JPH0565190B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

［産業上の利用分野］ 本発明は、水の存在下で活性を示す金属フタロ
シアニン化合物に吸水性樹脂を配合してなる吸水
性樹脂組成物及び該組成物を消臭剤として利用す
る消臭方法に関するものである。本発明の吸水性
樹脂組成物は、吸水性樹脂の有する優れた保水性
と、水の存在下で活性を示す金属フタロシアニン
化合物を効果的に組合せたものであつて、金属フ
タロシアニン化合物の有する各種活性をより確実
に、しかも長期的に発揮し得る様にしたものであ
り、その活性を利用して様々の用途への適用が考
えられる。従つて本発明の吸水性樹脂組成物はそ
の用途を特定するものではないが、本明細書では
その一例として消臭方法への適用を主体にして説
明を進める。 ［従来の技術］ 従来から実施されている消臭処理方法として
は、活性炭吸着法、触媒燃焼法、オゾンまたは薬
剤による酸化法、中和法、バクテリア分解法、酵
素法などが知られている。しかしこれらの方法
は、ランニングコストが高い、管理が煩雑で
ある、消臭作用の持続性が乏しい、消臭効果
が十分とは言えない、といつた様々の欠点を含ん
でいる。 このうち酸化作用を有する薬剤を用いて無臭ガ
スを分解する方法は、現在のところ最も効果的な
方法とされているが、この方法では薬剤として重
クロム酸カリウムや硫酸などの劇薬を使用しなけ
ればならないので、取扱いに注意を要するとか薬
剤による二次汚染の危険があり、しかも消臭のた
めの処理温度を高くしなければならないといつた
難点があり汎用性に欠ける。また最近では、酵素
による酸化解毒システムを利用して悪臭分子を酸
化分解させる方法も提案されているが、温度やPH
などの条件に対する安定性が低く、適用範囲が限
定されるという欠点を有している。 そこでたとえば金属ポルフイリンや金属ポルフ
イラジン等の金属錯体の酸化還元能を活用し、そ
の触媒的作用によつて悪臭物質を分解して無臭化
する技術が開発されつつある。中でも金属フタロ
シアニン化合物は、悪臭物質に対する分解反応
速度が速く且つ分解率が高く、常温で反応が進
行する、水の共存下で分解反応を進めることが
できる、空気中の酸素を酸化分解に活用でき
る、サイクル反応であつて触媒寿命が長い、と
いつた様々の特徴があり、消臭剤として大きな期
待が寄せられその使用方法が種々検討されてい
る。例えば特開昭62−97555号公報には、金属フ
タロシアニン化合物をポリビニルアルコールやビ
スコースレーヨンなど様々の高分子化合物に結合
させ、繊維状、フイルム状、チツプ状、ゴム状、
粉末状等色々の形態の消臭剤として活用できる様
にした技術が提案されている。 ［発明が解決しようとする課題］ ところが上記公開公報に開示された技術は、金
属フタロシアニン化合物を繊維素材やフイルム素
材に配合して様々の用途に適した形態のものに加
工し得るという利点を有するだけであつて、金属
フタロシアニン化合物の有する消臭作用を効率良
くしかも長期間に亘つて発現させるという観点か
らすると、必ずしも満足できるものとは言えな
い。 本発明はこの様な事情に着目してなされたもの
であつて、その目的は、金属フタロシアニン化合
物の有する活性、たとえば消臭作用を、高分子化
合物との組合せにより効率良く且つ長期的に発揮
させることのできる技術を提供しようとするもの
である。 ［課題を解決するための手段］ 上記課題を解決することのできた本発明組成物
の構成は、吸水性樹脂に金属フタロシアニン化合
物を活性成分として配合せしめ、水の存在下で金
属フタロシアニン化合物の活性を発揮させる様に
したところに要旨を有するものであり、この組成
