JPH0463259B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は自動車用プロペラシヤフトの如く、長
大な回転シヤフトを、その中間部で軸受を用いて
回転支持させ、且つ該軸受の外方に弾性体を介挿
して車体側に固定した如き、回転部防振構造に関
するものである。

従来の技術 従来より、FR車のように変速機と最終減速機
とが離反していて、両者間をプロペラシヤフトで
連結してエンジンの回転力を伝える車両にあつて
は、前記プロペラシヤフトの中間部にフツクジヨ
イントを介装してある他、プロペラシヤフトの回
転に起因する振動を吸収するための防振装置が設
けられている。この振動は、回転軸相互間の回転
力伝達時に発生する15〜30Hz程度の低周波振動
と、シヤフトの真円度、材質に起因する偏心等に
よつて発生する30〜50Hz程度の中、高周波振動が
あり、中間軸受を介して車体側に伝達されると、
横揺れ又はこもり音を発生させることになるの
で、前記防振装置によつてこれらの各種振動伝達
を防止している。例えば第５図及び第６図に示す
従来例にあつてはプロペラシヤフト２に嵌合固着
された中間軸受３の外周に嵌着され、基部５ａの
両側から延設した腕部５ｂによつて環状中空部５
ｃを形成した第１弾性インシユレータ５と、前記
環状中空部５ｃ内に配設されるスポンジゴム等で
成る第２弾性インシユレータ６と、前記第１弾性
インシユレータ５の内、外周に加硫接着等によつ
て固着された内、外ブラケツト８，９と、外ブラ
ケツト９と車体１０との間に介装された支持ブラ
ケツト１１とにより構成されている。

更に上記の構成を改良した防振装置として実開
昭59−186518号公報には、前記した第１弾性イン
シユレータ５内に第１及び第２流体室を設け、両
流体室間を絞り孔によつて連通して、非圧縮性流
体を充填した構造が提案されている。

又、上記した流体を用いた防振装置の改良型と
して、第７図に示す装置例が用いられている。即
ち第７図において、プロペラシヤフト１２と内筒
１３間に軸受１４を介在させて、プロペラシヤフ
トを回転自在に支持し、前記内筒１３と外筒１５
間に弾性材１６を装着する。この弾性材１６の内
方に流体室１７を画成し、シリコンオイル等粘性
流体を充填する一方、外筒１５に一端が固定され
た抵抗体１８を流体室１７内に突出形成し、振動
時に流動する粘性流体の抵抗とすることによつて
振動の吸収をはかるようになつている。

発明が解決しようとする問題点 しかしながらこのような従来の回転部防振装置
にあつては、振動中の低周波振動は減衰させ得る
が、主として高周波振動の伝達率を下げることが
困難であるという欠点があつた。例えば第５図及
び第６図に示す従来例にあつては第１弾性インシ
ユレータと第２弾性インシユレータで決定するば
ね定数を大きくして減衰係数を高めると、15〜30
Hzの低周波振動を吸収することができる反面、30
〜50Hz、又はそれ以上の高周波振動の吸収効果が
低下し、こもり音が発生することになる。

更に液体を用いた防振装置を適用した場合も同
様であつて、粘性流体の流通抵抗に基づく振動の
減衰、吸収効果が振動の周波数特性に依存し、例
えば第７図に示す従来例の場合には抵抗体１８を
大きくすることによつて、低周波振動の制振効果
を高める反面、前記抵抗体１８が障害となつて、
高周波振動の吸収効果がなくなるという欠点を有
している。

又、プロペラシヤフト等の回転体は単純な上下
方向の振動とは異なつていて、該プロペラシヤフ
ト自体が自転しながら振動しているものであつ
て、この振動を側方から見ると、シヤフトの中心
部が上下方向に盛り上がつた状態、即ち縄飛びの
縄のような振動の形状を呈している。従つて回転
部防振装置としてはこのようなプロペラシヤフト
の振動を減衰させることが主要な課題ともなつて
いる。

そこで本発明は上記した如き従来の回転部防振
装置が有している欠点を解消し、特には粘性液体
入りの防振装置を改良することによつて、低周波
振動は勿論、高周波における振動伝達率を低減さ
せることを目的とするものである。

