JP2017119836A - 高分子化合物、高分子組成物および炭素繊維前駆体繊維ならびに炭素繊維の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】炭化収率を低下させることなく、効率的に炭素繊維を製造することのできる高分子化合物または高分子組成物、およびそれらのいずれかを用いた炭素繊維前駆体繊維ならびに炭素繊維の製造方法を提供すること。
【解決手段】分子構造中に所定の構造単位Aを99〜90モル%、所定の構造単位Bを1〜10モル%含有することを特徴とする炭素繊維前駆体用高分子化合物、ならびに、分子構造中に所定の構造単位Aと所定の構造単位Bを含有する高分子化合物とポリアクリロニトリル系重合体が混合されてなり、構造単位Bの全モノマー単位に対する割合が1〜10モル%である炭素繊維前駆体用高分子組成物。
【選択図】なし
【解決手段】分子構造中に所定の構造単位Aを99〜90モル%、所定の構造単位Bを1〜10モル%含有することを特徴とする炭素繊維前駆体用高分子化合物、ならびに、分子構造中に所定の構造単位Aと所定の構造単位Bを含有する高分子化合物とポリアクリロニトリル系重合体が混合されてなり、構造単位Bの全モノマー単位に対する割合が1〜10モル%である炭素繊維前駆体用高分子組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、炭化収率を低下させることなく、効率的に炭素繊維を製造することのできる高分子化合物または高分子組成物、およびそれらのいずれかを用いた炭素繊維前駆体繊維ならびに炭素繊維の製造方法に関するものである。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度および比弾性率を有するため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツ用途や航空・宇宙用途に加え、自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途にも幅広く展開されており、さらなる生産性の向上の要請が高い。
炭素繊維の中で、最も広く利用されているポリアクリロニトリル(以下、PANと略記することがある。)系炭素繊維は、その前駆体となるPAN系重合体からなる紡糸溶液を湿式紡糸、乾式紡糸または乾湿式紡糸して炭素繊維前駆体繊維(以下、前駆体繊維と略記することがある。)を得た後、それを180〜400℃の酸化性雰囲気下で加熱して耐炎化繊維へ転換し、少なくとも1000℃の不活性雰囲気下で加熱して炭素化することによって工業的に製造されている。
PAN系炭素繊維の製造プロセスに対しては、今日に至るまで様々な生産性向上の試みがなされてきたが、次のような基本的な問題があり、必ずしも十分な生産効率を実現できているとはいえない。
(1)耐炎化のために長時間の熱処理を要する
(2)炭化の際の重量ロスが大きい
耐炎化工程においては、耐炎化反応の進行に伴う反応暴走を防ぐため、高温で行うことができず、目的の反応進行度の耐炎糸を得るためには、耐炎化炉内に長時間滞留させる必要がある。このため、糸条の走行速度の低下や、装置の大型化につながり、炭素繊維の製造コストを増大させる一因となっている。
(1)耐炎化のために長時間の熱処理を要する
(2)炭化の際の重量ロスが大きい
耐炎化工程においては、耐炎化反応の進行に伴う反応暴走を防ぐため、高温で行うことができず、目的の反応進行度の耐炎糸を得るためには、耐炎化炉内に長時間滞留させる必要がある。このため、糸条の走行速度の低下や、装置の大型化につながり、炭素繊維の製造コストを増大させる一因となっている。
また、炭素繊維前駆体の耐炎化繊維を炭素化すると、耐炎化繊維中に含まれる化学構造が熱分解して多量のガス成分として排出されるため、大きな重量減少を伴う。炭化収率はわずかな低下でも炭素繊維の製造コストを大きく増大させるため、炭素繊維の製造プロセスには炭化収率を損なわないための工夫が必要である。
上記の課題を解決する手段として、例えば特許文献1には、耐炎化を促進させるための成分として、カルボキシ基などの官能基をPAN系重合体の分子構造に導入する技術が開示されている。また、特許文献2、3ではグラファイト構造の形成機能を持つ官能基としてアルキン構造を導入し、PAN系重合体の持つ窒素原子の脱離による炭化収率低下を防ぐ技術が開示されている。
