JPH06219797A - 補強用ポリプロピレン繊維および繊維補強セメント成形体 - Google Patents

補強用ポリプロピレン繊維および繊維補強セメント成形体

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JPH06219797A
JPH06219797A JP3130193A JP3130193A JPH06219797A JP H06219797 A JPH06219797 A JP H06219797A JP 3130193 A JP3130193 A JP 3130193A JP 3130193 A JP3130193 A JP 3130193A JP H06219797 A JPH06219797 A JP H06219797A
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cement
polypropylene
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Daiwabo Co Ltd
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    • C04BLIME, MAGNESIA; SLAG; CEMENTS; COMPOSITIONS THEREOF, e.g. MORTARS, CONCRETE OR LIKE BUILDING MATERIALS; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES; TREATMENT OF NATURAL STONE
    • C04B16/00Use of organic materials as fillers, e.g. pigments, for mortars, concrete or artificial stone; Treatment of organic materials specially adapted to enhance their filling properties in mortars, concrete or artificial stone
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    • C04B16/06Macromolecular compounds fibrous
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
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    • C04BLIME, MAGNESIA; SLAG; CEMENTS; COMPOSITIONS THEREOF, e.g. MORTARS, CONCRETE OR LIKE BUILDING MATERIALS; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES; TREATMENT OF NATURAL STONE
    • C04B20/00Use of materials as fillers for mortars, concrete or artificial stone according to more than one of groups C04B14/00 - C04B18/00 and characterised by shape or grain distribution; Treatment of materials according to more than one of the groups C04B14/00 - C04B18/00 specially adapted to enhance their filling properties in mortars, concrete or artificial stone; Expanding or defibrillating materials
    • C04B20/10Coating or impregnating
    • C04B20/12Multiple coating or impregnating

Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐熱、耐アルカリ性に優れたポリプロピレン
繊維の疎水性を抑制し、併せて分散性を向上させてセメ
ント製品の曲げ強度を改善する。 【構成】 セメント補強用繊維を高結晶性ポリプロピレ
ン樹脂で形成し、少なくともその繊維の表層を上記高結
晶性ポリプロピレン樹脂に炭酸カルシウム微粉末を練り
込んだ樹脂でもって構成し、さらにその繊維表面にアル
キルホスフェートアルカリ金属塩を付着させてセメント
補強用のポリプロピレン繊維となした。そしてこの補強
用のポリプロピレン繊維を、乾燥セメントマトリックス
に対して0.5〜5重量%添加混入してセメント成形体
となした。 【効果】 セメントマトリックスに対する親和性が良好
となり、セメント製品の曲げ強度と衝撃強度を共に向上
させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、セメントスラリー液中
