JP2002145939A - アクリロニトリル系重合体およびこれを用いた炭素材料 - Google Patents

アクリロニトリル系重合体およびこれを用いた炭素材料

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JP2002145939A
JP2002145939A JP2000350013A JP2000350013A JP2002145939A JP 2002145939 A JP2002145939 A JP 2002145939A JP 2000350013 A JP2000350013 A JP 2000350013A JP 2000350013 A JP2000350013 A JP 2000350013A JP 2002145939 A JP2002145939 A JP 2002145939A
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Hideto Kakita
秀人 柿田
Mitsuo Hamada
光夫 浜田
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 炭素繊維等の炭素材料の原料に適した熱酸化
反応性の安定したアクリロニトリル系重合体を提供す
る。 【解決手段】 KBr錠剤法で測定された赤外吸収スペ
クトルにおける、カルボキシル基の炭素−酸素二重結合
に起因する吸収の吸光度Daとシアノ基の炭素−窒素三
重結合に起因する吸収の吸光度Dbとから算出される吸
光度比Da/(Da+Db)をxとし、熱流束型示差走
査熱量計で100ml/分の空気気流中、230℃で測
定された等温発熱曲線における発熱ピーク出現時間tp
(分)の逆数1/tpをyとした場合に、xは0.03
〜0.6であり、かつ、xおよびyが下記式(1)を満
たすアクリロニトリル系重合体である。 【数1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は熱酸化反応性が総じ
て大きく、優れていて、さらに組成を調整することによ
って目的に応じてより細かい熱酸化反応性の制御が可能
な、炭素材料の原料に適したアクリロニトリル系重合体
と、それを用いた炭素材料に関する。
【0002】
【従来の技術】アクリロニトリル系重合体は、従来、主
にアクリル繊維用原料として生産されてきたが、アクリ
ロニトリル系重合体から製造された炭素繊維、いわゆる
PAN系炭素繊維は特に強度特性が優れることから、炭
素繊維原料としての使用が増加している。最近では、全
炭素繊維の90%以上がPAN系炭素繊維である。ま
た、その他に、アクリロニトリル系重合体を原料とした
二次電池用炭素電極材料、炭素フィルム等の開発も進ん
でいて、アクリロニトリル系重合体を利用した技術の今
後の伸びが期待されている。アクリロニトリル系重合体
から炭素繊維を製造する場合には、アクリロニトリル系
重合体を紡糸して得られたアクリル繊維、すなわち炭素
繊維用前駆体を酸化雰囲気中、200〜400℃で耐炎
化処理し耐炎化繊維とする。ついで、この耐炎化繊維を
不活性ガス雰囲気中、800〜2000℃で炭化処理し
て炭素繊維を製造する。また、こうして得られた炭素繊
維をさらに高温の不活性ガス中で処理し、黒鉛繊維とす
る場合もある。
【0003】このような製造工程中、炭素繊維用前駆体
を熱酸化する耐炎化工程はアクリロニトリル系重合体の
酸化および環化に起因する発熱を伴うため暴走しやす
い。この工程において反応が暴走してしまうと最終的に
得られる炭素繊維の物性が悪化する。また、耐炎化処理
時間を短縮すると、表層は耐炎化が進行するものの内部
は生焼けの状態となり、やはり最終的に得られる炭素繊
維の物性を低下させてしまう。このため、耐炎化工程に
は時間をかけて、これらの反応を十分に制御しながら安
定に行う必要があった。このように耐炎化工程は炭素繊
維の物性を左右することから重要な工程であるが、長時
間を要するために効率的ではなかった。そのため、イタ
コン酸やアクリル酸等のアクリロニトリルモノマー以外
の酸コモノマーを含むアクリロニトリル系重合体を前駆
体として使用し、熱酸化反応性を高め、耐炎化工程を短
縮化している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うに酸コモノマーを含むアクリロニトリル系重合体を前
駆体として使用すると、耐炎化工程に要する時間を短縮
できるものの、アクリロニトリル系重合体中の酸コモノ
マーの種類や酸コモノマーの使用量が若干異なるだけで
熱酸化反応性が大きく変化する場合があった。そのた
め、重合反応で得られたアクリロニトリル系重合体の組
成が反応バッチによって若干異なるだけでも、熱酸化反
応性が大きく変動し、耐炎化工程を安定に行えない場合
があった。また、酸コモノマーの割合を多くすると、最
終的に得られる炭素繊維等の強度が不十分となる場合も
あった。
【0005】本発明は上記事情に鑑みてなされたもの
で、熱酸化反応性が大きく、優れていて、さらに組成を
調整することによって熱酸化反応性をより細かく安定に
制御でき、非常に高性能な炭素繊維の製造や、きわめて
低コストな炭素繊維の製造等、目的に応じた炭素材料を
製造できるアクリロニトリル系重合体を提供することを
課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のアクリロニトリ
ル系重合体は、KBr錠剤法で測定された赤外吸収スペ
クトルにおいて、カルボキシル基の炭素−酸素二重結合
に起因する吸収の吸光度をDaとし、シアノ基の炭素−
窒素三重結合に起因する吸収の吸光度をDbとして算出
された吸光度比Da/(Da+Db)が0.03〜0.
