JPH06220722A - 高性能炭素繊維用プレカーサー用油剤組成物及びプレカーサー - Google Patents

高性能炭素繊維用プレカーサー用油剤組成物及びプレカーサー

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JPH06220722A
JPH06220722A JP5029722A JP2972293A JPH06220722A JP H06220722 A JPH06220722 A JP H06220722A JP 5029722 A JP5029722 A JP 5029722A JP 2972293 A JP2972293 A JP 2972293A JP H06220722 A JPH06220722 A JP H06220722A
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JP
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oil agent
precursor
weight
amino
acid
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JP5029722A
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English (en)
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Kunio Maruyama
國男 丸山
Ryuichi Koide
隆一 小出
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Sumika Hercules Co Ltd
Original Assignee
Sumika Hercules Co Ltd
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Publication date
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  • Chemical Treatment Of Fibers During Manufacturing Processes (AREA)

Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 炭素繊維用プレカーサーの経時劣化を防止
し、プレカーサーの高品質を維持させるために必要な油
剤組成物を提供する。 【構成】 アミノ基に由来する窒素の含有量が0.05
〜2.0重量%であり、25℃の粘度が500センチス
トークス以上のアミノ変性ポリシロキサンを少なくとも
50重量%以上含有するシリコーン油剤に、アミノ基1
モルに対して0.3〜5.0モル当量の炭素数6以下の
カルボン酸を加えてなる油剤80〜20重量部とPOE
アルキルエーテル、POEアルキルアリールエーテル又
はPOE脂肪酸エステルを主体とするノニオン系乳化剤
20〜80重量部との混合物100重量部に対してアル
キルアミン、アリールアミン、もしくはアルキルアリー
ルアミンのカルボン酸塩、アミノ酸又はベタイン化合物
のアミノカルボン酸物質を0.2〜10重量部混合して
なる新規な油剤組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高性能即ち高強度、高
弾性率を有する炭素繊維の製造原料として必要なアクリ
ロニトリル系前駆体繊維(以下、プレカーサーと称す
る)に用いられる油剤組成物及びその油剤組成物を付与
したプレカーサーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】炭素繊維は、その前駆体繊維であるアク
リル系、レーヨン系、ポリビニールアルコール系、ノボ
ラック系等の有機繊維又はピッチ系の無機繊維を200
〜300℃の加熱された酸化性の雰囲気中で酸化繊維に
転換した後、更に不活性雰囲気中で炭化処理することに
より工業的に製造されている。この酸化処理(耐炎化処
理)や炭化処理(炭素化処理)工程は高温で行われるた
め、繊維が互いに固着又は融着を起し、得られる炭素繊
維の品質が著しく低下することがある。これを防ぐため
に特殊な有機シリコーン系の油剤(一般にシリコーン油
剤と称される)を用いる方法が数多く提案されている。
【0003】中でも高性能の炭素繊維を得るためにはア
ミノ変性ポリシロキサン(アミノ変性シリコーン又はポ
リアミノシロキサンとも称される)が特に有効であり、
特公昭52−24136を始めとして、特公昭53−1
0175、特公昭60−52208、特公昭63−23
285等に記載されている。又アミノ変性シリコーン油
剤に添加物を加えて油剤の安定性を増す方法についても
特開平2−91224、特開平2−91225、特開平
2−91226等に提案がなされている。
【0004】本発明者等も高性能炭素繊維用のプレカー
サーについて研究を重ねてきたが、プレカーサー用油剤
の適否が形成される炭素繊維の性能に大きく関与し、高
性能炭素繊維を得るためにはアミノ変性ポリシロキサン
油剤が必須であることを知った。特に近年のように著し
く高強度、高弾性率の高性能炭素繊維、黒鉛繊維が要求
される場合には油剤の選定が非常に重要であることが判
った。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように非常に有用
なアミノ変性ポリシロキサン油剤ではあるが、この油剤
を付与したプレカーサーを長期間保存しておいた場合に
は経時劣化を起すことが判った。特に超高強度炭素繊維
を製造せんとする場合に、かかるプレカーサーを用いる
と、この経時劣化が顕著で、夏期の30〜40℃の倉庫
の中に3カ月間保管した後で焼成すると、得られる炭素
繊維の強度が10%以上も低下し、高性能炭素繊維用プ
レカーサーとして使用できない場合もあることが判明し
た。
【0006】アクリル系のプレカーサーが経時劣化する
ことについては従来の文献にも全く記載されていない。
そこでこの経時劣化現象を追求するためにプレカーサー
の油剤を抽出して、プレカーサー自体の変化と抽出した
油剤の変化の両面から鋭意研究した。
【0007】先ずプレカーサー自体の変化を確認するた
めに、アミノ変性ポリシロキサンを除去した製造直後及
び1年間常温(温度調節のされていない倉庫内)で保管
して経時劣化を起したプレカーサーの両者について、化
学分析や物理的、機械的性質の比較検討を行ったが、両
者の間には全く差が見られなかった。そこで更に油剤側
の変化について検討を行った。
【0008】油剤であるポリシロキサンは、加熱により
ゲル化することは古くから知られている。又これを防ぐ
ために、ポリシロキサンに酸化防止剤等を加えることも
良く知られている方法である。更に、酸化防止剤を加え
た場合のポリシロキサンの熱分解の挙動についても報告
