JP2018053389A - 炭素繊維前駆体繊維ならびに炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】曳糸性を低下させることなく、炭素繊維前駆体繊維の耐炎化工程での反応暴走を抑制しつつ、高温で耐炎化することで反応性を向上させることで耐炎化を短時間化できる炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】炭素繊維前駆体繊維用ポリマーを用いた炭素繊維前駆体繊維の製造方法であって、前記炭素繊維前駆体繊維用ポリマーは、特定のコポリマー[A]と特定のコポリマー[B]をブレンドした混合物からなり、かつ、コポリマー[A]および[B]を構成するモノマー成分、カルボキシ基を有するビニル系モノマー、およびその含有量が、所定範囲を満たす炭素繊維前駆体繊維の製造方法である。
【選択図】なし
【解決手段】炭素繊維前駆体繊維用ポリマーを用いた炭素繊維前駆体繊維の製造方法であって、前記炭素繊維前駆体繊維用ポリマーは、特定のコポリマー[A]と特定のコポリマー[B]をブレンドした混合物からなり、かつ、コポリマー[A]および[B]を構成するモノマー成分、カルボキシ基を有するビニル系モノマー、およびその含有量が、所定範囲を満たす炭素繊維前駆体繊維の製造方法である。
【選択図】なし
Description
本発明は、炭素繊維前駆体繊維を高温短時間で耐炎化することできるポリアクリロニトリル系ポリマーを用いた炭素繊維前駆体繊維ならびに炭素繊維の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度および比弾性率を有するため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツ用途や航空・宇宙用途に加え、自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途にも幅広く展開されており、さらなる生産性の向上の要請が高い。炭素繊維の中で、最も広く利用されているポリアクリロニトリル(以下、PANと略記することがある。)系炭素繊維は、その前駆体となるPAN系重合体からなる紡糸溶液を紡糸して炭素繊維前駆体繊維(以下、前駆体繊維と略記することがある。)を得た後、それを200〜300℃の酸化性雰囲気下で加熱して耐炎化繊維へ転換し、少なくとも1000℃の不活性雰囲気下で加熱して炭素化することによって工業的に製造されている。
炭素繊維の生産コストを抑制するためには、滞留時間の長い耐炎化工程を短時間化することが有効であるが、発熱反応が進行する耐炎化工程においては、反応を進めるために温度を高くすると反応暴走による発火が起こる問題がある。耐炎化工程において発熱反応による反応暴走を抑制する方法について、現在までに様々な提案がなされている。例えば、耐炎化処理に熱媒粒子を用いた流動床を用いることで発熱反応により蓄熱した繊維の除熱効率を高める方法(特許文献1参照)、冷却用ローラーを用いて耐炎化工程における繊維束の温度をコントロールする方法(特許文献2参照)、有機化合物の蒸気を含む雰囲気で耐炎化する方法(特許文献3参照)、脱離基とニトリル基を有するビニル系モノマーの共重合により耐炎化時の発熱を抑制する方法(特許文献4参照)などが提案されている。
しかしながら、特許文献1の提案のように耐炎化処理に流動床を用いる方法では、粒子が炉外に漏れだしたり、設備の面で従来の方法より高コストになったりするといった問題があった。また、特許文献2のように冷却用ローラーを用いる方法では除熱効率を上げるためにローラー本数を多くする必要があり、その分高コストになるといった問題があった。特許文献3のように有機化合物の蒸発蒸気を含む雰囲気で耐炎化する方法では、有機化合物の蒸発蒸気の可燃性や人体への影響により取扱いが難しいという問題があった。特許文献4のようにポリマーの共重合成分の作用により耐炎化時の発熱反応を抑制する方法では、高温条件で耐炎化可能であるため、発熱反応を抑制しつつ耐炎化反応を促進することができ、耐炎化反応の短時間化につながるものの、ポリマーの重量平均分子量が低下することによって炭素繊維前駆体繊維の曳糸性が低下する問題があった。以上の問題点から、耐炎化工程においては実質的には限られたフィラメント数かつ緻密な温度制御の下で長時間処理するという製造方法が用いられている。この耐炎化工程での制約が炭素繊維の生産性向上の大きな障害の一つとなっていた。
