JP2014167038A - ポリアクリロニトリル系重合体、および炭素繊維前駆体繊維ならびに炭素繊維の製造方法 - Google Patents

ポリアクリロニトリル系重合体、および炭素繊維前駆体繊維ならびに炭素繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】触媒金属が均一かつ高濃度に分散した、触媒黒鉛化反応を起こすことが可能な炭素繊維前駆体繊維を高い生産性で製造するために必要な、ポリアクリロニトリル系重合体を提供する。
【解決手段】アクリロニトリル(a)、および第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩を共重合成分(b)として含有するポリアクリロニトリル系重合体Aと、アクリロニトリル(a)を共重合成分として含有し、かつ第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合成分として含有しないポリアクリロニトリル系重合体Bからなるポリアクリロニトリル系重合体。
【選択図】なし

Description

本発明は、結晶性の高い炭素繊維の製造に好適なポリアクリロニトリル系重合体、およびそのポリアクリロニトリル系重合体を用いた炭素繊維前駆体繊維ならびに炭素繊維の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度および比弾性率を有するため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツ用途や航空・宇宙用途に加え、自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途にも幅広く展開されており、さらなる生産性の向上と高弾性率化両立の要請が高い。
炭素繊維の中で、最も広く利用されているポリアクリロニトリル(以下、PANと略記することがある)系炭素繊維は、その前駆体となるPAN系重合体からなる紡糸溶液を湿式紡糸、乾式紡糸または乾湿式紡糸して炭素繊維前駆体繊維(以下、前駆体繊維と略記することがある)を得た後、それを200〜400℃の温度の酸化性雰囲気下で加熱して耐炎化繊維へ転換し、少なくとも1000℃の温度の不活性雰囲気下で加熱して炭素化することによって工業的に製造されている。
弾性率の高い炭素繊維を得るためには、炭素繊維の配向度を上げる、または、結晶性を上げる方法がある。炭素繊維の配向度を高く制御する手法としては、前述の各製造工程において、繊維束の張力を高くする、あるいは延伸倍率を高く設定することがよく行われるが、その結果毛羽立ちや糸切れを起こすことが多い。また、炭素繊維の結晶性を上げる一般的な方法としては、炭化工程の温度を高める方法があるが、炭素繊維の生産性との両立が難しい。炭化温度を上げずに結晶性を向上させる方法として、触媒黒鉛化という技術がある。触媒金属を使用することで炭素化反応の活性化エネルギーを低下させ、低温で炭化させた場合にも高温で炭化した炭素繊維同様の炭素構造を形成することが可能となる。
これまで、触媒黒鉛化を利用して弾性率の高い炭素繊維を得る方法として、PAN系重合体からなる紡糸溶液や炭素繊維前駆体繊維に触媒金属の粉や塩や錯体を添加する方法(特許文献1、2参照。)が知られている。しかしながら、炭素繊維前駆体繊維の表面に触媒金属を添加すると炭素繊維の表面のみが高結晶化し、弾性率の向上は認められない。また、紡糸溶液中に金属の粉を添加した際には均一に分散させることが難しく強度の低下が著しい、金属塩や錯体を添加した場合には紡糸工程において触媒金属が溶出してしまう等の問題がある。
この問題を解決する方法として、発明者らは第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩を共重合成分として含有するポリアクリロニトリル系重合体を用いることを提案した(特願2012−168130)。しかしながら、かかる重合体は紡糸時の延伸性が低く、生産性の向上に課題を有していた。
特許第734856号公報 特許第826096号公報
本発明は、第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩を共重合成分として含有するポリアクリロニトリル系重合体を用いつつ、紡糸時の延伸性を向上させることが可能な、ポリアクリロニトリル系重合体を提供することを課題とする。
かかる課題を解決するための本発明は、次の構成を有するものである。すなわち、本発明のポリアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリル(a)、および第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合成分として含有するポリアクリロニトリル系重合体Aと、アクリロニトリル(a)を共重合成分として含有し、かつ第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合成分として含有しないポリアクリロニトリル系重合体Bを含んでなるポリアクリロニトリル系重合体である。
