JP2012117161A - 炭素繊維束の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】炭素化収率を低下させることなく効率的に炭素繊維束を製造する方法の提供。
【解決手段】アクリル系前駆体繊維束を酸化性雰囲気中、200〜300℃で加熱し、密度(ρ)が1.28〜1.42g/cmである耐炎化繊維束を得る耐炎化工程と、得られた耐炎化繊維束を不活性雰囲気中、300〜400℃で20〜90秒加熱する第一の前炭素化工程と、引き続き不活性雰囲気中、400℃を超えて500℃以下で20〜40秒加熱して前炭素化繊維束を得る第二の前炭素化工程と、得られた前炭素化繊維束を不活性雰囲気中、1000℃以上で加熱する炭素化工程とを有する、炭素繊維束の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維束の製造方法に関する。
炭素繊維は、工業的には前駆体繊維を200〜300℃の空気中で熱処理する耐炎化工程と、1000℃以下の不活性雰囲気中で熱処理する前炭素化工程と、1000℃以上の不活性雰囲気中で熱処理する炭素化工程を経て製造されるのが一般的である。この際、前駆体繊維に含まれる酸素原子、窒素原子、水素原子などが熱分解により脱離し、最終的に炭素含有量が95%以上の炭素繊維となる。
前駆体繊維の原料としては、ポリアクリロニトリルモノマーが多く用いられている。ポリアクリロニトリルモノマーの炭素含有量は約68%であり、その前駆体繊維を基準にした炭素繊維の収率(以下、単に「炭素化収率」という。)は、理想的な場合でも約68%である。しかし、実際は炭素原子の脱離も生じるため、炭素化収率は50%前後であるのが実状である。
そのため、炭素化収率の低さも含めて、炭素繊維の製造コストに占める原料コストの割合は大きく、炭素繊維の製造コストを低減するには原料コストをいかに削減するかが重要である。
これまで、炭素化収率を向上させるために、いくつかの技術が提案されている。例えば、特許文献1ではHS、SOなどの硫黄化合物、特許文献2ではヨウ素ガス、特許文献3ではフッ素系化合物やシリコーン系化合物を含む有機化合物、特許文献4では有機化合物を用いて、炭素繊維を製造する方法がそれぞれ開示されている。
また、特許文献5〜7には、炭素繊維を短時間で炭素化収率よく製造する方法が開示されている。
特公昭62−54888号公報 特開2002−160912号公報 特開2001−248025号公報 特開2005−113305号公報 特公昭53−22576号公報 特開昭58−174630号公報 特公昭62−54889号公報
しかしながら、特許文献1〜4に記載の方法では、炭素繊維の製造の際に硫黄化合物、ヨウ素ガス、有機化合物を用いているため、これらに起因した廃棄物や排気ガスが発生しやすく、廃棄物や排気ガスの処理に設備投資やユーティリティコストがかかりやすかった。そのため、炭素繊維の製造コストは高くなり、工業的な技術として適用するのは困難であった。
また、特許文献5〜7に記載の方法は、炭素繊維を炭素化収率よく製造することはできるものの、設備投資やユーティリティコストまでは考慮されていない。従って、炭素化収率を低下させることなく効率的にアクリル系炭素繊維束を製造する方法としては不十分であり、さらなる改良が望まれていた。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、炭素化収率を低下させることなく効率的に炭素繊維束を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明の炭素繊維束の製造方法は、アクリル系前駆体繊維束を酸化性雰囲気中、200〜300℃で加熱し、密度(ρ)が1.28〜1.42g/cmである耐炎化繊維束を得る耐炎化工程と、得られた耐炎化繊維束を不活性雰囲気中、300〜400℃で20〜90秒加熱する第一の前炭素化工程と、引き続き不活性雰囲気中、400℃を超えて500℃以下で20〜40秒加熱して前炭素化繊維束を得る第二の前炭素化工程と、得られた前炭素化繊維束を不活性雰囲気中、1000℃以上で加熱する炭素化工程とを有する。
また、前記第一の前炭素化工程における耐炎化繊維束の投入密度が1500〜5000dtex/mmであることが好ましい。
