JPH025606B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （技術分野） 本発明は自動車の推進軸（プロペラシヤフト）
の中間部を支承するセンターベアリングの防振支
持装置としてのセンターベアリングマウントに関
するものである。

（従来技術） 従来から、自動車の推進軸の中間部を支承する
ために、かかる推進軸を玉軸受けの如きセンター
ベアリングで受け、そしてゴム等の弾性体を介し
て車体又はフレームに支持せしめるようにした中
間軸受け構造が採用されている。この中間軸受け
には、推進軸に起因する振動の車室内への伝達を
遮断する機能が要求され、そのために前記ゴム等
の弾性体の形状には、種々なる工夫がなされてい
る（実公昭45−14810号公報、実公昭54−29402号
公報、実開昭55−104120号公報、実開昭59−
54316号公報等参照）。

（解決課題） しかしながら、この種の従来のセンターベアリ
ングマウントにあつては、ゴム等の弾性体の弾性
特性のみを利用して、推進軸を防振支持しようと
するものであるために、低周波、高振幅の振動入
力に対して充分な減衰効果を発揮し得ない問題が
あつた。しかして、自動車の発進時においてエン
ジンとデフ間の相対位置がずれることにより、推
進軸が捩れ、上下方向の振動が発生することとな
るが、この振動を抑えるためには、低周波、高振
幅での高減衰特性を発揮せしめる必要があるので
ある。

（解決手段） 本発明は、かかる課題を解決するために為され
たものであつて、その特徴とするところは、(a)自
動車の推進軸の中間部を支承するセンターベアリ
ングが収容される内筒金具と、(b)該内筒金具の外
周面に沿つて、それを取り巻くように一体的に設
けられた周方向に中空部を有し且つ外周部が開口
せしめられた、環状の中空クツシヨンゴム体と、
(c)該環状の中空クツシヨンゴム体の外周部に嵌着
され、該外周部の開口を液体密に閉塞する外筒金
具と、(d)前記環状の中空クツシヨンゴムの中空部
内に収容された非圧縮性流体と、(e)前記環状の中
空クツシヨンゴム体の中空部内で周方向に配設さ
れ、該中空部内に収容された非圧縮性流体中にお
ける変位によつて所定の粘性抵抗を惹起せしめる
ダンピング・デイスク部材とを含むように、セン
ターベアリングマウントを構成したことにある。

このような本発明に従うセンターベアリングマ
ウント構造にあつては、環状のクツシヨンゴム体
の中空部内に収容された非圧縮性流体中に配設さ
れたダンピング・デイスク部材の存在によつて、
低周波、高振幅の振動が入力した場合に、該ダン
ピング・デイスク部材の変位に従つて惹起される
粘性抵抗に基づいて大きな減衰が発揮されること
となるのである。

なお、かかる本発明においてダンピング・デイ
スク部材は好適にはＴ字型断面を有し、そのＴ字
型の頭部が前記非圧縮性流体中に他の部材に接す
ることなく位置せしめられる一方、そのＴ字型の
脚部が前記内筒金具の外周面に設けられた中空ク
ツシヨンゴム体の基部に固定せしめられることと
なる。

また、このようなダンピング・デイスク部材の
Ｔ字型の頭部に対向するように、前記中空クツシ
ヨンゴム体の外周部の開口に所定のストツパー部
材を嵌め込み、過大な振動入力によつて惹起され
る大変位に対して、それらストツパー部材とダン
ピング・デイスク部材との当接によつて、それ以
上の変形を阻止し、以て非線形バネ特性を発現せ
しめるようにすることができる。

さらに、中空クツシヨンゴム体の外周部の開口
を挟むように、その両側に所定の金属リングをそ
れぞれ加硫接着せしめ、該金属リングと外筒金具
とがカシメ固定されるようにすれば、それら中空
クツシヨンゴム体と外筒金具との間の取付けが効
果的に行われ得、そして又、そのような金属リン
グの外周面及び外筒金具の内周面の何れか一方に
シールゴム層を固着せしめ、該シールゴム層を介
して、それら金属リングと外筒金具とを嵌着せし
めることにより、それらの間のシールが効果的に
為され得ることとなる。

