JP6264819B2 - アクリロニトリル系共重合体、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維、炭素繊維及び炭素繊維の製造方法 - Google Patents

アクリロニトリル系共重合体、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維、炭素繊維及び炭素繊維の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、アクリロニトリル系共重合体、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維、炭素繊維及び炭素繊維の製造方法に関する。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度及び比弾性率を有することが知られている。このため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツ用途及び航空・宇宙用途に加え、自動車や土木、建築、圧力容器、風車ブレード等の一般産業用途にも幅広く展開されつつある。
炭素繊維の中ではアクリロニトリル系炭素繊維が最も広く利用されている。アクリロニトリル系炭素繊維は、アクリロニトリル系共重合体を溶剤に溶解したアクリロニトリル系共重合体溶液を用いて湿式紡糸または乾湿式紡糸して炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を得た後、それを200〜300℃の酸化性雰囲気中にて加熱処理して耐炎化繊維とする耐炎化工程と、300〜2500℃の不活性雰囲気にて前記耐炎化繊維を加熱処理する炭素化工程を通すことにより得ることができる。
しかし、このようにして得られる炭素繊維は、物性や品質には優れるものの、価格が高いため、コストを重視する産業用途分野での多用化は十分に実現できていない。そして市場においては、炭素繊維複合材料の高性能化のため、高強度高品位であり、性能斑も少ない炭素繊維が要求されている。更に近年、炭素繊維の製造工程において、より高いレベルでの安全、環境への配慮が求められている。
そのような中、特許文献1では炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を製造する際に、加圧水蒸気延伸を伴う二次延伸において、加圧水蒸気延伸装置直前の加熱ローラーの温度および加圧水蒸気延伸における水蒸気圧力の変動率を調整することで繊度斑の少ない炭素繊維を得ている。また、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維製造に用いるアクリロニトリル系共重合体に、アクリルアミドを含有させることで緻密な炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を製造、炭素繊維の高強度化を図っている。
また、特許文献2では炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維製造に用いるアクリロニトリル系共重合体に、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを含有させることで、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の耐炎化反応性を低下させ、耐炎化工程焼け斑や構造斑を抑制しており、結果的に毛羽の少ない高性能の炭素繊維を得る技術を提案している。
特開2006−348462号公報 特開2011−46942号公報
しかし、特許文献1では炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の長手方向の繊度斑を低減することで、炭素繊維の開繊性のバラツキ低減を達成しているものの、炭素繊維強度のばらつきへの効果については記載がない。また、アクリロニトリル系共重合体の製造に使用されているアクリルアミドは毒性が高く、環境負荷に対する影響が大きい。また、アクリルアミドはアクリロニトリルとの重合反応性が低く、モノマーのアクリロニトリル系共重合体への転換率が低くなってしまうという課題もあった。
また、特許文献2ではアクリロニトリル系共重合体の製造にメタクリル酸2−ヒドロキシエチルを使用しており、アクリルアミドと比較してアクリロニトリル系共重合体への転換率向上が見込まれるが、更なる低コスト化や環境負荷低減のため、それ以上の転換率向上が求められている。また、炭素繊維強度のばらつきについては十分な議論がなされていない。
本発明者は、鋭意検討した結果、前記課題を解決するに至った。
すなわち、本発明はストランド強度、品位が従来品と同等以上であり、ストランド強度の変動係数がより小さい炭素繊維を製造可能なアクリロニトリル系共重合体を提供すると同時に、原料モノマーのアクリロニトリル系共重合体への転化率が高く、重合反応終了後における反応液中の未反応モノマーを低減、結果的に重合排水中や大気中に放散される未反応モノマーの量を低減させることで、排水処理の低コスト化が可能であるアクリロニトリル系共重合体を提供することを目的とする。
