JP6115618B2 - ポリアクリロニトリル系重合体および炭素繊維前駆体繊維ならびに炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭素繊維前駆体繊維を高温で耐炎化することできるポリアクリロニトリル系重合体、およびそのポリアクリロニトリル系重合体を用いた炭素繊維前駆体繊維ならびに炭素繊維の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度および比弾性率を有するため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツ用途や航空・宇宙用途に加え、自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途にも幅広く展開されており、さらなる生産性の向上の要請が高い。
炭素繊維の中で、最も広く利用されているポリアクリロニトリル(以下、PANと略記することがある。)系炭素繊維は、その前駆体となるPAN系重合体からなる紡糸溶液を湿式紡糸、乾式紡糸または乾湿式紡糸して炭素繊維前駆体繊維(以下、前駆体繊維と略記することがある。)を得た後、それを180〜400℃の酸化性雰囲気下で加熱して耐炎化繊維へ転換し、少なくとも1000℃の不活性雰囲気下で加熱して炭素化することによって工業的に製造されている。
炭素繊維の生産コストを抑制するためには、滞留時間の長い耐炎化工程を短時間化することが有効であるが、発熱反応が進行する耐炎化工程においては、反応を進めるために温度を高くすると糸切れや発火が起こるという問題がある。
耐炎化中の糸束を除熱する方法について、現在までに様々な提案がなされている。例えば、流動床を用いて除熱効率を高める方法(特許文献1参照)、冷却用ローラーを用いて糸条の温度をコントロールする方法(特許文献2参照)、有機化合物の蒸発蒸気を含む雰囲気で耐炎化する方法(特許文献3参照)などが提案されている。
特開平3−33220号公報 特開平4−108117号公報 特開2001−248025号公報
しかしながら、流動床を用いる方法では、粒子が炉外に漏れだしたり、設備の面で従来の方法より高コストになったりするといった問題があった。また、冷却用ローラーを用いる方法では除熱効率を上げるためにローラー本数を多くする必要があり、その分高コストになるといった問題があった。さらに、有機化合物の蒸発蒸気を含む雰囲気で耐炎化する方法では、有機化合物の蒸発蒸気の可燃性や人体への影響など取扱いが難しいという問題があった。
以上の問題点から、耐炎化工程においては実質的には限られたフィラメント数で緻密な温度制御の下で長時間処理するという製造方法が用いられている。この耐炎化工程での制約が炭素繊維の生産性向上の大きな障害の一つとなっていた。
そこで本発明は、耐炎化工程での発熱を抑制することによって高温で耐炎化可能な炭素繊維前駆体繊維の製造に必要なポリアクリロニトリル系重合体を提供することを課題とする。
かかる課題を解決するための本発明は、次の構成を有するものである。すなわち、共重合成分として、アクリロニトリル、ビニル系モノマーおよび、アクリル酸、メタクリル酸、およびイタコン酸からなる群から選択される少なくとも1種の耐炎化促進成分を含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなる炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体であって、前記ビニル系モノマー、該ビニル系モノマーの含有量、前記耐炎化促進成分の含有量、ならびに下記のとおりに測定される発熱速度が、下記[A]または[B]であることを特徴とするポリアクリロニトリル系重合体である。
[A]下記の式(1)および式(2)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のビニルエーテル系モノマー:1〜15モル%、耐炎化促進成分を0.1〜4モル%
Figure 0006115618
(式(1)中、Rは炭素数が1〜18のアルキル基、炭素数が1〜18のヒドロキシアルキル基またはアリール基を表す。また、Rは水素、炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基またはアリール基を表す。)
Figure 0006115618
(式(2)中、R3は水素、炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基またはアリール基を表し、環構造中のどの炭素に結合していても良い。また、nは0〜2の整数である。)