（実施例） 以下、本発明を更に具体的に明らかにするため
に、本発明の実施例を、図面に基づいて詳細に説
明することとする。

まず、第１図に示される本発明に係るセンター
ベアリングマウントの一例において、１０は、自
動車の推進軸の中間部を支承するセンターベアリ
ングが内周面に嵌め込まれて、収容される内筒金
具であつて、この内筒金具１０の外周面に、円環
状の中空のクツシヨンゴム体１２が一体的に設け
られると共に、その外周部の開口がゴム材料から
なるストツパー部材１４と金属製の外筒金具１６
によつて流体密に閉塞せしめられて、かかる中空
のクツシヨンゴム体１２内が密閉された空所とさ
れ、そしてこの空所内に所定の非圧縮性流体、例
えばシリコーンオイル、エチレングリコール、ポ
リエチレングリコール、水、低分子量重合体、或
いはそれらの混合物の如き流体１８が封入される
と共に、Ｔ字型のダンピング・デイスク部材２０
が、そのＴ字型の脚部においてクツシヨンゴム体
１２の内筒金具１０側基部に固定せしめられるこ
とによつて、センターベアリングマウントが構成
されている。

より具体的には、内筒金具１０と円環状の中空
クツシヨンゴム体１２とは、第２図に示されてい
るように、一体加硫成形方法によつて一体的に形
成されることとなるのである。すなわち、センタ
ーベアリングを収容、保持する内筒金具１０の外
周面に沿つて、それを取り巻くように、左右対称
な「つ」の字型断面形状を有する湾曲部を組み合
せて構成される、周方向に中空部２２を有し且つ
外周部が開口せしめられた構造のクツシヨンゴム
体１２が加硫成形されて、それらが一体的に構成
されているのである。

そして、かかるクツシヨンゴム体１２の外周部
の開口を挟むように、その両側に所定の金属リン
グ２４，２４が同時に加硫接着せしめられ、更に
それら金属リング２４の外周面にシールゴム層２
６が設けられている。なお、クツシヨンゴム体１
２の基部、すなわち内筒金具１０への固着部にお
ける中空部２２側の面には、ダンピング・デイス
ク部材２０の脚部を嵌め込み、固定するための嵌
合溝２８が、内筒金具１０の周方向に沿つて設け
られている。

また、環状のクツシヨンゴム体１２の中空部２
２内において周方向に配設されるダンピング・デ
イスク部材２０は、第３図ａ及びｂに示されるよ
うに、半割り形状とされた金属部材であつて、そ
の二つが円環状に組み合わされて用いられること
となる。このダンピング・デイスク部材２０は、
ここでは、Ｔ字型断面を有しており、そのＴ字型
の頭部３０が第１図に示される如く他の部材に接
することなく非圧縮性流体１８中に位置せしめら
れる一方、そのＴ字型の脚部３２が前記クツシヨ
ンゴム体１２の基部に周方向に設けられた嵌合溝
２８に嵌合せしめられ、必要ならば接着剤等の助
けを借りて固定せしめられるようになつている。

さらに、かかる中空のクツシヨンゴム体１２の
外周部の開口、より正確には加硫接着せしめられ
た金属リング２４間の隙間に嵌め込まれるストツ
パー部材１４は、第４図ａ及びｂに示されるよう
に、ゴム等の弾性材料からなるリング形状を呈す
るものであり、さらにまた該ストツパー部材１４
やクツシヨンゴム体１２（金属リング２４）の外
周部に嵌着され、その開口を流体密に閉塞する外
筒金具１６は、第５図ａ及びｂに示される如く、
単なる円筒形状を為すものである。

なお、この外筒金具１６は、第１図の如き組付
け構造において、従来と同様にして車体若しくは
フレーム側に取り付けられ、目的とする推進軸の
中間部を支承せしめるようになつている。