物は金属フタロシアニン化合物と水分が共存する
ことにより悪臭物質の分解を著しく促進する作用
を有しているので、消臭の必要な分野及び用途に
おいて広く活用することができる。 ［作用］ 本発明で使用される金属フタロシアニン化合物
は、下記一般式によつて表わすことができる。 （但し、式中Ｍは金属原子、Y₁〜Y₄は少なく
とも１個が同一又は異なつて有機残基で残りが水
素原子である） 上記式中、Ｍで示される金属原子としては、例
えば鉄、コバルト、銅、ニッケル、マンガン、オ
スミウム、チタン、モリブデン、タングステンな
どが挙げられるが、消臭効果の最も優れたものは
鉄、コバルトである。Y₁〜Y₄で示される有機残
基としては、例えばアルキル基、置換アルキル
基、ハロゲン、ニトロ基、アミノ基、アゾ基、チ
オシアネート基、カルボキシル基、カルボニルク
ロリド基、アルデヒド基、アミド基、ニトリル
基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、フエノキシ
基、スルホン酸基、スルホニルクロリド基、スル
ホンアミド基、チオール基、クロロメチル基、ア
ルキル珪素基、ビニル基等が例示され、これらの
うちカルボキシル基、スルホン酸基などは金属塩
を構成していても良く、またアミノ基等は４級塩
を構成していても良い。更に上記置換基は無機物
質や高分子化合物と結合していても良く、無機物
質としてはシリカゲルやガラス繊維、炭素繊維等
が、高分子化合物としてはセルロース、でんぷ
ん、ゼラチン、カゼイン及びグアガム等の天然高
分子化合物やその誘導体、ポリビニルアルコー
ル、ポリ（メタ）アクリル酸及びその金属塩また
はアルキルエステル、ポリ（メタ）アクリルアミ
ド、ポリモノまたはジアルキルアミノ（メタ）ア
クリレート、ポリヒドロキシアルキル（メタ）ア
クリレート、ポリビニルスルホン酸及びその金属
塩、ポリビニルエステル、ポリスチレン、ポリビ
ニルアセタール、ポリエステル、ポリアミド、ア
ミノ樹脂、アルキド樹脂等およびこれらの共重合
体等前記置換基と結合し得る合成高分子化合物が
挙げられる。 上記金属フタロシアニン化合物は、水の共存下
で悪臭物質を分解させる触媒として有効に作用す
るものであり、水分量が不十分なときには充分な
活性が得られない。そこで従来例では該化合物の
存在系に何らかの形で水分を供給して活性を持た
せていたのであるが、供給される水分量が不足す
る場合はその活性が十分に発揮されず、また十分
量の水分が共存している間はよいとしても、水分
が蒸発してしまうとその活性は急速に減退する。
従つて優れた活性を持続させるには頻繁に水分を
補給しなければならず、活性維持が極めて面倒で
ある。 そこで本発明では、活性を持続する為に必須と
される水分を吸水性樹脂との併用によつて確保
し、金属フタロシアニン化合物の活性を長期間に
亘つて高レベルに維持しようとするものである。
従つて吸水性樹脂は適度の吸水性と保水性を有す
るものであればどの様なものであつてもよいが、
金属フタロシアニン化合物の活性をより効果的に
発揮させるうえで、自重の２倍以上の水を吸収す
るものであることが好ましく、特に好ましいもの
は自重の５〜1000倍吸水するものである。このよ
うなものとして例えば、ポリアクリル酸塩系架橋
体、でんぷん−アクリル酸グラフト重合体、イソ
ブチレン−無水マレイン酸共重合架橋体の中和
物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の
ケン化物などがあげられる。 吸水性樹脂と金属フタロシアニン化合物との配
合方法としては、例えば、吸水性樹脂粉末と金属
フタロシアニン化合物とを湿式混合する方法、吸
水性樹脂の製造過程における含水ゲルに金属フタ