されている(例えばZh. Prikl. Khim. Vol. 49、
No.4、p839〜844、1976参照)。
【0009】本発明者等も当初経時劣化したシリコーン
油剤を付与したプレカーサーをメチルエチルケトン(以
下MEKと略記する)で抽出してもシリコーン油剤が完
全に抽出されないことから、油剤のゲル化が原因であろ
うと推定して、酸化防止剤の添加や強酸性基を含む乳化
剤との組合せによるゲル化防止の方法を試みた。
【0010】しかしこの方法はプレカーサーの経時劣化
に対しては効果が見られないばかりでなく経時劣化を加
速するという逆効果が現れることを見い出した。
【0011】そこで更に前記プレカーサーから抽出した
油剤をゲルクロマトグラフィー(GPC)を用いて分析
したところ、長期間保管したプレカーサーから抽出され
たシリコーン油剤には、環状シロキサンオリゴマー(4
〜8量体)が含まれており、かつ高温で保管されたもの
ほどこのオリゴマーが多いことを見い出した。
【0012】そこでこの原因がプレカーサーに付与され
ているポリシロキサンが保管中に徐々に低分子化するた
めに起こる現象であろうと推定して、種々の実験を行っ
た。即ちアミノ変性ポリシロキサンを水に乳化させるた
めに用いる乳化剤の組成及び乳化を促進するために加え
る酸の種類を種々変えて、乳化性、加熱時のゲル化の程
度やオリゴマーの生成状況を詳細に調査した。
【0013】その結果このポリシロキサンの低分子化
は、硫酸、硝酸、リン酸、スルフォン酸等の強酸性基
(強酸性の遊離酸ばかりでなくその塩やエステルも含
む)が共存すると急激に進行することが判明した。
【0014】一方ポリアミノシロキサンは、その分子中
に塩基性のアミン基を含有するために強酸性基を含有す
る乳化剤を用いると、水に対する溶解性が向上すること
から乳化剤としてスルフォン酸エステルやリン酸エステ
ルが好適に用いられてきた(特公昭52−2413
6)。
【0015】このような強酸性基を含有する乳化剤を用
いたり、或いはこれに酸化防止剤を配合するとポリアミ
ノシロキサンのゲル化は改善されるものの、低分子化は
むしろ加速されることをその熱分解ガスクロマトグラフ
ィーの研究から明らかになった。
【0016】即ち高分子のポリアミノシロキサンに、ポ
リオキシエチレン(以下POEと略記する)ラウリルフ
ェノールエーテルのスルホン酸エステルやリン酸エステ
ルを加えて加熱すると、環状のシロキサンオリゴマー
(4〜8量体)が容易に生成することを確認した。この
低分子化反応は酸化防止剤を加えても全く防止できない
ばかりでなく、酸化防止剤の種類に依っては加速する場
合すらあることが判った。又強酸性基のないPOEノニ
ルフェノールエーテルに少量のリン酸を加えた場合にも
シロキサンオリゴマーの生成が著しく加速された。
【0017】アミノ変性ポリシロキサン油剤を用いて生
産された生産直後のプレカーサーを耐炎化したものと、
プレカーサーを長期間保管して経時劣化してから耐炎化
したものとを、MEKで抽出すると、前者はMEKで抽
出されるシリコーン油剤が少ないが、後者は前者より多
量のシリコーン油剤が抽出される。このことはプレカー
サーを保管している間に耐炎化のような高温にさらされ
た際に、シリコーン油剤がMEKに溶解しなくなる反
応、即ち分子間の架橋反応にともなわれるゲル化反応が
抑制されてしまうような中間構造、又はゲル化反応以上
にポリシロキサンの分子鎖切断(低分子化)反応を促す
反応開始点を生成していることを伺わせるものである。
【0018】従ってプレカーサーの経時劣化を防止する
ためにはシルコーン油剤がある程度ゲル化し易い方が好
ましいと判断した。
【0019】プレカーサーに均一に油剤を付与するため
には、シリコーン油剤を有機溶剤に溶解するか、或いは
微粒な水系エルジョンとして用いなければならない。有
機溶剤を用いるのは安全性やコストの点で工業的に不利
であるため通常は水系のエマルジョンとして用いられて
いる。しかし一般的に多くのシリコーン油剤は疎水性の
ため0.1ミクロン以下の微粒な水系エマルジョンを得
るのは容易ではない。
【0020】そのため従来からポリアミノシロキサンを
水に乳化して粒子径が0.1ミクロン以下の微粒なエマ
ルジョンを得るために酸性基を含んだ乳化剤が好適に用
いられてきた。例えば特公昭52−24136の実施例
に記載されているようにPOE(9)ノニルフェニルホ
スフェート(ノニルフェノールホスフェートとも称され
る)のようなモノリン酸エステルは、ポリアミノシロキ
サンのアミノ基と程よく塩を作り、著しく親水性が向上
し、殆ど可溶化し、透明な水溶液が得られ、そのエマル
ジョンの平均粒子径は0.1ミクロン以下となり通常の
光学顕微鏡ではその粒子を見ることが出来ない程の微粒
子である。それが為に、油剤は付着斑を起すことなく、
プレカーサーの表面に均一な皮膜を形成させることが出
来るのでこのような特性のある油剤が高性能炭素繊維用
プレカーサーを製造するために好適に利用されているの
である。
【0021】しかしこのように乳化性に勝れた乳化剤
は、リン酸、硫酸等の強酸性基を含むものである。これ
に対して脂肪酸エステルやアルキルエーテル等のノニオ
ン系の乳化剤は乳化性が劣り、0.1ミクロン以下とい
うような微粒なエマルジョンは得られない。経時劣化防
止の観点からは強酸性基のないノニオン系の乳化剤が好
ましいが、ノニオン系乳化剤だけでは透明な油剤水溶液
は得られない。
【0022】そこで更に強酸性基を含まないポリエーテ
ル系及びエステル系のノニオン乳化剤を用いて透明性の
良い微粒なエマルジョンを得る方法について鋭意研究を
重ねた。そして乳化性が良く、かつプレカーサーの経時
劣化も防止出来る油剤組成物について幅広く検討し、よ
うやく本発明に到達することが出来た。
【0023】又アミノ変性ポリシロキサンと乳化剤や乳
化促進剤を調合する際に障害となる高粘性のために調合
に長時間を要するという問題も合せて解消することが出
来た。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明の目的はプレカー
サーの経時劣化を防止し、かつプレカーサーの表面に均
一に付着させることの出来る微粒なエマルジョンを形成
し、かつ油剤水溶液の粘性を低下せしめることが可能な
油剤組成物と、その油剤組成物を付与した高性能炭素繊
維用プレカーサーを提供することにある。
【0025】この目的はアミノ変性ポリシロキサン中の
アミノ基に由来する窒素の含有量が0.05〜2.0重
量%の範囲にあり、25℃における粘度が500センチ
ストークス以上であるアミノ変性ポリシロキサンを少な
くとも50重量%以上含有するシリコーン油剤に、アミ
ノ基1モルに対して0.3〜5.0モル当量の炭素数6
以下の脂肪族モノカルボン酸を加えてなる油剤80〜2
0重量部と、POEアルキルアリールエーテル又はPO
Eアルキルエーテル又はPOE脂肪酸エステルを主体と
するノニオン系乳化剤20〜80重量部との混合物10
0重量部に対してアルキルアミン、アリールアミンもし
くはアルキルアリールアミンのカルボン酸塩、アミノ酸