6であり、さらに、熱流束型示差走査熱量計で100m
l/分の空気気流中、230℃で測定された等温発熱曲
線における発熱ピーク出現時間tp(分)の逆数1/t
pと、前記吸光度比Da/(Da+Db)とが、下記式
(1)の関係を満たすことを特徴とする。
【数2】 (式中、x=Da/(Da+Db)、y=1/tpであ
る。) 上記アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリル単
量体単位からなるアクリロニトリルホモポリマーである
ことが好ましい。または、上記アクリロニトリル系重合
体は、単量体単位としてアクリロニトリルと、さらにイ
タコン酸とを含み、すべての単量体単位のなかでアクリ
ロニトリルの割合が最も大きく、次いでイタコン酸の割
合が大きいことが好ましい。また、アクリロニトリルが
96〜99.95モル%で、イタコン酸が0.05〜4
モル%であることが好ましい。本発明の炭素繊維用前駆
体は上記アクリロニトリル系重合体からなることを特徴
とする。また、本発明の炭素繊維は、上記炭素繊維用前
駆体から製造されたことを特徴とする。さらに本発明の
炭素材料は、上記アクリロニトリル系重合体から製造さ
れたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のアクリロニトリル系重合体は、KBr錠剤法で
測定された赤外吸収スペクトルにおいて、カルボキシル
基の炭素−酸素二重結合に起因する1735cm-1付近
の吸収の吸光度Daと、シアノ基の炭素−窒素三重結合
に起因する2240cm-1付近の吸収の吸光度Dbから
算出された吸光度比Da/(Da+Db)が0.03〜
0.6である。KBr錠剤法とは、固体の測定試料を臭
化カリウムとともに乳鉢等ですりつぶした後、圧縮成形
機等で錠剤状に成形し、これを測定する方法である。
【0008】吸光度比Da/(Da+Db)が0.03
未満では、アクリロニトリル系重合体の熱酸化反応性が
低すぎて、例えばこの重合体から炭素繊維を製造する場
合、この重合体からなる繊維状の前駆体の耐炎化処理に
要する時間が長くなり、炭素繊維の生産性が低下する場
合がある。一方、0.6を超えると、このアクリロニト
リル系重合体の熱酸化反応性が高すぎて、前駆体の耐炎
化処理中に酸化反応および環化反応が暴走してしまう場
合があり、また、最終的に得られる炭素繊維の物性が低
下する場合がある。
【0009】また、本発明のアクリロニトリル系共重合
体は、熱流束型示差走査熱量計を使用して100ml/
分の空気気流中、230℃で保持した場合に測定される
等温発熱曲線において、tp(分)に発熱ピークを有す
る。すなわち、発熱ピーク出現時間がtp(分)であ
る。熱流束型示差走査熱量計で、測定試料と標準試料を
一定温度で保持した場合に両者に温度差が生じると、こ
れを打ち消すために測定試料または標準試料のどちらか
の周囲の熱流が増加したり、抑制されたりする。ここで
等温発熱曲線とは、この両者の熱流速度差Δqを保持時
間に対してプロットしたものである。そして、測定試料
が発熱し、この発熱に起因するピークが観測された時間
を発熱ピーク出現時間という。ここでは、アクリロニト
リル系重合体粉末4mgをアルミニウム製オープン容器
に入れた後、ステンレス製メッシュカバーで蓋をして、
これを流量100ml/分の乾燥空気気流中、230℃
に保持して等温発熱曲線を測定する。また、アクリロニ
トリル系重合体粉末には、380メッシュの篩を通過し
たものを使用する。
【0010】そして本発明のアクリロニトリル系共重合
体においては、等温発熱曲線における発熱ピーク出現時
間tp(分)の逆数1/tpと、上記吸光度比Da/
(Da+Db)との間に下記式(1)の関係を有する。
【数3】 (式中、x=Da/(Da+Db)、y=1/tpであ
る。) Da/(Da+Db)と1/tpの間にこのような関係
があるアクリロニトリル系重合体は、熱酸化反応性が大
きいだけでなく、さらに組成を調整することによって目
的に応じてより細かく熱酸化反応性を制御することがで
きる。1/tpがこのような範囲未満の場合には、熱酸化
反応性が低すぎるため、この重合体を紡糸して得られた
