JPH05304337A - 半導体素子の製造方法 - Google Patents

半導体素子の製造方法

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JPH05304337A
JPH05304337A JP4090033A JP9003392A JPH05304337A JP H05304337 A JPH05304337 A JP H05304337A JP 4090033 A JP4090033 A JP 4090033A JP 9003392 A JP9003392 A JP 9003392A JP H05304337 A JPH05304337 A JP H05304337A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 製造が容易で変調速度が高速のリッジ導波路
型半導体レーザ素子を製造する。 【構成】 プレーナ半導体表面に誘電体層およびレジス
ト膜を形成し、このレジスト膜に窓を設け、この窓を通
して誘電体層をレジスト膜に沿って廻り込むようにエッ
チングし、露出したプレーナ半導体表面に窓の形状で金
属層を堆積させ、レジスト膜およびその上に堆積した金
属を除去し、窓の形状で形成された金属層をマスクとし
てリッジを形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は半導体素子に関する。特
に、リッジ導波路レーザ素子等のリッジ導波路光学素子
に関する。リッジ導波路とは、薄膜導波路であり、面に
沿う特定の狭い帯状の領域に導波作用があり、その領域
が他の部分に対して盛り上がった形状のものである。リ
ッジ導波路はエッチングあるいは選択成長によって形成
できる。
【0002】
【従来の技術】半導体レーザ素子の構造は、p型半導体
の領域からn型半導体の領域の方向に電流を流すp−n
接合と、電子と正孔との結合により光子を誘導放射する
「活性領域」とを備えている。活性領域は適当なバンド
ギャップを有し、誘導放射時の光子を適度に「閉じ込
め」るために、他の半導体の部分と異なる屈折率を有し
ている。活性領域の両側の層は「閉じ込め層」と呼ばれ
ている。
【0003】半導体レーザ素子は、主に、光ファイバ通
信装置に用いられる。近年製造される二酸化ケイ素の光
ファイバは、ほぼ1.3μmあるいは1.55μmの波
長で損失が極小となり、後者の方がより損失が少ない。
このため、1.1ないし1.65μmの範囲、さらには
1.3ないし1.6μmの範囲で動作する素子が特に必
要である。これらの波長は、特に断らない場合には真空
中の波長を示す。赤外線の領域で動作する半導体レーザ
素子は、通常は、インジウムリンInPの領域と、4元
系材料のインジウムガリウム砒素リンInx Ga1-x
y 1-y の領域とを含んでいる。xおよびyを選択す
ることにより、格子定数を一定にしたままバンドギャッ
プの異なる領域を形成することができる。バンドギャッ
プは、例えば光ルミネッセンスにより、実験的に測定す
ることができる。さらに、インジウムリンおよびインジ
ウムガリウム砒素リンには、p型またはn型の不純物を
添加することができる。
【0004】ガリウムアルミニウム砒素の領域およびガ
リウム砒素の領域を備えた半導体レーザ素子も通信に使
用することができる。動作波長は0.9μm近傍であ
る。
【0005】リッジ導波路レーザ素子については、例え
ば、カミノー(Kaminow )およびその共同研究者による
文献、「エレクトロニクス・レターズ(Electronics Le
tters)」第15巻(1979年)、第763頁から第7
65頁、「エレクトロニクス・レターズ」第17巻(1
981年)、第318頁から第320頁、「エレクトロ
ニクス・レターズ」第19巻(1983年)、第877
頁から第879頁に詳しい。リッジ導波路レーザ素子の
リッジは、横方向の光ビームを閉じ込める働きをする。
しかし、カミノーおよびその共同研究者が用いたリッジ
の構造では、リッジおよびリッジの両側の溝を覆う誘電
体層に窓を設け、この窓を通してリッジの電極を取り付