[B]酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル、酢酸イソプロペニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、およびγ−メチレン−γ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種のビニルエステル系モノマー:1〜15モル%、耐炎化促進成分:0.1〜4モル%であって、前記ポリアクリロニトリル系重合体を空気中で100分間加熱する際のニトリル基残存率が35%となる温度をTc℃とした時、熱流束型示差走査熱量計により、空気中で昇温速度10℃/分として測定されるTc℃での発熱速度が1.4J/g/s以下である。
た、本発明のポリアクリロニトリル系重合体は、前記[A]の場合において、空気中で100分間加熱する際のニトリル基残存率が35%となる温度をTc℃とした時、熱流束型示差走査熱量計により、空気中で昇温速度10℃/分として測定されるTc℃での発熱速度が1.4J/g/s以下であることが好ましい。
また、本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法は、前記ポリアクリロニトリル系重合体を湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により紡糸する工程を備えることを特徴とする。
さらに、本発明の炭素繊維の製造方法は、前記炭素繊維前駆体繊維の製造方法により製造された炭素繊維前駆体繊維を180〜300℃の空気中において耐炎化する耐炎化工程と、該耐炎化工程で得られた繊維を300〜900℃の不活性雰囲気中において予備炭化する予備炭化工程と、該予備炭化工程で得られた繊維を1000〜3000℃の不活性雰囲気中において炭化する炭化工程とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、炭素繊維前駆体繊維の耐炎化工程での糸切れを抑制しつつ高温で耐炎化することが出来るため、耐炎化を短時間化して炭素繊維の生産性を向上させることが出来る。
本発明者らは、糸切れを抑制しつつ耐炎化工程の短時間化を行うことが可能な炭素繊維前駆体繊維を製造するために、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
本発明のポリアクリロニトリル系重合体の第一の実施態様は、共重合成分として、アクリロニトリル、ビニル系モノマー、および後述する耐炎化促進成分を含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなる炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体であって、前記ビニル系モノマー、および該ビニル系モノマーの含有量、ならびに後述する耐炎化促進成分の含有量が下記[A]であるポリアクリロニトリル系重合体である。
[A]下記の式(1)および式(2)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のビニルエーテル系モノマー:1〜15モル%、耐炎化促進成分:0.1〜4モル%
Figure 0006115618
(式(1)中、Rは炭素数が1〜18のアルキル基、炭素数が1〜18のヒドロキシアルキル基またはアリール基を表す。また、Rは水素、炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基またはアリール基を表す。)
Figure 0006115618
(式(2)中、Rは水素、炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基またはアリール基を表し、環構造中のどの炭素に結合していても良い。また、nは0〜2の整数である。)。
式(1)中のRについて、耐炎化工程、予備炭化工程、炭化工程などの焼成工程においてエーテル結合が切断されると、最終的にRは繊維中には残存しないため、Rの分子量が大きすぎると炭化工程での収率が低下する原因となりうる。かかる観点から、本発明においてはRのアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアリール基の炭素数は1〜18であり、好ましくは1〜8である。
は水素、炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基またはアリール基であればよいが、アクリロニトリル系モノマーとビニルエーテル系モノマーの共重合を阻害しないものが好ましく、かかる観点から、Rは好ましくは、水素、メチル基、フェニル基である。
