JP2004300606A - 耐炎化繊維、及びその製造方法 - Google Patents

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Daisuke Masagaki
大介 正垣
Hidekazu Yoshikawa
秀和 吉川
Toshitsugu Matsuki
寿嗣 松木
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Abstract

【課題】低い低耐炎化繊維率とギ酸に対する低い溶解量を示す、均一に耐炎化された耐炎化繊維を提供する。
【解決手段】油剤が乳化剤とベースオイルとを含み、乳化剤が、エチレンオキシド付加モル数が1〜20、アルキル基の炭素数が8〜18のポリオキシエチレンアルキルエーテルの単一成分であり、ベースオイルがアミノ変性シリコーンである油剤を付与したアクリル繊維を耐炎化処理することにより、耐炎化繊維中の低耐炎化繊維の含有率が1.5%以下で、耐炎化繊維のギ酸に対する溶解量が12%以下で、比重が1.350〜1.365である耐炎化繊維を製造する。この耐炎化繊維を炭素化することにより、高品位で高強度の炭素繊維が製造できる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素繊維の製造用等に有用な耐炎化繊維、及びその製造方法に関する。更に詳述すれば、本発明は耐炎化工程における均一な反応進行状態を定量的に把握する指標を提案し、その指標を利用することによりアクリル繊維に均一な耐炎化を施し、その結果高品質・高性能の炭素繊維を得ることのできる耐炎化繊維及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、炭素繊維製造用原料としてアクリル繊維を用い、これに耐炎化処理を施し、更に炭素化処理を施して高性能炭素繊維を得ることは広く知られており、またこの方法は工業的にも実施されている。
【0003】
特に、近年炭素繊維の用途はスポーツ・レジャー用品から航空宇宙分野、特に航空機の一次構造材にまで展開されている。さらに、炭素繊維の高い比強度、比弾性の特性を生かして製品の軽量化を図ることにより省エネルギー化を図り、これにより排出COの削減に寄与することを目的として各産業界は炭素繊維の新しい利用方法に注目し、また研究を進めている。
【0004】
このような状況下において、炭素繊維にも更なる高性能化、低製造コスト化、また取扱性に優れる高品質化等の課題の解決が要請されている。
【0005】
一方、炭素繊維を製造する場合、原料繊維であるアクリル繊維の性質は目的物である炭素繊維の性能に直接影響する。従って、高性能、低製造コストで且つ取扱性のよい炭素繊維製造用アクリル繊維の開発が望まれている。
【0006】
一般にアクリル繊維から炭素繊維を製造する場合、先ず通常200〜300℃の酸化性ガス雰囲気中で、アクリル繊維を酸化(いわゆる耐炎化)処理する。次いで、350℃以上の不活性ガス雰囲気中で炭素化処理又は黒鉛化処理を行う。高性能の炭素繊維を製造するためには、耐炎化処理時に、ストランド(数百本乃至数万本の単繊維からなる繊維束)およびストランドを構成する単繊維が均一に環化及び酸化反応を起すことが重要である。
【0007】
耐炎化の程度を判断する指標として一般的な方法は、耐炎化繊維の比重を測定する方法である。しかしこの指標では、ストランド内部に発生する耐炎化の斑(焼け斑)を判断できない。耐炎化の焼け斑は、ストランド表面からストランド内部に向って耐炎化反応が進行する際に、及び単繊維表面から単繊維中心向って耐炎化反応が進行する際に、各部分で耐炎化反応の進行速度に差が生じることにより発生する。
【0008】
ストランドの比重が適正な数値を示していても、ストランドの外側から内部に向い、或いは単繊維表面から中心に向って焼け斑が存在している場合、このストランドを炭素化する際の炭素化工程において工程上のトラブルが発生し易く、更に目的とする高性能の炭素繊維を得難くなる。
【0009】
