JP2008202208A - 炭素繊維用前駆体繊維、炭素繊維およびそれらの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐炎ポリマーを製糸して得られる炭素繊維用前駆体繊維であり、各熱処理時における単繊維間接着を抑制し、より高性能な炭素繊維を提供する。
【解決手段】PAN骨格を有する耐炎ポリマーを構成成分とし、繊維重量当たりの珪素含有量が0.01〜5重量%の範囲であり、製糸工程における乾燥や延伸など各熱処理時、耐炎化および炭化工程における単繊維間接着を抑制し、高性能な炭素繊維を得るために好適な炭素繊維用前駆体繊維およびその製造方法、さらには該繊維を用いた炭素繊維の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維用前駆体繊維およびその製造方法ならびに該繊維を用いた炭素繊維の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは単繊維間接着を抑制し、高性能な炭素繊維を得るのに好適な炭素繊維用前駆体繊維およびその製造方法に関する。
炭素繊維は力学的、化学的諸特性及び軽量性などにより、各種の用途、例えば航空機やロケットなどの航空・宇宙用航空材料、テニスラケット、ゴルフシャフト、釣竿などのスポーツ用品に広く使用され、さらに船舶、自動車などの運輸機械用途分野などにも使用されようとしている。また、近年は炭素繊維の高い導電性や放熱性から、携帯電話やパソコンの筐体等の電子機器部品や、燃料電池の電極用途への応用が強く求められている。
このような炭素繊維は、一般に耐炎化繊維を窒素等の不活性ガス中で高温加熱して炭化処理することによって得られる。また、従来の耐炎化繊維は、例えばポリアクリロニトリル(以下、PANと記載することもある)系耐炎化繊維であればPAN系前駆体繊維を空気中200〜300℃の高温で耐炎化(PANの環化反応+酸化反応)することによって得られている。
しかし、この耐炎化反応は発熱反応であり、また繊維形態すなわち固相の状態の反応である。そのため温度制御のためには長時間処理する必要があり、耐炎化を所望の時間内に終了させるにはPAN系前駆体繊維の繊度を特定の値以下の細繊度に限定する必要がある。このように現在知られている耐炎化プロセスは十分効率的なプロセスとは言い難い。
以上の技術的課題を解決する一つの方法として、溶媒による耐炎ポリマーの溶液化が検討されてきた。
例えば、アクリロニトリル系重合体粉末を不活性雰囲気中で密度が1.20g/cm以上となるまで加熱処理した後、溶剤に溶解して繊維化せしめた繊維状物を熱処理するという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、耐炎化の進行していないアクリロニトリル系重合体粉末を使用しているため、溶液の経時的粘度変化が大きく、糸切れが多発しやすいという課題があった。また溶剤として、一般の有機ポリマーを分解させ易い硫酸、硝酸等の強酸性溶媒を使用しているため、耐腐食性のある特殊な材質の装置を用いる必要があるなど、コスト的にも現実的ではなかった。
また、加熱処理したアクリロニトリル系重合体粉末と加熱処理しないアクリロニトリル系重合体粉末を混合して、同様に酸性溶媒中に溶解する方法が提案されているが(例えば、特許文献2参照)、前述した装置への耐腐食性付与や溶液の不安定さについて課題が解決されないままであった。
さらに、PANのジメチルホルムアミド溶液を加熱処理して、PANが環化構造を伴うポリマーへ転換することが開示されているが(例えば、非特許文献1参照)、ポリマー濃度が0.5%と希薄溶液であることから粘性が低すぎるため、実質的に繊維等への賦形・成形は困難であり、その濃度を高めようとするとポリマーが析出し、溶液として使用することができなかった。
一方、PANを1級アミンで変性した溶液は開示されているが(例えば、非特許文献2参照)、かかる溶液は耐炎化の進行していないPAN自体に親水性を与えたものであって、耐炎ポリマー含有溶液とは、技術思想が全く異なるものである。
また、特殊な炭化条件において耐炎化繊維から炭素繊維の転換例において高物性とともに収率向上できる技術が開示されているが(例えば、特許文献3参照)、より容易な方法での両立が求められていた。
本発明者らは、有機溶媒に可溶な耐炎ポリマーおよび該耐炎ポリマーを含有する溶液を得ることに成功しており、既に提案している(例えば、特許文献4参照)。しかし、かかる技術を適用して炭素繊維用前駆体繊維、耐炎化繊維および炭素繊維を製造するに当たっては、より安定した工程通過性や、得られる耐炎化繊維あるいは炭素繊維の物性向上、それら繊維の集合体における単繊維間の物性バラツキの低減等が望まれていた。
ここで、PANを紡糸して得られる従来のPAN系前駆体繊維、耐炎化繊維および炭素繊維の工程通過性や物性向上などについては、製糸工程における乾燥、延伸、耐炎化および炭化工程でのローラーへの単繊維巻き付きや単繊維間接着の改善が重要であり、これに影響する工程油剤や繊維の珪素含有量については多くの検討例がある(例えば、特許文献4および特許文献5参照)。その中で、炭素繊維の高性能化に関して特に問題となる炭化工程での単繊維間接着の改善には油剤成分、特に耐熱性に優れたシリコーン系化合物を含む油剤をより多く付与するのが効果的であるが、一方で、ローラー汚れが顕著になり、これが単繊維巻き付きを引き起こすため工程通過性を低下させる、酸化珪素や窒化珪素といったシリコーン系油剤由来の珪素化合物が各熱処理炉内に堆積するため、炉の洗浄周期が短くなり操業性を低下させるなどの問題があり、一般的に、油剤成分の珪素含有量は少なくする方が好ましいとされてきた。
しかしながら、本発明者らが検討してきたPAN骨格を有する耐炎ポリマーを用いた場合には、製糸工程における乾燥や延伸などの各熱処理時、耐炎化および炭化工程においての単繊維間接着が従来のPANを紡糸する場合よりも多いことや、工程通過性の悪いことが炭素繊維の物性低下につながるなどの問題があり、これらの改善が望まれていた。
特公昭63−14093号公報 特公昭62−57723号公報 特許2636509号公報 国際公開第05/080448号パンフレット 特開平6−184830号公報 特開2006−200078号公報 「ポリマー・サイエンス(USSR)」(Polym.Sci.USSR),1968年、第10巻,p.1537 「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス,パートA:ポリマー・ケミストリー」(J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.),1990年,第28巻,p.1623
本発明の目的は、前記課題に鑑みて、耐炎ポリマーを製糸して得られる炭素繊維用前駆体繊維において、製糸工程における乾燥や延伸などの各熱処理時、耐炎化および炭化工程における単繊維間接着を抑制し、より高性能な炭素繊維を得るために好適な炭素繊維用前駆体繊維を安定して得ることにあり、鋭意検討した結果、特に炭素繊維用前駆体繊維の珪素含有量を特定範囲とすることにより、前記課題が解決できることを見出したものである。
前記目的を達成するために、本発明は次のいずれかの構成を有する。
(1)PAN骨格を有する耐炎ポリマーを構成成分とし、繊維重量当たりの珪素含有量が0.01〜5重量%の範囲であることを特徴とする炭素繊維用前駆体繊維。
(2)PAN骨格を有する耐炎ポリマーを構成成分とする繊維に、繊維の乾燥重量当たりの油剤成分付着量が0.1〜5重量%となるように、シリコーン系油剤を付与して前記(1)に記載の炭素繊維用前駆体繊維を得ることを特徴とする炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
(3)PAN骨格を有する耐炎ポリマーを構成成分とする繊維は、PAN骨格を有する耐炎ポリマーを含有する溶液を、凝固浴出の凝固糸の膨潤度を100〜1000重量%として、湿式紡糸あるいは乾湿式紡糸して得られ、かつ、シリコーン系油剤を付与した後には、乾燥する、前記(2)に記載の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
)前記(1)に記載の炭素繊維用前駆体繊維を不活性雰囲気中300℃〜3000℃の温度で炭化する炭素繊維の製造方法。
)炭化する前に、酸素存在下200〜350℃で熱処理する、前記()に記載の炭素繊維の製造方法。
