JPH0632606B2 - 新規微生物 - Google Patents

新規微生物

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JPH0632606B2
JPH0632606B2 JP25777586A JP25777586A JPH0632606B2 JP H0632606 B2 JPH0632606 B2 JP H0632606B2 JP 25777586 A JP25777586 A JP 25777586A JP 25777586 A JP25777586 A JP 25777586A JP H0632606 B2 JPH0632606 B2 JP H0632606B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は新規な微生物に関し、更に詳細には、アルカリ
側に最適pHを有する酵素アルカリセルラーゼKを産生す
る、バチルス属に属する新規な好アルカリ性(alkalophi
lic)微生物に関する。
〔従来の技術〕
セルラーゼはセルロースをグルコース、又はセルビオー
ス、或いはセロオリゴ糖まで分解する酵素反応を触媒す
る複雑な酵素群として理解されており、その作用機構に
より、C酵素、Cx酵素とβ−グルコシダーゼ、或い
はエキソ−β−グルカナーゼ、エンド−β−グルカナー
ゼ、セロビアーゼなどの名称で呼ばれる酵素を含有する
と言われる。過去数十年のセルラーゼの研究の歴史は専
らバイオマス資源の有効利用を図るという観点からおこ
なわれ、例えばトリコデルマ属、アスペルギルス属、ア
クレモニウム属、フミコーラ属などのカビの類にその供
給源を求めてきた。
最近、セルラーゼの新規な産業的用途として、例えば衣
料用洗浄剤組成物の添加成分としての用途が開発されつ
つある。しかしながら、自然界において微生物の産生す
るセルラーゼは、上述の微生物起源のものをみるかぎ
り、大部分が中性乃至酸性pHにおいて至適かつ安定な酵
素活性を有する、いわゆる中性若しくは酸性のセルラー
ゼであつて、例えば衣料用洗浄剤組成物に配合すること
が可能な、アルカリ側で最高活性を示し、且つ耐性を有
するといつた要件を備えた、いわゆるアルカリセルラー
ゼの存在は極めて少なかつた。
すなわち、衣料用洗浄剤組成物に配合して使用し得るア
ルカリセルラーゼを生産する好アルカリ性微生物として
は、僅かに、セルラーゼAを生産する、ある種のバチル
ス属細菌(特公昭50−28515号公報)、アルカリセル
ラーゼ301−Aを生産するセルロモナス属に属する好ア
ルカリ性細菌(特開昭58−224686号公報)、カルボキ
シメチルセルラーゼを生産する好アルカリ性バチルスN
o.1139(Horikoshiら、J.Gen.Microbiol.,131巻,3339
頁,(1985))、及びアルカリセルラーゼを生産するスト
レプトマイセス属の一種(特開昭61−19483号公報)
が知られているにすぎない。
〔発明が解決しようとする問題点〕
従つて、アルカリ側において至適pHを有し、衣料洗浄用
酵素としての機能を有する有用なアルカリセルラーゼを
生産する微生物を自然界から探索し、これを分離・収得
することは極めて意義のあることである。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明者は、アルカリセルラーゼを生産する微生物を自
然界に求め、鋭意探索を続けて来たが、今般、栃木県芳
賀郡の土壌より採取したバチルス属に属する微生物が、
衣料用洗浄剤組成物の添加成分として有効な新規なアル
カリセルラーゼKを生産することを見出し、本発明を完
成した。
したがつて、本発明はバチルス属に属するアルカリセル
ラーゼK生産菌を提供するものである。
本発明のアルカリセルラーゼK生産菌は、次のような菌
学的性状を示す。なお、以下において菌株の分類、同定
に用いた培地は次の培地A〜Xの24種類であり、こと
わりの無い限り別滅菌した適当量の炭酸ナトリウム(Na2