高性能炭素繊維の製造においては、これらトラブルの発生を防止することが重要である。
【0010】
酸化繊維製造の原料のアクリル繊維を製造する紡糸工程において、アクリル繊維の表面に1次オイルが付与される。
【0011】
1次オイルとしては、紡糸工程における工程安定性を高めることを目的とする油剤が用いられる。例えば、脂肪族エステル塩やシリコーン系油剤が用いられるが、これらに限られない。また、油剤中に存在する塩などにより得られる炭素繊維の性能は左右されるので、性能の低下を避けるため、油剤の付与量は通常極少量に制限される。
【0012】
耐炎化処理工程時においては、ストランドを構成する単繊維相互の膠着、並びに、糸切れなどが一般的に発生し易くなる。この問題を解決する方法として耐炎化工程の前にストランドに2次的にオイル付与がなされる。2次オイルのベースオイルは主にジメチルシリコーンにアミノ基等を結合した変性シリコーン(アミノ変性シリコーン)油剤が多用される(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0013】
特に、耐炎化処理工程における単繊維相互の融着を効果的に低減させるには、繊維表面に油剤が均一にコーティングされる必要がある。
【0014】
これらの油剤は、通常水エマルジョンとしてアクリル繊維に付与される。油剤を有機溶剤等に溶解して付与することも可能であるが、溶剤による作業環境の悪化等が考えられるため、水エマルジョン系を用いることが好ましい。
【0015】
これらのシリコーン系油剤が付与されたアクリル繊維は、耐炎化時に膠着を起しがたい。しかし、これらのシリコーン系油剤を水エマルジョンの状態にして耐炎化処理前のアクリル繊維に付与する場合、得られる耐炎化繊維は比重低下がみられ、更にこの耐炎化繊維を用いて製造する炭素繊維は強度が低下する問題がある。
【0016】
この酸化繊維の比重低下及び炭素繊維の強度低下は、以下のようにして起こると考えられる。即ち、油剤を水エマルジョンにするためには、ベースオイルを乳化させる乳化剤が不可欠となる。現在、使用されている主な乳化剤は、高級アルコール或はフェニルエーテル類にエチレンオキシド(EO)を付加したものである(例えば、特許文献5、6参照)。
【0017】
水エマルジョンとしての長期安定性を保持させるためには、EO付加モル数の異なる複数の乳化剤を多く併用するのが一般的である。
【0018】
従って、油剤の乳化用に用いられる乳化剤は通常、EO付加モル数が多く、且つ異なるEO付加モル数乳化剤の混合乳化剤系になっていることが多い。このような多成分系乳化剤によって乳化された油剤を炭素繊維製造用アクリル繊維に付与する場合、単繊維表面に浸透した乳化剤が耐炎化処理の際に発熱反応を起こし、表面の耐炎化を促進させている可能性がある。この場合は、中心部分の耐炎化が遅れ、単繊維表面から中心にかけて焼け斑を生じることになる。しかし、繊維中心まで耐炎化されていないので、繊維全体の比重は低下する。そして、この比重の低い、焼け斑を有する耐炎化繊維を炭素化処理に付すと、切断などの工程トラブルを引き起こすことになる。
【0019】
【特許文献1】
特開昭52−34025号公報(第3〜4頁)
【特許文献2】
特開昭56−49022号公報(第2頁)
【特許文献3】
特開昭60−99011号公報(第2〜4頁)
【特許文献4】
特許第2589192号公報(第2頁)
【特許文献5】
特公平6−57888号公報(第2〜3頁)
【特許文献6】
特開平8−209543号公報(第2〜4頁)
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、耐炎化繊維を製造するに当たり、単一成分の乳化剤によって乳化されたベースオイル(アミノ変性シリコーン油剤)を炭素繊維製造用アクリル繊維に付与し、低耐炎化繊維(後述する)の本数、耐炎化単繊維の弾性率、耐炎化繊維のギ酸溶解量について検討した。従来、これらの要素を得られる耐炎化繊維の物性と関連させて検討した例はない。
【0021】