問題点を解決するための手段 本発明は上記の目的を達成するために、前記し
た如き粘性流体を充填し、該粘性流体内に抵抗体
を配設した回転部防振装置において、前記抵抗体
は、外筒又は内筒の何れか一方側から粘性流体内
に突出して内外筒間の全周にわたつて形成された
環状の支持板と、該支持板と揺動移動可能に連接
して内外筒間の全周にわたつて形成された環状の
抵抗板とから成り、前記支持板又は抵抗板の何れ
か一方側には周方向に沿う環状溝が形成されてい
るとともに、支持板又は抵抗板の他方側には周方
向に沿う爪体が突出形成され、この爪体を前記環
状溝と径方向に所定の空〓を保ちつつ遊嵌させた
ことを特徴とするものである。

作 用 上記の構成としたことによつて、環状の抵抗板
と支持板とが揺動移動が可能となり、車両の走行
時のプロペラシヤフトの回転に起因する振動中、
低周波振動の減衰効果をもたせると同時に、高周
波振動時には、前記抵抗板の「ガタ」作用によつ
て該抵抗板をなくしたと同様の作用をもたらし
て、結果的に高周波領域における振動伝達率を低
減させる作用を発揮する。

実施例 以下、図面の記載に基づいて本発明の実施例を
説明する。

第１図に示した構成において、２１はプロペラ
シヤフトであり、図外のエンジンから車輪に回転
力を伝える。このプロペラシヤフト２１には軸受
２２のベアリング２３が嵌合固着されている。
又、ベアリング２３には内筒２５が嵌合固着され
ており、この内筒２５と、外方に位置する外筒２
６間に、小さなばね定数を持ち、内部に流体室２
８を画成した弾性体２７が加硫接着されている。
前記流体室２８内にはシリコンオイルその他の粘
性流体が充填される。

２９は外筒２６から流体室２８内に突出して、
内筒２５及び外筒２６間の全周にわたつて形成さ
れた環状の支持板であり、３０は上記支持板２９
と揺動移動可能に連接され、内筒２５及び外筒２
６間の全周にわたつて形成された環状の抵抗板で
ある。第２図に示したように、上記支持板２９に
は周方向に沿う環状溝２９ａが形成されていると
ともに、前記抵抗板３０には周方向に沿う爪体３
０ａが突出形成されている。そして該抵抗板３０
の爪体３０ａが支持板２９の前記環状溝２９ａに
径方向に所定の空〓を保ちつつ遊嵌されている。
前記支持板２９と抵抗板３０とによつて抵抗体３
１を構成している。

このような構成としたことによつて、プロペラ
シヤフト２１の回転時に発生する振動が、弾性体
２７を介して流体室２８に伝わり、粘性流体を流
動移動させる際に、環状の抵抗板３０が流体に対
する抵抗体として働き、振動の吸収効果をもたら
す。このような作用中にあつて抵抗板３０は支持
板２９に対して所定の空〓を保持して係合してい
るので、流体の移動に伴つて「ガタ」を発生す
る。しかしながらこの「ガタ」はシヤフト側から
伝えられる振動の周波数に応じて動作が異つてお
り、主として低周波大振巾振動が伝えられた際に
は流体の流通量を低減させる一方、高周波微振動
が伝えられた際には流体の流通に応動し、換言す
れば抵抗板３０が無い場合と同様な作用となる。
従つて主として高周波領域における振動伝達率を
低減させる作用をもたらすことができる。

又、第３図は本発明の他の変形例であり、支持
板２９の流体室２８側に支持板２９から粘性流体
内に突出形成された爪体２９ｃを形成すると共
に、流体室２８の中にあつて、環状の抵抗板３０
に前記爪体２９ｃの先端部が揺動移動可能に形成
した環状溝３０ｃを形成した構成となつている。

このような構成としたことにより、前記第１
図、第２図と同様な効果を有すると共に、支持
板、抵抗板の構造を簡単にできる。

上記第２図に示した実施例では、外筒２６から
粘性流体内に環状の支持板２９が内外筒間の全周
にわたつて突出されているとともに該支持板２９
に対して抵抗板３０の爪体３０ａが遊嵌されてお
り、第３図に示した実施例では、支持板２９と一
体の爪体２９ｃが粘性流体内に内外筒間の全周に
わたつて突出形成されているとともに該爪体２９
ｃに対して抵抗板３０が遊嵌された例が示されて
いるが、本発明は上記に限定されるものではな
く、逆に内筒２５から粘性流体内に環状の支持板
２９もしくは爪体２９ｃを突設して、この支持板
２９もしくは爪体２９ｃに抵抗板３０を遊嵌する
ようにしても良い。

