JP2004285202A - 吸水性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分とし、水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物を含む吸水性樹脂組成物であって、前記吸水性樹脂組成物の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上であり、前記亜鉛化合物は、前記吸水性樹脂に対して亜鉛イオンとして0.0001〜2質量%の範囲で含まれることを特徴とする、
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸水性樹脂組成物、吸収体、吸収性物品、および吸水性樹脂組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料に用いた場合に特に優れた消臭性能を有するとともに吸収性能にも優れた吸水性樹脂組成物、吸収体、吸収性物品、および吸水性樹脂組成物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
吸水性樹脂は、体液(尿や血液など)等を吸収させることを目的として、紙おむつ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料の主要な構成材料として広く利用されている。
近年、特に高齢化に伴う大人用の紙おむつの需要増大などにより、吸水性樹脂に対する消臭性能の付与、特に硫化水素やメルカプタン類などのイオウ系化合物に由来する悪臭を除去できる消臭性能の要求が高まっている。
吸水性樹脂に消臭性能を付与するため、これまでに吸水性樹脂と各種の消臭剤や抗菌剤との組み合わせが提案されている。例えば、吸水性樹脂とツバキ科植物の葉抽出物とからなる吸水性樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、針葉樹木抽出エキスと特定の性能を有する吸水性樹脂とを含む吸水性樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)、吸水性樹脂の内部にゼオライト粒子が分散された消臭性樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)、わさび抽出物、からし抽出物、またはイソチオシアン酸アリルの少なくとも1種のパウダーと、該パウダーの抗菌消臭作用を持続させる持続剤としての吸水ゲル化剤とを備えてなる持続性抗菌消臭剤(例えば、特許文献4参照)、吸水性樹脂と、アンモニア産生菌に対して抗菌機能を有する化合物と、アンモニアに対して中和能または中和能と吸着能の両方を有する薬剤とからなる粉末状の消臭性/抗菌性吸水性樹脂組成物(例えば、特許文献5参照)、特定の吸水性樹脂に水溶性消臭剤を含んだ吸水性樹脂組成物(例えば、特許文献6参照)、特定の燐酸塩を含む吸水性樹脂(例えば、特許文献7参照)などが知られている。
【0003】
吸水性樹脂を用いた吸収性物品に消臭性能を付与する検討もなされており、例えば、製茶及び吸水性樹脂を含んでなる吸収性物品(例えば、特許文献8参照)、吸水性樹脂に塩化ベンザルコニウムおよび/またはグルコン酸クロルヘキシジンを含有した樹脂を含む使い捨ておむつ(例えば、特許文献9参照)などが知られている。
しかしながら、従来報告されている上記の方法における消臭性能は十分なものではなく、実使用において発揮させる消臭性能としては満足できるレベルには到達していなかった。
【0004】
また、高い消臭性能を発揮させるために吸収性能を犠牲にしたのでは、体液(尿や血液など)等を吸収させるという吸水性樹脂本来の目的が達成できない。したがって、高い消臭性能を発揮させるとともに吸収性能をも十分に満足できるレベルとすることが重要である。
【0005】
【特許文献1】特開昭60−158861号公報
【0006】
【特許文献2】特開平11−241030号公報
【0007】
【特許文献3】特開平8−176338号公報
【0008】
【特許文献4】特開2000―51399号公報
【0009】
【特許文献5】特開2000−79159号公報
【0010】
【特許文献6】特開2001−234087号公報
【0011】
【特許文献7】特開平5−179053号公報
【0012】
【特許文献8】特開平2−41155号公報
【0013】
【特許文献9】特開昭63−135501号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、優れた消臭性能、特に硫化水素やメルカプタン類などのイオウ系化合物に由来する悪臭を十分に除去できる消臭性能を有するとともに吸収性能にも優れた吸水性樹脂組成物、吸収体、吸収性物品、および吸水性樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、まず、吸水性樹脂と亜鉛との組み合わせが消臭性能の発現に有効であることに着目した。そして、消臭性能が向上するとともに優れた吸収性能をも発現できる条件を詳細に検討した結果、亜鉛源として水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物を用いること、吸水性樹脂に対する亜鉛の使用割合を特定範囲に調整すること、および、吸水性樹脂として架橋構造を有する吸水性樹脂であって特定の吸収性能を有するものを用いることによって、消臭性能を有するとともに吸収性能にも優れた吸水性樹脂組成物が得られ、上記課題が解決できることに想到した。
【0016】
すなわち、本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分とし、水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物を含む吸水性樹脂組成物であって、前記吸水性樹脂組成物の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上であり、前記亜鉛化合物は、前記吸水性樹脂に対して亜鉛イオンとして0.0001〜2質量%の範囲で含まれることを特徴とする。
本発明にかかる吸収体は、本発明の吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含む。
【0017】
本発明にかかる別の吸収体は、酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分とし、水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物と、親水性繊維とを含む吸収体であって、前記吸水性樹脂の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上であり、前記亜鉛化合物は、前記吸水性樹脂に対して亜鉛イオンとして0.0001〜2質量%の範囲で含まれることを特徴とする。
本発明にかかる吸収性物品は、本発明の吸収体、液透過性を有する表面シート、液不透過性を有する背面シートを備える。
【0018】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物の製造方法は、酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分とし、水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物を含む吸水性樹脂組成物の製造方法であって、酸基含有不飽和単量体を主成分とする単量体成分を重合して吸水性樹脂を得る重合工程と、前記重合工程を経て得られた吸水性樹脂に、亜鉛化合物を、吸水性樹脂に対して亜鉛イオンとして0.0001〜2質量%の範囲で添加する工程とを含み、前記重合工程を経て得られた吸水性樹脂の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上であることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
(1)吸水性樹脂
本発明において用いることができる吸水性樹脂とは、ヒドロゲルを形成しうる水膨潤性水不溶性の架橋重合体のことである。水膨潤性とは、イオン交換水中において必須に自重の5倍以上、好ましくは、50倍から1000倍という多量の水を吸収することをいう。水不溶性とは、吸水性樹脂中の未架橋の水可溶性成分(水溶性高分子)が好ましくは50質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下、最も好ましくは10質量%以下のことをいう。なお、これらの測定方法は後述の実施例で規定する。
【0020】
なお、本発明の説明において吸水性樹脂基準の含有割合を述べる場合は、吸水性樹脂の固形分(吸水性樹脂1gを用い、例えば、180℃で3時間乾燥させて、含水率を10質量%以下とした場合の質量)を基準としたものである。
本発明では吸水性樹脂として、消臭性能および吸収性能の面から、酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂が必須に用いられる。
本発明において用いることができる吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸部分中和物重合体、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、カルボキシル基含有架橋ポリビニルアルコール変性物、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体等の1種または2種以上を挙げることができるが、好ましくは、アクリル酸および/またはその塩(中和物)を主成分とする単量体成分を重合・架橋することにより得られるポリアクリル酸部分中和物重合体が用いられる。
【0021】
本発明において用いることができる吸水性樹脂は、酸基および/またはその塩を有し、好ましくは、酸基含有不飽和単量体を主成分とする単量体成分を重合して得られる。なお、酸基含有不飽和単量体としては、重合後に加水分解を行うことによって酸基となる単量体(例えば、アクリロニトリルなど)も含まれるが、好ましくは、重合時に酸基を含有する酸基含有不飽和単量体である。
本発明においては、単量体成分としてアクリル酸および/またはその塩を主成分とすることが好ましい。
単量体成分としてアクリル酸および/またはその塩を主成分とする場合、その他の単量体を併用してもよい。併用できる単量体としては、併用によっても本発明の効果を発揮できるものであれば特に限定されないが、例えば、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソブチレン、ラウリル(メタ)アクリレート等の水溶性または疎水性不飽和単量体が挙げられる。
