JP2014125706A - 炭素繊維および炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】新たな設備を必要とせずに炭素繊維を高結晶化出来る触媒黒鉛化反応を利用しつつも、比重の低下を抑制し弾性率を向上させた炭素繊維を提供すること。
【解決手段】ポリアクリロニトリル系重合体を紡糸して炭素繊維前駆体繊維を得た後、耐炎化工程および炭化工程を経て得られる炭素繊維であって、前記ポリアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルおよび第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩を共重合成分とする重合体であり、前記炭素繊維は、その結晶化度A(%)と比重B(g/cm)が下記式(1)、(2)を満足する炭素繊維。
>A・・・(1)
0.95<B/B・・・(2)
(式中、第VIII族金属を含有しない炭素繊維前駆体繊維を同条件で耐炎化および炭化して得られる炭素繊維の結晶化度:A(%)、比重:B(g/cm))
【選択図】なし

Description

本発明は、引張弾性率に優れた炭素繊維、および、その製造方法に関するものである。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度および比弾性率を有するため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツ用途や航空・宇宙用途に加え、自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途にも幅広く展開されており、さらなる生産性の向上と高弾性率化両立の要請が高い。
炭素繊維の中で、最も広く利用されているポリアクリロニトリル(以下、PANと略記することがある)系炭素繊維は、その前駆体となるPAN系重合体からなる紡糸溶液を湿式紡糸、乾式紡糸または乾湿式紡糸して炭素繊維前駆体繊維(以下、前駆体繊維と略記することがある)を得た後、それを200〜400℃の温度の酸化性雰囲気下で加熱して耐炎化繊維へ転換し、少なくとも1000℃の温度の不活性雰囲気下で加熱して炭素化することによって工業的に製造されている。
一般に、前記炭化工程における最高温度を高くするほど、得られる炭素繊維の引張弾性率は高くできるものの、引張強度や樹脂との接着性は低下してくるという、いわゆるトレードオフ関係があり、特に焼成温度が2000℃を超える、黒鉛化糸の領域ではこの低下が著しい。このトレードオフの関係をうち破るため、炭化温度の制御以外で、引張弾性率を高める技術について、これまでいくつかの提案がなされている。
弾性率の高い炭素繊維を得るためには、炭素繊維の配向度を上げる、または、結晶性を上げる方法がある。 炭素繊維の配向度を向上させるためには、焼成中の繊維を延伸することが有効であることが知られている。しかし、単に延伸倍率を高めるだけでは、毛羽の発生や糸切れを誘発し、操業性の低下や、得られる炭素繊維の品位の低下が避けられない。かかる問題を解消させることを目的として、焼成条件を制御することにより、延伸の安定化を図る技術も提案されている(特許文献1、2参照)。しかし、その延伸レベルは高いとは言えず、延伸による引張弾性率の向上効果もわずかである。加えて、かかる技術を採用しようとした場合、炭化工程での延伸倍率を制御するために必要な設備が増えるため、炭素繊維の製造コスト増にもつながる。
また、炭化温度を上げずに結晶性を向上させる方法として、触媒黒鉛化という技術がある。触媒金属を使用することで炭素化反応の活性化エネルギーを低下させ、低温で炭化させた場合にも高温で炭化した炭素繊維同等の結晶性を達成することが可能となる。これまで、触媒黒鉛化を利用して弾性率の高い炭素繊維を得る方法として、PAN系重合体からなる紡糸溶液や炭素繊維前駆体繊維に触媒金属の粉や塩や錯体を添加する方法(特許文献3、4参照。)が知られている。しかしながら、炭素繊維前駆体繊維の表面に触媒金属を添加する場合や紡糸溶液中に金属の粉を添加した場合には均一な結晶化が難しく、触媒黒鉛化によって結晶性が過度に向上した炭素繊維は、比重の低下と共に強度や弾性率の低下が起こるという問題もある。
特開2004−91961号公報 特開2004−197278号公報 特許第734856号公報 特許第826096号公報
そこで本発明は、新たな設備を必要とせずに炭素繊維を高結晶化出来る触媒黒鉛化反応を利用しつつも、比重の低下を抑制し弾性率を向上させた炭素繊維を提供することを課題とする。