けている。このため、リッジが狭くなるほど、素子の発
振効率が低下する傾向がある。原理的には、リッジ導波
路レーザ素子の横方向の閉じ込め効率を、さらに高める
ことが可能である。
【0006】シーメンス社の出願による西ドイツ国特許
公開第24 22 287号公報には、プロトン照射し
た半導体材料に窓を形成し、この窓を通してリッジの電
極を形成する例を開示している。しかし、この構造で
も、リッジが狭くなるほど素子の発振効率が低下する。
【0007】リッジ導波路素子は、高速の変調速度を得
ることのできる利点がある。これに関しては、特に、上
記の1983年の文献に詳しい。高速の変調速度を得る
ことができることにより、同等の構成で高速のデータ伝
送が可能になる。
【0008】半導体レーザ素子の構造を考慮する場合に
は、「縦」モードの制御も重要な因子となる。通常の半
導体レーザ素子は、異なる出力波長に対応する複数の縦
モードで動作する傾向がある。これに対して、遠距離通
信や他の用途では、レーザ出力が非常に狭い波長領域に
集中している必要がある場合が多い。二酸化ケイ素ファ
イバを用いた遠距離通信の場合には、1.3μm近傍の
波長に比べてファイバ内の分散が非常に大きい1.55
μm近傍の波長で通信を行うために、縦モードの制御が
特に重要である。波長の制御が可能なレーザ素子とし
て、ファブリペローレーザ素子が公知である。しかし、
ファブリペローレーザ素子を光集積回路に集積すること
は現実的に困難である。
【0009】縦モードの制御は、回折格子を用いること
により可能である。回折格子を用いたレーザ素子として
は、分布帰還形レーザ素子が公知である。分布帰還形レ
ーザ素子については、トンプソン(G.H.B.Thompson)
著、ワイリィ(Willy)社刊の「半導体レーザ(Semicond
uctor lasers) 」に詳しく説明されている。分布帰還形
レーザ素子では、電流の流れるpn接合が回折格子の下
または上に設けられる。これに対して、ブラグ反射形レ
ーザ素子(分布反射形レーザ素子)では、pn接合は格
子の下には設けられていない。ここで、「下」、
「上」、「上方向」、「高い」等の用語は、相対的な方
向を示すもので、素子の空間的な方向を示すものではな
い。
【0010】埋め込みヘテロ構造の分布帰還形レーザ素
子のいくつかの例については、ウタケ他、「エレクトロ
ニクス・レターズ」第17巻(1981年)、第961
頁から第963頁、イタヤ他、「エレクトロニクス・レ
ターズ」第18巻(1982年)、第1006頁から第
1008頁、キタムラ他 「エレクトロニクス・レター
ズ」第19巻(1983年)、第840頁から第841
頁に記述されている。埋め込みヘテロ構造により横方向
の光学的閉じ込めが可能であり、低しきい値電流でレー
ザ発振を実現できる。出力が38mW程度で単一縦モー
ドの安定発振が観測されている。しかし、埋め込みヘテ
ロ構造を形成するためには、正確な成長およびエッチン
グを複雑に繰り返す工程を含んでいる。このため、歩留
り良く良好な素子を製造することができない。さらに、
埋め込みヘテロ構造には、逆方向電流を防ぐための層が
設けられているが、この層が寄生容量となり、変調速度
を制限する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上の問題
点を軽減または解決し、製造が容易で変調速度が高速で
ある半導体レーザ素子を製造するための半導体素子の製
造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の半導体素子の製
造方法は、半導体材料により形成された基底部上にその
基底部の面から盛り上がった形状のリッジを形成する半
導体素子の製造方法において、基底部上にプレーナ半導
体層を形成する第一の工程と、このプレーナ半導体層の
表面に最初に誘電体層、次にレジスト膜を形成する第二
の工程と、このレジスト膜に窓を設ける第三の工程と、
この窓を通して誘電体層をエッチングすることにより、
プレーナ半導体層の表面を露出させるとともに、レジス
ト膜に沿って廻り込む形状に誘電体層を除去する第四の
