JP2004346130A - 吸水性樹脂組成物および衛生用品 - Google Patents

吸水性樹脂組成物および衛生用品 Download PDF

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Hisashi Suzuki
久之 鈴木
Yasuo Suzuki
康雄 鈴木
Shigeru Hagiwara
滋 萩原
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Abstract

【課題】消臭・脱臭効果および抗菌・除菌効果に優れる吸水性樹脂組成物およびこれを用いてなる衛生用品を提供する。
【解決手段】吸水性樹脂と、固形ヨウ素剤とを含有することを特徴とする吸水性樹脂組成物である。本発明の組成物は、ヨウ素の存在により、大腸菌やカンジタ菌などの雑菌の繁殖も同時に抑制されて、雑菌に起因する非衛生的な状態の改善が期待できる。また、吸水性樹脂と固形ヨウ素剤とを含ませて、上記効果を奏する衛生用品とすることもできる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、消臭・抗菌効果に優れる吸水性樹脂組成物および吸水性樹脂と固形ヨウ素剤とを用いてなる衛生用品に関するものである。特に、本発明は、抗菌・除菌作用を有し、人体やペットから発生する排泄物臭、体臭その他の悪臭を有効に取り除くことができる吸水性樹脂組成物およびこれを用いてなる使い捨ておむつ、生理用ナプキン、ペット用排尿処理用品等の脱臭・抗菌作用を有する衛生用品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、日常生活をしていく上で、各種衣類等の身回り品から、また、湿気その他に起因して各種の細菌が繁殖して、臭気が生じて、生活環境が悪化することがある。例えば、老人ホームや介護の必要な老人を抱えている家庭ではいわゆる寝たきり老人の排泄物臭が周囲さらには室外等にも漂い、周囲のみならず本人に不快感を与えるのみならず、衛生状態をも悪化させる。特に、近年の衛生状態の飛躍的な向上により、臭いを徹底的に排除する傾向にあり、またある意味異常なまでに清潔感を求める傾向がある。この傾向は、大人老人用の介護用の使い捨ておむつ、子供幼児用の使い捨ておむつに限らず、女性用生理用ナプキンにもいえ、従来の吸収能のみでなく、種々の脱臭・消臭・抗菌・除菌作用の付与もまた強く要求されている。
【0003】
従来から使い捨ておむつや生理用ナプキン対しては、漏れない、皮膚にやさしい及び使い易いという3つの要求がなされており、これらの要求を満たすため、日々開発が進んでいる。しかしながら、尿等の排泄物の消臭機能に関しては、強い要求があるものの、排泄物の臭いが強いことや十分な機能を付与するために消臭・脱臭剤を多量に使用すると着用時にゴワゴワして感触が許容できないくらい悪くなるなど、未だ充分とは言えない状況である。加えて、一般的に乳幼児の尿排泄物の臭気は、それほど強いものではないが、大人、特におむつを必要とする人は一般的に病気にかかって、薬物を使用していることが多く健常者が使用する場合に比べて臭いが強い上、介護上の問題から非衛生的な状態になりやすく、尿排泄物が長期間放置される場合もあり、悪臭が発生しやすい状態となっており、これらの状況を鑑みても、消臭性により優れた使い捨ておむつに対する必要性が高まっている。
【0004】
ところで、排泄物は、排泄された直後はあまり悪臭を放たず、経時的に悪臭を放つようになる。この悪臭の発生原因としては、皮膚常在菌等が産生する尿素分解酵素等により、尿中に含まれる尿素等がアンモニアやメチルアミン等に分解され、それらが悪臭の原因となっていると考えられている。したがって、使い捨ておむつや生理用ナプキンを使用した際の排泄物由来の悪臭を防止するためには、これらの酵素を産生する細菌類の繁殖を防止する必要がある。この問題点を解決する方法として、例えば、吸水性有機重合体中に抗菌剤として、塩化ベンザルコニウムおよび/またはグルコン酸クロルヘキシジンを含有させる方法(例えば、特許文献1参照)やシリコーン第四アンモニウム塩化合物を含有させる方法(例えば、特許文献2参照)などが提案されている。しかしながら、これらの抗菌剤は、尿中に含まれる尿素等をアンモニア、メチルアミン等に分解するウレアーゼを産生する細菌類に対してはほとんど効果を示さないため、十分満足のいく消臭・脱臭効果が得られない。
【0005】
また、近年、何らかのペットを飼う家庭が増えてきたが、特に屋内でペットを飼う場合には、ペット自体やペットの排泄物からでる臭い、排泄物の処理に悩まされることが多い。例えば、排尿処理用品の一例として猫砂があるが、猫砂は一般的にはごく普通の砂を用いて排泄物を浸透保持し、使った後は洗浄、乾燥して再利用されるが、その手間が大変であり、また、取り替える間隔が長くなれば、上記人で述べたのと同様の理由により、悪臭が発生したり、雑菌の発生により不衛生になる等の欠点があった。この問題を解決するために、吸水性樹脂を用いた猫砂や、さらにはこれに抗菌剤、消臭剤を添加した猫砂が販売されるようになってきたが、悪臭発生の防止効果が十分達成されていないのが現状である。
【0006】
このように、排泄物臭等の生活環境を悪化させる各種の臭いを有効に防止する手段が希求されているにもかかわらず、従来の使い捨ておむつ、生理用ナプキン、ペット用排尿処理用品では人体やペットから発生する排泄物臭、体臭その他の悪臭を完全に取り除くことは困難であった。
【0007】
