JP2017141525A - 耐炎化繊維束およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高品質な炭素繊維を生産性良く得るために適したポリアクリロニトリル系の耐炎化繊維束およびその製造方法を提供すること。【解決手段】ポリアクリロニトリル系の耐炎化繊維であって、単糸の直径が8〜15μm、繊維比重が1.30〜1.45であり、繊維軸に対して垂直方向の断面に二重構造を有し、二重構造の中心部の繊維断面全体に占める断面積比が0.01〜15%である耐炎化繊維。さらには耐炎繊維が繊維束を形成していることや、フィラメント数が1000〜10万本であること、繊維幅が0.2〜10mm/K(1000本)であることが好ましい。また製造方法は、ポリアクリロニトリル系の前駆体繊維を、発熱開始温度のマイナス20℃以上プラス5℃以下の設定温度にて繊維密度が1.23g/cm3となるまで第1耐炎化処理し、次いで第2耐炎化処理する耐炎化繊維の製造方法である。さらには、第1耐炎化処理時間が10分以上であることや、第2耐炎化処理温度が、第1耐炎化処理温度よりも20℃以上高い温度であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアクリロニトリル系の耐炎化繊維束およびその製造方法に関するものである。
従来、炭素繊維製造用にアクリル繊維を前駆体繊維として使用し、耐炎化及び炭素化の各処理を経ることにより、高性能な炭素繊維が得られることは広く知られており、工業的にも広く実施されている。そしてそのような炭素繊維の具体的な用途としては、スポーツ・レジャー用品用途から航空宇宙分野、特に航空機の一次構造材にまで展開が図られている。さらに、炭素繊維の高い比強度、比弾性の特性を生かして最終製品を軽量化し、省エネルギー化や排出COを削減すべく各産業界が注目し、研究が行われている。
また各種用途の開発の進捗に伴い、炭素繊維にはさらに高性能、低コスト、かつ取扱性に優れる、高品質な性能が要求されてきている。そして高性能炭素繊維の製造のためには、原料繊維であるアクリル系の前駆体繊維や、途中工程の耐炎化繊維の特性は、目的物である炭素繊維の性能に直接影響するため、研究開発がさらに深化してきている。
一般にアクリル系の前駆体繊維から炭素繊維を製造する場合、最初に200〜300℃の酸化性ガス雰囲気中で、いわゆる耐炎化処理を行い耐炎化繊維にする。次いで、350℃以上の不活性ガス雰囲気中で炭素化処理又は黒鉛化処理を行い、炭素繊維を完成させる。
これらの工程の内、特に耐炎化処理は、急激に反応を進めると発生する熱エネルギーにより繊維自体が燃焼してしまうことから、反応を緩やかに進行させる必要があった。生産性の観点や工程安定性の観点からは、この耐炎化処理は炭素繊維の製造工程の重要な工程なのである。しかし生産性を高めるべく耐炎化処理を極力短時間で行うことを単純に目的とした場合、アクリル繊維が燃焼しないできるだけ上限の温度で耐炎化処理を行うこととなるが、断糸が起こり逆に生産効率が低下する場合や、部分的に斑等が発生し得られる炭素繊維の品質が低下するという問題があった。高温での耐炎化を行うと、単繊維の内外で耐炎化反応の速度差により構造差異が発生し、炭素繊維の品質が低下するのである。
そこで例えば特許文献1では空気中で加熱処理した後、耐炎化処理後半において高酸素濃度の雰囲気で耐炎化処理を行う方法が提案されている。しかしながら、耐炎化初期に発生した単繊維内外の構造差異は、十分に解消されないという問題があった。
また特許文献2では230〜290℃に加熱された固定熱板に繰り返し接触させた後に、酸化性雰囲気中にて耐炎化熱処理する方法が提案されている。このような固定熱板を用いる方法は耐炎化時間の短縮には有効なものの、得られた繊維に融着などの斑が発生するという問題があった。