ところで、上例の如きセンターベアリングマウ
ントを製造するに際しては、まず第２図に示され
る如き、内筒金具１０の外周面にクツシヨンゴム
体１２を加硫成形してなる一体加硫成形品を準備
し、次いでこの一体加硫成形品のクツシヨンゴム
体１２の基部に設けた嵌合溝２８に対して、第３
図ａ，ｂに示される如きダンピング・デイスク部
材２０をその脚部３２において嵌め込み、固定せ
しめ、かかるクツシヨンゴム１２内において周方
向に環状に配置せしめる。

次いで、シリコーンオイルなどの非圧縮性流体
１８中において、クツシヨンゴム体１２の外周部
に設けた一対の金属リング２４，２４間に第４図
ａ，ｂに示される如きストツパー部材１４を嵌め
込み、そしてそれを第５図ａ，ｂに示される如き
外筒金具１６に圧入せしめて、該外筒金具１６に
対して八方絞りを行なうことによつて、クツシヨ
ンゴム体１２の中空部２２内に非圧縮性流体１８
を収容した第６図に示される如き組付け体を形成
せしめる。そして、その後、かかる組付け体の外
筒金具１６の両端部をロールカシメすることによ
り、金属リング２４，２４にカシメ固定して、第
１図の如きセンターベアリングマウントが完成さ
れることとなるのである。

従つて、このような構造のセンターベアリング
マウントにあつては、内筒金具１０内を貫通して
配置される推進軸の軸直角方向、例えば車両上下
方向の振動が入力した場合において、該振動につ
れて内筒金具１０が外筒金具１６に対して相対的
に変位し、これによつて内筒金具１０側のクツシ
ヨンゴム体１２基部に固定されたダンピング・デ
イスク部材２０が該クツシヨンゴム体１２の中空
部２２内、すなわち非圧縮性流体１８中において
変位するようになり、そしてこの変位に従つてダ
ンピング・デイスク部材２０の頭部３０にて非圧
縮性流体１８が撹拌せしめられるに際して、所望
の粘性抵抗が惹起せしめられることとなり、そこ
にクツシヨンゴム体１２の弾性作用とは異なる、
効果的な減衰作用が発揮されることとなるのであ
る。そして、この減衰作用は、非圧縮性流体１８
中におけるダンピング・デイスク部材２０の変位
が大きければ大きい程、増大せしめられ、それ故
低周波・高振幅の振動に対して高減衰効果を得る
ことができ、これによつて自動車の発進時などに
おける車両上下方向の振動を有効に抑制せしめる
ことが可能となつたのである。

また、上例の構造のセンターベアリングマウン
トにあつては、ダンピング・デイスク部材２０の
頭部３０に対向するように、外筒金具１６側にス
トツパー部材１４が設けられているところから、
大変位入力に対しては、それらが当接して、それ
以上の変位が阻止されるようになることとなり、
このためマウント全体としても非線形バネ特性を
発現せしめ得る利点がある。さらに、クツシヨン
ゴム体１２の外周部の開口両側に設けた金属リン
グ２４，２４の外周面にシールゴム層２６，２６
を形成して、このシールゴム層２６，２６を介し
て、外筒金具１６が嵌着せしめられる構造とされ
ているところから、かかる外筒金具１６とクツシ
ヨンゴム体１２との間のシール効果もより高めら
れているのである。

なお、上例にあつては、有効な粘性抵抗を惹起
するダンピング・デイスク部材２０はＴ字型の断
面形状を有し、そのＴ字型の頭部３０によつて、
内筒金具１０の外筒金具１６に対する変位（クツ
シヨンゴム体１２の変形）に基づく非圧縮性流体
１８の撹拌を惹起せしめ、以て効果的な粘性抵抗
を発現せしめているが、そのようなダンピング・
デイスク部材２０としては、所望の粘性抵抗を発
現し得る適宜の形状のものを用いることができ、
また第７図に示される如く、Ｔ字型の頭部３０に
適数個の穴３４をあけて、発生せしめられる粘性
抵抗が制御されるようにした構造も好適に採用さ
れることとなる。