工程と、これにより露出したプレーナ半導体層の表面に
前記窓の形状で金属層を堆積させる第五の工程と、レジ
スト膜およびその上に堆積した金属を除去する第六の工
程と、第五の工程で形成された金属層をマスクとしてそ
の領域にリッジが残るようにプレーナ半導体層をエッチ
ングする第七の工程とを含むことを特徴とする。
【0013】基底部の上部の層には分布帰還格子を形成
しておくことがよい。この場合に、分布帰還格子の波形
とリッジとの角度がほぼ直角になるように形成する。分
布帰還格子は、製造に便利なようにリッジの内部または
下部に伸びていてもよい。
【0014】第七の工程において、第四の工程でエッチ
ングされずに残った誘電体層をマスクとし、リッジと溝
を隔てた領域に基底部から盛り上がった形状の部分を形
成することが望ましい。
【0015】リッジの幅は15μm以下であることが望
ましい。
【0016】基底部とリッジの部分との間には、エッチ
ング速度の異なる材料により境界を設けることが望まし
い。この場合に、境界をガリウムインジウムヒ素リンと
インジウムリンとの間で形成することがよい。
【0017】
【作用】本発明の方法では、金属層をマスクとしてリッ
ジを形成するので、リッジの表面にあらためて電極用の
金属層を設ける必要がない。また、リッジの形成すると
き、そのリッジとは別に基底部から盛り上がった形状の
領域を同時に形成できるので、それを利用すれば製造後
の素子の強度を高めることができる。この領域を以下
「補強部」という。
【0018】レジストの窓を介してその下の領域をレジ
ストを廻り込む形状にアンダカットし、その窓を通して
金属層を堆積させてからレジストおよびその表面上の金
属を除去する方法については、英国特許第1,475,
884号の明細書および図面に開示された内容と同等と
である。しかし、この特許は磁気バブルメモリを製造す
るためのものであり、製造すべき目的物は本発明とは全
く異なっている。
【0019】リッジは、その表面に電極が設けられ、基
底部への電流の流れの範囲を限定する。さらに、基底部
には直接に光学的閉じ込めを行う効果がある。十分な閉
じ込め効果を得るためには、リッジの幅を15μmより
狭くすることが適当であり、望ましくは10μm以下、
さらには5μmより狭いことが望ましい。一般的には、
この幅は1μm以上であり、通常は2μmまたはそれ以
上である。このように狭くするとリッジの強度が問題に
なるが、このリッジの上の金属層を電極および熱溜(ヒ
ートシンク)に取り付けるときに、このリッジと溝を隔
てて設けられた補強部についても電極および熱溜に接触
させれば、リッジを補強できる。補強部の表面には誘電
体層が残っているので、基底部に流れる電流をリッジの
領域に制限することができる。
【0020】補強部の上には、誘電体層に加え、その上
にさらに金属層を設けてもよい。この金属層は半導体に
電気的に接触するわけではない。半導体素子を銅製のス
タッド等に取り付け、これを熱溜および電極として用い
てリッジの領域だけに電流を供給するのであるが、補強
部の上の金属層は、この取り付けを容易にするためのも
のである。
【0021】プレーナ半導体層の表面に誘電体層とレジ
スト膜とを形成するとき、その間にさらに金属層を設け
ることもできる。このようにすると、リッジおよび補強
部を残してエッチングするとき、有効なマスクとして働
く。
【0022】補強部の上の誘電体層の上に二つの金属
層、例えばチタンとその上に金、または亜鉛とその上に
金を設けることにより、良好な接着を実現できる。
【0023】本発明により製造される半導体素子は光学
素子であり、半導体材料の活性層と、その上側および下
側でそれぞれレーザ光を閉じ込める閉じ込め層とが設け
られる。使用する半導体材料によっては、リッジを閉じ
込め層として用いることもできる。その場合には、基底
部から閉じ込め層を除去してもよい。さらに、可能な場
合には、活性層および一方または双方の閉じ込め層を基
底部ではなくリッジ内に設けてもよい。
【0024】波型の分布帰還格子を設ける場合には、活
性層の上または下の、屈折率が不連続となる界面、特に
