明では、これらの極度硬化油脂のいずれかを単独で使用することができ、2種以上を併用することもできる。
本発明では、ハイエルシン菜種油の極度硬化油脂、魚油の極度硬化油脂等、長鎖脂肪酸を多く含む油脂を原料油脂とした極度硬化油脂が、本発明の効果をより引き出すことができる点で好ましく使用される。
冷やして食べる焼菓子用油脂組成物のトリグリセリド組成については、例えば逆相HPLCで行われるトリグリセリド分子種分析により分析することが可能である。この逆相HPLCは、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法2.4.6.2」に則って、任意の条件で実施することができ、例えば、次のような条件で測定することが可能である。
・検出部:示差屈折検出器
・カラム:ドコシルカラム(DCS)
・移動相:アセトン:アセトニトリル=65:35(体積比)
・流速:1ml/min
・カラム温度:40℃
・背圧:3.8MPa
本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物は、上記UUU型トリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、オレイン酸残基の占める割合が好ましくは75~95質量%(UUUを構成する脂肪酸残基基準)、より好ましくは77~93質量%、更に好ましくは80~90質量%である。オレイン酸残基が75質量%~95質量%であることで、本発明の効果、特に低温下で適度な食感でありながら過度な油性感を抑え、粉れのよい食感の焼菓子を得ることができる。
オレイン酸残基の占める割合の大きいUUU型を多く含む油脂としては、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックサフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂等の各種動植物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられ、これらの中から1種又は2種以上を使用することができるが、ハイオレイックヒマワリ油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックキャノーラ油を含有することが好ましい。
UUU型トリグリセリドにおけるオレイン酸残基の割合は、例えば、「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.4.2.3-2013」や「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.4.4.3-2013」を参考に、キャピラリーガスクロマトグラフ法により測定することができる。
条件(c)について
本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物は、10℃のSFC(固体脂含量)が5~45%であるランダムエステル交換油脂(以下、「油脂A」ということもある)を油相基準で5~30質量%含有することが必要であり、好ましくは7~27質量%、更に好ましくは10~25質量%含有する。油脂Aの含有量が5質量%未満であると本発明の効果、特に菓子生産時の油染み抑制効果を付与できなくなってしまう。また、油脂Aの含有量が30質量%超であると、低温時(特に冷凍)での食感が硬いものとなってしまう。尚、10℃でSFCが5~45%であるランダムエステル交換油脂を2種以上使用した場合には、その合計を上記ランダムエステル交換油脂(油脂A)の量とする。
本明細書において、SFCは次のようにして測定する。即ち、先ず、油脂(又は油相)を完全溶解する温度で30分保持して完全に融解した後、0℃に30分保持して固化させる。次いで、25℃に30分保持し、テンパリングを行い、その後、0℃に30分保持する。これをSFCの各測定温度に順次30分保持後、SFCを測定する。
上記油脂Aは、1種又は2種以上の油脂を含む油脂配合物(以下、1種の油脂の場合も含めて単に「油脂配合物」ということもある)をランダムエステル交換(非選択的エステル交換)して得られる油脂である。
前記油脂配合物に使用することのできる油脂としては、食用に使用可能な油脂であれば特に制限なく使用することができ、その代表例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂も用いることができ、更に、これらの食用油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。
上記油脂配合物のランダムエステル交換は、常法に従って行うことができ、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよい。
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記酵素としては、位置選択性のない酵素、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、ムコール(Mucor)属、ペニシリウム(Penicillium)属等に由来するリパーゼが挙げられる。尚、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土及びセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物は、上記油脂Aの一部として、下記(I)を満たす油脂X(以下、単に「油脂X」ということもある)を油脂A基準で10~60質量%含有することが好ましく、15~55質量%含有することがより好ましく、20~50質量%含有することが更に好ましい。油脂Xは、更に下記(II)も満たすことが好ましい。油脂Aが油脂Xを10~60質量%含有することで、本発明の効果、特に製造時の油浮きが抑えられ、また口溶けのよい焼菓子を最終的に得ることができる。