そこで本発明は、耐炎化工程での発熱を抑制することによって高温で耐炎化可能な炭素繊維前駆体繊維の製造に必要なポリアクリロニトリル系ポリマーからなる炭素繊維前駆体繊維用ポリマーを用い、曳糸性を損なわずに炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維を提供することを課題とする。
かかる課題を解決するための本発明は、次の構成を有するものである。すなわち、炭素繊維前駆体繊維用ポリマーを用いた炭素繊維前駆体繊維の製造方法であって、前記炭素繊維前駆体繊維用ポリマーは、下記コポリマー[A]と下記コポリマー[B]をブレンドした混合物からなり、かつ、コポリマー[A]および[B]を構成するモノマー成分、およびその含有量が、下記(a)〜(c)を満たす、炭素繊維前駆体繊維の製造方法である。
コポリマー[A]:脱離基とニトリル基を有する式(1)〜(3)で示される少なくとも1種のビニル系モノマーを1〜100モル%の割合で含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなるポリアクリロニトリル系コポリマー。
コポリマー[B]:脱離基とニトリル基を有する式(1)〜(3)で示される少なくとも1種のビニル系モノマーを1モル%以下の割合で含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなるポリアクリロニトリル系コポリマー。
コポリマー[A]:脱離基とニトリル基を有する式(1)〜(3)で示される少なくとも1種のビニル系モノマーを1〜100モル%の割合で含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなるポリアクリロニトリル系コポリマー。
コポリマー[B]:脱離基とニトリル基を有する式(1)〜(3)で示される少なくとも1種のビニル系モノマーを1モル%以下の割合で含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなるポリアクリロニトリル系コポリマー。
(式(1)中、Rは水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
(式(2)中、Rは水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
(式(3)中、Rは水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
(a)脱離基とニトリル基を有する上記式(1)〜(3)で示されるビニル系モノマー:1〜30モル%
(b)カルボキシ基を有するビニル系モノマー:0.1〜4モル%
(c)アクリロニトリル
また、前記の炭素繊維前駆体繊維用ポリマーは、コポリマー[A]とコポリマー[B]の質量比[A]/[B]が0.01〜2.3であることが好ましい。
(a)脱離基とニトリル基を有する上記式(1)〜(3)で示されるビニル系モノマー:1〜30モル%
(b)カルボキシ基を有するビニル系モノマー:0.1〜4モル%
(c)アクリロニトリル
また、前記の炭素繊維前駆体繊維用ポリマーは、コポリマー[A]とコポリマー[B]の質量比[A]/[B]が0.01〜2.3であることが好ましい。
さらに、前記の炭素繊維前駆体繊維用ポリマーは、空気中で100分間加熱する際のニトリル基残存率が35%となる温度をTc℃とした時、熱流束型示差走査熱量計により、空気中で昇温速度10℃/分として測定されるTc℃での発熱速度が1.4J/g/s以下であることが好ましい。
また、本発明の炭素繊維の製造方法は、前記の方法で炭素繊維前駆体繊維を得た後に、該炭素繊維前駆体繊維を250〜300℃の空気中において耐炎化する耐炎化工程と、該耐炎化工程で得られた繊維を500〜1000℃の不活性雰囲気中において予備炭素化する予備炭素化工程と、該予備炭素化工程で得られた繊維を1000〜3000℃の不活性雰囲気中において炭素化する炭素化工程とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、炭素繊維前駆体繊維の耐炎化工程での反応暴走を抑制することで、高温短時間で耐炎化することができる上に、曳糸性を損なわずに炭素繊維前駆体繊維を製造できるため、炭素繊維の生産性を効率良く向上させることができる。
