JP2015200046A - ポリアクリロニトリル系部分環化重合体、ポリアクリロニトリル系耐炎重合体、ポリアクリロニトリル系耐炎繊維、炭素繊維及びそれらの製造方法 - Google Patents
ポリアクリロニトリル系部分環化重合体、ポリアクリロニトリル系耐炎重合体、ポリアクリロニトリル系耐炎繊維、炭素繊維及びそれらの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
Description
た繊維状物を熱処理する方法が開示されている。しかしながら、該方法では耐炎化が十分に進行していないAN系重合体粉末を使用しているため、溶液の経時的な粘度変化が大きく、糸切れが発生しやすい。また溶剤として、有機ポリマーを分解させやすい硫酸、硝酸等の強酸性溶媒を使用しているため、耐腐食性を有する特殊な材質により形成された装置を用いる必要があり、コスト的な課題がある。
選ばれる少なくとも一つの官能基又は構造を有する化合物がより好ましい。
赤外分光測定で測定される2240±60cm-1の範囲内にある赤外線吸収スペクトル(A)から下記式(1)で算出されるAbs2240±60が70%以下であり、
硫黄含有率が0.3質量%以上20.0質量%以下
であるポリアクリロニトリル系部分環化重合体に関する。
[1]PAN系重合体を、溶液中で変性した後に、該重合体を紡糸して耐炎繊維を製造する方法
[PAN系部分環化重合体]
本発明のPAN系部分環化重合体(以下、部分環化重合体とも示す)は、ポリアクリロニトリル系重合体を変性することにより得られ、PAN系重合体と変性処理後の部分環化重合体について赤外分光測定で測定される2240±60cm-1の範囲内にある赤外線吸収スペクトル(A)の面積から下記式(1)で算出されるAbs2240±60が70%以下であり、硫黄含有率が0.3質量%以上20.0質量%以下である。
数平均分子量(Mn)=Σ(NiMi)/Σ(Ni)
で表される値である。数平均分子量はポリスチレン換算での相対値を用いる。
本発明のPAN系耐炎重合体(以下、耐炎重合体とも示す)は、前記PAN系部分環化重合体をさらに酸化剤で変性して得られるPAN系耐炎重合体である。該耐炎重合体は、赤外分光測定で測定される2940±160cm-1の範囲内にある赤外線吸収スペクトル(B)の面積から下記式(2)で算出されるAbs2940±160が70%以下であり、硫黄含有率が0.3質量%以上20.0質量%以下であり、比重が1.26以上である。
本発明のPAN系部分環化重合体含有溶液(以下、部分環化重合体含有溶液とも示す)は、前記PAN系部分環化重合体が1.0質量%以上50.0質量%以下の濃度で溶剤に溶解している。該濃度が1.0質量%以上であることにより、成形の際の生産性が向上する。また、該濃度が50.0質量%以下であることにより、ゲル化の進行による流動性の低下を防ぎ、成形加工しやすくなる。該濃度は10.0質量%以上20.0質量%以下が好ましく、12.0質量%以上18.0質量%以下がより好ましい。ここで、部分環化重合体含有溶液の部分環化重合体の濃度は下記式で求められる。
なお、部分環化重合体の質量は、部分環化重合体含有溶液からエバポレーターで溶媒を留去後、熱質量分析装置(TG)を用いて、窒素ガス中、40℃/分で200℃まで昇温し溶媒を完全に除去した際に残存する固形成分の質量として求められる。また、適当な凝固液(沈殿剤)を用いて固形重合体を分離できる場合には、直接凝固重合体の質量から求めることができる。
本発明のPAN系耐炎重合体含有溶液(以下、耐炎重合体含有溶液とも示す)は、前記PAN系耐炎重合体が1.0質量%以上50.0質量%以下の濃度で溶剤に溶解している。該濃度が1.0質量%以上であることにより、成形の際の生産性が向上する。また、該濃度が50.0質量%以下であることにより、ゲル化の進行による流動性の低下を防ぎ、成形加工しやすくなる。該濃度は10.0質量%以上20.0質量%以下が好ましく、12.0質量%以上18.0質量%以下がより好ましい。なお、耐炎重合体含有溶液の耐炎重合体の濃度は、前記部分環化重合体含有溶液の部分環化重合体の濃度と同様に求めることができる。
本発明のPAN系部分環化重合体は、チオラート系化合物を用いて変性することにより製造できる。