これらの検討を続けているうちに、本発明者らは、耐炎化工程において単繊維内部に侵入した油剤に含有される乳化剤に結合しているエチレンオキシド基(EO)が発熱反応を引き起こし、単繊維中の乳化剤が侵入した箇所の耐炎化を促すことにより焼け斑を発生させると考えるようになった。
【0022】
油剤の水エマルジョンを形成するために乳化剤は必要不可欠である。しかし、炭素繊維にとっては乳化剤は不必要な成分である。以上のことを考慮すると、高品位な炭素繊維を製造するためには、親油基及びEO付加モル数を規定した一種類(単一成分)の乳化剤を用いてベースオイルを乳化し、この乳化した水エマルジョンを炭素繊維製造用アクリル繊維に付与することが望ましいと考えるに至った。 また、上記乳化剤は単一成分であれば親油基がフェニル基を有するでも良く、またフェニル基を有さないものでも良いが、ノニルフェノール等の有害性を考慮すると、フェニル基を含まないアルキルエーテル系乳化剤が好適であると考えた。
【0023】
本発明は上記考察の結果完成するに至ったもので、その目的とするところは、焼け斑や単繊維相互間の膠着が少なく、また炭素化工程における構造欠陥の発生や糸切れを低減せしめ、高性能の炭素繊維を製造することができる耐炎化繊維を提供することにある。また、本発明の異なる目的は、単一乳化剤を用いて製造されたアミノ変性シリコーン油剤を用いることにより、単繊維内部のボイドへの乳化剤の浸透の不均一性が抑制され、その結果焼け斑や単繊維相互の膠着を少なくできる耐炎化繊維の製造方法を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
【0025】
〔1〕 耐炎化繊維中の低耐炎化繊維の含有率が、1.5%以下で、耐炎化繊維のギ酸に対する溶解量が12質量%以下で、比重が1.350〜1.365である耐炎化繊維。
【0026】
〔2〕 耐炎化単繊維の応力歪み曲線における歪みが5〜15%の範囲において弾性率が1.8〜2.5GPaである〔1〕に記載の耐炎化繊維。
【0027】
〔3〕 油剤を付与したアクリル繊維を耐炎化処理する耐炎化繊維の製造方法において、油剤が乳化剤とベースオイルとを含み、乳化剤が、エチレンオキシド付加モル数が1〜20、アルキル基の炭素数が8〜18のポリオキシエチレンアルキルエーテルの単一成分であり、ベースオイルがアミノ変性シリコーンであることを特徴とする、耐炎化繊維中の低耐炎化繊維の含有率が1.5%以下で、耐炎化繊維のギ酸に対する溶解量が12質量%以下で、比重が1.350〜1.365である耐炎化繊維の製造方法。
【0028】
〔4〕 油剤中の乳化剤の配合量がベースオイル100質量部に対し5〜10質量部である〔3〕に記載の耐炎化繊維の製造方法。
【0029】
〔5〕 ベースオイルが、25℃における動粘度が50〜1000センチストークス、アミノ当量が500〜10000g/molのアミノ変性シリコーンである〔3〕に記載の耐炎化繊維の製造方法。
【0030】
〔6〕 油剤のアクリル繊維への付与量が、アクリル繊維乾燥質量当たり0.1〜1.5質量%である〔3〕に記載の耐炎化繊維の製造方法。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0032】
(耐炎化繊維)
本発明の耐炎化繊維は、全耐炎化繊維中に含まれる低耐炎化繊維の本数割合が、1.5%以下である。
【0033】
本発明における低耐炎化繊維は、単繊維の長さ方向或いは断面中心部分に耐炎化が遅延している領域を有する単繊維のことを表す。低耐炎化繊維は、単繊維の応力歪曲線を求めることにより検出できる。即ち、応力歪曲線を求める際に、最大応力点を示した後、極端に応力を低下させながらも完全には破断せずに延伸性を示す場合の耐炎化単繊維を低耐炎化繊維と判定する。
【0034】
具体的には、測定対象である耐炎化繊維全体から20本の単繊維を無作為に採取し、それらの応力歪曲線を測定する。この測定を4〜5回繰返し、これらの平均値から低耐炎化繊維率を算出する。
【0035】