ロシアニン化合物粉末を混合する方法、吸水性樹
脂の製造過程における重合時に金属フタロシアニ
ン化合物を共存させておく方法などがあげられ
る。 金属フタロシアニン化合物に対する吸水性樹脂
の割合は、要求される活性の程度によつて適宜決
定すればよいが、金属フタロシアニン化合物に対
して好ましくは100000重量部以下、より好ましい
のは0.1〜10000重量部の範囲である。金属フタロ
シアニン化合物が優れた消臭性能を有していると
は言え、100000重量部を越えて添加する場合に
は、金属フタロシアニン化合物が希釈され過ぎた
状態となり、悪臭物質に対する分解触媒としての
作用が十分に発揮されない。一方、0.1重量部未
満ではこれらの金属フタロシアニン化合物が高価
であるという面で、実用にそぐわず、また充分な
水分量が供給されない場合がある。 この様にして得られる組成物をたとえば消臭剤
として用いる場合、金属フタロシアニン化合物を
単独で使用する場合に比べて下記の様な利点が得
られる。 消臭作用とその持続性の増大 金属フタロシアニン化合物の消臭活性は前述の
如く水の存在によつて著しく高められることが確
認されており、一方吸水性樹脂は空気中の水分や
近傍に存在する水を吸収し、且つこの水分を安定
に保持する性質をもつているので、これを金属フ
タロシアニン化合物と配合しておくと該化合物の
近傍に常に水が存在することになり、優れた消臭
活性が長時間に亘つて維持される。こうした特徴
は吸水性を持たない高分子物質に金属フタロシア
ニン化合物を結合させたものに比べて、実用上非
常に大きい。 活性有効面積の増大 金属フタロシアニン化合物は、高価であるた
め、多量に用いるわけにはいかない。しかし少量
では悪臭成分ガスとの接触機会も少なくなつて消
臭活性を充分活用するには至らない。しかしなが
ら吸水性樹脂と配合することにより、金属フタロ
シアニン化合物の微粉末を比較的広い範囲に分散
させることができるので、その分広い空間体積を
占めることになり、消臭効率を高めることができ
る。 増量剤的効果 金属フタロシアニン化合物は使い方によつては
極く少量でも充分な消臭活性を示すが、極めて微
細で且つ軽量の粉末であるため、飛散もしくは発
塵の問題あるいは少量取扱いの面倒さなど煩雑な
点が多い。しかし吸水性樹脂と配合することによ
り、飛散や発塵の問題は殆んどなくなるので、取
扱いが安全かつ容易になる。 本発明に係る吸水性樹脂組成物の使用方法にも
格別の制約はなく、該吸水性樹脂組成物をそのま
ま粉粒状で使用したり、あるいは、顆粒状、ペレ
ツト状、圧縮成形体等として使用し得るほか、
紙、不織布、布などの間に挟んでサンドイツチ状
としたり、紙、不織布、布、フイルムなどの透湿
性材料に含浸もしくは付着させたり、更にはゴ
ム、プラスチツクなどとブレンドして使用するな
ど様々の形態で使用することができる。更に本発
明の吸水性樹脂組成物は、他の任意の無機もしく
は有機の増量剤と混合し、上記と同様に様々の形
態で使用することができる。 次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する
が、本発明はもとより下記実施例によつて制限を
受けるものではなく、前述の趣旨に適合し得る範
囲で変更して実施することはいずれも本発明の技
術的範囲に含まれる。 ［実施例］ 実施例 １ 吸水性樹脂粉末（ポリアクリル酸塩系架橋体；
日本触媒化学工業(株)製商品名「アクアリツク
CA」）500gと鉄フタロシアニンオクタカルボン
酸粉末（日清製粉(株)製商品名「アースクリーン」）
5gを常温下で湿式混合して、吸水性樹脂組成物
(1)を得た。 実施例 ２，３ 実施例１の鉄フタロシアニンオクタカルボン酸
に代えて、下記第１表に示す金属フタロシアニン