【0022】
本発明においてアクリル酸および/またはその塩以外の単量体を用いる場合には、そのアクリル酸および/またはその塩以外の単量体は、主成分として用いるアクリル酸および/またはその塩の合計量に対して、好ましくは30モル%以下、より好ましくは10モル%以下の割合である。このような割合で用いることにより、得られる吸水性樹脂の吸収性能がより一層向上すると共に、吸水性樹脂をより一層安価に得ることができる。また、本発明の効果を十分に発揮することができる。
本発明において用いることができる吸水性樹脂は架橋構造を有する。かかる架橋構造は、架橋剤を使用しない自己架橋型のものであってもよいが、一分子中に2個以上の重合性不飽和基や2個以上の反応性基を有する架橋剤(吸水性樹脂の内部架橋剤)を共重合または反応させて得られた架橋構造がさらに好ましい。
【0023】
内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N´−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0024】
内部架橋剤は、単独で用いてもよく、適宜2種類以上を混合して用いてもよい。また、内部架橋剤は、反応系に一括添加してもよく、分割添加してもよい。内部架橋剤を使用する場合には、本発明の効果を十分に発揮させるために、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を重合時に用いることが好ましい。
これら内部架橋剤の使用量は、前記単量体成分(架橋剤を除く)に対して、好ましくは0.001〜2モル%、より好ましくは0.005〜0.5モル%、さらに好ましくは0.01〜0.2モル%、特に好ましくは0.03〜0.15モル%である。内部架橋剤の使用量が0.001モル%よりも少ない場合、あるいは、2モル%よりも多い場合には、得られる吸水性樹脂が十分な吸収特性を発揮できないおそれがあるとともに、本発明の効果が十分に発揮できないおそれもあるので好ましくない。
【0025】
内部架橋剤を用いて架橋構造を重合体内部に導入する場合には、内部架橋剤を、単量体成分の重合前あるいは重合途中、あるいは重合後、または中和後に反応系に添加するようにすればよい。
本発明に用いることができる吸水性樹脂を得るために単量体成分を重合する方法としては、特に限定されず、例えば、水溶液重合、逆相懸濁重合、バルク重合、沈殿重合などが挙げられるが、性能面、重合の制御の容易さ、膨潤ゲルの吸収特性の観点などから、単量体成分を水溶液とすることによる水溶液重合や逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
【0026】
単量体成分を水溶液とする場合の該水溶液(以下、単量体水溶液と称することがある)中の単量体成分の濃度は、水溶液の温度や単量体成分の種類によって決まり、特に限定されるものではないが、10〜70質量%の範囲内が好ましく、20〜60質量%の範囲内がさらに好ましい。また、上記水溶液重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよく、併用して用いられる溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
逆相懸濁重合とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁させる重合法であり、例えば、米国特許4093776号、同4367323号、同4446261号、同4683274号、同5244735号などの米国特許に記載されている。水溶液重合とは分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法であり、例えば、米国特許4625001号、同4873299号、同4286082号、同4973632号、同4985518号、同5124416号、同5250640号、同5264495号、同5145906号、同5380808号などの米国特許や、欧州特許0811636号、同0955086号,同0922717号などの欧州特許に記載されている。これら重合法に例示の単量体成分や開始剤などを本発明に適用することもできる。
【0027】
上記の重合を開始させる際には、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤や、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤を用いることができる。これら重合開始剤の使用量は、得られる吸水性樹脂の物性面などを考えると、0.001〜2モル%(対全単量体成分)が好ましく、より好ましくは0.01〜0.1モル%(対全単量体成分)である。
重合を行うことにより、通常、含水ゲル状架橋重合体が得られる。この含水ゲル状架橋重合体を必要に応じて乾燥し、乾燥の前および/または後で好ましくは粉砕し、吸水性樹脂とする。
【0028】
乾燥は、好ましくは60℃〜250℃の温度範囲、より好ましくは100℃〜220℃の温度範囲、さらに好ましくは120℃〜200℃の温度範囲で行われる。乾燥時間は、重合体の表面積、含水率、乾燥機の種類などに依存し、目的とする含水率になるよう選択される。
本発明に用いることのできる吸水性樹脂の含水率(吸水性樹脂中に含まれる水分量で規定され、吸水性樹脂1gを用い、180℃で3時間の乾燥減量で測定)は特に限定されないが、本発明の効果を十分に発揮させるためには室温でも流動性を示す粉末であることが好ましく、含水率として好ましくは0.2〜30質量%、より好ましくは0.3〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%の粉末状態である。
【0029】
なお、吸水性樹脂の含水率をゼロにすることは困難であるため、少量の水(例えば、0.5〜10質量%)を吸水性樹脂に含み粉末として扱える場合、この少量の水を含んだ吸水性樹脂をも本明細書では吸水性樹脂と称する。また、市販の吸水性樹脂(吸水性樹脂組成物)やオムツ中の吸水性樹脂(吸水性樹脂組成物)の場合、例えば乾燥することで、含水率を10質量%以下、好ましくは5±2質量%に調整して、本明細書において規定される物性を測定すればよい。含水率を調整するための乾燥条件としては、吸水性樹脂(吸水性樹脂組成物)の分解や変性が生じない条件ならば特に限定されないが、好ましくは減圧乾燥が良い。
【0030】
本発明で用いることができる吸水性樹脂の粒子形状は、特に限定されず、例えば、球状、破砕状、不定形状などが挙げられるが、粉砕工程を経て得られた不定形破砕状のものが好ましく使用できる。さらに、その嵩比重(JIS K−3362で規定)は、本発明の効果を十分に発揮させるためには、好ましくは0.40〜0.80g/mlの範囲内、より好ましくは0.50〜0.75g/mlの範囲内、さらに好ましくは0.60〜0.73g/mlの範囲内である。
本発明で用いることができる吸水性樹脂は、さらに、表面架橋(二次架橋)されたものが好ましい。
【0031】
表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、種々のものがあり、特に限定されないが、得られる吸水性樹脂の物性向上などの観点から、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、モノ、ジ、またはポリオキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物などが好ましい。
本発明で用いることができる表面架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、米国特許6228930号、同6071976号、同6254990号などに例示されている表面架橋剤を用いることができる。例えば、モノ,ジ,トリ,テトラまたはポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドールなどのエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン等の多価アミン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;上記多価アミン化合物と上記ハロエポキシ化合物との縮合物;2−オキサゾリジノンなどのキサゾリジノン化合物;エチレンカボネートなどのアルキレンカーボネート化合物等が挙げられ、これらの1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明の効果を十分に発揮するためには、これらの表面架橋剤の中で多価アルコールを必須に用いることが好ましい。多価アルコールとしては、炭素数2〜10のものが好ましく、炭素数3〜8のものがより好ましい。
【0032】
表面架橋剤の使用量は、用いる化合物やそれらの組み合わせ等にもよるが、吸水性樹脂に対して、0.001〜10質量%の範囲内が好ましく、0.01〜5質量%の範囲内がより好ましい。
本発明において表面架橋を行う場合には、水を用いることが好ましい。この際、使用される水の量は、使用する吸水性樹脂の含水率にもよるが、吸水性樹脂に対して0.5〜20質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%の範囲内である。また、水以外に親水性有機溶媒を用いてもよい。親水性有機溶媒を用いる場合、その使用量は、吸水性樹脂に対して0〜10質量%の範囲内が好ましく、より好ましくは0〜5質量%の範囲内、さらに好ましくは0〜3質量%の範囲内である。
【0033】
本発明において表面架橋を行う場合には、水及び/または親水性有機溶媒と表面架橋剤とを予め混合した後、次いで、その水溶液を吸水性樹脂に噴霧あるいは滴下混合する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。水及び/または親水性有機溶媒と表面架橋剤とを混合する場合には、本発明の効果を妨げない範囲で、水不溶性微粒子粉体や界面活性剤を共存させてもよい。
表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂は加熱処理されることが好ましい。加熱温度は、好ましくは100〜250℃の範囲内、より好ましくは150〜250℃の範囲内であり、加熱時間は、1分〜2時間の範囲内が好ましい。加熱温度と加熱時間の組み合わせの好適例としては、180℃で0.1〜1.5時間、200℃で0.1〜1時間である。
【0034】