繊維状の前駆体を耐炎化処理すると、処理に要する時間
が長くなり、炭素繊維の生産性が低下する場合があり、
このような範囲を超えると、熱酸化反応性が高すぎて、
前駆体の耐炎化処理中に酸化反応および環化反応が暴走
してしまう場合がある。
【0011】本発明のアクリロニトリル系重合体は、ア
クリロニトリル単量体単位からなるアクリロニトリルホ
モポリマーであってもよいし、アクリロニトリルの他に
コモノマーとして、アクリロニトリルと共重合可能な酸
コモノマーを含むものでもよい。酸コモノマーを含む
と、アクリロニトリル系重合体の熱酸化反応性がより高
まり、炭素繊維製造時の耐炎化工程やその他の炭素材料
製造時の熱酸化反応に要する時間を短縮することができ
る。酸コモノマーとしては特に制限はなく、イタコン
酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル
酸、クロトン酸等が挙げられるがイタコン酸が好まし
い。また、アクリロニトリル系重合体を構成するすべて
の単量体単位のなかでアクリロニトリルの割合が最も大
きく、次いでイタコン酸の割合が大きいことが好まし
い。さらに好ましくは、アクリロニトリルが96〜9
9.95モル%で、イタコン酸が0.05〜4モル%で
ある。イタコン酸が0.05モル%未満では、熱酸化反
応性が低い場合があり、また、この重合体を紡糸して炭
素繊維用前駆体を製造する際に、このアクリロニトリル
系重合体の溶液が不安定になる場合がある。一方、4モ
ル%を超えると、耐炎化工程で繊維同士が融着する場合
や、最終的に得られる炭素繊維等の炭素材料の物性が低
下する場合がある。
【0012】このようなアクリロニトリル系重合体は懸
濁重合法、溶液重合法、乳化重合法等の種々の方法で製
造できるが、水と有機溶媒の混合系中、有機アゾ系開始
剤を使用した懸濁重合法で製造することが好ましい。有
機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホル
ムアミド、ジメチルアセトアミドから選ばれた少なくと
も1種を使用することがさらに好ましい。また、有機ア
ゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビス(4−メトキ
シ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、AIBN等が
使用できる。
【0013】その他には、有機溶媒中、有機アゾ系開始
剤を使用した溶液重合法で製造することが好ましい。有
機溶媒としては、ジメチルスルホキシド、ジメチルホル
ムアミド、ジメチルアセトアミドから選ばれた少なくと
も1種であることが好ましい。有機アゾ系開始剤として
は上記に例示したもの等が使用できる。
【0014】また、アクリロニトリル系重合体がアクリ
ロニトリル単量体単位からなるアクリロニトリルホモポ
リマーである場合には、有機溶媒中、カルボキシル基を
有する有機アゾ系開始剤を使用した溶液重合法で製造す
ることが好ましい。有機溶媒としては、ジメチルスルホ
キシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド
から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。カ
ルボキシル基を有する有機アゾ系開始剤としては、4,
4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が使用できる。
【0015】こうして製造されたアクリロニトリル系重
合体は、カルボキシル基の炭素−酸素二重結合に起因す
る吸収の吸光度Daと、シアノ基の炭素−窒素三重結合
に起因する吸収の吸光度Dbとから算出された吸光度比
Da/(Da+Db)が0.03〜0.6で、かつ、等
温発熱曲線における発熱ピーク出現時間tp(分)の逆
数1/tpと前記吸光度比Da/(Da+Db)とが上
記式(1)を満すので、熱酸化反応性が大きく、また、
酸コモノマーの種類や割合を調整することによってその
程度も目的に応じて様々に制御でき、用途に応じた多様