本発明のアクリロニトリル系共重合体は、アクリロニトリル単位95.0〜98.0質量%、ヒドロキシアルキルエステル含有ビニル系モノマー単位1.8〜4.5質量%及びカルボキシル基含有ビニル系モノマー単位を含むアクリロニトリル系共重合体であって、カルボキシル基の含有量が2.0×10−5〜11.0×10−5mol/gであるアクリロニトリル系共重合体である。
本発明のアクリロニトリル系共重合体は、アクリロニトリル単位95.0〜97.0質量%、ヒドロキシアルキルエステル含有ビニル系モノマー単位2.5〜4.0質量%及びカルボキシル基含有ビニル系モノマー単位を含むアクリロニトリル系共重合体であって、カルボキシル基の含有量が5.0×10−5〜8.5×10−5mol/gであることが好ましい。
本発明のアクリロニトリル系共重合体は、ヒドロキシアルキルエステル含有ビニル系モノマーとして、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いることが好ましい。
本発明のアクリロニトリル系共重合体は、カルボキシル基含有ビニル系モノマーとして、メタクリル酸を用いることが好ましい。
本発明のアクリロニトリル系共重合体は、以下の方法により測定される酸化深さDが3.7μm〜4.4μmであることが好ましい。
<酸化深さDの測定方法>
1)アクリロニトリル系共重合体をジメチルホルムアミドに、質量濃度で25%となるよう溶解させる。
2)前記溶液をガラス板上に一定の厚みになるように塗布する。
3)2)で得たガラス板上に塗布された前記溶液を、熱風乾燥機等を用いて、空気中120℃で6時間乾燥し、溶媒を蒸発させて、厚み20〜40μmのフィルムとする。
4)3)で得られたフィルムを、熱風乾燥機等を用いて、空気中240℃で60分、さらに空気中250℃で60分熱処理し、耐炎化処理を行う。
5)4)で得られたフィルムを樹脂包埋した上で研磨し、そのフィルム表面に対して垂直な断面を蛍光顕微鏡を用いて倍率1500倍で観察する。
6)前記断面において酸化が進んだ部分は暗い層として、進んでいない部分は明るい層として観察されるので、フィルム表面から、暗い層と明るい層の境界までの距離を少なくとも5点計測し、その算術平均を酸化深さD(μm)とする。
本発明の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維は、前記アクリロニトリル系共重合体からなる炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維である。
本発明の炭素繊維は、以下の方法により測定される炭素繊維のストランド強度が490kgf/mm以上であり、その変動係数が2.5%以下である炭素繊維である。
<炭素繊維のストランド強度、変動係数の測定方法>
1)JIS−R−7608に準じたエポキシ樹脂含浸炭素繊維ストランド法に準じて炭素繊維のストランドを10本作成する。
2)作成した炭素繊維のストランド強度をJIS−R−7608に準じたエポキシ樹脂含浸炭素繊維ストランド法に準じて測定する。
3)得られたストランド強度の評価結果10点の平均値、標準偏差を求め、平均値を炭素繊維のストランド強度(kgf/mm)、標準偏差を平均値で割った値を炭素繊維の変動係数(%)とした。 本発明の炭素繊維は、以下の方法により得られる炭素繊維のストランド強度が500kgf/mm以上であり、その変動係数が2.0%以下であることが好ましい。
本発明の炭素繊維の製造方法は、前記炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を焼成して得る炭素繊維の製造方法である。
本発明によれば、ストランド強度、品位が従来品と同等以上であり、ストランド強度の変動係数が従来品より小さい炭素繊維を製造可能なアクリロニトリル系共重合体を得ることができる。
更に、原料モノマーのアクリロニトリル系共重合体への転化率が高く、重合反応終了後における反応液中の未反応モノマーを低減させることができ、結果的に重合排水中や大気中に放散される未反応モノマーの量を低減させ、アクリロニトリル系共重合体製造工程での排水処理の低コスト化、環境負荷低減が可能となる。
本発明のアクリロニトリル系共重合体はアクリロニトリル単位95.0〜98.0質量%含むことが好ましい。アクリロニトリル単位を95.0質量%以上とすることで、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を炭素繊維に転換するための焼成工程で、繊維同士の融着を招くことがなく、炭素繊維の優れた品質及び性能を維持できる。加えて、アクリロニトリル系共重合体の耐熱性が低下せず、加熱ローラーや加圧水蒸気による延伸等の処理において、単繊維間の接着を回避できる。アクリロニトリル単位を98.0質量%以下とすることで、溶剤への溶解性が低下せず、アクリロニトリル系重合体の析出・凝固を防止し、紡糸原液の安定性が維持できるため、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を安定して製造できる。炭素繊維の性能向上の面から、アクリロニトリル系共重合体中のアクリロニトリル単位は95.0〜97.5質量%含むことがより好ましく、96.0〜97.0質量%とすることが更に好ましい。