又はベタイン化合物のアミノカルボン酸物質を0.2〜
10重量部混合してなる油剤組成物を、プレカーサーに
0.1〜5.0重量%付与することにより達成される。
【0026】プレカーサーとしてはアクリロニトリルを
90重量%以上、好ましくは95重量%以上含有するア
クリロニトリル共重合体を乾式、湿式、乾湿式紡糸法等
によって得られたものが好適に使用できる。又高性能炭
素繊維を得るためにプレカーサーに付与される本発明に
よる油剤組成物の量は0.1〜5.0重量%が適性範囲
であり、0.1重量%未満或いは5.0%より多くては
十分に効果を発揮することが困難である。
【0027】本発明に使用されるアミノ変性ポリシロキ
サンは、そのアミノ基に由来する窒素の含有量が0.0
5〜2.0重量%のものが適切であり、窒素が0.05
重量%未満のものは微粒なエマルジョンを得るのが容易
でない。窒素が2.0重量%を越えたものは、微粒なエ
マルジョンは得られ易いものの熱安定性に乏しいため、
耐炎化時に油剤成分が分解し易く、高性能炭素繊維が得
られにくい。
【0028】アミノ変性ポリシロキサンの粘度は25℃
において500センチストークス以上の高粘度のものが
好結果をもたらすが、これ未満の低粘度のものを使用す
ると高強度の炭素繊維は得られない。粘度の上限は特に
限定されないが余り高いと乳化剤と混合する時に混合し
にくいので通常は10000センチストークス程度まで
が好都合であるが、高粘度用の混合機を用いれば更に高
粘度のものであっても使用できるので粘度の上限の制約
は殆どない。
【0029】ここで用いるシリコーン油剤はアミノ変性
ポリシロキサンが好適であるが、水に乳化した際のエマ
ルジョンの平均粒子径が0.1ミクロンより大になった
り、20重量%溶液の透明度が60%未満にならない範
囲で、ポリジメチルシロキサンやポリメチルフェニルシ
ロキサン又はポリエーテル変性、エポキシ変性その他の
変性ポリシロキサン等のシリコーン油剤を混合しても差
し支えないが、アミノ変性ポリシロキサンが少なくとも
50重量%含まれていないと粒子径や水溶液の透明度を
好適範囲に保持することは困難である。
【0030】乳化剤としては水溶性のPOEアルキルエ
ーテル、POEアルキルアリールエーテル、POE脂肪
酸エステル及びこれらの混合物等のノニオン系乳化剤が
用いられるが、これだけでは十分に乳化することは出来
ない。乳化に先立って、用いるシリコーン油剤にアミノ
変性ポリシロキサンのアミノ基1モルに対して0.3〜
5.0モル当量に相当する炭素数6以下の低級脂肪族モ
ノカルボン酸を加えておくことが必要である。こうする
ことにより乳化が促進され、強酸性基を有しないノニオ
ン系乳化剤でも十分に乳化することが出来る。ここにお
いてアミノ変性ポリシロキサンの乳化を促進するために
添加する炭素数6以下の低級脂肪族モノカルボン酸とし
ては蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草
酸、イソ吉草酸、カプロン酸等のモノカルボン酸及びグ
リコール酸、乳酸、マロン酸等の炭素数4以下のオキシ
カルボン酸等が挙げらる。これらのモノカルボン酸は単
独でも2種以上を混合して用いても差し支えない。
【0031】炭素数7以上のモノカルボン酸は乳化促進
作用が十分でないため単独では使用できないが、炭素数
6以下のカルボン酸との併用は差し支えない。しかし実
質的な乳化促進効果が余りないので工業的にはそのよう
な併用は無意味である。
【0032】更にアミノ変性ポリシロキサンを十分に乳
化するためには、アミノ基1モルに対して0.3〜5.
0モル当量のモノカルボン酸を加えることが適当であ
り、この範囲未満では乳化が不十分であり又この範囲を
越えて加えても乳化性は変わらないので無意味である。
【0033】アミノ変性ポリシロキサンを50重量%以
上含むシリコーン油剤とノニオン系乳化剤の混合比率は
重量比で80/20〜20/80の範囲が適切であり、
この範囲より乳化剤が少ないと良好なエマルジョンが得
られにくい。またこの範囲を越えて乳化剤を加えても乳
化効果が上がらないので無意味である。
【0034】このようにして作成した油剤組成物を、水
で希釈すると肉眼では殆ど透明な水溶液が得られ、光学
顕微鏡でもその粒子を殆ど見ることは出来ない。このよ
うにして作成した20重量%水溶液エマルジョンを、光
散乱光度計でその粒子径を測定すると、通常の場合平均
粒子径は0.1ミクロン以下(10〜80mμ)であ
る。
【0035】ここにおいてシリコーン油剤に予めモノカ
ルボン酸を加えずに、乳化剤の水溶液の中にシリコーン
油剤を加えてから、後でモノカルボン酸を加えた場合は
必ずしも微粒なエマルジョンが得られない。しかし乳化
する際に用いる混合機や攪拌機の性能にも依るので、シ
リコーン油剤、モノカルボン酸、乳化剤の添加の順序は
必ずしも限定されるものではないが、油剤組成物の20
重量%水溶液を分光光度計を用いてセル長1cmで波長
660mμにおける純水に対する透過率を測定した場合
に透過率(以下透明度と称す)が60%以上となるよう
に乳化することが必要条件である。又、エマルジョンの
粒子径も0.1ミクロン以下が好ましいが透明度が60
%を下回らない範囲であれば0.1ミクロン以上の粒子
を多少含んでも差し支えない。
【0036】本発明のアミノ変性ポリシロキサンを50
重量%以上含有するシリコーン油剤/低級モノカルボン
酸/ノニオン系乳化剤からなる組成物100重量部に対
してアルキルアミン、アリールアミンもしくはアルキル
アリールアミンのカルボン酸塩、アミノ酸又はベタイン
化合物のアミノカルボン酸物質を0.2〜10重量部を
加えて混練すると、油剤組成物の粘性が低下して混合操
作が容易になるばかりでなく、油剤組成物の水溶液の粘
度が大幅に低下する。これによりプリカーサーの油剤処
理が容易となり、油剤は短時間で均一にプレカーサーに
付与させることが出来る。
【0037】こうして得られたプレカーサーを焼成して
得た炭素繊維のストランド強度は、アミノカルボン酸物
質を加えない油剤を用いたものより向上する。この作用
機構は明瞭には解明出来ていないが、油剤水溶液の粘度
が低いことにより、単繊維の集合体であるプレカーサー
への内部に位置する単繊維まで均一に油剤が付与される
ために強度の低い単繊維が減少するためと推定される。
【0038】ここで使用されるアミノカルボン酸物質と
しては、その分子中にアミノ基を含むものにあってはそ
のアミノ基とほぼ当モルのカルボン酸を加えたもの(ア
ミノカルボン酸塩)、同一分子中にアミノ基とカルボン
酸基を有するもの(アミノ酸やベタイン化合物)が該当
するが水100gに対する溶解度が0.2g以下の難溶
性のものは使用できない。その分子中にアミノ基を含む
化合物としては1〜4級アミンの何れでも良いし、アミ
ノ基以外にヒドロキシ基を含むアルキルアミンやアリー
ルアミン又はアルキルアリールアミンでも良い。更にア
ミノ基を含む化合物自体が水に対して難溶性であって
も、カルボン酸を加えることにより水溶性が増して0.