また特許文献3では、あらかじめ140〜190℃の温度で乾熱処理し次いで耐炎化処理を行い、引張強度に優れた炭素繊維の製造方法が開示されている。しかし品質の向上こそみられるものの、生産性に関しては十分では無かった。
従来技術によっては、生産性を損なわずに十分な品質を持つ炭素繊維を得ることは困難だったのである。
特開平10−251923号公報 特開平6−158435号公報 特開2000−96353号公報
本発明の目的は、高品質な炭素繊維を生産性良く得るために適したポリアクリロニトリル系の耐炎化繊維束およびその製造方法を提供することにある。
本発明の耐炎化繊維は、ポリアクリロニトリル系の耐炎化繊維であって、単糸の直径が8〜15μm、繊維比重が1.30〜1.45であり、繊維軸に対して垂直方向の断面に二重構造を有し、二重構造の中心部の繊維断面全体に占める断面積比が0.01〜15%であることを特徴とする。
さらには耐炎繊維が繊維束を形成していることや、フィラメント数が1000〜10万本(1K〜100K)であること、繊維幅が0.2〜10mm/K(1000本)であることが好ましい。
また、本発明の耐炎化繊維の製造方法は、ポリアクリロニトリル系の前駆体繊維を、発熱開始温度のマイナス20℃以上プラス5℃以下の設定温度にて繊維密度が1.23g/cmとなるまで第1耐炎化処理し、次いで第2耐炎化処理することを特徴とする。
さらには、第1耐炎化処理時間が10分以上であることや、第2耐炎化処理温度が、第1耐炎化処理温度よりも20℃以上高い温度であること、第1耐炎化処理前のポリアクリロニトリル系の前駆体繊維の密度が1.19g/cm以下であることが好ましい。
また本発明は、本発明の耐炎化繊維を炭素化処理する炭素繊維の製造方法を包含する。
本発明によれば、従来よりも高品質な炭素繊維を生産性良く得るために適したポリアクリロニトリル系の耐炎化繊維束およびその製造方法が提供される。
本発明の耐炎化繊維は、ポリアクリロニトリル系のものであり、その単糸の直径が8〜15μm、繊維比重が1.30〜1.45の耐炎化繊維である。
このような本発明のポリアクリロニトリル系の耐炎化繊維は、炭素繊維を製造するための原料(前駆体)となるポリアクリロニトリル系重合体から得られる繊維である。そして本発明にて用いられるポリアクリロニトリル系重合体はアクリロニトリルが主に重合された重合体であって、必要に応じ、さらに共重合可能なコモノマーを含んでいても良い。アクリロニトリルと共重合可能なコモノマーとしては、例えばアクリル酸、イタコン酸等の酸類及びその塩類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルといったアクリル酸エステル類、アクリルアミドといったアミド類等が挙げられる。
本発明の耐炎化繊維は、前駆体となるポリアクリロニトリル系の繊維を酸化性ガス雰囲気中で加熱する耐炎化処理を行って得られる繊維であるが、本発明ではその単糸の直径が8〜15μm、繊維比重が1.30〜1.45であって、繊維軸に対して垂直方向の断面に二重構造を有し、二重構造の中心部の繊維断面全体に占める断面積比が0. 01〜15%である繊維である必要がある。
そして本発明の耐炎化繊維は、そのようなポリアクリロニトリル系の繊維からなる繊維束であることが好ましく、その繊維束を構成する単繊維の総数、即ちその総フィラメント数としては、製造効率の観点から1000本〜10万本(1K〜100K)の範囲であることが好ましい。さらには2000本〜5万本(2K〜50K)の範囲が好ましい。また、最終的な繊維束の幅としては0.2〜10mm/K(1000本)の範囲であることが、さらには0.5〜5mm/Kの範囲であることが好ましい。
本発明の耐炎化繊維を構成する一本の単糸の直径としては、8〜15μmの範囲であることが必要であり、9〜12μmの範囲であることが好ましい。繊維径が15μmを超えて太い場合は、後述する耐炎化繊維の二重構造が大きくなり易く、品質が低下する。また、単糸の直径が8μmよりも細い場合には二重構造こそ小さくなるものの、繊維の生産量を上げることができない。