本発明者らは、脱離基とニトリル基を有するビニル系モノマーの共重合による、耐炎化時の発熱を抑制するメリットを活かしつつ、曳糸性を損なわずに生産性高く炭素繊維前駆体繊維を製造するために、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
本発明は炭素繊維前駆体繊維用ポリマーを用いた炭素繊維前駆体繊維の製造方法であって、前記炭素繊維前駆体繊維用ポリマーは、下記コポリマー[A]と下記コポリマー[B]をブレンドした混合物からなる。 本発明に用いるコポリマー[A]は、脱離基とニトリル基を有する式(1)〜(3)で示される少なくとも1種のビニル系モノマーを1〜100モル%、好ましくは3〜100モル%であり、より好ましくは5〜100モル%の割合で含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなるポリアクリロニトリル系コポリマーである。脱離基とニトリル基を有するビニル系モノマーを1モル%以上にすると、ポリマーをブレンドした際の該ビニル系モノマーの含有量が調整しやすい。該ビニルモノマーの含有量が100モル%の場合は、ポリマーをブレンドする際のコポリマー[A]の使用量が少なくできる。コポリマー[A]の組成は、モノマーの仕込み量から判断できる。
本発明に用いるコポリマー[B]は脱離基とニトリル基を有する式(1)〜(3)で示される少なくとも1種のビニル系モノマーを1モル%以下、好ましくは0.5モル%以下、より好ましくは0.3モル%以下の割合で含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなるポリアクリロニトリル系コポリマーである。脱離基とニトリル基を有するビニル系モノマーを0モル%にすると、ポリマーをブレンドした際の該ビニル系モノマーの含有量が調整しやすく、1モル%以下であれば、ポリマーをブレンドした際の数平均分子量が調整しやすく炭素繊維前駆体繊維の曳糸性を調整しやすい。コポリマー[B]の組成は、モノマーの仕込み量から判断できる。
(式(1)中、Rは水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
(式(2)中、Rは水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
(式(3)中、Rは水素または炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
式(1)〜(3)中のRについて、炭素繊維中にRは残存しにくいため、Rの分子量が大きすぎると炭素化工程での収率が低下する原因となりうる。この観点から、本発明においてはRのアルキル基の炭素数は1〜6であり、好ましくは1〜4である。本発明に用いる脱離基とニトリル基を有するビニル系モノマーは、以下に記載するものに限定されるものではないが、具体的には、1−シアノビニルアセタート、(E)−2−シアノビニルアセタート、(Z)−2−シアノビニルアセタートが好ましい。
式(1)〜(3)中のRについて、炭素繊維中にRは残存しにくいため、Rの分子量が大きすぎると炭素化工程での収率が低下する原因となりうる。この観点から、本発明においてはRのアルキル基の炭素数は1〜6であり、好ましくは1〜4である。本発明に用いる脱離基とニトリル基を有するビニル系モノマーは、以下に記載するものに限定されるものではないが、具体的には、1−シアノビニルアセタート、(E)−2−シアノビニルアセタート、(Z)−2−シアノビニルアセタートが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法において用いられるポリアクリロニトリル系ポリマーは、コポリマー[A]とコポリマー[B]をブレンドして得られる混合物からなるポリマーであって、ブレンド後の平均組成として、(c)アクリロニトリルの他、(a)脱離基とニトリル基を有する式(1)〜(3)で示されるビニル系モノマーが1〜30モル%、好ましくは2〜30モル%含まれる。かかるビニル系モノマーを加えることで発熱反応を抑制することができ、目的とする耐炎化発熱反応の抑制量に応じて該ビニル系モノマーの含有量を調整する。かかるビニル系モノマーの含有量を1モル%以上にすると、耐炎化工程での耐炎化の反応性を保ちつつ発熱反応を抑制することができる。また、かかるビニル系モノマーの含有量を30モル%以下にすると、曳糸性の低下を防ぐことができる。後述するコポリマー[A]と[B]の組成を調整して、かかるビニル系モノマーの含有量を任意に調整すれば良い。組成は仕込み組成から判断することができる。
