JPH05227888A - 製菓用油脂組成物及びその製造方法 - Google Patents

製菓用油脂組成物及びその製造方法

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JPH05227888A
JPH05227888A JP4033466A JP3346692A JPH05227888A JP H05227888 A JPH05227888 A JP H05227888A JP 4033466 A JP4033466 A JP 4033466A JP 3346692 A JP3346692 A JP 3346692A JP H05227888 A JPH05227888 A JP H05227888A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 良好な風味、融解性、食感、常温での保型
性、ホイップ性、及びシャープな口溶けを有し、テンパ
リング処理を行わないで使用することができる、ビスケ
ット、ケーキ、パン等のサンドやフィリング用途に適し
た製菓用油脂組成物及びその製造方法の提供。 【構成】 本発明の製菓用油脂組成物は、脱臭カカオ脂
20〜80重量%及び融点が45℃以下の硬化油脂20
〜80重量%を含有する。また、本発明の製菓用油脂組
成物の製造方法は、脱臭カカオ脂20〜80重量%及び
融点が45℃以下の硬化油脂20〜80重量%を、融解
混合後、急冷混捏処理する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、良好な風味、融解性、
食感、常温での保型性、ホイップ性、及びシャープな口
溶けを有し、テンパリング処理を行わないで使用するこ
とができる、ビスケット、ケーキ、パン等のサンドやフ
ィリング用途等に適したカカオ脂を含む製菓用油脂組成
物、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】カカオ
脂は、常温で硬く体温近傍の温度で融解するという物性
を有するため、主としてチョコレートに配合される油脂
として利用されているが、そのトリグリセリドの構造
上、使用時にテンパリング処理が必要である。テンパリ
ング処理が必要な油脂は、ホイップ作業が困難で、良好
なホイップ性が得られにくい。即ち、テンパリング処理
を行った後の油脂は、急速に結晶量が増加するので、好
適な結晶量に於けるホイップが困難であるし、一度固化
したものを調温する場合においても、好適な結晶量の温
度幅が狭いために均一なホイップ性が得られにくい。
【0003】従って、テンパリング処理が必要なカカオ
脂は、サンドやフィリング用途に適した製菓用油脂とし
ての使用は困難であった。又、カカオ脂は、独特の強い
風味を有するため、製品全体の風味のバランスを崩す惧
れがある等の理由によりその利用が限定されていた。
又、特開昭60−58037号公報には、チョコレート
を急冷混捏して含気チョコレートを得る方法が記載され
ているが、この方法においては、カカオ脂が使用されて
いる場合でも、その量は少量しか利用されていない。
【0004】一方、ビスケット、ケーキ、パン等のサン
ドやフィリング等として用いられる製菓用油脂として
は、動植物性油脂やその硬化油脂が、単独で又は複数組
み合わせて用いられていた。しかしながら、上記の油脂
は、そのトリグリセリド組成上、食した時の融解性に問
題があった。即ち、常温での保型性を十分に保つために
高融点の油脂を配合すると、食した時の融解性が悪く、
ワキシーな食感を与えるため、食味を著しく損ね、製品
価値を下げる結果になった。逆に、融解性を良くするた
めに高融点油脂を配合しないと、常温における保型性が
悪くなり、流通時における温度管理が不適当な場合に
は、製品の形状や性状等に悪影響を与える場合があっ
た。
【0005】従って、本発明の目的は、良好な風味、融
解性、食感、常温での保型性、ホイップ性、及びシャー