本発明のPAN系耐炎重合体は、PAN系部分環化重合体の耐炎化を十分に進める観点から、求核剤に加え、酸化剤を用いて酸化処理(変性)することができる。求核剤を加えた後に酸化剤を加えてもよく、求核剤と酸化剤を同時に加えてもよい。また、求核剤と酸化剤を同時に加える場合、PAN系重合体を加える前に予め求核剤と酸化剤を混合してもよく、あるはPAN系重合体と求核剤と酸化剤を同時に混合してもよい。
本発明の耐炎繊維は、前記部分環化重合体含有溶液又は前記耐炎重合体含有溶液(以下、重合体含有溶液とも示す)を紡糸して得られる。
本発明の炭素繊維は、前記の耐炎繊維を焼成して得られる。具体的には、前記耐炎繊維を、不活性成雰囲気で高温熱処理する、いわゆる炭化処理することにより得ることができる。例えば、耐炎繊維を、不活性成雰囲気下で300℃以上2000℃未満で熱処理することにより、炭素繊維を得ることができる。得られた炭素繊維を、さらに不活性雰囲気下で2000〜3000℃で加熱することにより、黒鉛構造の発達した炭素繊維を得ることもできる。
[2]PAN系前駆体繊維を、チオラート系化合物を含む液相中で変性して、耐炎繊維を製造する方法
[PAN系前駆体繊維]
本発明において、PAN系前駆体繊維とは、アクリロニトリル(AN)の単独重合体(PAN単独重合体)、又はアクリロニトリルと他のモノマーとの共重合体(PAN系共重合体)を用いることができる。(以下、PAN単独重合体とPAN系共重合体を合わせて、適宜「PAN系重合体」と略する)
PAN系前駆体繊維の紡糸安定性を高め、炭素繊維の品位並びに性能を向上させるために、PAN系重合体は、AN由来の構造単位を90.0モル%以上99.98モル%以下含むことが好ましい。AN由来の構造単位が多すぎると紡糸安定性が低下し、少なすぎるとPAN系前駆体繊維の耐熱性が低下するため、続く耐炎化工程で、繊維同士の融着が発生しやすくなる。AN由来の構造単位は94.0モル%以上99.9モル%がより好ましい。
[PAN系重合体の製造方法]
PAN系重合体を重合する方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等を用いることができる。
[PAN系前駆体繊維の製造]
湿式紡糸法や乾湿式紡糸法等の公知の方法を用いて、PAN系重合体を溶媒に溶解した重合体溶液(以下、「紡糸原液」と呼ぶ)を紡糸口金から紡出し、凝固浴に導入して、凝固することにより、本発明で用いるPAN系前駆体繊維を得ることができる。
[PAN系耐炎繊維の製造方法]
本発明は、PAN系耐炎繊維を、300℃以上3000℃以下で熱処理する、炭素繊維の製造方法に関するものであり、前記耐炎繊維はPAN系重合体をチオラート系化合物で変性してなり、比重1.24以上1.55以下の耐炎繊維であることを特徴とする。
[チオラート系化合物]
チオラート系化合物は高い求核性と大きく分極している性質を持ち、これが本発明における速い耐炎化反応を可能にしている。また、チオラート系化合物は、反応の系中でチオラートとして存在するものであれば良い。
前記のチオラート系化合物は、一般的にはチオール系化合物と金属水酸化物等を混合し、反応させることにより、容易に合成できる。該合成を窒素雰囲気下で行うことにより、副反応を抑制できる。
チオラート系化合物は、アルカリ金属塩、又はアルカリ土類金属塩の状態で存在することが知られている。本発明におけるアルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウムを、またアルカリ土類金属としてはベリリウム、マグネシウム、カルシウムを挙げることができる。原料が低価格であり、本発明の耐炎化繊維の製造安定性に優れる点から、ナトリウム、カリウムが好ましい。
本発明におけるチオラート系化合物は、金属イオンやチオラート基以外に炭化水素基、又はアリール基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基又は構造を有することができる。また、本発明のチオラート系化合物は、酸素、窒素、硫黄などの元素を有する官能基を有していていることが、PAN系前駆体繊維との反応性や溶解性を優れたものとする観点から好ましい。より詳しくは、本発明のチオラート系化合物は、ヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、チオール基、アゾ基から選ばれる少なくとも一つの官能基を含有することができる。