本発明によれば、製糸工程における乾燥や延伸などの各熱処理時、耐炎化および炭化工程における単繊維間接着が効果的に抑制され、より高性能な炭素繊維を得るために好適な炭素繊維用前駆体繊維を安定して得ることができる。また、該炭素繊維用前駆体繊維は、従来のPANを用いた場合と同様、製糸工程と耐炎化および炭化工程の様に、複数の工程を経て炭素繊維を得ることができるが、耐炎ポリマーを用いていることから、そのまま炭化処理することも可能であり、高性能な炭素繊維を効率よく製造することができる。
本発明の炭素繊維用前駆体繊維は、PAN骨格を有する耐炎ポリマーを構成成分とし、繊維重量当たりの珪素含有量が0.01〜5重量%の範囲、好ましくは0.05〜2重量%の範囲、さらに好ましくは0.1〜1重量%の範囲とする炭素繊維用前駆体繊維である。
かかる珪素含有量を0.01〜5重量%の範囲とすることにより、製糸工程における乾燥や延伸などの各熱処理時、耐炎化および炭化工程における単繊維間接着を抑制し、より良好なストランド強度を示す炭素繊維を得ることができる。かかる珪素含有量が0.01重量%未満の場合、製糸工程における乾燥や延伸などの各熱処理時、耐炎化および炭化工程における単繊維間接着がほとんど抑制されないため、繊維の取り扱い性が低下するとともに、得られる炭素繊維のストランド強度が著しく低下する。一方で、かかる珪素含有量が5重量%を超える場合は、油剤の付着量を多くする、または油剤中の珪素含有量が極めて高い油剤を付与するなどにより不可能ではないが、油剤の必要量が多くなることや油剤の原価が高くなることなど、製造コストが高くなる要因となるため、実用的なプロセスではないと言える。
ここで、本発明の炭素繊維用前駆体繊維が従来のPAN系前駆体繊維よりも単繊維間接着し易い要因については、現時点で明らかではないが、一つ目として、本発明の炭素繊維用前駆体繊維がPAN骨格を有する耐炎ポリマーにより一部または全部が構成されてなる繊維であることから、繊維構造の特異性が考えられ、これは本発明の炭素繊維用前駆体繊維の伸度が従来のPAN系前駆体繊維よりも高いことなどからも推測でき、特異な構造であるが故に乾燥緻密化時や炭化工程における繊維の構造変化や減量の傾向が異なることが考えられる。また、二つ目として、本発明の炭素繊維用前駆体繊維は、従来のPAN系前駆体繊維よりも糸断面が比較的丸く、かつ糸表面が平滑になり易いことから、接着トラブルが発生し易く、珪素含有量を多く必要とするものと推定している。
なお、ここで言う、繊維重量当たりの珪素含有量とは、炭素繊維用前駆体繊維の乾燥重量当たりの珪素含有量を指し、具体的に例えば、以下に記載するICP発光分光分析法により求めることができる。
ICP発光分光分析については、測定する耐炎化繊維0.3〜0.5gを加熱灰化し、灰分を炭酸ナトリウムで融解後、希硝酸に溶解して、定容とした溶液についてICP発光分光分析法で珪素(Si)を定量することにより求めることができる。かかるICP発光分光分析装置としては、例えば、エスアイアイ・テクノロジー社製SPS3000を用いることができる。
PAN骨格を有する耐炎ポリマーを構成成分とする繊維は、後述するように、PAN骨格を有する耐炎ポリマーを繊維化する、より、具体的には、PAN骨格を有する耐炎ポリマーを含有する溶液を紡糸する工程と、溶媒を除去する工程を経て得ることができる。
かかる繊維は、長繊維状であっても短繊維状であってもよい。長繊維状の場合には引き揃えて炭素繊維の原料として用いる場合などに好適であり、短繊維状の場合には例えば捲縮糸として織物、編物、不織布等の布帛として用いる場合などに好適である。
本発明の炭素繊維用前駆体繊維が複数本の単繊維からなる束状である場合には、1束中の単繊維本数は使用目的によって適宜決められるが、高次加工性の点では、50〜100000本/束が好ましく、100〜80000本/束がより好ましく、200〜60000本/束がさらに好ましい。1束に含まれる単繊維の数は、前記した好ましい本数とするには、後述する口金孔数によって調整することもできるし、また複数本の繊維を合糸しても良い。
また、各単繊維の繊度は、0.00001〜100dtexが好ましく、0.01〜50dtexがより好ましく、0.1〜10dtexがさらに好ましい。各単繊維の直径は、1nm〜100μmが好ましく、100nm〜50μmがより好ましく、3〜20μmがさらに好ましい。
各単繊維の断面形状は、円、楕円、まゆ型、場合によっては不定形であっても良い。
本発明の炭素繊維用前駆体繊維は、その比重が、1.1〜1.6であることが好ましく、1.15〜1.55がより好ましく、1.2〜1.5がさらに好ましい。かかる比重が小さすぎると単繊維内部に空孔が多く、繊維強度が低下する場合があり、逆に大きすぎると緻密性が高まりすぎて伸度が低下する場合がある。なお、比重は従来公知の液浸法や浮沈法によって測定できる。
本発明の炭素繊維用前駆体繊維を構成する単繊維の引張強度は0.1g/dtex以上が好ましく、1g/dtex以上がより好ましく、2g/dtex以上がさらに好ましい。また、強度は高ければ高いほど好ましいが、その後の工程における取り扱い性や加工のし易さなどの観点から、上の方としては10g/dtex以下が適当である。かかる引張強度は万能引張試験器(例えばインストロン社製 モデル1125)を用いて、JIS L 1015(1981)に準拠して測定できる。
本発明の炭素繊維用前駆体繊維に含まれる溶媒成分の残存率は、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。かかる溶媒残存率が大きすぎると耐炎ポリマー由来の耐炎性が損なわれる場合がある。
次に、本発明で用いる耐炎ポリマーおよび耐炎ポリマーを含有する溶液について説明する。
本発明における耐炎ポリマーとは、耐炎性のあるポリマーであり、また、耐炎ポリマーを含有する溶液とは耐炎ポリマーを主とする成分が溶媒中に分散および/または溶解している溶液である。ここで、溶液は粘性流体であり、賦形や成形する際に流動性を有するものであれば良く、室温で流動性を有するものはもちろんのこと、ある温度で流動性のない固体やゲル状物であっても、加熱や剪断力により加工温度付近で流動性を有するもの全てを含む。
また、本発明において「耐炎」とは、「防炎」という用語と実質的に同義であり、「難撚」という用語の意味を含んで使用する。具体的に耐炎とは燃焼が継続し難い、すなわち燃え難い性質を示す総称である。耐炎性能の具体的評価手段として、例えばJIS Z 2150(1966)には薄い材料の防炎試験方法(45°メッケルバーナー法)についての記載されている。評価すべき試料(厚さ5mm未満のボード、プレート、シート、フィルム、厚手布地等)をバーナーで特定時間加熱し、着火後の残炎時間や炭化長等を評価することで判定できる。残炎時間は短い方が、炭化長も短い方が耐炎(防炎)性能は優秀と判定される。また繊維製品の場合、JIS L 1091(1977)に繊維の燃焼試験方法が記載されている。該方法で試験した後に炭化面積や残炎時間を測定することで同様に判定できる。本発明の耐炎ポリマーや耐炎成形品の形状・形態は多種多様であり、耐炎性能の度合いも非常に高度で全く着火しない耐炎性を持つものから着火後に燃焼がある程度継続するものまで広範囲にまたがるものであるが、後述する実施例に示される具体的な評価方法によって耐炎性能が定めた水準以上で認められるものが対象となる。具体的には耐炎性能が優秀あるいは良好であることが好ましい。特に耐炎ポリマーの段階においては、単離の条件によってポリマーの形状・形態が変化し、その性質は、かなりバラツキ易いので、一定の形状に成形せしめた後に評価する方法を採用するのが良い。なお、耐炎ポリマーを成形してなる耐炎化繊維等の耐炎成形品も、後述の実施例に示される具体的な耐炎性の評価手段によって測定し得る。
本発明で用いる耐炎ポリマーは、溶液化が容易な点からPAN系ポリマーを前駆体として得られる耐炎ポリマー、すなわち、PAN骨格を有する耐炎ポリマーである。ここで、PAN骨格を有する耐炎ポリマーであることは、残存ニトリル基の存在を確認することで判断することができ、具体的には、赤外分光測定(IR)により2240cm−1付近に吸収ピークを示すものであることを確認することができる。
本発明で用いる耐炎ポリマーの構造については、従来のPANを紡糸して得られる前駆体繊維を空気中で加熱して得られるアクリロニトリル系耐炎化繊維の化学構造と類似するものである。