また式(2)中、Rは水素、炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基またはアリール基であればよいが、アクリロニトリル系モノマーとビニルエーテル系モノマーの共重合を阻害しないものが好ましく、かかる観点から、Rは好ましくは、水素、メチル基、フェニル基である。また、式(2)の環構造中においてRの結合する位置には特に制限はなく、どの炭素に結合していても良い。nは0〜2の整数であり、1〜2が好ましい。
本発明に用いることの出来るビニルエーテル系モノマーは、以下に記載するものに限定されるものではないが、具体的には、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ノルマルプロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ノルマルブチルビニルエーテル、ノルマルアミルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ナフチルビニルエーテル、2−メトキシプロペン、α−メトキシスチレン、2−メチレンテトラヒドロフラン、2−メチレントロラヒドロピランなどが挙げられる。本発明に用いられるアクリロニトリル系モノマー組成物において、ビニルエーテル系モノマーの含有量を1モル%より少なくすると、耐炎化工程での発熱量を十分に抑制しにくくなり、本発明の効果が得られなくなることがある。また、ビニルエーテル系モノマーの含有量が15モル%を超えると、共重合部分での熱分解による分子断裂が顕著となり、得られる炭素繊維の引張強度が大幅に低下するほか、耐炎化工程で溶融して繊維接着することが懸念される。かかる観点から、本発明においてはビニルエーテル系モノマーのアクリロニトリル系モノマー組成物中の含有量は1〜15モル%である。好ましくは、1〜10モル%である。
本発明とは別の好ましいポリアクリロニトリル系重合体の実施態様として、共重合成分として、アクリロニトリル、ビニル系モノマー、および後述する耐炎化促進成分を含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなる炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体であって、前記ビニル系モノマー、および該ビニル系モノマーの含有量、ならびに後述する耐炎化促進成分の含有量が下記[C]であるポリアクリロニトリル系重合体がある。
[C]脱離基とニトリル基を有するビニル系モノマー:1〜30モル%、耐炎化促進成分:0.1〜4モル%。
本発明において、脱離基とニトリル基を有するビニル系モノマーの含有量を1モル%より少なくすると、耐炎化工程での発熱量を十分に抑制しにくくなり、本発明の効果が得られなくなることがある。また、脱離基とニトリル基を有するビニル系モノマーの含有量が30モル%を超えると、共重合部分での熱分解による分子断裂が顕著となり、得られる炭素繊維の引張強度が大幅に低下するほか、耐炎化工程で溶融して繊維接着することが懸念される。かかる観点から、本発明においては脱離基とニトリル基を有するビニル系モノマーのアクリロニトリル系モノマー組成物中の含有量は好ましくは1〜30モル%である。耐炎化工程の発熱量抑制の観点から、より好ましい含有量は3モル%以上であり、また、共重合部分での熱分解による分子断裂を抑制する観点から、より好ましい含有量は20モル%以下、さらに好ましい含有量は10モル%以下である。
本発明のポリアクリロニトリル系重合体の第二の実施態様の好ましい態様によれば、上記脱離基とニトリル基を有するビニル系モノマーが、下記の式(5)または式(6)または式(7)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物。
Figure 0006115618
(式(5)中、XはOR、OCOR、OSO、NR、Cl、Br、Iのいずれかから選ばれる。ここで、RおよびRは水素または炭素数が1〜18のアルキル基を表す。)
Figure 0006115618
(式(6)中、XはOR、OCOR、OSO、NR、Cl、Br、Iのいずれかから選ばれる。ここで、RおよびRは水素または炭素数が1〜18のアルキル基を表す。)
Figure 0006115618
(式(7)中、XはOR、OCOR、OSO、NR、Cl、Br、Iのいずれかから選ばれる。ここで、RおよびRは水素または炭素数が1〜18のアルキル基を表す。)
式(5)、式(6)、式(7)中のRおよびRについて、耐炎化工程、予備炭化工程、炭化工程などの焼成工程において結合が切断されると、最終的にRおよびRは繊維中には残存しないため、RおよびRの分子量が大きすぎると炭化工程での収率が低下する原因となりうる。かかる観点から、本発明においてはRおよびRのアルキル基の炭素数は1〜18であり、好ましくは1〜8である。