閉じ込め層の外面に設ける。分布帰還格子の波型は、上
の閉じ込め層の上の面に設けることが特に便利である。
【0025】基底部の材料としては、下から順に、In
P、InGaAsP下側閉じ込め層、InAsAsP活
性層およびInGaAsP上側閉じ込め層を用いること
が適している。リッジの部分は、基底部側から順に、I
nP層と、多量にドープされたInGaAsまたはIn
GaAsP層とにより構成することが望ましい。上の層
は、金属と低電気抵抗で接続するためのものである。
【0026】
【実施例】図1ないし図5は本発明第一実施例の製造工
程を段階的に示す同一面の断面図であり、図6は最終的
な素子の上の部分の断面図である。これらの図は理解の
ために概略的に描いており、拡大比については実際の素
子と必ずしも一致していない。
【0027】図1は製造方法の第一段階の工程を示す。
【0028】基板として厚さが200μmで多量にイオ
ウSがドープされたn+ 型100インジウムリンInP
基板1を用い、このInP基板1の100面2の上に、
液相エピタキシにより、三つの4元系材料(図中ではQ
で示す)層、すなわちガリウムインジウム砒素リンGa
InAsP層3、4、5をそれぞれ0.2μmの厚さに
順番に成長させた。GaInAsP層3はテルルTeを
ドープしたn型であり、その組成比はGa0.17In0.83
As0.360.64であり、そのバンドギャップは、光ルミ
ネッセッスによる測定では、1.15μmの波長に対応
する値であった。GaInAsP層4は不純物をドープ
していない真性半導体であり、その組成比はGa0.39
0.61As0.880.12であり、バンドギャップは1.5
2μmであった。GaInAsP層5は、亜鉛をドープ
したp型であることを除けば、GaInAsP層3と同
等である。後で詳しく説明するが、GaInAsP層4
は、最終的な素子では活性層となる。また、GaInA
sP層3、5は、上および下の閉じ込め層(「緩衝
層」)となる。
【0029】次に、電子ビームを照射したレジストマス
クを用いて、GaInAsP層5を化学的エッチングに
より波状層6を形成し、分布帰還格子とした。この方法
については、ウエストブルック(Westbrook )等の論
文、「エレクトロニクス・レターズ」第18巻(198
2年)、第863頁から第865頁に説明されている。
分布帰還格子の波型の周期は、
【0030】
【外1】 方向に周期0.46μmのマスクを用いて形成した。こ
の化学的エッチングは異方性エッチングであるため、1
11A面に対するエッチング速度が非常に小さい。した
がって、111A面を側面とする三角の溝が形成され、
そこでエッチングの進行が制限される。溝の深さはほぼ
0.16μmである。エッチングの進行が自動的に制限
されるため、再現性が良く、レーザの帰還の強さを制御
できる。
【0031】波型の形状をしたGaInAsP層5の上
には、亜鉛Znをドープしたp型のInP層7を大気圧
の有機金属化学気相成長(MOCVD)により成長させ
た。格子の完全性を公知の手段により保った。この手段
については、ヨーロッパ特許出願第84.30024
0.3およびネルソン(Nelson)等の論文、「エレクトロ
ニクス・レターズ」第19巻(1983年)、第34頁
から第36頁に詳しい。これを実施するため、100℃
で、トリメチルインジウム、トリエチルリン、ジメチル
亜鉛、リン酸、および水素を試料上に通過させ、この後
に試料を急速に650℃に加熱して成長をさせた。In
P層7の厚さは約1.5μmであった。
【0032】次に、再びMOCVDにより、多量に亜鉛
Znをドープしたp+ 型のInGaAs層8を約0.1
μmの厚さに成長させた。このInGaAs層8は三元
系材料(図中ではTで示す)であり、組成比は、In
0.53Ga0.47Asであった。
【0033】図1の構造を完成させるため、シランおよ
び酸素を用いて、化学気相成長により、厚さ0.2μm
の二酸化ケイ素SiO2 層9をInGaAs層8の上に
成長させた。
【0034】この後に、InP基板1を化学エッチング
により100μmに薄くし、レーザの裏面電極(すなわ
