JPH06100244B2 - バネ定数可変式ダイナミツクダンパ− - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、異なる共振振動が発生する構造部材の振動を
抑制するためのバネ定数可変式ダイナミックダンパーに
関するものである。

（従来技術） 従来より、自動車においては、エンジン等の振動発生源
からの振動によって車体構造部材が共振を起し、これに
よって大きな振動騒音が発生したり乗心地が悪くなるな
どの問題がある。

そこで、従来、このような問題に対処すべく、振動発生
源と該振動発生源を支持する構造部材との間に弾性体を
介設して、該弾性体により振動発生源の振動を吸収して
構造部材の共振を抑制するようにすることが一般に広く
用いられている。特に、実開昭57−422号公報のものに
おいては、エンジンの振動周波数がその回転数に応じて
変化することに鑑み、エンジンと該エンジンを支持する
構造部材との間に介設される弾性体のばね定数を、圧油
を利用して可変となし、弾性体による振動吸収効果を有
効に発揮できるようになされている。

（発明が解決しようとする問題点） しかし、上記従来の弾性体による振動吸収機構だけで
は、振動発生源からの振動を完全に吸収できずに構造部
材が共振を起しているのが実情であり、乗心地の向上等
を図る見地から構造部材の共振をより有効に抑制し得る
解決手段が要請されている。

一方、振動を抑制するものとしてはダイナミックダンパ
ーが知られているが、従来公知のダイナミックダンパー
は、単にある周波数の振動に対して振動抑制効果を発揮
するにすぎない。これに対し、上記構造部材は、通常、
異なる共振領域を有しているので、従来公知のダイナミ
ックダンパーではかかる振動を有効に抑制することがで
きない。

本発明はかかる諸点に鑑み、その目的とするところは、
上述の如く振動発生源からの振動により異なる共振振動
が発生する構造部材に対し、その共振振動を有効に抑制
することができかつコンパクトなダイナミックダンパー
を提供せんとするものである。

（問題点を解決するための手段） 上記目的を達成するため、本発明の解決手段は、異なる
共振振動が発生する構造部材に装着されるダイナミック
ダンパーを、下記のような構成とする。

すなわち、上記構造部材に連結され、上記構造部材振動
方向のバネ定数の小さい小バネ定数部と上記バネ定数の
大きい大バネ定数部とから構成されたゴム弾性体と、該
ゴム弾性体に支持された質量部材と、上記構造部材の振
動状態を検出する振動状態検出手段と、該振動状態検出
手段の検出結果に基づいて、上記ゴム弾性体の構造部材
振動方向のバネ定数を可変とするバネ定数可変手段とを
備える構成する。また、上記バネ定数可変手段は、上記
ゴム弾性体の小バネ定数部の変形を規制する規制部材を
備える構成とする。

（作用） 上記構成により、本発明では、異なる共振振動が発生す
る構造部材の振動状態を検出手段により検出し、その検
出結果に基づいて、バネ定数可変手段がゴム弾性体の構
造部材振動方向のバネ定数を上記構造部材の共振振動周
波数に合せて変え、該ゴム弾性体と質量部材とにより構
造部材の共振振動が有効に抑制されることになる。

ここで、上記ゴム弾性体は、構造部材振動方向のバネ定
数の小さい小バネ定数部と上記バネ定数の大きい大バネ
定数部とから構成されるものであり、上記バネ定数可変
手段は、その規制部材で上記ゴム弾性体の小バネ定数部
の変形を規制することでゴム弾性体の構造部材振動方向
のバネ定数を変更する構成になっている。このような構
成では、ゴム弾性体の構造部材振動方向のバネ定数を大
きく変える場合でも、上記ゴム弾性体は単に小バネ定数
部と大バネ定数部とを有するだけで足り、該弾性体ひい
てはダイナミックダンパーをコンパクトなものとするこ
とができる。

（実施例） 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。

第１図および第２図は本発明の一実施例としてのバネ定
数可変式ダイナミックダンパーＡを示し、このダイナミ
ックダンパーＡは、自動車の車体構造部材としてエンジ
ンを支持するエンジンサポートメンバーｍの共振振動を
抑制するために該エンジンサポートメンバーｍに装着さ
れたものである。尚、エンジンサポートメンバーｍは、
上下振動に対し高低２つの固有振動数を有するもので、
エンジンから伝達される振動の周波数がその各個有振波
数と一致したとき共振振動が発生することが実験等から
知られている。また、エンジンの振動の周波数はその回
転数に応じて変化する。