しかしながら、カルボキシ基などの官能基を導入する方法では、高温で熱処理する際に官能基が熱分解するため、炭化収率が低下するといった問題があった。また、アルキン構造を導入する方法では特殊な構造のモノマーを多量に用いる必要があり、低価格なアクリロニトリルの割合を下げなければならず、高コストになるといった問題があった。
以上の問題点から、耐炎化の効率化、原料コストの抑制、炭化収率低下の抑制はトレードオフの関係にあり解決が難しかった。
そこで本発明は、熱的に安定で炭化収率を損なうことなく、効率的に炭素繊維を製造することのできる高分子化合物または高分子組成物、およびそれらのいずれかを用いた炭素繊維前駆体繊維ならびに炭素繊維の製造方法を提供することを課題とした。
かかる課題を解決するための本発明は、次の構成を有するものである。すなわち、分子構造中に式(1)で表される構造単位Aを99〜90モル%、式(2)で表される構造単位Bを1〜10モル%含有することを特徴とする炭素繊維前駆体用高分子化合物である。
(式(2)中、二重結合に関する立体配置はシス−トランス異性体のうちどちらでも良い。)
また、本発明の炭素繊維前駆体用高分子化合物は、アクリロニトリルとシアノアセチレンを含んでなるモノマー組成物が共重合されて得られる重合体であることが好ましい。
また、本発明の炭素繊維前駆体用高分子化合物は、アクリロニトリルとシアノアセチレンを含んでなるモノマー組成物が共重合されて得られる重合体であることが好ましい。
また、本発明の炭素繊維前駆体用高分子化合物は、サイズ排除クロマトグラフィー法にて分析した際の標準ポリスチレン換算重量平均分子量が5万以上であることが好ましい。
また、本発明の炭素繊維前駆体用高分子化合物は、上記の式(1)で表される構造単位Aと上記の式(2)で表される構造単位Bを含有する高分子化合物と該高分子化合物とは別なポリアクリロニトリル系重合体を混合してなり、上記の式(2)で表される構造単位Bの全モノマー単位に対する割合が1〜10モル%である炭素繊維前駆体用高分子組成物であってもよい。
また、本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法は、前記高分子化合物または高分子組成物を湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により紡糸する工程を備えることを特徴とする。
さらに、本発明の炭素繊維の製造方法は、前記炭素繊維前駆体繊維の製造方法により製造された炭素繊維前駆体繊維を180〜300℃の空気中において耐炎化する耐炎化工程と、該耐炎化工程で得られた繊維を300〜900℃の不活性雰囲気中において予備炭化する予備炭化工程と、該予備炭化工程で得られた繊維を1000〜3000℃の不活性雰囲気中において炭化する炭化工程とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、炭化収率を損なうことなく耐炎化を短時間化できるため、炭素繊維の生産性を向上させることが出来る。
本発明者らは、炭化収率を損なうことなく耐炎化の短時間化を行うことが可能な炭素繊維前駆体繊維を製造するために、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
本発明の炭素繊維前駆体用高分子化合物の実施態様は、分子構造中に上記の式(1)で表される構造単位Aを99〜90モル%、上記の式(2)で表される構造単位Bを1〜10モル%含有することを特徴とする炭素繊維前駆体用高分子化合物である。なお、本発明において、式(2)中、二重結合に関する立体配置はシス−トランス異性体のうちどちらでも良い。
本発明において、式(2)で表される構造単位Bの含有量を1モル%より少なくすると、耐炎化工程での反応を十分に促進させることが出来ず、本発明の効果が得られなくなることがある。また、式(2)で表される構造単位Bの含有量が10モル%を超えると、耐炎化工程で溶融して繊維接着することが懸念される。かかる観点から、本発明においては式(2)で表される構造単位Bの含有量は好ましくは1〜10モル%である。耐炎化工程の反応促進の観点から、より好ましい含有量は3モル%以上であり、また、耐炎化工程における繊維接着を抑制する観点から、より好ましい含有量は7モル%以下である。