本発明のアクリロニトリル系共重合体はヒドロキシアルキルエステル含有ビニル系モノマー単位1.8〜4.5質量%含むことが好ましい。アクリロニトリル系共重合体中のヒドロキシアルキルエステル含有ビニル系モノマー単位を1.8質量%以上とすることで炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の緻密性が向上し、優れた機械的性能の炭素繊維を得ることができる。また、アクリロニトリル系共重合体中のヒドロキシアルキルエステル含有ビニル系モノマー単位を4.5質量%以下とすることでアクリロニトリル系共重合体中のアクリロニトリル含有量が十分確保でき、炭素繊維前駆体繊維を製造する上で繊維の乾燥工程または加熱ローラーや加熱水蒸気下での延伸工程での単繊維間の融着および焼成工程での熱融着や炭素繊維の性能低下を防ぐことができる。炭素繊維の性能向上の面から、アクリロニトリル系共重合体中のヒドロキシアルキルエステル含有ビニル系モノマー単位は2.5〜4.0質量%含むことがより好ましく、3.0〜3.5質量%とすることが更に好ましい。
ヒドロキシアルキルエステル含有ビニル系モノマーとしては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシメチルなどが挙げられる。ストランド強度の変動係数がより小さくする観点から、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルを用いることが好ましい。
さらに本発明ではアクリロニトリル系共重合体中に2.0×10−5〜11.0×10−5mol/gのカルボキシル基を有するようカルボンキシル基含有ビニル系モノマーを含むことが好ましい。アクリロニトリル系共重合体中のカルボキシル基含有量が2.0×10−5mol/g以上であれば耐炎化反応において耐炎化反応を十分促進させることができる。また、アクリロニトリル系共重合体中のカルボキシル基含有量が11.0×10−5mol/g以下であれば耐炎化反応の暴走を抑制することが可能になる。炭素繊維の性能および品位向上の面から、アクリロニトリル系共重合体中のカルボキシル基含有量は3.0×10−5〜9.0×10−5mol/gとすることがより好ましく、4.0×10−5〜7.0×10−5mol/gとすることが更に好ましい。
カルボキシル基含有ビニル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸又はこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられる。ストランド強度の変動係数がより小さくする観点から、メタクリル酸を用いることが好ましい。
これらの親水性モノマーを含む、アクリロニトリル系共重合体から成る炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を、焼成することで得られる炭素繊維のストランド強度の変動係数が低下する原因ははっきり分かっていないが、コモノマー成分が分子鎖中にランダムに配列されていることで、焼成工程における耐炎化反応斑が低減し、結果的に焼成斑が減少するためと推定される。
また、これらの親水性モノマーはアクリルアミドなどのアミド系モノマーと比較して毒性が低く、安全性および環境面において有利である。また、アクリルアミドなどのアミド系モノマーと比較して重合反応終了後の反応液中の未反応モノマー量を低減することも可能になる。
本発明のアクリロニトリル系共重合体は必要に応じてその他のモノマー単位を共重合させてもよい。他のモノマーとしては、アクリロニトリルと共重合可能なビニル系モノマーが好ましい。具体的には、塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル、フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニルなどが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のアクリロニトリル系共重合体の酸化深さDは次のようにして定義、測定される。まず、共重合体をジメチルホルムアミドに、質量濃度で25%となるよう溶解し、次に該溶液をガラス板上にキャストして、一定の厚みになるように塗布する。次に、ガラス板上に塗布された前記溶液を、熱風乾燥機等を用いて、空気中120℃で6時間乾燥し、溶媒を蒸発させて、厚み20〜40μmのフィルムとする。得られたフィルムを、熱風乾燥機等を用いて、空気中240℃で60分、さらに空気中250℃で60分熱処理し、耐炎化処理を行う。得られた耐炎化フィルムを樹脂包埋した上で研磨し、そのフィルム表面に対して垂直な断面を、蛍光顕微鏡を用いて倍率1500倍で観察する。断面において酸化が進んだ部分は暗い層として、進んでいない部分は明るい層として観察されるので、フィルム表面から、暗い層と明るい層の境界までの距離を少なくとも5点計測し、その算術平均を酸化深さD(μm)とする。