さらに、前記耐炎化繊維束の密度(ρ)と、第一の前炭素化工程における加熱時間(t1)が、下記式(1)を満たすことが好ましい。
5≦(ρ−1.18)×t1≦10 ・・・(1)
本発明の炭素繊維束の製造方法によれば、炭素化収率を低下させることなく効率的に炭素繊維束を製造できる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の炭素繊維束の製造方法は、アクリル系前駆体繊維束を熱処理して炭素繊維束を得るものであり、耐炎化工程と、第一の前炭素化工程および第二の前炭素化工程(これらを総称して「前炭素化工程」という。)と、炭素化工程とを有する。
<アクリル系前駆体繊維束>
本発明に好適に用いることができるアクリル系前駆体繊維束(以下、単に「前駆体繊維束」という。)は、アクリル系重合体を紡糸して得られる繊維である。
本発明に好適に用いることができる前駆体繊維束の原料であるアクリル系重合体としては、アクリロニトリルの単独重合体でもよいし、アクリロニトリル及びこれと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体でもよいが、共重合体が好ましい。共重合体の場合、アクリロニトリル単位の割合は90質量%以上、ビニル系モノマー単位の割合は10質量%以下が好ましい。ビニル系モノマー単位の割合が10質量%以下であれば、後述する耐炎化工程での単繊維間の接着を抑制できる。
ビニル系モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩および低級アルキルエステル類、アクリルアミドおよびその誘導体、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸およびそれらの塩類またはアルキルエステル類などの共重合体などが挙げられる。
アクリル系重合体を重合する方法としては特に限定されないが、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などを適用することができる。
アクリル系重合体を紡糸する際に使用する溶媒としては特に限定されないが、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド、塩化亜鉛水溶液、硝酸などの有機系溶媒や無機系溶媒を使用することができる。
アクリル系重合体溶液を紡糸する方法としては特に限定されないが、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法などを適用することができる。
そして、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法などで得られた凝固糸を従来公知の水洗、浴延伸、工程油剤付与、乾燥緻密化、スチーム延伸などを施すことにより、所定の繊度を有する前駆体繊維束とする。
工程油剤としては、従来公知のシリコーン系油剤や、ケイ素を含まない有機化合物からなる油剤などが挙げられるが、これら以外にも後述する耐炎化工程や前炭素化工程での単繊維間の接着を防止できるものであれば、工程油剤として好適に使用できる。
これらの中でも、単繊維間の接着を効果的に防止できる点で、シリコーン系油剤が好ましく、特に、耐熱性の高いアミノ変性シリコーンを含有するものが好ましい。
工程油剤を付与された前駆体繊維束は、加熱により乾燥するのがよい。乾燥処理は50〜200℃に加熱されたロールに接触させて行うのが効率的である。その際、前駆体繊維束の含有水分率が1質量%以下となるまで乾燥し、繊維構造を緻密化させることが好ましい。
また、乾燥された前駆体繊維束は、引き続き延伸を施すのがよい。延伸する方法としては特に限定されないが、乾熱延伸法、熱板延伸法、スチーム延伸法などを適用することができる。
本発明に好適に用いることができる前駆体繊維束は、構成本数(単繊維数)が1000〜300000本であることが好ましく、より好ましくは3000〜200000本であり、さらに好ましくは12000〜100000本である。構成本数が上記範囲内であれば、耐炎化工程および炭素化工程での前駆体繊維束の取り扱いが容易であると共に、炭素繊維束を複合材料に成形する際の取り扱いも容易である。