本発明の炭素繊維前駆体用高分子化合物の合成方法としては特に限定されるものではなく、脱離基を持つ前駆体などから脱離基を脱離させる方法などでも合成可能である。原料からの重量の減少を最小にする観点から、本発明の炭素繊維前駆体用高分子化合物は、アクリロニトリルとシアノアセチレンを含んでなるモノマー組成物が共重合されて得られる重合体であることが好ましい。なお、かかるモノマー組成物には、アクリロニトリルとシアノアセチレンとは別な、以下に記載するその他成分を含んでいてもよい。
共重合の方法は特に限定されず、ラジカル重合やアニオン重合など、公知の方法のいずれをも採用することが出来るが、副反応の抑制や重合操作の容易さの観点から、ラジカル重合であることがより好ましい。
共重合における重合開始剤としては特に限定されるものではないが、アニオン重合の場合は例えば、トリエチルアミン、シアン化ナトリウム、ナトリウムナフタレン、アルキルナトリウム、アルキルリチウム、アルキルマグネシウムなどが挙げられる。ラジカル重合の場合は、アゾ系化合物、有機過酸化物、または過硫酸/亜硫酸、塩素酸/亜硫酸あるいはそれらのアンモニウム塩等のレドックス触媒などが挙げられる。シアノアセチレンの沸点は低いため、ラジカル重合を行う場合には、シアノアセチレンの揮発しにくい温度領域で重合を行える重合開始剤や触媒を選定することが好ましい。
重合の方法としては、溶液重合、懸濁重合、乳化重合など公知の重合方法を選択することができるが、工程を簡略化するという観点からは、溶液重合を用いることが好ましい。溶液重合で行う場合の溶液としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのポリアクリロニトリルが可溶な有機溶媒を用いるのが一般的である。
本発明において、炭素繊維前駆体用高分子化合物の分子量が小さいと紡糸の際に十分な曳糸性が得られないことがある。かかる観点から、サイズ排除クロマトグラフィー法にて分析した際の標準ポリスチレン換算重量平均分子量が5万以上であることが好ましく、10万以上であることがより好ましい。さらに、20万以上であることがより好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体用高分子化合物は、カルボキシ基などの官能基を導入せずとも耐炎化反応を十分短時間で実施可能であるが、耐炎化の短時間化をより重視する場合においては、カルボキシ基などの官能基を導入することが出来る。耐炎化を促進するための構造は、アクリロニトリルとシアノアセチレンとは別なその他成分として、次に挙げるモノマーを共重合することで導入できる。用いられる耐炎化促進成分として、特に以下に挙げるものに限定されるものではないが、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸等の酸類およびその塩類、または、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類が挙げられる。本発明において、炭化収率の低下を出来るだけ抑制するためには、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸およびメサコン酸が好ましく、イタコン酸およびメタクリル酸がより好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体用高分子化合物の重合に用いるモノマー組成物として、アクリロニトリル、シアノアセチレン、耐炎化促進成分以外にも、その他成分としてこれらのモノマーとの共重合を行える成分を含んでいても良い。具体的には、メタクリロニトリル等のニトリル基をもつビニル系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバル酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、マレイン酸イミド、フェニルマレイミド、スチレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。