[酸化剤]
本発明の製造方法に用いる酸化剤としては、少なくとも1つの窒素原子を含有する化合物が適している。例えばニトロ基、ニトロソ基、N-ヒドロキシ構造、N−オキサイド構
造、N−オキシル構造からなる群より選ばれる少なくとも一つの官能基を有する化合物が、耐炎化反応の反応効率が優れる点から好ましい。特に、ニトロ基を含有する化合物は、取り扱いやすさや、高い酸化性を有することから好ましい。より詳しくは、ニトロトルエン、ニトロベンゼン、ニトロキシレン、ニトロナフタレン、ニトロカテコール、アミノフェノール等の芳香族系ニトロ化合物は、沸点や溶解性や反応効率が優れている観点から好ましい。
[チオラート系化合物、酸化剤を用いた耐炎化反応]
PAN系前駆体繊維を変性する方法は、バッチ式でも連続式でもよく、目的に応じて選択することができる。例えば、PAN系前駆体繊維を、ボビン、又は繊維収納容器から引き出し、溶液中に浸漬して、連続的に処理する方法を用いることができる。あるいは、PAN系前駆体繊維を、ボビン巻き又はカセ巻きの状態で、溶液中に浸漬して、バッチ処理する方法を用いることができる。ボビン巻きの状態のPAN系前駆体繊維を処理する方法は、設備が簡略化でき、コストダウンという観点からは好ましい。
また、硫黄含有率が0.1質量%未満であるとボイドが現れ強度低下を引き起こすおそれがあり、また30質量%超過であると弾性率が著しく低下するおそれがある。
[PAN系耐炎繊維]
前記方法により、PAN系前駆体繊維を、チオラート系化合物、又はチオラート系化合物と酸化剤を用いて変性して、耐炎繊維を得るにあたり、PAN系前駆体繊維と変性処理後の耐炎繊維について赤外分光測定で測定される2240±60cm−1又は2940±160cm−1の範囲内にある赤外線吸収スペクトルの面積比、耐炎繊維の硫黄含有率と比重が、一定の数値範囲となるように、処理することが好ましい。
[炭素繊維の製造方法、及び炭素繊維]
本発明の炭素繊維は、上記方法で得られた耐炎繊維を、さらに炭化処理して得られる。具体的には、該耐炎繊維を、不活性成雰囲気で高温で熱処理(炭化処理)することにより炭素繊維を得ることができる。例えば、該耐炎繊維を、不活性雰囲気下、300℃以上、2000℃未満で処理することにより、炭素繊維を得られる。温度の下限は800℃以上が好ましく、1000℃以上がより好ましく、1200℃以上がさらに好ましい。温度の上限は、1800℃以下がより好ましく、1600℃以下がさらに好ましい。また、得られた炭素繊維を、さらに不活性雰囲気下で、2000℃以上、3000℃以下で加熱することにより、黒鉛構造の発達した炭素繊維を得ることもできる。
本発明の炭素繊維は表面改質のため、電解処理されてもよい。電解処理に用いる電解液としては、例えば硫酸、硝酸、塩酸等の酸性溶液、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ又はそれらの塩を水溶液として使用することができる。電解処理に要する電気量は、適用する炭素繊維により適宜選択することができる。
凝固糸の表面の付着水を吸い取り紙で十分除去した後の質量(W)と、これを150℃で1時間、熱風乾燥機を用いて乾燥した後の質量(W0)とから、以下の計算式を用いて凝固糸の膨潤度(B)(%)を求めた。
<部分環化重合体含有溶液及び耐炎重合体含有溶液の重合体濃度>
重合体が水溶性である場合には、以下の方法により重合体濃度を測定した。重合体含有溶液約15mgを精秤し、熱質量天秤装置(製品名:EXSTER6000、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、25℃から20℃/分で300℃まで加熱した時点での残存固形分を重合体の質量として測定した。該重合体の質量を重合体含有溶液の質量で除して、百分率で重合体濃度(質量%)を求めた。
硫黄含有率は、元素分析装置(製品名:vario EL cube、シーベルヘグナー社製)を用いて測定した。測定条件は、燃焼管=1150℃、還元管=850℃、測定モード=CHNSとした。なお、標準物質はスルファニル酸(C:41.61%、H:4.07%、N:8.09%、S:18.50%)とした。