本発明のアクリロニトリル系共重合体の酸化深さDは3.7〜4.4μmであることが好ましい。酸化深さDが3.7μm以上あれば炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を耐炎化処理する耐炎化工程において、酸素を繊維内部まで十分に行き渡らせることが出来る酸素拡散性が得られ、高性能な炭素繊維を製造することが可能となり、得られる炭素繊維の品位も向上する。一方、4.4μm以下であれば、耐炎化工程における酸化反応が過剰に進み、得られる炭素繊維の収率が低下することもなくなる。炭素繊維の性能、品位向上の面から、アクリロニトリル系共重合体の酸化深さDは3.8μm〜4.2μmとすることがより好ましく、3.9〜4.1μmとすることが更に好ましい。
本発明のアクリロニトリル系共重合体の製造方法は、溶液重合や水系析出重合など公知のものを採用することができる。その中でも水系析出重合は、溶液重合に比べて短い滞在時間で連続生産が可能であり、簡便な反応器を使用するため、非常に生産性に優れている点から好ましい。
紡糸の際には、アクリロニトリル系共重合体を溶剤に溶解したアクリロニトリル系共重合体溶液を用いる。溶剤は、アクリロニトリル系共重合体の種類等を勘案して決定でき、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウム等の無機化合物の水溶液が挙げられる。中でもジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドが緻密な前駆体繊維が得られる点で好ましい。
アクリロニトリル系共重合体溶液中のアクリロニトリル系共重合体の濃度は、特に限定されないが、例えば、17〜25質量%が好ましく、19〜25質量%がより好ましい。17質量%以上であれば、緻密な凝固糸を得ることができ、25質量%以下であれば紡糸原液として適度な粘度と流動性が得られるためである。
本発明では上述した紡糸原液をフィルター装置に通し、各工程において混入した不純物を除去した後に紡糸して炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を得る。
炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を得る方法としては、例えば、直接凝固浴中に紡出して凝固させる湿式紡糸法、空気中で凝固させる乾式紡糸法、一旦、空気中に紡出した後、凝固浴中で凝固させる乾湿式紡糸法等、公知の紡糸方法が挙げられる。中でも、炭素繊維の強度及び弾性率をより向上させる観点から、湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法が好ましい。
湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法による紡糸賦形は、アクリロニトリル系共重合体溶液を略円形断面の吐出孔を有するノズルより凝固浴中に紡出する方法が挙げられる。
凝固浴としては、アクリロニトリル系共重合体溶液に用いられる溶剤を含む水溶液を用いることが好ましい。このような凝固浴が、溶剤回収の容易性の観点から好ましい。
凝固浴として溶剤を含む水溶液を用いる場合、該水溶液中の溶剤濃度は、30〜90質量%であることが好ましく、40〜85質量%であることがより好ましい。この範囲内であれば、前駆体繊維をボイドの発生がない緻密な構造とすることができ、高強度、高弾性率の炭素繊維が得られる。加えて、延伸性が確保でき生産性にも優れる。
凝固浴の温度は、特に限定されないが、0〜60℃が好ましい。この範囲内であれば、前駆体繊維をボイドの発生がない緻密な構造となり、高強度、高弾性率の炭素繊維が得られる。加えて、延伸性も確保でき生産性に優れたものとなる。
紡糸工程では、凝固糸を凝固浴中又は延伸浴中で延伸することができる。或いは、凝固糸を空中で延伸した後、再度、浴中で延伸することができる。更にまた、延伸の前後又は延伸中に水洗し、凝固糸を水膨潤状態とすることができる。延伸浴は、例えば、水、又はアクリロニトリル系共重合体溶液に用いられる溶剤を含む水溶液等が挙げられる。
延伸は、凝固浴又は延伸浴に凝固糸を入れ、凝固糸に張力を掛けることで行われる。延伸は、例えば、1回で所望の倍率としてもよいし、2回以上に分けて多段に延伸することで所望の倍率としてもよい。例えば、空中での延伸と延伸浴中での延伸を組み合わせ、合計で5〜15倍に延伸することとよい。このように延伸することで、炭素繊維の高強度化、高弾性率が図れる。