なアクリロニトリル系重合体とすることができる。
【0016】例えば、Da/(Da+Db)と1/tp
が上記範囲内で、アクリロニトリル系重合体中のアクリ
ロニトリルの割合を大きくし、酸コモノマーの割合を小
さくすると、熱酸化反応性の大きさを維持したまま、酸
コモノマーに起因する強度不良が抑制された高性能な炭
素繊維を製造できる。一方、アクリロニトリル系重合体
中のアクリロニトリルの割合を小さくすると、熱酸化反
応性が非常に大きく、例えば炭素繊維を製造する場合の
耐炎化工程を効率的に行うことのできるアクリロニトリ
ル系重合体となり、炭素繊維をきわめて低コストで製造
できる。したがって、Da/(Da+Db)と1/tp
を上記範囲内として、アクリロニトリル系重合体の組成
を調整することによって、目的に応じて、非常に高性能
な炭素繊維の製造や、きわめて低コストな炭素繊維の製
造が可能となる。
【0017】得られたアクリロニトリル系重合体を、ジ
メチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチル
スルホキサイド等の有機溶媒に溶解し、乾湿式紡糸法や
湿式紡糸法等の通常の方法で紡糸することによって、炭
素繊維用前駆体を製造できる。ついで、この炭素繊維用
前駆体を酸化雰囲気中、200〜300℃で処理する耐
炎化処理を行って、耐炎化繊維とする。その後、この耐
炎化繊維を不活性ガス中、800〜2000℃で処理す
る炭化工程を行って炭素繊維を製造することができる。
さらにこの炭素繊維を不活性ガス中、2500〜280
0℃程度の高温で処理することによって、黒鉛繊維を製
造することもできる。
【0018】また、このようなアクリロニトリル系重合
体は、炭素繊維以外の炭素材料への使用にも適してい
る。例えば、アクリロニトリル系重合体の粉末またはフ
ィルムを耐炎化処理し、ついで炭化工程を行う方法で電
極用炭素材料を製造できる。その他には、アクリロニト
リル系重合体をジメチルスルホキシド等の溶媒に溶解し
た後フィルム化し、必要に応じて一軸延伸、二軸延伸等
の加工をし、ついで、耐炎化処理、炭化処理を行うこと
によって、炭素フィルムを製造できる。
【0019】このようなアクリロニトリル系重合体は、
熱酸化反応性が総じて大きく、優れていて、さらに組成
を調整することによって目的に応じてより細かい熱酸化
反応性の制御が可能である。したがって、組成を調整す
ることによって、非常に高性能な炭素繊維の製造や、生
産コストのきわめて低い炭素繊維の製造が可能となる。
このようなアクリロニトリル系重合体は、炭素繊維、電
極用炭素材料、炭素フィルム等の炭素材料の製造に適し
ているが、特に炭素繊維の製造に最適である。
【0020】
【実施例】以下の実施例および比較例により、本発明を
さらに詳しく説明する。 [実施例1〜4]ジメチルスルホキシドを溶媒として、
溶媒/モノマーの重量比を5/1として、開始剤2,
2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレ
ロニトリル)をモノマーに対して0.4wt%添加し
て、温度60℃、120分の重合時間で表1に示すよう
なアクリロニトリル−イタコン酸共重合体を製造した。
得られたポリマーの極限粘度はいずれも1.8であっ
た。これらのポリマーを熱流束型示差走査熱量計で10
0ml/分の空気気流中、230℃に保ち、得られた等
温発熱曲線における発熱ピーク出現時間tp(分)の逆
数1/tpを表1に示す。また、これらのポリマーの赤
外吸収スペクトルから算出した吸光度比Da/(Da+
Db)も表1に示す。
【0021】これらのうち、実施例4で得られたポリマ
ーをジメチルスルホキシドに溶解して20重量%の濃度
の溶液を調製した後、これを湿式紡糸法で紡糸し、つい
で熱水中で延伸し、油剤を付与した後、さらに加熱ロー
ラーにて乾燥緻密後、スチーム延伸して前駆体を製造し
た。この前駆体を空気中、230〜270℃の熱風循環
式耐炎化炉にて5%の伸張を付与しながら20分間とい
う短い時間で、段階的に温度を上げながら熱処理(耐炎
化工程)した。その後、引き続き窒素雰囲気下において