2重量%以上の濃度が得られるものであれば良い。
【0039】アミノカルボン酸物質の添加量はその構造
により異なるため一義的に決めることは困難であるが、
通常は前述した如く0.2〜10重量部の範囲が好適で
ある。0.2重量部より少ないと、油剤組成物の20重
量%水溶液の粘度が10センチストークス以下に下げる
ことが困難であり、又10重量部より多く加えても効果
的に粘度を下げることは出来ないので10重量部より多
く加えることはあまり実用的ではない。
【0040】本発明の油剤組成物水溶液のpHは4〜9
程度に調整することによりエマルジョンの安定性が長期
に保持されるが、pHがこの範囲を逸脱するとエマルジ
ョンの安定性が阻害され、水溶液の透明性が低下する。
従ってアミノ基とカルボン酸の比率はほぼ当モルが好ま
しいが、水溶液のpHを4〜9に保持できる範囲であれ
ば必ずしも当モル配合でなくても良い。
【0041】このようにアミノカルボン酸物質を加えて
も油剤組成物の水溶液の透明性即ち微粒なエマルジョン
の安定性を損ねたり、プレカーサーの経時劣化防止効果
を低下する恐れはほとんどない。これはこのようなアミ
ノカルボン酸物質を加えても経時劣化が促進されるよう
なことは全くないばかりでなく、プレカーサーの製造工
程での加熱ローラーへの油剤の固着も大幅に改善される
という効果も発揮される。これも油剤組成物及びその水
溶液の粘性が低いためと考えられる。
【0042】前述した如く経時劣化を防止するためには
加熱した時にある程度ゲル化する油剤が好ましいが、そ
のゲル化の判定のために加熱処理後の油剤をMEKで洗
浄して不溶分を測定する方法は実施例の項に詳しく記載
するが、本発明に係わる油剤組成物を230℃の空気中
で60分間加熱した後、MEKで洗浄して可溶成分を除
去してMEK不溶分を求めると30重量%以上となる。
【0043】このように230℃、60分の加熱による
ポリシロキサンのMEKの不溶分が30重量%以上とな
るように調合されたアミノ変性ポリシロキサン油剤組成
物を用いるとプレカーサーの経時劣化は著しく改善され
る。
【0044】一方本発明の範囲外であるアミノ変性ポリ
シロキサン油剤組成物、例えばポリアミノシロキサン
(粘度1500センチストークス、アミノ基の窒素0.
4%)とPOE(9)ノニルフェノールエーテルのモノ
リン酸エステル(乳化剤)の2:1(重量比)の混合物
に酸化防止剤〔2,2′−メチレンビス−(4−メチル
−6−t−ブチルフェノール)、商品名Sumilizer M
DP−S〕を3重量%添加した油剤にあっては230
℃、60分の加熱処理を施した後のMEK不溶分が10
重量%以下でありプレカーサーの経時劣化も非常に烈し
いものであった。これは酸化防止剤を添加することによ
りゲル化は防止出来てもプレカーサーの経時劣化を防止
する効果がまったくないためである。
【0045】特開平2−91225には種々の酸化防止
剤を添加することによりローラーやガイドへの油剤の固
着を防止する方法が提案されているが、その方法は確か
に油剤の固着に対しては効果があるかもしれないが、高
性能炭素繊維プレカーサーに必要な経時劣化を防止する
効果、即ちプレカーサーとしての高品質を維持する能力
という点から見ると逆効果をもたらす場合が多い。
【0046】この原因は、酸化防止剤を添加することに
よりポリシロキサンのゲル化を防止することは出来て
も、ポリシロキサンの一部を低分子化するために却って
ポリシロキサンの耐熱安定性を損なってしまうためと考
えられる。
【0047】本発明者等の研究によれば高性能炭素繊維
用プレカーサーに用いるシリコーン油剤としては耐炎化
処理工程程度の熱処理で、適度にゲル化することにより
耐熱安定性が向上するものの方が好ましいことが判明し
た。
【0048】更に油剤組成物の構成成分や水溶液の粘性
を適正化することにより、ローラーやガイドへの油剤の
固着が大幅に改善され効率よくプレカーサーや炭素繊維
を生産することが出来る。
【0049】
【実施例】本発明をより具体的に説明するために、以下
に代表的な実施例を示すが、本発明はここに記載した実
施例に限定されるものではない。尚以下の実施例に示さ
れる%及び部は特に限定しない限りは重量である。
【0050】実施例中に示されるプレカーサー及び耐炎
化糸のポリシロキサン(シリコーン油剤)の付着量、エ
マルジョンの粒子径、溶液の透明度、MEK不溶分、経
時劣化の評価は以下の方法により測定した。
【0051】(1) ポリシロキサン付着料の測定法:サン
プル(プレカーサー又は耐炎化糸)を水酸化カリウム/
ナトリウムブチラールでアルカリ溶融した後水に溶解
し、塩酸でpH1に調整する。これに亜硫酸ナトリウム
とモリブデン酸アンモニウムを加えて発色させ、ケイモ
リブデンブルーの比色定量(波長815mμ)を行い、
ケイ素の含有量を求める。このケイ素含有量と、予め同
法で求めた原料ポリシロキサン中のケイ素の含有量の値
を用いてサンプル中のポリシロキサン量を算出する。
【0052】(2) エマルジョンの粒子径測定:油剤組成
物の20重量%水溶液について、大塚電子製、ダイナミ
ック光散乱光度計DLS−700を用いて平均粒子径並
びに粒度分布を測定した。
【0053】(3) 油剤溶液の透明度測定:油剤組成物の
20重量%水溶液を1cmのセルに入れ、波長660m
μにおける純水に対する透過率を測定することによって
行った。尚、光度計は日立製作所製分光光度計100−
10型を用いた。
【0054】(4) MEK不溶分の測定:油剤組成物の2
0重量%水溶液約5gを重量既知の直径6cmのアルミ
製の平皿(深さ1.5cm)に採り、これを105℃の
熱風乾燥器で1時間乾燥した後重量を測定する(重量A
g)。油剤組成物中にはポリシロキサン(シリコーンオ
イル)以外に乳化剤やカルボン酸、アミノカルボン酸等
が含まれているため、105℃で1時間乾燥した後の重
量(重量Ag)はこれらも含んだ重量である。従ってポ
リシロキサンのみの重量は乾燥固形分(A−アルミ皿の
重量)gに油剤組成物中のポリシロキサンの重量比率を
掛けたものとなる。これがA′gのことである。この重
量比率は油剤組成物を調合したときのポリシロキサン/
乳化剤/カルボン酸/アミノカルボン酸の混合比率から
求まる。これを230℃の熱風乾燥器に入れ1時間加熱
する。加熱後の油剤をMEK50mlを用いてビーカー
に移し、室温で5分間攪拌してから、重量既知のガラス
フィルターで濾過する。これを更に50mlのMEKで
2回洗浄してMEK可溶分を除去した後、105℃の熱
風乾燥器で30分間乾燥してから重量を測定する(重量
Bg)。尚、230℃1時間加熱しても乳化剤やカルボ
ン酸、アミノカルボン酸はMEKに溶解するためMEK
で洗浄した後はゲル化して不溶化したポリシロキサンの
みがガラスフィルターの上に残る。従ってMEK不溶分
は下式となる。 A′g=(A−アルミ皿)g×油剤組成物中のポリシロ
キサン混合重量比
【0055】(5) プレカーサーの経時劣化評価法:生産
直後のプレカーサーを、220℃、230℃、240℃
の熱風循環式耐炎化炉で各20分間滞留せしめて耐炎化
した後、最高温度500℃、1000℃、1400℃の
炭素化炉中で連続的に炭素化する。得られた炭素繊維は
JIS−7601の方法に従ってストランド強度を測定
する(強度A)。樹脂溶液としてはエピコート#828
/3フッ化ホウ素モノエチルアミン/メチルエチルケト
ン=100/3/30(重量比)の混合溶液を用いた。
一方同じプレカーサーを60℃の温風循環式恒温槽内に
3カ月間保管した後同様に耐炎化、炭素化して得た炭素
繊維のストランド強度を同様に測定する(強度B)。 経時劣化後の強度保持率=B/A×100(%)
【0056】実施例 1 アクリロニトリル98%、メタアクリル酸2%からなる
共重合体を紡糸し、油剤組成物を付与して得た1200
0フィラメント(単糸デニール0.6d)のプレカーサ
ーを、220℃、230℃、240℃の熱風循環式耐炎
化炉で各20分間滞留せしめて耐炎化した後、最高温度
500℃、1000℃、1400℃の炭素化炉を用いて
連続的に炭素化せしめた。
【0057】プレカーサーには後掲の表1に記載した如
く、組成の異なる4種の油剤組成物1〜4を付与し、常
温(20〜30℃)、40℃、60℃で0〜12カ月保
管し、これらを焼成した。プレカーサーの保管期間と得
られた炭素繊維の物性を表1に示す。
【0058】尚油剤組成物1,2,3,4を用いたプレ
カーサーのポリアミノシロキサン付着量はそれぞれ1.