本発明に用いることの出来る脱離基とニトリル基を有するビニル系モノマーは、以下に記載するものに限定されるものではないが、具体的には、2−メトキシアクリロニトリル、2−エトキシアクリロニトリル、1−シアノビニルアセタート、1−シアノビニルメタンスルホナート、2−(ジメチルアミノ)アクリロニトリル、2−クロロアクリロニトリル、2−ブロモアクリロニトリル、2−ヨードアクリロニトリル、(E)−3−メトキシアクリロニトリル、(E)−3−エトキシアクリロニトリル、(E)−2−シアノビニルアセタート、(E)−2−シアノビニルメタンスルホナート、(E)−3−(ジメチルアミノ)アクリロニトリル、(E)−3−クロロアクリロニトリル、(E)−3−ブロモアクリロニトリル、(E)−3−ヨードアクリロニトリル、(Z)−3−メトキシアクリロニトリル、(Z)−3−エトキシアクリロニトリル、(Z)−2−シアノビニルアセタート、(Z)−2−シアノビニルメタンスルホナート、(Z)−3−(ジメチルアミノ)アクリロニトリル、(Z)−3−クロロアクリロニトリル、(Z)−3−ブロモアクリロニトリル、(Z)−3−ヨードアクリロニトリルなどが挙げられる。
本発明のポリアクリロニトリル系重合体の第二の実施態様は、共重合成分として、アクリロニトリル、ビニル系モノマー、および後述する耐炎化促進成分を含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなる炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体であって、前記ビニル系モノマー、該ビニル系モノマーの含有量、後述する耐炎化促進成分の含有量、ならびに後述する発熱速度が下記[B]であるポリアクリロニトリル系重合体である。
[B]下記の式(3)および式(4)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のビニルエステル系モノマー:1〜15モル%、耐炎化促進成分:0.1〜4モル%であって、前記ポリアクリロニトリル系重合体を空気中で100分間加熱する際のニトリル基残存率が35%となる温度をTc℃とした時、熱流束型示差走査熱量計により、空気中で昇温速度10℃/分として測定されるTc℃での発熱速度が1.4J/g/s以下である。
Figure 0006115618
(式(3)中、Rは炭素数が1〜18のアルキル基、炭素数が1〜18のヒドロキシアルキル基またはアリール基を表す。また、Rは水素、炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基またはアリール基を表す。)
Figure 0006115618
(式(4)中、Rは水素、炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基またはアリール基を表し、環構造中のどの炭素に結合していても良い。また、nは0〜2の整数である。)
式(3)中のRについて、焼成工程においてエステル結合が切断されると、最終的にRは繊維中には残存しないため、Rの分子量が大きすぎると炭化工程での収率が低下する原因となる。かかる観点から、本発明においてはRのアルキル基、ヒドロキシアルキル基またはアリール基の炭素数は1〜18であり、好ましくは1〜8である。
は水素、炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基またはアリール基であればよいが、アクリロニトリル系モノマーとビニルエーテル系モノマーの共重合を阻害しないものが好ましく、かかる観点から、Rは好ましくは、水素、メチル基、フェニル基である。
また式(4)中、Rは水素、炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基またはアリール基であればよいが、アクリロニトリル系モノマーとビニルエーテル系モノマーの共重合を阻害しないものが好ましく、かかる観点から、Rは好ましくは、水素、メチル基、フェニル基である。また、式(4)の環構造中においてRの結合する位置には特に制限はなく、どの炭素に結合していても良い。nは0〜2の整数であり、1〜2が好ましい。
本発明に用いることの出来るビニルエステル系モノマーは酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル、ピバル酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、1−ナフトエ酸ビニル、2−ナフトエ酸ビニル、酢酸イソプロペニル、α−アセトキシスチレン、γ−メチレン−γ−ブチロラクトンなどが挙げられるが、本発明は、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル、酢酸イソプロペニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、およびγ−メチレン−γ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種のビニルエステル系モノマーが用いられることを特徴とする。