コーン−プレート型レオメーター(製品名:AR550、TA Instriments社製)を用いて粘度を測定した。測定は25〜150℃まで行い、25℃の値を代表値とした。
JIS L1015(1981)に従って引張試験を行った。表面が滑らかで光沢のある紙片の上に、25mmの長さの単繊維を置き、単繊維を緩く張った状態で両端の2.5mmずつを接着剤で紙片に固定して、単繊維の接着剤で固定されていない部分の長さ(試料長)を約20mmとし、これを単繊維引張試験器の試料とした。単繊維引張試験器のつかみにこの試料を取り付け、上部のつかみの近くで、単繊維を切断せず、紙片部分のみ鋏みで切断し、引張速度20mm/分で測定を実施した。該測定を50回行い、その平均値を引張試験結果とした。
比重は、JIS R 7603に準拠して測定した。
<炭素化収率の測定>
セイコーインスツル社製の示差熱・熱重量同時測定装置EXSTAR6000を使用した。なお、繊維は鋏と乳鉢で裁断し、質量は10mg、400mL/minの窒素雰囲気化のもと、40℃/分の昇温速度で測定を実施した。サンプルパンの素材は白金で、基準物質はα―アルミナを用いた。
サンプルは実施例中の所定の温度(300℃以下)で反応処理後の物を「前サンプル」とし、970℃まで昇温後のサンプルを「後サンプル」とし、前サンプルの質量と後サンプルの質量(g)(質量は下3桁まで測定)を用いて、以下の計算式で算出した。
炭素化収率(%)= 後サンプルの質量(g)/前サンプルの質量(g)×100
<赤外分光測定>
繊維束を1m毎に切断し、3本の各繊維束の端10mmの部分をさらに切断、採取し、ガラス瓶の中でそれを切り刻んだ。さらに乳鉢で磨りつぶすことで粉末状のサンプルとした。サンプル1mg秤量し、乾燥させた200mgのKBrと乳鉢上で混合、粉砕した。これをプレス機で押すことで直径13mm、厚さ0.5mmの円盤状錠剤とし、FT−IR装置(製品名:Magna860、Nicolet社製)にて透過測定を行った。
スペクトルは画像処理ソフトStream Essentials Version1.8を使用してベースラインを定め、スペクトルの面積を定量評価した。
[実施例1]
AN/アクリルアミド/メタクリル酸=96/3/1(質量比)を重合することで得たPAN系重合体(数平均分子量=190000)をDMSOに溶解し、PAN系重合体含有溶液を調製した。該PAN系重合体含有溶液を160℃まで加温し、温度が一定となったところでチオグリセロールと水酸化ナトリウムから作製したチオラート塩を加え、60分間均一な状態で反応させ、部分環化重合体含有溶液を得た。該部分環化重合体含有溶液の粘度は55poiseであった。また、重合体濃度は18%であった。該部分環化重合体含有溶液の一部を温水中に投入し、凝固した重合体をろ過によって分離し、120℃で乾燥させ、部分環化重合体に関する分析を行った。該部分環化重合体のAbs2240±60は17%、硫黄含有率は12%、数平均分子量は197000であった。
[実施例2]
溶媒として、DMSOの代わりにDMFを用いた以外は実施例1と同様に部分環化重合体含有溶液、及び黒色の耐炎重合体含有溶液を得た。
[実施例3]
各原料の仕込み量をPAN系重合体/DMF/チオラート塩/パラジウムカーボン=10/85/4/1(質量比)とした以外は実施例2と同様に部分環化重合体含有溶液、及び黒色の耐炎重合体含有溶液を得た。
[実施例4]
反応温度を120℃とした以外は実施例2と同様に部分環化重合体含有溶液、及び黒色の耐炎重合体含有溶液を得た。
[実施例5]
ANが100%からなるPAN系重合体(数平均分子量=191,000)を使用した以外は実施例2と同様に部分環化重合体含有溶液、及び黒色の耐炎重合体含有溶液を得た。
[比較例1]
チオラート塩の代わりにモノエタノールアミン(MEA)を用い、パラジウムカーボン粉末の代わりにオルトニトロトルエン(ONT)を用い、各原料の仕込み量をPAN/DMSO/MEA/ONT=10/78/6/6(質量比)とした以外は、実施例1と同様に部分環化重合体含有溶液、及び黒色の耐炎重合体含有溶液を得た。
[比較例2]
チオラート塩の代わりにモノエタノールアミン(MEA)を用い、パラジウムカーボン粉末の代わりにオルトニトロトルエン(ONT)を用い、各原料の仕込み量をPAN/DMF/MEA/ONT=10/78/6/6(質量比)とした以外は、実施例2と同様に部分環化重合体含有溶液、及び黒色の耐炎重合体含有溶液を得た。