また、本発明に好適に用いることができる前駆体繊維束は、単繊維繊度が0.6〜3.0dtexであることが好ましく、より好ましくは0.7〜2.5dtexであり、さらに好ましくは0.8〜2.0dtexである。単繊維繊度が上記範囲内であれば、得られる炭素繊維束の繊維径が適度な大きさとなり、複合材料の強化繊維として用いた場合の圧縮応力下での座屈変形を抑制でき、圧縮強度を向上させることができる。加えて、後述する耐炎化工程において焼成斑を抑制できるので、均一性に優れた炭素繊維束が得られやすくなる。
<耐炎化工程>
本発明では、耐炎化工程は前駆体繊維束を酸化性雰囲気中、200〜300℃の緊張下で加熱して(耐炎化処理)、耐炎化繊維束を得る工程である。
ここで、「酸化性雰囲気」とは、空気、酸素、二酸化窒素などの公知の酸化性物質を含む雰囲気のことである。中でも、経済性の面から空気雰囲気が好ましい。
耐炎化処理の温度が200℃以上であれば、耐炎化反応速度が遅くなるのを抑制できるので、短時間で耐炎化処理できる。一方、耐炎化処理の温度が300℃以下であれば、前駆体繊維束を構成するアクリル系重合体が熱分解するのを抑制できる。
本発明における耐炎化工程では、得られる耐炎化繊維束の密度(ρ)が1.28〜1.42g/cmになるまで、好ましくは1.29〜1.40g/cmになるまで加熱する。耐炎化繊維束の密度(ρ)が上記範囲内であれば、後述する前炭素化工程での単繊維間の接着や、糸切れを抑制できる。さらに、耐炎化工程の所要時間が長くなりすぎず、経済性の面でも有利であり、効率的に炭素繊維束を製造できる。
なお、耐炎化繊維束の密度(ρ)は、JIS R 7603に準拠して測定される値である。
耐炎化処理の方法としては特に限定されないが、熱風循環炉(耐炎化炉)を用いた方法や、加熱固体表面に接触させる方法など、従来公知の方法を採用できる。
耐炎化炉を用いた方法では、耐炎化炉に入った前駆体繊維束を一旦耐炎化炉の外部に出した後、耐炎化炉の外部に配設された折り返しロールによって折り返して耐炎化炉に繰り返し通過させる方法が採られる。
加熱固体表面に接触させる方法では、前駆体繊維束を間欠的に加熱固体表面に接触させる方法が採られる。
<前炭素化工程>
本発明では、前炭素化工程は耐炎化繊維束を不活性雰囲気中で加熱して(前炭素化処理)、前炭素化繊維束を得る工程であり、第一の前炭素化工程と、それに続く第二の前炭素化工程を有する。
ここで、「不活性雰囲気」とは、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの公知の不活性物質を含む雰囲気のことである。中でも、経済性の面から窒素雰囲気が好ましい。窒素純度としては、99%以上であればよい。
また、前炭素化工程で示す「温度」とは、繊維束の温度のことである。特に300〜500℃の温度領域は対流伝熱から輻射伝熱へと移行する領域であり、炉壁の温度や雰囲気の温度では繊維束の温度を正確には表しにくい。そのため、温度を正確に測定するには、熱容量の小さい熱電対を繊維束の中に埋没して測定する必要がある。また、繊維束が反応性のものであり、発熱反応や吸熱反応を起こす場合はなおさらこのような測定が必要である。
本発明では、第一の前炭素化工程は耐炎化繊維束を不活性雰囲気中、300〜400℃で20〜90秒加熱する工程であり(第一の前炭素化処理)、耐炎化工程において処理されていない部分の発熱反応を完了させる。
第一の前炭素化工程における加熱時間(t1)が20〜90秒の範囲内であれば、耐炎化工程で処理されていない部分が発熱反応することにより、耐炎化繊維束の温度が高くなって分解反応が急激に起こるのを抑制でき、炭素化収率を高めることができる。さらに、前炭素化工程を短時間で終了できると共に、前炭素化工程で用いる装置(前炭素化炉)を小型化でき、経済性の面でも有利であり、効率的に炭素繊維束を製造できる。
加熱時間(t1)は25〜70秒が好ましい。
本発明では、第二の前炭素化工程は第一の前炭素化工程に引き続き、耐炎化繊維束を不活性雰囲気中、400℃を超えて500℃以下で20〜40秒加熱する工程であり(第二の前炭素化処理)、耐炎化繊維束の分解反応を穏やかに進行させる。
第二の前炭素化工程における加熱時間(t2)が20〜40秒の範囲内であれば、耐炎化繊維束の分解反応が急激に起こるのを抑制でき、炭素化収率を高めることができる。さらに、前炭素化工程を短時間で終了できると共に、前炭素化工程で用いる装置(前炭素化炉)を小型化でき、経済性の面でも有利であり、効率的に炭素繊維束を製造できる。