本発明に用いられるアクリロニトリル系モノマー組成物において、ビニルエステル系モノマーの含有量を1モル%より少なくすると、耐炎化工程での発熱量を十分に抑制しにくくなり、本発明の効果が得られなくなることがある。また、ビニルエステル系モノマーの含有量が15モル%を超えると、共重合部分での熱分解による分子断裂が顕著となり、得られる炭素繊維の引張強度が大幅に低下するほか、耐炎化工程で溶融して繊維接着することが懸念される。かかる観点から、本発明においてはビニルエステル系モノマーのアクリロニトリル系モノマー組成物中の含有量は1〜15モル%である。好ましくは、1〜10モル%である。
本発明に用いられる耐炎化促進成分は、ポリアクリロニトリル系重合体を加熱した際に炭化工程に耐えうる耐炎化構造への変化を促進するための成分である。耐炎化促進成分の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸等の酸類およびその塩類、または、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類が挙げられる。本発明において、耐炎化促進成分に含有されるアミド基またはカルボキシ基の数は、1つよりも2つ以上であることがより好ましく、本発明では、この中でも、アクリル酸、イタコン酸、またはメタクリル酸のいずれかの耐炎化促進成分が用いられることを必須とする。
本発明に用いられるアクリロニトリル系モノマー組成物において、耐炎化促進成分の含有量を0.1モル%より少なくすると、耐炎化工程での反応を十分に進行させることが出来ず、炭化工程での収率が低下することがある。耐炎化工程での反応が急激に進行し、耐炎化工程での発熱量を十分に抑制しにくくなることを避けるため、ビニルエーテル系モノマー、ビニルエステル系モノマー、脱離基とニトリル基を有するビニル系モノマーのいずれの成分を共重合成分として用いる場合も、耐炎化促進成分の含有量を4モル%以下とするのが好ましく、1モル%以下とするのがより好ましい。
かかる観点から、耐炎化促進成分のアクリロニトリル系モノマー組成物中の含有量は0.1〜4モル%であり、好ましくは0.3〜1モル%である。
本発明のアクリロニトリル、ビニル系モノマー、および耐炎化促進成分を含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなるポリアクリロニトリル系重合体を用いて炭素繊維前駆体繊維を製造すると、一定の耐炎化進行速度を保持しつつ耐炎化における発熱を抑制し炭素繊維の生産性を向上することができる。一定の耐炎化進行速度を保持しつつ耐炎化における発熱を抑制するためには、発熱抑制成分であるビニル系モノマーの効果と耐炎化促進成分の効果のバランスが重要である。ビニル系モノマーの発熱抑制効果の大きさは成分ごとに異なる。
例えば、発熱抑制成分であるビニル系モノマーの含有量を増やすことによって発熱抑制効果を高めることはできるが、ビニル系モノマーの中でも相対的に発熱抑制効果の小さい成分を用いて、相対的に発熱抑制効果の大きい成分と同等の効果を得るためには、ビニル系モノマーを多量に用いなければならない。一方、耐炎化促進効果は発熱と関係しており、耐炎化促進効果が大きいものほど反応初期における発熱も大きくなり、糸切れや発火などの問題が生じやすくなる。
すなわち、相対的に発熱抑制効果の小さいビニル系モノマーに対し、相対的に耐炎化促進効果の大きい耐炎化促進成分を組み合わせて用いると、耐炎化は素早く進行するものの発熱を抑制することが難しくなる。他方、相対的に発熱抑制効果の大きいビニル系モノマーに対し、相対的に耐炎化促進効果の大きい耐炎化促進成分を組み合わせて用いると、より高温、短時間で耐炎化を行うことができるほか、ビニル系モノマーと耐炎化促進成分の量が減らせるため、ポリマー組成全体に占めるアクリロニトリル単位の割合を増やすことができる。ポリマー組成全体に占めるアクリロニトリル単位の割合を増やすことができると、原料コストを抑制できるほか、ポリマーの軟化温度が向上するため、耐炎化工程における繊維の配向度を低下させることなく焼成でき、炭素繊維の物性を高めることができる。
以上の観点から、本発明のごとく、用いられるビニル系モノマー、耐炎化促進成分の選定、およびそれらの配合量の適正化が、一定の耐炎化進行速度を保持しつつ耐炎化における発熱を抑制し炭素繊維の生産性を向上することができる、という効果発現に寄与するのである。