での分散と、セメントマトリックスとの親和性が良い補
強用ポリプロピレン繊維およびこの繊維で補強されたセ
メント成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、石綿に替わるセメント製品補強用
繊維として種々の無機繊維、合成繊維の使用が提案され
ている。例えば、特開昭49-98424号公報、特開昭49-104
917 号公報、特開昭49-104918 号公報、特開昭61- 8645
2 号公報などに、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ビニ
ロン繊維、ポリプロピレン繊維、芳香族ポリアミド繊
維、アクリル繊維の使用が教示されている。そしてこれ
らの補強用繊維を用い、通常の方法、例えば抄造成型、
押し出し成型または注型成型によって成型したセメント
成型体は、その強度を向上させるため、さらに高圧プレ
スで組織を密にしたり、各種条件で養生する手法が一般
に行なわれている。
【0003】この養生手法には、自然養生、蒸気養生と
オートクレーブ養生があり、自然養生にはそのまま放置
するいわゆる自然養生と、水槽などに沈めて水中で養生
する水中養生があり、自然養生には設備費があまりかか
らないという利点を有しているが14日以上という長期
の養生期間が必要という欠点がある。その点、140℃
を超える温度となるオートクレーブ養生は、普通12〜
18時間の養生で済むという利点があるが、かなりの設
備費を要す欠点がある。
【0004】上記した養生手法では、養生温度と養生時
間(期間) が逆比例関係にあり、蒸気養生などの養生温
度を高くすると養生時間を短縮できるため、蒸気養生や
オートクレーブ養生がかなり普及している。この場合、
かなりのアルカリ性であるセメントマトリックス中に混
在させる繊維は、耐熱アルカリ性が必要となり、ポリエ
ステル繊維、ビニロン繊維、ポリアミド繊維やアクリル
繊維は、分解等の化学変化をきたし脆化して強化繊維と
しての機能が失われてしまう。また普通のガラス繊維は
無論、耐アルカリ性ガラス繊維でも上記した高温での養
生処理を受けると脆化して強化繊維の機能を失うか、機
能が著しく低下してしまう。唯一耐え得るのは、耐熱ア
ルカリ性があるポリプロピレンやポリ4−メチルペンテ
ン−1などのポリオレフィン樹脂でなるポリオレフィン
系繊維である。
【0005】しかし従来のポリプロピレン繊維は、HI
が96〜67重量%、IPFが93〜94モル%の結晶
性ポリプロピレン樹脂を用いており、破断強度は5〜6
g/d程度であり、延伸性を改良するためQ値が4前後
と低いポリプロピレン樹脂を用い150℃前後の乾式延
伸を行なう方法も知られているが、この温度では繊維間
の融着もしくは密着が生じ易く、うまく繊維化したとし
てもその破断強度は7.5g/d程度が最大であり、強
度的に他の繊維に劣ることからセメント成形体の強化用
繊維としては限られた分野での使用に留まっている。
【0006】また高結晶性ポリプロピレン樹脂を用いた
ポリプロピレン繊維およびその複合繊維については、特
開昭60-59113号公報、特開昭62-41331号公報、および特
開平3-20505号公報などに記載されているが、それらの
実施例ではその破断強度は従来のポリプロピレン繊維と
同程度である。
【0007】ところで上記ポリオレフィン系繊維は、炭
素と水素でなる構成が基本のため、分子内分極しやすい
親水基に乏しく、疎水性が大きいので、イオン性のセメ
ント粒子やセメントマトリックスとの親和性に乏しく、
該繊維とセメント素材間の密着性および接着性が極めて
悪いので、セメント製品を破壊すると、セメントマトリ
ックスから該繊維が素抜けする現象がみられ、セメント
製品の曲げ強度にはあまり寄与しない結果となる。しか
しながら該ポリオレフィン系繊維をセメント製品に添加
すると衝撃強度を大幅に向上できる特性がある。
【0008】上述のようにポリオレフィン系繊維は親水
性に乏しいのでセメントスラリー液中で該繊維の分散性
が悪く、繊維がスラリー表面に浮上する浮上現象(浮種
現象) などの発生による不均一分散により添加した繊維
の有効添加量が低下して所定の補強効果が得られなくな
る。このような難点および上記した素抜けするという欠
点を改善するため、界面活性剤でポリオレフィン系繊維
の表面処理を行い、該繊維の親水性を高める方法が採ら
れている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら単に界面
活性剤で繊維表面を処理しても、湿式抄造法などでセメ
ントスラリー液中に繊維を投入すると、界面活性剤が容
易に繊維表面から溶出して除去され、初期の良好な繊維
の分散性が得られない。この改善策として、特開昭64-3
3036号公報に記載されているように、カルシウムイオン
で難溶化するアルキルホスフェート塩を繊維処理剤とし
て用い、セメントスラリー液に繊維を投入した時、繊維
処理剤を速やかに繊維表面で難溶化させて繊維表面に固
着させ、繊維の親水化を維持させて浮種現象の防止し分
散性を高めるようになした例があるが、この場合でもセ
メント製品の曲げ強度向上にあまり寄与していない。
【0010】このようにアルキルホスフェート塩を繊維
処理剤に用いたポリプロピレン繊維は、カルシウムイオ
ンが高濃度なセメントスラリー液中に投入されると、繊