化合物を使用し、それ以外は実施例１と同様にし
て吸水性樹脂組成物(2)，(3)を得た。

【表】 実施例 ４ 実施例１において、市販の吸水性樹脂（でんぷ
ん−アクリル酸グラフト重合体）を用いた以外は
実施例１と同様にして、吸水性樹脂組成物(4)を調
製した。 実施例 ５ 実施例１において、鉄フタロシアニンオクタカ
ルボン酸粉末の量を50gとする以外は実施例１と
同様にして、吸水性樹脂組成物(5)を調製した。 比較例 １ 鉄フタロシアニンオクタカルボン酸粉末をその
ままで消臭剤試料とした。 比較例 ２ 実施例１で用いた吸水性樹脂粉末「アクアリツ
クCA」を単独で消臭剤試料とした。 比較例 ３ 鉄フタロシアニンオクタカルボン酸粉末5gを
25gの水と混合し、消臭剤試料とした。 性能試験 １ 金属フタロシアニン化合物の量が30mgとなるよ
うに上記の消臭剤試料を直径10cmのシヤーレに秤
取し、実施例１〜５及び比較例２の試料において
は、100mlの水を加えて吸水性樹脂に吸水させて
ゲル状物とした。これを１容量のポリプロピレ
ン製容器に入れて蓋をした。 次いで夫々の容器に、初期濃度7000ppmのエチ
ルメルカプタンとアンモニアガスを入れ、30分後
に残存する夫々のガス量をガスクロマトグラフイ
ー又はガス検知管法によつて測定し、各臭気成分
の残存率（％）を求めた。結果は第２表に示す。

【表】 第２表からも明らかである様に、本発明の吸水
性樹脂組成物は、エチルメルカプタンおよびアン
モニアのいずれに対しても優れた消臭効果を有し
ている。 性能試験 ２ 実施例１および２で得た吸水性樹脂組成物(1)お
よび(2)のそれぞれ5gをプラスチツク製容器（120
ml）に入れ、成人男子15人の混合尿を100mlずつ
加え、30分後に、23〜49才の男性パネラー50人に
よる臭気の評価テストを行い、本発明による吸水
性樹脂組成物を用いない場合と比較した。結果を
第３表に示す。

【表】 第３表からも明らかである様に本発明の吸水性
樹脂組成物は、人尿に対して優れた消臭効果を示
すことが確認された。 実施例 ６〜７ 実施例１において、鉄フタロシアニンオクタカ
ルボン酸粉末の量を夫々0.5g、0.25gとする以外
は実施例１と同様にして、それぞれ吸水性樹脂組
成物(6)および(7)を調製した。 性能試験 ３ 吸水性樹脂組成物(1)，(6)および(7)の各3gをそ
れぞれ1.5容量のポリプロピレン製容器に入れ、
水300gを添加してゲル状物にした。 次いで夫々の容器に初期濃度100ppmの硫化水
素を注入し、60分後に残存する硫化水素量をガス
検知管法によつて測定し、残存率（％）を求め
た。 結果は第４表に示す。

【表】 第４表からも明らかな様に樹脂量が2000重量部
の場合でも、本発明の吸水性樹脂組成物は十分な
消臭効果を示している。しかし要求される消臭能
力によつて樹脂量を増減させることが望まれる。 ［発明の効果］ 上記実施例からも明らかである様に本発明の吸
水性樹脂組成物は優れた消臭効果を有するもので
あり、該吸水性樹脂組成物を消臭剤として使用す
ることにより、人間の日常生活圏にある悪臭物質
を効率良く分解して無臭化することができる。し
かも、この消臭剤は分解酸化反応の触媒として作
用するものであるから消耗されるものではなく、
吸水性樹脂に保持された水分の共存とも相まつて
消臭活性を長時間持続する。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 吸水性樹脂と金属フタロシアニン化合物を含
   み、水の存在下で金属フタロシアニン化合物の活
   性を発揮させるものであることを特徴とする吸水
   性樹脂組成物。 ２ 請求項１に記載の吸水性樹脂組成物を用いる
   消臭方法。