低耐炎化繊維率は、耐炎化繊維全体の1.5%以下が好ましく、更には0.8%以下がより好ましい。低耐炎化繊維の本数が1.5%を超える場合、この耐炎化繊維を炭素化処理すると、糸切れなどのトラブルが発生し易い。
【0036】
本発明の耐炎化繊維は、ギ酸に対する溶解量が12質量%以下である。ここでギ酸に対する溶解量は、単繊維の繊維径方向に沿う耐炎化(酸化)の進行程度を表す指標として用いる。一般的に、耐炎化繊維全体の耐炎化状況は比重測定により従来判断している。乳化剤等がアクリル繊維の単繊維表面近傍に浸透することにより、耐炎化処理は単繊維表面近傍で促進され、中心部分の耐炎化処理が遅れる。
【0037】
その結果、単繊維の表面から繊維軸心方向にかけて耐炎化の進行を反映する比重の勾配ができる。このため、耐炎化の程度の指標として比重を測定し、これが適切な値を示している場合でも、必ずしも耐炎化処理が好ましく行われていると言うことにはならない場合がある。従って、比重の測定測定値のみでは、耐炎化の程度の不均一性により生じる焼け斑の程度を判断することは難しい。このことから、ギ酸に対する溶解量の測定は耐炎化繊維の焼け斑の程度、従って耐炎化繊維の物性を判断する上で重要である。
【0038】
耐炎化繊維のギ酸に対する溶解量は、12質量%以下で、9質量%以下がより好ましい。ギ酸に対する溶解量が12質量%を超える場合は、炭素化工程において耐炎化繊維の環化反応が急激に起こり、また毛羽などを多量に発生させ、その結果品位の低い炭素繊維となるので好ましくない。
【0039】
本発明耐炎化繊維の単繊維強度は、引張り試験における降伏点以降の耐炎化繊維の歪硬化性を考慮すると、その時の弾性率は1.8〜2.5GPaが好ましく、2.0〜2.3GPaがより好ましい。弾性率が低すぎると、炭素化工程を経て得られる炭素繊維の構造の緻密化が促進されず、所期の強度や弾性率を有する炭素繊維を得ることが困難になる。また、降伏点以降の時点で高すぎる弾性率を有する場合、後の炭素化工程において繊維の延伸性が低下し、所期の性能を有する炭素繊維を得ることができない。
【0040】
本発明の耐炎化繊維の製造に用いる原料のアクリル繊維は、乳化剤とベースオイルを配合した油剤を付与してなる。
【0041】
この油剤に含まれる乳化剤は、EO付加モル数が1〜20、アルキル基の炭素数(Rの炭素数)が8〜18のポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテルの単一成分である。ここで単一成分とは、Rの炭素数及びEO付加モル数の何れもが同一の乳化剤成分(用いる乳化剤は一種類)であることを示し、数種類の乳化剤の混合系を排除する概念である。またベースオイルはアミノ変性シリコーンである。
【0042】
乳化剤のEO付加モル数は1〜20が好ましく、3〜10がより好ましい。EO付加モル数が20を超える場合は、乳化剤の親水性が高いためアクリル繊維中に含有する水分との置換が容易に起こり、繊維内部のボイドへの油剤の侵入が著しくなる。このように油剤がボイドに著しく侵入したアクリル繊維を耐炎化処理する場合は、得られる耐炎化繊維は単繊維同士が互いに多数膠着したもので、さらに単繊維表面近傍の耐炎化の程度が単繊維軸芯近傍と比較して著しく高いものであり、その結果得られる耐炎化繊維は焼け斑が発生したものである。この耐炎化繊維を炭素化処理すると、得られる炭素繊維は構造欠陥があり、強度、弾性率等の品位に劣るため好ましくない。
【0043】
一方、乳化剤のEO付加モル数の下限は、ベースオイルのアミノ変性シリコーンの乳化が可能な1以上である。
【0044】
乳化剤ポリオキシエチレンオキシド(POE)アルキルエーテルを下記式(1)に示す。
【0045】
【化1】
R―O―(CHCHO) ―H (1)
ここで、Rは炭素数8〜18の脂肪族炭化水素を示し、nは20以下の整数である。
【0046】
ベースオイルは、アミノ変性シリコーンである。このアミノ変性シリコーンは25℃における動粘度が50〜1000センチストークス(5.0×10−5〜1.0×10−3−2/s)、アミノ当量が500〜10000g/molのものが好ましい。