維表面に難溶化したアルキルホスフェートカルシウム塩
が固着し、アルキルホスフェート塩が繊維表面より流出
し難くなり、繊維の親水性を維持できるのでセメントマ
トリックス中での繊維の分散性はよくなるが、得られた
セメント製品の曲げ強度の向上が期待できない。
【0011】セメント製品の曲げ強度と衝撃強度は、前
記アルキルホスフェート塩を繊維処理剤とし、従来のも
のより高結晶なポリプロピレン樹脂を用いて高温延伸し
た高強度なポリプロピレン繊維を使用し、抄造などで成
形した後高圧プレス法でセメント半製品を圧縮し繊維と
セメント素材間の密着性をよくすることにより向上させ
ることができるが、この場合高圧プレス機を必要とする
ためあまり一般的でなく、耐熱アルカリ性に乏しく養生
を長時間できない問題が有るビニロン繊維のようにノン
プレスでもセメント製品の曲げ強度を大きくなし、かつ
前述したポリプロピレン繊維の長所でありビニロン繊維
では達成しえない高い衝撃強度をセメント製品に付与す
ることできるセメント製品補強用ポリプロピレン繊維の
出現が待たれていた。
【0012】ポリプロピレン繊維のセメントスラリー中
での分散性は、先に出願している特願平3-309858号のよ
うに、従来の(普通の) ポリプロピレン樹脂に炭酸カル
シウム微粉末を練り込むことによって著しく改善するこ
とができる。この繊維は、確かに従来のセメント製品補
強用ポリプロピレン繊維では不可能であった、真水中で
も均一に分散するが、繊維を形成しているポリプロピレ
ン樹脂全体に炭酸カルシウム微粉末が練り込まれている
ため、普通のポリプロピレン繊維より繊維強度が劣り、
セメント製品は曲げ強度の飛躍的向上は期待できない。
【0013】本発明の目的は、炭酸カルシウム微粉末の
存在によって上記のように分散性が著しく改善されてい
るにも拘らずセメント補強用の繊維として十分な強度を
備えたポリプロピレン繊維を提供することにある。換言
すれば、セメント製品補強用繊維は、単に繊維の破断強
度が高ければ高い程セメント製品の強度を向上させると
いう従来の考え方から一歩進めて、本発明者はビニロン
繊維の様にセメントマトリックスとの親和性が良くてセ
メント製品と一体化し易く、ポリプロピレン繊維の様に
耐熱アルカリ性が良くて、かつ良好な分散性を備え、し
かも繊維が潰れ難いように剛性を出来るだけ高くなした
セメント補強用として好適なポリプロピレン繊維を提供
することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成
するため、ポリプロピレン繊維のセメントマトリックス
との馴染み(親和性) を良くし、さらに撥水性を抑制し
てポリプロピレン繊維の疎水性を緩和することによって
上記課題を解決した。
【0015】即ち本発明のセメント補強用のポリプロピ
レン繊維は、Q値(Q:重量平均分子量/数平均分子量
の比)がQ≦5未満、沸騰n−ヘプタン不溶分(HI:
重量%)が97<HI<100、アイソタクチックペン
タッド分率(IPF:モル%)が94≦IPF<100
である高結晶性ポリプロピレンからなる繊維であって、
少なくともその繊維の表層を構成するポリプロピレン樹
脂に炭酸カルシウム微粉末が練り込まれ、この微粉末の
平均直径( D:μm) が、微粉末の練り込まれたポリプ
ロピレン樹脂層の厚さ(単一繊維では繊維直径) をTμ
mとすると、D<1かつD≦0.5Tであって、その添
加濃度( Ca%:重量%) が3≦Ca%≦20であり、
繊維表層に付着されたアルキルホスフェートアルカリ金
属塩量(RP%:重量%) が0.05≦RP%<10か
つ36>Ca%・ RP%≧0.7であり、繊維の破断強
度が6g /デニール以上を有していることを特徴として
いる。
【0016】また本発明の繊維補強セメント成形体は、
上記したポリプロピレン繊維が乾燥セメントマトリック
スに対して0.5〜5重量%添加されたセメント組成物
で形成されていることを特徴としているものであり、自
然養生スレート分野において本発明の補強用ポリプロピ
レン繊維を使用してなるスレートは、補強用としてビロ
ン繊維を用いたものと同等の曲げ強度を有し、シャルピ
ーなどの衝撃強度においては優れた物性を有している。
【0017】本発明のセメント補強用繊維に使用する上
記ポリプロピレン樹脂(以下本高結晶性ポリプロピレン
樹脂という)は、従来のものより立体規則性がよいた
め、高結晶性繊維になり易く、Q値を小さくなしている
ため延伸性が改良されて、高強度の繊維になし得た。具
体的には、沸騰n-ヘプタン不溶分(HI:重量%)が9
7<HI<100の範囲にあることが低結晶成分を少な
くしてより結晶配向を向上させる点で好ましく、かつア
イソタクチックペンタッド分率(IPF:モル%)が9
6≦IPF<100の範囲のポリプロピレン樹脂が立体
規則性の点で好ましく、HIとIPFが上記数値を下ま
わると高強度繊維を得難くなる。
【0018】なおIPFはn−ヘプタン不溶分成分につ
いて「マクロモレキュラーズ」(Macromoleculer,Vol.6,
925(1973) およびVol.8,687(1975))に準じ測定した。
【0019】従来上記範囲を満足する市販のポリプロピ
レン樹脂はQ値が7以上のものが多く、かかるポリプロ
ピレン樹脂は延伸性が良好とはいえず、これを延伸して
も繊維の強度を向上し得なかった。本発明者は、Q値が