上記ダイナミックダンパーＡは、円柱形状のラバー１と
該ラバー１の両端面に各々固着されたスタットボルト２
付きの連結金具3,4とからなるゴム弾性体５を備えてお
り、該ゴム弾性体５は、その一方の連結金具３をエンジ
ンサポートメンバーｍの下面に連結せしめて吊下げ状態
に設けられている。また、上記ゴム弾性体５の他方つま
り下側に位置する連結金具４には所定の質量ないし重量
を有する鉛等からなる円盤状の質量部材６が連結支持さ
れている一方、ラバー１の軸方向中央部にはその軸方向
と直交する方向に貫通する略楕円形状の貫通孔７が穿設
されている。よって、ゴム弾性体５は、上記貫通孔７の
周辺部（ラバー１の軸方向中央部）でエンジンサポート
メンバーｍの振動方向（上下方向）のバネ定数が小さい
小バネ定数部1aと、上記貫通孔７を挟んむラバー１の上
下両端部で上記バネ定数が大きい大バネ定数部1b,1bと
を備えている。

８は上記ゴム弾性体５（ラバー１）の上下方向つまりエ
ンジンサポートメンバーｍに振動する方向のバネ定数を
可変とするためのバネ定数可変手段であって、該バネ定
数可変手段８は、上記ラバー１の貫通孔７に挿通された
規制部材９と、該規制部材９を、その挿通方向の軸回り
に90゜毎に回転駆動するアクチュエータとしての駆動モ
ータ10とを備えている。上記規制部材９は、貫通孔７と
相似する略楕円形状の筒部材よりなり、その長軸方向の
幅は貫通孔７の短軸方向の長さと略同じに設定されてい
る。

一方、上記駆動モータ10は、ゴム弾性体５のエンジンサ
ポートメンバーｍ側の連結金具３の一端部を延長してな
る取付座部3aに取付けられており、また該駆動モータ10
には、エンジンサポートメンバーｍの振動状態を検出す
る振動状態検出手段としての電子制御回路11が信号の授
受可能に接続されている。該電子制御回路11は、エンジ
ンがエンジンサポートメンバーｍの低い方の固有振動数
と一致する周波数の振動を発生する状態にあることをそ
の回転数より検出する第１検出手段12と、エンジンがエ
ンジンサポートメンバーｍの高い方の固有振動数と一致
する周波数の振動を発生する状態にあることを検出する
第２検出手段13と、上記両検出手段12,13からの信号を
受けるごとに駆動モータ10に対し作動信号を発するオア
回路14とからなる。しかして、上記電子制御回路11から
の信号（つまり検出結果）に基づいて駆動モータ10を作
動させて規制部材９を90゜毎に回転させ、エンジンサポ
ートメンバーｍが低い方の固有振動数で共振振動を起す
ときには予め規制部材９の長軸方向を貫通孔７の長軸方
向に一致させてラバー１の貫通孔７周辺部つまり小バネ
定数部1aの変形を許容する一方、エンジンサポートメン
バーｍが高い方の固有振動数で共振振動を起すときには
規制部材９の長軸方向を貫通孔７の短軸方向に一致させ
て該規制部材９によりラバー１の小バネ定数部1aの変形
を規制するように構成されている。尚、15,15は上記貫
通孔７内周面の短軸方向部分つまり規制部材９の回転に
伴い該規制部材９外周面の長軸方向部分と接触する部分
に設けられた摺り板であって、規制部材９と接触する際
に摺り易くするためのものである。

次に、上記実施例のバネ定数可変式ダイナミックダンパ
ーＡの作動について説明するに、エンジンサポートメン
バーｍがエンジンからの振動により低い方の固有振動数
で共振振動を起す状態にある場合には、バネ定数可変手
段８において、電子制御回路11の第１検出手段12がその
状態を予めエンジンの回転数より検出し、該電子制御回
路11（オア回路14）から発せられる信号により駆動モー
タ10が作動して規制部材９がその長軸方向をゴム弾性体
５（ラバー１）の貫通孔７の長軸方向と一致する状態に
回転される（第２図の実線状態）。このことにより、ゴ
ム弾性体５は、ラバー１の貫通孔７周辺部である小バネ
定数部1aで容易に変形し易くなり、そのバネ定数がエン
ジンサポートメンバーｍの低い方の固有振動数に対応し
て小さくなるため、該ゴム弾性体５と質量部材６とによ
る振動抑制効果が有効に発揮される。