以上のようにして、好ましくは表面架橋処理を行って得られた吸水性樹脂は、本発明の効果を十分に発揮するために特定の粒度に調整されることが好ましい。粒度の調整は、表面処理前であっても、表面処理後であっても構わない。本発明に使用する吸水性樹脂は、酸基(例えば、カルボキシル基)および/またはその塩を有しているため、例えば、アンモニアなどの塩基性悪臭物質を有効に中和することができる。吸水性樹脂の表面積は、粒子径が細かいものほど大きく、表面積が大きいほど塩基性悪臭物質を中和するには有利であると思われるが、実際の使用(例えば、紙おむつなどの尿のゲル化剤)における本発明の効果は、特定の粒度を有したもののほうが優れることが判った。
【0035】
特定の粒度に調整することによる前記効果の発現の機構については明らかでないが、例えば、吸水性樹脂のゲル状態が影響していると考えられる。粒子径が細かすぎる場合、吸水速度が速すぎるためにゲルブロックをおこし、使用した吸水性樹脂もしくはそれを含む吸水性樹脂組成物に悪臭成分を含んだ液体が到達しにくいことが考えられ、また、粒子径が大きすぎる場合、吸水速度が遅いため、悪臭成分を含んだ液体から悪臭成分が揮発してしまうことが考えられる。
かかる粒度としては、好ましくは、850μm未満で150μm以上の粒子が全体の90質量%以上で且つ300μm以上の粒子が全体の60質量%以上であり、より好ましくは、850μm未満で150μm以上の粒子が全体の95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。また、300μm以上の粒子がより好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上とされる。
【0036】
本発明で用いることができる吸水性樹脂の質量平均粒子径は、好ましくは200〜700μm、さらに好ましくは300〜600μm、特に好ましくは400〜500μmである。上記の質量平均粒子径は後述の吸水性樹脂組成物にも適用され、吸水性樹脂ないし吸水性樹脂組成物の質量平均粒子径は必要により造粒などで調整してもよい。
本発明で用いることができる吸水性樹脂は、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上であることが好ましく、より好ましくは28g/g以上、さらに好ましくは30g/g以上、特に好ましくは32g/g以上である。0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/gよりも小さいと、本発明の効果が十分に発揮できないおそれがある。
【0037】
本発明で用いることができる吸水性樹脂は、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上であることが好ましく、より好ましくは28g/g以上、さらに好ましくは30g/g以上、特に好ましくは32g/g以上である。0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/gよりも小さいと、本発明の効果が十分に発揮できないおそれがある。
本発明の効果を最大限に発揮させるためには、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上で、かつ、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上である特定性能の吸水性樹脂を用いることが特に好ましい。
【0038】
(2)亜鉛化合物
本発明において用いることができる亜鉛化合物は、水中(イオン交換水)で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物である。すなわち、本発明において用いることができる亜鉛化合物には、水溶性あるいは水中解離性の亜鉛化合物が必須であり、例えば、酸化亜鉛などの酸化物や亜鉛末(金属亜鉛)は本発明の亜鉛化合物には含まれず、このような酸化物や亜鉛末(金属亜鉛)を用いても水中で亜鉛イオンが実質生じないために本発明の効果は発揮できない。また、ZnO・Al2O3(亜鉛スピネル)、(Fe、Zn、Mn)O・(Fe、Mn)2O3(フランクリナイト)、(Pd、Zn)2(OH)VO4(デグリゾワー石)などの亜鉛鉱物も、水中(イオン交換水)で解離しない場合、本発明の亜鉛化合物には含まれない。
【0039】
本発明においては、亜鉛化合物が1種のみを用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
本発明で用いられる亜鉛化合物中の亜鉛は正2価(Zn2+)であり、亜鉛以外の他の金属成分を含有してもよいが、金属成分中で好ましくは50〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは90〜100質量%の亜鉛を含む。亜鉛以外の金属(金属イオン)成分は、本発明の目的を達成する上で効果がほとんどあるいは全く見られないばかりか、場合によっては吸収性能を低下させるので、好ましくない場合がある。
【0040】
本発明において、水溶性の亜鉛化合物を用いる場合、その水溶性(25℃のイオン交換水あるいは脱酸素の水100gへの溶解度)が亜鉛化合物として好ましくは1g以上、より好ましくは10g以上、さらに好ましくは100g以上、特に好ましくは300g以上の水溶性の亜鉛化合物である。かかる水溶性の亜鉛化合物としては、例えば、ZnH2などの亜鉛の水素化物;ジメチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ヨウ化メチル亜鉛などの有機亜鉛化合物;フタロシアニン亜鉛、1,4,8,11,15,18,22,25−オクタブトキシ−29H,31H−フタロシアニン亜鉛、2,3,9,10,16,17,23,24−オクタキス(オクトキシ)−29H,31H−フタロシアニン亜鉛、1,2,3,4,8,9,10,11,15,16,17,18,22,23,24,25−ヘキサデカフルオロ−29H,31H−フタロシアニン亜鉛、29H,31H−テトラベンゾ(b,g,l,q)ポルフィリン亜鉛、5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリン亜鉛などの亜鉛錯体;などが挙げられるが、本発明の目的を達成する上では、好ましくは、酸と反応させた亜鉛塩、塩基と反応させた亜鉛酸塩(例えば、Na2(Zn(OH)4)、Ba(Zn(OH)4))が挙げられる。
【0041】
本発明において、水中で解離して亜鉛イオンを生じる水中解離性の亜鉛化合物として亜鉛塩を用いる場合、例えば、有機酸と亜鉛とから得られる亜鉛化合物(亜鉛の有機酸塩)や、無機酸と亜鉛とから得られる亜鉛化合物(亜鉛の無機酸塩)が挙げられる。なお、前記原料とされる亜鉛は、金属亜鉛に限定されず、有機酸や無機酸と反応すれば、酸化亜鉛やその他亜鉛誘導体であってもよい。これらの亜鉛化合物の中でも、亜鉛塩(亜鉛の有機酸塩、亜鉛の無機酸塩)が好ましい。有機酸塩としては、スルホン酸塩、カルボン酸塩が好ましく、より好ましくはカルボン酸塩、さらに好ましくは上記水溶性のカルボン酸塩である。また、無機酸塩としては、ハロゲン化物、酸素酸塩が好ましく、より好ましくは酸素酸塩である。また、酸素酸塩として、亜硫酸塩や亜硫酸水素塩を用い、得られる吸水性樹脂組成物の残存モノマーの低減や着色改善などの機能を付与してもよい。
【0042】
前記有機酸や無機酸としては特に限定されないが、本発明の効果を十分に発揮させるためには、pKa(酸解離指数:25℃の水溶液における酸解離定数の逆数の対数値で規定)が6.90以下の有機酸や無機酸が好ましい。pKaが6.90以下の有機酸と亜鉛とから得られる亜鉛化合物や、pKaが6.90以下の無機酸と亜鉛とから得られる亜鉛化合物を用いれば、吸水性樹脂と組み合わせて吸水性樹脂組成物とした際に、吸水性樹脂の有する酸基および/またはその塩(好ましくはカルボキシル基および/またはその塩)への亜鉛の移動が抑制でき、本発明の効果を十分に発揮できるので好ましい。
【0043】
pKaが6.90以下の有機酸としては、例えば、酢酸、クエン酸、フマール酸、アクリル酸、プロピオン酸などが挙げられる。
pKaが6.90以下の無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸などが挙げられる。
上記pKaの値は、好ましくは−11.00〜6.00の範囲内、より好ましくは−10.00〜5.00の範囲内、さらに好ましくは−9.00〜4.00の範囲内である。
したがって、本発明において好ましく用いることができる亜鉛化合物としては、具体的には、例えば、蓚酸亜鉛、蟻酸亜鉛、酢酸亜鉛、クエン酸亜鉛、フマール酸亜鉛、アクリル酸亜鉛、プロピオン酸亜鉛、乳酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、酒石酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトネート、安息香酸亜鉛、p−フェノールスルホン酸亜鉛、p−トルエンスルホン酸亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛などの有機酸亜鉛塩;ピロリン酸亜鉛、ホスフィン酸亜鉛、燐酸亜鉛、テトラフルオロ硼酸亜鉛、塩酸亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛などの無機酸亜鉛塩;Na2(Zn(OH)4)、Ba(Zn(OH)4)などの亜鉛酸塩;などが挙げられ、これらの水溶性亜鉛塩あるいは亜鉛酸塩、特に水溶性亜鉛塩がより好適に用いられる。なお、これらの亜鉛化合物は、添加後に吸水性樹脂の官能基(例えば、カルボキシル基)と反応してもよいし、しなくてもよい。
【0044】
(3)植物成分
本発明において用いることができる植物成分は、ポリフェノール、フラボンおよびその類、カフェインから選ばれる少なくとも1種の化合物を0を越えて100質量%以下含む植物成分であり、好ましくは、前記化合物が、タンニン、タンニン酸、五倍子、没食子および没食子酸から選ばれる少なくとも一種である。
本発明において用いることのできる植物成分を含んだ植物としては、例えば、ツバキ科の植物ではツバキ、ヒサカキ、モッコクなどが挙げられ、アカネ科の植物ではコーヒーなどが挙げられる。
【0045】
本発明において用いることのできる植物成分の形態としては、植物から抽出したエキス(精油)、植物自体(植物粉末)、植物加工業や食物加工業における製造工程で副生する植物滓および抽出滓などが挙げられるが、特に限定されない。
本発明において用いることのできる植物成分は、それ自身が粉末の場合、および/または、植物から抽出した植物成分を含んだエキス(精油)を担持させた粉体の場合、その粒子径は、0.001〜1000μmの範囲内が好ましく、1〜600μmの範囲内がより好ましく、質量平均粒子径は、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。質量平均粒子径が500μmより大きい場合には、尿などと接触した場合、植物成分に含まれる有効成分の作用が不十分となり、安定した消臭性能が付与できないおそれがある。また、吸水性樹脂の質量平均粒子径に対して、植物成分を含んだ粉末の質量平均粒子径が小さい方が、優れた消臭性能および安定性が付与できるため好ましい。