ち薄くされたInP基板1の下側の電極)を、スズSn
と金Auとを蒸着して形成した。
【0035】図2は図1に示した工程の次の工程を示
す。
【0036】この工程では、まず、0.1μmのチタン
Ti層10および0.1μmの金Au層11をSiO2
層9上に蒸着した。次に、厚さ約1μmのポジレジスト
(コダック820)をAu層11上に塗布し、回折格子
と直角の帯状の部分が除去されるように、帯状の窓13
の部分に光を照射してレジスト12および12′の部分
を残し、これをマスクとして使用する。帯状の窓13を
一つのウェハ上に2μm、4μm、6μmおよび15μ
mの幅で形成した。
【0037】図3はさらに次の工程を示す。
【0038】以上の工程により得られた構造物を40ミ
リリットルの水にヨウ化カリ4gおよびヨウ素1gを溶
かした溶液で、20℃で1ないし1.5分間処理した。
この溶液は、Au層11をエッチングする。次に、「カ
ウントダウン二酸化ケイ素エッチ(10:1)」により
20℃で2ないし2.5分間処理し、Ti層10および
SiO2 層9をエッチングした。この結果、InGaA
s層8の上の部分がアンダカットされる。これにTi線
およびAu線を熱して蒸着し、露出している半導体(I
nGaAs層8)に、窓の形状のTi層14およびAu
層15を形成した。同時に、Ti層16、16′、Au
層17、17′が、レジスト12、12′の上に堆積し
た。Ti線およびAu線のフィラメントは、ターゲット
から10cm離し、それぞれの堆積した金属の厚さは約
0.1μmであった。
【0039】これにより得られた構造物をアセトンに2
分間浸し、レジスト12、12′を除去した。レジスト
12、12′に伴って、Ti層16、16′、Au層1
7、17′も除去された。
【0040】図4は以上の工程により得られた構造物を
示す。
【0041】この構造物には、金属層(Ti層14およ
びAu層15)およびこの層から分離された二つの誘電
体層(SiO2 層9、9′)が形成されている。これら
の二つの誘電体の上には、この場合には、Ti層10、
Au層11およびTi層10′、Au層11′が形成さ
れている。金属層と誘電体層の端との間の距離は約4μ
mである。
【0042】この構造物を、16重量%のヨウ素酸(H
IO3 )水溶液で20秒ないし1分間処理した。この溶
液は、InGaAs層8に反応する。次に、濃塩酸と9
0%正リン酸(H3 PO5 )との体積比1対1の混合
液、20℃で30秒ないし40秒間処理した。この混合
液はGaInAsP層8とほとんど反応せずに、InP
層7と反応する。
【0043】図5は、以上の工程により得られた構造物
を示す。
【0044】図5では、InGaAs層8およびInP
層7の側壁が、垂直にエッチングされたように示してい
る。しかし、現実には垂直にはならない。「問題点を解
決するための手段」の項および「作用」の項で用いた用
語と対応させると、基底部はInP基板1およびGaI
nAsP層3、4、5により構成される。レーザ素子の
リッジはInP層7″およびInGaAs層8″により
構成される。補強部はInP層7およびInGaAs層
8、InP層7′およびInGaAs層8′により構成
される。リッジ上にはTi層14およびAu層15から
なる電極が設けられ、他の部分には誘電体のSiO2
9、9′が設けられている。溝20、21の内側には、
実質的に誘電体も金属層を設けられていない。
【0045】図6は以上の工程により得られた半導体素
子の一例を示す。
【0046】従来の半導体素子製造方法と同様に、上述
の全ての工程を一枚のウェハ上に行い、複数の素子に切
り分けた。図6に示した半導体素子は、切り分けられた
素子の一例である。図6には、リッジと分布帰還格子の
相対的な方向を明確にするため、補強部については省略
した。素子の端面18は劈開面であり、面19等の他の
三つの面は、分布帰還格子により選択されるモード以外
のファブリペローレーザモードを抑制するように削られ
た面である。図6におけるリッジの側部の傾斜は任意に
描いている。実際には、図7の走査電子顕微鏡像に示す
ように、反対の方向に傾斜している。