CO3)を含有する。使用した培地の組成(表示は重量
%): 培地A:バクトペプトン,0.5;肉エキス,0.3;バクト
寒天,1.5;Na2CO3,1.0 培地B:バクトペプトン,0.5;肉エキス,0.3;Na2C
O3,1.0 培地C:バクトペプトン,0.5;肉エキス,0.3;食塩,
7.0;Na2CO3,1.0 培地D:バクトペプトン,0.5;肉エキス,0.3;バクト
ゼラチン,20.0;Na2CO3,1.0 培地E:バクトリマスミルク,10.5;Na2CO3,1.0 培地F:バクトペプトン,0.5;肉エキス,0.3;KNO3
0.1;Na2CO3,1.0 培地G:バクトペプトン,0.7;グルコース,0.5;食
塩,0.5;Na2CO3,1.0 培地H:バクトペプトン,3.0;肉エキス,0.3;チオ硫
酸ナトリウム,0.005;塩酸システイン,0.02;クエン
酸鉄アンモニウム,0.05;バクト寒天,0.5;Na2CO3
1.0 培地I:バクトペプトン,1.5;肉エキス,0.4;乳糖,
1.0;蕉糖,1.0;グルコース,1.0;食塩,0.5;チオ硫
酸ナトリウム,0.008;亜硫酸ナトリウム,0.04;硫酸
第一鉄,0.02;フエノール・レツド,0.002;バクト寒
天,1.5;Na2CO3,1.0 培地J:バクトペプトン,1.5;酵母エキス,0.5;可溶
性澱粉,2.0;K2HPO4,0.1;バクト寒天,1.5;MgSO4
7H2O,0.02;Na2CO3,1.0 培地K:リン酸アンモニウム,0.1;塩化カリウム,0.0
2;酵母エキス,0.05;MgSO4・7H2O,0.02;糖類,1.0
(濾過滅菌);Na2CO3,1.0 培地L:リン酸一水素カリウム,0.1;リン酸二水素ア
ンモニウム,0.1;クエン酸ナトリウム,0.2;MgSO4
7H2O,0.03;食塩,0.5;ブロム・チモール・ブルマー
0.0024;バクト寒天,1.5;Na2CO3,1.0 培地M:酵母エキス,0.05;塩酸システイン,0.01;ク
エン酸ナトリウム,0.3;食塩,0.5;チオ硫酸ナトリウ
ム,0.008;クエン酸鉄アンモニウム,0.04;グルコー
ス,0.02;リン酸二水素カリウム,0.15;フエノール・
レツド,0.0012;バクト寒天,1.5;Na2CO3,1.0 培地N:リン酸アンモニウム,0.1;リン酸二水素カリ
ウム,0.05;クエン酸ナトリウム,0.2;バクト寒天,
1.5;MgSO4・7H2O,0.02;Na2CO3,1.0 培地O:酵母エキス,0.05;Na2SO4,0.1;KH2PO4,0.
1;グルコース,1.0;Na2CO3,1.0;無機窒素源,適当
*硝酸ナトリウムは0.25%,亜硝酸ナトリウムは0.2025
%,塩化アンモニウムは0.158%,リン酸アンモニウム
は0.195%(各々0.0412N%に相当)になるように加え
た。
培地P:酵母エキス,0.05;Na2SO4,0.1;KH2PO4,0.
1;グルコース,1.0;無機窒素源,適当量**;CaCl2
2H2O,0.05;MnSO4・4〜6H2O,0.001;FeSO4・7H
2O,0.001(濾過滅菌);MgSO4・7H2O,0.02(濾過滅
菌);Na2CO3,1.0 **硝酸ナトリウムは0.25%,亜硝酸ナトリウムは0.2025
%,塩化アンモニウムは0.158%,リン酸アンモニウム
は0.195%(各々0.0412N%に相当)になるように加え
た。
培地Q:キングA培地“栄研”(栄研化学社製),指示
量;Na2CO3,1.0 培地R:キングB培地“栄研”(栄研化学社製),指示
量;Na2CO3,1.0 培地S:ポテトデキストロース寒天培地“栄研”(栄研
化学社製),指示量;Na2CO3,1.0 培地T:バクトペプトン,0.25;食塩,0.25;酵母エキ
ス,0.25;マンニツト,0.5;バクト寒天,2.0;Na2C
O3,1.0 培地U:尿素培地“栄研”(栄研化学社製),指示量;
Na2CO3,1.0 培地V:バクトペプトン,0.1;食塩,0.5;KH2PO4,0.