小さいものを新たに合成し検討した所、Q値が5未満、
より好ましくは4.5以下であれば、あまり高延伸倍率
で延伸しなくても6g/d以上の高強度ポリプロピレン
繊維となすことができた。またその樹脂の溶融流動性
は、溶融紡糸の都合上、メルトフローレート(MFR:
g/10in. JIS−K−7210、荷重2169g
測定温度230℃に準ず。)で1<MFR<100、よ
り好ましくは5<MFR<40、最も好ましくは10<
MFR<30の範囲であり、密度は原料ペレットで0.
905前後で特に普通のポリプロピレンとは変わりな
い。
【0020】上記本高結晶性ポリプロピレン樹脂に炭酸
カルシウム微粉末を練り込んで繊維化するとき、その微
粉末の粒径と繊維デニール(繊維直径) もしくは微粉末
練り込み樹脂層の厚みと延伸性の間には適、不適の関係
がある。溶融紡糸性および延伸性の点を考慮するとその
平均粒径(D:μm)は1μm未満とするのが好まし
い。平均粒径が1μm以上では延伸の際に糸切れが多く
なるなど紡糸性が低下して生産上不都合となる。具体的
には、炭酸カルシウム微粉末が練り込まれた本高結晶性
ポリプロピレン樹脂層の厚さ(単一繊維では繊維直径)
をTμmと、炭酸カルシウム微粉末の平均粒径(D:μ
m) が、D≦0.5Tであると、延伸時の単繊維切れが
少なく延伸性があまり悪化しないので繊維を高強度とな
すことができる。したがって炭酸カルシウム微粉末には
2μm以上の粒子が含まれないことが溶融紡糸性と延伸
性の点で好ましく、この場合1〜20デニールの繊維を
安定して作ることが可能となる。
【0021】また炭酸カルシウム微粉末の添加濃度(C
a%:重量%)が多くなれば溶融紡糸性と延伸性が低下
するのは勿論であるが、粒径が1μm以下の炭酸カルシ
ウム微粉末を用いれば、40重量%を超えて添加しても
溶融紡糸と延伸が可能であり、添加量が20重量%以下
であれば円滑に繊維化できる。本発明のポリプロピレン
繊維を安定して生産するには、炭酸カルシウム微粉末の
添加濃度が3≦Ca%≦20の範囲にあることが好まし
く、3重量%未満の添加は、セメントマトリックスに対
する繊維の親和性が十分とは言えなく好ましくない。ま
た炭酸カルシウム微粉末は本高結晶性ポリプロピレン樹
脂に添加混合する前にステアリン酸カルシウムなどの金
属石けんや界面活性剤などの処理をすることがより好ま
しい。
【0022】本発明のポリプロピレン繊維は、炭酸カル
シウム微粉末を含んだ本高結晶性ポリプロピレン樹脂の
みの単一繊維、または炭酸カルシウム微粉末を含んだ本
ポリプロピレン樹脂を鞘成分となし、炭酸カルシウム微
粉末を含まない本高結晶性ポリプロピレン樹脂を芯成分
とする鞘芯型複合繊維など、少なくとも繊維表面が炭酸
カルシウム微粉末を含んだ本高結晶性ポリプロピレン樹
脂で構成されている繊維が最も好ましいが、上記鞘芯型
複合繊維の芯が偏芯し芯成分が繊維表面に露出したもの
や、分割性繊維のように繊維断面において異種の樹脂成
分が風車状に配置されているその樹脂の一つに炭酸カル
シウム微粉末を含んだ本高結晶性ポリプロピレン樹脂を
用いるなど、炭酸カルシウムが未添加の本高結晶性ポリ
プロピレン樹脂が繊維表面に部分的に露出した繊維であ
っても良い。この場合は未添加の本高結晶性ポリプロピ
レン樹脂の露出面積比率が50%未満が良く、30%以
下がより好ましい。また上記複合繊維にあっては、鞘成
分と芯成分の繊維断面における断面積比(複合比) は特
には限定を要するものではないが、生産性の点において
鞘成分:芯成分が30:70〜70:30程度、殊に5
0:50が好都合である。
【0023】さらに本発明のポリプロピレン繊維は、繊
維表面にアルキルホスフェートアルカリ金属塩を付着さ
せてなり、その金属塩は、繊維表面近傍の本ポリプロピ
レン樹脂中の炭酸カルシウムあるいは繊維表面に露出し
た炭酸カルシウムのカルシウムイオンの少なくともその
一部とイオン結合して水に難溶化の化合物を形成する。
金属塩は炭素数8〜18のノルマルアルキル基を有する
モノアルキルリン酸エステルまたはジアルキルリン酸エ
ステルで、このナトリウム塩もしくはカリウム塩が最も
都合が良く、アルキル基の一部が分岐していてもよい。
【0024】またアルキル基の一部にエーテル結合など
の炭素ー炭素結合以外の分極性結合および側鎖に分極性
基が含まれていてもよいが、アルキル基があまり親水性
を示すものはイオン結合によって形成された前記化合物
の難溶化を阻害するので好ましくない。またこれら金属
塩の付着量(RP%:重量%) は0.05≦RP%<1
0の範囲が好ましく、0.05重量%未満であると繊維
の分散性が不十分となる場合があり、10重量%以上で
は必要量に対し過多となって経済的に好ましくない。ま
た上述のCa%とRP%との積の値は、36>Ca%・
RP%≧0.7の範囲が好ましく、この積の値が0.7
未満であるとセメントスラリー液中での繊維の分散また
はセメントマトリックスとの親和性が十分とはいえず、
36以上の場合は特に問題はないが経済的に好ましくな
い。
【0025】本発明の補強用ポリプロピレン繊維は、溶
融紡糸法で粗繊維(未延伸糸) となしそれを熱延伸する
ことにより、破断強度が6g/デニール以上の繊維とな
すことができる。溶融紡糸は比較的低い温度、例えば2
60〜280℃で行えば分子の絡みやまるまりを少なく