プな口溶けを有し、テンパリング処理を行わないで使用
することができる、ビスケット、ケーキ、パン等のサン
ドやフィリング用途に適した製菓用油脂組成物及びその
製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、主として
チョコレート類のみに利用されているカカオ脂の良好な
融解性を生かし、色調と風味を改善したカカオ脂と、硬
化油脂とを組み合わせることにより、上記目的を達成し
得る製菓用油脂組成物が得られることを知見した。
【0007】本発明は、上記知見に基づきなされたもの
で、脱臭カカオ脂20〜80重量%及び融点が45℃以
下の硬化油脂20〜80重量%を含有することを特徴と
する製菓用油脂組成物を提供するものである。また、本
発明は上記の本発明の製菓用油脂組成物の製造方法とし
て、脱臭カカオ脂20〜80重量%及び融点が45℃以
下の硬化油脂20〜80重量%を、融解混合後、急冷混
捏処理することを特徴とする製菓用油脂組成物の製造方
法を提供するものである。
【0008】以下、先ず本発明の製菓用油脂組成物につ
いて詳述する。本発明の製菓用油脂組成物においては、
例えば、バニラやフルーツ風味のフィリングクリームを
目的とする場合には、カカオ脂に特有な色調は不適であ
る。又、チョコレート風味のクリームを目的とする場合
においても、カカオ脂の強い風味は好まれない。本発明
においては、カカオ脂を脱臭処理した脱臭カカオ脂が用
いられる。
【0009】カカオ脂は、産地や種類によって油脂物性
や風味に若干の差異があるが、本発明においては、特に
産地や種類は選ばず、また各種のものを混合使用して用
いてもよい。カカオ脂の脱臭処理は、通常の油脂精製工
程の方法、つまり水蒸気蒸留法に準ずるが、好ましい処
理条件としては、例えば、温度が160〜200℃、好
ましくは170〜190℃、真空度は通常より低い、例
えば7mmHg以下、好ましくは5mmHg以下で、時間は30
分以上、好ましくは1時間以上という条件が挙げられ
る。
【0010】脱臭処理温度が160℃未満では、十分な
脱臭効果が得られず、200℃超では、得られる製菓用
油脂組成物の風味が悪くなる。本発明で用いられる脱臭
カカオ脂としては、上記脱臭処理の他に更に下記漂白処
理を行ったカカオ脂を使用するのが好ましい。漂白処理
は、通常の油脂精製工程による方法を適用することがで
き、活性白土等の存在下、常圧ないし減圧下で加温処理
する方法が一般的であり、例えば、活性白土1〜5%、
温度80〜120℃といった条件が挙げられる。
【0011】又、本発明で用いられる脱臭カカオ脂は、
無色ないし淡黄色の色調で、穏やかなカカオ風味もしく
はほとんど無味無臭の状態であれば、脱臭処理したカカ
オ脂に、脱臭未処理のカカオ脂(非脱臭カカオ脂)を適
宜混合したものでもよい。本発明で用いられる硬化油脂
としては、通常使用される動植物性油脂、例えば、パー
ム油、大豆油、菜種油、米糠油、綿実油、コーン油、ヤ
シ油、サフラワー油等の植物性油脂、牛脂、ラード、乳
脂、魚油等の動物性油脂を、融点45℃以下、好ましく
は40℃以下となるように水素添加したものが使用され
る。
【0012】融点45℃以下の硬化油脂が使用される
と、適当な物性、食感や結晶を有する製品を得ることが
できるが、融点45℃超の硬化油脂が使用されると、融
解性が不良であり、食感を損ねる製品になるので好まし
くない。硬化油脂全体としての融点が45℃以下であれ
ば、2種類以上の硬化油脂を混合したものを用いてもよ
く、又その他の油脂を混合したものを用いてもよい。
【0013】その他の油脂としては、硬化していない動
植物性油脂や、ランダムエステル交換油脂等が挙げられ
る。本発明の製菓用油脂組成物は、上記脱臭カカオ脂2
0〜80重量%、好ましくは40〜70重量%及び上記
融点45℃以下の硬化油脂20〜80重量%、好ましく
は30〜60重量%を含有するものである。
【0014】脱臭カカオ脂が80重量%以上で、かつ融