本発明のポリアクリロニトリル系重合体の好ましい態様によれば、前記ポリアクリロニトリル系重合体に含まれる第VIII族金属は、鉄、コバルト、およびニッケルからなる群から選択される少なくとも一種の金属である。
本発明のポリアクリロニトリル系重合体の好ましい態様によれば、前記ポリアクリロニトリル系重合体に含まれる第VIII族金属の含有量は、ポリアクリロニトリル系重合体を構成するモノマーのモル数に対して0.1モル%以上である。
本発明の炭素繊維前駆体繊維は、前記ポリアクリロニトリル系重合体を湿式または乾湿式紡糸法により紡糸することによって製造することができる。
また、本発明の炭素繊維は、前記炭素繊維前駆体繊維を200〜300℃の温度の空気中において耐炎化する耐炎化工程と、該耐炎化工程で得られた繊維を、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化する予備炭化工程と、該予備炭化工程で得られた繊維を1000〜2000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化する炭化工程を順次経ることによって製造することができる。
本発明によれば、第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合成分として含有するポリアクリロニトリル系重合体Aと、アクリロニトリル(a)を共重合成分として含有し、かつ第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合成分として含有しないポリアクリロニトリル系重合体Bを含んでなるポリアクリロニトリル系重合体を使用することにより、触媒金属が均一かつ高濃度に分散した、触媒黒鉛化反応を起こすことが可能な炭素繊維前駆体繊維を高い生産性で製造することができる。
本発明者らは、触媒金属が均一かつ高濃度に分散した、触媒黒鉛化反応を起こすことが可能な炭素繊維前駆体繊維を高い生産性で製造するために、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
本発明におけるポリアクリロニトリル系共重合体(以下、単にPAN系共重合体と記述することがある。)は、アクリロニトリル(a)、および第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合成分として含有するポリアクリロニトリル系重合体Aと、アクリロニトリル(a)を共重合成分として含有し、かつ第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合成分として含有しないポリアクリロニトリル系重合体Bを含んでなるポリアクリロニトリル系重合体である。
本発明において、ポリアクリロニトリル系重合体Aは、アクリロニトリル(a)と第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合成分として含有することにより、紡糸工程における第VIII族金属の溶出を抑制することができる。また、アクリロニトリル(a)を共重合成分として含有し、かつ第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合成分として含有しないポリアクリロニトリル系重合体Bとポリアクリロニトリル系重合体Aを組み合わせることで、炭素繊維前駆体繊維を製造する際の延伸性を向上させることができる。
炭素繊維前駆体繊維の製造時の延伸性が向上するメカニズムについては必ずしも明らかにはなっていないが、以下のようなメカニズムが考えられる。第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)は、第VIII族金属1原子とビニル基を有する有機酸2分子から構成されている。そのため、第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合成分として含有するポリアクリロニトリル系重合体Aは、第VIII族金属とビニル基を有する有機酸のイオン結合を介した架橋構造を生成し、製糸時の延伸性が低下することがある。これに対し、そのような架橋構造を生成しない、アクリロニトリル(a)を共重合成分として含有し、かつ第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合成分として含有しないポリアクリロニトリル系重合体Bを加えることで、ポリアクリロニトリル系重合体A同士の距離を離し、架橋構造の頻度または強さを低減し、延伸性を向上させることができる。