本発明における前炭素化工程では、第二の前炭素化工程で得られた繊維束を前炭素化繊維束として後述の炭素化工程に用いてもよいが、第二の前炭素化工程の後に、得られた繊維束を不活性雰囲気中、500℃を超えて1000℃未満で加熱し(第三の前炭素化工程)、これより得られる繊維束を前炭素化繊維束とするのが好ましい。
第三の前炭素化工程を行うことで分解反応が十分に進行し、続く炭素化工程での分解反応を抑制できる。炭素化工程で分解反応が起こると、炭素化工程で用いる装置(炭素化炉)に使用する黒鉛部材などが、分解ガスにより損傷する場合がある。
第三の前炭素化工程は、最高温度550℃以上で10秒以上加熱するのが好ましい。ただし、最高温度が高くなると前炭素化炉で使用できる材質が制約されやすくなる。また、第三の前炭素化工程における加熱時間(t3)が長くなると大型の前炭素化炉を用いることになる。よって、効率的に炭素繊維束を製造するには、加熱時間(t3)は30秒以下が好ましい。
第一、第二、第三の前炭素化工程で用いる装置としては特に限定されないが、従来公知のマッフル式の加熱炉(前炭素化炉)などが挙げられる。通常、マッフル式の加熱炉では、第一、第二、第三の前炭素化工程を1パスで完了させる。
本発明における前炭素化工程では、第一の前炭素化工程における耐炎化繊維束の投入密度を高くして、生産性を向上させるのが好ましい。耐炎化繊維束の投入密度は1500〜5000dtex/mmであることが好ましく、より好ましくは2000〜4000dtex/mmである。投入密度が上記範囲内であれば、炭素繊維束の生産性が向上する。加えて、第一の前炭素化工程において加熱している際に、耐炎化工程で処理されていない部分が発熱反応することにより耐炎化繊維束の温度が高くなって分解反応が急激に起こるのを抑制でき、炭素化収率を高めることができる。
ここで、「耐炎化繊維束の投入密度」とは、第一の前炭素化工程に用いる前炭素化炉に投入する耐炎化繊維束の幅1mmあたりの平均繊度のことであり、耐炎化繊維束の総繊度を耐炎化繊維束の幅で除することで求める。
また、上述したように、前炭素化工程に供給(投入)される耐炎化繊維束は、密度(ρ)が1.28〜1.42g/cmである。耐炎化繊維束の密度(ρ)が高くなると、耐炎化工程での処理が十分に行われたことを意味する。従って、第一の前炭素化工程において耐炎化工程で処理されていない部分の発熱反応は起こりにくくなるため、第一の前炭素化工程における加熱時間(t1)は短くてよい。
すなわち、加熱時間(t1)は、耐炎化繊維束の密度(ρ)に合わせて設定するのが好ましく、具体的には耐炎化繊維束の密度(ρ)と加熱時間(t1)が、下記式(1)を満たすのが好ましい。
5≦(ρ−1.18)×t1≦10 ・・・(1)
また、本発明における前炭素化工程では、0.05〜5mN/dtexの張力を耐炎化繊維束に加えながら第一、第二、第三の前炭素化工程を行うのが好ましく、より好ましくは0.1〜3mN/dtexである。張力が上記範囲内であれば、得られる炭素繊維束の機械的特性を維持しやすくなる。加えて、製造中における毛羽の発生を抑制できるので、高品質の炭素繊維束が得られやすい。
<炭素化工程>
本発明では、炭素化工程は前炭素化繊維束を不活性雰囲気中、1000℃以上の緊張下で加熱し(炭素化処理)、炭素化繊維束を得る工程である。
ここで、「不活性雰囲気」とは、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの公知の不活性物質を含む雰囲気のことである。中でも、経済性の面から窒素雰囲気が好ましい。窒素純度としては、99%以上であればよい。
本発明における耐炎化工程では、1000〜1200℃の温度領域から500℃/分以下、好ましくは300℃/分以下の昇温速度で、最高温度1200〜2000℃まで昇温して、前炭素化繊維束を炭素化処理するのが好ましい。このように昇温しながら炭素化処理することで、得られる炭素繊維束の機械的特性を向上できる。
<その他の工程>