かかる課題を解決するための本発明は、次の構成を有するものである。すなわち、本発明の炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系重合体を紡糸して炭素繊維前駆体繊維を得た後、耐炎化工程および炭化工程を経て得られる炭素繊維であって、前記ポリアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルおよび第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩を共重合成分とする重合体であり、前記炭素繊維は、その結晶化度A(%)と比重B(g/cm)が下記式(1)、(2)を満足する。
>A・・・(1)
0.95<B/B・・・(2)
(式中、第VIII族金属を含有しない炭素繊維前駆体繊維を同条件で耐炎化および炭化して得られる炭素繊維の結晶化度:A(%)、比重:B(g/cm))。
本発明の炭素繊維の好ましい態様によれば、前記炭素繊維の比重Bと前記第VIII族金属の前記炭素繊維中の含有量(質量%)および前記第VIII族金属の比重(g/cm)から求められる、前記第VIII族金属を前記炭素繊維から除外した際の比重B(g/cm)が下記式(3)を満足する。
0.92<B/B・・・(3)
本発明の炭素繊維の好ましい態様によれば、前記ポリアクリロニトリル系重合体に含まれる第VIII族金属は、鉄、コバルト、およびニッケルからなる群から選択される少なくとも一種の金属である。
本発明のポリアクリロニトリル系重合体の好ましい態様によれば、前記ポリアクリロニトリル系重合体に含まれる第VIII族金属の含有量は、ポリアクリロニトリル系重合体を構成するモノマーのモル数に対して0.1モル%以上である。
本発明の炭素繊維は、前記ポリアクリロニトリル系重合体を湿式または乾湿式紡糸法により紡糸した後、耐炎化工程および炭化工程を経ることによって製造することができる。
本発明によれば、触媒黒鉛化技術を用いつつ、炭素繊維の比重を低下させずに高結晶化出来、これにより弾性率の向上した炭素繊維を製造することが出来る。
本発明者らは、触媒黒鉛化技術を用いた上で、弾性率の向上が可能な炭素繊維を製造するために、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
本発明の炭素繊維は、アクリロニトリルおよび第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩を共重合成分として含有するポリアクリロニトリル系重合体を紡糸した後、耐炎化工程および炭化工程を経て得られ、結晶化度A(%)と比重B(g/cm)が下記式(1)、(2)を満足する炭素繊維である。
>A・・・(1)
0.95<B/B・・・(2)
(式中、第VIII族金属を含有しない炭素繊維前駆体繊維を同条件で耐炎化および炭化して得られる炭素繊維の結晶化度:A、比重:B)。
ここで説明される「同条件で耐炎化および炭化を行う」とは、炭素繊維の物性に影響を与える条件を同じにすることを意味し、具体的には耐炎化の処理雰囲気と温度および延伸比、炭化の処理雰囲気と温度および延伸比を同条件とすることを意味している。
ここで示した結晶化度AおよびAは、人造黒鉛の結晶化度を100%として評価した相対値である。 結晶化度AがAの同等以下の場合、結晶性は向上しておらず、弾性率は向上しない。また、結晶化度Aは人造黒鉛の結晶化度(100%)を超えることは無い。
本発明で規定される比重の比(B/B)は、炭素繊維中の空隙の量を示す指標となる。B/Bが0.95以下となった場合、炭素繊維の弾性率は低下する。そのメカニズムについては必ずしも明らかにはなっていないが、炭素繊維内の空隙の量が増加することによって、炭素繊維の結晶間の応力の伝達が起こりにくくなり、応力を負担する結晶の数が減少することで弾性率が低下しているのではないかと考えられる。また、B/Bが大きいほど結晶化度が向上した際の弾性率の向上幅が大きくなりやすいため、B/Bは0.98以上であることが好ましい。
本発明において、炭素繊維中の第VIII族金属の含有量が極端に多い場合、前述した比重の比(B/B)ではなく、第VIII族金属を炭素繊維から除外した際の比重B(g/cm)から求められる、比重の比(B/B)を炭素繊維中の空隙の量を示す指標として用いても良い。B/Bを用いた場合、第VIII族金属の含有量が極端に多い場合においても、炭素繊維中の空隙の量を正しく評価することが出来る。特に、αが4.0以上の場合、B/Bを用いた評価を行うと良い。比重B(g/cm)は、炭素繊維の比重Bと第VIII族金属の前記炭素繊維中の含有量α(質量%)および前記第VIII族金属の比重ρ(g/cm)から、式(4)に従って求めることが出来る。