ポリアクリロニトリル系重合体Bを構成する単量体としては、延伸性を向上させる観点から、アクリロニトリル(a)の他に、架橋構造を形成しない単量体を共重合することができる。架橋構造を形成しない単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらのアルカリ金属塩またはアルキルエステル類などを用いることができる。
本発明において、第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合して含有するポリアクリロニトリル系重合体Aと、アクリロニトリル(a)を共重合成分として含有し、かつ第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合して含有しないポリアクリロニトリル系重合体Bとの質量比((B)/(A))は、0.3以上であることが好ましい。さらに好ましくは、1以上である。(B)/(A)が0.3以上であるとポリアクリロニトリル系重合体A同士の距離を離し易く、(B)/(A)が1以上であるとさらに距離を離し易くなるため、延伸性を大幅に向上させることができる。
ポリアクリロニトリル系重合体Aとポリアクリロニトリル系重合体Bを混合する場合、その手段として、両重合体を混合してから溶媒で希釈する方法、重合体それぞれを溶媒に希釈したもの同士を混合する方法、およびポリアクリロニトリル系重合体Bを溶媒に希釈したものとポリアクリロニトリル系重合体Aを構成する単量体を混合して単量体を溶液重合することにより混合する方法などを採用することができる。
ポリアクリロニトリル系重合体Aとポリアクリロニトリル系重合体Bの混合には、混合槽で攪拌する方法、ギヤポンプなどで定量してスタティックミキサーで混合する方法、および二軸押出機を用いる方法などを採用することができる。
なお、本発明のポリアクリロニトリル系重合体中には、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリアクリロニトリル系重合体Aおよびポリアクリロニトリル系重合体Bに加え、ポリアクリロニトリル系重合体以外の重合体を含有しても良い。
第VIII族金属としては、鉄、コバルト、およびニッケルからなる群から選択される少なくとも一種の金属であることが好ましい。鉄、コバルト、およびニッケルは触媒黒鉛化に用いられる触媒金属の中でも、低い炭化温度から触媒黒鉛化効果を発現することができるため、炭素繊維の高結晶化を促進しやすい。
第VIII族金属の含有量としては、本発明のポリアクリロニトリル系重合体を構成する全モノマーのモル数に対して0.1モル%以上であることが好ましい。ポリアクリロニトリル系重合体を構成する全モノマーとは、本発明の共重合成分として使用されるアクリロニトリル、および第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩の他、前記以外のアクリロニトリルと共重合可能なビニル化合物のことである。ビニル基を有する有機酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、などを用いることができる。また、アクリロニトリルと共重合可能なビニル化合物としては、耐炎化を促進する観点から、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらのアルカリ金属塩類またはアルキルエステル類などを用いることができる。
本発明で使用される第VIII族金属の含有量を、ポリアクリロニトリル系重合体を構成する全モノマーのモル数に対して0.1モル%より少なくすると、触媒黒鉛化効果が現れにくくなり、本発明の効果が得られなくなることがある。なお、第VIII族金属の含有量を、ポリアクリロニトリル系重合体を構成する全モノマーのモル数に対して10モル%以上とすると、共重合部分での熱分解による分子断裂が顕著となり、得られる炭素繊維の引張強度が大幅に低下することが懸念されるため、かかる観点から、第VIII族金属の含有量としては、ポリアクリロニトリル系重合体を構成する全モノマーのモル数に対して0.1〜10モル%であることがより好ましい。さらに好ましくは、0.2〜3モル%である。
本発明のポリアクリロニトリル系重合体を製造する方法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など公知の重合方法を選択することができるが、共重合成分を均一に重合するという観点からは、溶液重合を用いることが好ましい。溶液重合で行う場合の溶液としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのポリアクリロニトリルが可溶な有機溶媒を用いるのが一般的である。