[比較例3]
チオラート塩の代わりにモノエタノールアミン(MEA)を用い、パラジウムカーボン粉末の代わりにオルトニトロトルエン(ONT)を用い、各原料の仕込み量をPAN/DMF/MEA/ONT=13/78/3/6(質量比)とした以外は、実施例5と同様に部分環化重合体含有溶液、及び黒色の耐炎重合体含有溶液を得た。
[比較例4]
チオラート塩の代わりにモノエタノールアミン(MEA)を用い、パラジウムカーボン粉末の代わりにオルトニトロトルエン(ONT)を用い、各原料の仕込み量をPAN/DMF/MEA/ONT=13/78/6/3(質量比)とした以外は、実施例5と同様に部分環化重合体含有溶液、及び黒色の耐炎重合体含有溶液を得た。
[比較例5]
各原料の仕込み量をPAN系重合体/DMF/チオラート塩/パラジウムカーボン=10/69/20/1(質量比)とした以外は実施例2と同様に部分環化重合体含有溶液、及び黒色の耐炎重合体含有溶液を得た。
[実施例6]
AN/アクリルアミド(AAM)/メタクリル酸(MAA)=96/3/1(質量比)を重合することで得たPAN共重合体(数平均分子量 190,000)を、ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶解し、濃度20質量%の紡糸原液を作製した。
反応時間を表1に記載した通り(1〜120分)とした以外は、実施例6と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表2に、測定結果を表4及び表6に示す。
[比較例6]
チオラート系化合物及び酸化剤を不使用とした以外は、実施例10と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表2に、測定結果を表4及び表6に示す。
[比較例7]
チオラート系化合物のみ無しとした以外は、実施例10と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表2に、測定結果を表4及び表6に示す。[比較例8]
チオラート系化合物を用いず、代わりにモノエタノールアミンを用いた以外は、実施例3と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表2に、測定結果を表4及び表6に示す。
[実施例12]
PAN系重合体にPAN単独重合体を用い、反応温度を120℃に、反応時間を40分にし、酸化剤をニトロベンゼンとした以外は実施例6と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表3に、測定結果を表5及び表6に示す。
[実施例13]
反応温度を150℃に、反応時間を20分とした以外は、実施例12と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表3に、測定結果を表4に示す。
[実施例14]
チオラート系化合物をナトリウム−2−ヒドロキシエタンチオラートとし、酸化剤をオルトニトロベンゼンに、反応温度を198℃に、反応時間を5分とした以外は実施例12と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表3に、測定結果を表4及び表6に示す。
[実施例15]
チオラート系化合物をカリウム−2−ヒドロキシエタンチオラートとした以外は、実施例14と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表3に、測定結果を表5に示す。
[実施例16]
チオラート系化合物をナトリウム−4−ヒドロキシベンゼンチオラートとし、酸化剤をオルトニトロトルエンとした以外は、実施例13と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表3に、測定結果を表5及び表6に示す。
[実施例17]
チオラート系化合物をマグネシウムビス−2−ヒドロキシエタンチオラートとし、その配合量を表3に記載の通りとした以外は、実施例16と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表3に、測定結果を表5及び表6に示す。
[実施例18]
