JPH06153709A - 農業用軟質塩化ビニル系樹脂フィルム - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 フィルム同士の付着を防止した農業用軟質塩
化ビニル系樹脂フィルムの提供。 【構成】 塩化ビニル系樹脂に平均粒子径０．２〜１０
μｍの無機微粉末を混合した樹脂組成物からなるフィル
ムの少なくとも片面に、平均粒子径０．２〜１０μｍの
無機微粉末と常温で非粘着性の水溶性高分子との混合物
が付着されてなることを特徴とする、農業用軟質塩化ビ
ニル系樹脂フィルム。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、農業用軟質塩化ビニル
系樹脂フィルムに関するものである。更に詳しくは、二
次加工時及びハウス展張時にフィルム同士が粘着せず
又、ハウス展張後の換気等の作業性、並びに透明性が良
好な農業用軟質塩化ビニル系樹脂フィルムに関するもの
である。

【０００２】

【従来の技術】塩化ビニル系樹脂に可塑剤を配合した農
業用軟質塩化ビニル系樹脂フィルムは、一般には押出成
形法、カレンダー成形法等によって連続的に製造され、
ロール状に巻き取られた後、運搬、保管、使用される。
ウェルダー加工等のいわゆる二次加工は、ロール状に巻
き取られた巻きフィルムからフィルムを巻戻しつつ行わ
れる。

【０００３】しかしながら、該フィルムには多量の可塑
剤が配合されているため、フィルム表面が粘着性を示
し、二次加工により得られた製品は、フィルム同士が付
着し、ハウス又はトンネルへの展張作業がしにくく、ま
た、ハウス又はトンネルに展張後も、換気作業、開閉作
業がしにくいという問題があった。この問題を解決する
ために従来より、フィルムにエンボス加工を施したり、
固体微粒子を多量に配合することによって、表面を粗面
化しフィルムの粘着性を減少させるという方法やフィル
ムを二次加工する際にでんぷん粉等を散布して、粘着を
防止するという方法が用いられてきた。

【０００４】しかし、フィルムにエンボス加工を施した
り、固体微粒子を多量配合することによって、粘着性を
減少させるという方法には、フィルムの透明性を損な
い、ハウス内の作物が外から見えなくなるという欠点が
あった。また、でんぷん粉等を散布してフィルムの粘着
を防止するという方法では、でんぷん粉等が短期間のう
ちに雨水またはハウス内に発生する水滴の流下によって
除去されるのでフィルムの透明性は回復されるものの、
でんぷん粉等の流出後、フィルムの粘着を防止できない
ので、ハウス展張後の作業性が悪くなる。

【０００５】更に、でんぷん粉等を散布する方法では、
二次加工場ででんぷん粉等、粘着防止用の微粉末をフィ
ルム表面に散布する際に微粉末が空気中に飛散して作業
環境を著しく悪くするばかりでなく、粉末の損失が大き
いという欠点があり、また、フィルム製造時においてフ
ィルムをロール状に巻き取る直前に、フィルムの表面に
でんぷん粉を散布するという場合は、でんぷん粉は粉の
粒子が比較的大きいため、巻き取り後粒子がフィルム表
面にくいこみ、フィルムの表面平滑性が損なわれるとい
う欠点があった。さらに、酸化珪素、炭酸カルシウム等
の微粉末は、そのままではフィルム上に均一に付着させ
ることが困難であり、特に、粒子径が小さい場合には凝
集が起こり易く、分散不良が発生するという問題があっ
た。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の問題
点を克服すべくなされたものであり、ハウス展張時、及
び、展張後のフィルムの粘着を防止し、かつ透明性の良
好な農業用軟質塩化ビニル系樹脂フィルムを提供するこ
とを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】しかして、本発明の要旨
とするところは、塩化ビニル系樹脂１００重量部当り、
可塑剤３０〜７０重量部、平均粒子径０．２〜１０μｍ
の無機微粉末０．５〜１０重量部を含む樹脂組成物から
成るフィルムの少なくとも片面に、平均粒子径０．２〜
１０μｍの無機微粉末と常温で非粘着性の水溶性高分子
との混合物が付着されてなる、農業用軟質塩化ビニル系
樹脂フィルムに存する。以下、本発明を詳細に説明す
る。