更にプロペラシヤフト等の回転体は、該プロペ
ラシヤフト自体が自転しながら振動しており、こ
の振動を側方から見ると、シヤフトの中心部が上
下方向に盛り上がつた状態、即ち縄飛びの縄のよ
うな振動状態となつているが、本実施例に示した
ように粘性流体内に突出する支持板２９に対して
環状の抵抗板３０を内外筒間の全周にわたつて揺
動移動可能に連接したことによつて、該環状の抵
抗板３０が粘性流体内でプロペラシヤフト２１の
径方向に揺動して、シヤフトの回転に起因する全
周にわたつた径方向の振動を効果的に減衰させる
ことができる。第４図は、本発明装置と、第７図
に示した従来装置との振動周波数−振動伝達率の
関係を示すグラフである。本グラフから明らかな
ように従来装置例の場合、振動周波数の上昇に伴
つて振動伝達率K_Dが急激に上昇しているのに反
して、本発明装置にあつては、振動周波数が200
Hz近辺まで振動伝達率K_Dは略一定で且つ低く抑
えられ、200Hzを超えてもK_Dは微増のカーブとな
つている。

発明の効果 以上詳細に説明した如く、本発明は外筒又は内
筒の何れか一方側から粘性流体内に突出した環状
の支持板もしくは環状の抵抗の何れか一方側に周
方向に沿う環状溝を形成するとともに何れか他方
側には周方向に沿う爪体を突出形成して、この爪
体を前記環状溝と径方向に所定の空〓を保ちつつ
遊嵌させたことにより、シヤフト等回転体から伝
わる振動中、低周波振動はもとより、高周波振動
による振動伝達率を低減し得るという効果を発揮
する。即ち、低周波大振巾の振動は前記抵抗板が
働いて有効な制振効果をもたらす一方、高周波微
動の揺動は、前記抵抗板が流体とともに揺動して
所謂「ガタ」を発生し、流体の流通状態を高める
作用により、振動伝達率を低減させることにな
る。更に環状の抵抗板を内外筒間の全周にわたつ
て形成したので、この環状の抵抗板が粘性流体内
でプロペラシヤフトの径方向に揺動することによ
り、シヤフトの全周にわたつた径方向の振動を減
衰させることが可能となる。従つて低周波振動に
よる車体の横揺れ現象と、高周波振動による微小
振動及び車体の共振にともなうこもり音の防止効
果が大きく、各種車両のプロペラシヤフト等回転
体の防振装置として有効に用いることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る回転部防振装置を示す要
部断面図、第２図、第３図は抵抗体の構成例を示
す部分断面図、第４図は本発明装置と従来装置の
特性比較グラフ、第５図は従来の回転部防振構造
を示す要部断面図、第６図は同正面図、第７図は
他の従来例を示す要部断面図である。 ２１……プロペラシヤフト、２２……軸受、２
３……ベアリング、２５……内筒、２６……外
筒、２７……弾性体、２８……流体室、２９，２
９ｂ……支持板、２９ａ……環状溝、２９ｃ……
爪体、３０，３０ｂ……抵抗体、３０ａ……爪
体、３０ｃ……環状溝、３１，３１ａ……抵抗
体、３２……弾性体。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 外筒と内筒間に中空の弾性体を介在させ、前
   記外筒を車体側に固定するとともに、内筒の内側
   に取付けた軸受を介してシヤフトを回転自在に支
   持し、前記弾性体内に粘性流体を充填するととも
   に該粘性流体内に抵抗体を配設した回転部防振装
   置において、 前記抵抗体は、外筒又は内筒の何れか一方側か
   ら粘性流体内に突出して内外筒間の全周にわたつ
   て形成された環状の支持板と、該支持板と揺動移
   動可能に連接して内外筒間の全周にわたつて形成
   された環状の抵抗板とから成り、前記支持板又は
   抵抗板の何れか一方側には周方向に沿う環状溝が
   形成されているとともに、支持板又は抵抗板の他
   方側には周方向に沿う爪体が突出形成され、この
   爪体を前記環状溝と径方向に所定の空〓を保ちつ
   つ遊嵌させたことを特徴とする回転部防振装置。