なお、本発明のポリアクリロニトリル系重合体を前述の溶液重合により製造する際に、第VIII族金属の含有量を増加させすぎると、粘度が上昇して撹拌が困難になる場合がある。このような場合であっても、第VIII族金属の配位子となる化合物を添加することで粘度を減少させて重合を継続させることができる。第VIII族金属の配位子となる化合物としては、アセチルアセトン等の公知の化合物を使用することができる。第VIII族金属の配位子を添加することで粘度が減少するメカニズムは必ずしも明らかにされていないが、配位子の添加によって第VIII族金属とポリアクリロニトリル系重合体の相互作用が弱まることで粘度が減少するのではないかと推察される。
次に、本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法について説明する。
本発明の炭素繊維前駆体繊維は、前記したポリアクリロニトリル系重合体を用いる。通常、かかる重合体をジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのポリアクリロニトリル可溶な溶媒に溶解し、紡糸原液とする。溶液重合を用いる場合、重合に用いる溶媒と紡糸原液に用いる溶媒を同じものにしておくと、再溶解する工程が不要となり好ましい。紡糸原液中の重合体の濃度は、原液安定性の観点から、10〜40質量%であることが好ましい。
本発明では、紡糸原液を、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維を凝固せしめる。得られる炭素繊維前駆体繊維の緻密性を高める観点からは、乾湿式紡糸法が、より好ましい。本発明において、前記凝固浴には、紡糸原液に溶媒として用いた、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの溶媒と、いわゆる凝固促進成分を含ませることが好ましい。凝固促進成分としては、前記重合体を溶解せず、かつ紡糸原液に用いる溶媒と相溶性があるものが使用できる。具体的には、水を使用するのが好ましい。
紡出された繊維は、通常、水洗工程で溶媒が除去された後、浴中延伸温度30〜98℃で約2〜6倍に浴中延伸されるが、本発明はこれに限定されない。水洗工程を省略して紡出後、すぐに浴中延伸を行ってから水洗処理しても良い。
浴中延伸工程の後、単繊維同士の接着を防止する意味から、油剤を付与することが好ましい。油剤の成分としては、耐熱性の面から、例えば、アミノ変性シリコーンなどの変性シリコーンを含有する油剤が好適である。乾燥工程は、浴中延伸後の糸条をホットドラムなどで乾燥することによって行われるが、乾燥温度および時間等は適宜選択することができる。また、最後に、乾燥緻密化後の糸条を加圧水蒸気延伸することも行われる。
得られる炭素繊維前駆体繊維は、通常、連続のマルチフィラメント(束)の形状であり、フィラメント数は好ましくは1,000〜3,000,000本であり、より好ましくは6,000〜36,000本である。単繊維の繊度は、0.5〜1.5dtexであることが好ましい。
次に、本発明の炭素繊維の製造方法について説明する。
前記した方法により製造された炭素繊維前駆体繊維を、200〜300℃の温度の空気中において、好ましくは延伸比0.8〜2.5で延伸しながら、耐炎化処理した後、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において、好ましくは延伸比0.9〜1.5で延伸しながら予備炭化処理し、1000〜2000℃の最高温度の不活性雰囲気中において、好ましくは延伸比0.9〜1.1で延伸しながら、炭化処理して炭素繊維を製造する。不活性雰囲気に用いられるガスとしては、窒素、アルゴンおよびキセノンなどを例示することができ、経済的な観点からは窒素が好ましく用いられる。
このようにして製造される炭素繊維は、炭化温度を上げずとも触媒黒鉛化により結晶性が高いものとなり、スポーツ用途、航空・宇宙用途、ならびに自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途に好適な炭素繊維を生産性良く製造することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本実施例で用いた測定方法を次に説明する。
<炭素繊維前駆体繊維およびポリアクリロニトリル系重合体溶液中の第VIII族金属含有量>
炭素繊維前駆体繊維の第VIII族金属含有量は、蛍光X線分析装置にて測定した。 蛍光X線分析装置には、日本フィリップス社製蛍光X線装置VENUS200を用いた。一次X線源はScを用い、測定時の条件としては、減圧気圧4〜8Paの条件で、温度37℃、25秒間の測定時間とした。測定試料であるポリアクリロニトリル系重合体、炭素繊維前駆体繊維は長さ30mm、幅30mm、厚さ2mmのテフロン(登録商標)製の板に隙間のないように巻き付けて測定に供した。この際、炭素繊維前駆体繊維は長さ60cmにサンプリングして用いた。