【特許文献1】
特公平04−17058号公報
【特許文献2】
特開平06−245954号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような諸事情に鑑みなされたものであり、消臭・脱臭効果および抗菌・除菌効果に優れる吸水性樹脂組成物および、吸水性樹脂と固形ヨウ素剤とを用いてなる衛生用品を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、下記(1)〜(5)によって達成される。
【0010】
(1)吸水性樹脂と、固形ヨウ素剤とを含有することを特徴とする吸水性樹脂組成物。
【0011】
(2)上記固形ヨウ素剤は、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ヨウ素(I)を吸着させた活性炭、及びこれらに外部被覆が施されたものからなる群より選択される少なくとも一種である、前記(1)に記載の吸水性樹脂組成物。
【0012】
(3)吸水性樹脂と、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ヨウ素(I)を吸着させた活性炭、及びこれらに外部被覆が施されたものからなる群より選択される少なくとも一種の固形ヨウ素剤とを用いてなる衛生用品。
【0013】
(4)上記固形ヨウ素剤は、製品中に0.01〜10g含まれる、前記(3)に記載の衛生用品。
【0014】
(5)上記衛生用品は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、またはペット用排尿処理用品である、前記(3)または(4)に記載の衛生用品。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の第一の態様によると、吸水性樹脂と、固形ヨウ素剤とを含有することを特徴とする吸水性樹脂組成物が提供される。これは、ヨウ素が、広範な細菌に対して優れた殺菌・抗菌作用を示すため、排泄物の細菌による分解を抑制し、これにより、人体やペットから発生する排泄物臭、体臭その他の悪臭を有効に取り除くことができるという知見に基づくものである。従来は、ヨウ素自体は揮発性で特異の臭気を持つため、一般的にはポビドンヨードの形態で使用されている。このポビドンヨードは、若干ではあるが特異な臭いや水への溶解性の高さから、一般的に水溶液の形態で使用されており、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、またはペット用排尿処理用品等の衛生用品には適用しがたいという問題があった。本発明では、ヨウ素をヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ヨウ素(I)を吸着させた活性炭、またはこれらを外部被覆した形態で使用することによって、吸水性樹脂と配合しても安定して含有させることができ、かつヨウ素本来の消臭・脱臭効果及び殺菌・抗菌作用は保持でき、ゆえに、このような吸水性樹脂と固形ヨウ素剤とを用いてなる衛生用品は、尿や他の体液の異臭、汚染の一因ともなる細菌の発生を抑制して、ゆえに悪臭の原因となる尿中に含まれる尿素のアンモニアやメチルアミン等への分解が抑制されて、その結果、消臭作用に優れたものである。また、上記したように、ヨウ素をヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ヨウ素(I)を吸着させた活性炭、またはこれらを外部被覆した形態で使用すると、ヨウ素本来の特異な臭気は発生せず、着用時にヨウ素の臭気を気にすることもない。また、ヨウ素には広範な細菌に対して優れた殺菌・抗菌作用があるため、衛生用品をある程度の期間放置しても、細菌の増殖が抑えられるため、衛生環境面でも非常に好ましい。加えて、ヨウ素は、哺乳動物における必須栄養素の一つであり、シクロデキストリンは、食品添加物として認可されており、さらに活性炭もまた食品や医薬品等の脱色、脱臭及び精製に使用されており、これらはすべて安全性が高い。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明において、固形ヨウ素剤は、常温でヨウ素を含有する固体である。このため、ポビドンヨード(液剤)は、本発明には包含されない。使用できる固形ヨウ素剤は、ヨウ素を含有する固体であれば特に制限されないが、例えば、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ヨウ素(I)を吸着させた活性炭、及びこれらに外部被覆が施されたものなど、常温で固体のものが挙げられる。以下、本発明において好ましく使用される固形ヨウ素剤を、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ヨウ素(I)を吸着させた活性炭、及びこれらに外部被覆が施されたものに分けて、詳細に説明する。
【0018】
(a)ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(CDI)について
ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物(以下、「CDI」とも記載する)は、ヨウ素がシクロデキストリンによって包接された構造を有する化合物である。CDIから放出されるヨウ素によって、臭気が除去される。同時に、CDIから放出されるヨウ素は、除菌・抗菌作用もあるため、尿や他の体液等の排泄物の異臭、汚染の一因ともなる細菌の発生が抑制されるため、これからも消臭・脱臭効果が得られる。加えて、シクロデキストリン中に臭気成分が包接されることによっても、臭気が除去される。つまり、CDIは、ヨウ素による除菌・抗菌効果および消臭・脱臭効果、ならびにシクロデキストリンによる更なる消臭・脱臭効果を兼ね備える。