点45℃以下の硬化油脂が20重量%以下である場合
は、ホイップ作業に好ましい固体脂含量(以下、SFC
という)になる温度幅が狭く、調温しづらいため、ホイ
ップ作業が困難で、低い比重が得られず、安定したホイ
ップ性が得られにくい。脱臭カカオ脂が20重量%以下
で、かつ融点45℃以下の硬化油脂が80重量%以上で
ある場合は、カカオ脂の影響による保型性と良好な口溶
けを同時に得られることが難しい。
【0015】又、本発明の製菓用油脂組成物は、そのS
FC値が、20℃で10〜50%、特に15〜45%、
30℃で1〜20%、特に3〜10%であることが好ま
しい。20℃でのSFC値が50%超であると、可塑性
が小さいためにホイップ等の作業性が悪く、低い比重が
得られ難い。又、30℃でのSFC値が20%超である
と、ホイップ性が悪く、且つ融解性が悪いためにシャー
プな口溶けが得られ難い。
【0016】又、本発明の製菓用油脂組成物を、サンド
・フィリング用等に使用する場合には、含気させて使用
する場合があるが、充分に含気させるためには、含気処
理時の油脂温度における該製菓用油脂組成物のSFC値
が10〜40%、特に15〜30%の範囲にあることが
好ましい。SFC値が10%未満では、油脂結晶量が不
足して気泡を油脂中に保てないため含気が困難になり、
又SFC値が40%超では、油脂結晶量が多過ぎて油脂
の粘稠性が低下するため含気が困難になる。
【0017】このように、本発明の製菓用油脂組成物
は、そのSFC値が上記の範囲内となるように、脱臭カ
カオ脂と硬化油脂の配合比率や、その他の油脂の配合量
を調整したものが好ましい。又、本発明の製菓用油脂組
成物は、5重量%以下、好ましくは0.3〜3重量%の
乳化剤を結晶安定剤として含有するのが好ましい。
【0018】使用される乳化剤としては、グリセリン脂
肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪
酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レ
シチン等が挙げられ、特に、グリセリン脂肪酸エステル
とレシチンとの組合わせが、ホイップ性や油脂結晶の安
定性を向上させ、軽くて滑らかな品質の製菓用油脂組成
物を得られるので好ましい。
【0019】又、本発明の製菓用油脂組成物は、必要に
応じ呈味成分を含有することができる。かかる呈味成分
としては、砂糖等の各種の結晶状態の糖類、水飴や含水
糖アルコール等の液状の糖類、粉乳や練乳等の乳製品
類、粉末卵黄等の卵類、ココアパウダー等のカカオ製品
類、果肉ジャム類、濃縮果汁、乾燥粉末果実類、果汁乾
燥粉末類、チーズ類、ピーナッツペースト等のナッツ類
が挙げられる。さらに、洋酒や香料も適宜含有してもよ
い。
【0020】次に、本発明の製菓用油脂組成物の製造方
法について説明する。上記脱臭カカオ脂及び上記融点が
45℃以下の硬化油脂を、融解混合後、すぐに急冷混捏
処理して本発明の製菓用油脂組成物を製造する。急冷混
捏処理の方法としては、油脂を加熱融解混合後、油脂の
混合物をボテーター、コンビネーター、パーフェクター
等の掻き取り式チューブクーラーによって急冷混捏する
方法、又は油脂の混合物をクーリングドラムで冷却後コ
ンプレクター等により混捏処理する方法、あるいは攪拌
装置・冷却装置が敷設された混合機によって急冷混捏す
る方法等がある。
【0021】急冷混捏時に窒素ガス等の不活性ガスを油
脂混合物中に注入・分散してもよい。さらに、上記急冷
混捏処理を行った後に、一定温度(通常、油脂混合物の
融点より5℃〜10℃低い温度)において、一定時間
(通常、24〜48時間)調温処理を施す、いわゆるエ
ージング処理を行ってもよい。
【0022】急冷混捏処理は、結晶を安定化させるため
に行うもので、この処理を行わないと、結晶が粗大化す
るために滑らかで良好な食感が得られない、所謂グレー
ニングの状態が発生しやすく、ホイップ性にも悪影響を