2;酵母エキス,0.05;グルコース,0.1;尿素,2.0;
フエノール・レツド,0.001;Na2CO3,1.0 培地W:バクトペプトン,0.5;酵母エキス,0.5;K2HP
O4,0.1;グルコース,1.0;MgSO4・7H2O,0.02;Na2C
O3,1.0 培地X:酵母エキス,0.5;グルコース,1.0;カゼイン
(ハーマーシユタイン,メルク社製),0.5;K2HPO4
0.1;MgSO4・7H2O,0.02;バクト寒天,1.5;Na2CO3
1.0 (菌学的性状) 1.顕微鏡的観察結果: 菌体の大きさは、0.5〜1.2μm×1.5〜4.0μmの桿菌で
あり、菌体の一端に内生胞子(0.7〜1.2μm×1.0〜2.0
μm)を形成する。又、周鞭毛を有して運動性があり、
グラム染色では陽性を示した。
2.各種培地における生育状態 肉汁寒天培地(培地A) 集落の形状は円形であり、集落の表面は偏平状である。
又、集落の色調は白色乃至黄色の半透明であり、光沢が
ある。
肉汁液体培地(培地B) 生育し、混濁する。培地を中性pHにすると、ほとんど生
育しない。
7%食塩肉汁液体培地(培地C) 生育し、混濁する。
肉汁ゼラチン穿刺培養(培地D) 生育しない。
リトマスミルク培地(培地E) ミルクの凝固、ペプトン化は認められず、又培地Dがア
ルカリ性のため、リトマスの変色も認められなかつた。
3.生理学的性質 硝酸塩の還元及び脱窒反応 硝酸還元するが、脱窒反応は認められない(培地F)。
MRテスト(培地G) 培地がアルカリ性のため、メチルレツドの変化は認めら
れず、判定できなかつた。
VPテスト(培地G) 陽性。
インドールの生成(培地H) インドール産生試験用濾紙(「ニツサン」,日水製薬社
製)に対する反応、コバツクの試薬に対する呈色のいず
れに対しても陰性であり、実際上、陰性といえる。
硫化水素の生成(培地I) 陰性。
澱粉の加水分解 平板寒天培地、培地J、を4N塩酸で酸性にしても通常
のヨウ素反応による検出法では陰性といえる。又、液体
培地Kにおいても可溶性澱粉の資化性は認められない。
クエン酸の利用 培地K;クエン酸を利用する。
コーサ(シモンズ)のクエン酸寒天平板培地(培地
L);生育せず。培地Lから寒天を除き0.05%の酵母エ
キスを加えた液体培地では、クエン酸の資化が認められ
る。
クリステンセンの寒天平板培地(培地M);生育する
が、アルカリ性のためフエノールレツドの変化なし。
培地N;クエン酸を利用しない。培地Nから寒天を除き
0.05%の酵母エキスを加えた液体培地では、クエン酸の
資化が認められる。
無機窒素源の利用 培地O;硝酸、亜硝酸、アンモニアのいずれも陰性から
微弱であり、実質上資化性は認められない。
培地P;微量金属塩類を含有する本培地では、硝酸と亜
硝酸は旺盛に資化される。一方、塩化アンモニウムの利
用性は微弱であるが、リン酸アンモニウムは利用する。
色素の生成 キングA培地(培地Q)では生育せず。
キングB培地(培地R)では淡黄色を呈するが、螢光性
はなかつた。又、ポテトデキストロース寒天培地(培地
S)とマンニツト酵母エキス寒天培地(培地T)では生
育するが、色素の生成は認められなかつた。
ウレアーゼ 培地U;生育せず。培地Uからフエノール・レツドを除
き、本菌を培養後、ネスラー試薬でアンモニアの生成を
確認したが、陰性。
培地V(クリステンセンの尿素培地に酵母エキスを添
加);培地からフエノール・レツドを除き、本菌を培養
後、ネスラー試薬でアンモニアの生成を確認したが、陰
性。又、細胞毒性を予測して、培地Vの尿素濃度を0.