炭素化工程で得られた炭素化繊維束は、そのまま炭素繊維束として用いることができるが、必要に応じて公知の方法により黒鉛化したものを炭素繊維束として用いてもよい。例えば炭素化繊維束を不活性雰囲気中、最高温度が2000℃を超えて3000℃以下で緊張下に加熱することにより黒鉛化された炭素繊維束が得られる。
このようにして得られる炭素繊維束には、表面改質の目的で、電解酸化処理を施すことができる。
電解酸化処理に用いる電解液には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸性溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドといったアルカリまたはそれらの塩を水溶液として使用することができる。
ここで、電解酸化処理に要する電気量は、適用する炭素繊維束により適宜選択することができる。かかる電解酸化処理により、炭素繊維束を複合材料の強化繊維として用いた場合に、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性を適正化でき、得られる複合材料においてバランスのとれた強度特性が発現されるようになる。
また、炭素繊維束に集束性を付与するために、サイジング処理をすることもできる。
サイジング剤には、マトリックス樹脂との相溶性の良いサイジング剤を、使用するマトリックス樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。
以上説明したように、本発明によれば、特定の条件下で耐炎化工程と、第一の前炭素化工程および第二の前炭素化工程と、炭素化工程とを行うので、炭素化収率を低下させることなく効率的に炭素繊維束を製造できる。
なお、炭素繊維束は、前駆体繊維束を耐炎化、前炭素化、および炭素化することにより減量させながら製造されるため、前駆体繊維束の炭素含有量を超える炭素化収率を得ることはできない。
しかし、本発明であれば、炭素化収率を効率的に前駆体繊維束の炭素含有量に近づけることができ、ひいては炭素繊維束の製造コストを低減できる。
本発明により得られる炭素繊維束は、プリプレグ化したのち複合材料に成形することもできるし、織物などのプリフォームとした後、ハンドレイアップ法、プルトルージョン法、レジントランスファーモールディング法などにより複合材料に成形することもできる。また、フィラメントワインディング法や、チョップドファイバーやミルドファイバー化した後、射出成形することにより複合材料に成形することができる。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本実施例で行った各種測定方法は、以下の通りである。
<耐炎化繊維束の密度の測定>
耐炎化繊維束の密度は、JIS R 7603に準拠して測定した。
<耐炎化繊維束の投入密度の測定>
耐炎化繊維束の投入密度は、下記式(2)より求めた。
耐炎化繊維束の投入密度(dtex/mm)=耐炎化繊維束の総繊度/耐炎化繊維束の幅 ・・・(2)
<前駆体繊維束、耐炎化繊維束、および炭素繊維束の総繊度の測定>
前駆体繊維束、耐炎化繊維束、および炭素繊維束の総繊度は、JIS R 7605に準拠して測定した。
<樹脂含浸ストランド特性の測定>
炭素繊維束のストランド弾性率およびストランド強度は、JIS R 7608に準拠して測定した。
<炭素化収率の測定>
炭素化収率は、前駆体繊維束の総繊度および炭素繊維束の総繊度から、耐炎化工程から炭素化工程の伸長率(%)を考慮し、下記式(3)より求めた。
炭素化収率(%)=炭素繊維束の総繊度/前駆体繊維束の総繊度×(100+耐炎化工程から炭素化工程の伸長率) ・・・(3)
耐炎化工程から炭素化工程の伸長率(%)は、耐炎化工程入側の前駆体繊維束の走行速度、および炭素化工程出側の炭素繊維束の走行速度から、下記式(4)より求めた。
耐炎化工程から炭素化工程の伸長率(%)=(炭素化工程出側の炭素繊維束の走行速度−耐炎化工程入側の前駆体繊維束の走行速度)/耐炎化工程入側の前駆体繊維束の走行速度×100 ・・・(4)
[実施例1]
<前駆体繊維束の調製>
前駆体繊維束は、次の方法で調製した。