=B×(100−α)÷[100−(α×B)/ρ]・・・(4)
/Bが0.92以下となった場合、炭素繊維の弾性率は低下する。そのメカニズムについては必ずしも明らかにはなっていないが、炭素繊維内の空隙の量が増加することによって、炭素繊維の結晶間の応力の伝達が起こりにくくなり、応力を負担する結晶の数が減少することで弾性率が低下しているのではないかと考えられる。また、B/Bが大きいほど結晶化度が向上した際の弾性率の向上幅が大きくなりやすいため、B/Bは0.96以上であることが好ましい。
第VIII族金属としては、鉄、コバルト、およびニッケルからなる群から選択される少なくとも一種の金属であることが好ましい。鉄、コバルト、およびニッケルは触媒黒鉛化に用いられる触媒金属の中でも、低い炭化温度から触媒黒鉛化効果を発現することができるため、炭素繊維の高結晶化を促進しやすい。
第VIII族金属の含有量としては、ポリアクリロニトリル系重合体を構成するモノマーのモル数に対して0.1モル%以上であることが好ましい。ポリアクリロニトリル系重合体を構成するモノマーとは、本発明の共重合成分として使用されるアクリロニトリル、および第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩の他、前記以外のアクリロニトリルと共重合可能なビニル化合物のことである。ビニル基を有する有機酸としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、などを用いることができる。また、アクリロニトリルと共重合可能なビニル化合物としては、耐炎化を促進する観点から、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類などを用いることができる。
本発明で使用される第VIII族金属の含有量を、ポリアクリロニトリル系重合体を構成するモノマーのモル数に対して0.1モル%より少なくすると、触媒黒鉛化効果が現れにくくなり、本発明の効果が得られなくなることがある。なお、第VIII族金属の含有量を、ポリアクリロニトリル系重合体を構成するモノマーのモル数に対して10モル%以上とすると、共重合部分での熱分解による分子断裂が顕著となり、得られる炭素繊維の引張強度が大幅に低下することが懸念されるため、かかる観点から、第VIII族金属の含有量としては、ポリアクリロニトリル系重合体を構成するモノマーのモル数に対して0.1〜10モル%であることがより好ましい。さらに好ましくは、0.2〜3モル%である。
本発明のポリアクリロニトリル系重合体の製造する方法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など公知の重合方法を選択することができるが、共重合成分を均一に重合するという観点からは、溶液重合を用いることが好ましい。溶液重合で行う場合の溶液としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのポリアクリロニトリルが可溶な有機溶媒を用いるのが一般的である。
なお、本発明のポリアクリロニトリル系重合体を前述の溶液重合により製造する際に、第VIII族金属の含有量を増加させすぎると、粘度が上昇して撹拌が困難になる場合がある。このような場合であっても、第VIII族金属の配位子となる化合物を添加することで粘度を減少させて重合を継続させることができる。第VIII族金属の配位子となる化合物としては、アセチルアセトン等の公知の化合物を使用することができる。第VIII族金属の配位子を添加することで粘度が減少するメカニズムは必ずしも明らかにされていないが、配位子の添加によって第VIII族金属とポリアクリロニトリル系重合体の相互作用が弱まることで粘度が減少するのではないかと推察される。
次に、本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法について説明する。
本発明の炭素繊維前駆体繊維は、前記したポリアクリロニトリル系重合体を用いる。通常、かかる重合体をジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのポリアクリロニトリル可溶な溶媒に溶解し、紡糸原液とする。溶液重合を用いる場合、重合に用いる溶媒と紡糸原液に用いる溶媒を同じものにしておくと、再溶解する工程が不要となり好ましい。紡糸原液中の重合体の濃度は、原液安定性の観点から、10〜40質量%であることが好ましい。