また本発明の耐炎化繊維の繊維比重は1.30〜1.45g/cmの範囲であることが必要である。好ましくは1.32〜1.42g/cm、さらには1.34〜1.40g/cmの範囲であることが好ましい。耐炎化繊維の密度が1.30g/cm未満である場合には、ポリアクリロニトリルの環化・酸化が不十分であって、後の炭素化工程にて断糸し易いばかりか、得られる炭素繊維の強度が低値となる。耐炎化繊維の密度は1.45g/cmであれば十分に断糸なく炭素化工程を通過させる事が可能であって、耐炎化の段階でそれ以上の密度とする必要性は低い。
そして本発明の耐炎化繊維は、繊維軸に対して垂直方向の断面に二重構造を有し、その二重構造の中心部の繊維断面全体に占める断面積比(コア率)が0.01〜15%の範囲であることが必要である。
ここで耐炎化繊維の二重構造とは、繊維軸に対して垂直方向である断面の構造を示し、薄片状にされた耐炎化繊維を光学顕微鏡によって観察することで確認できる。本発明において耐炎化繊維を薄片状にする方法は、耐炎化繊維をパラフィンに包埋し、ミクロトームを用いて1〜5μmの薄片を切り出す方法が採用される。この耐炎化繊維の二重構造は、ポリアクリロニトリルの環化・酸化状態の違いを反映するものであり、この二重構造の中心部の繊維断面全体に占める断面積比が15%の範囲を超える場合には、繊維構造の均一性が低いことを反映し、炭素繊維の品質に劣るものとなる。このような二重構造は通常は少ない方が好ましく、繊維断面積に対する中心部の断面積の比率としては、さらには0.1〜14%、特には0.5〜12%であることが好ましい。ただし一般に二重構造は少ない方が好ましいと言えるものの、最終的な炭素繊維の物性を考えたときに、0%である必要は無い。
このような本発明の耐炎化繊維は、もう一つの本発明である耐炎化繊維の製造方法により得ることができる。そして本発明の耐炎化繊維の製造方法とは、ポリアクリロニトリル系前駆体繊維を、発熱開始温度のマイナス20℃以上プラス5℃以下の設定温度にて繊維密度が1.23g/cmとなるまで第1耐炎化処理し、次いで第2耐炎化処理する製造方法である。また耐炎化処理を行う条件としては、酸化性ガス雰囲気中であることが好ましく、酸化性ガス雰囲気としては通常、空気が用いられる。
またこの時、第1耐炎化処理を行う前のポリアクリルニトリル前駆体繊維としては、その密度が1.19g/cm以下であることが好ましい。さらにはポリアクリロニトリル系繊維の密度は1.17〜1.19g/cmの範囲であることが好ましい。そして耐炎化処理を行うに際して繊維束の前処理は特には必要無いが、繊維に付着した水分を除去する等の目的で熱処理を行っても良い。そのような熱処理条件としては、発熱開始温度以下の温度で、10分以下の短時間処理が好ましい。それ以上の温度及び時間での熱処理を行った場合は、耐炎化反応が進行し目的の耐炎化繊維を得る事が困難となる。
この本発明の耐炎化繊維の製造方法においては、第1耐炎化処理の設定温度が重要であって、発熱開始温度をTとした時、耐炎化処理装置の設定温度はT−20〜T+5℃、好ましくはT−15〜T℃、より好ましくはT−10〜T−5℃とすることが最適である。例えば発熱開始温度が230℃の場合には、第1耐炎化処理の設定温度は210〜235℃の範囲であることが、好ましくは215〜230℃、より好ましくは220〜225℃の範囲とすることが最適である。ここで本発明で用いる発熱開始温度Tとは、DSCにて測定される発熱が開始する温度(℃)であって、用いるポリアクリロニトリル系のコモノマーの組成等に依存する値である。
ところでこの耐炎化処理の温度としては、この発熱開始温度を超えてより高い温度の方が、その繊維内部の反応が早く進行し、短時間で耐炎化処理を行うことが可能となるために汎用されていた。一方でこのような高温の耐炎化処理は、耐炎化繊維の二重構造が発生する要因となることも知られていた。生産性と高品質の両立は困難だったのである。