一方、エンジンの回転数が上述の場合における回転数よ
りも増大しエンジンサポートメンバーｍがエンジンから
の振動により高い方の固有振動数で共振振動を起す状態
になった場合には、バネ定数可変手段８において、電子
制御回路11の第２検出手段13がその状態を予めエンジン
の回転数より検出し、該電子制御回路11から発せられる
信号により駆動モータ10が作動して、規制部材９がその
長軸方向を上述の場合のゴム弾性体５の貫通孔７の長軸
方向と一致した状態から貫通孔７の短軸方向と一致する
状態に90゜回転される（第２図の仮想線状態）。このこ
とにより、ゴム弾性体５は、上記規制部材９によりラバ
ー１の小バネ定数部1aでの変形が規制され、そのバネ定
数がエンジンサポートメンバーｍの高い方の固有振動数
に対応して大きくなるため、該ゴム弾性体５と質量部材
６とによる振動抑制効果が有効に発揮される。

このように、エンジンサポートメンバーｍが高低いずれ
の固有振動数で共振振動を起す場合でも、ゴム弾性体５
のバネ定数がその固有振動数に対応して変化して該ゴム
弾性体５と質量部材６とによる振動抑制効果が有効に発
揮されるので、エンジンサポートメンバーｍの共振振動
を確実にかつ大幅に抑制することができ、振動騒音の低
減化や乗心地の向上を図ることができる。

しかも、上記ゴム弾性体５のバネ定数を大きく変える場
合でも、ゴム弾性体５は、単にラバー１の軸方向中央部
にその軸方向と直交する方向に挿通孔７を設けて、挿通
孔７周辺部であるバネ定数の小さい小バネ定数部1aとそ
の上下両側のばね定数の大きい大バネ定数部とを有する
だけで足り、該弾性体５ひいてはダイナミックダンパー
Ａをコンパクトなものとすることができる。

尚、上記実施例では、本発明を、エンジンを支持するエ
ンジンサポートメンバーｍの共振振動を抑制するための
ダイナミックダンパーとして適用した場合について述べ
たが、その他の異なる共振振動が発生する構造部材，例
えばサスペンション部材を支持するサブフレームの共振
振動を抑制するダイナミックダンパー等としても同様に
適用できるのは勿論である。

（発明の効果） 以上の如く、本発明のバネ定数可変式ダイナミックダン
パーによれば、異なる共振振動が発生する構造部材に対
し、その共振振動周波数（固有振動数）に応じて、質量
部材を支持するゴム弾性体のばね定数が変わることによ
って、１つのダイナミックダンパーでもって各共振領域
での共振振動を有効に抑制することができ、振動騒音の
低減化および乗心地の向上を簡便に図ることができる。
しかも、上記ゴム弾性体のバネ定数を大きく変える場合
でも、ゴム弾性体は単に小バネ定数部と大バネ定数部と
を有するだけで足り、該弾性体ひいてはダイナミックダ
ンパーのコンパクト化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を示すもので、第１図は縦断正面
図、第２図は第１図のII−II線における断面図である。 Ａ……ダイナミックダンパー、ｍ……エンジンサポート
メンバー（構造部材）、1a……小バネ定数部、1b……大
バネ定数部、５……ゴム弾性体、６……質量部材、７…
…貫通孔、８……バネ定数可変手段、９……規制部材、
10……駆動モータ、11……電子制御回路（振動状態検出
手段）。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】異なる共振振動が発生する構造部材に装着
   されるダイナミックダンパーであって、 上記構造部材に連結され、上記構造部材振動方向のバネ
   定数の小さい小バネ定数部と上記バネ定数の大きい大バ
   ネ定数部とから構成されたゴム弾性体と、 該ゴム弾性体に支持された質量部材と、 上記構造部材の振動状態を検出する振動状態検出手段
   と、 該振動状態検出手段の検出結果に基づいて、上記ゴム弾
   性体の構造部材振動方向のバネ定数を可変とするバネ定
   数可変手段とを備えており、 上記バネ定数可変手段は、上記ゴム弾性体の小バネ定数
   部の変形を規制する規制部材を備えていることを特徴と
   するバネ定数可変式ダイナミックダンパー。
2. 【請求項２】バネ定数可変手段は、ゴム弾性体に設けら
   れた貫通孔に挿通され、その挿通方向の軸回りに回転す
   ることにより上記ゴム弾性体の小バネ定数部である上記
   貫通孔の周辺部の変形を規制する規制部材と、該規制部
   材を回転駆動するアクチュエータとを備えてなる特許請
   求の範囲第（１）項記載のバネ定数可変式ダイナミック
   ダンパー。