することができる。また熱減成剤を用いるなどの場合は
溶融紡糸温度をこれよりも高くなしても良い。熱延伸で
は、延伸性を少しでも向上させるため出来るだけ未延伸
糸を高温にして延伸することが好ましく、例えば140
〜150℃の熱ロール乾式延伸法で高延伸するとよい。
沸騰水などによる熱水延伸と蒸気延伸の併用二段延伸も
都合よく利用できる。なお上述のように未延伸糸を高温
で3.5倍を超える延伸倍率で延伸すると、普通のポリ
プロピレン樹脂でも得ることが困難な破断強度が7g/
デニール以上の繊維とすることも可能である。
【0026】本発明の補強用ポリプロピレン繊維の繊度
と繊維長には特に限定はないが、繊度が1〜20デニー
ル、繊維長が3〜30mmの短カット繊維として用いる
のが一般的であり、マルチもしくはモノフィラメントと
しこれらのネットの形で用いてもよい。
【0027】本発明の補強用ポリプロピレン繊維は、セ
メント成形体の乾燥セメントマトリックスに対して、
0.5〜5重量%添加して使用することが好ましく、
0.5重量%未満では繊維補強効果が得られず、5重量
%を超えるとセメント成形体の曲げ強度が減少し始め
る。また本発明の補強用ポリプロピレン繊維は、ビニロ
ン繊維やアクリル繊維など他のセメント製品補強用繊維
と併用してもよく、これらの繊維を併用しない場合であ
っても、パルプ等の繊維状物やマイカや珪砂もしくはア
スベスト代替鉱物などの無機添加物と併用することが補
強効果を発揮する上で好ましい。
【0028】また本発明にいうセメント成形体とは、注
型品、抄造成形品および押し出し成形品などであり、こ
れらは本発明の繊維を配合したセメントスラリー液でも
って既に述べたように通常の方法で成形して作ることが
できる。特に抄造して自然養生したスレートは、ビニロ
ン繊維を添加したものと同等の曲げ強度をもち、かつ衝
撃強度を大幅に向上でき、そのうえビニロン繊維ではで
きなかった養生日数の短縮を達成することができる。ま
た170℃以下の蒸気養生にも都合よく使用することが
でき、さらに抄造したものを100kg/cm2 以上の
高圧プレスすることによって成形体の強度を一層向上さ
せるができる。
【0029】本発明に言うセメントマトリックスとは主
としてセメントと骨材を主成分とする無機物を指し、こ
の主成分に石綿やパルプなどの補強材や硬化促進剤など
の添加剤などが添加されていても差し支えない。骨材に
は、滑石粉、珪砂、タルクあるいはマイカやワラストナ
イトなどの結晶性鉱物などが適用できる。好適な骨材と
しては、例えば滑石粉では200メッシュの金網を通過
する粒径の[商品名:モルタンS(SiO2 33.75 wt
%.MgO 36.9 wt%.水分 15.6 wt%)坂田粉砕
工業製]を挙げることができる。
【0030】次に、本発明で定義している各ファクター
について、その測定例を説明する。 (1) 重量平均分子量(Mw) は、例えば光散乱法、粘度
法、超延伸法を用い、Mw=[ΣNi Mi2] /[ ΣNi
Mi] の式によって求める。 (2) 数平均分子量(Mn)は、例えば末端基定量法、氷
点降下法、浸透圧法を用いて、 Mn =[ΣNi Mi]/
[ΣNi] の式によって求める。一般に、重量平均分子
量/数平均分子量の比はQ値と呼ばれ、分子量分布にお
ける多分散度の尺度として用いられ、この値が1(単分
散) より大きくなる程分子量分布曲線が幅広く(ブロー
ド) になることを意味する。また枝分かれが多いポリマ
ーも高い数値となる。 (3) 沸騰nー ヘプタン不溶分(HI)は、5gのポリプ
ロピレン試料を500mlの沸騰キシレン中に全溶解さ
せ、これらを5lのメタノール中に投入して析出させた
ものを回収して乾燥した後、沸騰nー ヘプタンで6時間
ソックスレー抽出した抽出残部をいう。 (4) アイソタクチックペンタッド分率(IPF:モル
%) は、前記しているので省略する。 (5) メルトフローレート(MFR) は、荷重2165k
g、測定温度230℃でのノズル通過量(g/10mi
n)をJIS−K−7210に準じて測定した。
【0031】
【作用】本高結晶性ポリプロピレン樹脂は上記している
ように、低結晶性成分が少ないことから延伸による結晶
配向を阻害せず、分子量分布が狭く高立体規則性のため
あまり延伸性が良いとは言えないポリプロピレンベース
樹脂を限界近くまで熱延伸を許容し、その結果無機粒子
を含んでいるにも拘らず従来のポリプロピレン樹脂によ
って得られる繊維の破断強度(6〜7g/デニール)と
同等かそれ以上の破断強度を有した繊維とすることがで
きる。。また従来のポリプロピレン樹脂より高立体規則
性のため、繊維の剛性と硬度が大きく、物理的外力によ
り繊維の変形、切断あるいは繊維強度の劣化が起りにく
いのでセメント成形体を効果的に補強する。
【0032】さらに繊維表面を構成する大部分の樹脂に
は炭酸カルシウム微粉末が練り込まれており、この微粉
末中のカルシウムイオンと繊維表面に付着させているア
ルキルホスフェートアルカリ金属塩の少なくともその一
部がイオン結合し、金属塩を水に難溶性の化合物に変化
させて繊維表面に固着する。しかも上記練り込まれた炭
酸カルシウム微粉末はその直径が1μm未満と極めて小
さいため、繊維表面またはその近傍に均一に分布するこ
とになり、アルキルホスフェートアルカリ金属塩とイオ
ン結合し難溶化物を生じ易くし、分散性を高める。