油剤組成物の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維への付与は、前述の浴中延伸後の水膨潤状態にある凝固糸に油剤組成物の分散液を付与することにより行うことができる。浴中延伸の後に洗浄を行う場合は、浴中延伸及び洗浄を行った後に得られる水膨潤状態にある凝固糸に油剤分散液を付与することもできる。
油剤組成物は、前駆体繊維に求める機能等を勘案して決定でき、例えば、シリコーン系油剤組成物が好ましく、必要に応じて、さらに酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、防腐剤、抗菌剤、浸透剤等の添加物を配合することができる。
油剤組成物を炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維に含浸する方法としては、ローラー法、ガイド法、スプレー法、ディップ法等、公知の方法を用いることができる。
油剤組成物が付着した前駆体繊維は、続いて乾燥緻密化される。
乾燥工程は、従来公知の方法で前駆体繊維を乾燥でき、例えば、加熱ローラーによる乾燥が好ましい乾燥方法として挙げられる。なお、加熱ローラーの数量は1個であっても2個以上であってもよい。
乾燥工程における乾燥温度は、前駆体繊維のガラス転移温度を超えた温度とすることが好ましい。このような乾燥温度で処理することで、前駆体繊維の乾燥と緻密化が達成できる。乾燥温度は前駆体繊維の含水量の変動により異なるが、例えば、100〜200℃の範囲で決定することが好ましい。
前駆体繊維は乾燥後、加熱延伸を行うことが、得られる前駆体繊維の緻密性や配向度をさらに高めることができることから好ましい。加熱延伸の方法には、加熱ローラーで搬送させながら延伸する方法や加圧水蒸気圧雰囲気下で延伸する方法がある。
乾燥工程の後、前駆体繊維は、室温のロール等を通すことにより、常温の状態まで冷却する。冷却した前駆体繊維は、ワインダーでボビンに巻き取られ、或いはケンスに振込まれて収納され、炭素繊維の製造に供される。
炭素繊維は炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を焼成して得ることができる。焼成工程は、耐炎化工程と炭素化工程とからなり、必要に応じて黒鉛化処理が設けられる。焼成工程における各処理の条件は特に限定されないが、繊維内部にボイド等の構造的欠陥が発生しにくい条件を設定するのが好ましい。
耐炎化工程は、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を酸化性雰囲気中で緊張あるいは延伸条件下で、任意の時間加熱し、耐炎化繊維とするものである。耐炎化処理の方法は、例えば、熱風循環方式、多孔板表面を有する固定熱板方式等が挙げられる。
耐炎化工程で繊維束を加熱する酸性化雰囲気の温度は200〜300℃とすることが好ましい。前記温度が200℃以上であれば耐炎化反応を暴走させること無く、効率的に耐炎化処理を行うことができる。また、300℃以下であれば炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維のアクリロニトリル骨格を熱分解させることなく耐炎化処理することが可能である。耐炎化反応の暴走及び炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の熱分解を抑制する観点から、前記温度は220℃〜280℃以下とすることが好ましく、230℃〜270℃とすることが更に好ましい。
耐炎化工程で繊維束を加熱する時間は10〜90分であることが好ましい。前記加熱する時間が10分以上であれば、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を構成する単繊維内部への酸素の拡散を充分に行うことが出来る。また、前記加熱する時間が90分以下であれば、炭素繊維の製造工程において耐炎化処理工程が生産性を損なう原因となることなく、効率よく炭素繊維を製造することが可能である。炭素繊維の性能及び生産性向上の観点から、前記加熱する時間は、30〜70分がより好ましい。
耐炎化工程で得られる耐炎化繊維の密度は、1.30〜1.45g/cmであることが好ましい。耐炎化繊維の密度が1.30g/cm以上であれば、炭素繊維の収率を低下させること無く炭素繊維を製造することが可能である。また、耐炎化繊維の密度が1.45g/cm以下であれば、炭素繊維の性能低下を抑えつつ、得られる炭素繊維の収率を向上することが可能である。得られる炭素繊維の性能保持と収率向上の観点から、耐炎化繊維束の密度は、1.33〜1.40g/cmがより好ましい。
炭素化工程は、耐炎化工程で得られた耐炎化繊維を不活性ガス雰囲気下で加熱することにより、炭素繊維を得るものである。炭素化工程は、前炭素化工程と炭化工程とからなる。前炭素化操作は、最高温度550〜800℃の不活性ガス雰囲気中、緊張下で、300〜500℃の温度領域においては、昇温速度が500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下で、耐炎化繊維を加熱し前炭素化繊維とする。この前炭素化工程により、炭素繊維の機械的特性を向上させることができる。