25%、1.20%、1.23%、1.21%であっ
た。
【0059】この結果から明らかな如く、本発明による
油剤組成物3及び4と比較例1とでは大きな差があり比
較例1の如き油剤組成物ではプレカーサーの経時劣化が
著しく、生産直後に高性能を有していたプレカーサーで
あっても長期の保管に堪え難いものとなる。
【0060】1〜4の4種の油剤組成物を用い、生産後
常温で12カ月経過した後耐炎化した耐炎化糸を、ME
Kを溶剤としてソックスレー抽出器で抽出し、抽出前後
の耐炎化糸のポリアミノシロキサン量を測定した。この
結果を表2に示す。油剤組成物1を用いたものは耐炎化
工程でもポリアミノシロキサンがかなり減少するが、M
EK抽出を行うと更に多くのポリアミノシロキサンが除
去されてしまう。一方本発明による油剤組成物3及び4
にあっては、耐炎化工程での逸散も少なく、MEK抽出
を行っても耐炎化糸に付着しているポリアミノシロキサ
ンの80%以上がMEKに溶解しないで残存している。
【0061】これは耐炎化のような高温下において比較
例1の如き油剤組成物ではポリアミノシロキサンのゲル
化よりも低分子化反応の方が優先しているためと考えら
れる。
【0062】比較例2の油剤組成物はMEK不溶分も多
く、経時劣化もほとんどないが、本発明による油剤組成
物3及び4に比べると20%水溶液の粘度も高く炭素繊
維の強度も低めであった。この油剤組成物2はポリアミ
ノシロキサンと乳化剤及び乳酸を加えて混練する際の粘
性が非常に高いため、油剤組成物3及び4を混練するの
に比べて3倍もの時間を要した。又プレカーサーの製造
工程における120〜150℃の乾燥ローラー上の油剤
の固着物の量は油剤組成物3及び4に対して油剤組成物
2は約10倍も多かった。
【0063】実施例 2 アミノ変性ポリシロキサン油剤と、これを乳化させるた
めの乳化剤及びカルボン酸の組成及び粘度を低下させる
ためのアミノカルボン酸物質を変更した他は実施例1と
同様にプレーカーサーを作成し同様に焼成した。但しプ
レカーサーは60℃で3カ月保管し、保管前後のプレカ
ーサーから得られた炭素繊維の性能を比較し表3に示
す。
【0064】表3から明らかな如く、乳化剤がリン酸エ
ステル、スルホン酸エステル、硫酸エステルのような強
酸性基を有するものは、MEK不溶分が少なく、プレカ
ーサーの経時劣化が激しいために、60℃、3カ月経過
後に得られた炭素繊維の強度低下が大きい(油剤組成物
14〜17)。又酸化防止剤を添加しても経時劣化の防
止には効果がないばかりか、むしろ経時劣化が加速され
る傾向にあることが判る(油剤組成物19,21)。一
方本発明によるカルボン酸以外には、強酸性基を有しな
い油剤組成物では60℃で3カ月という苛酷な条件下で
も炭素繊維の強度低下率は非常に僅かであり(油剤組成
物5〜11)、これらのものは常温では1年経過しても
実質的な経時劣化は認められない。
【0065】本発明による油剤組成物5〜11と比較例
の油剤組成物18〜21との結果を見れば明らかな如
く、強酸性基を有しない乳化剤に強酸性基を有する乳化
剤を僅か10〜20%混合しただけでも、経時劣化は著
しく加速され、強酸性基が経時劣化に悪影響しているこ
とが実証された。
【0066】一方油剤組成物12及び13は強酸性基を
含んでいないので経時劣化防止効果はあるが、本発明の
油剤組成物に比して水溶液の粘度が高く、炭素繊維の強
度レベルも低い。
【0067】実施例 3 アミノ基に由来する窒素の含有量が異なる(0.03〜
2.5%)アミノ変性ポリシロキサン80部にPOE
(9)ノニルフェノールエーテル20部とアミノ基と等
モルの乳酸とを加えた油剤100部に対して、ジブチル
エタノールアミンの酢酸塩を4.5部加えた油剤組成物
を用いた他は実施例1と同様に作成したプレカーサー
を、実施例1と同様に焼成して炭素繊維を得た。ここで
用いたアミノ変性ポリシロキサンの25℃における粘度
は1300〜5000センチストークスの範囲のもので
あり、プレカーサーに付与したアミノ変性ポリシロキサ
ンの量は1.0〜1.2%である。
【0068】油剤組成物の20%水溶液の透明度及び得
られた炭素繊維の強度は表4に示す。この結果から明ら
かな如くアミノ基に由来する窒素の含有量が2%を越え
たり、或いは0.05%を下回るアミノ変性ポリシロキ
サンを用いると高強度炭素繊維は得られない。又窒素含
有量が0.05%を下回ると透明性の良い水溶液が得ら
れない。
【0069】実施例 4 アクリロニトリル98%、メタアクリル酸2%からなる
共重合体を紡糸しこれにアミノ基に由来する窒素の含有
量が0.3〜0.5%であり25℃における粘度が15
0〜47820センチストークスであるアミノ変性ポリ
シロキサン70部にPOE(9)ラウリルエーテル30
部と酢酸3部及びジブチルエタノールアミンの酢酸塩
4.5部とを加えてなる油剤組成物を付与した6000
フィラメント(単糸デニール0.8d)のプレカーサー
を実施例1と同様に焼成して炭素繊維を得た。尚プレカ
ーサーに付与したアミノ変性ポリシロキサンは1.0〜
1.2%の範囲である。
【0070】これらの炭素繊維の強度を表5に示す。尚
ここで用いた油剤組成物の20%水溶液の透明度は何れ
も90〜95%の範囲であった。
【0071】アミノ変性ポリシロキサンの粘度が低いも
のは耐炎化工程で単糸同志が融着しておりこのため炭素
化工程で著しく脆化し炉内で切断が起こり満足な炭素繊
維は得られなかった。少なくとも500センチストーク
ス以上の粘度を有するアミノ変性ポリシロキサンが好結
果を与えることが明らかとなった。
【0072】実施例 5 アミノ基に由来する窒素が0.5%、25℃の粘度が1
700センチストークスであるアミノ変性ポリシロキサ
ン80部とPOE(9)ラウリルルフェノールエーテル
20部の配合物に対して、添加するモノカルボン酸の種
類と添加量を変えて作成した油剤組成物の20%水溶液
の透明度を測定し表6に示す。
【0073】尚油剤組成物の粘度を低下させるために加
えたジブチルエタノールアミンの酢酸塩の量は4.5部
と一定である。
【0074】炭素数7以上のペラルゴン酸やラウリル酸
及びジカルボン酸では乳化促進効果がなく、又モノカル
ボン酸とアミノ変性ポリシロキサンのアミンの配合モル
比は0.3/1よりカルボン酸が少ないと極度に乳化性
が低下する。又アミン1モルに対して5モル以上のカル
ボン酸を加えても乳化性は向上しないので無意味であ
る。
【0075】実施例 6 アミノ基に由来する窒素が0.4%、25℃の粘度が1
500センチストークスであるアミノ変性ポリシロキサ
ンとPOE(9)ノニルフェノールエーテル(乳化剤)
との配合比を10/90〜90/10迄変化させたもの
100部に対して、更にアミノ変性ポリシロキサンのア