【0019】
CDI自体は、公知であり(例えば、特開昭51−88625号公報、特開2002−193719号参照)、製造方法についても特に限定はない。例えば、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、ヨウ素およびヨウ素溶解助剤を含む水溶液に、シクロデキストリンを添加することによって製造されうる。
【0020】
CDIは、CDIを構成するシクロデキストリンの種類によって、数種に分類される。シクロデキストリンは、d−グルコースがα−1、4結合により環状に結合した化合物である。シクロデキストリンとしては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、これらの誘導体などが用いられうる。なお、d−グルコースが6個結合したものがα−シクロデキストリン、7個結合したものがβ−シクロデキストリン、8個の結合したものがγ−シクロデキストリンである。
【0021】
シクロデキストリンの誘導体としては、ヒドロキシメチルシクロデキストリン、ヒドロキシエチルシクロデキストリン、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、ヒドロキシブチルシクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリン、トリメチルシクロデキストリン、ジエチルシクロデキストリン、トリエチルシクロデキストリン、カルボキシメチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリン、ジマルトシルシクロデキストリン、モノクロロトリアジニルシクロデキストリン、シクロデキストリンエピクロルヒドリンポリマー等が挙げられる。
【0022】
シクロデキストリンは、特に制限されるものではなく、市販品をそのまま使用してもよい。また、シクロデキストリンは、デンプンにBacillus macerans由来のアミラーゼを作用させることなどの公知の方法によって製造してもよい。
【0023】
シクロデキストリンの市販品の具体例としては、CAVAMAX W6及びCAVAMAX W6 Pharmaとして市販されるα−シクロデキストリン;CAVAMAX W7及びCAVAMAX W7 PHARMAとして市販されるβ−シクロデキストリン;CAVAMAX W8、CAVAMAX W8 Food及びCAVAMAX W8 Pharmaとして市販されるγ−シクロデキストリン;CAVASOL W7 M、CAVASOL W7 M Pharma及びCAVASOL W7 M TLとして市販されるメチル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 HP及びCAVASOL W7 HP Pharmaとして市販されるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 Aとして市販されるモノアセチル−β−シクロデキストリン;CAVASOL W7 TAとして市販されるトリアセチル−β−シクロデキストリン;ならびにCAVASOL W7 MCTとして市販されるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンなどが挙げられる(いずれも、ワッカーケミカルズ イーストアジア株式会社製)。
【0024】
CDIに用いられるシクロデキストリンは、用途や入手容易性などを考慮して選択すればよい。例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキンに使用される吸水性樹脂組成物の場合には、β−シクロデキストリンをシクロデキストリンとして含むヨウ素−シクロデキストリン包接化合物であるBCDIが用いられることが好ましい。
【0025】
本発明において用いられるCDIにおける有効ヨウ素(I)含有量は、CDIの質量に対して、5〜35質量%、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは19〜25質量%である。ヨウ素含有量がこのような範囲内であると、ヨウ素の安定性が高まり、吸水性樹脂組成物の除菌・抗菌効果及び消臭・脱臭効果が長期間に渡って持続しうる。また、上述の範囲でヨウ素が含まれていると、ヨウ素の本来の機能である除菌作用とシクロデキストリンの本来の機能である消臭作用とが特に効果的に発現する。CDIにおけるヨウ素含有量は、CDIを製造する際に用いられるシクロデキストリンの添加量を調整することによって、制御されうる。また、CDIにおけるヨウ素含有量を制御することによって、CDIからのヨウ素の放出が制御されうる。
【0026】