不活性ガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム等、公知の不活性ガスを採用できるが、経済性の面から窒素が望ましい。
炭化工程は、1200〜3000℃の不活性雰囲気中、1000〜1200℃の温度領域において、昇温速度が500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下で、前炭素化繊維を加熱し炭素繊維とする。この炭化工程により、炭素繊維の機械的特性を向上させることができる。
雰囲気ガスは、前炭素化工程の雰囲気ガスと同様である。 このようにして得られた炭素繊維は、以下の方法により得られるストランド強度が490kgf/mm以上、その変動係数が2.5%以下となり、従来の炭素繊維と同等以上のストランド強度を持ち、かつその強度変動が小さいものとなる。
<炭素繊維のストランド強度、変動係数の測定方法>
1)JIS−R−7608に準じたエポキシ樹脂含浸炭素繊維ストランド法に準じて炭素繊維のストランドを10本作成する。
2)作成した炭素繊維のストランド強度をJIS−R−7608に準じたエポキシ樹脂含浸炭素繊維ストランド法に準じて測定する。
3)得られたストランド強度の評価結果10点の平均値、標準偏差を求め、平均値を炭素繊維のストランド強度(kgf/mm)、標準偏差を平均値で割った値を炭素繊維の変動係数(%)とした。
上述した方法により、本発明のアクリロニトリル系共重合体を用いることで、ストランド強度、品位が従来品と同等以上であり、ストランド強度の変動係数がより小さい炭素繊維を製造することが可能となる。また、原料モノマーのアクリロニトリル系共重合体への転化率が高く、重合反応終了後における反応液中の未反応モノマーを低減することができ、結果的に重合排水中や大気中に放散される未反応モノマーの量を低減させ、アクリロニトリル系共重合体製造工程での排水処理の低コスト化、環境負荷低減も可能となる。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[アクリロニトリル系共重合体の組成]
ポリアクリロニトリル系共重合体の組成(各単量体単位の比率(質量%))は、H−NMR法により、以下のようにして測定した。溶媒としてジメチルスルホキシド−d溶媒を用い、共重合体を溶解させ、NMR測定装置(日本電子社製、製品名:GSZ−400型)により、積算回数40回、測定温度120℃の条件で測定し、ケミカルシフトの積分比から各単量体単位の比率を求めた。
[アクリロニトリル系共重合体中のカルボキシル基の当量]
ポリアクリロニトリル系共重合体中のカルボキシル基の当量(含有量)は、測定したH−NMRの結果より得られた共重合体の組成比からカルボキシル基のモル当量を算出し、共重合体1g当りに換算した。
[アクリロニトリル系共重合体の酸化深さDの測定]
ポリアクリロニトリル系共重合体をジメチルホルムアミドに、質量濃度で25%となるよう溶解し、次に該溶液をガラス板上にキャストして、一定の厚みになるように塗布する。次に、ガラス板に塗布した共重合体溶液をを、熱風乾燥機等を用いて、空気中120℃で6時間乾燥し、溶媒を蒸発させて、厚み20〜40μmのフィルムとする。得られたフィルムを、熱風乾燥機等を用いて、空気中240℃で60分、さらに空気中250℃で60分熱処理し、耐炎化処理を行う。得られた耐炎化フィルムを樹脂包埋した上で研磨し、そのフィルム表面に対して垂直な断面を、蛍光顕微鏡(MICROFLEX AFX DX)を用いて倍率1500倍で観察する。断面において酸化が進んだ部分は暗い層として、進んでいない部分は明るい層として観察されるので、フィルム表面から、暗い層と明るい層の境界までの距離を少なくとも5点計測し、その算術平均値を酸化深さD(μm)とした。
[転化率]
原料のモノマーのアクリロニトリル系共重合体への転化率Z(%)は下記の式より算出した。
W(kg):重合反応終了後の反応液質量
X(kg):重合反応終了後の反応液中のアクリロニトリル系共重合体質量
Y:重合反応釜に供給した全モノマー質量/重合反応釜に供給した全原料質量
Z=X/(W×Y)×100
[未反応モノマー量]
あるモノマー種に対する、重合反応後の反応液中に含まれる未反応モノマー量E(質量%)は下記の式より算出した。
A(%):原料モノマーのアクリロニトリル系共重合体への質量転化率
B(質量%):製造したアクリロニトリル系共重合体中に含有している、あるモノマー種の質量割合
C(質量%):重合反応釜に供給した全モノマーにおける、あるモノマー種の質量割合
E=C−(A/100)×B
[炭素繊維ストランド強度]
炭素繊維ストランド強度は、JIS−R−7608に準じたエポキシ樹脂含浸炭素繊維ストランド法に準じて測定した。なお、測定回数は10回とし、その平均値と標準偏差を評価の対象とした。