ミンと当モルの乳酸を添加し、更にジブチルエタノール
アミンの酢酸塩を4.5部を混合してなる油剤組成物の
20%水溶液の透明度を測定して表7に示す。
【0076】アミノ変性ポリシロキサンと乳化剤の配合
割合は80/20〜20/80の範囲が好適でありそれ
より乳化剤が少ないとモノカルボン酸を加えても透明性
の良い油剤組成物の水溶液は得られない。一方この範囲
以上に乳化剤を加えても透明性が向上しないので無意味
である。
【0077】実施例 7 アミノ基に由来する窒素が0.4%、25℃の粘度が1
700センチストークスのアミノ変性ポリシロキサン8
0部とPOE(9)ノニルフェノールエーテル20部と
酢酸2部及びアニリンの酢酸塩3部とからなる油剤組成
物を0.05〜6.0%付与した以外は実施例1と同様
に作成したプレカーサーを同様に焼成して炭素繊維を得
た。この炭素繊維の強度は表8に示す。
【0078】尚プレカーサーに付与した油剤組成物の量
はプレカーサーをソックスレー抽出器を用いMEKで1
時間抽出し、抽出液を蒸発乾固して求めたものである
が、この値はプレカーサーを前述した比色分析で求めた
アミノ変性ポリシロキサン量と油剤組成物中のアミノ変
性ポリシロキサンの混合比率から計算で求めた油剤組成
物量とほぼ同一の値であった。
【0079】プレカーサーに付与された油剤組成物が
0.1%に満たない場合は、耐炎化工程での単糸同志の
融着が起こり、それがために炭素化での脆化が激しく、
炉内で切断し満足な炭素繊維が得られなかった。又油剤
組成物を5%以上付与しても効果はなくむしろ炭素繊維
の強度は低下傾向を示した。従ってプレカーサーに付与
される油剤組成物の適正範囲は0.1〜5.0%であり
より好ましくは0.5〜2.5%の範囲である。
【0080】実施例 8 アミノ変性ポリシロキサンと他のポリシロキサンの混合
系の油剤について調査するため、油剤組成物22〜28
を調整して透明度、MEK不溶分を測定し、その結果を
表9に示す。本発明の範囲である油剤組成物の20%水
溶液の透明度が60%以上、MEK不溶分が30%以上
という特性を保持をするためにはシリコーン油剤中のア
ミノ変性ポリシロキサンの比率が少なくとも50%以上
でなければならないことが判る。アミノ変性ポリシロキ
サンがポリジメチルシロキサンより少ないものは微粒な
エマルジョンが得られないために水溶液の透明度が低
く、MEK不溶分が少なく、高強度炭素繊維用プレカー
サー油剤としては不向きである。一方エーテル変性ポリ
シロキサンはそのもの自体が水溶性であるため、アミノ
変性ポリシロキサンとの混合水溶液の透明度は高いもの
の、MEK不溶分がすくない。エーテル変性ポリシロキ
サン自体を230℃で1時間加熱すると約75%もの揮
発分があり耐熱安定性に欠けることが判明した。
【0081】実施例 9 実施例8の7種の油剤を用いた他は、実施例4と同様に
して作成したプレカーサーを、実施例1と同様に焼成し
て炭素繊維を得た。又これらのプレカーサーを60℃で
3カ月間保管し、経時劣化後のプレカーサーを再度同一
条件で焼成して強度保持率を求めた。これらの結果は表
10に示す。
【0082】ポリジメチルシロキサンやエーテル変性ポ
リシロキサンを多く加えた油剤を用いた場合、高強度炭
素繊維が得られないばかりでなく、強度保持率も低いこ
とが明らかであり、少なくともアミノ変性ポリシロキサ
ンの比率は50%以上でなければならない。
【0083】
【0084】油剤名の組成
【0085】油剤1(比較例);ポリアミノシロキサン
(粘度1500cs,チッソ含有量0.4%)/POE
(9)ノニルフェノールホスフェート=2/1の混合
物。 20%水溶液の透明度;98%。 20%水溶液の粘度;2.6cst。 MEK不溶分;6.5%。 平均粒子径;19.2mμ、最大粒子径;44mμ。
【0086】油剤2(比較例);ポリアミノシロキサン
(粘度1500cs,チッソ含有量0.4%)/POE
(9)ノニルフェノールエーテル=2/1の混合物10
0部に対して乳酸3部を添加した油剤組成物。 20%水溶液の透明度;96%。 20%水溶液の粘度;28.5cst。 MEK不溶分;85.6%。 平均粒子径;20.2mμ、最大粒子径;92mμ。
【0087】油剤3(本発明);ポリアミノシロキサン
(粘度1500cs,チッソ含有量0.4%)/POE
(9)ノニルフェノールエーテル=2/1の混合物10
0部に対して乳酸3部を添加したものにアミノエチルエ
タノールアミンの酢酸塩を1.5部加えた油剤組成物。 20%水溶液の透明度;93%。 20%水溶液の粘度;2.7cst。 MEK不溶分;83.0%。 平均粒子径;23.8mμ、最大粒子径;85mμ。
【0088】油剤4(本発明);ポリアミノシロキサン
(粘度1500cs,チッソ含有量0.4%)/POE
(9)ノニルフェノールエーテル=2/1の混合物10
0部に対して酢酸2部と酸化防止剤(商品名 アデカス
タブAO−23 アデカアーガス製)3部を添加したも
のにジブチルエタノールアミンの酢酸塩を4.5部加え
た油剤組成物。 20%水溶液の透明度;93%。 20%水溶液の粘度;2.6cst。 MEK不溶分;80.1%。 平均粒子径;25.5mμ、最大粒子径;82mμ。
【0089】
【0090】
【0091】油剤名と組成
【0092】油剤5(本発明);ポリアミノシロキサン
(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/POE
(9)ノニルフェノールエーテル/酢酸=70/30/
2の混合物102部にジブチルエタノールアミンの酢酸
塩を4.5部加えた油剤組成物。
【0093】油剤6(本発明);ポリアミノシロキサン
(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/POE
(9)ノニルフェノールエーテル/酢酸=70/30/
2の混合物102部にアニリンの酢酸塩を3部加えた油
剤組成物。
【0094】油剤7(本発明);ポリアミノシロキサン
(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/POE
(9)ノニルフェノールエーテル/酢酸=70/30/
2の混合物102部にベーターアラニンの酢酸塩を5部
加えた油剤組成物。
【0095】油剤8(本発明);ポリアミノシロキサン
(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/POE
(9)ラウリルフェノールエーテル/酢酸=70/30
/3の混合物103部にPOE(4)オクチルアミンの
酢酸塩を3部を加えた油剤組成物。
【0096】油剤9(本発明);ポリアミノシロキサン