また、本発明は、分子構造中に上記の式(1)で表される構造単位Aと上記の式(2)で表される構造単位Bを含有する高分子化合物と、該高分子化合物とは別なポリアクリロニトリル系重合体が混合されてなり、構造単位Bの全モノマー単位に対する割合が1〜10モル%である炭素繊維前駆体用高分子組成物であってもよい。この場合、式(2)で表される構造単位Bを含有する高分子化合物は、炭素繊維前駆体用高分子組成物全体として全モノマー単位に対する構造単位Bの割合が1〜10モル%であれば、構造単位Bを任意の割合で含有してよい。また、該炭素繊維前駆体用高分子組成物の調製のために用いる構造単位Bを含有する高分子化合物は、構造単位Bを任意の割合で含有してよく、前述の合成法のいずれかの方法にて合成することができる。かかる高分子化合物と混合するポリアクリロニトリル系重合体はアクリロニトリル以外にも、前述の耐炎化促進成分や共重合性モノマーからなるモノマー組成物を共重合したものであってもよい。
次に、本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法について説明する。
本発明の炭素繊維前駆体繊維の製造方法では、前記した炭素繊維前駆体用高分子化合物または炭素繊維前駆体用高分子組成物を用いる。通常、かかる重合体をジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのポリアクリロニトリルが可溶な溶媒に溶解し、紡糸原液とする。溶液重合を用いる場合、重合に用いる溶媒と紡糸原液に用いる溶媒を同じものにしておくと、再溶解する工程が不要となり好ましい。紡糸原液中の重合体の濃度は、原液安定性の観点から、10〜40質量%であることが好ましい。
本発明では、紡糸原液を、湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維を凝固せしめる。本発明において、前記凝固浴には、紡糸原液に溶媒として用いた、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの溶媒と、いわゆる凝固促進成分を含ませることが好ましい。凝固促進成分としては、前記重合体を溶解せず、かつ紡糸原液に用いる溶媒と相溶性があるものが使用できる。具体的には、水を使用するのが好ましい。
紡出された繊維は、通常、水洗工程で溶媒が除去された後、浴中延伸温度30〜98℃で約2〜6倍に浴中延伸されるが、本発明はこの方法に限定されない。水洗工程を省略して紡出後、すぐに浴中延伸を行ってから水洗処理しても良い。
浴中延伸工程の後、単繊維同士の接着を防止する意味から、油剤を付与することが好ましい。乾燥工程は、浴中延伸後の糸条をホットドラムなどで乾燥することによって行われるが、乾燥温度および時間等は適宜選択することができる。また、必要に応じて、乾燥緻密化後の糸条を加圧スチーム延伸することも行われる。
得られる炭素繊維前駆体繊維は、通常、連続のマルチフィラメント(束)の形状であり、フィラメント数は好ましくは1000〜3000000本である。
次に、本発明の炭素繊維の製造方法について説明する。
前記した炭素繊維前駆体繊維の製造方法により製造された炭素繊維前駆体繊維を、好ましくは180〜300℃、より好ましくは200〜300℃の空気中において耐炎化処理する。耐炎化の後、300〜900℃の不活性雰囲気中において予備炭化処理し、1000〜3000℃の不活性雰囲気中において炭化処理して炭素繊維を製造する。不活性雰囲気に用いられるガスとしては、窒素、アルゴンおよびキセノンなどを例示することができ、経済的な観点からは窒素が好ましく用いられる。
このようにして製造される炭素繊維は、炭化収率を損なうことなく効率的に炭素繊維を製造出来るため、低価格が要求される、スポーツ用途、航空・宇宙用途、ならびに自動車や土木・建築、圧力容器および風車ブレードなどの一般産業用途に好適な炭素繊維を生産性良く製造することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。実施例1〜2および比較例1〜4で用いた測定方法も以下に説明する。
<高分子化合物の合成>
実施例1および比較例1〜4で用いた高分子化合物は、構造単位Aに対応するモノマー、構造単位Bに対応するモノマー、およびその他の成分を、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法によりラジカル重合することで、高分子化合物溶液とした。表1に高分子化合物中の構造単位の含有量と対応するモノマー成分の名称を示した。表1では、この方法で調製した高分子化合物は、「調製方法」の列に「共重合」と記載して示した。