【0046】
本発明において用いることのできる植物成分としては、常温で液体および/または水溶液が好ましい。
(4)吸水性樹脂組成物
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、前述の吸水性樹脂と前述の亜鉛化合物とを含む。すなわち、本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分とし、水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物を含む。
吸水性樹脂組成物中の亜鉛化合物の含有量は、吸水性樹脂に対して亜鉛イオンとして0.0001〜2質量%の範囲で含まれることが重要であり、好ましくは0.001〜1.5質量%の範囲、より好ましくは0.005〜1.0質量%の範囲、特に好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲である。吸水性樹脂に対する亜鉛イオンの含有割合が0.0001質量%よりも少ないと、硫化水素やメルカプタン類などのイオウ系化合物に由来する悪臭を十分に除去できる消臭性能を発揮できない。また、吸水性樹脂に対する亜鉛イオンの含有割合が2質量%よりも多いと、吸水性樹脂が有する酸基および/またはその塩同士の間におけるイオン架橋が進み、0.90質量%生理食塩水に対する無加圧下吸収倍率や0.90質量%生理食塩水に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率といった吸収性能が低下してしまう。
【0047】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、亜鉛化合物以外に前述の植物成分をさらに含んでいても良い。植物成分の使用量は、目的とする消臭機能によっても異なるが、吸水性樹脂に対して0.001〜10質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲である。0.001質量%より少ないと十分な効果が得られず、10質量%を超える場合は、添加量に見合った効果が得られない。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物を製造する方法としては、特に限定されないが、好ましくは、酸基含有不飽和単量体を主成分とする単量体成分を重合して吸水性樹脂を得る重合工程と、前記重合工程を経て得られた吸水性樹脂に、亜鉛化合物を、吸水性樹脂に対して亜鉛イオンとして0.0001〜2質量%の範囲で添加する工程とを含み、前記重合工程を経て得られた吸水性樹脂の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上である。
【0048】
本発明において、重合工程を経て得られた吸水性樹脂とは、例えば、重合によって得られた表面架橋されていない吸水性樹脂や、重合後にさらに表面架橋された吸水性樹脂など、重合工程を終えた吸水性樹脂を意味する。
酸基含有不飽和単量体を主成分とする単量体成分を重合して吸水性樹脂を得る重合工程については、前述した通りである。
重合工程を経て得られた吸水性樹脂は、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上であることが好ましく、より好ましくは28g/g以上、さらに好ましくは30g/g以上、特に好ましくは32g/g以上である。0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/gよりも小さいと、本発明の効果が十分に発揮できないおそれがある。
【0049】
重合工程を経て得られた吸水性樹脂は、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上であることが好ましく、より好ましくは28g/g以上、さらに好ましくは30g/g以上、特に好ましくは32g/g以上である。0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/gよりも小さいと、本発明の効果が十分に発揮できないおそれがある。
本発明の効果を最大限に発揮させるためには、重合工程を経て得られた吸水性樹脂は、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上で、かつ、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上であることが特に好ましい。
【0050】
吸水性樹脂に亜鉛化合物を添加する工程においては、本発明の効果をより十分に発揮させるため、重合工程を経て得られた吸水性樹脂に添加することが好ましい。重合工程を経て得られた吸水性樹脂に添加することにより、亜鉛が吸水性樹脂の表面により多く存在することになり、本発明の効果がより十分に発揮できる。重合工程を経て得られた吸水性樹脂に添加する形態としては、例えば、重合、乾燥後に添加する形態や、表面架橋処理時に添加する形態や、造粒時に添加する形態などが挙げられるが、特に限定されない。なお、亜鉛化合物は、重合後に得られた吸水性樹脂のみならず、重合前の単量体成分や、前記重合中の反応物に添加してもよい。
【0051】
亜鉛化合物の添加量は、吸水性樹脂に対して亜鉛イオンとして0.0001〜2質量%の範囲で添加することが重要であり、好ましくは0.001〜1.5質量%の範囲、より好ましくは0.005〜1.0質量%の範囲、特に好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲である。吸水性樹脂に対する亜鉛イオンの含有割合が0.0001質量%よりも少ないと、硫化水素やメルカプタン類などのイオウ系化合物に由来する悪臭を十分に除去できる消臭性能を発揮できない。また、吸水性樹脂に対する亜鉛イオンの含有割合が2質量%よりも多いと、吸水性樹脂が有する酸基および/またはその塩同士の間におけるイオン架橋が進み、無加圧下吸収倍率や単層加圧下吸収倍率といった吸収性能が低下してしまう。
【0052】
重合工程を経て得られた吸水性樹脂に添加する形態において、亜鉛化合物が液状の場合、例えば、亜鉛化合物が常温で液体の場合や、水、水蒸気、水性液や各種有機溶剤などに溶解した溶液の場合には、亜鉛化合物を含んだ溶液を吸水性樹脂に所望の量添加されるように噴霧若しくは滴下混合させる方法などが挙げられる。また、亜鉛化合物が粉体の場合には、例えば、吸水性樹脂に所望の量添加されるように吸水性樹脂に直接混合させる方法(例えば粉体同士を混合する場合は、ドライブレンド法)や、かかる方法によって吸水性樹脂に直接混合したものに、水、水性液や各種有機溶剤などを噴霧若しくは滴下混合させる方法などが挙げられる。また、水性液や各種有機溶剤を混合した場合、必要により乾燥してもよい。
【0053】
本発明の効果をより十分に発揮させるためには、亜鉛化合物を粉体で添加するほうが好ましい。粉体とする場合は、前述の植物成分と同様である。
本発明において吸水性樹脂と亜鉛化合物を混合する場合、必要により用いる水、水蒸気、親水性有機溶媒などの水性液や各種有機溶剤の添加量は、吸水性樹脂の種類や粒度によってその最適量は異なるが、水を用いる場合は、吸水性樹脂に対して、10質量%以下が好ましく、より好ましくは1〜5質量%の範囲である。親水性有機溶媒を用いる場合は、吸水性樹脂に対して、10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%の範囲である。
【0054】
本発明において吸水性樹脂と亜鉛化合物とを混合する場合に使用する装置としては、通常の装置でよく、例えば、円筒型混合機、スクリュー型混合機、スクリュー型押出機、高速攪拌型混合機(例えば、タービュライザーなど)、ナウター型混合機、V型混合機、リボン型混合機、双腕型ニーダー、流動式混合機、気流型混合機、回転円盤型混合機、ロールミキサー、転動式混合機、スキ型(鋤型)ショベル羽根式混合機(例えば、レディゲミキサーなど)などを挙げることができ、混合の際の速度は高速、低速を問わない。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物には、前述の通り、植物成分をさらに含んでいても良い。植物成分の添加方法は、特に限定されないが、好ましくは前述の亜鉛化合物の添加方法と同様の方法である。植物成分の添加量は、吸水性樹脂に対して0.001〜10質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲である。0.001質量%より少ないと十分な効果が得られず、10質量%を超える場合は、添加量に見合った効果が得られない。
【0055】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物には、さらに、無機粉末が含まれていても良い。無機粉末としては、特に限定されないが、例えば、二酸化珪素や酸化チタン等の金属酸化物、天然ゼオライトや合成ゼオライト等の珪酸(塩)、カオリン、タルク、クレー、ベントナイト等が好ましく挙げられる。このうち、二酸化珪素、と珪酸(塩)がより好ましく、コールターカウンター法により測定された平均粒子径が200μm以下の二酸化珪素と珪酸(塩)がさらに好ましい。その使用量は、吸水性樹脂と無機粉体との組み合わせにもよるが、吸水性樹脂に対して0.001〜10質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲である。吸水性樹脂と無機粉体との混合方法は、特に限定されるものではなく、例えば、粉体同士を混合するドライブレンド法、湿式混合法等を採用できるが、ドライブレンド法がより好ましい。
【0056】
本発明に係る吸水性樹脂組成物の製造方法においては、さらに、必要に応じて、消臭剤、抗菌剤、香料、発泡剤、顔料、染料、可塑剤、粘着剤、界面活性剤、肥料、酸化剤、還元剤、水、塩類、キレート剤、殺菌剤、ポリエチレングリコールやポリエリレンイミンなどの親水性高分子、パラフィンなどの疎水性高分子、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂、ポリエステル樹脂やユリア樹脂などの熱硬化性樹脂等を、吸水性樹脂に対して、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%添加する等、種々の機能を付与する工程を含んでいてもよい。