【0047】
乳化剤の配合量はベースオイル100質量部に対し5〜30質量部が好ましい。
【0048】
(耐炎化繊維の製造方法)
本発明の耐炎化繊維は、例えば以下の方法で製造することができる。
【0049】
アクリロニトリルを好ましくは90質量%以上含有する単量体混合物を重合して得たアクリロニトリル共重合体を溶解した紡糸溶液を常法により紡糸する。紡糸方法は湿式でも乾湿式紡糸法でも良い。アクリロニトリルと共重合する単量体としては、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸、アクリルアミド、イタコン酸、マレイン酸等の極性単量体が好ましい。次いで、紡糸して得られたアクリル繊維を水洗した後、これに紡糸工程安定性を付与する公知の処理剤で処理する。次いで、このアクリル繊維を乾燥・延伸し、得られるアクリル繊維に、前記式(1)の単一成分からなる乳化剤と、ベースオイルとしてアミノシリコーンとを含む油剤の水エマルジョンを付与する。
【0050】
乳化剤とベースオイルとが配合された油剤のアクリル繊維への付与割合(付着量)は、アクリル繊維乾燥質量当たり0.1〜1.5質量%であることが好ましく、0.15〜0.5質量%であることが更に好ましい。
【0051】
油剤付与量が0.1質量%より少ない場合は、耐炎化工程におけるアクリル繊維の収束性が不十分になり、耐炎化工程以降での工程通過性が著しく損なわれるようになるので好ましくない。一方、油剤付着量が1.5質量%を超える場合、アクリル単繊維の表面に形成される油膜により耐炎化が遅延し、加えて炭素化工程にて窒化珪素を大量に発生させる原因となり、その結果得られる炭素繊維の品位を著しく低下させるので好ましくない。
【0052】
なお、油剤のアクリル繊維への付与方法には、浸漬法、スプレー法、ローラー転写法、キスタッチ法等があるが、アクリル繊維ストランド中の個々の単繊維に油剤を均一に付与し易いことから、浸漬法が好ましい。
【0053】
本発明に用いるアミノ変性シリコーンは、200〜300℃の加熱により、アクリル繊維表面に安定な油剤皮膜を形成する物であれば、特に限定されるものではないが、一般的には下記式(2)に示す化合物が好ましい。
【0054】
【化2】
Figure 2004300606
【0055】
ここで、m、nは1〜100000の整数であり、m+nは10以上の整数である。R 、R は炭素数1〜10のアルキレン基又はアリーレン基である。
【0056】
このようなアミノ変性シリコーンを用いることにより、耐炎化工程においてアクリル繊維表面に安定な油剤皮膜が形成される。この皮膜はストランドの収束性を向上させ、かつ皮膜に粘着性がないため繊維間の膠着が起きず、またローラーやガイド類への油剤皮膜(スカム)の付着も無く、このため工程通過性も良好になり、連続した操業が可能となる。
【0057】
このようにして得られたアクリル繊維を、240℃〜260℃の温度にて酸化雰囲気で常法により耐炎化処理を行い、本発明耐炎化繊維を得ることが出来る。この耐炎化繊維は炭素繊維製造用に特に好適である。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明する。
【0059】
以下の実施例及び比較例に示す条件により、炭素繊維製造用アクリル繊維、耐炎化繊維、及び炭素繊維を製造した。得られた炭素繊維製造用アクリル繊維、耐炎化繊維、及び炭素繊維の諸物性値を、以下の方法により測定した。
【0060】
[ギ酸に対する溶解量]
耐炎化繊維ストランドを5mmの長さに切断して、その0.5g(乾燥質量)をサンプル瓶に入れた。更にサンプル瓶に90mlのギ酸を入れ、約90分間、振盪しながら25℃で耐炎化繊維を溶解させた。
【0061】
溶解後、濾過して80℃の温水で3時間洗浄した。洗浄後、乾燥させ初期の重量から溶解後の質量を減じ、ギ酸に対する溶解量を算出した。
【0062】
[比重]
液置換法(JIS K 0061、置換液:アセトン)により測定した。
【0063】
[膠着数]