本発明では、紡糸原液を、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維を凝固せしめる。得られる炭素繊維前駆体繊維の緻密性を高める観点からは、乾湿式紡糸法が、より好ましい。本発明において、前記凝固浴には、紡糸原液に溶媒として用いた、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの溶媒と、いわゆる凝固促進成分を含ませることが好ましい。凝固促進成分としては、前記重合体を溶解せず、かつ紡糸原液に用いる溶媒と相溶性があるものが使用できる。具体的には、水を使用するのが好ましい。
紡出された繊維は、通常、水洗工程で溶媒が除去された後、浴中延伸温度30〜98℃で約2〜6倍に浴中延伸されるが、本発明はこれに限定されない。水洗工程を省略して紡出後、すぐに浴中延伸を行ってから水洗処理しても良い。
浴中延伸工程の後、単繊維同士の接着を防止する意味から、油剤を付与することが好ましい。油剤の成分としては、耐熱性の面から、例えば、アミノ変性シリコーンなどの変性シリコーンを含有する油剤が好適である。乾燥工程は、浴中延伸後の糸条をホットドラムなどで乾燥することによって行われるが、乾燥温度および時間等は適宜選択することができる。また、必要に応じて、乾燥緻密化後の糸条を加圧スチーム延伸することも行われる。
得られる炭素繊維前駆体繊維は、通常、連続のマルチフィラメント(束)の形状であり、フィラメント数は好ましくは1,000〜3,000,000本であり、より好ましくは6,000〜36,000本である。単繊維の繊度は、0.5〜1.5dtexであることが好ましい。
次に、本発明の炭素繊維の製造方法について説明する。
前記した方法により製造された炭素繊維前駆体繊維を、200〜300℃の温度の空気中において、好ましくは延伸比0.8〜2.5で延伸しながら、耐炎化処理した後、300〜800℃の温度の不活性雰囲気中において、好ましくは延伸比0.9〜1.5で延伸しながら予備炭化処理し、1000〜2000℃の最高温度の不活性雰囲気中において、好ましくは延伸比0.9〜1.1で延伸しながら、炭化処理して炭素繊維を製造する。不活性雰囲気に用いられるガスとしては、窒素、アルゴンおよびキセノンなどを例示することができ、経済的な観点からは窒素が好ましく用いられる。
このようにして製造される炭素繊維は、炭化温度を上げずとも触媒黒鉛化により弾性率が高いものとなり、スポーツ用途、航空・宇宙用途、ならびに自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途に好適な炭素繊維を生産性良く製造することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。本実施例で用いた測定方法を次に説明する。
<炭素繊維前駆体繊維と炭素繊維およびポリアクリロニトリル系重合体溶液中の第VIII族金属含有量>
炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維の第VIII族金属含有量は、蛍光X線分析装置にて測定した。蛍光X線分析装置には、日本フィリップス社製蛍光X線装置VENUS200を用いた。一次X線源はScを用い、測定時の条件としては、減圧気圧4〜8Paの条件で、温度37℃、25秒間の測定時間とした。測定試料である炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維は長さ30mm、幅30mm、厚さ2mmのテフロン(登録商標)製の板に隙間のないように巻き付けて測定に供した。この際、炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維は長さ60cmにサンプリングして用いた。
得られた炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維の第VIII族金属の蛍光X線強度から、検量線を用い、それぞれについて第VIII族金属の含有量(質量%)を求めた。また、ポリアクリロニトリル系重合体溶液中の第VIII族金属含有量は、添加した第VIII族金属のモル数とポリアクリロニトリル系重合体を構成するモノマーのモル数から計算によって求めた。
<炭素繊維の結晶子サイズ>
測定に供する炭素繊維を引き揃え、コロジオン・アルコール溶液を用いて固めることにより、長さ4cm、1辺の長さが1mmの四角柱の測定試料を用意する。用意された測定試料について、広角X線回折装置を用いて、次の条件により測定を行った。
・X線源:CuKα線(管電圧40kV、管電流30mA)
・検出器:ゴニオメーター+モノクロメーター+シンチレーションカウンター
・走査範囲:2θ=10乃至40°
・走査モード:ステップスキャン、ステップ単位0.02°、計数時間2秒。