最高温度600℃で、伸張率5%にて1.5分間低温熱
処理し、さらに、同雰囲気下で最高温度が1400℃の
高温熱処理炉にて、−5%の伸張下、約1.5分間処理
した。得られた炭素繊維はストランド強度は420kg
/mm2、ストランド弾性率は25ton/mm2 であ
り、高速での耐炎化が可能であった。
【0022】なお、各種測定は以下のようにして行っ
た。 (1)共重合体の組成: 1H−NMR法(日本電子GS
X−400型超伝導FT−NMR)で測定した。 (2)重合体の極限粘度η:25℃のジメチルホルムア
ミド溶液で測定した。 (3)等温DSC発熱曲線:380メッシュの篩を通過
した重合体粉末4mgを正確に秤量し、アルミニウム製
オープン型試料容器に入れ、ステンレス製メッシュカバ
ーで押さえた状態で、100ml/分の流量の乾燥空気
気流中で230℃にて測定した。熱流束型示差走査熱量
計はセイコー電子工業製DSC220Cを使用した。 (4)赤外吸収スペクトル:試料1mgを100mgの
臭化カリウム粉末に均一に混合した後、これを錠剤に賦
型し日本分光製FT−IR7300により測定した。
【0023】[実施例5〜8]水/ジメチルアセトアミ
ド/モノマーの重量比を5/1/1に保ち、開始剤とし
て、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメ
チルバレロニトリル)をモノマーに対して0.6重量%
加え、温度63℃、120分の重合時間で、表2に示す
ようなアクリロニトリル−イタコン酸共重合体を製造し
た。これらの極限粘度はいずれも1.7であった。これ
らのポリマーの1/tpと吸光度比Da/(Da+D
b)を実施例1と同様にして、求めた結果も表2に示
す。
【0024】これらのうち、実施例5で得られたポリマ
ーをジメチルスルホキシドに溶解して20重量%の濃度
の溶液を調製した後、これを乾湿式紡糸法で紡糸し、つ
いで熱水中で延伸し、油剤を付与した後、さらに加熱ロ
ーラーにて乾燥緻密後、スチーム延伸して前駆体を製造
した。この前駆体を空気中、220〜260℃の段階式
昇温の熱風循環式耐炎化炉にて6%の伸張を付与しなが
ら60分間熱処理し(耐炎化工程)、引き続き窒素雰囲
気下において最高温度600℃で、伸張率6%にて2分
間低温熱処理し、さらに、同雰囲気下で最高温度が14
00℃の高温熱処理炉にて、0%の伸張下、約1.5分
間処理した。得られた炭素繊維はストランド強度は58
0kg/mm2 、ストランド弾性率は27ton/mm
2 であり、高強度炭素繊維であった。
【0025】[実施例9]開始剤として、4,4’−ア
ゾビス(4−シアノ吉草酸)を使用した以外は実施例1
と同様にして、アクリロニトリルホモポリマーを製造し
た。これらのポリマーの1/tp、吸光度比Da/(D
a+Db)を実施例1と同様にして、求めた結果、それ
ぞれ0.23、0.06であった。得られたポリマーを
実施例4と同様に処理して得られた炭素繊維のストラン
ド強度は550〜600kg/mm2 、ストランド弾性
率は26〜27ton/mm2 の範囲にあり、高性能を
示した。
【0026】[比較例1〜3]水1867g、モノマー
133gを添加して、水/モノマーの重量比を14/1
に保ち、過硫酸アンモニウム1.5g、50wt%亜硫
酸水素アンモニウム水溶液4.6g、1.0%硫酸水溶
液18g、30ppm硫酸鉄水溶液1.3gを加え、温
度55℃、120分の重合時間で表3に示すようなアク
リロニトリル−メタクリル酸共重合体を製造した。これ
らの極限粘度はいずれも1.8であった。これらのポリ
マーの1/tpと吸光度比Da/(Da+Db)を実施
例1と同様にして、求めた結果も表3に示す。得られた
ポリマーを実施例4と同様に処理して得られた炭素繊維
は、ストランド強度はいずれも510kg/mm2 、ス
トランド弾性率は24ton/mm2であった。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【発明の効果】以上説明したように本発明のアクリロニ
トリル系重合体は、熱酸化反応性が総じて大きく、優れ
ていて、さらに組成を調整することによって、高性能な