(I)10℃でSFCが10%未満である油脂と極度硬化油脂をランダムエステル交換したエステル交換油脂である。
(II)SFC(固体脂含量)が、0℃で10~25%、20℃で1~5%、40℃で0~2%である。
(I)について
上記10℃でSFCが10%未満である油脂としては、例えば大豆油、菜種油(キャノーラ油)、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ハイオレイックサフラワー油、ひまわり油、ハイオレイックひまわり油等が挙げられ、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の油脂を分別することで得られた軟部油であって、10℃でSFCが10%未満となる油脂も挙げられる。
上記極度硬化油脂としては、上記条件(b)で述べた極度硬化油脂と同様の油脂を挙げることができるが、上記条件(I)として用いる極度硬化油脂として、脂肪酸組成において、炭素数16の飽和脂肪酸含量が好ましくは10~35質量%、より好ましくは15~25質量%であり、且つ炭素数20以上の飽和脂肪酸含量が好ましくは15~50質量%、より好ましくは25~45質量%である極度硬化油脂を使用することが、菓子生産時の油染み抑制効果を付与できる点で好ましい。
上記特定の脂肪酸比を有する極度硬化油脂を得る方法としては、炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂の極度硬化油脂と、炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂の極度硬化油脂とを混合する方法や、炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂と炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂との混合油脂を水素添加により極度硬化油脂とする方法、更には、炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂と炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂とのエステル交換油脂を水素添加により極度硬化油脂とする方法が挙げられる。
上記炭素数16の脂肪酸を多く含有する油脂としては、パーム油、或いはパーム油に対し水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を挙げることができ、好ましくはパーム油及び/又はパーム分別硬部油を使用する。また、上記炭素数20以上の脂肪酸を多く含有する油脂としては、ハイエルシン菜種油、からし油、及びこれらの油脂に対し水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を挙げることができ、好ましくはハイエルシン菜種油を使用する。
上記油脂Xを得るためのエステル交換前の油脂配合物において、上記10℃でSFCが10未満である油脂と上記極度硬化油脂の配合割合は、良好な本発明の効果を得るためには、該油脂配合物における極度硬化油脂の配合割合が5~35質量%であることが好ましく、より好ましくは12~25質量%、更に好ましくは12~20質量%である(残部は全て10℃でSFCが10未満である油脂)。極度硬化油脂の配合割合が5質量%以上であると、得られるエステル交換油脂の融点が低すぎず、本発明の効果を一層高められ、一方、35質量%以下であると、得られるエステル交換油脂の融点が高くなりすぎず、ソフトな食感が得られるため好ましい。
(II)について
上記油脂Xは、SFC(固体脂含量)が0℃で10~25%、好ましくは10~20%であり、20℃で1~5%、好ましくは、1~4%であり、40℃で0~2%、好ましくは0~1%である。油脂XのSFCが上記範囲であることにより、油脂Xを含有する効果をより高めることができる。
本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物には、上記(a)~(c)を満たす限りにおいて、これまで述べていないその他の油脂を使用することができる。
また、本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物には、トランス脂肪酸を実質的に含有しないことが好ましい。ここで、「トランス脂肪酸を実質的に含有しない」とは、使用油脂の全構成脂肪酸中、トランス脂肪酸含量が好ましくは10質量%未満、更に好ましくは5質量%以下、最も好ましくは2質量%未満であることをいう。
水素添加は、油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、部分水素添加油脂は、通常構成脂肪酸中にトランス脂肪酸が10~50質量%程度含まれている。一方、天然油脂中にはトランス脂肪酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、上述のように、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス脂肪酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものも要求されている。
本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物に用いられる上記エステル交換油脂、及び上記極度硬化油脂は、トランス脂肪酸を実質的に含有しないため、その他の油脂に部分水素添加油脂を使用しないことにより、トランス脂肪酸を含まずとも適切なコンシステンシーを有する、油脂組成物とすることができる。