PAN系ポリマーを前駆体とした場合の耐炎ポリマーの構造は完全には明確となっていないが、アクリロニトリル系耐炎化繊維を解析した文献(ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス,パートA:ポリマー・ケミストリー・エディション(J.Polym.Sci.Part A:Polym.Chem.Ed.),1986年,第24巻,p.3101)では、ニトリル基の環化反応あるいは酸化反応によって生じるナフチリジン環やアクリドン環、水素化ナフチリジン環構造を有すると考えられる。有機溶媒に溶解している耐炎ポリマーは、分子間に微量架橋結合が生じることがあっても溶解性を損なわない限り支障はない。このような観点から、耐炎ポリマーの前駆体であるPAN系ポリマーは直鎖状であっても、枝分かれしていても構わない。また、アクリレートやメタクリレートやビニル化合物等の他の共重合成分をランダムにもしくはブロックとして骨格に含むものであっても良い。
本発明で用いる耐炎ポリマーの化学構造は、その溶液の核磁気共鳴(NMR)装置により13−Cを測定し、ポリマーに起因して150〜200ppmにシグナルを有する構造であることが好ましく、また、赤外分光測定(IR)により1600cm−1付近に最大の吸収ピークを示すものであることが好ましい。両測定法で当該範囲にピークを有する場合、特に高い耐熱性を有する耐炎ポリマーであると言える。
本発明における耐炎ポリマーの分子量は、成形方法に応じた粘性を有する分子量とすれば良いが、前駆体として用いるPAN系ポリマーについては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定される質量平均分子量(Mw)は、1000〜1000000であることが好ましい。前駆体ポリマーの質量平均分子量が1000より低い場合、耐炎化にかかる時間は短縮できるが、耐炎ポリマー間の水素結合などの分子間相互作用が弱くなるために、賦型した成形品に十分な強度を達成することが困難となる。一方、前駆体ポリマーの質量分子量が1000000を超えると、耐炎化にかかる時間が長くなるために生産コストが高くなったり、耐炎ポリマー間の水素結合などによる分子相互作用が強くなりすぎるために、冷却時にゲル化し、賦型温度で耐炎ポリマーを含有する溶液の流動性が得られ難くなることがある。前駆体ポリマーの質量平均分子量は、より好ましくは10000〜500000であり、さらに好ましくは20000〜300000である。
本発明における耐炎ポリマーを含有する溶液の溶媒としては、有機溶剤、特に極性有機溶剤が好ましく用いられる。本発明において好ましく用いられる極性有機溶剤は、常温の下でLCRメータによって測定される比誘電率が2以上のものであることが好ましく、より好ましくは10以上のものである。比誘電率がこのような値にあると、耐炎ポリマーをより安定的に分散することが可能で、かつ凝固過程での分散媒抽出が容易で取扱い易い。比誘電率が小さすぎると、凝固過程で水系凝固浴を用いる場合に分散媒の抽出が難しくなる。また、比誘電率の上限は特にないが、あまりに大きすぎると、耐炎ポリマーを安定的に分散することが難しくなる場合があるので、比誘電率が80以下の極性有機溶剤を用いることが好ましい。
本発明で好ましく用いられる極性有機溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、スルホラン、ジメチルイミダゾリジオン、エチレングリコールおよびジエチレングリコール等が挙げられ、DMSO、NMP、DMFおよびDMAcがより好ましく、これらの中でも塩に対する溶解性の高さから特にDMSOとDMFが好ましく用いられる。これらの極性有機溶剤は、1種だけで用いても2種以上混合して用いても良い。
有機溶剤の含有率は、耐炎ポリマーを含有する溶液の全量に対して45重量%以上かつ95重量%以下であることが好ましい。有機溶剤の含有率が45重量%より低くなると、耐炎ポリマーを含有する溶液の安定性が著しく低下して流動性を失う場合があり、一方、有機溶剤の含有率が95重量%を超えると、耐炎ポリマーを含有する溶液の粘度が低くなって繊維化が困難になる場合がある。
また、本発明の目的を妨げない範囲で、水等の他の溶媒(例えば、水溶性溶剤)を極性有機溶剤と組み合わせて用いることで均一な溶液としても良い。水を用いることは、成形時の溶媒除去が比較的容易である点やコストの観点から好ましい。水を添加する場合の添加量は、耐炎ポリマー100重量%に対して、下の方としては5重量%以上、10重量%以上、20重量%以上、上の方としては300重量%以下、200重量%以下、150重量%以下の順に好ましい。
本発明における耐炎ポリマーを含有する溶液の粘度は、賦形方法、成形方法、成形温度、口金、金型等の種類等によってそれぞれ好ましい範囲とすることができるが、粘性が低すぎても目的の賦形形状になり難くなる場合がある。そのため、加工温度においてB型粘度計で測定された溶液粘度が、1Pa・s以上100Pa・s 以下であることが好ましく、より好ましくは2.5Pa・s以上50Pa・s 以下である。
本発明における耐炎ポリマーを含有する溶液について、耐炎ポリマーの含有率は、耐炎ポリマーを含有する溶液の全量に対して5重量%以上かつ45重量%以下であることが好ましい。耐炎ポリマーの含有率が5重量%より低くなると、成形の際の生産性が低くなることや成型品の品位が低下することがあり、一方で含有率が45重量%より高くなると、耐炎ポリマーを含有する溶液の流動性が低下して成形が困難になる場合があるからである。耐炎ポリマーの含有率は、より好ましくは6重量%以上かつ30重量%以下である。
本発明に用いる耐炎ポリマーの製造方法については、前駆体であるPAN系ポリマーの固体単体もしくは有機溶剤に分散した状態のポリマーのいずれを加熱処理するものであっても構わない。耐炎ポリマーの固体は極性溶媒に対して親和性が低く分散し難い場合があるので後者の手法が好ましい。
本発明に用いる耐炎ポリマーの前駆体であるPAN系ポリマーを有機溶剤中に分散させた分散体を加熱処理して耐炎ポリマーを得る場合は、耐炎化が進行する限りにおいて、その温度、時間、装置の条件および手法は特に限定されない。加熱方法も特に限定されず、ジャケット式熱媒循環、マントルヒータ、オイルバス、またはイマージョンヒータに代表される工業的に市販されている加熱装置のいずれを用いても構わない。ただし、高温で耐炎化をおこなうときに溶剤の突沸、および発火や引火の危険性が高くなるので使用する溶剤の沸点以下で行うことが好ましい。また、反応時間は、耐炎化反応が発熱反応であるので、短時間の反応は除熱が困難となり暴走反応に至る場合があるため30分以上に調整することが好ましい。一方で、長時間にわたり耐炎化をおこなうと単位時間当たりの生産量が低下して非生産的であるため、反応時間は24時間以内が好ましく、より好ましくは1時間以上12時間以下である。
本発明に用いる耐炎ポリマーの前駆体であるPAN系ポリマーの分散体を加熱処理して耐炎ポリマーを得る際には、酸化剤と環化剤を用いることにより、160℃の温度以下の低温で反応を進行させることができ、好ましい態様である。
ここで、酸化剤とは、反応によって前駆体ポリマーから水素原子を引き抜く作用もしくは酸素原子を供与する作用を有する化合物のことであり、具体的には、安全性や反応性からニトロ系化合物やキノン系化合物等が挙げられる。
ニトロ系化合物としては、反応時の熱安定性から芳香族環をもつモノニトロ化合物がより好ましく、例えば、ニトロベンゼン、o,m,p−ニトロトルエン、o,m,p−ニトロフェノール、ニトロキシレンおよびニトロナフタレン等が挙げられ、ニトロベンゼン、o,m,p−ニトロトルエンおよびo,m,p−ニトロフェノールが特に好ましく用いられる。また、キノン系化合物としては、例えば、1,4−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、クロロ−1,4−ベンゾキノン、ジクロロ−1,4−ベンゾキノン、ブロモ−1,4−ベンゾキノン、ジブロモ−1,4−ベンゾキノン、テトラフルオロ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、オルトベンゾキノン、オルトクロラニルおよびオルトブロマニル等が挙げられ、1,4−ベンゾキノン、クロラニル、ジクロロ−1,4−ベンゾキノンおよび2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノンが特に好ましく用いられる。
これらの酸化剤の添加量は特に限定されないが、前駆体ポリマー100重量部に対して0.1〜200重量部が好ましく、より好ましくは1〜100重量部である。これらの酸化剤は1種だけで用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