【0057】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物中の吸水性樹脂の含有量は特に限定されないが、本発明の効果を十分に発揮させるため、好ましくは、70〜99質量%の範囲、より好ましくは80〜96質量%の範囲、特に好ましくは90〜93質量%の範囲である。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上であることが好ましく、より好ましくは28g/g以上、さらに好ましくは30g/g以上、特に好ましくは32g/g以上である。0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/gよりも小さいと、本発明の効果が十分に発揮できないおそれがある。
【0058】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上であることが好ましく、より好ましくは28g/g以上、さらに好ましくは30g/g以上、特に好ましくは32g/g以上である。0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/gよりも小さいと、本発明の効果が十分に発揮できないおそれがある。
本発明の効果を最大限に発揮させるためには、本発明にかかる吸水性樹脂組成物の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上で、かつ、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上であることが特に好ましい。本発明にかかる吸水性樹脂組成物がこのような特定の優れた吸収性能を有することによって、本発明の効果の一つである消臭性能がより十分に発揮できるようになる。
【0059】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物の形状は、特に限定されず、例えば、球状、球の凝集体、不定形破砕状の粉末(粒子)などが挙げられるが、繊維への固定性の高さなどから不定形破砕状の粉末(粒子)が好ましく使用できる。さらに、その嵩比重(JIS K−3362で規定)は、本発明の効果を十分に発揮させるためには、好ましくは0.40〜0.80g/mlの範囲内、より好ましくは0.50〜0.75g/mlの範囲内、さらに好ましくは0.60〜0.73g/mlの範囲内である。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物の含水率(吸水性樹脂組成物中に含まれる水分量で規定され、吸水性樹脂1gを用い、180℃で3時間の乾燥減量で測定)は特に限定されないが、本発明の効果を十分に発揮させるためには室温でも流動性を示す粉末であることが好ましく、含水率として好ましくは0.2〜30質量%、より好ましくは0.3〜15質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%の粉末状態である。
【0060】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物の水可溶分量は、特に限定されないが、本発明の効果を十分に発揮させるためには、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物の着色状態は、YI値(Yellow Index:欧州特許942014号および同1108745号参照)として、好ましくは0〜15、より好ましくは0〜13、さらに好ましくは0〜10、最も好ましくは0〜5であり、さらに、吸水性樹脂組成物中の残存モノマー量は、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下である。
【0061】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物の粒度としては、好ましくは、850μm未満で150μm以上の粒子が全体の90質量%以上で且つ300μm以上の粒子が全体の60質量%以上であり、より好ましくは、850μm未満で150μm以上の粒子が全体の95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。また、300μm以上の粒子がより好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上とされる。
300μm以上の粒子が60質量%より少ない場合、本発明の消臭効果の達成が困難となるおそれがある。粒子径を大きくすると被表面面積が減少するにも拘らず、驚くべきことに、吸水性樹脂組成物の粒子径を大きくその比表面積を減少させるほど消臭効果が向上するのである。
【0062】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物の質量平均粒子径は、好ましくは200〜700μm、さらに好ましくは300〜600μm、特に好ましくは400〜500μmである。吸水性樹脂組成物の質量平均粒子径は必要により造粒などで調整してもよい。
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、優れた消臭性能を有するため、好ましくは、乾式硫化水素残存量が35ppm以下であり、且つ、湿式硫化水素残存量が40ppm以下である。
乾式硫化水素残存量は、より好ましくは25ppm以下であり、さらに好ましくは15ppm以下であり、特に好ましくは5ppm以下である。
【0063】
湿式硫化水素残存量は、より好ましくは35ppm以下であり、さらに好ましくは25ppm以下であり、特に好ましくは15ppm以下である。
乾式硫化水素残存量および湿式硫化水素残存量の測定方法の詳細については後述する。
湿式硫化水素残存量が35ppmより多い場合や、湿式硫化水素残存量が40ppmより多い場合には、本発明にかかる吸水性樹脂組成物の消臭性能が十分に発揮されないおそれがある。
(5)吸収体
本発明にかかる吸水性樹脂組成物は、吸水性樹脂を主成分とし、その形状は通常、粉末である。かかる粉末状の吸水性樹脂組成物を任意の他の吸収材料とともに成形することで吸収体が得られる。吸収体の形状は特に限定されないが、好ましくは、シート状、筒状、フィルム状、繊維状に加工され、特に好ましくはシート状(別称ウェッブ状)に加工されることで吸収体とされる。また、吸水性樹脂組成物がシート状で得られる場合、そのまま吸収体としても良い。
【0064】
本発明にかかる吸収体は、本発明の効果を発揮するために、酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分とし、水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物、および親水性繊維を含んでなる吸収体である。
本発明で用いることができる親水性繊維は、特に限定されないが、例えば、粉砕された木材パルプ、その他、コットンリンターや架橋セルロース繊維、レーヨン、綿、羊毛、アセテート、ビニロン等を例示でき、好ましくはそれらをエアレイドしたものである。
かかる吸収体は、前述した本発明にかかる吸水性樹脂組成物と親水性繊維を用いて製造される、本発明にかかる吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含む吸収体でもよいし、酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂、水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物、および親水性繊維を用いて製造される、酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分とし、水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物、および親水性繊維を含んでなる吸収体でもよい。
【0065】
本発明にかかる吸収体が吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含む吸収体である場合、吸水性樹脂組成物と親水性繊維との合計質量に対する吸水性樹脂組成物の含有量(コア濃度)が20〜100%質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは30〜90質量%の範囲、より好ましくは40〜80質量%の範囲である。コア濃度が20質量%未満の場合は、吸水性樹脂組成物の使用量が少なく、例えば、オムツ全体への消臭性能の付与が十分に行われない場合があり、好ましくない。
本発明にかかる吸収体を吸水性樹脂組成物と親水性繊維とから製造する場合、その製造方法は特に限定されないが、例えば、吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを、上述のコア濃度となる割合でミキサー等の混合機を用いて乾式混合し、得られた混合物を例えば空気抄造などによってウェブ状に成形した後、必要により圧縮成形して製造する方法が挙げられる。かかる吸収体は、密度0.001〜0.50g/cc、坪量0.01〜0.20g/cm2の範囲に圧縮成形されることが好ましい。
【0066】
本発明にかかる吸収体が、酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂、水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物、および親水性繊維を用いて製造される場合、かかる吸収体は、前記吸水性樹脂の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上であり、前記亜鉛化合物は、前記吸水性樹脂に対して亜鉛イオンとして0.0001〜2質量%の範囲で含まれる。吸水性樹脂の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率、吸水性樹脂の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率、吸水性樹脂に対する亜鉛イオンの含有量が上記範囲を外れると、吸収体として本発明の効果が十分に発揮できないおそれがある。
【0067】
本発明にかかる吸収体が、酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂、水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物、および親水性繊維を用いて製造される場合、その製造方法は特に限定されないが、例えば、亜鉛化合物が粉体の場合には、吸水性樹脂と亜鉛化合物と親水性繊維とを、上述のコア濃度となる割合でミキサー等の混合機を用いて乾式混合する方法や、かかる方法によって乾式混合したものに、水、水性液や、各種有機溶剤などを噴霧もしくは滴下混合させる方法などが挙げられる。また、亜鉛化合物が常温で液体の場合や、水、水蒸気、水性液や、各種有機溶剤などに溶解した溶液の場合には、亜鉛化合物を含んだ溶液を親水性繊維に所望の量が添加されるように噴霧もしくは滴下混合したものに、上述のコア濃度となる割合の吸水性樹脂をミキサー等の混合機を用いて混合する方法などが挙げられる。