1,0.2,0.5,1.0,2.0%と変化させて試験したが、ウ
レアーゼ活性は陰性であつた。
オキシダーゼ 陽性、陰性はつきりせず。
カタラーゼ 陽性 生育の範囲(培地W) 温度勾配培養機を用い、L字型試験管中で3日間振盪培
養をおこなつた。生育温度範囲は20〜45℃にあり、
生育最適温度範囲は29〜37℃であつた(第1図)。
生育のpH範囲を調べる目的で、培地WのNa2CO3の濃度を
変えて培地の初発pHを変えて試験したところ、生育pH範
囲は8〜11にあり、生育最適pH範囲は9.5〜10.2であ
つた(第2図)。一方、K2CO3で培地のpHを調整する
と、生育量は著しく少なく、生育至適pHは、約9であつ
た。
酸素に対する態度 好気的 O−Fテスト アルカリ性のため変色せず。好気のみ生育する。
糖類の利用性(培地K) 利用できる炭素源:D−リボース、L−アラビノース、
D−キシロース、D−グルコース、D−マンノース、D
−フラクトース、麦芽糖、シヨ糖、トレハロース、D−
マンニツト、イノシツト、グリセリン 利用できない炭素源:D−ガラクトース、乳糖、D−ソ
ルビツト、デンプン、デキストリン、ラフイノース カゼインの加水分解(培地X) 寒天平板培地Xに、菌を生育せしめ、30%トリクロロ
酢酸を流し込んで判定したが、菌体周囲に透明帯を形成
せず、カゼインの分解性は陰性と判定した。
栄養要求性 第1表に示す如く、ビオチン(又はデスチオビオチン)
を生育に必要とする。
以上の菌学的性状についてバージーズ・マニユアル・オ
ブ・デイタミネイテイブ・バクテリオロジー(Bergey's
Mannual of Determinative Bacteriology)第8版を参照
した結果,本菌は有胞子桿菌であるバチルス(Bacillus)
属の一種であると認められる。しかし、本菌が中性pHで
は生育できず、専ら高アルカリpHで良好な生育を示すこ
とから、古くはクシユナー(Kushner)とリツソン(Lisso
n)(J.Gen.Microbiol.,21巻,96頁(1957年))の発
見によるアルカリ馴化微生物、あるいは最近の堀越と秋
葉(“Alkalophilic Microorganism”,Japan Scientif
ic Society Press(Tokyo),1982年刊)の主張する、いわ
ゆる好アルカリ性(alkalophilic)微生物として暫定的
に、従来の中性で生育するバチルスと区別される。そし
て、本発明菌株の菌学的性質は公知の好アルカリ性バチ
ルスのいずれのものとも異なるので、本発明菌株を新規
なものと判断し、バチルス エスピー KSM-635と命名
して工業技術院微生物工業技術研究所に寄託した(FERM
P-8872)。
叙上の本発明菌株を用いて、アルカリ側に最適pHを有す
る酵素、アルカリセルラーゼKを生産するには当該菌株
又はその変異株を適当な培地に接種し、培養すれば良
い。
例えば適当な培地を加熱等により殺菌後、バチルス エ
スピー KSM-635(FERM P-8872)を接種し、22℃〜40
℃、好ましくは26℃〜37℃で、1〜4日振盪又は通
気攪拌培養すれば良い。pHは8〜11に調製すると良い
結果が得られる。発酵生産培地がアルカリ性なので、時
として発泡するが、適当な消泡剤を適宜添加することに
よつて解消される。
本発明菌株によるアルカリセルラーゼKの生産に当つて
は、資化し得る窒素源と炭素源を適宜組み合わせて培養
培地に含有させることが好ましく、特に両栄養源に限定
はない。例えば、窒素源としては、無機態の硝安、硫
安、塩安、リン酸アンモニウム、更に硝酸ソーダやコー
ングルテンミール、大豆粉、コーンスチープリカー、カ
ザミノ酸、酵母エキス、フアーマメデイア、イワシミー
ル、肉エキス、ペプトン、ハイプロ、アジパワー、コー
ンソイビーンミール、コーヒー粕、綿実油粕、カルチベ
ータ、アミフレツクス、アジプロン、ゼスト、アジツク
スなどが挙げられる。又、炭素源としては、籾殻、麸、
濾紙、一般紙類、おが屑、などの植物繊維質、廃糖蜜、
転化糖、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アビ
セル、セルロース綿、キシラン、ペクチンに加え、資化
し得る炭素源、例えば、リボース、アラビノース、キシ