本発明に用いられる前記ポリマーは、前記ブレンド後の平均組成として、(c)アクリロニトリルの他、(b)カルボキシ基を有するビニル系モノマーが0.1〜4モル%、好ましくは0.3〜0.8モル%含まれる。本発明におけるカルボキシ基を有するビニル系モノマーとは、耐炎化の反応性を向上させて耐炎化時間を短くする効果があるモノマーであり、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸およびメサコン酸のことを指す。中でも、耐炎化を効果的に促進するため、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸およびメサコン酸が好ましく、イタコン酸およびメタクリル酸がより好ましい。耐炎化促進成分の含有量が0.1モル%以上では、耐炎化工程での反応を十分に進行させることができ、耐炎化促進成分の含有量が4モル%以下の場合は、かかるビニル系モノマーの共重合による耐炎化時の発熱の抑制効果が大きくなる。後述するコポリマー[A]と[B]の組成を調整して、かかるビニル系モノマーの含有量を任意に調整すれば良い。組成は仕込み組成から判断することができる。
また、本発明に用いられるコポリマー[A]は、サイズ排除クロマトグラフィー法にて分析した際のポリスチレン換算重量平均分子量が好ましくは3万以上、より好ましくは5万以上であり、コポリマー[B]は、該重量平均分子量が好ましくは30万以上、より好ましくは35万以上である。コポリマー[A]のポリスチレン換算重量平均分子量を3万以上にすると、曳糸性の低下を防ぐことができる。重合体[B]のポリスチレン換算重量平均分子量を30万以上にすると、曳糸性を向上させることに加え、ポリマーをブレンドする重量比を調整しやすい。重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー法にて分析することができる。本発明のコポリマー[A]および[B]を製造する方法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など公知の重合方法を選択することができるが、共重合成分を均一に重合するという観点からは、溶液重合を用いることが好ましい。通常、かかるポリマーをジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのポリアクリロニトリルが可溶な溶媒に溶解し、紡糸原液とする。溶液重合を用いる場合、重合に用いる溶媒と紡糸原液に用いる溶媒を同じものにしておくと、再溶解する工程が不要となり好ましい。コポリマー[A]および[B]それぞれの重量平均分子量は、連載移動剤の含有量を調整するなど公知のラジカル重合の手段で調整できる。紡糸原液中のポリマーの濃度は、原液安定性の観点から、10〜40質量%であることが好ましい。
本発明において、コポリマー[A]とコポリマー[B]をブレンドして得られる混合物の、コポリマー[A]とコポリマー[B]の質量比を[A]/[B]と定義する。[A]/[B]は好ましくは0.01〜2.3であり、0.1〜2.0がより好ましく、0.1〜1.6がさらに好ましい。[A]/[B]を0.01以上にすると、耐炎化時における発熱抑制効果が高くなる。[A]/[B]を2.3以下にすると、炭素繊維前駆体繊維用ポリマー中の該ビニル系モノマー量を調整しやすくなる。組成は質量比から判断することができる。ポリマーのブレンド方法は、特に限定されず、例えば、コポリマー[A]とコポリマー[B]の溶液をニーダーで混合してもかまわない。