【0068】
(6)吸収性物品
本発明にかかる吸収性物品は、上記した本発明の吸収体、液透過性を有する表面シート、液不透過性を有する背面シートを備える。
本発明にかかる吸収性物品の製造方法は、特に限定されないが、例えば、吸収体を液透過性を有する基材(表面シート)と液不透過性を有する基材(背面シート)でサンドイッチして、必要に応じて、弾性部材、拡散層、粘着テープ等を装備することで、吸収性物品、例えば、大人用紙オムツや生理用ナプキンとすればよい。
【0069】
本発明にかかる吸水性樹脂組成物や吸収体は、吸収性物品に消臭機能を付与でき、長時間にわたり、優れた消臭性能と吸収特性を示すものである。このような吸収性物品としては、具体的には、近年成長の著しい大人用紙オムツをはじめ、子供用オムツや生理用ナプキン、いわゆる失禁パッド等の衛生材料等が挙げられ、それらに特に限定されるものではないが、吸収性物品の中に存在する吸水性樹脂組成物や吸収体が非常に優れた消臭性を有し、かつ、戻り量も少なく、ドライ感が著しいことにより、装着している本人、介護の人々の負担を大きく低減することができる。
【0070】
【実施例】
以下に本発明の実施例と比較例を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、吸水性樹脂、吸水性樹脂組成物、吸収性物品の諸性能は以下の方法で測定した。
(a)0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)に対する無加圧下吸収倍率
吸水性樹脂(または吸水性樹脂組成物)0.20gを不織布製の袋(60mm×60mm)に均一に入れ、25±2℃に調温した0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)中に浸漬した。60分後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、袋の質量W2(g)を測定した。また、吸水性樹脂を用いないで同様の操作を行い、そのときの質量W1(g)を測定した。そして、これら質量W1、W2から、次式に従って、吸収倍率(g/g)を算出した。
【0071】
0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)に対する無加圧下吸収倍率(g/g)=((質量W2(g)−質量W1(g))/吸水性樹脂(または吸水性樹脂組成物)の質量(g))−1
(b)0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率
400メッシュのステンレス製金網(目の大きさ38μm)を円筒断面の一辺(底)に溶着させた内径60mmのプラスチック製支持円筒の底の金網上に、吸水性樹脂(または吸水性樹脂組成物)0.20gを均一に散布し、その上に外径が60mmよりわずかに小さく支持円筒との壁面に隙間が生じずかつ上下の動きは妨げられないピストン(cover plate)を載置し、支持円筒と吸水性樹脂とピストンの質量W3(g)を測定した。このピストン上に、吸水性樹脂(または吸水性樹脂組成物)に対して、ピストンを含め1.9kPaの荷重を均一に加えることができるように調整された荷重を載置し、測定装置一式を完成させた。直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmのガラスフィルターを置き、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)をガラスフィルターの上部面と同レベルになるように加えた。その上に直径9cmの濾紙(トーヨー濾紙(株)製、No.2)を載せて表面が全て濡れるようにし、かつ過剰の液を除いた。
【0072】
上記測定装置一式を上記湿った濾紙上にのせ、液を荷重下で吸収させた。液面がガラスフィルターの上部から低下したら液を追加し、液面レベルを一定に保った。1時間後に測定装置一式を持ち上げ、荷重を取り除いた質量W4(g)(支持円筒と膨潤した吸水性樹脂(または吸水性樹脂組成物)とピストンの質量)を再測定した。そして、これら質量W3、W4から、次式に従って、0.90質量%生理食塩水に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率(g/g)を算出した。
0.90質量%生理食塩水に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率(g/g)=(質量W4(g)−質量W3(g))/吸水性樹脂(または吸水性樹脂組成物)の質量(g)
(c)質量(重量)平均粒子径
吸水性樹脂ないし吸水性樹脂組成物を、850μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μmなどのJIS標準ふるいで篩い分けし、残留百分率を対数確率紙にプロットした。これにより、質量平均粒子径(D50)を読み取った。
【0073】
篩い分けは吸水性樹脂粉末ないし吸水性樹脂組成物粉末の10.00gを目開き850μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μmなどのJIS標準ふるい(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm)に仕込み、ロータップ型ふるい振盪機((株)飯田製作所製、ES−65型ふるい振盪機)により10分間分級した。なお、質量平均粒子径(D50)とは、米国特許5051259号公報などにあるように一定目開きの標準ふるいで粒子全体の50質量%に対応する標準ふるいの粒子径のことである。
【0074】
(d)消臭テスト(吸水性樹脂または吸水性樹脂組成物)
成人20人より集めた人尿50mlを蓋付きの120mlのポリプロピレンカップに加え、そこに吸水性樹脂(または吸水性樹脂組成物)2.0gを添加することにより膨潤ゲルを形成させた。人尿は排泄後2時間以内のものを用いた。この容器に蓋をし、膨潤ゲルを37℃に保った。液吸収から6時間後に蓋を開け、カップの上部から約3cmの位置から成人20名のパネラーが臭いをかぐことにより、消臭効果を判定した。判定は、下記の判定基準を用いて各人6段階で得点を記載し平均値を求めた。なお吸水性樹脂(または吸水性樹脂組成物)を添加せず人尿だけで、同様の操作を行ったものを標準品とし、その臭いを5として消臭効果を評価した。
【0075】
0:無臭
1:やっと感知できるにおい
2:感知できるが許容できる臭い
3:楽に感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
(e)吸収性物品の評価(戻り量)
後述する実施例で得られた吸収性物品を用い、吸収性物品の液透過性シートを上面にして平らな台上に広げ、その上に金網(20メッシュ、140mm×500mm)をのせた。さらにその上に、150mm×400mmの大きさで全体質量が22000gである、中心部に直径70mm、高さ80mmの円筒を有した吸収性物品の荷重下性能測定装置を、左右のレッグギャザー間で、且つ、円筒の中心部が吸収性物品の中心になるようにのせた。円筒部より、37℃に調整した人工尿(組成:尿素1.9質量%、塩化ナトリウム0.8質量%、塩化カルシウム0.1質量%、硫酸マグネシウム0.1質量%を含む水溶液)150gを1時間間隔で2回注いだ。2回目に人工尿を注いでから1時間放置後、吸収性物品の荷重下性能測定装置と金網を吸収性物品から除き、ペーパータオル(製造元:王子製紙株式会社、キッチンタオル、エキストラドライ、130mm×450mmに裁断して30枚重ねたもの)を吸収性物品に載せ、その上に、37g/cm2(3.63kPa)の荷重を1分間かけ、ペーパータオルに戻る液量(g)を測定した。
【0076】
(f)吸収性物品の評価(消臭テスト)
後述する実施例で得られた吸収性物品を円形(直径80mm)に切断し、蓋付きの500mlのポリプロピレンカップの底に、液透過性シートを上面にして入れた。この吸収性物品の中心部に、成人20人より集めた人尿20gを入れ、蓋をして容器全体を37℃に保った。6時間後に蓋を開け、カップの上部(約3cmの位置)から成人20名のパネラーが臭いをかぐことにより、消臭効果を判定した。判定は、下記の判定基準を用いて各人6段階で得点を記載し平均値を求めた。なお吸収性物品を入れず人尿だけで、同様の操作を行ったものを標準品とし、その臭いを5として消臭効果を評価した。
【0077】
0:無臭
1:やっと感知できるにおい
2:感知できるが許容できる臭い
3:楽に感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
(g)乾式硫化水素残存量
ガラスシャーレ(株式会社相互理化学硝子製作所発行のGENERAL CATALOGUE A−8000(2002年発行)に記載、コード:305−08、外径×高さ=150mm×28mm)に、吸水性樹脂組成物5.00gを均一に撒布した。次いで、円形(直径147mm)に切った通気性で通液性のヒートロンペーパー(南国パルプ工業株式会社、品種:GSP−22)で吸水性樹脂組成物を覆い、ヒートロンペーパーの円周3箇所をガラスシャーレ内壁にテープ(10mm×10mm)で固定した。3Lの臭い袋(近江オドエアーサービス(株)製)の一辺を開口し、吸水性樹脂組成物を撒布したガラスシャーレを入れた後、臭い袋の開口部分を隙間がないように閉じた。臭い袋に備えられたガラス管部から、臭い袋内を一旦減圧にした後、所定量の無臭空気(後で注入する硫化水素標準ガスとの合計量が2.5Lとなるように設定した。すなわち、無臭空気量(L)=2.5−硫化水素標準ガスの注入量(L)に従って設定した。)を注入し、シリコンゴム栓で密栓した。この臭い袋内に、所定量V(L)のN(体積%)濃度の硫化水素標準ガスが注入されるように、注射針を有したシリンジで注入し、25℃にて放置した。なお、後述するが、注入する硫化水素量は、吸水性樹脂組成物中に存在する亜鉛量によって変更させた。1時間後、シリコンゴム栓をはずし、外気の混入を防ぎ、ガス採取器((株)ガステック製、GV−100S)およびガス検知管((株)ガステック製、No.4LK、No.4LL、No.4M、No.4H)を用いて雰囲気濃度を測定した。そして、この雰囲気濃度を乾式硫化水素残存量とした。
【0078】
(h)湿式硫化水素残存量