本発明において、CDIの製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法またはこれらの組み合わせが使用されうる。例えば、特開昭51−88625号公報、特開昭51−100892号公報、特開2002−193719号公報、特開2003−40717号公報などに記載の方法;ヨウ素量とヨウ素溶解助剤(KIなど)量を所定範囲に調整して溶解し、これにシクロデキストリンを添加する方法;またはこれらの方法で製造されたヨウ素−シクロデキストリン包接化合物に、本発明によるヨウ素の含有量を上記範囲になるように、シクロデキストリンを添加する方法などが挙げられる。このうち、ヨウ素量とヨウ素溶解助剤(NaI、KIなど)量を所定範囲に調整して溶解し、これにシクロデキストリンを添加する方法においては、シクロデキストリン量を調整することによって、ヨウ素をシクロデキストリン内に包接される量を制御できる。かような方法を用いれば、19質量%を越えるヨウ素含量のヨウ素−シクロデキストリン包接化合物を得ることも可能である。しかもヨウ素含有率の高いヨウ素−シクロデキストリン包接化合物は、ヨウ素臭が薄れる傾向がある。
【0027】
原料としてのヨウ素は、特に制限されるものではなく、市販品をそのまま使用してもよい。また、ヨウ素は、ヨウ化カリウムと重クロム酸カリウムとを加熱蒸留するなどの方法に従って合成されてもよい。
【0028】
(b)ヨウ素(I)を吸着させた活性炭(ACI)について
ヨウ素を吸着させた活性炭(以下、「ACI」とも記載する)は、ヨウ素が活性炭によって吸着された構造を有する化合物である。ACIから放出されるヨウ素によって、臭気が除去される。同時に、ACIから放出されるヨウ素は、除菌・抗菌作用をもあるため、尿や他の体液の異臭、汚染の一因ともなる細菌の発生が抑制されるため、これからも消臭・脱臭効果が得られる。加えて、活性炭は強い脱臭作用を有する。つまり、ACIは、ヨウ素による除菌・抗菌効果および消臭・脱臭効果、ならびに活性炭による更なる消臭・脱臭効果を兼ね備える。
【0029】
本発明において、活性炭は、特に制限されず、公知の活性炭が使用できる。具体的には、木粉、椰子殻、瀝青炭等の植物系原料、無煙炭、石油ピッチ、コークス等の石炭・石油系原料、ポリアクリロニトリル、レーヨン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂原料由来のものが挙げられる。これらのうち、椰子殻炭や石炭を原料とした活性炭が好適に用いられる。上記原料からの活性炭の製造方法は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、これらの活性炭原料を、例えば、水蒸気、塩素、塩化水素、一酸化炭素、二酸化炭素酸素などを用いるガス賦活、アルカリ、酸、塩化亜鉛等を用いる薬品賦活等により、固定床、移動床、流動床等で賦活化することによって製造される。また、活性炭の原料を予めハニカム状に成形するなどにより製造されたハニカム状の活性炭としてもよい。
【0030】
本発明において、活性炭の細孔や粒子径などは、ヨウ素を十分吸着できるものであれば特に制限されず、使用した際の風合い(ゴロゴロ感)や特に目的とする効果(例えば、脱臭・消臭効果、抗菌・除菌・殺菌効果)などによって適宜選択できる。好ましくは、活性炭の液体窒素温度条件下の窒素吸着によるBET比表面積は、300〜2000m/g、より好ましくは500〜2000m/gである。また、活性炭は、粉末状、破砕状または顆粒状のいずれであってもよいが、活性炭の平均粒子径は、0.01〜10mm、より好ましくは0.02〜10mmであることが好ましい。さらに、活性炭の細孔径は1〜30nm、より好ましくは1.5〜5.0nmであることが好ましい。活性炭の細孔容積は、0.1〜1.5cm/g、より好ましくは0.2〜1.0cm/gであることが好ましい。
【0031】
本発明において、活性炭へのヨウ素の吸着方法は、ヨウ素を活性炭の表面及び細孔に添着できる方法であれば特に限定されず、公知の方法を単独であるいは組み合わせて使用できる。具体的には、(1)まず、ヨウ素をヨウ化カリウム水溶液等のアルカリ若しくはアルカリ土類金属ヨウ化物水溶液に溶解することにより調製されたヨウ素液を、常温で、噴霧器や散布器などを用いて、活性炭に噴霧若しくは散布する噴霧含浸法;(2)上記(1)で調製されたヨウ素液中に、活性炭を、常温で、30〜300分間、好ましくは60〜180分間浸漬し、撹拌する浸漬法;(3)固体ヨウ素を、30〜120℃、好ましくは50〜120℃で昇華させてヨウ素ガスを発生させ、これを活性炭に接触させる気体接触法などが挙げられる。上記(1)及び(2)のヨウ素液の調製において、ヨウ化カリウム水溶液等のアルカリ若しくはアルカリ土類金属ヨウ化物水溶液はヨウ素の溶解を促進するために使用される。この際、溶解させるヨウ素とヨウ化物の割合は、ヨウ素が十分溶解できる割合であれば特に制限されないが、例えば、ヨウ化物が、溶解させるヨウ素1質量部に対し、1〜4質量部が存在するような割合が好ましい。また、ヨウ素液中のヨウ素濃度は、活性炭に十分量吸着できるような量であればよく、特に限定されないが、20〜70質量%、より好ましくは30〜70質量%であることが好ましい。なお、上記(1)の噴霧含浸法において、窒素などのキャリアーガスを用いてヨウ素液を活性炭に噴霧してもよい。また、上記(2)の浸漬法では、浸漬時間を記載したが、上記時間に限定されず、ヨウ素液の色の変化(ヨウ素が活性炭に吸着されるに従って、液の色が黒から薄い黄色に変化する)により、適宜浸漬時間を選択することができる。さらに、上記(3)の気体接触法において、固体ヨウ素の活性炭への添加量は、十分量のヨウ素が活性炭に吸着できる量であればよいが、好ましくは、固体ヨウ素の量が、活性炭100質量部に対し、10〜150質量部、より好ましくは20〜150質量部である。
【0032】