アクリル系重合体(組成比:アクリロニトリル/アクリルアミド/メタクリル酸=96/3/1(質量比)として重合することで得た)を、濃度が22質量%になるようにジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解し、紡糸原液を調製した。この紡糸原液を孔径60μm、孔数12000の紡糸口金を通し、温度35℃、濃度67質量%のDMAC水溶液を満たした凝固浴中で凝固させ、凝固糸とした。得られた凝固糸を水洗した後、浴中で延伸し、アミノ変性シリコーン油剤を付与した。さらに加圧スチーム中で延伸して単繊維数12000本、単繊維繊度1.2dtex、総繊度14400dtexの前駆体繊維束を得た。
<炭素繊維束の製造>
得られた前駆体繊維束を空気中、温度230〜270℃、緊張下で、加熱時間を60分として加熱し、密度1.36g/cmの耐炎化繊維束を得た(耐炎化工程)。
ついで、窒素雰囲気中、最高温度600℃、緊張下で加熱し、前炭素化繊維束を得た(前炭素化工程)。なお、第一の前炭素化工程(処理温度:300〜400℃)における加熱時間(t1)は50秒、第二の前炭素化工程(処理温度:400℃を超えて500℃以下)における加熱時間(t2)は30秒、第三の前炭素化工程(500℃を超えて600℃以下)における加熱時間(t3)は20秒であった。また、第一の前炭素化工程における耐炎化繊維束の投入密度は、2400dtex/mmであった。
得られた前炭素化繊維束を窒素雰囲気中、最高温度1300℃、緊張下で、加熱時間を60秒として加熱し、炭素化繊維束を得た(炭素化工程)。なお、炭素化工程での1000〜1200℃での昇温速度は400℃/分であった。
得られた炭素化繊維束を表面処理後、サイジング剤を付与し、総繊度8200dtexの炭素繊維束を得た。耐炎化工程から炭素化工程の伸長率は、−5.0%であった。
前記炭素繊維束の樹脂含浸ストランド特性を測定すると、ストランド弾性率は240GPa、ストランド強度は5.0GPaであった。また、炭素化収率は、54.1%であった。
[実施例2〜5]
耐炎化工程における加熱時間と耐炎化繊維束の密度(ρ)、および前炭素化工程における加熱時間を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維束について、各種測定を行った。結果を表1に示す。
[比較例1〜5]
耐炎化工程における加熱時間と耐炎化繊維束の密度(ρ)、および前炭素化工程における加熱時間の条件を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を得た。
得られた炭素繊維束について、各種測定を行った。結果を表1に示す。
[比較例6、7]
耐炎化工程における加熱時間と耐炎化繊維束の密度(ρ)、および前炭素化工程における加熱時間の条件を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維束を製造しようとしたが、前炭素化工程中に繊維束が切断したため、炭素繊維束は得られなかった。
Figure 2012117161
表1から明らかなように、各実施例で得られた炭素繊維束は、ストランド特性に優れた炭素繊維束を高炭素化収率で製造できた。
一方、比較例1〜4で得られた炭素繊維束は、実施例1に比べて炭素化収率が低かった。
また、比較例5で得られた炭素繊維束は、実施例4に比べて炭素化収率が低かった。

Claims (3)

  1. アクリル系前駆体繊維束を酸化性雰囲気中、200〜300℃で加熱し、密度(ρ)が1.28〜1.42g/cmである耐炎化繊維束を得る耐炎化工程と、
    得られた耐炎化繊維束を不活性雰囲気中、300〜400℃で20〜90秒加熱する第一の前炭素化工程と、引き続き不活性雰囲気中、400℃を超えて500℃以下で20〜40秒加熱して前炭素化繊維束を得る第二の前炭素化工程と、
    得られた前炭素化繊維束を不活性雰囲気中、1000℃以上で加熱する炭素化工程とを有する、炭素繊維束の製造方法。
  2. 前記第一の前炭素化工程における耐炎化繊維束の投入密度が1500〜5000dtex/mmである、請求項1に記載の炭素繊維束の製造方法。
  3. 前記耐炎化繊維束の密度(ρ)と、第一の前炭素化工程における加熱時間(t1)が、下記式(1)を満たす、請求項1または2に記載の炭素繊維束の製造方法。
    5≦(ρ−1.18)×t1≦10 ・・・(1)
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