【0047】この半導体素子を、金メッキした半円筒状
のスタッドの長方形の面上に、インジウムを用いてろう
付けした。スタッドは、電極として用いると同時に熱溜
として用いられる。「上側」、すなわちAu層11、1
5、11′が、ろう付けにより接続される。しかし、S
iO2 層9、9′で絶縁されるために、スタッドと電気
的に接続されるのは、リッジの部分、すなわち、InP
層7″およびInGaAs層8″だけである。溝20、
21にはインジウムは流れ込まない。基底部の下側、す
なわち裏面には、メタライゼーションを施してこれに裏
面電極をろう付けする。
【0048】図8は試作した半導体素子の電流対連続波
光出力特性を示す。
【0049】半導体素子の試験として、スタッドと裏面
電極との間に正の電圧を印加し、劈開された端面18か
らの出力光を観測した。図8は、長さが300μmでリ
ッジの幅が2μmの半導体素子を用いて、20℃で連続
発振を行った結果を示す。しきい値電流は約45mAで
あった。最も高い微分量子化効率は、一方の面からの2
7%であった。最大連続発振出力は約15mWであっ
た。
【0050】図9はこの半導体素子の連続波放射スペク
トルを示す。
【0051】図9に示すように、1.48μm近傍の波
長に対応する完全な単一縦モードのレーザ出力が得られ
た。励起電流およびレーザ光出力電力が増加しても、活
性層の温度上昇に伴う緩やかな出力波長の移動以外に
は、スペクトルは変化しなかった。
【0052】図10はこの半導体素子の予備的な応答速
度測定で得られたオシロ波形を示す。
【0053】この半導体素子の応答速度の傾向を調べる
ために、予備的な応答速度測定を行った。この応答速度
測定では、被測定半導体素子にあらかじめしきい値電流
を供給し、短い(約3ns)50mAの電流パルスを5
0Ωの線を介して供給した。このパルスは、10から9
0%への上昇時間および90から10%への下降時間が
ほぼ同じで、200psより小さい。レーザ光出力の検
出にはInGaAsのPIN形フォトダイオードを用い
た。この測定方法については、モス(R.H.Moss)他、
「ブリティッシュ・テレコム・ジャーナル(British Te
lecom Jurnal)」第1巻(1983年)、第7頁から第
22頁に詳しく説明されている。図10のオシロ波形で
は、90%から10%への下降時間が750psより短
い。この値は、電極の接続が完全でなく、これを補償す
る手立てもとっていないので、本発明により製造される
半導体素子の本質的な性能の最大の値の限度より非常に
大きい。これに対して、長波長のレーザ光を出力するダ
ブルチャネル・プレーナ埋め込みヘテロ構造のファブリ
ペローレーザ素子を用いて同様の測定を行ったところ、
下降時間が1ns以上であった。したがって、本発明の
方法により製造される分布帰還形レーザ素子の応答速度
は非常に高速であると予想される。
【0054】本発明の第二実施例として、第一実施例と
同様にしてファブリペロー・リッジ導波波レーザ素子を
作成した。ただし、第二実施例では分布帰還格子を設け
ず、全ての半導体層の成長に液相エピタキシャルを用い
た。これに対して第一実施例では、分布帰還波型の破損
を防ぐため、MOCVDを用いていた。
【0055】レーザの特性を第一実施例と同様にして測
定したので、その結果を図11および図12に示す。
【0056】図11は素子の電流に対する光出力特性を
示す図であり、図12は素子の放射スペクトルを示す。
【0057】図12から明らかなように、分布帰還格子
がないことによるいくつかのモードが観測された。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の方法は、
リッジ導波路をもつ半導体素子を簡単な工程で製造で
き、得られるリッジ導波路レーザ素子の発振効率を高め
ることができる。本発明の方法は製造工程が簡単なの
で、上記半導体素子を安価に製造することができる。
【0059】したがって、本発明による半導体素子は、
光ファイバ通信の光源等に用いて大きな効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第一実施例の製造方法における最初の工