特に上記(1)及び(2)の方法においては、ヨウ素を活性炭に吸着させた後に、減圧下で、例えば、10〜50Torrで、30〜80℃、好ましくは60〜70℃で、0.5〜10時間、好ましくは3〜8時間加熱することによって、水分を蒸発させることによって、乾燥したヨウ素吸着活性炭を得ることができる。
【0033】
本発明において、ヨウ素の活性炭への吸着量は、所望の脱臭・消臭、抗菌・除菌・殺菌効果を達成できる量であれば特に制限されないが、活性炭に対して、1〜50質量%,より好ましくは15〜40質量%であることが好ましい。この際、ヨウ素の活性炭への吸着量が1質量%未満であると、ヨウ素の量が十分でないため、所望の脱臭、抗菌及び抗ウィルス効果が得られない場合がある。逆に、ヨウ素の活性炭への吸着量が50質量%を超えると、添加に見合う効果が得られないばかりか、活性炭へのヨウ素の吸着量が多すぎて、活性炭からヨウ素が脱離しやすくなり、このようなヨウ素吸着活性炭を有するマスクでは、ヨウ素が揮発して特異の臭気を発生したり、ヨウ素を吸入する恐れがあり、安全性に劣る可能性がある。
【0034】
(c)上記(a)または(b)の外部被覆された形態
上記(a)または(b)は、外部被覆が施された形態で使用されてもよく、この場合の効果は、上記(a)及び(b)で述べたのと同様である。
【0035】
本発明において、外部被覆に使用できる被覆剤としては、ヨウ素がこのような形態から放出されて、除菌・抗菌効果および消臭・脱臭効果を発揮するものであれば特に制限されるものではなく、公知の被覆剤が使用できる。具体的には、シェラック等の天然高分子化合物;アカシアガム、キサンタンガム及びトラガカントガム等の水溶性ガム類;ポリ酢酸ビニル及びポリ塩化ビニル等の水不溶性ビニル誘導体;アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体及びメタアクリル酸メチル・アクリル酸エチル共重合体等の水不溶性アクリル酸系ポリマー;エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートサクシネート、セルロースベンゾエートフタレート、メチルセルロースフタレート、エチルヒドロキシエチルセルロースフタレート、セルロースアセテートマレエート、ヒドロキシエチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリオキシエチルセルロースフタレート、セルロースプロピオネート及びカルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース誘導体;スターチアセテートフタレート及びアミロースアセテートフタレート等のデンプン誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールフタレート、ポリビニルアルコールアセテートフタレート、ポリビニルプロピオネートフタレート、ポリビニルブチレートフタレート、ポリビニルアセタールフタレート、ポリビニルアセトアセタールフタレート、ポリビニルアセトアセタールサクシネート及びポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等のポリビニルアルコール誘導体;ビニルアセテート・マレイン酸共重合体、スチレン・マレイン酸共重合体、エチレン・スチレン・マレイン酸共重合体、アクリロニトリル・アクリル酸メチル・マレイン酸共重合体、アクリル酸ブチル・スチレン・マレイン酸共重合体及びビニルメチルエーテル・マレイン酸共重合体等のマレイン酸系ポリマー;スチレン・アクリル酸共重合体、アクリル酸・アクリル酸メチル共重合体、メタアクリル酸・アクリル酸メチル共重合体、メタアクリル酸・メタアクリル酸メチル共重合体、メタアクリル酸・アクリル酸エチル共重合体及びアクリル酸・アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル酸系ポリマーなどが挙げられる。これらの被覆剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上を組み合わせて使用されてもよい。これらのうち、下記実施例では、シェラックを使用した。シェラックは、封蝋用製剤の基材として従来から汎用されており、ラックカイガラムシの分泌物であるスチックラックから分離した動物性の天然樹脂であって、疎水性を有する薄片状、粒状、粉末状物質である。
【0036】
本発明において、外部被覆方法は、特に制限されることなく、公知の方法が使用できる。例えば、被覆剤をメタノール等の適当な溶剤に入れ、これに超音波をあてて溶解した液を、上記(a)および/または(b)に注いで、保持した後、溶剤を除去し、さらにこれを乾燥する方法;上記(a)および/または(b)に、上記したような被覆剤を共に溶解させた溶液を噴霧し、ついで乾燥することにより製造する方法などが使用できる。
【0037】
上記したようなヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ヨウ素(I)を吸着させた活性炭、及びこれらの外部被覆物が吸水性樹脂に好ましく配合されるが、この際、吸水性樹脂中に配合されるのは、これらが単独であってもあるいは2種以上を組み合わせたものであってもよい。
【0038】