上記(g)の乾式硫化水素残存量の測定において、吸水性樹脂5.00gを125mlの生理食塩水で膨潤させて硫化水素残存量を測定することで、湿式硫化水素残存量とした。すなわち、上記(g)で使用したガラスシャーレ、ヒートロンペーパー、3Lの臭い袋を用いて、上記(g)と同様に吸水性樹脂5.00gを散布したガラスシャーレを臭い袋に入れた後、臭い袋の開口部分を隙間がないように閉じた。臭い袋に備えられたガラス管部から、臭い袋内を一旦減圧にした後、所定量の無臭空気(後で注入する硫化水素標準ガスとの合計量が2.5Lとなるように設定した。すなわち、無臭空気量(L)=2.5−硫化水素標準ガスの注入量(L)に従って設定した。)を注入し、続いて、外気の混入を防ぎながら臭い袋内のシャーレにテフロン(登録商標)チューブを備えたガラス漏斗を用いて、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)125mlを一気に注ぎ、吸水性樹脂組成物を均一に膨潤させ、シリコンゴム栓で密栓した。膨潤させて30分後、この臭い袋内に、所定量V(L)のN(体積%)濃度の硫化水素標準ガスが注入されるように、注射針を有したシリンジで注入し、25℃にて放置した。なお、後述するが、注入する硫化水素量は、吸水性樹脂組成物中に存在する亜鉛量によって変更させた。1時間後、シリコンゴム栓をはずし、外気の混入を防ぎ、上記(g)で用いたガス採取器およびガス検知管を用いて、上記(g)と同様に雰囲気濃度を測定した。そして、この雰囲気濃度を湿式硫化水素残存量とした。
【0079】
(i)乾式硫化水素残存量および湿式硫化水素残存量の測定において注入する硫化水素量
亜鉛の硫化水素除去能力は、これまでの経験から、およそ、亜鉛1mol当たり、硫化水素0.0334molである。よって、吸水性樹脂組成物に含まれる亜鉛の量により、使用する(注入する)硫化水素量を変更した。すなわち、吸水性樹脂組成物5g中に亜鉛がM1mol含まれる場合、用いる硫化水素量M2(mol)=0.0334×M1となり、硫化水素標準ガスの注入量は、下記の理想気体の状態式に従って求めた。ただし、吸水性樹脂組成物5gに含まれる亜鉛が1.53×10−4mol未満の場合は、5.11×10−6molの硫化水素を用い、空試験時の硫化水素の雰囲気濃度を50ppmに設定した。
【0080】
(V×(N/100))/M2=22.4×(T/273)
すなわち、V=(22.4×(T/273))×(M2×(100/N))
V:硫化水素標準ガスの注入量(L)
N:使用する硫化水素標準ガスの濃度(体積%)
M2:用いる硫化水素のモル数
T:絶対温度(K)
例えば、今回使用した標準ガス(5.06%N2/Balance(住友精化製のH2S標準ガス:H2S濃度が5.06体積%となるようにN2で調整されたガス))の注入量、雰囲気濃度を以下に示した。
【0081】
吸水性樹脂5gに含まれる亜鉛が1.51×10−4molの場合:
注入量:2.5ml
雰囲気濃度:50ppm
吸水性樹脂5gに含まれる亜鉛が7.41×10−4molの場合:
注入量:12.0ml
雰囲気濃度:240ppm
吸水性樹脂5gに含まれる亜鉛が1.15×10−3molの場合:
注入量:18.6ml
雰囲気濃度:380ppm
吸水性樹脂5gに含まれる亜鉛が2.73×10−3molの場合:
注入量:44.1ml
雰囲気濃度:890ppm
(j)吸水性樹脂組成物に含まれる亜鉛量の測定
吸水性樹脂組成物に含まれる亜鉛量が不明な場合には、吸水性樹脂組成物を燃焼させた際に生じた残渣を誘導結合プラズマ発光分光分析装置で定量分析し、吸水性樹脂組成物に含まれる亜鉛量(質量%)として算出した。
【0082】
〔製造例1〕
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)3.4gを溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム2.46gおよびL−アスコルビン酸0.10gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始した。そして、30℃〜90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。得られた乾燥重合体を、振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目の大きさ850μm)の金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(a)を得た。
【0083】
得られた吸水性樹脂粉末(a)100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4−ブタンジオール0.3質量部、水3質量部とからなる表面架橋剤を混合した。上記の混合物を210℃で55分間加熱処理することにより吸水性樹脂(1)を得た。
得られた吸水性樹脂(1)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布を表1に示した。
〔製造例2〕
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度33質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)3.5gを溶解し反応液とした。次に、この反応液を製造例1と同様に脱気した。次いで、製造例1と同様の反応器に上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸カリウム2.46gおよびL−アスコルビン酸0.10gを添加し、製造例1と同様に重合した。得られた細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。得られた乾燥重合体を、振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目の大きさ850μm)の金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(b)を得た。
【0084】
得られた吸水性樹脂粉末(b)100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部、1,4−ブタンジオール0.3質量部、水3質量部とからなる表面架橋剤を混合した。上記の混合物を200℃で55分間加熱処理することにより吸水性樹脂(2)を得た。
得られた吸水性樹脂(2)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布を表1に示した。
〔製造例3〕
75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度40質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)3.6gを溶解し反応液とした。次に、この反応液を製造例1と同様に30分間脱気した。次いで、製造例1と同様の反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸カリウム2.46gおよびL−アスコルビン酸0.10gを添加し、製造例1と同様に重合した。得られた細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、 150℃で90分間熱風乾燥した。得られた乾燥重合体を、振動ミルを用いて粉砕し、さらに20メッシュ(目の大きさ850μm)の金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(c)を得た。
【0085】
得られた吸水性樹脂粉末(c)を、吸水性樹脂(3)とした。
この吸水性樹脂(3)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布を表1に示した。
〔製造例4〕
アクリル酸を苛性ソーダで中和して得られた、71.3モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液4500g(単量体濃度39質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)14.6gを溶解し反応液とした。次に、この反応液を製造例1と同様に脱気した。次いで、製造例1と同様の反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム2.46gおよびL−アスコルビン酸0.10gを添加し、製造例1と同様に重合した。得られた細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥した。得られた乾燥重合体を、振動ミルを用いて粉砕しさらに20メッシュ(目開き850μm)の金網で分級および調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(d)を得た。
【0086】
得られた吸水性樹脂(d)100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部、1,4−ブタンジオール0.3質量部と、水3質量部とからなる表面架橋剤を混合した。上記の混合物を210℃で55分間加熱処理することにより、吸水性樹脂(4)を得た。
得られた吸水性樹脂(4)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布を表1に示した。
〔実施例1〕
製造例1で得られた吸水性樹脂(1)100質量部とアクリル酸亜鉛0.63質量部(亜鉛として0.2質量部)とを、レディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に入れ、330rpmで20秒間攪拌することによって添加混合し、吸水性樹脂組成物(1)を得た。
【0087】
得られた吸水性樹脂組成物(1)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布、消臭テスト結果、乾式硫化水素残存量、湿式硫化水素残存量を表2に示した。
〔実施例2〕
製造例2で得られた吸水性樹脂(2)100質量部とアクリル酸亜鉛0.63質量部(亜鉛として0.2質量部)とを、マヨネーズ瓶に入れ、分散機(株式会社東洋精機製作所製、No.488試験用分散機)にて1分間震動することによって添加混合し、吸水性樹脂組成物(2)を得た。
【0088】
得られた吸水性樹脂組成物(2)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布、消臭テスト結果、乾式硫化水素残存量、湿式硫化水素残存量を表2に示した。
〔実施例3〕
製造例1で得られた吸水性樹脂(1)100質量部と酢酸亜鉛0.56質量部(亜鉛として0.2質量部)とを、レディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に入れ、330rpmで20秒間攪拌すると同時に、植物成分としてツバキ科植物の葉抽出物の3質量%水溶液2.5質量部を噴霧することによって添加混合し、吸水性樹脂組成物(3)を得た。
【0089】