また、本発明に用いられる炭素繊維前駆体繊維用ポリマーは、熱流束型示差走査熱量計により空気中で昇温速度10℃/分として測定される240℃での発熱速度が好ましくは1.4J/g/s以下であり、より好ましくは1.2J/g/s以下である。本発明において、前記の発熱速度が、従来一般的に用いられるポリアクリロニトリル系ポリマーよりも小さい1.4J/g/s以下であれば、耐炎化を高温で行うことができ、炭素繊維の生産性を向上できることが多い。すなわち、一定の耐炎化進行速度を保持しつつ耐炎化における発熱を抑制し炭素繊維の生産性を向上することができる。発熱速度は熱流束型示差走査熱量計により測定でき、前記のコポリマー[A]と[B]の組成を調整することで前記の発熱速度を達成できる。
本発明では、前記したコポリマー[A]と[B]をブレンドした混合物からなるポリマーの溶液(以下、紡糸原液とも述べる)を、乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維を凝固することが好ましい。本発明において、前記凝固浴には、紡糸原液に溶媒として用いた、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、あるいは、硝酸・塩化亜鉛・ロダンソーダの水溶液などの溶媒と、いわゆる凝固促進成分を含ませることが好ましい。凝固促進成分としては、前記ポリマーを溶解せず、かつ紡糸原液に用いる溶媒と相溶性があるものが使用できる。具体的には、水を使用するのが好ましい。
紡出された繊維は、通常、水洗工程で溶媒が除去された後、浴中延伸温度30〜98℃で約2〜6倍に浴中延伸されるが、本発明はこの方法に限定されない。水洗工程を省略して紡出後、すぐに浴中延伸を行ってから水洗処理しても良い。
浴中延伸工程の後、単繊維同士の接着を防止する意味から、油剤を付与することが好ましい。乾燥工程は、浴中延伸後の糸条をホットドラムなどで乾燥することによって行われるが、乾燥温度および時間等は適宜選択することができる。また、必要に応じて、乾燥緻密化後の糸条を加圧スチーム延伸することも行われる。
得られる炭素繊維前駆体繊維は、通常、連続のマルチフィラメント(束)の形状であり、フィラメント数は好ましくは1000〜3000000本である。
次に、本発明の炭素繊維の製造方法について説明する。
前記した炭素繊維前駆体繊維の製造方法により製造された炭素繊維前駆体繊維を、好ましくは250〜300℃、より好ましくは260〜300℃の空気中において耐炎化処理する。耐炎化の後、最高温度500〜1000℃の不活性雰囲気中において予備炭素化処理し、1000〜3000℃の不活性雰囲気中において炭素化処理して炭素繊維を製造する。不活性雰囲気に用いられるガスとしては、窒素、アルゴンおよびキセノンなどを例示することができ、経済的な観点からは窒素が好ましく用いられる。
このようにして製造される炭素繊維は、新たな設備を必要とせずに耐炎化工程を高温化できるため、スポーツ用途、航空・宇宙用途、ならびに自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途に好適な炭素繊維を生産性良く製造することができる。
本明細書に記載の各種物性値の測定方法は以下の通りである。
本明細書に記載の各種物性値の測定方法は以下の通りである。
<ポリアクリロニトリル系ポリマーの発熱量の測定>
まず、得られたポリマー溶液を水中で細長く固化させ、その固体を80〜90℃の熱水中で2時間加熱して脱溶媒する。次に、熱風乾燥機等を用いて熱水処理した固体を空気中120℃で乾燥し、乾燥したポリマー固形物を得る。得られたポリマー固形物1gに対し、日本分析工業株式会社製冷凍粉砕機JFC−300を用いて、液体窒素による冷却下、予備冷却操作を10分間、粉砕操作を10分間行い、ポリマー粉末を得る。そのポリマー粉末を10mmHg以下の減圧条件下、120℃で1時間乾燥した後、発熱量分析に供する。ポリマー粉末2mgをアルミ製サンプルパンに秤取する。アルミ製サンプルパンには蓋をせず、熱流束型示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス社製 DSC3100SA)を用いて、10℃/分の昇温速度、エアー供給量100mL/分の条件で室温から400℃まで測定する。得られたデータは150℃での発熱速度をゼロとして240℃での発熱速度を求めた。240℃での発熱速度の結果を用いる。