(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/POE
(9)ノニルフェノールエーテル/POE(9)sec
−アルキル(炭素数12〜14混合)エーテル/乳酸=
70/15/15/3の混合物103部にPOE(1
0)ラウリルアミンの酢酸塩6部を加えた油剤組成物。
【0097】油剤10(本発明);ポリアミノシロキサ
ン(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/PO
E(5)オクチルエーテル/乳酸=60/40/2の混
合物102部にトリエチルオクチルアミンの酢酸塩8部
を加えた油剤組成物。
【0098】油剤11(本発明);ポリアミノシロキサ
ン(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/PO
E(9)ラウリル酸エステル/酢酸=67/33/3の
混合物103部にジエチルオレイルイミダゾールの蟻酸
塩7部を加えた油剤組成物。
【0099】油剤12(比較例);ポリアミノシロキサ
ン(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/PO
E(7)ノニルフェノールエーテル/酢酸=70/30
/3の混合物。
【0100】油剤13(比較例);ポリアミノシロキサ
ン(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/PO
E(5)オクチルエーテル/乳酸=60/40/3の混
合物。
【0101】油剤14(比較例);ポリアミノシロキサ
ン(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/PO
E(9)ノニルフェノールホスフェート=70/30の
混合物。
【0102】油剤15(比較例);ポリアミノシロキサ
ン(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/PO
E(9)ノニルフェノールスルホネート=80/20の
混合物。
【0103】油剤16(比較例);ポリアミノシロキサ
ン(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/PO
E(5)オクチルサルフェート=60/40の混合物。
【0104】油剤17(比較例);ポリアミノシロキサ
ン(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/PO
E(9)sec−アルキル(炭素数12〜14混合)ホ
スフェート=70/30の混合物。
【0105】油剤18(比較例);ポリアミノシロキサ
ン(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/PO
E(9)ノニルフェノールエーテル/POEノニルフェ
ノールホスフェート/酢酸=60/32/8/2の混合
物。
【0106】油剤19(比較例);ポリアミノシロキサ
ン(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/PO
E(9)ノニルフェノールエーテル/POEノニルフェ
ノールホスフェート/酢酸=60/32/8/2の混合
物102部に対して酸化防止剤( Sumilizer MDP−
S 住友化学製)2部を添加したもの。
【0107】油剤20(比較例);ポリアミノシロキサ
ン(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/PO
E(9)ノニルフェノールエーテル/POEノニルフェ
ノールホスフェート/乳酸=60/36/4/3の混合
物。
【0108】油剤21(比較例);ポリアミノシロキサ
ン(粘度1700cs、チッソ含有量0.6%)/PO
E(9)ノニルフェノールエーテル/POEノニルフェ
ノールホスフェート/乳酸=60/36/4/3の混合
物103部に対して酸化防止剤( Sumilizer MDP−
S 住友化学製)3部を添加したもの。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】油剤名と組成 実施例には次のものを用いた。 アミノ変性ポリシロキサン;粘度1700センチストー
クス,アミノ基に由来する窒素0.4%。 ポリジメチルシロキサン;粘度40000センチストー
クス。 エーテル変性ポリシロキサン;粘度4000センチスト
ークス,POEの割合は約50%であり水溶性のもの。 乳化剤;POE(9)ノニルフェノールエーテル。 アミノカルボン酸;いずれの油剤に対してもジブチルエ
タノールアミンの酢酸塩を添加。
【0116】油剤22(本発明);アミノ変性ポリシロ
キサン/ポリジメチルシロキサン/乳化剤/酢酸/アミ
ノカルボン酸=60/10/30/2/4.5の混合
物。
【0117】油剤23(本発明);アミノ変性ポリシロ
キサン/ポリジメチルシロキサン/乳化剤/酢酸/アミ
ノカルボン酸=40/30/30/2/4.5の混合
物。
【0118】油剤24(本発明);アミノ変性ポリシロ
キサン/ポリジメチルシロキサン/乳化剤/酢酸/アミ
ノカルボン酸=35/35/30/2/4.5の混合
物。
【0119】油剤25(比較例);アミノ変性ポリシロ
キサン/ポリジメチルシロキサン/乳化剤/酢酸/アミ
ノカルボン酸=25/45/30/2/4.5の混合
物。
【0120】油剤26(本発明);アミノ変性ポリシロ
キサン/エーテル変性ポリシロキサン/乳化剤/酢酸/
アミノカルボン酸=50/20/30/2/4.5の混
合物。
【0121】油剤27(本発明);アミノ変性ポリシロ
キサン/エーテル変性ポリシロキサン/乳化剤/酢酸/
アミノカルボン酸=35/35/30/2/4.5の混
合物。
【0122】油剤28(比較例);アミノ変性ポリシロ
キサン/エーテル変性ポリシロキサン/乳化剤/酢酸/
アミノカルボン酸=25/45/30/2/4.5の混
合物。
【0123】
【0124】
【発明の効果】以上詳述した如く本発明は、特定組成の
アミノ変性ポリシロキサンと強酸性基を有しないノニオ
ン系乳化剤、モノカルボン酸及びアミノカルボン酸を必
須成分とすることにより、油剤組成物水溶液の透明度を
高めかつ粘性を低下せしめ更にプレカーサーの保管中に
起こる経時劣化を防止することにより高性能炭素繊維用
プレカーサーの工業生産を可能かつ容易にした。
【0125】更に本発明の油剤組成物を付与したプレカ
ーサーが長期の保管後においてもその性能が保たれるこ
とにより、このプレカーサーを焼成して得られる高性能
炭素繊維の工業生産がプレカーサーの生産スケジュール
に影響されることなく、いつでも容易に行うことが可能
となった意義は非常に大きいものである。