得られた回折パターンにおいて、2θ=25乃至26°付近に現れるピークについて、半値幅を求め、この値から、次のシェラー(Scherrer)の式により結晶サイズを算出した。
・結晶サイズ(nm)=Kλ/βcosθ
但し、
・K:1.0、λ:0.15418nm(X線の波長)
・β:(β −β 1/2
・β:見かけの半値幅(測定値)rad、β:1.046×10−2rad
・θ:Braggの回析角
なお、後述の実施例および比較例においては、上記広角X線回折装置として、島津製作所製XRD−6100を用いた。
<炭素繊維の結晶化度>
測定に供する炭素繊維をハサミで2〜3mmの長さに切断した後、乳鉢を用いて繊維形状が無くなるまで10〜20分間粉砕する。そのようにして得られた炭素繊維粉末180mgに対し、シリカゲル粉末300mgとシリコーン粉末(100メッシュ)20mgを混合することで粉末X線測定用試料を用意した。用意された測定試料について、広角X線回折装置を用いて、次の条件により測定を行った。
・X線源:CuKα線(管電圧40kV、管電流30mA)
・検出器:ゴニオメーター+モノクロメーター+シンチレーションカウンター
・走査範囲:2θ=10乃至40°
・走査モード:ステップスキャン、ステップ単位0.01°、計数時間1秒。
得られた回折パターンに対して、シリコーン粉末(100メッシュ)を基準物質として、シリカゲル粉末およびシリコーン粉末由来のピークを除去した後、ローレンツ補正を行い、シリコーン粉末のピーク面積値で規格化した、炭素繊維の積分強度Xを求めた。人造黒鉛についても同様の測定を行い、その際の積分強度X100を求め、炭素繊維の比重Bと人造黒鉛の比重B100から、下記式(5)に従って炭素繊維の結晶化度A(%)を求めた。
= X×B100/(B×X100)×100・・・(5)
なお、後述の実施例および比較例においては、上記広角X線回折装置として、島津製作所製XRD−6100を用いた。
<炭素繊維比重>
炭素繊維の比重は、JIS R7601(1986)記載の方法に従い、液置換法により測定する。浸せき液は、オルトジクロロベンゼンを精製せずに用いる。1.0乃至1.5gの炭素繊維を採取し、該炭素繊維の重量を精秤し、繊維質量C(g)とする。引き続き、該炭素繊維を比重既知(比重ρ)のオルトジクロロベンゼンに浸せきし、オルトジクロロベンゼン中の繊維質量D(g)を測定し、次式により、炭素繊維比重を求める。
炭素繊維比重=(C×ρ)/(C−D)
上記測定を3回行い、その算術平均を、その炭素繊維の比重とする。なお、後述の実施例および比較例においては、上記オルトジクロロベンゼンとして、和光純薬社製特級を用いた。
<炭素繊維のストランド引張弾性率>
炭素繊維のストランド引張弾性率は、JIS R7601(1986)「樹脂含浸ストランド試験法」に従って求める。なお、試験片は、次の樹脂組成物を炭素繊維に含浸し、130℃の温度で35分間熱処理の硬化条件により作製した。
[樹脂組成]
・3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシ−シクロヘキサン−カルボキシレート(100質量部)
・3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3質量部)
・アセトン(4質量部)
また、ストランドの測定本数は6本とし、各測定結果の算術平均値をその炭素繊維のストランド引張弾性率および引張強度とする。なお、後述の実施例および比較例においては、上記の3、4−エポキシシクロヘキシルメチル−3、4−エポキシ−シクロヘキサン−カルボキシレートとして、ユニオンカーバイド(株)製、“BAKELITE”(登録商標)ERL−4221を用いた。
(実施例1、比較例2〜4)
アクリロニトリルと、表1に示した共重合組成(残りはアクリロニトリル)からなる共重合成分を、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤としてラジカル重合し、濃度20質量%のポリアクリロニトリル系重合体溶液を得た。表1の共重合成分欄に示すアクリル酸コバルトはアクリル酸とコバルトの塩を指す。なお、重合中に粘度が上昇して撹拌が困難になった場合には、アセチルアセトンを添加し、粘度を低下させて重合を継続した。
得られたポリアクリロニトリル系重合体溶液を、40℃の温度で、単孔の直径0.15mm、孔数6000の紡糸口金を用い、一旦空気中に吐出し、約2mmの空間を通過させた後、10℃の温度にコントロールした40質量%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条とした。このようにして得られた凝固糸条を、常法により水洗した後、90℃の温水中で3倍に延伸し、さらにアミノ変性シリコーン系シリコーン油剤を付与して浴中延伸糸を得た。この浴中延伸糸を、180℃の温度に加熱したローラーを用いて乾燥熱処理を行うことで、単繊維繊度が1.3dtex、フィラメント数が6000の炭素繊維前駆体繊維を得た。