本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物における上記の他の油脂の配合量は、油脂組成物中に、油相基準で好ましくは0~50質量%、より好ましくは0~30質量%である。
尚、本明細書において「油相」とは、トリグリセリドの他、油溶性の成分もあわせたものとする。本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物における油相含量は、80~100質量%、好ましくは90~100質量%、より好ましくは99質量%~100質量%である。
本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物は、油相に使用する全ての油脂を配合してなる油脂配合物のSFCが10℃、20℃、30℃のいずれにおいても20%以下であることが、より幅広い製菓用途で適用できる点で好ましい。
本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物には、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、例えば、水、乳化剤、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、クエン酸、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、牛乳・練乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエイパウダー・バター・クリーム・ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・発酵乳等の乳や乳製品、蔗糖・液糖・はちみつ・ブドウ糖・麦芽糖・オリゴ糖・水飴・ソルビトール・還元水飴・モラセス等の糖類や糖アルコール類、デキストリン類、ステビア・アスパルテーム等の甘味料、β―カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
上記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、酵素処理レシチン、サポニン類等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記乳化剤の配合量は、特に制限はないが、本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物中、好ましくは0~3質量%、更に好ましくは0~1.5質量%である。
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記増粘安定剤の配合量は、特に制限はないが、本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物中、好ましくは0~10質量%、更に好ましくは0~5質量%である。
本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物において、上記その他の成分の使用量は、それらの成分の使用目的等に応じて適宜選択することができ、特に制限されるものではないが、好ましくは全油脂分100質量部に対して合計で50質量部以下とする。
次に、本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物の好ましい製造方法について説明する。
本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物は、下記の(a)~(c)の全てを満たす油相を溶解した後、冷却し、結晶化させることにより製造することができる。
(a)UUU型トリグリセリドの占める割合が50~80質量%(油相基準)
(b)SSS型トリグリセリドの占める割合が2~7質量%(油相基準)
(c)下記油脂Aの占める割合が5~30質量%(油相基準)
油脂A:10℃のSFC(固体脂含量)が5~45%であるランダムエステル交換油脂
具体的には、先ず、溶解した上記油相に、必要により水相を混合乳化する。そして次に殺菌処理するのが望ましい。殺菌方法はタンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。次に、上記油相(又は乳化物)を冷却し、結晶化させる。好ましくは冷却練り合わせし、結晶を均一にする。冷却条件は、好ましくは-0.5℃/分以上、更に好ましくは-5℃/分以上とする。この際、徐冷却より急速冷却の方が好ましい。冷却に用いる機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えばボテーター、コンピネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられ、また、開放型のダイアクーラーとコンプレクターの組合せが挙げられる。
尚、上記その他の成分を使用する場合は基本的には油溶性成分は油相に、水溶性成分は水相に添加して製造することができるが、その他の成分がダマになることを避ける等の目的で、水溶性成分を油相に分散させて製造することもでき、油溶性成分を水相に分散して製造することもできる。
また、本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物を製造する際のいずれかの工程で、窒素、空気等を含気させてもよいが、本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物は、気相を含有することにより粘度が高くなり、特に低温度域での流動性が失われるおそれがあることから、気相は含有させないことが好ましい。