まず、得られたポリマー溶液を水中で細長く固化させ、その固体を80〜90℃の熱水中で2時間加熱して脱溶媒する。次に、熱風乾燥機等を用いて熱水処理した固体を空気中120℃で乾燥し、乾燥したポリマー固形物を得る。得られたポリマー固形物1gに対し、日本分析工業株式会社製冷凍粉砕機JFC−300を用いて、液体窒素による冷却下、予備冷却操作を10分間、粉砕操作を10分間行い、ポリマー粉末を得る。そのポリマー粉末を10mmHg以下の減圧条件下、120℃で1時間乾燥した後、発熱量分析に供する。ポリマー粉末2mgをアルミ製サンプルパンに秤取する。アルミ製サンプルパンには蓋をせず、熱流束型示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス社製 DSC3100SA)を用いて、10℃/分の昇温速度、エアー供給量100mL/分の条件で室温から400℃まで測定する。得られたデータは150℃での発熱速度をゼロとして240℃での発熱速度を求めた。240℃での発熱速度の結果を用いる。
<ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)>
測定しようとする重合体をその濃度が0.1質量%となるように、ジメチルホルムアミド(0.01N−臭化リチウム添加)に溶解し、検体溶液を得る。得られた検体溶液について、GPC装置を用いて、次の条件で測定したGPC曲線から分子量の分布曲線を求め、Mwを算出する。測定は3回行い、その値を平均して用いる。
・カラム :極性有機溶媒系GPC用カラム
・流速 :0.5ml/min
・温度 :70℃
・試料濾過:メンブレンフィルター(0.45μmカット)
・注入量 :200μl
・検出器 :示差屈折率検出器
Mwは、分子量が異なる分子量既知の単分散ポリスチレンを少なくとも6種類用いて、溶出時間―分子量の検量線を作成し、その検量線上において、該当する溶出時間に対応するポリスチレン換算の分子量を読み取ることにより求める。
<曳糸性の評価>
ポリマーの曳糸性は、以下のように評価する。ポリマー1ccを、直径2mmのアルミプレートではさみ、3秒間で15cm伸ばしたときの保持時間が30秒以上のものを良(○)、5秒以下のものを可(△)、1秒以下のものを不可(×)とする。
測定しようとする重合体をその濃度が0.1質量%となるように、ジメチルホルムアミド(0.01N−臭化リチウム添加)に溶解し、検体溶液を得る。得られた検体溶液について、GPC装置を用いて、次の条件で測定したGPC曲線から分子量の分布曲線を求め、Mwを算出する。測定は3回行い、その値を平均して用いる。
・カラム :極性有機溶媒系GPC用カラム
・流速 :0.5ml/min
・温度 :70℃
・試料濾過:メンブレンフィルター(0.45μmカット)
・注入量 :200μl
・検出器 :示差屈折率検出器
Mwは、分子量が異なる分子量既知の単分散ポリスチレンを少なくとも6種類用いて、溶出時間―分子量の検量線を作成し、その検量線上において、該当する溶出時間に対応するポリスチレン換算の分子量を読み取ることにより求める。
<曳糸性の評価>
ポリマーの曳糸性は、以下のように評価する。ポリマー1ccを、直径2mmのアルミプレートではさみ、3秒間で15cm伸ばしたときの保持時間が30秒以上のものを良(○)、5秒以下のものを可(△)、1秒以下のものを不可(×)とする。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜7および比較例1)
実施例、比較例中、アクリロニトリル、イタコン酸、メタクリル酸および2−アセトキシアクリロニトリルを、それぞれAN、IA、MAおよびAcOANと表す。AN、IA、MAおよびAcOANを表1に記載の組成比で混合し、ジメチルスルホキシドを溶媒として溶液重合法により重合させ、ポリマー濃度20質量%のポリアクリロニトリル系コポリマー[A]および[B]を得た。コポリマー[A]および[B]を質量比[A]/[B]を表1となるようにニーダーで混合してポリマー溶液を得た。
(実施例1〜7および比較例1)
実施例、比較例中、アクリロニトリル、イタコン酸、メタクリル酸および2−アセトキシアクリロニトリルを、それぞれAN、IA、MAおよびAcOANと表す。AN、IA、MAおよびAcOANを表1に記載の組成比で混合し、ジメチルスルホキシドを溶媒として溶液重合法により重合させ、ポリマー濃度20質量%のポリアクリロニトリル系コポリマー[A]および[B]を得た。コポリマー[A]および[B]を質量比[A]/[B]を表1となるようにニーダーで混合してポリマー溶液を得た。