ロース、グルコース、マンノース、フラクトース、麦芽
糖、シヨ糖、トレハロース、マンニツト、イノシツト、
グリセリンや資化し得る有機酸、例えば、酢酸、クエン
酸などが挙げられる。すなわち、ビオチン誘導体を含有
する培地であれば、これらの窒素源と炭素源を適宜組み
合わせたいかなる培地を使用しても良く、上述の栄養源
を特に限定するものではない。その他、リン酸、Mg2+
Ca2+,Mn2+,Zn2+,Co2+,Na+,K+などの無機塩や、必
要であれば、無機、有機微量栄養源を含有する培地を適
宜選択して使用される。
斯くして得られた培養物中から目的物質であるアルカリ
セルラーゼKの採取及び精製は、例えば、後記実施例に
示す如く、一般の酵素の採取及び精製の手段に準じて行
うことができる。
すなわち、培養物を遠心分離、又は濾過等によつて菌体
を分離し、その菌体及び培養濾液から通常の分離手段、
例えば、塩析法、等電点沈澱法、溶媒沈澱法(メタノー
ル、エタノール、イソプロパノール等)によつて蛋白を
沈澱させたり、又、限外濾過(例えばダイアフローメン
ブレンYC、アミコン社製)により濃縮させてアルカリ
セルラーゼKを得る。塩析法では例えば、硫安(30〜
70%飽和画分)、溶媒沈澱では例えば、75%エタノ
ール中で酵素を沈澱させた後、濾過或いは遠心分離、脱
塩することによつてこれを凍結乾燥粉末とすることも可
能である。脱塩の方法としては透析又はセフアデツクス
G−25等を用いるゲル濾過法等の一般的方法が用い
られる。さらに、酵素を精製するには例えば、ヒドロキ
シアパタイトクロマトグラフイー、DEAE−セフアデ
ツクス又はDEAE−セルロース等のイオン交換クロマ
トグラフイー及びセフアデツクスやバイオゲルのような
分子篩ゲルクロマトグラフイーを適宜組み合わせて分別
精製すれば良い。
叙上の如くして得られたアルカリセルラーゼKは、次に
示すように酵素学的性質を有する。また、以下において
用いた酵素活性測定法等は次の通りである。
CMCアーゼ活性 CMC(2.5%)0.2ml、0.5Mグリシン緩衝液(pH9.0)0.
1ml、及び脱イオン水0.1mlからなる基質溶液に酵素液0.
1mlを加え、40℃、20分間反応した。反応後、3,
5−ジニトロ−サリチル酸(3,5−dinitro-salicyli
cacid(DNS))法にて還元糖の定量を行つた。すなわち、
反応液0.5mlにDNS試薬1mlを加え、5分間で100
℃で加熱発色させ、冷却後、4.5mlの脱イオン水を加え
て希釈した。これを波長535nmで比色定量した。酵
素力価は、上記の条件下で1分間に1μmolのグルコー
スに相当する還元糖を生成する酵素量を1単位とした。
p−ニトロフエニルセロビオシド分解活性 100μmolリン酸緩衝液(pH7.0)、0.1μmolp−ニトロ
フエニルセロビオシド(シグマ社)を含む反応液1.0ml
中に適当量のCMCアーゼを30℃で作用させた後、1
MNa2CO3を0.3ml、脱イオン水を1.7ml順次加え、遊離す
るp−ニトロフエノールを400nmで比色定量した。
この条件で1分間に1μmolのp−ニトロフエノールを
遊離させる酵素量を1単位とした。
アビセラーゼ及びFPアーゼ活性 CMCアーゼ活性測定用反応液2ml中、基質CMCに代
えて20mgのアビセル(メルク社)、又は塊状にした、
幅0.5cm、長さ5cmの濾紙片(セルラーゼ活性度検定用
濾紙、東洋No.51−特)を加え、アビセラーゼ及びE
Pアーゼ活性を測定した。この条件で1分間にグルコー
ス換算で1μmolの還元糖を遊離させる酵素量を1単位
とした。
蛋白定量法 蛋白定量法は、バイオ・ラド プロテイン アツセイ
キツト(バイオ・ラド社)を用いて、牛血清アルブミン
を標準蛋白として算出した。
(1)作用 本酵素は、カルボキシメチルセルロース(CMC)に作用す
るCx酵素活性を有する。しかしながら、更に、リン酸
膨潤セルロースにも作用し、作用特異性として結晶性セ
ルロース(セルロース綿)や結晶性の高いセルロースで
あるアビセルに作用する酵素(すなわちアビセラーゼ)
と濾紙崩壊活性(FPアーゼ)などに代表されるC1
素、セロビオースやセロオリゴ糖に作用するβ−グルコ
シダーゼ活性も有する。また、人工基質であるp−ニト
ロフエニルセロビオシドに対しても若干ながら作用して
p−ニトロフエノールを遊離させる。