次に、本発明の冷やして食べる焼菓子用生地について説明する。
本発明の冷やして食べる焼菓子用生地は、澱粉類、卵類、糖類等、通常の焼菓子生地に使用する原料を任意成分として含有するものであり、上記冷やして食べる焼菓子用油脂組成物を含有することを特徴とする。本発明の冷やして食べる焼菓子用油脂組成物の含有量は生地中に、好ましくは3~35質量%、より好ましくは5~30質量%、更に好ましくは7~27質量%である。
上記澱粉類としては、特に制限はなく、例えば、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉等の小麦粉類、ライ麦粉、米粉等のその他の穀粉類、アーモンド粉、へーゼルナッツ粉等の堅果粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉等の澱粉や、これらの澱粉をアミラーゼ等の酵素で処理したものや、α化処理、分解処理、エーテル化処理、エステル化処理、架橋処理、グラフト化処理等の中から選ばれた1種又は2種以上の処理を施した化工澱粉等が挙げられる。
上記澱粉類の含有量は、上記冷やして食べる焼菓子用生地中、0~50質量%が好ましく、5~35質量%がより好ましい。
上記卵類としては、全卵、卵黄、凍結全卵、凍結卵黄等が挙げられる。本発明では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上の卵類を用いることができる。
上記卵類の含有量は、上記冷やして食べる焼菓子用生地中、3~50質量%が好ましく、5~45質量%がより好ましい。
上記糖類としては、例えば上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、蔗糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、デキストリン、ステビア、アスパルテーム等の糖類が挙げられる。本発明では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上の糖類を用いることができる。
上記糖類の含有量は、上記冷やして食べる焼菓子用生地中、10~45質量%が好ましく、10~35質量%がより好ましい。
本発明の焼菓子生地は、上記澱粉類、油脂類、卵類、糖類に加え、イースト、イーストフード、乳製品、膨張剤、水、食塩、乳化剤、高粘度キサンタンガム以外の増粘安定剤、調味料、香辛料、着香料、着色料、ココア、チョコレート、ヨーグルト、チーズ、抹茶、紅茶、コーヒー、豆腐、黄な粉、豆類、野菜類、果実、果汁、ジャム、フルーツソース、果物、ハーブ、肉類、魚介類、保存料及び日持ち向上剤等の材料を適宜用いることができる。
上記乳製品としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、チーズ、濃縮ホエイ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、蛋白質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、乳酸菌飲料、乳飲料、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエイプロテインコンセートレート、トータルミルクプロテイン等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記乳製品の含有量は、上記冷やして食べる焼菓子用生地中、0~20質量%が好ましく、0~15質量%がより好ましい。
上記乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、乳脂肪球皮膜蛋白質等の合成乳化剤でない乳化剤が挙げられる。
上記乳化剤の含有量は、上記冷やして食べる焼菓子用生地中、0~3質量%が好ましく、0~1質量%がより好ましい。
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。しかしながら、本発明の焼菓子生地においては、これらの増粘安定剤を用いることで本発明の効果が減じられるおそれがあるため、用いないことが好ましい。
本発明の冷やして食べる焼菓子用生地における各種他の原料の配合比率は、特に制限なく通常の配合比率とすることができる。
焼菓子生地の製造方法としては、一般的な焼き菓子生地の製造方法と同様であり、例えば、油脂類に糖類を加えてクリーミングし、ここに、卵類、乳等を配合して混合後、小麦粉を軽く混合して製造されるシュガーバッター法や、油脂類に小麦粉を加えてクリーミングし、ここに、糖類、卵類、乳等を配合、混合して製造されるフラワーバッター法、或いは、オールインミックス法、卵白別立て法等によって得ることができる。
最後に、本発明の冷やして食べる焼菓子について述べる。
本発明の冷やして食べる焼菓子は、本発明の冷やして食べる焼菓子用生地を焼成してなるものである。本発明の冷やして食べる焼菓子用生地の焼成方法には特に制限はなく、公知の焼成方法を採用することができる。
本発明の冷やして食べる焼菓子を冷やして食べる際の温度は、冷蔵温度帯である0℃~10℃よりも低いものであれば特に限定されないが、低温域でも良好な歯切れとねちゃつかない口どけの良さを有するという本発明の特徴がより得られる点で、冷凍温度域で数時間程度冷やすのがより好ましい。冷却時間や冷却温度は適宜設定することができるが、例えば4℃で一晩程度、一般的な家庭用冷凍庫である-18℃であれば2~6時間程度がより好ましい。
本発明の冷やして食べる焼菓子は、焼菓子中に含まれる水分が5~25質量%であることが好ましく、6~20質量%がより好ましく、7~15質量%が更に好ましい。一般的なクッキー等の焼菓子の水分は5質量%以下であるが、本発明においては上記水分量であることで、発明の効果がより良好なものとなる。