得られた炭素繊維前駆体繊維を、240〜260℃の温度の温度分布を有する空気中において延伸比1.0で延伸しながらで耐炎化処理した。続いて300〜700℃の温度の窒素雰囲気中において、延伸比1.1で延伸しながら予備炭化処理を行い、さらに最高温度1500℃の窒素雰囲気中において、延伸比を0.96に設定して炭化処理を行い、炭素繊維を得た。結果を表1に示す。
(比較例1)
アクリロニトリル99.5モル%とイタコン酸0.5モル%を共重合したポリアクリロニトリル系重合体を、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により、アゾビスイソブチロニトリルを開始剤としてラジカル重合し、濃度22質量%のポリアクリロニトリル系重合体溶液を得た。
得られたポリアクリロニトリル系重合体溶液を、実施例1と同様の方法を用いて炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維を得た。結果を表1に示す。
実施例1および比較例2〜4は、比較例1と比較していずれも結晶化度が高いが、実施例1の比重は比較例1の比重よりも重く、比較例2〜4の比重は比較例1の比重よりも軽い。弾性率は実施例1のみが比較例1対比で高く、比較例2〜4は比較例1よりも弾性率が低い。
(実施例2)
比較例4と同様にして得た炭素繊維前駆体繊維を、240〜260℃の温度の温度分布を有する空気中において延伸比1.0で延伸しながらで耐炎化処理した。続いて300〜700℃の温度の窒素雰囲気中において、延伸比1.1で延伸しながら予備炭化処理を行い、さらに最高温度1100℃の窒素雰囲気中において、延伸比を0.96に設定して炭化処理を行い、炭素繊維を得た。結果を表1に示す。
(比較例5)
比較例1と同様にして得た炭素繊維前駆体繊維を、240〜260℃の温度の温度分布を有する空気中において延伸比1.0で延伸しながらで耐炎化処理した。続いて300〜700℃の温度の窒素雰囲気中において、延伸比1.1で延伸しながら予備炭化処理を行い、さらに最高温度1100℃の窒素雰囲気中において、延伸比を0.96に設定して炭化処理を行い、炭素繊維を得た。結果を表1に示す。
実施例2は、比較例5と比較して結晶化度が高く、実施例2の比重は比較例5の比重よりも重かった。弾性率は実施例2の比較例5対比で高く、結晶化度と比重というパラメータを操作する事で、弾性率を向上出来ていることが確認出来た。
Figure 2014125706

Claims (5)

  1. ポリアクリロニトリル系重合体を紡糸して炭素繊維前駆体繊維を得た後、耐炎化工程および炭化工程を経て得られる炭素繊維であって、前記ポリアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルおよび第VIII族金属とビニル基を有する有機酸の塩を共重合成分とする重合体であり、前記炭素繊維は、その結晶化度A(%)と比重B(g/cm)が下記式(1)、(2)を満足する炭素繊維。
    >A・・・(1)
    0.95<B/B・・・(2)
    (式中、第VIII族金属を含有しない炭素繊維前駆体繊維を同条件で耐炎化および炭化して得られる炭素繊維の結晶化度:A(%)、比重:B(g/cm))
  2. 前記炭素繊維の比重Bと前記第VIII族金属の前記炭素繊維中の含有量(質量%)および前記第VIII族金属の比重(g/cm)から求められる、前記第VIII族金属を前記炭素繊維から除外した際の比重B(g/cm)が下記式(3)を満足する、請求項1に記載の炭素繊維。
    0.92<B/B・・・(3)
  3. 第VIII族金属が、鉄、コバルト、およびニッケルからなる群から選択される少なくとも一種の金属である、請求項1または2に記載の炭素繊維。
  4. 第VIII族金属の含有量が、ポリアクリロニトリル系重合体を構成するモノマーのモル数に対して0.1モル%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維。
  5. ポリアクリロニトリル系重合体を紡糸する方法が湿式または乾湿式紡糸法である、請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維。
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