また、環化剤とは、前駆体ポリマーを、結合の生成によって非環状骨格部位を環状構造へと誘導する化合物のことであって、具体的には、例えば、アミン系化合物、グアニジン系化合物、アルコール系化合物、アミノアルコール系化合物、カルボン酸系化合物、チオール系化合物、アミジン系化合物などの有機系求核剤、金属アルコキシド化合物、金属アミド化合物、金属イミド化合物、金属水素化物、金属水酸化物、金属炭酸塩およびカルボン酸金属塩等が挙げられる。環化効率の高さおよび試薬の安定性の観点から、アミン系化合物、グアニジン化合物、アミノアルコール化合物、金属アルコキシド化合物および金属イミド化合物が好ましく用いられる。中でも、耐炎ポリマーの分散性の観点から、アミノアルコール系化合物が特に好ましく用いられる。
アミン系化合物としては、アミン骨格を有するものであればいずれでもよいが、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン、ペンチルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、エチレンジアミン、プロパンジアミン、シクロへキサンジアミン、デカメチレンジアミン、3,5−ピリジンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、3,5−ジメチルベンゼン2,4−ジアミン、および1,12−ドデカンジアミン等が挙げられる。
グアニジン系化合物としては、グアニジン構造を有するものであればいずれでもよいが、例えば、グアニジン炭酸塩、グアニジンチオシアネート、グアニジン酢酸塩、グアニジンリン酸塩、グアニジン塩酸塩、グアニジン硝酸塩、グアニジン硫酸塩、メチルグアニジン、エチルグアニジン、ジメチルグアニジン、アミノグアニジン、フェニルグアニジン、ナフチルグアニジン、ニトログアニジン、ニトロソグアニジン、アセチルグアニジン、シアノグアニジン、およびグアニルウレア等が挙げられ、特に好ましく用いられるのは、グアニジン炭酸塩、グアニジン酢酸塩およびグアニジンリン酸塩である。
アミノアルコール系化合物としては、例えば、モノエタノールアミンとジエタノールアミン等が挙げられ、プロパノールアミン金属アルコキシド化合物としては、例えば、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソブトキシド、ナトリウムイソブトキシド、ナトリウムフェノキシド等が挙げられ、特に好ましく用いられるのは、カリウムtert−ブトキシドとナトリウムtert−ブトキシドである。
金属イミド化合物としては、例えば、カリウムフタルイミドやナトリウムフタルイミド等が挙げられ、中でもカリウムフタルイミドが好ましく用いられる。
これら環化剤の添加量は特に限定されないが、前駆体ポリマー100重量部に対して0.1〜500重量部が好ましく、より好ましくは1〜200重量部であり、さらに好ましくは3〜100重量部である。
本発明に用いる耐炎ポリマーを得るためにPAN系ポリマーの分散体を加熱処理する際には、酸を添加することが好ましい。酸は、加熱処理の前に加えても、加熱処理中に加えても構わない。
ここで、酸とは、プロトンの授受によって酸と定義される酸と、電子の授受によって酸と定義される酸のどちらに定義されるものであっても良い。また、それらのうち2種類以上を混合して用いても良い。
具体的に、プロトンの授受によって酸と定義される酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸および臭化水素酸のような無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリリ酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、安息香酸、メチル安息香酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、ピルビン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、フェルロイル、ヒドロキシ安息香酸、ホモサリチル酸、ピロカテク酸、レソルシル酸、ゲンチジン酸、バニリン酸、イソバニリン酸、オルセリン酸、アサロン酸、マンデル酸、フタロン酸、ベンジル酸、フロレト酸、トロパ酸およびクマル酸のようなカルボン酸や、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トシル酸、カンファースルホン酸、タウリンおよびナフタレンスルホン酸のようなスルホン酸等が好ましく挙げられる。
また、電子の授受によって定義される酸としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、塩化鉄、銀トリフラート、シアン化鉄および塩化銅等のルイス酸が挙げられる。
これらのうち、大量にかつ安価に入手可能であることや、金属を含まないことで環境負荷の少なく、さらに大規模での取り扱い性に優れた、カルボン酸もしくはスルホン酸を用いることが好ましい。なかでも、少ない量で効果が著しくみられるカルボン酸が好ましく用いられる。カルボン酸の中では、反応に使用する極性溶媒への溶解性が高い、沸点が高く、反応温度を高く設定することのできるカルボン酸、具体的には安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、メチル安息香酸およびアミノ安息香酸等のモノカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸等のジカルボン酸が好ましく用いられる。
これらの中でも、ジカルボン酸であるフタル酸、イソフタル酸およびテレフタル酸が好ましく、紡糸工程での糸切れはさらに激減されて工程安定性が向上する。これは、酸1分子内にカルボキシ基が2つ存在することにより耐炎ポリマー間の架橋が起こり、耐炎ポリマー同志の絡み合いによる相互作用が大きくなるためと考えられる。
また、上記の酸と同様に、酸無水物および酸塩化物も好ましく用いることができる。ここでいう酸無水物とは、化学辞典(東京化学同人版)で定義されているカルボン酸のカルボキシ基2個から1分子の水が失われて、2つのアシル基が酸素原子を共有するかたちの化合物を指す。具体的な酸無水物としては、例えば、アジピン酸無水物、無水コハク酸、酪酸無水物、クエン酸無水物、酒石酸無水物、ヘキサン酸無水物、安息香酸無水物および無水フタル酸が好ましく挙げられる。
さらに、酸塩化物とは、化学辞典(東京化学同人版)で定義されているカルボン酸のカルボキシ基に含まれるヒドロキシ基を塩素で置換した化合物を指す。具体的な酸塩化物としては、例えば、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ピバロイル、塩化ブタノイル、塩化ベンゾイル、塩化アニソール、塩化ナフトイルおよびフタロイルジクロリドが好ましく挙げられる。
本発明で用いる耐炎ポリマーを得る際に、多量に酸等を加えると耐炎化反応の進行が遅くなったり、前駆体ポリマーが析出してくる場合があるので、酸、酸無水物および酸塩化物の総添加量は、前駆体ポリマー100重量%に対して、0.01重量%から200重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1重量%から50重量%の範囲である。
具体的に、例えば、前駆体ポリマーとしてPAN系ポリマーを用い、酸としてジカルボン酸を用いる場合の酸の添加量は、PAN系ポリマー100重量%に対して、0.01重量%から50重量%の範囲であることが好ましい。酸の添加量が50重量%を超えると、耐炎ポリマーを含む分散体の分散安定性が低下し流動性を失いやすくなる場合があるためである。酸の添加量は、更に好ましくは0.05重量%から25重量%の範囲である。
なお、本発明で用いる耐炎ポリマーまたは耐炎ポリマーを含有する溶液中にはシリカ、アルミナ、ゼオライト等の無機粒子、カーボンブラック等の顔料、シリコーン等の消泡剤、リン化合物等の安定剤・難燃剤、各種界面活性剤、その他の添加剤を含有させることもできる。また耐炎ポリマーの溶解性を向上させる目的で塩化リチウム、塩化カルシウム等の無機化合物を含有させることもできる。これらは、耐炎化を進行させる前に添加しても良いし、耐炎化を進行させた後に添加しても良い。
最終的に得られた耐炎ポリマーを含有する溶液の粘度、ポリマー濃度や耐炎化の進行度合、溶媒の種類等によって、前記した好ましい範囲に各要件を適宜調整することができる。
次に、PAN骨格を有する耐炎ポリマーを構成成分とする繊維を得るに好適な方法について説明する。