本発明に係るアクリロニトリル系モノマー組成物において、アクリロニトリル、ビニル系モノマー、耐炎化促進成分以外にも、これらのモノマーとの共重合を行える成分を含んでいても良い。具体的には、メタクリロニトリル等のニトリル基をもつビニル系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバル酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、マレイン酸イミド、フェニルマレイミド、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
本発明のポリアクリロニトリル系重合体は、空気中で100分間加熱する際のニトリル基残存率が35%となる温度をTc℃とするとき、熱流束型示差走査熱量計により空気中で昇温速度10℃/分として測定されるTc℃での発熱速度が、本発明に係るビニル系モノマーを含有しない場合に比較して小さくなる。すなわち、一定の耐炎化進行速度を保持しつつ耐炎化における発熱を抑制し炭素繊維の生産性を向上することができるといえる。本発明においては、熱流束型示差走査熱量計により空気中で昇温速度10℃/分として測定されるTc℃での発熱速度は1.4J/g/s以下であることが好ましい。
ここで言う「ニトリル基残存率」とは、耐炎化反応の進行度を表すパラメータであり、以下の方法により求めることが出来る。ポリアクリロニトリル系重合体の赤外吸収スペクトル測定において、加熱後のニトリル基の炭素−窒素三重結合に起因する吸収の吸光度をDa、加熱前のニトリル基の炭素−窒素三重結合に起因する吸収の吸光度をDbとした時、ニトリル基残存率Xは下記の式(8)によって求めることが出来る。
X=Da/Db×100 ・・・・・(8)。
本発明において、前記の発熱速度が、従来一般的に用いられるポリアクリロニトリル系重合体よりも小さい1.4J/g/s以下であれば、耐炎化を高温で行うことができ、炭素繊維の生産性を向上することができる。すなわち、一定の耐炎化進行速度を保持しつつ耐炎化における発熱を抑制し炭素繊維の生産性を向上することができる。通常、耐炎化反応は、温度を20℃上げることができれば工程に要する時間を数分の1に減らすことができるところ、総繊度(単繊維繊度とフィラメント数の積)を減らすことなくTc+20℃程度の高温で糸切れや発火をともなわず耐炎化炉を通過させることができる。1.4J/g/sより大きな前駆体繊維を用いて高温で耐炎化を行うと、発熱、蓄熱が大きくなり、糸切れや発火の恐れがあるほか、酸化性雰囲気下で過剰な高温にさらされることから炭素繊維の機械特性を低下させるような欠陥を生じる可能性がある。
本発明のポリアクリロニトリル系重合体の製造する方法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など公知の重合方法を選択することができるが、共重合成分を均一に重合するという観点からは、溶液重合を用いることが好ましい。溶液重合で行う場合の溶液としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのポリアクリロニトリルが可溶な有機溶媒を用いるのが一般的である。
次に、本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法について説明する。
本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法では、前記したポリアクリロニトリル系重合体を用いる。通常、かかる重合体をジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのポリアクリロニトリルが可溶な溶媒に溶解し、紡糸原液とする。溶液重合を用いる場合、重合に用いる溶媒と紡糸原液に用いる溶媒を同じものにしておくと、再溶解する工程が不要となり好ましい。紡糸原液中の重合体の濃度は、原液安定性の観点から、10〜40質量%であることが好ましい。
本発明では、紡糸原液を、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維を凝固せしめる。本発明において、前記凝固浴には、紡糸原液に溶媒として用いた、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの溶媒と、いわゆる凝固促進成分を含ませることが好ましい。凝固促進成分としては、前記重合体を溶解せず、かつ紡糸原液に用いる溶媒と相溶性があるものが使用できる。具体的には、水を使用するのが好ましい。