溶媒をグリセリン、酸化剤をオルトニトロトルエン、チオラート系化合物と酸化剤の配合量を表3に記載の通りとし、反応温度を198℃、反応時間を0.5分とした以外は、実施例12と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表3に、測定結果を表5及び表6に示す。
[実施例19]
溶媒をエチレングリコールとし、チオラート系化合物と酸化剤の配合量を表3に記載の通りとし、反応時間を1.0分とした以外は、実施例18と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表3及び表6に、測定結果を表5に示す。[実施例20]
酸化剤を不使用とし、反応時間を120分とした以外は、実施例19と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表3及び表6に、測定結果を表5に示す。
[比較例9]
チオラート系化合物の代わりにグアニジン炭酸塩を、酸化剤にN−ヒドロキシフタルイミドを用いた点以外は、実施例14と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表3に、測定結果を表4及び表6に示す。
[比較例10]
溶媒をグリセリンとし、チオラート系化合物と酸化剤は不使用とし、反応温度を240℃、反応時間を120分とした以外は、実施例12と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表3及び表6に、測定結果を表5に示す。
[比較例11]
実施例12で使用したPAN系前駆体繊維を用いて、溶媒、チオラート系化合物及び酸化剤を使用しない条件、すなわち空気中において、反応温度200℃で120分間熱処理して、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表3に、測定結果を表5及び表6に示す。
[実施例21]
溶媒を水に、酸化剤をニトロカテコールに、温度を200℃に、圧力を1.55MPaにした以外は実施例8と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。圧力1.55MPaで処理するときには、市販のオートクレーブ装置を使用した。実験条件を表7及に、測定結果を表8及び表9に示す。
[実施例22]
反応時間を30分にした以外は実施例21と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表7及に、測定結果を表8及び表9に示す。
[実施例23]
反応時間を60分にした以外は実施例21と同様にして、耐炎繊維及び炭素繊維を得て、各物性を評価した。実験条件を表7及に、測定結果を表8及び表9に示す。
[比較例12]
チオラート系化合物及び酸化剤を不使用とした以外は実施例22と同様にしたが、反応途中で繊維が融着してしまい、繊維形状を保持できなかった。実験条件を表7及に、測定結果を表8及び表9に示す。
Claims (36)
- ポリアクリロニトリル系耐炎繊維の製造方法であって、
該耐炎繊維は、ポリアクリロニトリル系重合体をチオラート系化合物で変性してなる、比重1.24以上1.55以下である化合物を主成分として含む、ポリアクリロニトリル系耐炎繊維の製造方法。 - 前記変性を酸化剤の存在下で行う、請求項1に記載のポリアクリロニトリル系耐炎繊維の製造方法。
- 前記変性を溶液中で行う、請求項1又は2に記載の、ポリアクリロニトリル系耐炎繊維の製造方法。
- 前記溶液が、非プロトン性極性溶媒である、請求項3に記載のポリアクリロニトリル系耐炎繊維の製造方法。
- ポリアクリロニトリル系重合体を、チオラート系化合物で変性してなる化合物を、
非プロトン性極性溶媒に混合し、溶解して紡糸原液とし、該紡糸原液から、湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法により前記ポリアクリロニトリル系耐炎繊維を得る、ポリアクリロニトリル系耐炎繊維の製造方法。 - 前記変性を酸化剤の存在下で行う、請求項5に記載のポリアクリロニトリル系耐炎繊維の製造方法。
- 前記チオラート系化合物が、下記一般式(1)又は式(2)から選ばれる化合物である、請求項1〜6の何れか一項に記載のポリアクリロニトリル系耐炎繊維の製造方法