しかしながら、本発明者らは繊維密度が1.23g/cmとなるまで、第1耐炎化処理の設定温度を発熱開始温度Tのマイナス20℃以上プラス5℃以下に低く抑えることにより、繊維内部の二重構造の発生を低く抑えながら高い生産性を保つことが可能となることを見出したのである。これは、耐炎化繊維の二重構造が、主に耐炎化初期(本発明の第1耐炎化処理時)に発生し、その後の耐炎化反応(本発明の第2耐炎化処理時)には、ほとんど二重構造が拡大されないとの知見に基づくものである。もっとも耐炎化初期(第1耐炎化処理時)の温度がT−20℃未満であれば、二重構造が生成されにくく高品質とはなるものの、耐炎化処理には多大の時間を要するため、生産性が阻害され工業的には不適当である。逆に従来行われていたように、T+5℃を超える温度で処理した場合には、反応性の顕著な増大とともに、二重構造の面積が増大し品質が低下した繊維しか得ることができなかったのである。
本発明の耐炎化繊維の製造方法では、上記のような低温の第1耐炎化処理により、耐炎化繊維の密度を1.23g/cm以上とすることが重要であるが、さらに好ましくは1.25g/cm以上、特には1.27g/cm以上の密度に至るまで、第1耐炎化処理を行うことが好ましい。第1耐炎化処理後の繊維の密度としては最大でも1.45g/cm以下であれば十分であり、さらには1.40g/cm以下、特には1.30g/cm以下でも良い。
繊維束の密度が上記に至るまでの第1耐炎化処理を行う時間としては10分以上であることが好ましい。さらには20〜180分の範囲が、特には30〜150分が好ましく、40〜120分の範囲が最適である。この第1耐炎化処理の処理時間を短くしすぎると、第2耐炎化処理に最適な繊維密度を得る事が困難となる。一方で長時間の熱処理を行う事は、品質の向上につながらないばかりか、明らかに生産性の低下を招いてしまう。本発明の製造方法においては、第1耐炎化処理の設定温度や処理時間を調整することにより、目的に最適な繊維束が得られるのである。なお、第1耐炎化処理においては同一の温度を維持しても良く、Tマイナス20℃以上プラス5℃以下の範囲で段階的に変更しても良い。
本発明の耐炎化繊維の製造方法においては、上記の第1耐炎化処理に引き続き、第2耐炎化処理を行う。第2耐炎化処理の温度条件としては、耐炎化処理を完了するに至るまで第1耐炎化処理と同じ温度、すなわち熱処理温度をT−20〜T+10℃の温度範囲に維持しても良い。しかし耐炎化処理が終了するまでに時間を要するため、また耐炎化処理後半の熱処理温度は、繊維の二重構造の生成にはあまり影響を及ぼさないことが見出されたため、第2耐炎化処理の温度は第1耐炎化処理温度よりも高い温度設定、具体的には20℃高い温度であることが好ましい。このように第2耐炎化処理の温度を高める事により、耐炎化工程全体に要する時間を、削減できるのである。さらにはこの第2耐炎化処理の装置の設定温度としては、発熱開始温度T〜T+100℃の温度範囲が好ましく、T+5〜T+70℃の範囲が、特にはT+10〜T+50℃の範囲がさらに好ましい。
また、本発明で処理する繊維は、生産性の観点から繊維束であることが好ましく、耐炎化処理時の炉を通過する繊維束の幅としては、0.3〜10mm/K(1000本)の範囲であることが、さらには0.5〜5mm/Kの範囲であることが好ましい。本発明で用いられるポリアクリロニトリル系繊維の耐炎化反応は発熱を伴う反応であって、繊維束を構成する単繊維が密集している部分では、繊維束中心部の温度が雰囲気温度よりも高くなる傾向にあるため、処理時には上記のような扁平な繊維束であることが好ましい。
また耐炎化処理中における繊維の延伸比は特には限定されないが、通常0.90〜1.30倍の間であることが好ましい。この延伸倍率は、必要とする繊維の特性や工程の安定性に応じて、適宜変更することが可能である。