炭素繊維や、耐炎化工程に要する時間が極めて小さい低
コストな炭素繊維を製造できる。したがって、炭素繊維
が必要とする性能にあわせたアクリロニトリル系重合体
を効率的に提供できる。このようなアクリロニトリル系
重合体は、炭素繊維、電極用炭素材料、炭素フィルム等
の炭素材料の製造に適しているが、特に炭素繊維の製造
に最適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D01F 6/18 D01F 6/18 E 9/22 9/22 Fターム(参考) 4G046 CA04 CB01 4J011 HA03 HA08 HB22 4J100 AJ08Q AM02P CA01 CA04 DA22 FA03 JA11 4L035 BB03 BB04 BB06 BB11 BB59 BB69 BB72 BB80 FF01 GG04 HH10 MB00 MB04 4L037 CS03 PA55 PA61 PC14 PS17

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 KBr錠剤法で測定された赤外吸収スペ
    クトルにおいて、カルボキシル基の炭素−酸素二重結合
    に起因する吸収の吸光度をDaとし、シアノ基の炭素−
    窒素三重結合に起因する吸収の吸光度をDbとして算出
    された吸光度比Da/(Da+Db)が0.03〜0.
    6であり、 さらに、熱流束型示差走査熱量計で100ml/分の空
    気気流中、230℃で測定された等温発熱曲線における
    発熱ピーク出現時間tp(分)の逆数1/tpと、前記
    吸光度比Da/(Da+Db)とが、下記式(1)の関
    係を満たすことを特徴とするアクリロニトリル系重合
    体。 【数1】 (式中、x=Da/(Da+Db)、y=1/tpであ
    る。)
  2. 【請求項2】 アクリロニトリル単量体単位からなるア
    クリロニトリルホモポリマーであることを特徴とする請
    求項1に記載のアクリロニトリル系重合体。
  3. 【請求項3】 単量体単位としてアクリロニトリルと、
    さらにイタコン酸とを含み、すべての単量体単位のなか
    でアクリロニトリルの割合が最も大きく、次いでイタコ
    ン酸の割合が大きいことを特徴とする請求項1に記載の
    アクリロニトリル系重合体。
  4. 【請求項4】 アクリロニトリルが96〜99.95モ
    ル%で、イタコン酸が0.05〜4モル%であることを
    特徴とする請求項3に記載のアクリロニトリル系重合
    体。
  5. 【請求項5】 水と有機溶媒の混合系中、有機アゾ系開
    始剤を使用した重合法で重合されたことを特徴とする請
    求項1ないし4のいずれかに記載のアクリロニトリル系
    重合体。
  6. 【請求項6】 ジメチルスルホキシド、ジメチルホルム
    アミド、ジメチルアセトアミドから選ばれた少なくとも
    1種の有機溶媒中、有機アゾ系開始剤を使用した重合法
    で製造されたことを特徴とする請求項1ないし4のいず
    れかに記載のアクリロニトリル系重合体。
  7. 【請求項7】 ジメチルスルホキシド、ジメチルホルム
    アミド、ジメチルアセトアミドから選ばれた少なくとも
    1種の有機溶媒中、カルボキシル基を有する有機アゾ系
    開始剤を使用した重合法で製造されたことを特徴とする
    請求項2に記載のアクリロニトリル系重合体。
  8. 【請求項8】 請求項1ないし7のいずれかに記載のア
    クリロニトリル系重合体からなることを特徴とする炭素
    繊維用前駆体。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の炭素繊維用前駆体から
    製造されたことを特徴とする炭素繊維。
  10. 【請求項10】 請求項1ないし7のいずれかに記載の
    アクリロニトリル系重合体から製造されたことを特徴と
    する炭素材料。
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