式(1)中、M1はアルカリ金属を示し、R1は、炭化水素基、又はヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、チオール基、イミノ基、ニトリル基、アゾ基から選ばれる少なくとも一つの官能基を含有する炭化水素基から選ばれる。
式(2)中、M2はアルカリ土類金属を示し、R2、R3は、炭化水素基、又はヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、チオール基、イミノ基、ニトリル基、アゾ基から選ばれる少なくとも一つの官能基を含有する炭化水素基から選ばれる。 - 前記酸化剤が、少なくとも1つの窒素原子を含有する化合物である、請求項2又は6に記載のポリアクリロニトリル系耐炎繊維の製造方法。
- 前記酸化剤が、ニトロ基、ニトロソ基、N-ヒドロキシ構造、N−オキサイド構造、N−オキシル構造からなる群より選ばれる少なくとも一つの官能基又は構造を有する、請求項8に記載のポリアクリロニトリル系耐炎繊維の製造方法。
- 請求項1〜9の何れか一項に記載の製造方法により得られたポリアクリロニトリル系耐炎繊維。
- ポリアクリロニトリル系重合体を変性することにより得られるポリアクリロニトリル系部分環化重合体であって、
赤外分光測定で測定される2240±60cm-1の範囲内にある赤外線吸収スペクトル(A)から下記式(1)で算出されるAbs2240±60が70%以下であり、
硫黄含有率が0.3質量%以上20.0質量%以下
であるポリアクリロニトリル系部分環化重合体。
- 請求項11に記載のポリアクリロニトリル系部分環化重合体を変性することにより得られるポリアクリロニトリル系耐炎重合体であって、
赤外分光測定で測定される2940±160cm-1の範囲内にある赤外線吸収スペクトル(B)の面積から下記式(2)で算出されるAbs2940±160が70%以下であり、
硫黄含有率が0.3質量%以上20.0質量%以下であり、
比重が1.26以上である
ポリアクリロニトリル系耐炎重合体。
- 数平均分子量が100,000以上1,000,000以下である、請求項12に記載のポリアクリロニトリル系耐炎重合体。
- 請求項11に記載のポリアクリロニトリル系部分環化重合体の製造方法であって、ポリアクリロニトリル系重合体を、チオラート系化合物を用いて変性するポリアクリロニトリル系部分環化重合体の製造方法。
- 前記チオラート系化合物を前記ポリアクリロニトリル系重合体100質量部に対して10〜250質量部用いて、80℃以上300℃以下、5分以上240分以下の条件で変性を行う請求項14に記載のポリアクリロニトリル系部分環化重合体の製造方法。
- 請求項12又は13に記載のポリアクリロニトリル系耐炎重合体の製造方法であって、請求項11に記載のポリアクリロニトリル系部分環化重合体を、酸化剤を用いて酸化処理することにより変性するポリアクリロニトリル系耐炎重合体の製造方法。
- 前記酸化剤が金属系物質である請求項16に記載のポリアクリロニトリル系耐炎重合体の製造方法。
- 前記金属系物質が、パラジウム又はパラジウム含有物である請求項17に記載のポリアクリロニトリル系耐炎重合体の製造方法。
- パラジウムの含有量が1.0質量%以上である酸化剤を用いて、80℃以上300℃以下、5分以上240分以下の条件で酸化処理を行う請求項18に記載のポリアクリロニトリル系耐炎重合体の製造方法。
- ポリアクリロニトリル系耐炎繊維を、300℃以上3000℃以下で熱処理する、炭素繊維の製造方法であって、
前記ポリアクリロニトリル系耐炎繊維は、ポリアクリロニトリル系重合体をチオラート系化合物で変性してなる化合物を主成分として含み、比重1.24以上1.55以下を特徴とする、炭素繊維の製造方法。 - 前記ポリアクリロニトリル系耐炎繊維が、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維を、チオラート系化合物と酸化剤で変性してなる、請求項20に記載の炭素繊維の製造方法。
- 前記変性を溶液中で行う、請求項20から21の何れか一項に記載の炭素繊維の製造方法。
- 前記溶液が、エチレングリコール系溶媒である、請求項22に記載の炭素繊維の製造方法。
- 前記チオラート系化合物が、下記一般式(1)又は式(2)から選ばれる化合物である、請求項20から23の何れか一項に記載の炭素繊維の製造方法