このような本発明の製造方法によって得られる耐炎化繊維の密度としては、先に述べたように1.30〜1.45g/cmの範囲とすることが好ましい。さらに好ましくは1.32〜1.42g/cm、特には1.34〜1.40g/cmの範囲であることが好ましい。
このような本発明の耐炎化繊維は、引き続き炭素化処理又は黒鉛化処理を行うことにより高品質な炭素繊維を製造することが可能となる。炭素化処理は公知の方法を用いる事が出来、通常は300℃以上の不活性ガス雰囲気中、例えば窒素雰囲気中にて行われる。さらには350〜2500℃の温度の不活性ガス雰囲気中で炭素化することが好ましい。そしてこのような本発明のアクリロニトリル系の耐炎化繊維を用いて得られる炭素繊維は、高強度かつ高品質であるため、複合材料の強化繊維としてスポーツ、航空宇宙用途などに広く用いることが可能である。
以下に、本発明に関して実施例を用いて具体的に説明するが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。なお、本例にて挙げた項目は次の手順で評価した。
(1)発熱開始温度
ポリアクリロニトリル系の繊維束を1〜2mm程度に切り、その繊維10mgを取り出し、示差走査熱量計(マック・サイエンス社製、DSC3100)を用いて熱特性を測定した。測定の雰囲気は空気雰囲気、10℃/分の昇温速度にて室温〜300℃まで昇温し、得られた最初のピークの変局点における接線とベースラインとの交点を発熱開始温度とした。
(2)繊維密度
JIS R 7603に規定された方法の内、液置換法に基づき、液体にアセトンを用いて繊維密度を測定した。
(3)耐炎化繊維のコア率
繊維の断面の薄片を作成し、その断面を観察する事により繊維の二重構造のうち、中心部(コア)の繊維断面全体に占める断面積比率(コア率)を求めた。手順として、まず測定対象の単繊維を約100本取出して溶融したパラフィンに包埋し、そのパラフィンを固化した後にミクロトームを用いて厚み5μmの繊維軸に対して垂直な断面の薄片を作成し、さらにこの薄片をスライドガラスに載せ、マイクロスコープ(キーエンス社製 VH−8000)を用いて倍率2,000倍にて繊維断面画像を得た。二重構造を有する繊維は、この断面画像において繊維中心部が異なる色相で観察されるため、各単繊維断面の断面積及び繊維中心部(コア)の断面積を求め、次の計算式でコア率を算出した。
コア率(%)=(コアの断面積)/(繊維の断面積)×100
なお、本実施例においては、この測定を50本の単繊維に対して行い、その平均値をコア率として示した。
(4)炭素繊維引張強度
炭素繊維の引張強度は、JIS R 7608に規定された方法により測定した。
(5)生産性指数
ある固定の耐炎化の処理装置における生産性を示すため、次の計算式により生産性の指数を算出した。指数は高い場合において、生産性が良い事を示す。
生産性指数 = 繊度(tex)/耐炎化処理に要する時間(時)
[実施例1]
アクリロニトリル95重量%、アクリル酸メチル4重量%、イタコン酸1重量%の組成からなるポリアクリロニトリル系の紡糸原液を湿式紡糸し、単繊維繊度1.1dtex、繊維径11μm、フィラメント数12000本のポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を得た。該繊維の密度は1.18g/cm、発熱開始温度は230℃であった。
次に、この繊維束に対して2段階の温度で耐炎化処理を行った。まず、繊維束を幅10mmの状態でトータルの延伸比率が1.0倍、合計加熱時間60分間220℃の空気雰囲気の炉を通過させて第1耐炎化処理を行った。この時点で得られた繊維束の密度は1.235g/cmであった。
さらにこの耐炎化途中の繊維束を幅10mmの状態でトータルの延伸比率が1.0倍、合計加熱時間20分間、250℃の空気雰囲気の炉を通過させて第2耐炎化処理を行い、耐炎化繊維束を得た。得られた耐炎化繊維の密度は1.355g/cm、コア率は5%であった。