【0033】またセメントスラリー液中に本発明の繊維
を投入した時、少なくとも繊維表面に付着させていたア
ルキルホスフェートアルカリ金属塩の大部分がまず最初
に難溶化して繊維表面に固着し、繊維を見掛け上親水化
(疎水性を減殺)して繊維に空気泡が付くのを阻止し、
繊維の比重が水より軽いにも拘らずスラリー液中での分
散を良好にする。
【0034】また注型、抄造成形あるいは押し出し成形
法などで成形して養生すると、水分が多く湿潤状態であ
る繊維保管中および養生中に、上述の炭酸カルシウム微
粉末に繊維表面からポリプロピレン樹脂層を通して水分
が供給されて吸水水和し、自由度の大きいカルシウムイ
オンを生じ、このカルシウムイオンが上記養生中にセメ
ントマトリックスを構成している各成分と、主としてア
ルキルホスフェートを介してイオン結合などの化学的結
合を生じるようで、結果としてビニロン繊維やアクリル
繊維のようなセメントマトリックスへの親和性が生じ、
疎水性のポリオレフィン繊維としては異常と思われるよ
うなセメント成形体の曲げ強度の著しい向上作用を奏す
る。無論セメント製品補強用ポリプロピレン繊維の特徴
である耐衝撃強度は従来通りか若干低下するに留まり、
自然養生法で製造したスレートは曲げ強度がビニロン繊
維を添加したものと同等(従来のポリプロピレン繊維よ
り相当向上)し、シャルピーなどの耐衝撃強度もビニロ
ン繊維を用いたものよりも可成り向上させることがてぜ
きる。また従来のポリプロピレン繊維と繊維の化学的性
質は同じなので、耐熱アルカリ性が必要な蒸気養生法に
も用いることができ、さらに曲げ強度の向上と養生時間
を短縮することが可能となる。また抄造して高圧プレス
する方法によって得られたセメント成形体にも曲げ強度
の向上効果を発揮する。
【0035】
【実施例】
[実施例1〜11、比較例1〜7]図1に繊維断面で示
した炭酸カルシウム微粉末を含んだ本高結晶性ポリプロ
ピレン樹脂の単一繊維(1) 、および図2に示したように
本高結晶性ポリプロピレン樹脂を芯成分(2) に配し炭酸
カルシウム微粉末を含んだ本高結晶性ポリプロピレン樹
脂を鞘成分(3) に配した芯鞘型複合繊維を、表1の条件
にもとづいて溶融紡糸した後熱延伸し、界面活性剤を付
着させて一夜放置したのち風乾して6mmまたは10mm
に切断し補強用ポリプロピレン繊維となした。表1にお
ける繊維の破断強伸度は風乾した切断前の延伸糸を測定
した。
【0036】なお炭酸カルシウム微粉末は、金属石けん
で前処理した平均粒径 0.5μmのものを用い、繊維を構
成しているポリプロピレン樹脂と同じ樹脂でマスターバ
ッチ化し、これを希釈して所定濃度とした。
【0037】熱延伸は、150℃の熱風中で150℃の
熱ロールを用いる乾式延伸(表1でDと表示) と、97
℃沸水−120℃蒸気延伸(表1でWと表示) の二段延
伸の二つを例示しているが、熱延伸手法に限定はなく未
延伸糸の温度を出来るだけ高くなせば延伸性が良くなり
高強度となし得る。
【0038】なお比較例5に示すように、普通のポリプ
ロピレン樹脂でなる未延伸糸は上記乾式延伸では融着し
て延伸出来なかったので、比較例4では全ての温度を 1
40℃とし延伸した(表1でDと表示) 。
【0039】次に4.5lの水道水に普通ポルトランド
セメント400g、骨材として200メッシュ未満の滑
石粉(坂田粉砕工業製、モルタンS:SiO2;34wt%,MgO;3
としては、例えば滑石粉では200メッシュの金網を通
過する粒径の[商品名:モルタンS.坂田粉砕工業製]
(SiO2 34wt%.MgO 37 wt%.Al231
wt.FeO3 6 wt%.CaO 1wt%.水分 15 w
t%その他)を100gを使用し、表1に示す実施例ま
たは比較例のそれぞれの短繊維を、乾燥セメントマトリ
ックス(セメントと滑石粉との重量) に対して1.5重
量%(目方にして7.5g)を基準として、表1に示す
量を順次投入、混合して5lのセメントスラリー液を調
合した。
【0040】このスラリー液に凝集剤(商品名:アイケ
イフロック、市川毛織K.K製)0.02重量%水溶液
を20ml添加し、底面積が250mm×250mmの
モールド容器中に、5回に分けてこのスラリー液を注入
し、60メッシュの金網を通して脱水して抄造し、この
抄造物をその表面を上として順次重ねて5層の積層品と
し、厚さ約5mmの平板状の半可塑状成型物を得た。
【0041】この半可塑状成型物を室温、湿潤状態で2
8日間放置して自然養生し、セメント製品なして曲げ強
度およびたわみを測定した。またこれらの工程での目視
観察状態なども含め表1にその結果を示す。
【0042】
【表1】
【0043】注)表1において、界面活性剤の種類の項
に記載の略記号は下記を示しているものである。 LP:ラウリル ホスフェート カリウム TP:トリデシル ホスフェート カリウム PO:ポリオキシエチレンフエノールエーテル
【0044】なお、試験評価は次のようにして行なっ
た。
【0045】浮上繊維割合(%):作成したセメントス
ラリー液を10分間静置し、上澄み液の浮上繊維を金網
ですくい上げて乾燥し、繊維重量Agを測定し、繊維投
入量Bgより、浮上繊維割合(%)=A/B×100
の式で算出した。
【0046】分散状態:スラリー液をモールド容器中に
投入し、脱水して得られる半可塑状成型物の表面の凹凸