紡出された繊維は、通常、水洗工程で溶媒が除去された後、浴中延伸温度30〜98℃で約2〜6倍に浴中延伸されるが、本発明はこの方法に限定されない。水洗工程を省略して紡出後、すぐに浴中延伸を行ってから水洗処理しても良い。
浴中延伸工程の後、単繊維同士の接着を防止する意味から、油剤を付与することが好ましい。乾燥工程は、浴中延伸後の糸条をホットドラムなどで乾燥することによって行われるが、乾燥温度および時間等は適宜選択することができる。また、必要に応じて、乾燥緻密化後の糸条を加圧スチーム延伸することも行われる。
得られる炭素繊維前駆体繊維は、通常、連続のマルチフィラメント(束)の形状であり、フィラメント数は好ましくは1000〜3000000本である。
次に、本発明の炭素繊維の製造方法について説明する。
前記した炭素繊維前駆体繊維の製造方法により製造された炭素繊維前駆体繊維を、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜300℃の空気中において耐炎化処理する。耐炎化の後、300〜900℃の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、1000〜3000℃の不活性雰囲気中において炭化処理して炭素繊維を製造する。不活性雰囲気に用いられるガスとしては、窒素、アルゴンおよびキセノンなどを例示することができ、経済的な観点からは窒素が好ましく用いられる。
このようにして製造される炭素繊維は、新たな設備を必要とせずに耐炎化工程を高温化出来るため、スポーツ用途、航空・宇宙用途、ならびに自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途に好適な炭素繊維を生産性良く製造することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。実施例1〜27および比較例1〜16で用いた測定方法を次に説明する。なお、実施例11、12、21〜27および比較例13〜16は参考例である。
<ポリアクリロニトリル系重合体の合成および紡糸>
アクリロニトリルと、表1、表2、表3に示した共重合成分を、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法によりラジカル重合し、ポリアクリロニトリル系重合体溶液を得た。表1、表2、表3に示した共重合組成は重合によって得られたポリマーの組成分析の結果である。
得られたポリアクリロニトリル系重合体溶液を、湿式紡糸法により凝固糸条とした。このようにして得られた凝固糸条を、常法により水洗および温水中での延伸を行い、さらにシリコーン系油剤を付与して浴中延伸糸を得た。この浴中延伸糸を、加熱したローラーを用いて乾燥熱処理を行った後、加圧スチーム中で延伸することで、トータル延伸倍率が10倍、単繊維繊度が1.0d、フィラメント数が6000の炭素繊維前駆体繊維を得た。
<ポリアクリロニトリル系重合体粉末の作製>
まず、ポリアクリロニトリル系重合体溶液を水中で細長く固化させた固体を80〜90℃の熱水中で2〜4時間加熱して脱溶媒した。次に、熱水処理した固体を熱風乾燥機等を用いて空気中120℃で乾燥し、乾燥した重合体固形物を得た。得られた重合体固形物1gに対し、日本分析工業株式会社製冷凍粉砕機JFC−300を用いて、液体窒素による冷却下、予備冷却操作を10分間、粉砕操作を10分間行い、重合体粉末を得た。
<ニトリル基残存率の測定とTcの決定>
ニトリル基残存率Xは、以下のようにして測定した。まず、ポリアクリロニトリル系重合体粉末100mgを直径5〜7cmのアルミ皿上に均一に広げ、穴を開けたアルミホイル等で蓋をした。次に、空気雰囲気において熱風乾燥機等を用いて特定の温度(180〜300℃、5℃刻み)で100分間熱処理(耐炎化処理)を行った。このようにして得られた耐炎化処理前後の粉末を赤外吸収スペクトル測定に供した。各粉末サンプル2mgと臭化カリウム300mgとを乳鉢にて粉砕混合したものを錠剤成型器にて厚さ0.8〜0.9mmに成型した錠剤を用い、FT−IR測定器(株式会社パーキンエルマージャパン製 FT−IR Spectrometer Paragon1000)を用いて測定した。耐炎化処理前のサンプルのニトリル基の炭素−窒素三重結合に起因する吸収の吸光度をDb、耐炎化処理後のサンプルのニトリル基の炭素−窒素三重結合に起因する吸収の吸光度をDaとして、式(8)を用いてニトリル基残存率Xを求めた。また、そのようにして求めたニトリル基残存率が35%となった温度をTcとして決定した。
X=Da/Db×100 ・・・・・(8)。
<ポリアクリロニトリル系重合体の発熱量の測定>