また、この耐炎化繊維束を600℃の窒素雰囲気下で熱処理を行った後、さらに1200℃の窒素雰囲気下で炭素化処理を行い、炭素繊維を得た。この炭素繊維に対して表面処理を行った後、炭素繊維の引張強度を測定したところ、5150MPaと十分に高強度の炭素繊維束が得られた。耐炎化繊維および炭素繊維の製造条件及び評価結果を表1に記した。
[実施例2〜7]
繊維径及び処理条件を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、耐炎化繊維及び炭素繊維を得た。製造条件及び評価結果を表1に併せて記した。
[実施例8]
アクリル酸メチルに代えてアクリルアミドを用い、そのポリアクリロニトリル繊維の組成比をアクリロニトリル95重量%、アクリルアミド3重量%、イタコン酸2重量%に変更した繊維を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリアクリロニトリル系前駆体繊維束、耐炎化繊維及び炭素繊維を得た。得られた前駆体繊維の発熱開始温度は225℃であった。製造条件及び評価結果を表1に併せて記した。
Figure 2017141525
[比較例1〜5]
処理条件を表1に記載の通り変更した事以外は、実施例1と同様にして耐炎化繊維及び炭素繊維を得た。製造条件及び評価結果を表1に併せて記した。
比較例1は第1耐炎化処理の温度が高く急激に耐炎化反応が進行するために、得られた耐炎化繊維の二重構造が発達してコア率が高く、最終的に得られた炭素繊維の強度もまた低いものであった。比較例2は、第1耐炎化処理における耐炎化反応の進行度が十分でなく、第2耐炎化処理において二重構造が発達してコア率が高く、最終的に得られた炭素繊維の強度もまた低いものであった。比較例3は第2耐炎化処理を行わずに第1耐炎化処理のみを長時間行ったため、品質には優れるものの生産性に劣る結果となった。比較例4は第2耐炎化処理を行わずに耐炎化処理を途中で中止したため、耐炎化繊維の密度が低く耐炎化反応が十分に行われておらず、炭素化処理ができなかった。比較例5は第1耐炎化処理温度が高く、繊維束が急激に加熱されたために燃焼して断糸し、耐炎化糸を得ることが出来なかった。製造条件及び評価結果を表2に併せて記した。
Figure 2017141525

Claims (9)

  1. ポリアクリロニトリル系の耐炎化繊維であって、単糸の直径が8〜15μm、繊維比重が1.30〜1.45であり、繊維軸に対して垂直方向の断面に二重構造を有し、二重構造の中心部の繊維断面全体に占める断面積比が0.01〜15%であることを特徴とする耐炎化繊維。
  2. 耐炎繊維が繊維束を形成している請求項1記載の耐炎化繊維。
  3. フィラメント数が1000〜10万本(1K〜100K)である請求項1または2記載の耐炎化繊維。
  4. 繊維幅が0.2〜10mm/K(1000本)である請求項1〜3のいずれか1項である耐炎化繊維。
  5. ポリアクリロニトリル系の前駆体繊維を、発熱開始温度のマイナス20℃以上プラス5℃以下の設定温度にて繊維密度が1.23g/cmとなるまで第1耐炎化処理し、次いで第2耐炎化処理することを特徴とする耐炎化繊維の製造方法。
  6. 第1耐炎化処理時間が10分以上である請求項5記載の耐炎化繊維の製造方法。
  7. 第2耐炎化処理温度が、第1耐炎化処理温度よりも20℃以上高い温度である請求項5または6記載の耐炎化繊維の製造方法。
  8. 第1耐炎化処理前のポリアクリロニトリル系の前駆体繊維の密度が1.19g/cm以下である請求項5〜7のいずれか1項である耐炎化繊維の製造方法。
  9. 請求項1〜4のいずれか1項記載の耐炎化繊維を炭素化処理する炭素繊維の製造方法。
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