本発明において、固形ヨウ素剤が配合される吸水性樹脂としては、特に制限されず、従来使い捨ておむつや生理用ナプキン等の衛生用品において使用されているのと同様のものが使用できる。本明細書において、「吸水性樹脂」とは、化学的に合成される、優れた吸水力を有する樹脂を意味する。一定量の水を含む吸水性樹脂は、ゲル状になり、多量の水分が吸水性樹脂によって保持される。例えば、ケン化デンプン−ポリアクリロニトリルグラフト共重合体等のデンプン−アクリロニトリル系吸水性樹脂;グラフトセルロース、架橋グラフトセルロース等のセルロースのグラフト重合体;アクリル酸アミド、架橋ポリアクリル酸等のポリアクリル酸系吸水性樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、架橋ポリエチレンオキシド、デンプングラフトポリ酢酸ビニル、デンプン−アクリル酸グラフト共重合体等のデンプン−アクリル酸系吸水性樹脂;アクリル酸エステル−酢酸ビニル共重合体ケン化物、アクリル酸−酢酸ビニル共重合体ケン化物、架橋ポリビニルアルコール系吸水性樹脂、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体系吸水性樹脂、スルホン酸(塩)基含有吸水性樹脂、ポリアクリルアミド系ポリマーの架橋体、ポリオキシアルキレン系ポリマーの架橋体等が挙げられ、これらの樹脂は、一般に、自重の数百倍から数千倍の水を吸収する能力を有するものが好ましい。これらの樹脂はそれぞれ単独で用いてもよくあるいは2種以上を組合わせて使用することもできる。吸水性樹脂は、一般に架橋することによって、吸水性能が飛躍的に向上する。また、これらの樹脂の形態は特に制限されるものではなく、最終製品の用途等に応じて、例えば、粉末状、顆粒状、シート状、繊維状等の形態であることができ、さらに、芯材にアクリル繊維を組み込んだ2層構造の吸水性繊維(東洋紡績(株)製、「ランシールF」等)の形態のものであってもよい。
【0039】
本発明の吸水性樹脂組成物において、該組成物中の固形ヨウ素剤の有効ヨウ素濃度は、配合する吸水性樹脂の吸水特性や使用目的などによって適宜選択でき限定されるものでないが、好ましくは0.01〜1000質量%、より好ましくは1〜500質量%、特には10〜300質量%である。この程度の量の固形ヨウ素剤が含まれていると、十分な消臭・脱臭作用及び除菌・抗菌作用が発現する。
【0040】
これらの吸水性樹脂中への固形ヨウ素剤の配合は、また特に制限されず公知の方法で行なうことができる。例えば、吸水性樹脂粉末に所定量の固形ヨウ素剤の化合物を含有する溶液(水溶液を含む)を添加、吸収させた後、乾燥する方法;吸水性樹脂の製造過程における任意の段階で、所定量の固形ヨウ素剤を粉末または溶液の状態で添加する方法;吸水性樹脂粉末を所定量の固形ヨウ素剤の粉末と混合する方法等が使用できる。または、吸水性樹脂と固形ヨウ素剤とは必ずしも接触/混合している必要はなく、例えば、吸水性樹脂を含む層と固形ヨウ素剤を含む層とを隔離してもよい。これは、本発明による吸水性樹脂組成物は、尿等の排泄物と接触するとヨウ素が放出されるため、放出されたヨウ素と排泄物が接触できる状態であればよく、吸水性樹脂と固形ヨウ素剤とは必ずしも接触している必要はないのである。
【0041】
このようにして製造された吸水性樹脂組成物は、衛生用品用の吸水性樹脂として、特に使い捨ておむつ、生理用ナプキン、ペット用排尿処理用品に使用することにより、尿排泄物由来の悪臭の発生が効果的に防止され、衛生面で好ましい製品を提供することができる。例えば、水透過性表面シートと水不透過性裏面シートと、これらシート間に設けられた吸水層とからなる使い捨ておむつを例にとってみると、吸水層に従来使われている吸水性樹脂に代えて、本発明の吸水性樹脂組成物を使用することができ、これにより、尿中に含まれる尿素のアンモニア、メチルアミン等への分解/発生をうながす細菌類の繁殖が抑制されて、尿素等の分解による悪臭の発生が阻止され、しかも大腸菌やカンジタ菌などの雑菌の繁殖も抑制されて、雑菌に起因する非衛生的な状態の改善も期待される。同様に、ペット用の排尿処理に使用される吸水性樹脂に代えて本発明の吸水性樹脂組成物を使用すると、尿中に含まれる尿素のアンモニア、メチルアミン等への分解/発生をうながす細菌類の繁殖が抑制されて、尿素等の分解による悪臭の発生が阻止される。
【0042】
また、本発明の第二の態様によると、吸水性樹脂と、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ヨウ素(I)を吸着させた活性炭、及びこれらに外部被覆が施されたものからなる群より選択される少なくとも一種の固形ヨウ素剤とを用いてなる衛生用品が提供される。吸水性樹脂および固形ヨウ素剤は上記したものを使用することができる。この吸水性樹脂と固形ヨウ素剤とは、第一の態様に記載した吸水性樹脂組成物として使用することもできるが、組成物とせずに、衛生用品中で異なる層に吸水性樹脂と固形ヨウ素剤とを配置してもよい。いずれにしても、上記固形ヨウ素剤を配合した場合には、ヨウ素、シクロデキストリン、活性炭などにより、優れた消臭・脱臭効果及び殺菌・抗菌作用を発揮することができる。
【0043】