実施例1および比較例1〜4で用いた高分子化合物は、構造単位Aに対応するモノマー、構造単位Bに対応するモノマー、およびその他の成分を、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法によりラジカル重合することで、高分子化合物溶液とした。表1に高分子化合物中の構造単位の含有量と対応するモノマー成分の名称を示した。表1では、この方法で調製した高分子化合物は、「調製方法」の列に「共重合」と記載して示した。
<高分子組成物の調製>
実施例2で用いた高分子組成物は、アクリロニトリルとシアノアセチレンを、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法によりラジカル重合することで得た、アクリロニトリル単位83モル%、シアノアセチレン単位17モル%である高分子化合物溶液を、ポリアクリロニトリルのジメチルスルホキシド溶液と混合し、アクリロニトリル単位97モル%、シアノアセチレン単位3モル%の高分子組成物溶液とした。表1に混合後の高分子組成物中の構造単位の含有量と対応するモノマー成分の名称を示した。表1では、この方法で調製した高分子組成物は、「調製方法」の列に「混合」と記載して示した。
実施例2で用いた高分子組成物は、アクリロニトリルとシアノアセチレンを、ジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法によりラジカル重合することで得た、アクリロニトリル単位83モル%、シアノアセチレン単位17モル%である高分子化合物溶液を、ポリアクリロニトリルのジメチルスルホキシド溶液と混合し、アクリロニトリル単位97モル%、シアノアセチレン単位3モル%の高分子組成物溶液とした。表1に混合後の高分子組成物中の構造単位の含有量と対応するモノマー成分の名称を示した。表1では、この方法で調製した高分子組成物は、「調製方法」の列に「混合」と記載して示した。
<高分子化合物および高分子組成物粉末の作製>
まず、高分子化合物または高分子組成物の溶液を水中で細長く固化させた固体を80〜90℃の熱水中で2〜4時間加熱して脱溶媒した。次に、熱水処理した固体を、熱風乾燥機等を用いて空気中120℃で乾燥し、乾燥した重合体固形物を得た。得られた重合体固形物1gに対し、日本分析工業株式会社製冷凍粉砕機JFC−300を用いて、液体窒素による冷却下、予備冷却操作を10分間、粉砕操作を10分間行い、重合体粉末を得た。
まず、高分子化合物または高分子組成物の溶液を水中で細長く固化させた固体を80〜90℃の熱水中で2〜4時間加熱して脱溶媒した。次に、熱水処理した固体を、熱風乾燥機等を用いて空気中120℃で乾燥し、乾燥した重合体固形物を得た。得られた重合体固形物1gに対し、日本分析工業株式会社製冷凍粉砕機JFC−300を用いて、液体窒素による冷却下、予備冷却操作を10分間、粉砕操作を10分間行い、重合体粉末を得た。
<高分子化合物または高分子組成物中の構造単位Bの含有率の測定>
高分子化合物または高分子組成物中の構造単位Bの含有率は以下のようにして測定した。まず、高分子化合物または高分子組成物の粉末を濃度が14mg/mLとなるようにDMSO−d6に溶解させた。次に、FT−NMR装置(日本電子株式会社製 JNM−ECS 400)を用いて1H NMR測定を行った。3.0〜3.3ppmに観測される構造単位Aに起因するメチン水素のシグナルの面積地Aと、6.2〜7.2ppmに観測される構造単位Bに起因するメチン水素のシグナルの面積地Bより、式(3)を用いて構造単位Bの含有率Rを求めた。
高分子化合物または高分子組成物中の構造単位Bの含有率は以下のようにして測定した。まず、高分子化合物または高分子組成物の粉末を濃度が14mg/mLとなるようにDMSO−d6に溶解させた。次に、FT−NMR装置(日本電子株式会社製 JNM−ECS 400)を用いて1H NMR測定を行った。3.0〜3.3ppmに観測される構造単位Aに起因するメチン水素のシグナルの面積地Aと、6.2〜7.2ppmに観測される構造単位Bに起因するメチン水素のシグナルの面積地Bより、式(3)を用いて構造単位Bの含有率Rを求めた。
R=B/(A+B)×100・・・・・(3)。
<ニトリル基残存率の測定>