[炭素繊維束の欠点検査]
炭素繊維束に1.0m/秒の風をあてながら、糸速度3m/分以下の速度で50m走行させ、該炭素繊維束に強力ライトを当て、100mあたりの炭素繊維束に存在する毛羽、毛玉の欠点数を目視で数え、下記評価基準にて欠点検査を行った。
○:欠点数が10個未満。
△:欠点数が10個以上、20個未満。
×:欠点数が20個以上。
実施例1
[アクリロニトリル系共重合体の製造]
アクリロニトリル系共重合体は、オーバーフロー式の重合容器に、以下のように各原料を供給すると共に重合容器内の温度を50℃に維持しながら攪拌し、オーバーフローした重合体スラリーを洗浄、乾燥して製造した。重合容器内には、常に脱イオン水70.35質量%と、モノマー29.32質量%(組成比・・・アクリロニトリル(AN):2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):メタクリル酸(MAA)(質量比)=97.5:1.8:0.7)と、過硫酸アンモニウム0.13質量%、亜硫酸水素アンモニウム0.20質量%、硫酸第一鉄7水和物2質量ppmとを、各原料をそれぞれ連続して供給すると共に、pH3.0となるように硫酸を適量添加した。得られたアクリロニトリル系共重合体の組成、カルボキシル基の当量、酸化深さDは表1に示したとおりである。
また、このときの転化率および未反応モノマー量は表2に示したとおりであり、転化率は85%、未反応モノマー量はANが15質量%、AN以外が0.12質量%となった。
[炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造]
上記で得たアクリロニトリル系共重合体21質量%、ジメチルアセトアミド79質量%を混合し、加熱溶解したあとフィルター装置にて濾過を行ない、紡糸原液を得た。
この紡糸原液を濃度67質量%、温度38℃のジメチルアセトアミド水溶液からなる凝固浴中に、孔径75μm、孔数24000の紡糸ノズルより吐出し凝固糸を得た。得られた凝固糸を空気中で1.1倍に延伸し、続いて熱水中で3.0倍に延伸しながら洗浄、脱溶剤した。脱溶剤した凝固糸をアミノ変性シリコーン系油剤分散液中に浸漬し、140℃の加熱ローラーで緻密乾燥化した。次いで、圧力0.22MPaの蒸気中にて3.0倍に延伸し、単繊維繊度1.2dtexの炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を製造した。
[炭素繊維の製造]
炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を、空気雰囲気下中で230〜260℃の温度勾配を有する熱風循環式耐炎化炉に70分間通して(耐炎化処理)耐炎化繊維を得た。その耐炎化繊維を、窒素雰囲気下最高温度670℃で、伸張率2.0%で加熱処理し、更に窒素雰囲気下最高温度1350℃で、伸張率−2.5%で加熱処理して(炭素化処理)炭素繊維を得た。
表2に示したとおり、得られた炭素繊維のストランド強度の平均値は490kgf/mm、変動係数は1.5%となった。また、炭素繊維の欠点も少なく、品位は良好であった。
実施例2
重合容器内に供給したモノマー組成比がアクリロニトリル(AN):2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):メタクリル酸(MAA)(質量比)=96.7:2.7:0.6)とした以外は実施例1と同様に行った。得られたアクリロニトリル系共重合体の組成、カルボキシル基の当量、酸化深さDは表1に示したとおりである。また、このときの転化率および未反応モノマー量は表2に示したとおりであり、転化率は85%、未反応モノマー量はANが15質量%、AN以外が0.07質量%となった。
また、表2に示したとおり、得られた炭素繊維のストランド強度の平均値は505kgf/mm、変動係数は1.9%となり、炭素繊維の欠点も少なく、品位は良好であった。
実施例3
重合容器内に供給したモノマー組成比がアクリロニトリル(AN):2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):メタクリル酸(MAA)(質量比)=96.7:2.9:0.4)とした以外は実施例1と同様に行った。得られたアクリロニトリル系共重合体の組成、カルボキシル基の当量、酸化深さDは表1に示したとおりである。また、このときの転化率および未反応モノマー量は表2に示したとおりであり、転化率は86%、未反応モノマー量はANが14質量%、AN以外が0.03質量%となった。
また、表2に示したとおり、得られた炭素繊維のストランド強度の平均値は510kgf/mm、変動係数は1.5%となり、炭素繊維の欠点も少なく、品位は良好であった。
実施例4