【0126】又油剤組成物の粘性が低いことは油剤の調
合を容易にしたばかりでなく、プレカーサーの生産工程
における乾燥ローラーの汚染を低減し、プレカーサーの
工業生産性を高め、かつ粘性の低い油剤組成物がゆえに
プレカーサーに均一に付与することが容易となり、より
高強度の炭素繊維が得られる結果を生み出した。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年8月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】従ってプレカーサーの経時劣化を防止する
ためにはシコーン油剤がある程度ゲル化し易い方が好
ましいと判断した。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正内容】
【0025】この目的はアミノ変性ポリシロキサン中の
アミノ基に由来する窒素の含有量が0.05〜2.0重
量%の範囲にあり、25℃における粘度が500センチ
ストークス以上であるアミノ変性ポリシロキサンを少な
くとも50重量%以上含有するシリコーン油剤に、アミ
ノ基1モルに対して0.3〜5.0モル当量の炭素数6
以下の脂肪族モノカルボン酸を加えてなる油剤80〜2
0重量部と、POEアルキルアリールエーテル又はPO
Eアルキルエーテル又はPOE脂肪酸エステルを主体と
するノニオン系乳化剤20〜80重量部との混合物10
0重量部に対してアルキルアミンのカルボン酸塩、アリ
ールアミンのカルボン酸塩、アルキルアリールアミンの
カルボン酸塩、アミノ酸及びベタイン化合物からなる群
から選択したアミノカルボン酸物質を0.2〜10重量
部混合してなる油剤組成物を、プレカーサーに0.1〜
5.0重量%付与することにより達成される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0036
【補正方法】変更
【補正内容】
【0036】本発明のアミノ変性ポリシロキサンを50
重量%以上含有するシリコーン油剤/低級モノカルボン
酸/ノニオン系乳化剤からなる組成物100重量部に対
してアルキルアミンのカルボン酸塩、アリールアミン
カルボン酸塩、アルキルアリールアミンのカルボン酸
塩、アミノ酸及びベタイン化合物からなる群から選択し
アミノカルボン酸物質を0.2〜10重量部を加えて
混練すると、油剤組成物の粘性が低下して混合操作が容
易になるばかりでなく、油剤組成物の水溶液の粘度が大
幅に低下する。これによりプリカーサーの油剤処理が容
易となり、油剤は短時間で均一にプレカーサーに付与さ
せることが出来る。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正内容】
【0051】(1)ポリシロキサン付着料の測定法:サ
ンプル(プレカーサー又は耐炎化糸)を水酸化カリウム
/ナトリウムブチラーでアルカリ溶融した後水に溶解
し、塩酸でpH1に調整する。これに亜硫酸ナトリウム
とモリブデン酸アンモニウムを加えて発色させ、ケイモ
リブデンブルーの比色定量(波長815mμ)を行い、
ケイ素の含有量を求める。このケイ素含有量と、予め同
法で求めた原料ポリシロキサン中のケイ素の含有量の値
を用いてサンプル中のポリシロキサン量を算出する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正内容】
【0055】(5)プレカーサーの経時劣化評価法:生
産直後のプレカーサーを、220℃、230℃、240
℃の熱風循環式耐炎化炉で各20分間滞留せしめて耐炎
化した後、最高温度500℃、1000℃、1400℃
の炭素化炉中で連続的に炭素化する。得られた炭素繊維
はJIS−R−7601の方法に従ってストランド強度
を測定する(強度A)。樹脂溶液としてはエピコート#
828/3フッ化ホウ素モノエチルアミン/メチルエチ
ルケトン=100/3/30(重量比)の混合溶液を用
いた。一方同じプレカーサーを60℃の温風循環式恒温
槽内に3カ月間保管した後同様に耐炎化、炭素化して得
た炭素繊維のストランド強度を同様に測定する(強度
B)。 経時劣化後の強度保持率=B/A×100(%)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D01F 9/22 7199−3B D06M 13/17 15/643 // D06M 101:28

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アミノ基に由来する窒素の含有量が0.
    05〜2.0重量%の範囲にあり、25℃における粘度
    が500センチストークス以上であるアミノ変性ポリシ
    ロキサンを少なくとも50重量%以上含有するシリコー
    ン油剤に、アミノ基1モルに対して0.3〜5.0モル
    当量の炭素数6以下の低級脂肪族モノカルボン酸を加え
    てなる油剤80〜20重量部と、ポリオキシエチンレア
    ルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリー
    ルエーテル又はポリオキシエチレン脂肪酸エステルを主
    体とするノニオン系乳化剤20〜80重量部との混合物
    100重量部に対して、アルキルアミン、アリールアミ
    ンもしくはアルキルアリールアミンのカルボン酸塩、ア
    ミノ酸又はベタイン化合物のアミノカルボン酸物質を
    0.2〜10重量部含有することを特徴とする高性能炭
    素繊維用プレカーサー用油剤組成物。
  2. 【請求項2】 油剤組成物の20重量%水溶液の透明度
    が60%以上であることを特徴とする請求項1の油剤組
    成物。
  3. 【請求項3】 油剤組成物を230℃の空気中で60分
    間加熱した後、メチルエチルケトンで洗浄した際のポリ
    シロキサンの不溶分が30重量%以上であることを特徴
    とする請求項1の油剤組成物。
  4. 【請求項4】 請求項1の油剤組成物を0.1〜5.0
    重量%付与したアクリロニトリルを90重量%以上含有
    するアクリロニトリル系炭素繊維用プレカーサーであっ
    て、前記プレカーサーを作成後直ちに焼成して得た炭素
    繊維の強度と、該プレカーサーを60℃の空気中で90
    日間保管した後において同一の焼成条件で焼成して得ら
    れる炭素繊維の強度を比較した場合、後者の炭素繊維強
    度が前者の炭素繊維強度の90%以上の強度を保持する
    ことを特徴とする高性能炭素繊維用プレカーサー。
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