以下に、実施例と比較例とをともに挙げて更に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例等に限定されるものではない。尚、下記実施例等において、脂肪酸含量は、特に断りのない限り、構成脂肪酸組成における脂肪酸含量を示す。
尚、下記製造例1~4のうち、製造例1及び2は油脂Aであり且つ油脂Xであるエステル交換油脂の製造例を示し、製造例3及び4は油脂Aであるが油脂Xではないエステル交換油脂の製造例を示す。
<エステル交換油脂の製造>
〔製造例1〕エステル交換油脂Iの製造
菜種油(キャノーラ油)80質量部に、極度硬化油脂として、パーム油の極度硬化油脂と、ハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂とを50:50の質量比で混合した混合油脂(炭素数16の飽和脂肪酸含量が24質量%、且つ炭素数20以上の飽和脂肪酸含量が30質量%)20質量部を添加し、溶解した油脂配合物に、ナトリウムメチラートを触媒として非選択的エステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、SFC(固体脂含量)が0℃で15%、10℃で12%、20℃で3%、40℃で0%であるエステル交換油脂Iを得た。
〔製造例2〕エステル交換油脂IIの製造
菜種油(キャノーラ油)80質量部に、パーム油の極度硬化油脂(炭素数16の飽和脂肪酸含量が44質量%、且つ炭素数20以上の飽和脂肪酸含量が0質量%)20質量部を添加し、溶解した油脂配合物に、ナトリウムメチラートを触媒として非選択的エステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、SFC(固体脂含量)が0℃で13%、10℃で10%、20℃で2%、40℃で0%であるエステル交換油脂IIを得た。
〔製造例3〕エステル交換油脂IIIの製造
ヨウ素価65のパーム分別軟部油に、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、SFC(固体脂含量)が0℃で32%、10℃で28%、20℃で16%、40℃で2%であるエステル交換油脂IIIを得た。
〔製造例4〕エステル交換油脂IVの製造
ヨウ素価55のパーム分別軟部油に、ナトリウムメチラートを触媒として、非選択的エステル交換反応を行なった後、漂白(白土3%、85℃、0.93kPa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、0.4kPa以下の減圧下)を行ない、SFC(固体脂含量)が0℃で50%、10℃で41%、20℃で20%、40℃で5%であるエステル交換油脂IVを得た。
以下、実施例1~7として冷やして食べる焼菓子用油脂組成物A~G、及び比較例1~3として比較用の油脂組成物H、油脂I~Jの製造例を示す。
尚、得られた全ての油脂組成物は、油相のSFCが、10℃、20℃、30℃いずれにおいても20%以下であり、また流動性を有するものであった。また、得られた全ての油脂組成物は、トランス脂肪酸含量が2質量%未満であり、実質的にトランス脂肪酸を含有していなかった。
〔実施例1〕
ハイオレイックヒマワリ油を80質量部、エステル交換油IIIを16質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂を4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、-30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、冷やして食べる焼菓子用油脂組成物Aを得た。表1に油脂組成物中の組成を示す(以下、実施例及び比較例について同じ)。
〔実施例2〕
ナタネ油を30質量部、ハイオレイックヒマワリ油を50質量部、エステル交換油IIIを16質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂を4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、-30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、冷やして食べる焼菓子用油脂組成物Bを得た。
〔実施例3〕
ナタネ油30質量部、ハイオレイックヒマワリ油50質量部、エステル交換油Iを4質量部、エステル交換油IIIを12質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、-30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、冷やして食べる焼菓子用油脂組成物Cを得た。
〔実施例4〕
ナタネ油30質量部、ハイオレイックヒマワリ油50質量部、エステル交換油Iを8質量部、エステル交換油IIIを8質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、-30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、冷やして食べる焼菓子用油脂組成物Dを得た。
〔実施例5〕
ハイオレイックヒマワリ油80質量部、エステル交換油IVを16質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、-30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、冷やして食べる焼菓子用油脂組成物Eを得た。
〔実施例6〕