PAN骨格を有する耐炎ポリマーを構成成分とする繊維は、前記した耐炎ポリマーを繊維化することにより得ることができる。
通常、耐炎ポリマーを含有する溶液を繊維状に紡糸するわけであるが、その紡糸法としては、プロセスの生産性を上げるために湿式紡糸法あるいは乾湿式紡糸法を採用するのが好ましい。
具体的に紡糸は、前記した耐炎ポリマーを含有する溶液を紡糸原液とし、配管を通しブースターポンプ等で昇圧し、ギアポンプ 等で計量押出し、口金から吐出することによって行うことができる。ここで、口金の材質としてはステンレス(SUS)あるいは金、白金等を適宜使用することができる。
また、紡糸原液が口金孔に流入する前に、前記した無機繊維の焼結フィルターあるいは合成繊維例えばポリエステルやポリアミドからなる織物、編物、不織布などをフィルターとして用いて、紡糸原液を濾過あるいは分散させることが、得られる炭素繊維用前駆体繊維において単繊維断面積のバラツキを低減させる面から好ましい。
口金孔径としては0.01〜0.5mmφ、孔長としては0.01〜1mmの任意のものを使用できる。また、口金孔数としては10〜1000000まで任意のものを使用できる。孔配列としては千鳥配列など任意に選択することができ、分繊し易いように予め分割しておいても良い。
口金から直接または間接に凝固浴中に紡糸原液を吐出し、凝固糸を得る。凝固浴液は、
紡糸原液に使用する溶媒と凝固促進成分とから構成するのが、簡便性の点から好ましく、凝固促進成分として水を用いるのがさらに好ましい。凝固浴中の紡糸溶媒と凝固促進成分の割合、および凝固浴液温度は、得られる凝固糸の緻密性、表面平滑性および可紡性などを考慮して適宜選択することができ、特に凝固浴濃度としては溶媒/水=0/100〜95/5の任意の範囲で、30/70〜70/30が好ましく、40/60〜60/40が特に好ましい。また、凝固浴の温度は0〜100℃の任意の温度とすることができる。また、凝固浴としてはプロパノールやブタノール等の水との親和性を低減させたアルコールならば100%浴として用いることもできる。
ここで、本発明では、得られた凝固糸の膨潤度を100〜1000重量%、好ましくは200〜900%、さらに好ましくは300〜800%とするのが良い。かかる範囲は可紡性の観点から決められ、さらに後工程の浴延伸性に影響を与え得るものであり、かかる範囲であれば、得られる炭素繊維用前駆体繊維において単繊維断面積の変動係数を小さくすることができる。
次に、凝固糸を、延伸浴で延伸するか、水洗浴で水洗するのが良い。もちろん、延伸浴で延伸するとともに、水洗浴で水洗しても良い。かかる延伸倍率は、1.01〜5倍、好ましくは1.05〜3倍、より好ましくは1.1〜2.5倍とするのが良い。延伸浴は温水または溶媒/水が用いられ、溶媒/水の延伸浴濃度は0/100〜70/30の任意の範囲とすることができる。また水洗浴としては、通常、温水が用いられ、延伸浴および水洗浴の温度は50〜100℃であることが好ましく、より好ましくは60〜95℃、さらに好ましくは65〜85℃である。
本発明において、単繊維繊度を前記した好ましい範囲とするには、口金孔径を適宜選択することや、口金からの吐出量を適宜定めることにより制御することができる。また、単繊維繊度を大きくする場合には、乾燥時間を長くする、或いは乾燥温度を上げることが、溶媒残存量の低減の観点から好ましい。さらに、単繊維の断面形状は丸孔、楕円孔、スリット等の口金吐出孔の形状と溶媒除去する際の条件によって制御することができる。
このようにして得られるPAN骨格を有する耐炎ポリマーを構成成分とする繊維に、繊維の乾燥重量当たりの油剤成分付着量が0.1〜5重量%となるように、シリコーン系油剤を付与することにより、前記した本発明の炭素繊維用前駆体繊維を得ることができる。
かかる油剤の油剤濃度は、炭素繊維用前駆体繊維の繊維重量当たりの珪素含有量が前述の範囲となるように適宜選択することが可能であり、0.01〜20重量%の範囲であることが好ましい。
油剤を付与する方法はいずれを問わないが、例えば、口金よりポリマーの溶剤と水などの凝固剤を混合した凝固浴に吐出された繊維に水洗、浴中延伸等の処理を施したものに後述の油剤を付与するのが好ましい。付与方法としては、糸条内部まで均一に付与できることを勘案し、適宜選択して使用すればよいが、具体的には、油剤を適正な乳化剤を使用して水分散液にして調製し、その水分散液を浸漬法、噴霧法、タッチロール法、あるいはガイド給油法などで水膨潤状態の繊維に付与する手段が採用される。
油剤を付与する位置については、乾燥緻密化前、乾燥緻密化後および延伸後のいずれの位置で実施しても良く、1カ所だけで目標量の油剤を付与しても良いし、2カ所以上の複数位置で分けて目標量となるように油剤を付与しても良い。
例えば、乾燥緻密化前に油剤を付与する場合には、油剤付与時点の繊維の膨潤度が高いと、繊維内部に多くの油剤成分を取り込んでしまうことがあり、実質の繊維表面への油剤付着量が低下して、油剤の有効性つまり単繊維間接着の抑制効果の低下が懸念され、また、内部に取り込まれた油剤成分が強度欠陥となることで、炭素繊維用前駆体繊維の物性低下、さらには、該繊維から得られる炭素繊維の物性も低下することが懸念される。このような場合には、乾燥緻密化前の油剤付与時は、乾燥時接着の抑制効果が得られる最低限の油剤付着量となるように油剤を付与し、乾燥緻密化した後に最終的に目標とする油剤付着量となるように油剤を追加付着させることが好ましい。
本発明で用いる油剤とは、シリコーン系化合物を主油剤成分とし、それを希釈する希釈剤成分からなるものである。
ここで、シリコーン系化合物としては、ポリジメチルシロキサンを基本構造としたものが挙げられ、メチル基の一部が変性されたものが好ましく用いられる。該変性基としては、アミノ基、脂環式エポキシ基、アルキレンオキサイド基などが好ましく、さらに加熱により架橋反応を生じるものが好ましく使用される。複数の変性基を有するシリコーンでも良く、また、異なる変性基をもつシリコーンを混合して用いても良い。中でも、繊維への均一付与性の観点からアミノ変性シリコーンを含むものが好ましい。また、アミノ変性シリコーンおよびエポキシ変性シリコーンを含む場合、エポキシ変性シリコーン油剤中のエポキシ基とアミノ変性シリコーン油剤中のアミン基とが反応して樹脂化反応が起こり、より強固な油剤の皮膜が繊維表面に形成されると推定され、該油剤皮膜は耐熱性に優れており、単繊維間接着を効果的に抑制できるため、より好ましい。さらに、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーンおよびアルキレンオキサイド変性シリコーンを含む場合、水中に油剤成分を分散乳化した際の分散安定性を向上させることが可能となるとともに、繊維に均一に油剤成分を付与することが可能となるため、さらに好ましい。ジメチルシロキサンの混合比率(重量比)としては、アミノ変性シリコーンが30重量%以上含有していることが好ましい。アミノ変性シリコーンの変性量としては末端アミノ基を−NHに換算した比率が、0.05〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%のものである。かかるアミノ変性シリコーンについては、変性基であるアミノ基がモノアミン型、ポリアミン型、あるいはまた両者で変性されたものであっても良い。エポキシ変性シリコーンの変性量としてはエポキシ基−CHCHOの比率が0.05〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5重量%のものである。かかるエポキシ変性シリコーンについては、変性基であるエポキシ基がグリシジル型のエポキシ基、脂環式エポキシ基、あるいはまた両者で変性されたものであっても良いが、繊維基質との親和性向上などの観点から脂環式エポキシ基であることが好ましい。アルキレンオキサイド変性シリコーンの変性量としては、10〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜70重量%のものである。かかるアルキレンオキサイド変性シリコーンについては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、あるいはまた両者で変性されたものであっても良いが、水中での分散安定性や繊維への均一付着性などの観点からエチレンオキサイドであることが好ましい。アミノ変性シリコーンとエポキシ変性シリコーンは、いずれもその25℃における粘度が200〜40000cStのものを用いるのが好ましい。アルキレンオキサイド変性シリコーンは、25℃における動粘度は低いほど表面平滑な油剤皮膜が形成されるが、10〜1000cStのものを用いるのが好ましい。