本発明において、衛生用品は、上記吸水性樹脂と固形ヨウ素剤とを含むものであればよく、吸水性樹脂組成物であってもその存在形態は特に制限されず、適当な形態のものを従来のまたは市販の使い捨ておむつ、生理用ナプキン中に包設すればよい。具体的には、2枚のシート材の間に吸水性樹脂組成物を挟着担持させたもの;シート材からなる袋体内に吸水性樹脂組成物を適当量導入したもの、複数のシート材の間にそれぞれ吸水性樹脂を含む層と、固形ヨウ素剤を含む層を設けたものなどが挙げられる。この際、シート材の材質は、特に制限されず、公知の材質が使用できる。例えば、紙質材;綿、羊毛などの天然繊維材料;レーヨンなどの半合成繊維材料;ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどの合成繊維材料;さらには、メタ系アラミド繊維、パラ系アラミド繊維、PTFE繊維、ポリイミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維などが挙げられる。また、シート材は、上記繊維の、織布、編布、不織布などのいずれの形態を有していてもよい。また、必要であれば、これらのシート材に脱臭・防虫・抗菌・除湿用の吸着剤をさらに含浸させてもよい。
【0044】
本発明において、衛生用品への吸水性樹脂の充填量は、吸水特性に応じて適宜選択すればよい。一方、固形ヨウ素剤は、所望の効果(例えば、脱臭・消臭効果、抗菌・除菌・殺菌効果)が得られる量であれば特に制限されず、衛生用品の大きさや用途などによっても異なるが、固形ヨウ素剤が、衛生用品当たり、0.01〜10g、より好ましくは0.2〜5g充填されるような量である。この際、固形ヨウ素剤の充填量が0.01g未満であると、ヨウ素量が少なすぎて十分な効果(例えば、脱臭・消臭効果、抗菌・除菌・殺菌効果)が達成できない場合がある。逆に、固形ヨウ素剤の充填量が10gを超えると、固形ヨウ素剤の量が多すぎて外観が悪くなる場合がある上、特におむつや生理用品の場合には装着した際のゴワゴワ感が生じて、不快感が大きくなりすぎる恐れがある。なお、シート材の大きさは衛生用品の大きさに応じて適宜選択できる。
【0045】
本発明の衛生用品としては、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、ペット用排尿処理用品等がある。固形ヨウ素剤は、本来ヨウ素による黄色味の着色があるが、これが水や尿と接触するとその着色が消失する。このため、例えば、オムツの最外層を透明樹脂フィルムで形成し、このフィルムを通して肉眼で観察できる層に固形ヨウ素剤を配置すると、尿吸収後は固形ヨウ素剤による黄色が消える。このため、固形ヨウ素剤による着色が尿吸着の有無を示すインジケーターとなる。この機能は、乳幼児のみならず、高齢者、その他意思表示が困難な疾患者の衛生用品として使用される場合には、保育者や介護者の労働度軽減に大きく寄与するものとなる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0047】
実施例1
200lGL反応機に水100リットル及びヨウ化カリウム9.88kg(59.5モル)を仕込み常温で溶解した。次いで粉末ヨウ素7.56kg(29.8モル)を仕込み60分間撹拌して溶解した。これにβ−シクロデキストリン22.68kg(20モル)を仕込み、常温で30分間撹拌した後90℃まで加温し直ちに冷却して20℃とした。析出したヨウ素−β−シクロデキストリン包接化物を遠心分離し付着している分離液を水洗し得られた湿結晶ヨウ素−β−シクロデキストリン包接化物を200lGLコニカルドライヤー中、4.7kPa、75℃、2時間乾燥した。これによって乾品ヨウ素−β−シクロデキストリン包接化物(以下、「CDI」と称する)28.92kg(収率95.6質量%)を得た。このものの有効ヨウ素(I)は、22.4質量%であり、これをBCDI−20と称する。
【0048】
実施例2
シェラック1.5gをメタノール15gに超音波をあてて溶解した。実施例1で調製したBCDI−20 20gを、シャーレ(直径7cm,1cm深さ)に入れ、上記で調製した溶液を、このシャーレに注いだ。シャーレを5分間保持した後、メタノールを熱風でほとんど蒸発させ、得られたややwetな製品を200mlナスフラスコに移し、ロータリーエバポレーターで50℃水浴上30torrの減圧で1時間乾燥した。これを、BCDI−20コート品と称する。
【0049】
実施例3
200lGL反応機に水150リットル及びヨウ化カリウム39.3kgを仕込み、常温で攪拌溶解した。次いで粉末ヨウ素30kgを仕込み、60分間攪拌して溶解した。ここに粉末活性炭90kgを仕込み、常温で3時間攪拌した後、生成した活性炭/ヨウ素を遠心分離し、得られた湿体を200lGLコニカルドライヤーに入れ、30Torr、65℃で3時間減圧乾燥した。得られた乾品は148.5kgで有効ヨウ素(I)は20質量%であった。これをACI−20と称す。
【0050】
実施例4
超うすリブドゥリフレ安心パッド長時間用スーパー((株)リブドゥコーポレーション製)13.8gを半切し、この内5.6gを用い、高吸水性樹脂を内包した層が2層構造になっている間の層(この際、樹脂と固形ヨウ素剤とは接触しない状態である)に、実施例2で製造したBCDI−20コート品1gをほぼ均等に敷き詰め、これをポリエチレン袋に入れ、縁を全て布テープで密閉した。これを3個づつ用意した。これらのBCDI−20コート品サンプルを、それぞれ(1)常温で放置し、(2)40℃で5時間保持し、および(3)直ちに尿75mlを吸収させて、着色を観察した。この結果、常温、加熱したものはいずれも1日で、尿に接触する面が黄色に着色したが、直ちに尿を吸収させたものは無色であった。
【0051】
更に、(2)40℃で加熱することにより着色したBCDI−20コート品サンプルに、尿75mlを吸収させたところ、直ちに退色し、はじめから尿を吸収させたものと同様の結果となった。これから、BCDI−20コート品を使用した衛生用品は、尿の吸収により黄色から無色に変色するため、尿の排出を肉眼で認識できることが示唆される。