状態を観察し、下記のように評価した。 ◎:凹凸が非常に少ない状態。 ○:凹凸がやや少ない状態。 △:凹凸がやや多い状態。 ×:凹凸が非常に多い状態。
【0047】製品の表面外観:養生後のセメント製品の
表裏面を観察して下記のように評価した。 ◎:製品表面に繊維の露出がほとんど認められない状
態。 ○:製品表面に繊維の露出がやや少ない状態。 △:製品表面に繊維の露出がやや多い状態。 ×:製品表面に繊維の露出が多く認められる状態。
【0048】曲げ強度:JIS−A−1408により測
定した。 一次曲げ強度(LOP強度:kg/cm2):SS曲線の立ち
上がり最高強度。 二次曲げ強度(MOR強度:kg/cm2):SS曲線のLO
P以外の最高強度。 一次曲げたわみ(LOPたわみ:%):LOP強度に相
当するたわみ。 二次曲げたわみ(MORたわみ:%):MOR強度に相
当するたわみ。
【0049】図3はこれらのSS曲線を示し、○印はL
OP、・印はMORの位置を表示している。
【0050】なお、LOP強度はセメント板などのセメ
ント製品の曲げ破断強度に関係し、LOP強度が大きい
程割れにくく、MOR強度とMORたわみの積はシャル
ピー衝撃強度などの衝撃強度に関係し、この積の値が大
きい程、製品に釘を打っても割れない特長が生じる。し
たがってビニロンやアクリル繊維を用いたセメント製品
は、曲げ強度は良いが衝撃強度にやや難があり、従来の
ポリプロピレン繊維を用いた製品は、衝撃強度は良いが
曲げ強度に不足があったが、炭酸カルシゥムを練り込ん
だ本高結晶性ポリプロピレン樹脂を繊維表面とする本発
明のポリプロピレン繊維を用いた製品は、曲げ強度も衝
撃強度も共に優れていることが図3のSS曲線およびL
OPとMORの数値からわかる。
【0051】またシャルピー衝撃強度:JIS−B−7
722により測定した。
【0052】[実施例12〜13、比較例8〜11]上
記実施例および比較例に記載した繊維を用いて半可塑状
成型物を作成し、これを高圧プレスしたのち、上記実施
例と同様にして自然養生およびこの圧縮成型品をオート
クレーブ養生処理して各セメント製品の評価をした。そ
の結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】具体的には、7.2lの水道水に普通ポル
トランドセメント680g、パルプ17g、中国産マイ
カ粉末170g、および上記表2記載の各繊維を乾燥セ
メントマトリックス(セメントとマイカの重量)の1重
量%を基準にして、表2に示す量を順次投入、混合して
8lのセメントスラリー液を調整し、上記実施例と同様
に凝集剤(アイケイフロック0.02重量%水溶液)を
20ml、モールド容器中に8回にわけてこの凝集剤液
を注入し、脱水して厚さ約8mmの半可塑状成型物とし
た。この半可塑状成型物を200kg/cm2 の圧力で
一分間プレスし、この圧縮成型品を上記実施例と同様
に、室温、湿潤状態で28日間放置して自然養生および
この圧縮成型品を160℃で10時間、オートクレーブ
養生処理し、セメント製品となした。
【0055】[実施例14] 4.5lの水道水に普通
ポルトランドセメント100g、珪砂200g、消石灰
200gと実施例1で使用した繊維を乾燥セメントマト
リックス(セメント、珪砂、消石灰の重量)の1.5重
量%(7.5g)を順次投入、混合してセメントスラリ
ー液を調整した。このスラリー液に上記実施例と同様に
凝集剤(アイケイフロック0.02重量%水溶液)を2
0mlを添加し、底面積が250mm×250mmのモ
ールド容器中に5回に分けてこのスラリー液を注入し、
60メッシュの金網を通して脱水して抄造し、この抄造
物をその表面を上として順次重ねて5層の積層品とし、
厚さ約5mmの平板状の半可塑状成型物となした。この
半可塑状成型物を160℃で16時間、オートクレーブ
養生処理し、セメント製品となした。
【0056】[実施例15] 前記実施例1の芯鞘型複
合繊維に、界面活性剤としてステアリルホスフェートカ
リウム塩を付着させ、上記実施例14と同条件にてセメ
ント製品となした。
【0057】[実施例16] 普通ポルトランドセメン
ト1200g、珪砂800g、メチルセルロース20g
と実施例1使用した繊維を乾燥セメントマトリックス
(セメント、珪砂、の重量)の1.0重量%(20g)
を順次投入、混合したのち、乾燥セメントマトリックス
の20重量%(400g)の水道水を徐々に加えて混合
し、セメント成型材料を調合した。そしてこのセメント
成型材料を用いて押出成型し、厚さ1.2mm、幅5m
mの半可塑状成型物となしたのちこの半可塑状成型物を
160℃で16時間、オートクレーブ養生処理してセメ
ント製品となした。
【0058】[比較例12〜14] 上記実施例14の
繊維に代えて表1記載の比較例1、6,および7の繊維
を使用し、実施例14にもとづいてそれぞれ厚さ約5m
mの平板状の半可塑状成型物となし、オートクレーブ養
生処理してセメント製品となした。
【0059】上記実施例14〜16および比較例12〜
14のセメント製品を目視観察するとともに前記各実施
例と同様にしてLOP強度(kg/cm2 )とシャルピ
ー衝撃強度(kgf−cm)を測定評価した。その結果
を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
【発明の効果】このように本発明のセメント強化補強用