重合容器内に供給したモノマー組成比がアクリロニトリル(AN):2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):メタクリル酸(MAA)(質量比)=96.3:3.4:0.3)とした以外は実施例1と同様に行った。得られたアクリロニトリル系共重合体の組成、カルボキシル基の当量、酸化深さDは表1に示したとおりである。また、このときの転化率および未反応モノマー量は表2に示したとおりであり、転化率は86%、未反応モノマー量はANが14質量%、AN以外が0.09質量%となった。
また、表2に示したとおり、得られた炭素繊維のストランド強度の平均値は500kgf/mm、変動係数は2.2%となり、炭素繊維の欠点も少なく、品位は良好であった。
比較例1
重合容器内に供給したモノマー組成比がアクリロニトリル(AN):アクリルアミド(AAm):メタクリル酸(MAA)(質量比)=96.3:3.1:0.6)とした以外は実施例1と同様に行った。得られたアクリロニトリル系共重合体の組成、カルボキシル基の当量、酸化深さDは表1に示したとおりであり、酸化深さDが実施例1と比較して低かった。また、このときの転化率および未反応モノマー量は表2に示したとおりで、転化率は78%と実施例1と比較して非常に低い値となった。また、未反応モノマー量はANが21質量%、AN以外が0.97質量%となり、実施例1と比較して、未反応モノマー量も非常に多かった。
また、表2に示したとおり、得られた炭素繊維のストランド強度の平均値は520kgf/mm、変動係数は4.3%となり、実施例1と比較して、ストランド強度自体は高いものの変動係数は大きかった。また、炭素繊維の欠点も実施例1と比較すると非常に多かった。
比較例2
重合容器内に供給したモノマー組成比がアクリロニトリル(AN):2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(質量比)=95.8:4.2)とした以外は実施例1と同様に行った。得られたアクリロニトリル系共重合体の組成、カルボキシル基の当量、酸化深さDは表1に示したとおりであり、酸化深さDが実施例1と比較して高かった。また、このときの転化率および未反応モノマー量は表2に示したとおりで、転化率は82%と実施例1と比較して低い値となった。また、未反応モノマー量はANが18質量%、AN以外が0.26質量%となり、実施例1と比較して、未反応モノマー量も多かった。
また、表2に示したとおり、得られた炭素繊維のストランド強度の平均値は485kgf/mm、変動係数は3.1%となり、実施例1と比較して、ストランド強度は若干低下した。また、炭素繊維の欠点も実施例1と比較すると多かった。
比較例3
重合容器内に供給したモノマー組成比がアクリロニトリル(AN):2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA):メタクリル酸(MAA)(質量比)=97:1.8:0.9)とした以外は実施例1と同様に行った。得られたアクリロニトリル系共重合体の組成、カルボキシル基の当量、酸化深さDは表1に示したとおりであり、酸化深さDが実施例1と若干低かった。また、このときの転化率および未反応モノマー量は表2に示したとおりで、転化率は83%と実施例1と比較して若干に低い値となった。また、未反応モノマー量はANが17質量%、AN以外が0.21質量%となり、実施例1と比較して、未反応モノマー量も若干多かった。
また、表2に示したとおり、得られた炭素繊維のストランド強度の平均値は480kgf/mm、変動係数は3.1%となり、実施例1と比較して、ストランド強度は若干低下した。また、炭素繊維の欠点も実施例1と比較すると多かった。

Claims (2)

  1. アクリロニトリル単位95.0〜97.0質量%、ヒドロキシアルキルエステル含有ビニル系モノマー単位2.5〜4.0質量%及びカルボキシル基含有ビニル系モノマー単位を含むアクリロニトリル系共重合体であって、カルボキシル基の含有量が5.0×10 −5 〜8.5×10 −5 mol/gであるアクリロニトリル系共重合体
  2. 請求項1に記載のアクリロニトリル系共重合体からなる炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を焼成して、以下の方法により測定される炭素繊維のストランド強度が490kgf/mm 以上であり、その変動係数が2.5%以下である炭素繊維を得る炭素繊維の製造方法。
    <炭素繊維のストランド強度、変動係数の測定方法>
    1)JIS−R−7608に準じたエポキシ樹脂含浸炭素繊維ストランド法に準じて炭素繊維のストランドを10本作成する。
    2)作成した炭素繊維のストランド強度をJIS−R−7608に準じたエポキシ樹脂含浸炭素繊維ストランド法に準じて測定する。
    3)得られたストランド強度の評価結果10点の平均値、標準偏差を求め、平均値を炭素繊維のストランド強度(kgf/mm )、標準偏差を平均値で割った値を炭素繊維の変動係数(%)とした。
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