さらに、シールゴム層２６は、上例では金属リ
ング２４の外周面に設けられているが、これに代
えて外筒金具１６の内周面に設けられていても何
等差支えない。

また、本発明は、上例の構造の他にも、本発明
の趣旨を逸脱しない範囲内において、当業者の知
識に基づいて種々なる変形施された形態において
実施され得るものであり、そのような変形された
実施形態のものが、本発明の範疇に属するもので
あることは、また言うまでもないところである。

（発明の効果） 以上の説明から明らかなように、本発明に従う
センターベアリングマウントは、環状のクツシヨ
ンゴム体の中空部内に所定の非圧縮性流体を封入
せしめると共に、かかる非圧縮性流体中における
ダンピング・デイスク部材の変位によつて、該非
圧縮性流体が撹拌されるようにして、所望の粘性
抵抗を惹起せしめ、以て大きな減衰作用を発揮せ
しめるようにしたものであつて、これにより自動
車の発進時等に発生する低周波、高振幅の振動入
力に対して効果的な減衰を達成し得るものであ
り、そこに、本発明の大きな工業的意義が存する
ものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に従うセンターベアリングマウ
ントの一実施例を示す断面図であり、第２図はそ
のようなセンターベアリングマウントに用いられ
る内筒金具とクツシヨンゴム体からなる一体加硫
成形品の断面図、第３図ａは同じくダンピング・
デイスク部材の正面図、第３図ｂは第３図ａにお
ける方向視図、第４図ａは同じくストツパー部
材の正面図、第４図ｂは第４図ａにおける―
断面図、第５図ａは同じく外筒金具の正面図、第
５図ｂは第５図ａにおける―断面図、第６図
は外筒金具のカシメ加工前の状態を示す第１図に
対応する図であり、第７図はダンピング・デイス
ク部材の他の形態を示す第１図に相当する要部拡
大断面図である。 １０：内筒金具、１２：クツシヨンゴム体、１
４：ストツパー部材、１６：外筒金具、１８：非
圧縮性流体、２０：ダンピング・デイスク部材、
２４：金属リング、２６：シールゴム層。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 自動車の推進軸の中間部を支承するセンター
   ベアリングが収容される内筒金具と、 該内筒金具の外周面に沿つてそれを取り巻くよ
   うに一体的に設けられた、周方向に中空部を有し
   且つ外周部が開口せしめられた環状の中空クツシ
   ヨンゴム体と、 該環状の中空クツシヨンゴム体の外周部に嵌着
   され、該外周部の開口を流体密に閉塞する外筒金
   具と、 前記環状の中空クツシヨンゴム体の中空部内に
   収容された非圧縮性流体と、 前記環状の中空クツシヨンゴム体の中空部内で
   周方向に配設され、該中空部内に収容された非圧
   縮性流体中における変位によつて所定の粘性抵抗
   を惹起せしめるダンピング・デイスク部材とを、 含むことを特徴とするセンターベアリングマウ
   ント。 ２ 前記ダンピング・デイスク部材がＴ字型断面
   を有し、そのＴ字型の頭部が前記非圧縮性流体中
   に他の部材に接することなく位置せしめられる一
   方、そのＴ字型の脚部が前記内筒金具の外周面に
   設けられた中空クツシヨンゴム体の基部に固定せ
   しめられた特許請求の範囲第１項記載のセンター
   ベアリングマウント。 ３ 前記ダンピング・デイスク部材のＴ字型の頭
   部に対向するように前記中空クツシヨンゴム体の
   外周部の開口に嵌め込まれたストツパー部材を有
   する特許請求の範囲第２項記載のセンターベアリ
   ングマウント。 ４ 前記中空クツシヨンゴム体の外周部の開口を
   挟むように、その両側に、金属リングがそれぞ加
   硫接着せしめられる一方、該金属リングと前記外
   筒金具とがカシメ固定されている特許請求の範囲
   第１項乃至第３項の何れかに記載のセンターベア
   リングマウント。 ５ 前記金属リングの外周面及び前記外筒金具の
   内周面の何れか一方にシールゴム層を固着せし
   め、該シールゴム層を介して、該金属リングと該
   外筒金具とを嵌着せしめることにより、それらの
   間のシールが確保されるようにした特許請求の範
   囲第１乃至第４項の何れかに記載のセンターベア
   リングマウント。