式(1)中、M1はアルカリ金属を示し、R1は、炭化水素基、又はヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、チオール基、イミノ基、ニトリル基、アゾ基から選ばれる少なくとも一つの官能基を含有する炭化水素基から選ばれる。
式(2)中、M2はアルカリ土類金属を示し、R2、R3は、炭化水素基、又はヒドロキシル基、アミノ基、ニトロ基、チオール基、イミノ基、ニトリル基、アゾ基から選ばれる少なくとも一つの官能基を含有する炭化水素基から選ばれる。 - 前記酸化剤が、少なくとも1つの窒素原子を含有する化合物である、請求項21に記載の炭素繊維の製造方法。
- 前記酸化剤が、ニトロ基、ニトロソ基、N-ヒドロキシ構造、N−オキサイド構造、N
−オキシル構造からなる群より選ばれる少なくとも一つの官能基又は構造を有する、請求項25に記載の炭素繊維の製造方法。 - 前記変性を、溶媒100質量部、チオラート系化合物1質量部以上150質量部以下を含む溶液中で、120℃以上250℃以下、及び30秒以上120分以下で行う、請求項20に記載の炭素繊維の製造方法。
- 前記変性を、溶媒100質量部、チオラート系化合物1質量部以上150質量部以下、酸化剤1質量部以上150質量部以下を含む溶液中で、120℃以上250℃以下、及び30秒以上120分以下で行う、請求項21に記載の炭素繊維の製造方法。
- ポリアクリロニトリル系耐炎繊維の硫黄含有率を0.1質量%以上30質量%以下、
とすることを含む、請求項20〜28の何れか一項に記載の炭素繊維の製造方法。 - ポリアクリロニトリル系前駆体繊維を、チオラート系化合物又はチオラート系化合物と酸化剤で変性してなるポリアクリロニトリル系耐炎繊維であって、
前記ポリアクリロニトリル系耐炎繊維の硫黄含有率を0.3質量%以上30.0質量%以下、比重を1.24以上1.55以下とし、
前記ポリアクリロニトリル系耐炎繊維、及び前記ポリアクリロニトリル系前駆体繊維の、赤外分光測定で2240±60cm−1の範囲にある赤外線吸収スペクトル(A)の面積を用いて、下記一般式(3)で算出されるAbs2240±60を70%以下、
とすることを含む、炭素繊維の製造方法。
- ポリアクリロニトリル系前駆体繊維を、チオラート系化合物又はチオラート系化合物と酸化剤で変性してなるポリアクリロニトリル系耐炎繊維であって、
前記ポリアクリロニトリル系耐炎繊維の硫黄含有率を0.3質量%以上30.0質量%以下、及び比重を1.24以上1.55以下とし、
前記ポリアクリロニトリル系耐炎繊維、及び前記ポリアクリロニトリル系前駆体繊維の、赤外分光測定で2940±160cm−1の範囲にある赤外線吸収スペクトル(B)の面積を用いて、下記式(4)で算出されるAbs2940±160を70%以下、
とすることを含む、炭素繊維の製造方法。
- 請求項10に記載のポリアクリロニトリル系耐炎繊維を、300℃以上3000℃以下で熱処理して得られる、硫黄含有率が0.1質量%以上5.0質量%以下である炭素繊維。
- ポリアクリロニトリル系前駆体繊維を、チオラート系化合物又はチオラート系化合物と酸化剤で変性してなるポリアクリロニトリル系耐炎繊維であって、
硫黄含有率が0.3質量%以上30.0質量%以下、比重が1.24以上1.55以下、耐炎繊維の赤外分光測定で2240±60cm−1の範囲にある赤外線吸収スペクトル(A)、及び2940±160cm−1の範囲内にある赤外線吸収スペクトル(B)の面積を用いて、下記一般式(5)で算出されるAbs2240/2940が0.05以上0.60以下である、ポリアクリロニトリル系耐炎繊維。
- 前記変性を、水系溶媒中で行う、請求項22に記載の炭素繊維の製造方法。
- 前記変性を、温度が120℃以上250℃以下、圧力が0.18MPa以上3.98MPa以下、時間が30秒以上120分以下で行う、請求項34に記載の炭素繊維の製造方法。
- 前記変性を、ポリアクリロニトリル系耐炎繊維の比重が1.24以上1.55以下、硫黄含有率が0.1質量%以上30質量%以下となるように行うことを特徴とする、請求項35に記載の炭素繊維の製造方法。
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