【０００８】本発明において、塩化ビニル系樹脂とし
て、ポリ塩化ビニルのほか塩化ビニルを主体とした他の
コモノマーとの共重合体、これらの混合物またはこれら
と他の重合体あるいは共重合体との混合物を用いること
ができる。本発明の軟質塩化ビニル系樹脂フィルムは、
塩化ビニル系樹脂１００重量部当り３０〜７０重量部の
通常使用される可塑剤が配合されており、更に、平均粒
子径０．２〜１０μｍの無機微粉末が配合されている。
該無機微粉末は、軟質塩化ビニル系樹脂フィルムを展張
する際や、特に展張後の諸作業において、フィルムが粘
着するのを防ぐ働きをする。

【０００９】無機微粉末の平均粒子径が０．２μｍ未満
では粘着防止効果が不十分であり、一方、平均粒子径が
１０μｍより大きいとフィルムの透明性が低下し、又、
フィルム表面にピンホールが発生し易く、フィルムの強
度も低下し、好ましくない。無機微粉末の配合量は、塩
化ビニル系樹脂１００重量部当り、０．５〜１０重量部
とする。無機微粉末の配合量が０．５重量部より少ない
と粘着防止効果が劣り、１０重量部より多いとフィルム
の透明性が悪くなる。

【００１０】無機微粉末の具体例としては、クレー、タ
ルク、アスベスト、マイカ、ゼオライト、含水又は無水
の沈降性ケイ酸カルシウム等のケイ酸塩、シリカ、ハイ
ドロタルサイト類、酸化マグネシウム、二酸化チタン、
酸化亜鉛、酸化アルミニウム等の酸化物、炭酸カルシウ
ム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、硫酸バリウム、硫酸
カルシウム等の硫酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マ
グネシウム等の水酸化物が挙げられる。

【００１１】本発明の軟質塩化ビニル系樹脂フィルムに
は、他に必要に応じて通常用いられる各種樹脂添加剤、
例えば、防曇剤、滑剤、防霧剤、酸化防止剤、紫外線吸
収剤、光安定剤、染料、顔料等を配合することができ、
これらの添加剤は通常の配合量、例えば塩化ビニル系樹
脂１００重量部に対して、１０重量部以下で使用するこ
とができる。なお、塩化ビニル系樹脂に可塑剤、各種樹
脂添加剤を混合するには通常の混合技術、例えばリボン
ブレンダー、バンバリーミキサー、スーパーミキサーそ
の他、従来から知られている混合機を使用すれば良く、
塩化ビニル系樹脂混合物をフィルム化するにはＴダイ
法、インフレーション法等の押出成形法、カレンダー成
形法、流延法等の技術を用いることができる。更に、フ
ィルムの表面をグラビアコート法、リバースコート法等
によってアクリル樹脂等で被覆してもよい。

【００１２】次に、フィルムの少なくとも片面に付着さ
せる無機微粉末と水溶性高分子との混合物であるが、無
機微粉末としては、前記した無機微粉末の内から選べば
よいが、特に、炭酸マグネシウム、酸化珪素、酸化アル
ミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化マグ
ネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、酸化
亜鉛等が好ましく、これらは単独で用いても、２種以上
併用してもよい。

【００１３】無機微粉末は平均粒子径が０．２〜１０μ
ｍのものとし、殊に１〜５μｍであるものが好ましい。
無機微粉末の平均粒子径が１０μｍより大きいと、フィ
ルム表面に均一に付着させても、フィルムをロール状に
巻いて保管する過程で巻き圧力によって粒子がフィルム
表面にくいこみ、フィルム表面がシボ状（表面に小さな
凹凸が形成された状態）になり平滑性が失われ、透明性
が低下するので好ましくない。一方、平均粒子径が０．
２μｍより小さいと、無機微粉末が凝集して、大粒子を
生じたり、フィルム上での粒子の偏在を来す恐れがあ
る。

【００１４】無機微粉末の付着量は、フィルムの単位面
積当り０．０１〜１ｇ／m²、特に、０．０５〜０．５ｇ
／m²とするのが良い。付着量が０．０１ｇ／m²より少量
では粘着防止効果が劣り、又、１ｇ／m²より多いと、微
粉末がフィルム表面上で部分的に堆積し、フィルム表面
の平滑性が損なわれる恐れがある。