得られた吸水性樹脂組成物(3)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布、消臭テスト結果、乾式硫化水素残存量、湿式硫化水素残存量を表2にまとめた。
〔実施例4〕
製造例2で得られた吸水性樹脂(2)100質量部と酢酸亜鉛2.80質量部(亜鉛として1.0質量部)と、無機粉末として二酸化ケイ素(日本アエロジル社製、アエロジル200)0.3質量部とを、マヨネーズ瓶に入れ、スパチュラを用いて3分間手動攪拌することによって添加混合し、吸水性樹脂組成物(4)を得た。
【0090】
得られた吸水性樹脂組成物(4)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布、消臭テスト結果、乾式硫化水素残存量、湿式硫化水素残存量を表2にまとめた。
〔実施例5〕
製造例1で得られた吸水性樹脂(1)100質量部とアクリル酸亜鉛3.17質量部(亜鉛として1.0質量部)とを、レディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に入れ、330rpmで10秒間攪拌すると同時に、植物成分としてツバキ科植物の葉抽出物の1質量%水溶液1.5質量部を噴霧し、さらに、無機粉末として二酸化ケイ素(日本アエロジル社製、アエロジル200)0.3質量部を入れ、330rpmで10秒間攪拌することによって添加混合し、吸水性樹脂組成物(5)を得た。
【0091】
得られた吸水性樹脂組成物(5)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布、消臭テスト結果、乾式硫化水素残存量、湿式硫化水素残存量を表2にまとめた。
〔実施例6〕
製造例1で得られた吸水性樹脂(1)100質量部をレディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に入れ、330rpmで20秒間攪拌すると同時に、アクリル酸亜鉛の20質量%水溶液25質量部(亜鉛として1.6質量部)を噴霧することによって添加混合後、60℃にて減圧乾燥し、吸水性樹脂組成物(6)を得た。
【0092】
得られた吸水性樹脂組成物(6)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布、消臭テスト結果、乾式硫化水素残存量、湿式硫化水素残存量を表2にまとめた。
〔比較例1〕
製造例1で得られた吸水性樹脂(1)を、比較用吸水性樹脂組成物(1)とした。
得られた比較用吸水性樹脂組成物(1)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布、消臭テスト結果、乾式硫化水素残存量、湿式硫化水素残存量を表2にまとめた。
【0093】
〔比較例2〕
製造例1で得られた吸水性樹脂(1)100質量部と酸化亜鉛0.25質量部(亜鉛として0.2質量部)とを、マヨネーズ瓶に入れ、分散機(株式会社東洋精機製作所製、No.488試験用分散機)にて1分間震動することによって添加混合し、比較用吸水性樹脂組成物(2)を得た。
得られた比較用吸水性樹脂組成物(2)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布、消臭テスト結果、乾式硫化水素残存量、湿式硫化水素残存量を表2にまとめた。
【0094】
〔比較例3〕
製造例3で得られた吸水性樹脂(3)100質量部とアクリル酸亜鉛0.63質量部(亜鉛として0.2質量部)とを、レディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に入れ、330rpmで20秒間攪拌することによって添加混合し、比較用吸水性樹脂組成物(3)を得た。
得られた比較用吸水性樹脂組成物(3)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布、消臭テスト結果、乾式硫化水素残存量、湿式硫化水素残存量を表2にまとめた。
【0095】
〔比較例4〕
製造例4で得られた吸水性樹脂(4)100質量部と酢酸亜鉛0.56質量部(亜鉛として0.2質量部)とを、レディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に入れ、330rpmで20秒間攪拌することによって添加混合し、比較用吸水性樹脂組成物(4)を得た。
得られた比較用吸水性樹脂組成物(4)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布、消臭テスト結果、乾式硫化水素残存量、湿式硫化水素残存量を表2にまとめた。
【0096】
〔比較例5〕
製造例3で得られた吸水性樹脂(3)100質量部とアクリル酸亜鉛3.17質量部(亜鉛として1.0質量部)とを、マヨネーズ瓶に入れ、スパチュラを用いて3分間手動攪拌することによって添加混合し、比較用吸水性樹脂組成物(5)を得た。
得られた比較用吸水性樹脂組成物(5)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布、消臭テスト結果、乾式硫化水素残存量、湿式硫化水素残存量を表2にまとめた。
【0097】
〔比較例6〕
製造例1で得られた吸水性樹脂(1)100質量部をレディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に入れ、330rpmで30秒間攪拌すると同時に、アクリル酸亜鉛の25質量%水溶液51質量部(亜鉛として4.0質量部)を噴霧することによって添加混合後、60℃にて減圧乾燥し、比較用吸水性樹脂組成物(6)を得た。
得られた比較用吸水性樹脂組成物(6)の無加圧下吸収倍率、単層加圧下吸収倍率、粒度分布、消臭テスト結果、乾式硫化水素残存量、湿式硫化水素残存量を表2にまとめた。
【0098】
〔実施例7〕
実施例1で得られた吸水性樹脂組成物(1)37質量部と、木材粉砕パルプ63質量部とを、ミキサーを用いて乾式混合した。次いで、得られた混合物を、400メッシュ(目の大きさ38μm)に形成されたワイヤースクリーン上にバッチ型空気抄造装置を用いて空気抄造することにより、130mm×400mmの大きさのウェブに成形した。さらに、このウェブを圧力196.14kPaで5秒間プレスすることにより、坪量が約0.05g/cm2の吸収体を得た。
続いて、液不透過性のポリプロピレンからなる、いわゆる背面シート(液不透過性シート)、上記吸収体、および、液透過性のポリプロピレンからなる不織布の表面シート(液透過性シート)を、両面テープを用いてこの順に互いに貼着することにより、吸収性物品(つまり、大人用の紙オムツのパッドタイプ)(1)を得た。この吸収性物品(1)の質量は50gであった。
【0099】
得られた吸収性物品(1)の戻り量、消臭テスト結果を表3にまとめた。
〔実施例8〜12〕
実施例7で用いた吸水性樹脂組成物(1)を、実施例2、3、4、5、6で得られた吸水性樹脂組成物(2)、(3)、(4)、(5)、(6)に変更することにより、吸収性物品(2)、(3)、(4)、(5)、(6)をそれぞれ得た。
得られた吸収性物品(2)、(3)、(4)、(5)、(6)の戻り量、消臭テスト結果を表3にまとめた。
【0100】
〔比較例7〜12〕
実施例7で用いた吸水性樹脂組成物(1)を、比較例1、2、3、4、5、6で得られた比較用吸水性樹脂組成物(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)に変更することにより、比較用吸収性物品(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)をそれぞれ得た。
得られた比較用吸収性物品(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)の戻り量、消臭テスト結果を表3にまとめた。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた消臭性能、特に硫化水素やメルカプタン類などのイオウ系化合物に由来する悪臭を十分に除去できる消臭性能を有するとともに吸収性能にも優れた吸水性樹脂組成物、吸収体、吸収性物品、および吸水性樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
Claims (6)
- 酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分とし、水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物を含む吸水性樹脂組成物であって、
前記吸水性樹脂組成物の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上であり、
前記亜鉛化合物は、前記吸水性樹脂に対して亜鉛イオンとして0.0001〜2質量%の範囲で含まれる
ことを特徴とする、吸水性樹脂組成物。 - 前記亜鉛化合物以外に植物成分をさらに含む、請求項1に記載の吸水性樹脂組成物。
- 請求項1または2に記載の吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含む、吸収体。
- 酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分とし、水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物と、親水性繊維とを含む吸収体であって、
前記吸水性樹脂の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上であり、
前記亜鉛化合物は、前記吸水性樹脂に対して亜鉛イオンとして0.0001〜2質量%の範囲で含まれる
ことを特徴とする、吸収体。 - 請求項3または4に記載の吸収体、液透過性を有する表面シート、液不透過性を有する背面シートを備えた、吸収性物品。
- 酸基および/またはその塩と架橋構造を有する吸水性樹脂を主成分とし、水中で解離して亜鉛イオンを生じる亜鉛化合物を含む吸水性樹脂組成物の製造方法であって、
酸基含有不飽和単量体を主成分とする単量体成分を重合して吸水性樹脂を得る重合工程と、前記重合工程を経て得られた吸水性樹脂に、亜鉛化合物を、吸水性樹脂に対して亜鉛イオンとして0.0001〜2質量%の範囲で添加する工程とを含み、
前記重合工程を経て得られた吸水性樹脂の0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する無加圧下吸収倍率が26g/g以上、0.90質量%塩化ナトリウム水溶液に対する1.9kPaでの単層加圧下吸収倍率が26g/g以上である
ことを特徴とする、吸水性樹脂組成物の製造方法。
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