(2)基質特異性 アルカリセルラーゼKは、キシラン、アミロース、デキ
ストリン、ペクチン、イヌリン、カードランに対し、分
解能力を有しない。アビセラーゼ、及びFPアーゼ活性
(C1活性)は、CMCアーゼ活性の約0.3%であつた。
また、人工基質、p−ニトロフエニルセロビオシド分解
活性は、その約1.5〜1.8%である(第2表)。
(3)作用pH及び至適作用pH 本酵素の作用pHは4〜12、至適作用pHは大凡9〜10
に認められる。なお、pH10.5付近にシヨルダを有する
(第3図)。
(4)安定pH pHの異なる緩衝液の下、40℃で10分間及び30分間
放置した時の安定pHはそれぞれ、4.5〜10.5及び6.8〜1
0である(第4図)。5℃で放置すると、pH4〜11で
少なくても一ケ月は安定である。
(5)作用温度範囲及び作用至適温度 本酵素は低温で10℃、高温で65℃の広い範囲で作用
するが、グリシン緩衝液(pH9)の下で20分間反応さ
せた時の作用至適温度は約40℃に認められる(第5
図)。
(6)熱安定性 グリシン緩衝液(pH9)の下で、各温度で20分間加熱
処理した結果、本酵素は約40℃では全く失活せず、6
0℃で約50%、70℃で約25%の残存活性を有する
(第6図)。
(7)キレート剤の影響 洗浄剤用酵素として、その反応組成物であるビルターの
中でキレート剤に対する耐性は最も重要な因子である。
アルカリセルラーゼKをEDTA(0.5mM)、EGTA(0.
5mM)、NTA(0.5mM)、トリポリリン酸(50mg/ml)
で前処理した後、残存活性を測定したところ、全く阻害
は認められない。
(8)プロテアーゼの影響 洗浄組成物として、プロテアーゼは洗浄力を向上せしめ
る作用がある。従つて、プロテアーゼ入り洗浄剤にセル
ラーゼを共存させて、更なる洗浄力の向上を求めるのは
当然である。このことは洗浄剤用セルラーゼがプロテア
ーゼで加水分解せず、活性が安定に保持される要件を満
たす必要がある。アルカリセルラーゼKは実用されてい
る洗浄剤用プロテアーゼ(例えば、API−21、マク
サターゼ、アルカラーゼ等)や一般のプロテアーゼ(例
えば、プロナーゼ)に対して強力な耐性を有している
(第3表)。
(9)金属等の影響 適当な濃度の2価の金属イオン(Hg2+,Cu2+等)は阻害
効果を与える。モノヨード酢酸、パラマーキユリ安息香
酸によつて若干の阻害を受ける。
(10)界面活性剤の影響 アルカリセルラーゼKは各種界面活性剤、例えば、線状
アルキルベンゼスルホン酸ナトリウム(LAS)、アル
キル硫酸エステルナトリウム塩(ES)、ポリオキシエ
チレンアルキル硫酸エステルナトリウム塩(ES)、α
−オレフインスルホン酸ナトリウム(AOS)、α−ス
ルフオン化脂肪酸エステルナトリウム塩(α−SF
E)、アルキルスルホン酸ナトリウム(SAS)、ポリ
オキシエチレンセカンダリーアルキルエーテル、脂肪酸
塩(ナトリウム塩)及びジメチルジアルキルアンモニウ
ムクロライド等の界面活性剤によつて殆んど活性阻害は
受けなかつた。
(11)分子量(ゲルクロマトグラフイー法) 180,000±10,000に最大ピークを有する(第7図)。
〔発明の効果〕
上述の如く、本発明微生物の産生するアルカリセルラー
ゼKは、アルカリ側に最適pHを有し、低温でも充分活性
が発揮され、しかもプロテアーゼ、界面活性剤等により
阻害されないので、衣料用洗浄剤の添加酵素として有用
なものである。
〔実施例〕
次に実施例及び参考例を挙げ、本発明を説明する。
実施例1. 栃木県芳賀郡市貝町の土壌1gを滅菌生理食塩水10ml
に懸濁し、80℃で30分間熱処理した。この熱処理液
を適当に希釈してマスタープレート(肉エキス(オキソ
イド社製)1%、バクトペプトン(デイフコ社製)1
%、NaCl1%、KH2PO40.1%、Na2CO30.5%(別滅菌)、
バクト寒天1.5%)に塗沫し30℃で3日間培養し、集
落を形成させた。レプリカ法により、マスタープレート
と同じ組成の培地に2%CMCを加えた滅菌寒天培地に
移植し、30℃で3〜4日間培養して集落を形成させた
後、コンゴーレツド色素溶液を流し込み、寒天が赤色化
した中で周囲が染色されない集落を検出した。当該する
集落をマスタープレートから選出し、高力価CMCアー
ゼ生産菌をスクリーニングした。