及ぼす。
【0023】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳しく説明
する。 実施例1〜6及び比較例1〜4 下記の〔表1〕及び〔表2〕に示した油脂成分と乳化剤
とを融解混合した後、コンビネーターにより急冷混捏処
理した。これを25〜28℃で24時間エージング処理
し、油脂組成物をそれぞれ得た。得られた油脂組成物の
20℃及び30℃におけるSFC値を下記の〔表1〕及
び〔表2〕にそれぞれ示した。尚、脱臭カカオ脂として
は、カカオ脂を180℃及び1mmHgで1時間水蒸気蒸留
を行って、脱臭処理したものを用いた。
【0024】また、これらの油脂組成物を用い、下記
〔表3〕に示すフィリングクリーム組成に従って調製し
た配合物を、品温20〜25℃で縦型ミキサーを用いて
ホイップし、フィリングクリームをそれぞれ得た。得ら
れたフィリングクリームの比重を測定し、ホイップ性を
評価した。さらに、得られたフィリングクリームの風
味、口溶け、保型性及びグレーニング発生の有無につい
ても評価した。保型性はビスケットにサンドした後、2
5℃で24時間放置し、軽く指で押さえてフィリングク
リームがはみ出てこないものを良好とした。又、グレー
ニングについては20℃で3週間放置した後、発生の有
無を観察して評価した。上記の評価結果を下記の〔表
1〕及び〔表2〕にそれぞれ示した。
【0025】下記〔表1〕に示す結果から判るように、
実施例1〜6の本発明の製菓用油脂組成物を配合したフ
ィリングクリームは何れも、良好な風味、口溶け、保型
性及びホイップ性を有していた。これに対し、下記〔表
2〕に示す結果から判るように、非脱臭カカオ脂を用い
た比較例1の油脂組成物を配合したフィリングクリーム
は、カカオ脂の強い風味が感じられ、好ましくなかっ
た。比較例2の油脂組成物を配合したフィリングクリー
ムは、脱臭カカオ脂が少なく、保型性が不良で、ホイッ
プ性が悪かった。又、比較例3の油脂組成物を配合した
フィリングクリームは、脱臭カカオ脂が多く、ホイップ
性が悪かった。又、融点が高過ぎる硬化油脂を用いた比
較例4の油脂組成物を配合したフィリングクリームは、
口溶けが悪く、又ホイップ性も悪かった。
【0026】尚、下記の〔表1〕及び〔表2〕に示した
ホイップ性、風味、口溶け及び保型性の評価基準は次の
通りである。 ホイップ性 比重が0.8以下;○、 比重が
0.8超;× 風味 良好;○、 不良;× 口溶け 良好;○、 やや不良;△、 不
良;× 保型性 良好;○、 やや不良;△、 不
良;×
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】
【発明の効果】本発明の製菓用油脂組成物は、良好な風
味、融解性、食感、常温での保型性、ホイップ性、及び
シャープな口溶けを有し、テンパリング処理を行わない
で使用することができる、ビスケット、ケーキ、パン等
のサンドやフィリング用途に適したものである。
【0031】また、本発明の製造方法によれば、上記の
本発明の製菓用油脂組成物を得ることができる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 脱臭カカオ脂20〜80重量%及び融点
    が45℃以下の硬化油脂20〜80重量%を含有するこ
    とを特徴とする製菓用油脂組成物。
  2. 【請求項2】 脱臭カカオ脂20〜80重量%及び融点
    が45℃以下の硬化油脂20〜80重量%を、融解混合
    後、急冷混捏処理することを特徴とする製菓用油脂組成
    物の製造方法。
JP03346692A 1992-02-20 1992-02-20 製菓用油脂組成物及びその製造方法 Expired - Lifetime JP3844513B2 (ja)

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