ニトリル基残存率Xは、以下のようにして測定した。まず、高分子化合物または高分子組成物の粉末100mgを直径5〜7cmのアルミ皿上に均一に広げ、穴を開けたアルミホイル等で蓋をした。次に、空気雰囲気において熱風乾燥機等を用いて240℃で一定時間熱処理(耐炎化処理)を行った。このようにして得られた耐炎化処理前後の粉末を赤外吸収スペクトル測定に供した。各粉末サンプル2mgと臭化カリウム300mgとを乳鉢にて粉砕混合したものを錠剤成型器にて厚さ0.8〜0.9mmに成型した錠剤を用い、FT−IR測定器(株式会社パーキンエルマージャパン製 FT−IR Spectrometer Paragon1000)を用いて測定した。耐炎化処理前のサンプルのニトリル基の炭素−窒素三重結合に起因する吸収の吸光度をDb、耐炎化処理後のサンプルのニトリル基の炭素−窒素三重結合に起因する吸収の吸光度をDaとして、式(4)を用いてニトリル基残存率Xを求めた。
ニトリル基残存率Xは、以下のようにして測定した。まず、高分子化合物または高分子組成物の粉末100mgを直径5〜7cmのアルミ皿上に均一に広げ、穴を開けたアルミホイル等で蓋をした。次に、空気雰囲気において熱風乾燥機等を用いて240℃で一定時間熱処理(耐炎化処理)を行った。このようにして得られた耐炎化処理前後の粉末を赤外吸収スペクトル測定に供した。各粉末サンプル2mgと臭化カリウム300mgとを乳鉢にて粉砕混合したものを錠剤成型器にて厚さ0.8〜0.9mmに成型した錠剤を用い、FT−IR測定器(株式会社パーキンエルマージャパン製 FT−IR Spectrometer Paragon1000)を用いて測定した。耐炎化処理前のサンプルのニトリル基の炭素−窒素三重結合に起因する吸収の吸光度をDb、耐炎化処理後のサンプルのニトリル基の炭素−窒素三重結合に起因する吸収の吸光度をDaとして、式(4)を用いてニトリル基残存率Xを求めた。
X=Da/Db×100 ・・・・・(4)。
耐炎化処理の時間を変化させ、ニトリル基残存率が35%まで減少するために要する時間と100分加熱後のニトリル基残存率を求め、表1に記載した。
耐炎化処理の時間を変化させ、ニトリル基残存率が35%まで減少するために要する時間と100分加熱後のニトリル基残存率を求め、表1に記載した。
<分子量の測定>
分子量は、以下のようにして測定した。まず、高分子化合物溶液を、濃度を10mmol/Lに調整した臭化リチウムのジメチルホルムアミド溶液で希釈し試料溶液を調製した。標準試料は株式会社東ソー製TSKgel標準ポリスチレンを用いた。装置は株式会社島津製作所製高速液体クロマトグラフ Prominenceに株式会社東ソー製カラムTSKgel guardcolumnα、TSKgel α−M(2本)を順に接続し、検出器は示差屈折率検出器RID−10Aを用いた。流速0.5mL/分、カラムオーブン温度75℃、検出器温度45℃としたのち試料溶液を注入し、分析した。解析ソフトは株式会社島津製作所製LCsolutionを用いた。高分子化合物の分子量は表1に記載した。
分子量は、以下のようにして測定した。まず、高分子化合物溶液を、濃度を10mmol/Lに調整した臭化リチウムのジメチルホルムアミド溶液で希釈し試料溶液を調製した。標準試料は株式会社東ソー製TSKgel標準ポリスチレンを用いた。装置は株式会社島津製作所製高速液体クロマトグラフ Prominenceに株式会社東ソー製カラムTSKgel guardcolumnα、TSKgel α−M(2本)を順に接続し、検出器は示差屈折率検出器RID−10Aを用いた。流速0.5mL/分、カラムオーブン温度75℃、検出器温度45℃としたのち試料溶液を注入し、分析した。解析ソフトは株式会社島津製作所製LCsolutionを用いた。高分子化合物の分子量は表1に記載した。
<炭素繊維前駆体の紡糸>
高分子化合物または高分子組成物溶液を、湿式紡糸法により凝固糸条とした。このようにして得られた凝固糸条を、常法により水洗および温水中での延伸を行い、さらにシリコーン系油剤を付与して浴中延伸糸を得た。この浴中延伸糸を、加熱したローラーを用いて乾燥熱処理を行った後、加圧スチーム中で延伸することで、トータル延伸倍率が10倍、単繊維繊度が1.0d、フィラメント数が6000の炭素繊維前駆体繊維を得た。
高分子化合物または高分子組成物溶液を、湿式紡糸法により凝固糸条とした。このようにして得られた凝固糸条を、常法により水洗および温水中での延伸を行い、さらにシリコーン系油剤を付与して浴中延伸糸を得た。この浴中延伸糸を、加熱したローラーを用いて乾燥熱処理を行った後、加圧スチーム中で延伸することで、トータル延伸倍率が10倍、単繊維繊度が1.0d、フィラメント数が6000の炭素繊維前駆体繊維を得た。