程を示す断面図。
【図2】第一実施例の製造工程を示す断面図。
【図3】第一実施例の製造工程を示す断面図。
【図4】第一実施例の製造工程を示す断面図。
【図5】第一実施例により得られた半導体素子の断面
図。
【図6】試作した半導体素子の斜視図。
【図7】試作した半導体素子の走査電子顕微鏡像を示す
図。
【図8】試作した半導体素子の電流対連続光出力特性を
示す図。
【図9】試作した半導体素子の連続出力スペクトルを示
す図。
【図10】試作した半導体素子の応答速度のオシロ波形
を示す図。
【図11】第二実施例により得られた半導体素子の電流
対連続光出力特性を示す図。
【図12】この半導体素子の連続出力スペクトルを示す
図。
【符号の説明】
1 InP基板 2 100面 3、4、5 GaInAsP層 6 波状層 7、7′、7″ InP層 8、8′、8″ InGaAs層 9、9′ SiO2 層 10、10′14、16、16′ Ti層 11、11′15、17、17′ Au層 12、12′ レジスト 18 端面 19 面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 レスリー・デビッド・ウェストブルック 英国・サフォーク・イプスウッチ・トリム レイセントメアリ・ダインスプレイス26番 地 (72)発明者 アンドリュー・ウィリアム・ネルソン 英国・アイピー11・9エスエフ・サフォー ク・フェリクストーエケンダルグリーン13 番地

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 半導体材料により形成された基底部上に
    その基底部の面から盛り上がった形状のリッジを形成す
    る半導体素子の製造方法において、 前記基底部上にプレーナ半導体層を形成する第一の工程
    と、 このプレーナ半導体層の表面に最初に誘電体層、次にレ
    ジスト膜を形成する第二の工程と、 このレジスト膜に窓を設ける第三の工程と、 この窓を通して前記誘電体膜層をエッチングすることに
    より、前記プレーナ半導体層を露出させるとともに、前
    記レジスト膜に沿って廻り込む形状に前記誘電体層を除
    去する第四の工程と、 これにより露出したプレーナ半導体層の表面に前記窓の
    形状で金属層を堆積させる第五の工程と、 前記レジスト膜およびその上に堆積した金属を除去する
    第六の工程と、 前記金属層をマスクとしてその領域にリッジが残るよう
    に前記プレーナ半導体層をエッチングする第七の工程と
    を含むことを特徴とする半導体素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 基底部の上部の層に分布帰還格子を形成
    する請求項1記載の半導体素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 第七の工程において、第四の工程でエッ
    チングされずに残った誘電体層をマスクとし、リッジと
    溝を隔てた領域に基底部から盛り上がった形状の部分を
    形成する請求項1または2記載の半導体素子の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 リッジの幅は15μm以下である請求項
    1ないし4のいずれか記載の半導体素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 基底部とリッジの部分との間には、エッ
    チング速度の異なる材料により境界を設ける請求項1な
    いし4のいずれか記載の半導体素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 境界をガリウムインジウムヒ素リンとイ
    ンジウムリンとの間で形成する請求項5記載の半導体素
    子の製造方法。
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