以下に表1の結果を説明する。実施例1〜7においては、ポリマーを混合した場合における240℃での発熱速度、曳糸性全てにおいて良好な結果となり、比較例1に示すように、AcOANの共重合量が20モル%の場合は、曳糸性が悪く、同共重合量の効果を得るにはポリマーブレンドが有効である。
さらに、実施例7のポリマー[A]およびポリマー[B]をニーダーで混合して紡糸溶液とした。得られた紡糸溶液を、紡糸口金から一旦空気中に吐出し、ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条を得た。
この凝固糸条を、常法により水洗した後、2槽の温水浴中で、3.5倍の延伸を行った。続いて、この水浴延伸後の繊維束に対して、アミノ変性シリコーン系シリコーン油剤を付与し、160℃の加熱ローラーを用いて、乾燥緻密化処理を行った。単繊維本数12000本としてから、加圧スチーム中で3.7倍延伸することにより、製糸全延伸倍率を13倍とし、その後交絡処理を行って、結晶配向度93%、単繊維本数12000本の炭素繊維前駆体繊維束を得た。炭素繊維前駆体繊維束の単繊維繊度は1dtexであった。
次に、耐炎化工程を耐炎化温度260℃、耐炎化時間30分の条件を用いて、空気雰囲気のオーブン中で炭素繊維前駆体繊維束を延伸比1で延伸しながら耐炎化処理した。得られた耐炎化繊維束を、最高温度800℃の窒素雰囲気中において予備炭素化処理を行い、予備炭素化繊維束を得た。得られた予備炭素化繊維束を、窒素雰囲気中において最高温度1500℃で炭素化処理を行った。得られた炭素繊維束に表面処理およびサイジング剤塗布処理を行い、品位の良い炭素繊維束を得た。
Claims (4)
- 炭素繊維前駆体繊維用ポリマーを用いた炭素繊維前駆体繊維の製造方法であって、前記炭素繊維前駆体繊維用ポリマーは、下記コポリマー[A]と下記コポリマー[B]をブレンドした混合物からなり、かつ、コポリマー[A]および[B]を構成するモノマー成分、およびその含有量が、下記(a)〜(c)を満たす、炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
コポリマー[A]:脱離基とニトリル基を有する式(1)〜(3)で示される少なくとも1種のビニル系モノマーを1〜100モル%の割合で含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなるポリアクリロニトリル系コポリマー。
コポリマー[B]:脱離基とニトリル基を有する式(1)〜(3)で示される少なくとも1種のビニル系モノマーを1モル%以下の割合で含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなるポリアクリロニトリル系コポリマー。
(a)脱離基とニトリル基を有する上記式(1)〜(3)で示されるビニル系モノマー:1〜30モル%
(b)カルボキシ基を有するビニル系モノマー:0.1〜4モル%
(c)アクリロニトリル - 前記炭素繊維前駆体繊維用ポリマーは、前記コポリマー[A]と前記コポリマー[B]の質量比[A]/[B]が0.01〜2.3である、請求項1に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 前記炭素繊維前駆体繊維用ポリマーは、空気中で100分間加熱する際のニトリル基残存率が35%となる温度をTc℃としたとき、空気中で昇温速度10℃/分として測定されるTc℃での発熱速度が1.4J/g/s以下である、請求項1または2に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載の方法により炭素繊維前駆体繊維を得た後に、該炭素繊維前駆体繊維を250〜300の空気中において耐炎化する耐炎化工程と、該耐炎化工程で得られた繊維を最高温度500〜1000℃の不活性雰囲気中において予備炭素化する予備炭素化工程と、該予備炭素化工程で得られた繊維を1000〜3000℃の不活性雰囲気中において炭素化する工程とを備えた炭素繊維の製造方法。
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2016
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