また、シリコーン系化合物としては、水溶性のシリコーンや乳化剤を用い、水分散させたエマルジョンを用いてもよい。乳化剤を用いる場合にはアニオン系、カチオン系、ノニオン系の乳化剤を用いることができるが、分散安定性の点からノニオン系を好ましく用いられる。ノニオン系乳化剤としてはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミンなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明で用いる油剤のシリコーン系化合物については、炭素繊維用前駆体繊維の繊維重量当たりの珪素含有量が前述の特定範囲となるようにすれば、適宜、シリコーン系化合物の種類、変性基の種類、変性量および混合比率などを選択することができる。
本発明で用いる油剤の主成分であるシリコーン系化合物については、25℃における平均シリコーン動粘度が10〜2000cStのシリコーンオイルであることが好ましい。特に、50〜1500cStであることがより好ましい。かかる動粘度が10cSt未満の場合、油剤の粘性が不足して、ニップなどで油剤が絞られた際に、単繊維間に保持されがたく、乾燥緻密化時などにおける単繊維間接着を防止する効果が十分得られない。一方、動粘度が2000cStを超える場合には、油滴の繊維表面上での拡展が遅く、平滑皮膜化する前に油剤が硬化することが多いため、油滴形状を反映したような表面凹凸が耐炎化繊維上に残ることがある。この表面凹凸が著しくなると、乾燥緻密化時や延伸時および必要に応じて追加で熱処理を行うなどの加熱工程において、糸束内への酸素の供給を阻害し、結果として焼成むら、すなわち耐炎化の進行度合いにむらを生じるものと考えられる
ここで、前述の平均シリコーン動粘度とは、油剤中に含まれるシリコーン系化合物の混合比に応じて、それぞれの動粘度を重量平均した値のことである。油剤中に含まれるシリコーン系化合物が1種類であれば、そのシリコーン動粘度が平均シリコーン動粘度となる。動粘度は、例えば、以下の方法で測定することができる。オストワルド型粘度計(毛管粘度計)に25℃に保たれたシリコーンオイルを10mlセットし、測定液の上面が一定の距離を通過する時間tを測定する。基準液体の粘度をη(cP)、密度をρ(g/cm)、流下時間をtとすると、動粘度は、
動粘度(cSt)=(η/ρ)×(t/t
により算出される。また、動粘度は、シリコーンオイルメーカーのカタログ値を用いてもかまわない。
本発明で用いる油剤は、シリコーン系化合物を含む油剤のことであり、シリコーン単独でも、有機溶媒などを用いた溶液の状態でもよいが、繊維への均一付与性、付与簡便性の観点から、水系のエマルジョンの状態が好ましい。水系のエマルジョンとする際には、シリコーンに適当な乳化剤を加えることもでき、シリコーン100重量%に対して乳化剤は5〜40重量%で十分乳化できることが多い。また、長期安定性の観点から、酸化防止剤などを加えることもできるが、シリコーンの架橋反応を阻害しないものを選択することが好ましい。
かかる油剤の製造には、各種油剤調製法が適用でき、例えば、これまで述べてきた油剤成分を混合して、油剤とすることができる。油剤の各成分の混合は、プロペラ撹拌、ホモミキサーおよびホモジナイザーなどを使って行うこともできる。また、この混合物を水に分散して用いることもでき、その場合は、転相乳化法などを用いて油剤成分の平均粒子径を0.001〜1μmに制御することが好ましい。平均粒子径はより好ましくは0.01〜0.5μmであり、さらに好ましくは0.05〜0.25μmである。かかる平均粒子径は、市販のレーザー回折を原理とする粒度分布計などで確認することができる。
本発明では、通常、シリコーン系油剤を付与した後には乾燥を行うが、具体的には、50〜300℃での乾燥と、200〜350℃での延伸を分離して行うことが好ましい。
乾燥方法としては、乾燥加熱された複数のローラーに直接接触させることや熱風や水蒸気を送る、赤外線や高周波数の電磁波を照射する、減圧状態とする等を適宜選択し組み合わせることができる。ここで、繊維表面の水分をとばすための、所謂、恒率乾燥の段階においては、ローラーなどに接触させて乾燥すると単繊維間接着し易いため、シリコーン油剤によるゲル化皮膜が十分に形成されるまでは、非接触で乾燥させる方法を採用することが好ましい。
また、非接触で乾燥する方法において、通常、熱風を送る場合、繊維の走行方向に並行流あるいは直交流させることによって行うことができる。輻射加熱方式の赤外線は遠赤外線、中赤外線、近赤外線を用いることができ、マイクロ波を照射することも選択できる。
ここで、乾燥温度は50〜300℃程度の範囲で任意に設定することができるが、一般的に低温の場合には長時間、高温の場合には短時間で乾燥できる。
乾燥後の繊維の比重は、通常、1.15〜1.5、好ましくは1.2〜1.4、より好ましくは1.2〜1.35である。乾燥後の繊維における単繊維の断面積の変動係数は、好ましくは5〜30%、より好ましくは7〜28%、さらに好ましくは10〜25%である。また、乾燥後の繊維における単繊維の伸度は0.5〜20%であることが好ましい。さらに、乾燥後の繊維は、示差走査熱分析(DSC)で求めた酸化発熱量(J/g)が50〜400であることが好ましい。場合によって、連続乾燥ではなくバッチ的な乾燥を行うこともできる。
なお、油剤の付与はかかる乾燥後にも実施することができる。前述のような、乾燥時の単繊維間接着を抑制できる範囲で、乾燥緻密化前の油剤付着量を減らし、目標の油剤付着量とするため乾燥後に油剤を追加付与する方法がこれに当たる。この場合、油剤成分は乾燥緻密化前と乾燥緻密化後で同一であっても異なっていても良く、得られる炭素繊維用前駆体繊維の珪素含有量が前述の範囲を満たすものであれば、適宜選択することができる。
次に、延伸については、延伸温度は200〜350℃の範囲で任意に設定することができ、延伸倍率は1.1〜4倍が好ましく、1.2〜3.5倍がより好ましく、1.3〜3.0倍がさらに好ましい。延伸倍率は必要とされる炭素繊維用前駆体繊維としての強度や繊度から設定される。また、延伸に際しての処理時間は、繊維を所望の割合だけ延伸させることができれば十分であるが、繊維の工程通過速度を遅くして処理時間を長くすることにより、延伸の効果と併せて熱処理により耐炎性をさらに向上させる効果も得られるため、温度や単繊度にもよるが、処理時間は0.01〜60分の任意の値を採用できる。
本発明では、珪素含有量が前述の範囲を満たすものであれば、乾燥緻密化前だけでなく、延伸前後など他の部分においても、必要に応じて油剤を適宜付与しても良い。この場合、油剤の種類としては特に限定されず、ポリエーテル系、ポリエステルの界面活性剤、シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンを単独あるいは混合して付与することができ、その他の油剤成分を付与しても良いが、繊維への均一付与性やゲル化皮膜形成性の観点からアミノ変性シリコーンを多く含むものが好ましく採用され、工程通過性やローラー汚れのバランスからアミノ変性シリコーンを多く含む、エポキシ変性・ポリエーテル変性成分含有油剤が好ましい。
次に、このような炭素繊維用前駆体繊維を不活性雰囲気で高温熱処理する、いわゆる炭化処理することにより炭素繊維を得ることができる。より具体的には、前記した炭素繊維用前駆体繊維を、不活性雰囲気中、最高温度を300℃〜3000℃の範囲の温度で炭化処理する。かかる炭素繊維は、熱処理で発生する単繊維間接着が効果的に抑制されるため、良好なストランド強度を発現するものである。
炭化処理の処理温度について、最高温度の下の方としては、800℃以上、1000℃以上、1200℃以上の順に好ましく、最高温度の上の方としては、1800℃以下も使用できる。また、かかる炭素繊維をさらに不活性雰囲気中、2000〜3000℃で加熱することによって黒鉛構造の発達した炭素繊維とすることもできる。
さらに、本発明において得られた炭素繊維用前駆体繊維を酸素存在下200〜350℃で熱処理する、いわゆる耐炎化した後で、炭化処理することにより炭素繊維を得ることもできる。
耐炎ポリマーを含有する溶液を紡糸して得られる炭素繊維用前駆体繊維は、従来のPAN系前駆体繊維と比較して耐炎化が進んだ状態となっている。そのため、製造コストの低コスト化の観点から、耐炎ポリマーから炭素繊維を得るまで、一つのプロセスで連続的に製造する方法も勿論採用できるが、従来のPAN系前駆体繊維から炭素繊維を得る場合と同様、耐炎化工程を含む製造プロセスを採用することで、特に耐炎性能に優れた耐炎化繊維を得ることができる。かかる繊維を炭化することで、得られる炭素繊維の炭化収率をさらに向上させることができ、結果として生産性の向上につなげることも可能である。