【００１５】次に、常温で非粘着性の水溶性高分子とし
ては、ポリビニルアルコール（以下ＰＶＡという）、ポ
リエチレンオキサイド、ポリアクリル酸ナトリウム、ビ
スコース、可溶性でんぷん類例えばカルボキシメチルで
んぷん、ジアルデヒドでんぷん、醗酵多糖類、水溶性セ
ルロース類例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロ
キシエチルセルロース、アルキルセルロース等が挙げら
れる。これらの水溶性高分子は、単独で用いても、２種
以上を併用しても良い。又、無機微粉末と水溶性高分子
の付着割合は、重量比で１対１０〜１０対１、好ましく
は３対７〜７対３とするのが良い。無機微粉末の割合が
１０対１よりも多いと、雨水等による付着物の流出性が
劣り、又、１対１０よりも少ないと作業性の改良効果は
見られない。

【００１６】更に、上記付着混合物には必要に応じて、
フィルムの透明性の回復に支障のない程度で、少量の酸
ないしアルカリ、消泡剤、界面活性剤、帯電防止剤、酸
化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、防かび剤、防藻剤等の
公知の添加剤を混合することができる。

【００１７】フィルムに無機微粉末と水溶性高分子の混
合物を付着させるには、通常は、この混合物の分散液
を、回転ドラム、２流体ノズル等によってフィルム上に
散布するか、又は、グラビアコート法もしくはリバース
コート法等によりフィルム上に塗布した後、自然乾燥
法、あるいは熱風もしくは赤外線照射による強制乾燥法
により乾燥させれば良い。分散媒としては水、又は、水
溶性高分子を溶かすことができるアルコール等の有機溶
剤、又は、それらの混合物を用いることができる。

【００１８】又、無機微粉末と水溶性高分子微粉末を混
合した混合微粉末、もしくは無機微粉末を水溶性高分子
で表面処理した微粉末を、静電気による帯電を利用した
静電ダスター法によって付着させてもよい。フィルム表
面に上記混合物を付着させた後は、フィルムを従来公知
のフィルム巻き取り方式、例えばセンターワインダー、
サーフェスワインダー等によって巻き取り、ロール状の
製品とする。又、フィルムの厚さは、強度、生産コスト
等を考慮し、０．０３〜０．５mm、好ましくは０．０５
〜０．３mmの範囲にするのが良い。以下、本発明を実施
例に基づいて詳細に説明するが、本発明はその要旨を越
えない限り以下の例に限定されるものではない。

【００１９】

【実施例】

実施例１〜３ 比較例１〜４ （１）軟質塩化ビニル系樹脂フィルムの製造

【００２０】

【表１】 ポリ塩化ビニル（重合度＝１３００） １００重量部 ジ−２−エチルヘキシルフタレート ５０重量部 トリクレジルホスフェイト ５重量部 エポキシ樹脂 ２重量部 Ｂａ−Ｚｎ系液状安定剤 ２重量部 Ｂａ−Ｚｎ系粉末安定剤 ２重量部 ソルビタンモノパルミテート ２重量部 ベンゾフェノン系紫外線吸収剤 ０．２重量部

【００２１】以上挙げた樹脂原料、樹脂添加物、及び表
−１に示す無機微粉末を秤量し、これらをスーパーミキ
サーで１０分間攪拌混合したのち、１６５℃に加温した
ロール上で混練し、Ｌ型カレンダー装置によって、幅１
００cm、厚さ０．１mmの７種の軟質塩化ビニル系樹脂フ
ィルムを製造した。更に、カレンダーロールから出た後
のフィルムをクーリングロールに接触させて、フィルム
を８０℃以下に冷却した。次に表−１に示したように、
種々の無機微粉末と水溶性高分子を所定量秤量し、水を
加えて攪拌混合して無機微粉末と水溶性高分子の合計濃
度が１０重量％になるように水分散液を調整し、回転ド
ラム式のスプレー機（ニッカ理研（株）製、ローターダ
ンプニング）を用いて該フィルムの両面に散布した。
（但し、比較例４においては散布しなかった。）

【００２２】水溶性高分子としては、ポリビニルアルコ
ール（日本合成化学工業（株）製、ゴーセノールＫＭ−
１１、以下ＫＭ−１１と略記）またはメチルセルロース
（信越化学工業（株）製、メトローズ９０ＳＨ、以下９
０ＳＨと略記）を用いた。

【００２３】（２）フィルムの透明性及び粘着性の評価 フィルムの処理 （１）においてロール状に巻き取った７種のフィルム
を、農業用フィルムの製造から使用（展張）迄の通常の
保管条件、期間を想定して、ロール状にしたまま、温度
４０℃、相対湿度９０％とした雰囲気下で１週間放置し
た（このものを「放置後フィルム」という）。