得られた炭素繊維前駆体繊維の第VIII族金属の蛍光X線強度から、検量線を用い、それぞれについて第VIII族金属の含有量を求めた。また、ポリアクリロニトリル系重合体溶液中の第VIII族金属含有量は、添加した第VIII族金属のモル数とポリアクリロニトリル系重合体を構成するモノマーのモル数から計算によって求めた。
<炭素繊維前駆体繊維の加圧水蒸気延伸限界倍率の測定>
加圧水蒸気延伸前の速度を30m/分にし、引き取り側の速度を60m/分から約2m/秒の速度で増加させ、断糸したときの引き取り側の速度を読み取り、かかる速度を加熱水蒸気延伸に前の速度で除した値を、延伸限界倍率とした。また、供給するスチーム圧力を0.05GPaずつ変化させながら試験を行ない、延伸限界倍率のピーク値を求め、その値を用いて延伸性を評価した。n=2で測定し、その平均値を用いた。
(実施例1〜4)
<ポリアクリロニトリル系重合体Aの重合>
アクリロニトリルと、表1に示した共重合組成(残りはアクリロニトリル)からなる共重合成分を、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤としてラジカル重合し、濃度20質量%のポリアクリロニトリル系重合体Aの溶液を得た。表1の共重合成分欄に示すアクリル酸コバルトはアクリル酸とコバルトの塩を指す。なお、重合中に粘度が上昇して撹拌が困難になった場合には、アセチルアセトンを添加し、粘度を低下させて重合を継続した。
<ポリアクリロニトリル系重合体Bの重合>
アクリロニトリルと、表1に示した共重合組成(残りはアクリロニトリル)からなる共重合成分を、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤としてラジカル重合し、濃度20質量%のポリアクリロニトリル系重合体Bの溶液を得た。
<紡糸原液の調整と加圧水蒸気延伸限界倍率の測定>
ポリアクリロニトリル系重合体Aの溶液とポリアクリロニトリル系重合体Bの溶液を、表1に示した比率((B)/(A))になるようニーダーで混合し、炭素繊維前駆体繊維の紡糸原液とした。得られた紡糸原液を、40℃の温度で、単孔の直径0.15mm、孔数6000の紡糸口金を用い、一旦空気中に吐出し、約2mmの空間を通過させた後、10℃の温度にコントロールした40質量%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条とした。このようにして得られた凝固糸条を、常法により水洗した後、90℃の温水中で3倍に延伸し、さらにアミノ変性シリコーン系シリコーン油剤を付与して浴中延伸糸を得た。この浴中延伸糸を、180℃の温度に加熱したローラーを用いて乾燥熱処理を行った後、加圧水蒸気延伸限界倍率の測定を行った。
いずれも加圧水蒸気延伸限界倍率は5倍以上であり、高い延伸性を示した。
(比較例1)
ポリアクリロニトリル系重合体Bの重合およびポリアクリロニトリル系重合体Aとの混合を実施しなかった事以外は、実施例1〜4と同様にして加圧水蒸気延伸限界倍率の測定を行った。延伸限界倍率は2倍未満であり、延伸性は非常に低かった。
Figure 2014167038

Claims (5)

  1. アクリロニトリル(a)、および第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合成分として含有するポリアクリロニトリル系重合体Aと、アクリロニトリル(a)を共重合成分として含有し、かつ第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩(b)を共重合成分として含有しないポリアクリロニトリル系重合体Bを含んでなるポリアクリロニトリル系重合体。
  2. 第VIII族金属が、鉄、コバルト、およびニッケルからなる群から選択される少なくとも一種の金属である、請求項1に記載のポリアクリロニトリル系重合体。
  3. 第VIII族金属の含有量が、ポリアクリロニトリル系重合体を構成する全モノマーのモル数に対して0.1モル%以上である、請求項1または2に記載のポリアクリロニトリル系重合体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のポリアクリロニトリル系重合体を湿式または乾湿式紡糸法により紡糸する炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  5. 請求項4に記載の方法により製造される炭素繊維前駆体繊維を、200〜300℃の温度の空気中において耐炎化する耐炎化工程と、該耐炎化工程で得られた繊維を、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において予備炭化する予備炭化工程と、該予備炭化工程で得られた繊維を1000〜2000℃の温度の不活性雰囲気中において炭化する炭化工程を順次経て炭素繊維を得る炭素繊維の製造方法。
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