耐炎化繊維ストランド又は炭素繊維ストランドを3mmの長さに切断し、アセトン10mlの入った100mlビーカーに投入した。次いで、これに超音波振動を10秒間以上付与した後、光学顕微鏡にて20倍の倍率で耐炎化繊維又は炭素繊維を観察することにより、融着箇所をカウントし膠着数とした。
【0064】
[単繊維強度]
JIS L 1069、JIS L 1015に規定された方法により測定した。
【0065】
[実施例1]
アクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル4質量%、イタコン酸1質量%からなる共重合体を、65質量%の塩化亜鉛水溶液に溶解し、紡糸原液を得た。それを湿式紡糸法にて紡糸・水洗して水膨潤状態のアクリル繊維を得た。
【0066】
このアクリル繊維を公知の工程油剤で処理した後、乾燥・延伸処理を施し、単繊維度0.72dtexのフィラメント12000本からなるアクリル繊維ストランドを得た。得られたアクリル繊維ストランドを、EO付加モル数5、Rの炭素数12のPOEアルキルエーテル乳化剤10質量部と、ベースオイルである100cstのアミノ変性シリコーン100質量部を配合した油剤の水エマルジョンに浸漬し、油剤付与量0.3質量%の炭素繊維製造用アクリル繊維ストランドを得た。その後、空気雰囲気中で240〜260℃の温度にて耐炎化処理を行い、次いで不活性ガス雰囲気中300〜1300℃の温度勾配を有する炭素化炉にて炭素化を行い、炭素繊維ストランドを得た。結果を表1〜3に示す。
【0067】
[実施例2]
炭素繊維製造用アクリル繊維における油剤の付着量が0.15質量%であった以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維ストランドを製造した。結果を表1〜3に示す。
【0068】
[実施例3]
油剤の水エマルジョンにおけるPOEアルキルエーテルのEO付加モル数が7であった以外は、実施例1と同様の条件で耐炎化繊維ストランドおよび炭素繊維ストランドを製造した。結果を表1〜3に示す。
【0069】
[実施例4]
油剤の水エマルジョンにおけるPOEアルキルエーテルのEO付加モル数が10であった以外は、実施例1と同様の条件で耐炎化繊維ストランドおよび炭素繊維ストランドを作製した。得られた結果を表1から表3に示す。
【0070】
[実施例5]
油剤の水エマルジョンにおけるPOEアルキルエーテルのEO付加モル数が15であった以外は、実施例1と同様の条件で耐炎化繊維ストランドおよび炭素繊維ストランドを製造した。結果を表1〜3に示す。
【0071】
[実施例6]
油剤の水エマルジョンにおけるPOEアルキルエーテルのEO付加モル数が20であった以外は、実施例1と同様の条件で耐炎化繊維ストランドおよび炭素繊維ストランドを製造した。結果を表1〜3に示す。
【0072】
[実施例7]
油剤の水エマルジョンにおけるPOEアルキルエーテルのRの炭素数が10であった以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維ストランドを製造した。結果を表1〜3に示す。
【0073】
[実施例8]
油剤の水エマルジョンにおけるPOEアルキルエーテルのRの炭素数が16であった以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維ストランドを製造した。結果を表1〜3に示す。
【0074】
【表1】
Figure 2004300606
【0075】
【表2】
Figure 2004300606
【0076】
【表3】
Figure 2004300606
【0077】
[比較例1]
油剤の水エマルジョンにおけるPOEアルキルエーテルのEO付加モル数が25であった以外は、実施例1と同様の条件で耐炎化繊維および炭素繊維を製造した。結果を表4〜6に示した。表4〜6に示すように、ギ酸に対する溶解量及び低耐炎化繊維率が高く、均一な耐炎化が施されていないことが認められた。また、得られた炭素繊維の単繊維強度は低いものであった。更に、耐炎化繊維も炭素繊維も膠着数が比較的多いものであった。