この際の耐炎化については、前述の製糸工程での延伸に際しての熱処理と同様の意味であるが、ここでは製糸工程と別工程として実施することで、生産速度を別に設定することができるのでさらに長時間の処理が可能となり、耐炎化をより進行させることもできる。
本発明において得られる炭素繊維は、強度として0.1GPa以上、0.2GPa以上、0.3GPa以上であることが好ましく、また強度の上の方としては10.0GPa以下が適当である。強度が低すぎると補強繊維として使用できない場合がある。強度は高ければ高いほど好ましいが、10.0GPaあれば本発明の目的として十分なことが多い。
また、かかる炭素繊維を構成する単繊維は、繊維直径が1nm〜7×10nmが好ましく、10〜5×10nmがより好ましく、50〜10nmがさらに好ましい。かかる繊維直径が1nm未満では繊維が折れやすい場合があり、7×10nmを超えるとかえって欠陥が発生しやすい傾向にある。また、本発明で得られる炭素繊維は、比重が1.3〜2.4が好ましく、1.6〜2.1がより好ましく、1.6〜1.8が特に好ましい。1.3未満だと繊維が折れやすい場合があり、2.4を超えるとかえって欠陥が発生しやすい傾向にある。比重は液浸漬法や浮沈法によって測定できる。ここで炭素繊維の単繊維は中空部を含むものであっても良い。この場合、中空部は連続であっても非連続であっても良い。
得られた炭素繊維はその表面改質のため、電解処理することができる。電解処理に用いる電解液には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸性溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドといったアルカリ又はそれらの塩を水溶液として使用することができる。ここで、電解処理に要する電気量は、適用する炭素繊維により適宜選択することができる。
かかる電解処理により、得られる複合材料において炭素繊維材料とマトリックスとの接着性が適正化でき、接着が強すぎることによる複合材料のブリトルな破壊や、繊維方向の引張強度が低下する問題や、繊維方向における引張強度は高いものの、樹脂との接着性に劣り、非繊維方向における強度特性が発現しないといった問題が解消され、得られる複合材料において、繊維方向と非繊維方向の両方向にバランスのとれた強度特性が発現されるようになる。
この後、得られる炭素繊維に集束性を付与するため、サイジング処理をすることもできる。サイジング剤には、使用する樹脂の種類に応じて、樹脂との相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
次に実施例により、本発明をより具体的に説明する。なお実施例における各物性値または特性は、以下の方法により測定した。
<珪素含有量>
測定する耐炎化繊維0.3〜0.5gを加熱灰化し、灰分を炭酸ナトリウムで融解後、希硝酸に溶解して、定容とした溶液についてICP発光分光分析法で珪素(Si)を定量した。かかるICP発光分光分析装置としては、エスアイアイ・テクノロジー社製 SPS3000を用いた。
<油剤成分の付着量>
油剤付与後、乾燥緻密化前の繊維から、抽出法により求めた。
<工程通過性の評価a 毛羽 >
乾燥炉から出てきた繊維についての毛羽数(5分間における毛羽のカウント数)で、以下の基準により評価した。
○:3本以下
△:4〜10本
×:10本超
<工程通過性の評価b ローラー汚れ >
乾燥炉から出た後に接触するローラーの汚れ度合いについて、以下の基準により評価した。
○:30分以上汚れを除去する必要がない。
△:30分毎に汚れを除去する必要がある。
×:15分毎に汚れを除去する必要がある。
<ストランド強度>
炭素繊維下記組成の樹脂を含浸させ、130℃の温度で35分間硬化させた後、JIS R7601(1986年)に基づき、引張試験を行い、n=6の平均でストランド強度を求めた。
{樹脂組成}
・3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4エポキシシクロヘキシルカルボキシレート(ERL−4221、ユニオンカーバイト社製) 100重量部
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン(ステラケミファ社製) 3重量部
・アセトン(和光純薬工業社製) 4重量部
<炭素繊維の融着評価>
総繊度24Kとなるように炭素繊維を合糸し、該炭素繊維束を3mm長に切断したものを2本作り、アセトン100ml中に分散させて、マグネチックスターラーを用いて10分撹拌して炭素繊維を分散させる。この炭素繊維分散液を直径130mmの濾紙上に移して吸引濾過し、濾紙上に残った炭素繊維を観察して、融着度合いを以下の基準により5段階で評価した。
5:融着した部分が無い
4:5と3の間
3:融着した部分が半分程度見られる。
2:3と1の間
1:融着している部分が全体的に見られる。
<凝固糸の膨潤度>
凝固糸の表面の付着水を吸い取り紙で十分除去した後の重量(W)と、これを180℃×2時間熱風乾燥機で乾燥した後の重量(W0)から、以下の計算式を用いて求めた。
B={(W−W0)/W0}×100(%)
<耐炎ポリマー含有溶液の濃度>
耐炎ポリマー含有溶液約15mgを精秤し、熱重量天秤装置(略称TG装置)を用いて、25℃より20℃/分で300℃まで加熱した時点での残存固形分を耐炎ポリマー量として測定し、かかる耐炎ポリマー量を耐炎ポリマー含有溶液量で除して百分率で耐炎ポリマー濃度(重量%)を求めた。なお、熱重量天秤装置としてはセイコーインスツルメンツ社製 TG−DTA2000SAを用いた。
また、水中にて完全に凝固する耐炎ポリマーの場合は耐炎ポリマー含有溶液5gを90℃に加熱した水1Lで30分処理を3回繰り返し、固形成分だけを集め120℃で1時間乾燥し耐炎ポリマーを分離した。その重さを測定し、かかる耐炎ポリマー量を耐炎ポリマー含有溶液量で除して百分率で耐炎ポリマー濃度(%)を求めた。
<耐炎ポリマー含有溶液の粘度>
ソリキッドメータ(レオロジ社製)のプレート−プレート型レオメーターを用いて、条件として周波数0.1Hz、振幅1゜で測定した。測定温度は25℃〜150℃まで測定し、50℃の値を代表値とした。
<耐炎性の評価法>
A.不定形ポリマー
JIS Z 2150(1966)の薄い材料の防炎試験方法(45°メッケルバーナー法)に準拠した方法であるが、条件を選定し各試料の耐炎性を評価した。不定形のポリマーの場合は粉砕して20μm程度の粒子とし、加圧成形機(圧力10MPa)を用いて直径20mm、厚さ1mmの円盤状ディスクを作成し試料とした。このディスクを、燃焼試験箱に設置した45°に傾斜した試験片支持わく内にセットし、高さ160mm、内径20mmのメッケルバーナーの火で10秒加熱し、残炎時間と燃焼後炭化物として残存するかどうか評価した。残炎時間、すなわち加熱終了から試料が炎を上げて燃え続ける時間が短い方が優れているものであるが、試料の形状を保持したまま炭化物を含む全面積を測定し測定前の70%以上残存すれば耐炎性能が「優秀」と評価した。40〜70%以上残存すれば「良好」、40%未満の場合は「不良」と判定した。
B.繊維
繊維の場合は合糸による1500本のフィラメントで試料長を30cmとし、耐炎ポリマーの評価と同様に、同様メッケルバーナーの炎で残炎時間および炭化長を求めその値から耐炎性を評価した。耐炎性が優秀(残炎時間が10秒以下、炭化長5cm以下)、あるいは耐炎性良好(残炎時間10秒以下、炭化長10cm以下)、耐炎性あり(残炎時間10秒以下、15cm以下)、不良(残炎時間10秒を越える、15cmを越える炭化長)の状態を判定した。測定数はn=5とし、もっとも該当数が多かった状態をその試料の耐炎性とした。
<各種繊維における単繊維引張強度>
いずれも、JIS L 1015(1981)に従って引張試験を行った。表面が滑らかで光沢のある紙片に5mm幅毎に25mmの長さの単繊維を1本ずつ試料長が約20mmとなるよう両端を接着剤で緩く張った状態で固着した。試料を単繊維引張試験器のつかみに取り付け、上部のつかみの近くで紙片を切断し、試料長20mm、引張速度20mm/分で測定した。測定数はn=50とし、平均値を引張強度とした。
<各種繊維における比重測定>