上述の手法により、本発明のバチルス エスピー KSM-
635(FERM P-8872)を取得することができた。
参考例1 バチルス エスピー KSM-635(FERM P-8872)を1.5%肉
エキス、0.5%酵母エキス、1%CMC、0.1%KH2PO4
0.75%Na2CO3(別滅菌)からなる液体培地中、34℃で
2日間好気培養した。その培養上清液1に対して3
の冷エタノール(−10℃)を徐々に加えて蛋白沈澱を生
じさせ、得られる沈澱物を最小量の滅菌脱イオン水に溶
解し、希酢酸で中和した後、流水に対して15時間透析
し、凍結乾燥して9.6gの酵素粉末を得た。
参考例2 CMC1%、ポリペプトン2%、KH2PO40.1%、酵母エ
キス0.1%、Na2CO30.75%(別滅菌)を含む培地(pH8.4
〜8.6)100mlを500ml容三角フラスコに入れ、常
法により殺菌後、バチルス エスピー KSM-635(FERM P
-8872)を接種し、30℃で4日間振盪培養した。培養
後、遠心分離により菌体を除去した上清についてCMCア
ーゼ活性を測定した結果、2,900単位/であつた。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明のバチルス エスピー KSM-635の生育
温度範囲を示す図面、第2図は生育pH範囲を示す図面で
ある。 第3図はアルカリセルラーゼKのCMCアーゼとしての
作用pH範囲を示す図面、第4図はpH安定性を示す図面で
ある。 第5図はアルカリセルラーゼKのCMCアーゼとしての
作用温度範囲を示す図面、第6図は熱安定性を示す図面
である。 第7図は、ゲルクロマトグラフイー法における溶出画分
と活性の関係を示す図面である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡本 暉公彦 埼玉県越谷市七左町1−229−8 (72)発明者 井上 恵雄 栃木県宇都宮市今泉町1521−7

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】下記の酵素学的性質を有するアルカリセル
    ラーゼKを生産する能力を有し、微工研菌寄第8872
    号として寄託されたバチルス エスピーKSM−63
    5。 (1)作用 カルボキシメチルセルロースに作用するCx酵素活性を
    有するほか、弱いC酵素活性、β−グルコシダーゼ活
    性を有する。 (2)基質特異性 カルボキシメチルセルロース、結晶性セルロース、アビ
    セル、セロビオース及びp−ニトロフェニルセロビオシ
    ドに対して作用する。 (3)作用pH及び至適pH 作用pHは4〜12、至適pHは9〜10である(第3図)。 (4)安定pH 40℃で10分間及び30分間放置した時の安定pHはそれぞ
    れ、4.5〜10.5及び6.8〜10である(第4図)。 (5)作用温度範囲及び作用至適温度 10〜65℃の広い範囲で作用するが、作用至適温度は約40
    ℃に認められる(第5図)。 (6)キレート剤の影響 EDTA、EGTA、NTA、STPP及びゼオライトは活性を阻害し
    ない。 (7)界面活性剤の影響 線状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LA
    S)、アルキル硫酸エステルナトリウム塩(ES)、ポ
    リオキシエチレンアルキル硫酸エステルナトリウム塩
    (ES)、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(AO
    S)、α−スルフォン化脂肪酸エステルナトリウム塩
    (α−SFE)、アルキルスルホン酸ナトリウム(SA
    S)、ポリオキシエチレンセカンダリーアルキルエーテ
    ル、脂肪酸塩(ナトリウム塩)及びジメチルジアルキル
    アンモニウムクロライド等の界面活性剤によって殆ど活
    性阻害は受けない。 (8)プロテアーゼの影響 プロテアーゼに対し、強い耐性を有する。 (9)分子量(ゲルクロマトグラフィ法) 180,000±10,000に最大ピークを有する(第7図)。
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