ナタネ油30質量部、ハイオレイックヒマワリ油30質量部、ハイオレイックキャノーラ油20質量部、エステル交換油IIIを11質量部、エステル交換油IIを5質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、-30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、冷やして食べる焼菓子用油脂組成物Fを得た。
〔実施例7〕
ナタネ油80質量部、エステル交換油IIIを16質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂4質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、-30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、比較用の油脂組成物Gを得た。
〔比較例1〕
ナタネ油94質量部及びハイエルシンナタネ油の極度硬化油脂6質量部からなる油相を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、-30℃/分の冷却速度で急冷練り合わせし、比較用の油脂組成物Hを得た。
〔比較例2〕通常の焼菓子用
エステル交換油脂IVを、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、-30℃/分の
冷却速度で急冷練り合わせし、比較用の油脂Iを得た。
〔比較例3〕
ハイオレイックヒマワリ油を比較用の油脂Jを得た。
Figure 0007063633000001
<焼菓子の製造>
得られた油脂組成物A~H及び油脂I~Jを用いて、下記の配合及び製法により焼菓子を製造した。
(配合)
薄力粉8質量%、砂糖30質量%、全卵(正味)10質量%、脱脂粉乳27質量%、油脂組成物A~H及び油脂I~Jのいずれか25質量%
(製法)
卓上ミキサー(ケンウッドミキサー)に油脂組成物A~H及び油脂I~Jのいずれか1種、脱脂粉乳及び砂糖を投入し、混合した後、全卵を少しづつ加えて攪拌・混合し、更に薄力粉を加えて低速で1分混合して焼菓子生地を得た。得られた焼菓子の生地を、7gずつ絞って成形し、オーブン(フジサワ社製)で120℃にて10分焼成した後、20℃で60分冷却し、包装した。
尚、得られた焼菓子は赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所社製:FD-230)により水分量を測定したところ、いずれも8~11質量%であった。
得られた焼菓子は、4℃で24時間又は-18℃で3時間冷やした後、官能試験を行なった。
官能評価は、10人の専門パネラーにより下記[評価基準]に従って行い、10人のパネラーの合計点を評価点数とし、結果を下記のようにして〔表1〕に示した。
41~50点:◎、30~40点:〇、15~29点:△、0~14点:×
(焼菓子焼成時における油染みの評価)
- 焼成時、まったく油染みがない
± 焼成時、わずかに油染みがあるものの、殆ど製造には影響しない
+ 焼成時、油染みが見られ、製造へ影響が見られる
++ 焼成時の油染みが激しく製造への影響が大きい
(焼菓子の評価)
・歯切れ評価基準
5点 非常に歯切れが良い。
3点 歯切れがよい。
1点 やや硬い食感で歯切れが悪い。
0点 硬い食感で非常に歯切れが悪い。
・口どけ評価基準
5点 大変良好
3点 良好
1点 やや劣る
0点 不良
Figure 0007063633000002

Claims (5)

  1. 下記(a)、(b)及び(c)を満たす、冷やして食べる焼菓子用油脂組成物であって、UUU型トリグリセリドを構成する脂肪酸残基のうち、オレイン酸残基の占める割合が75~95質量%(UUUを構成する脂肪酸残基基準)である、冷やして食べる焼菓子用油脂組成物
    (a)UUU型トリグリセリドの占める割合が50~80質量%(油相基準)
    (b)SSS型トリグリセリドの占める割合が2~7質量%(油相基準)
    (c)下記油脂Aの占める割合が5~30質量%(油相基準)

    Uは炭素数16~22の不飽和脂肪酸残基を示し、
    Sは炭素数16~22の飽和脂肪酸残基を示し、
    UUU型トリグリセリドはUが3分子結合しているトリグリセリドを示し、
    SSS型トリグリセリドは、Sが3分子結合しているトリグリセリドを示し、
    油脂Aは10℃のSFC(固体脂含量)が5~45%であるランダムエステル交換油脂である。
  2. 下記(a)、(b)及び(c)を満たす、冷やして食べる焼菓子用油脂組成物であって、油相中の油脂Aの一部として下記油脂Xを油脂A基準で10~60質量%含有する、冷やして食べる焼菓子用油脂組成物。
    (a)UUU型トリグリセリドの占める割合が50~80質量%(油相基準)
    (b)SSS型トリグリセリドの占める割合が2~7質量%(油相基準)
    (c)下記油脂Aの占める割合が5~30質量%(油相基準)

    Uは炭素数16~22の不飽和脂肪酸残基を示し、
    Sは炭素数16~22の飽和脂肪酸残基を示し、
    UUU型トリグリセリドはUが3分子結合しているトリグリセリドを示し、
    SSS型トリグリセリドは、Sが3分子結合しているトリグリセリドを示し、
    油脂Aは10℃のSFC(固体脂含量)が5~45%であるランダムエステル交換油脂である。
    油脂X:10℃でSFCが10%未満である油脂と極度硬化油脂とをランダムエステル交換した油脂
  3. 請求項1又は2の油脂組成物を含有する、冷やして食べる焼菓子用生地。
  4. 請求項記載の冷やして食べる焼菓子用生地を焼成してなる、冷やして食べる焼菓子。
  5. 請求項記載の冷やして食べる焼菓子用生地を焼成する工程を含む、冷やして食べる焼菓子の製造方法。

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