電子天秤を付属した液浸法による自動比重測定装置を自作し、具体的に炭化処理前の繊維の場合にはエタノールを用い、炭化処理後の繊維の場合にはジクロロベンゼンを液として用い、この中に試料を投入し測定した。なお、予め投入前にエタノールまたはジクロロベンゼンを用い別浴で試料を十分濡らし、泡抜き操作を実施した。
<単繊維断面積の変動係数>
単繊維断面積の変動係数は次のように求めた。単繊維が整列した糸束を、任意の場所で5cmサンプリングしエポキシ樹脂で糸束全体を包埋し固定化した。この糸束をミクロトームによってきれいに断面を露出させ、その切片全体を光学顕微鏡で観察し1000倍に拡大して写真をとった。単繊維全数の単繊維断面積の写真を画像データとして白黒2値化し、画像解析から変動係数を計算し確定した。
(実施例1)
アクリロニトリル100重量部、イタコン酸0.6重量部、DMSO371重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.4重量部、オクチルメルカプタン1重量部を反応容器に仕込み、窒素置換後に65℃で5時間、75℃で7時間加熱し重合し、DMSOを溶媒とするアクリロニトリル99.5モル%とイタコン酸0.5モル%からなるポリアクリロニトリル共重合体(PAN)を含む溶液を調製した。系全体をポンプで排気して30hPaまで減圧することで脱モノマーした後に160℃に加温しDMSOとモノエタノールアミン(MEA)を加え60分間均一な状態で反応させた。さらにオルトニトロトルエン(ONT)を加え160℃で120分間反応させ、黒色の耐炎ポリマー含有溶液を得た。この際の仕込み重量比はPAN/DMSO/MEA/ONT=10/78/6/6であった。
冷却して得た耐炎ポリマー含有溶液の粘度は25℃で50Pa・s、50℃では20Pa・sであった。
また、この耐炎ポリマーを温水中に投入し、凝固したポリマーをろ過によって分離し、120℃で乾燥させ耐炎ポリマーを単離した。
この耐炎ポリマー含有溶液中の耐炎ポリマーの濃度を測定したところ12.5重量%であった。この耐炎ポリマーの耐炎性を評価したところ、残炎時間は8秒と短く、ほとんど100%円盤状のディスク形状を保持しており、耐炎性が優秀であることがわかった。
この耐炎ポリマー含有溶液を湿式紡糸装置で繊維化した。耐炎ポリマー溶液を焼結フィルターを通した後、0.08mmの孔径を1500ホール有する口金から30℃のDMSO/水重量比=55/45浴中に吐出した。この際、凝固糸の膨潤度は400%であった。
この凝固糸を70℃のDMSO/水重量比=30/70浴中を通して1.1倍に延伸し、引き続いて80℃のDMSO/水重量比=10/90浴中を通して1.03倍に延伸した。
さらに80℃の温水浴において、溶媒類をほとんど水に置換しつつ、洗浄した。
その後、アミノ変性シリコーン66.5重量%、エポキシ変性シリコーン28.5重量%、エチレンオキサイド変性シリコーン5.0重量%および乳化剤よりなる油剤を油剤濃度3.0重量%で、油剤成分付着量が3.0重量%となるように付与した後、熱風循環炉中200℃で3分間乾燥した。乾燥糸の比重は1.30で伸度は3%であった。また、乾燥後の珪素含有量は0.34重量%であり、乾燥緻密化時の接着が無く、しなやかな状態の炭素繊維用前駆体繊維が得られた。
さらに熱風循環炉中270℃で3.0倍に延伸すると同時に3分間熱処理して耐炎化を進行させた。得られた繊維について、単繊維の繊度は1.0dtex、強度は2.3g/dtex、伸度は18%であり、耐炎性を評価したところ、燃焼することなく赤熱し、炭化長1cmと優秀な耐炎性を有していることがわかった。また単繊維断面積の変動率は15%とバラツキの小さいものであった。
炭素繊維用前駆体繊維の工程通過性について、乾燥炉を出た繊維の毛羽の発生状況は「○」、ローラー汚れの度合いは「○」で良好であった。
さらに、得られた炭素繊維用前駆体繊維を窒素雰囲気中、300〜800℃で予備炭化し、次いで窒素雰囲気中、1400℃で炭化処理して炭素繊維を得た。得られた炭素繊維の強度は3.0GPa、弾性率は230GPa、比重は1.75であり、ストランド強度は3.3GPaであった。炭素繊維の融着については、5段階評価で「4級」であり、融着部分がほとんど無く良好であった。各種評価結果を表1に示す。
(実施例2、3)
油剤の構成成分であるアミノ変性シリコーン油剤、エポキシ変性シリコーン油剤およびエチレンオキサイド変性シリコーン油剤の各シリコーン系化合物の混合比率を表1に示す如く変更したこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。各種評価結果を表1に示す。
(実施例4〜9)
油剤の構成成分であるアミノ変性シリコーン油剤、エポキシ変性シリコーン油剤およびエチレンオキサイド変性シリコーン油剤の各シリコーン系化合物の変性量を表1に示す如く変更したこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。各種評価結果を表1に示す。
(実施例10〜12)
油剤成分の付着量を表1に示す如く変更したこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。各種評価結果を表1に示す。
(実施例13)
実施例1と同様の油剤濃度3.0重量%の油剤を油剤成分付着量が1.5重量%となるように乾燥緻密化前に付与して熱風循環炉中200℃で3分間乾燥した後、乾燥緻密化前に付与したものと同じ油剤を、乾燥緻密化前後の合計で油剤成分付着量が3.0重量%となるように追加で付着させたこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。各種評価結果を表1に示す。
(比較例1)
油剤としてビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の両末端高級脂肪酸エステルと乳化剤よりなる油剤に変更したこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。各種評価結果を表1に示す。
ここで、得られた炭素繊維用前駆体繊維については、珪素を含まないことにより、ローラー汚れの度合いに関しては「○」であったが、乾燥炉を出た繊維の毛羽の発生状況は「△」であった。また、炭素繊維の融着については、全体的に酷く融着した部分が見られたため評価は「1級」であり、ストランド強度もこの影響を受けて低い値となった。
(比較例2)
温水浴にて洗浄後、実施例1と同様の油剤を油剤濃度20重量%として、油剤成分の付着量を表1に示す如く変更したこと以外は、実施例1と同様にして炭素繊維を得た。各種評価結果を表1に示す。
ここで、得られた炭素繊維用前駆体繊維の珪素含有量は5.6重量%と多く、このことからローラー汚れの度合いに関しては「×」であり、乾燥炉を出た繊維の毛羽の発生状況は「○」であった。また、炭素繊維の融着については、全体的に融着が見られなかったため評価は「5級」であったが、予備炭化後のローラー上に汚れが付着したため、工程通過性が悪いことがあり、また、付着物との接触により繊維が傷付いたためと推測されるが、ストランド強度は比較的低い値となった。
Figure 2008202208
本発明における炭素繊維用前駆体繊維は、製糸工程、耐炎化および炭化工程での各熱処理時における単繊維間接着を抑制できるため、高性能な炭素繊維として複合材料の補強繊維として広く利用できる。

Claims (5)

  1. ポリアクリロニトリル骨格を有する耐炎ポリマーを構成成分とし、繊維重量当たりの珪素含有量が0.01〜5重量%の範囲であることを特徴とする炭素繊維用前駆体繊維。
  2. ポリアクリロニトリル骨格を有する耐炎ポリマーを構成成分とする繊維に、繊維の乾燥重量当たりの油剤成分付着量が0.1〜5重量%となるように、シリコーン系油剤を付与して請求項1に記載の炭素繊維用前駆体繊維を得る炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
  3. ポリアクリロニトリル骨格を有する耐炎ポリマーを構成成分とする繊維は、ポリアクリロニトリル骨格を有する耐炎ポリマーを含有する溶液を、凝固浴出の凝固糸の膨潤度を100〜1000重量%として、湿式紡糸あるいは乾湿式紡糸して得られ、かつ、シリコーン系油剤を付与した後には、乾燥する、請求項2に記載の炭素繊維用前駆体繊維の製造方法。
  4. 請求項1に記載の炭素繊維用前駆体繊維を不活性雰囲気中300℃〜3000℃の温度で炭化する炭素繊維の製造方法。
  5. 炭化する前に、酸素存在下200〜350℃で熱処理する、請求項4に記載の炭素繊維の製造方法。
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