のポリプロピレン繊維は、Q値(Q:重量平均分子量/
数平均分子量の比)がQ≦5未満、沸騰n−ヘプタン不
溶分(HI:重量%)が97<HI<100、アイソタ
クチックペンタッド分率(IPF:モル%)が94≦I
PF<100である高結晶性ポリプロピレンからなる繊
維において、少なくとも該繊維の表層を構成するポリプ
ロピレン樹脂に炭酸カルシウム微粉末が練り込まれ、該
微粉末は、該微粉末の練り込まれたポリプロピレン樹脂
層の厚さ(単一繊維では繊維直径) をTμmとすると、
その平均直径( D:μm) がD<1かつD≦0.5T
で、その添加濃度( Ca%:重量%) が3≦Ca%≦2
0であり、該繊維表面に付着するアルキルホスフェート
アルカリ金属塩量( RP%:重量%) が0.05≦RP
%<10かつ36>Ca%・ RP%≧0.7であり、炭
酸カルシウム微粉末が練り込まれているにも拘らず繊維
の破断強度が6g /デニール以上を有し、しかも繊維の
主体部分が炭素と水素からなるポリプロピレン樹脂であ
るため、現在セメント補強用繊維として多用されている
ビニロン繊維やアクリル繊維に比べてはるかに耐アルカ
リ性に勝り、セメント製品中でのアルカリによる劣化現
象はほとんど生じなく、本発明のポリプロピレン繊維で
補強されたセメント製品はその繊維補強効果を長期に亘
りの持続する。
【0062】そのうえ従来のポリプロピレンからなる補
強用繊維の最大の難点であった繊維自体の疎水性に由来
するセメントマトリックスとの親和性の不良が改善さ
れ、ビニロン繊維やアクリル繊維とほぼ同等の親和性を
具備し、この親和性と良好な分散性、並びに耐アルカリ
性に高強度が付加されてセメント補強用として優れた効
果を発揮する。
【0063】即ち本発明の補強用ポリプロピレン繊維
は、ポリプロピレン樹脂からなる繊維でありながら、繊
維表面もしくはその近傍のポリプロピレン樹脂中に炭酸
カルシウム微粉末が存在し、カルシウムイオンを有する
この炭酸カルシウム微粉末あるいはこの微粉末と化学的
つながりを形成しているホスフェートによって、セメン
トマトリックスに対してビニロン繊維やアクリル繊維な
みの親和性を示し、本発明の補強用ポリプロピレン繊維
を添加することによりセメント製品の曲げ強度、衝撃強
度共に向上させることができる。
【0064】また本発明のポリプロピレン繊維は繊維表
面にアルキルホスフェート塩を付着させているため、セ
メントスラリー液中での分散が良く、セメントスラリー
液表面で繊維の浮上現象がなくなり、したがってその製
品は表面外観に優れ、投入された繊維が均一に分散して
いるため、有効に補強作用をなし、抄造法、流し込み
法、押し出し成型法などほとんどのセメント製品製造法
に本発明の補強用ポリプロピレン繊維を都合良く使用す
ることができる。また養生法も自然養生法は勿論のこ
と、蒸気養生法や170℃未満の温度でのオートクレー
ブ養生法に用いることができるので珪酸カルシウム板以
外の殆どのセメント製品の補強用として都合良く用いる
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の補強用ポリプロピレン繊維の断面図で
ある。
【図2】本発明の補強用ポリプロピレン繊維(芯鞘型)
の断面図である。
【図3】曲げ強度のSS曲線の比較図である。
【符号の説明】
1.単一繊維 2.芯成分 3.鞘成分

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Q値(Q:重量平均分子量/数平均分子
    量の比)がQ≦5未満、沸騰n−ヘプタン不溶分(H
    I:重量%)が97<HI<100、アイソタクチック
    ペンタッド分率(IPF:モル%)が94≦IPF<1
    00である高結晶性ポリプロピレンからなる繊維におい
    て、少なくとも該繊維の表層を構成するポリプロピレン
    樹脂に炭酸カルシウム微粉末が練り込まれ、該微粉末
    は、該微粉末の練り込まれたポリプロピレン樹脂層の厚
    さ(単一繊維では繊維直径) をTμmとすると、その平
    均直径( D:μm) がD<1かつD≦0.5Tで、その
    添加濃度( Ca%:重量%) が3≦Ca%≦20であ
    り、該繊維表面に付着するアルキルホスフェートアルカ
    リ金属塩量( RP%:重量%) が0.05≦RP%<1
    0かつ36>Ca%・ RP%≧0.7であり、繊維の破
    断強度が6g /デニール以上有することを特徴とするセ
    メント補強用ポリプロピレン繊維。
  2. 【請求項2】 上記セメント補強繊維が、炭酸カルシウ
    ム微粉末が練り込まれたポリプロピレン樹脂のみでなる
    請求項1記載の補強用ポリプロピレン繊維。
  3. 【請求項3】 炭酸カルシウム微粉末が練り込まれたポ
    リプロピレン樹脂を鞘部とし、炭酸カルシウムを含まな
    い上記ポリプロピレン樹脂を芯部とする請求項1記載の
    補強用ポリプロピレン繊維。
  4. 【請求項4】 請求項1記載のポリプロピレン繊維が、
    乾燥セメントマトリックスに対して0.5〜5重量%添
    加されたセメント組成物で形成されていることを特徴と
    する繊維補強セメント成形体。
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