【0052】
さらに、市販品そのものに尿吸収させたもの及び上記(2)の尿を吸収させたBCDI−20コート品をポリエチレン袋に密封し、1日経過後にアンモニア検知管(GASTEC No.3DL(1〜10ppm.hr NH測定用、(株)ガステック製))によるアンモニア測定を行なった。この結果、市販品そのものに尿吸収させたもの及び上記(2)のBCDI−20コート品を含むものは、各々、1.6、0.8ppmのアンモニア濃度であった。これは、BCDI−20コート品を使用した場合は、含まれるヨウ素により細菌による尿素等の分解による悪臭の発生が抑制され、またシクロデキストリンによる消臭・脱臭効果もまた発揮されたためであると考察される。
【0053】
上記アンモニア測定品について、更に7日経過後にアンモニア測定を行うと、市販品は20分で500ppmをオーバーしたが、コート品は1ppmであった。なお、アンモニア検知管は、適用範囲が25〜500ppm/hrである。
【0054】
実施例5
実施例4において、BCDI−20コート品に代えて、実施例3で製造したACI−20(粒状,粉状活性炭に有効ヨウ素(I)20質量%を吸着させたもの)を1g装填する以外は実施例4の操作を繰り返した。この結果、(1)〜(3)のいずれの条件で保持しても、ACI−20を用いた衛生用品に着色は見られなかった。
【0055】
また、実施例4と同様にして、(2)のサンプルについて、アンモニア濃度を測定したところ、1ppmであった。これから、ACI−20を使用した衛生用品では、中に含まれるヨウ素により細菌による尿素等の分解による悪臭の発生が抑制され、またシクロデキストリンによる消臭・脱臭効果もまた発揮されるため、良好な消臭・脱臭効果が認められたと考察される。更に、ACI−20の量を0.5、0.05gと変化させても消臭効果に差は無かった。
【0056】
実施例6
実施例4において、BCDI−20コート品に代えて、実施例1で製造したBCDI−20を1g装填する以外は実施例4の操作を繰り返した。この結果、(1)〜(3)のいずれの条件でも、BCDI−20は着色し、この着色後尿を添加しても黄色の退色は、実施例4に比べるとかなり劣った。
【0057】
また、実施例4と同様にして、(2)のサンプルについて、アンモニア濃度を測定したところ、1ppmであった。これから、BCDI−20を使用した衛生用品では、中に含まれるヨウ素により細菌による尿素等の分解による悪臭の発生が抑制され、またシクロデキストリンによる消臭・脱臭効果もまた発揮されるため、良好な消臭・脱臭効果が認められたと考察される。
【0058】
【発明の効果】
上述したように、本発明は、吸水性樹脂と、固形ヨウ素剤とを含有することを特徴とする吸水性樹脂組成物および吸水性樹脂と固形ヨウ素剤とを用いてなる衛生用品に関するものである。
【0059】
本発明の吸水性樹脂組成物は、ヨウ素の存在により、尿や他の体液等の排泄物の異臭、汚染の一因ともなる細菌の発生を抑制して、ゆえに悪臭の原因となる尿中に含まれる尿素のアンモニアやメチルアミン等への分解を抑制することができる。このため、本発明の吸水性樹脂組成物は、ある程度の期間、放置されても異臭・悪臭を放つことなく、良好な生活環境を得ることができる。加えて、本発明の吸水性樹脂組成物は、ヨウ素の存在により、大腸菌やカンジタ菌などの雑菌の繁殖も同時に抑制されて、雑菌に起因する非衛生的な状態の改善が期待できる。
【0060】
また、吸水性樹脂組成物と、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ヨウ素(I)を吸着させた活性炭またはこれらの外部被覆物とを使用する衛生用品では、上記固形ヨウ素剤による効果に加え、シクロデキストリンや活性炭による消臭・脱臭効果をまた発揮される。この場合に使用されるヨウ素、シクロデキストリン及び活性炭はすべて高い安全性が認められており、ヒトや哺乳動物の皮膚などに接触しても問題はなく、人体に好適に使用できる。
【0061】
したがって、尿の分解による悪臭の発生及び雑菌の発生を他の抗菌剤に比べて効果的に防止でき、本発明の衛生用品は、使い捨ておむつ、生理用ナプキンのみならず、ペット用排尿処理用品等にも好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. 吸水性樹脂と、固形ヨウ素剤とを含有することを特徴とする吸水性樹脂組成物。
  2. 該固形ヨウ素剤は、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ヨウ素(I)を吸着させた活性炭、及びこれらに外部被覆が施されたものからなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の吸水性樹脂組成物。
  3. 吸水性樹脂と、ヨウ素−シクロデキストリン包接化合物、ヨウ素(I)を吸着させた活性炭、及びこれらに外部被覆が施されたものからなる群より選択される少なくとも一種の固形ヨウ素剤とを用いてなる衛生用品。
  4. 該固形ヨウ素剤は、製品中に0.01〜10g含まれる、請求項3に記載の衛生用品。
  5. 該衛生用品は、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、またはペット用排尿処理用品である、請求項3または4に記載の衛生用品。
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