【００２４】また、上記放置後フィルムのロール状物か
ら４０cm角のフィルムを切り取り、これを図１に示す天
井が２０°の傾斜角を有する、温水の入った水槽の天井
部に展張して水槽を密閉した。この水槽全体を恒温室中
に入れ、温水を４０℃に保持し、恒温室温度（水槽の外
気温度）を２０℃に保持して３時間処理した。この処理
により、展張フィルムの内面は、凝縮した水の傾斜面に
沿った流下により洗われた。次いでフィルムの表裏を逆
にして再び水槽を密閉し、同一条件で３時間処理した。
処理終了後、フィルムをはずして乾燥させた。（このも
のを「流水後フィルム」という。）

【００２５】 透明性の評価 放置後フィルム及び流水後フィルムにつき、波長５５５
nmにおける直進光線透過率を分光光度計（（株）日立製
作所製、３２３型分光光度計）によって測定した。この
直進光線透過率は、その数値が、比較例４のフィルムの
直進光線透過率である９０％に近い程透明なフィルムで
あることを意味する。評価結果を表１−に示す。

【００２６】 粘着性の評価 放置後フィルムについては、ロール状物から４０cm角の
フィルムを切り取り、これを４つに折って重ね、この上
に２０kgの荷重をかけ、４０℃に保持した雰囲気下で、
２４時間放置し、荷重をとり、フィルムを解きほぐす際
のフィルム表面同士の付着状況を観察した。なお、表−
１に示した評価結果は次の意味を有する。 ○・・・粘着性ほとんどなし △・・・粘着性若干あり ×・・・粘着性著しくあり

【００２７】流水後フィルムについては、３cm×１０cm
のフィルムを切り取り、これを２枚重ねてゴムロールを
挟圧して、フィルム間の空気をなくして両者を密着させ
た。この密着させたフィルムを、５０℃及び７０℃の温
度に設定したオーブン内に入れ、この温度で２時間保持
した。次いで、フィルムをオーブンから取り出し、室温
に１５分間放置した後、引張り試験機（（株）島津製作
所製、島津オートグラフＩＭ５００形）にロードセルを
設置して２枚のフィルムを剥離し、その際の剥離応力を
以下の測定条件のもとで測定した。なお、３cm幅のフィ
ルムを剥離するのに要するグラム数を剥離応力の単位と
した。評価結果を表−１に示した。

【００２８】＜測定条件＞ （１）ロードセル ： １kg用 （２）剥離速度 ： １００mm／min （３）チャートスピード ： ５０mm／min （４）剥離距離 ： ８cm

【００２９】

【表２】

【００３０】この表から、以下のことがわかる。フィル
ムに配合された無機微粉末の配合量が１５重量部と多い
場合（比較例２）は、流水により無機微粉末が除かれて
も、流水後のフィルムの透明性は悪い。又、付着物に水
溶性高分子が含まれていない場合（比較例３）は、フィ
ルムに付着された無機微粉末の流水による流出性が劣る
ので、流水後のフィルムの透明性は悪くなっている。次
に、フィル表面に無機微粉末が付着されてはいるが、フ
ィルムに無機微粉末が配合されていない場合（比較例
１）は、実施例１〜３、比較例２、３と比べて、フィル
ムに粘着性がある。

【００３１】

【発明の効果】本発明の農業用軟質塩化ビニル系樹脂フ
ィルムは、粘着性がほとんどなく、また付着物の流出性
に優れ、更に流出後も粘着性がほとんどなく、展張後の
透明性も良好であり、農業上の利用価値が極めて大きい
ものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例中の「 フィルムの処理」において使
用した水槽の概念図である。

【符号の説明】

１ 水槽 ２ 温水の水面位置 ３ 未処理フィルム ４ 評価サンプルフィルム

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 塩化ビニル系樹脂１００重量部当り、可
   塑剤３０〜７０重量部、平均粒子径０．２〜１０μｍの
   無機微粉末０．５〜１０重量部を含む樹脂組成物からな
   るフィルムの少なくとも片面に、平均粒子径０．２〜１
   ０μｍの無機微粉末と常温で非粘着性の水溶性高分子の
   混合物が付着されてなる、農業用軟質塩化ビニル系樹脂
   フィルム。