【0078】
[比較例2]
油剤の水エマルジョンにおけるPOEアルキルエーテルのRの炭素数が6であった以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維を製造した。表4〜表6に結果を示した。表4〜6から、ギ酸溶解量及び低耐炎化繊維率が高く、均一な耐炎化が施されていないことが認められた。また、炭素繊維の単繊維強度は低いものであった。更に、耐炎化繊維も炭素繊維も膠着数が比較的多いものであった。
【0079】
[比較例3]
油剤水エマルジョンにおけるPOEアルキルエーテルのRの炭素数が22であった以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維を製造した。表4〜表6に結果を示した。表4〜6から、ギ酸溶解量及び低耐炎化繊維率が高く、均一な耐炎化が施されていないことが認められた。また、耐炎化繊維も炭素繊維も膠着数が比較的多いものであった。
【0080】
[比較例4]
炭素繊維製造用アクリル繊維における油剤の付着量が0.05質量%であった以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維を製造した。表4〜表6に結果を示した。表4〜6から、低耐炎化繊維率は低く、炭素繊維の単繊維強度も高い値を示したが、膠着数が多く品位の悪いものであった。
【0081】
[比較例5]
炭素繊維製造用アクリル繊維における油剤の付着量が2.0質量%であった以外は、実施例1と同様の条件で炭素繊維を製造した。結果を表4〜6に示した。膠着数は比較的少ないが、低耐炎化繊維率が高く、炭素繊維の単繊維強度は低いものであった。
【0082】
【表4】
Figure 2004300606
【0083】
【表5】
Figure 2004300606
【0084】
【表6】
Figure 2004300606
【0085】
【発明の効果】
本発明の耐炎化繊維は、繊維軸方向及び繊維径方向に均一に耐炎化されている。このため、低い低耐炎化繊維率とギ酸に対する低い溶解量を示し、このものを炭素化することにより高品位で高強度の炭素繊維を製造することが出来る。
【0086】
本発明の耐炎化繊維の製造方法は、油剤の乳化剤として単一成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルを用いているので、焼け斑及び膠着数の少ない耐炎化繊維を得ることができる。

Claims (6)

  1. 耐炎化繊維中の低耐炎化繊維の含有率が、1.5%以下で、耐炎化繊維のギ酸に対する溶解量が12質量%以下で、比重が1.350〜1.365である耐炎化繊維。
  2. 耐炎化単繊維の応力歪み曲線における歪みが5〜15%の範囲において弾性率が1.8〜2.5GPaである請求項1に記載の耐炎化繊維。
  3. 油剤を付与したアクリル繊維を耐炎化処理する耐炎化繊維の製造方法において、油剤が乳化剤とベースオイルとを含み、乳化剤が、エチレンオキシド付加モル数が1〜20、アルキル基の炭素数が8〜18のポリオキシエチレンアルキルエーテルの単一成分であり、ベースオイルがアミノ変性シリコーンであることを特徴とする、耐炎化繊維中の低耐炎化繊維の含有率が1.5%以下で、耐炎化繊維のギ酸に対する溶解量が12質量%以下で、比重が1.350〜1.365である耐炎化繊維の製造方法。
  4. 油剤中の乳化剤の配合量がベースオイル100質量部に対し5〜10質量部である請求項3に記載の耐炎化繊維の製造方法。
  5. ベースオイルが、25℃における動粘度が50〜1000センチストークス、アミノ当量が500〜10000g/molのアミノ変性シリコーンである請求項3に記載の耐炎化繊維の製造方法。
  6. 油剤のアクリル繊維への付与量が、アクリル繊維乾燥質量当たり0.1〜1.5質量%である請求項3に記載の耐炎化繊維の製造方法。
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