ポリアクリロニトリル系重合体の発熱量は、以下のようにして測定した。まず、重合体粉末を10mmHg以下の減圧条件下、120℃で1時間乾燥した後、分析に供した。重合体粉末2mgをアルミ製サンプルパンに秤取した。アルミ製サンプルパンには蓋をせず、熱流束型示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス社製 DSC3100SA)を用いて、10℃/分の昇温速度、エアー供給量100mL/分の条件で室温から400℃まで測定した。得られたデータは150℃での発熱速度をゼロとしてTc℃での発熱速度を求めた。Tcでの発熱速度の結果は表1、表2、表3に記載の通りであった。
<Tc+20℃での耐炎化テスト>
単繊維繊度1.0d、フィラメント数24000の糸束を、炉内温度をTc+20℃に設定した耐炎化炉の中を通過させることで耐炎化テストを行った。毛羽発生や糸切れを起こすことなく通過させることが出来たものについてはA、多少の毛羽等の発生は認められるものの糸切れには至らなかったものについてはB、顕著な毛羽発生や糸切れが起こったものについてはCとして評価を行った。
<炭化収率>
炭素繊維前駆体繊維をTc℃で100分間耐炎化した後、常法に従って予備炭化工程と炭化工程とを行ったのち、1メートルあたりの質量を測定し、工程中の延伸倍率と炭素繊維前駆体繊維の質量から炭化収率を算出した。
Figure 0006115618
Figure 0006115618
Figure 0006115618

Claims (4)

  1. 共重合成分として、アクリロニトリル、ビニル系モノマーおよび、アクリル酸、メタクリル酸、およびイタコン酸からなる群から選択される少なくとも1種の耐炎化促進成分を含むアクリロニトリル系モノマー組成物を重合してなる炭素繊維前駆体繊維用ポリアクリロニトリル系重合体であって、前記ビニル系モノマー、および該ビニル系モノマーの含有量、前記耐炎化促進成分の含有量、ならびに下記のとおりに測定される発熱速度が、下記[A]または[B]であることを特徴とするポリアクリロニトリル系重合体。
    [A]下記の式(1)および式(2)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のビニルエーテル系モノマー:1〜15モル%、耐炎化促進成分:0.1〜4モル%
    Figure 0006115618
    (式(1)中、Rは炭素数が1〜18のアルキル基、炭素数が1〜18のヒドロキシアルキル基またはアリール基を表す。また、Rは水素、炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基またはアリール基を表す。)
    Figure 0006115618
    (式(2)中、Rは水素、炭素数が1〜6のアルキル基、炭素数が1〜6のヒドロキシアルキル基またはアリール基を表し、環構造中のどの炭素に結合していても良い。また、nは0〜2の整数である。)
    [B]酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル、酢酸イソプロペニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、およびγ−メチレン−γ−ブチロラクトンからなる群から選ばれる少なくとも1種のビニルエステル系モノマー:1〜15モル%、耐炎化促進成分:0.1〜4モル%であって、前記ポリアクリロニトリル系重合体を空気中で100分間加熱する際のニトリル基残存率が35%となる温度をTc℃とした時、熱流束型示差走査熱量計により、空気中で昇温速度10℃/分として測定されるTc℃での発熱速度が1.4J/g/s以下である
  2. 前記[A]の場合において、前記ポリアクリロニトリル系重合体を空気中で100分間加熱する際のニトリル基残存率が35%となる温度をTc℃とした時、熱流束型示差走査熱量計により、空気中で昇温速度10℃/分として測定されるTc℃での発熱速度が1.4J/g/s以下である請求項1に記載のポリアクリロニトリル系重合体。
  3. 請求項1または2に記載のポリアクリロニトリル系重合体を湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により紡糸する工程を備えた炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
  4. 請求項3に記載の方法で炭素繊維前駆体繊維を製造し、該炭素繊維前駆体繊維を180〜300℃の空気中において耐炎化する耐炎化工程と、該耐炎化工程で得られた繊維を300〜900℃の不活性雰囲気中において予備炭化する予備炭化工程と、該予備炭化工程で得られた繊維を1000〜3000℃の不活性雰囲気中において炭化する炭化工程とを備えた炭素繊維の製造方法。
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