<炭化収率>
炭素繊維前駆体繊維を240℃で100分間耐炎化した後、常法に従って予備炭化工程と炭化工程とを行ったのち、1メートルあたりの質量を測定し、工程中の延伸倍率と炭素繊維前駆体繊維の質量から炭化収率を算出した。各試料の炭化収率は表1に記載した。
炭素繊維前駆体繊維を240℃で100分間耐炎化した後、常法に従って予備炭化工程と炭化工程とを行ったのち、1メートルあたりの質量を測定し、工程中の延伸倍率と炭素繊維前駆体繊維の質量から炭化収率を算出した。各試料の炭化収率は表1に記載した。
以下に表1の結果を説明する。通常、耐炎構造を発達させ十分な炭化収率を得るためには、ニトリル基残存率を35%以下まで減少させる必要がある。比較例1に示すように、アクリロニトリル単位のみで構成されるポリアクリロニトリルは、240℃加熱時にニトリル基残存率が35%となるために必要な時間が230分と、極めて長時間の耐炎化が必要となる。また、十分な生産性を確保するためには加熱時間は100分以内となることが望ましいが、生産効率を確保するために240℃における耐炎化時間を100分に短縮した場合、アクリロニトリル単位のみで構成されるポリアクリロニトリルでは、炭化収率が50質量%にとどまる。この問題を解決するために比較例2〜4のようにカルボキシ基を持つモノマーを共重合すると、耐炎化時間が短縮され、炭化収率も向上する。しかしながら、耐炎化時間の短縮のためにカルボキシ基を持つモノマーを多く使用すると、カルボキシ基の熱分解のために炭化収率が低下してしまう。これに対して、実施例1で示すように、構造単位Bを含有する高分子化合物を前駆体とした場合は、構造単位Bの耐熱性が高いため、高い炭化収率を損なうことなく、耐炎化に要する時間を大幅に短縮できる。
高分子化合物の重量平均分子量が5万以上であれば凝固糸条を作成することが出来るが、シアノアセチレンとアクリロニトリルの共重合から得た高分子化合物は、比較例1〜4に比べて分子量が低下してしまう傾向にあり、曳糸性の観点で劣ってしまう。実施例2に示すように、シアノアセチレンとアクリロニトリルの共重合から得た高分子化合物と、該高分子化合物とは別のポリアクリロニトリル系重合体を混合しても、実施例1と同様の耐炎化促進効果と高炭化収率化効果を得ることができる。このことから、分子量が大きく曳糸性に優れたポリアクリロニトリル系重合体を混合して用いれば、シアノアセチレンとアクリロニトリルの共重合から得た高分子化合物の分子量の低下を補うことが可能となる。
Claims (6)
- アクリロニトリルとシアノアセチレンを含んでなるモノマー組成物が共重合されて得られる重合体である、請求項1に記載の炭素繊維前駆体用高分子化合物。
- サイズ排除クロマトグラフィー法にて分析した際の標準ポリスチレン換算重量平均分子量が5万以上である、請求項1または2に記載の炭素繊維前駆体用高分子化合物。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の高分子化合物、または請求項4に記載の高分子組成物を湿式紡糸法または乾湿式紡糸法により紡糸する工程を備えた炭素繊維前駆体繊維の製造方法。
- 請求項5に記載の炭素繊維前駆体繊維の製造方法により製造された炭素繊維前駆体繊維を180〜300℃の空気中において耐炎化する耐炎化工程と、該耐炎化工程で得られた繊維を300〜900℃の不活性雰囲気中において予備炭化する予備炭化工程と、該予備炭化工程で得られた繊維を1000〜3000℃の不活性雰囲気中において炭化する炭化工程とを備えた炭素繊維の製造方法。
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JP2016232258A Pending JP2017119836A (ja) | 2015-12-25 | 2016-11-30 | 高分子化合物、高分子組成物および炭素繊維前駆体繊維ならびに炭素繊維の製造方法 |
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2016
- 2016-11-30 JP JP2016232258A patent/JP2017119836A/ja active Pending
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