JP2015228807A - 含気チョコレート生地の製造方法及び焼成チョコレートの製造方法 - Google Patents

含気チョコレート生地の製造方法及び焼成チョコレートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ノーテンパー型非カカオ脂を含有し、ブルームの発生が抑制されたノーテンパー型のチョコレート生地において、その生地中に均一に細かな気泡を含有させるために改良された、含気チョコレート生地の製造方法を提供する。また、その製造方法により得られた含気チョコレート生地を用いた焼成チョコレートの製造方法を提供する。【解決手段】本発明の含気チョコレート生地の製造方法は、ノーテンパー型非カカオ脂を含有するチョコレート生地を完全な溶融状態から、凝固点温度より0.5〜5℃低い温度に冷却し、その温度より1〜5℃高い温度に再加温し、含気させて比重を0.3〜1.1の含気チョコレート生地を得る。また、その製造方法により得られた含気チョコレート生地を所定形状に成形し、焼成して焼成チョコレートを得る。【選択図】なし

Description

本発明は、含気チョコレート生地の製造方法及び焼成チョコレートの製造方法に関する。
チョコレートは、カカオマス、糖類、粉乳、ココアバター、乳化剤、香料等を混合し、微粒化、精練した後、必要に応じてテンパリングし、成形して得られる菓子である。テンパリングとは、チョコレートを成形する際のブルーム(油脂結晶の粗大化による斑点模様、粗い表面、食感の低下)を抑制するために行う処理である。具体的には、例えば、溶融したチョコレートに、低温で保存したチョコレートの粉末をシードとして加え、30℃を大きく超えない温度で成形するか、又は、例えば、50℃でチョコレートを溶かした後、一旦、およそ28℃まで下げ、その後、およそ32℃まで温度を上げる処理を施すことなどによって行われる。このテンパリングにより、チョコレートに含まれる油脂から微細な安定結晶シードが形成され、それを核にして、全体としても微細で安定な結晶形に固化させることができる。そして表面が滑らかで光沢のある本来の食感のチョコレートを得ることができる。
一方、チョコレートには、例えば焼成チョコレートや、ベーカリー製品に混合されるチョコレートチップのように、その製造工程上、テンパリングを施すことができない製品が存在する。このような製品に使用するチョコレートには、ベース油脂としていわゆるノーテンパー型非カカオ脂が用いられている。ノーテンパー型非カカオ脂は、顕著な結晶多型現象を示さないので、チョコレートベース油脂中にノーテンパー型非カカオ脂を所定量以上配合すれば、テンパリング処理を施さなくてもブルームの発生が抑制されており。また、焼成しても、ブルーム発生の問題を生じない(下記特許文献1,2参照)。
他方、チョコレートには、軽い食感を付与する等のため、気泡を含有させた製品も存在する。例えば、下記特許文献3には、チョコレート生地に気泡を含有させた後、成形し、焼成して固化することを特徴とする焼き菓子の製造方法の発明が開示されている。そして、その製造方法により、歯触りがよく軽い食感であり、焼成によって少なくとも表面はビスケット様の硬い組織となるので、融点以上の温度に放置してもべとついたり、形が崩れたりすることがなく、手指を汚さずに食することができる製品が得られることが記載されている。また、チョコレート生地の成形物の保形性が、気泡を含有することによって向上し、熱の通りもよくなり、焼成時に形崩れしにくくなるため、型内に充填した状態で加熱したりする必要がなくなり、生産性を向上させることができることが記載されている。
特開2005−261251号公報 特開2010−207198号公報 特開平10−210934号公報
しかしながら、本発明者らが研究したところ、ノーテンパー型非カカオ脂を含有し、ブルームの発生が抑制されたノーテンパー型のチョコレート生地では、これに気泡を含有させようとしても、生地中に細かな気泡を均一に含有させにくく、目的とする食感や、焼成時に型崩れしにくいという効果が、安定に得られないといった問題があった。また、不均一に大きな気泡が含有する場合があり、含気したチョコレート生地を押出成形する場合などに、気泡の部分で途切れてしまったり、ノズルから一定量を吐出できなかったりして、製品を安定的に製造できないという問題があった。
よって、本発明の目的は、ノーテンパー型非カカオ脂を含有し、ブルームの発生が抑制されたノーテンパー型のチョコレート生地において、その生地中に効率よく細かな気泡を均一に含有させるために改良された、含気チョコレート生地の製造方法を提供することにある。また、その製造方法により得られた含気チョコレート生地を用いた焼成チョコレートの製造方法を提供することにある。
本発明の含気チョコレート生地の製造方法は、ノーテンパー型非カカオ脂を含有するチョコレート生地を完全な溶融状態から、凝固点温度より0.5〜5℃低い温度に冷却し、その温度より1〜5℃高い温度に再加温し、含気させて比重を0.3〜1.1にすることを特徴とする。
本発明の含気チョコレート生地の製造方法によれば、ノーテンパー型非カカオ脂を含有するチョコレート生地を完全な溶融状態から、凝固点温度より0.5〜5℃低い温度に冷却するので、このときチョコレート生地中に部分的ないし不完全に脂肪成分等のミクロな凝固が生じる。その状態でその温度より1〜5℃高い温度に再加温するので、脂肪成分等のミクロな凝固が完全には融解しないままに、チョコレート生地の流動性が上がり、脂肪成分等のミクロな凝固が生地中に分散して拡がる。また、気泡を抱き込みやすい状態となる。その状態で含気させて比重を0.3〜1.1にするので、チョコレート生地中に部分的ないし不完全に生じた脂肪成分等のミクロな凝固が、気泡が生地中に均一に分散するのを助け、また、気泡同士が結合してより大きな気泡となったり、気泡が生地から排出してしまうのを防ぐ。よって、ノーテンパー型非カカオ脂を含有するチョコレート生地中に、非常に効率よく、細かな気泡を均一に含有させることができる。
本発明の含気チョコレート生地の製造方法においては、全油脂量中のカカオ由来油脂の含有量が、チョコレート生地の内部に発生するブルームが抑制される範囲とされていることが好ましい。
また、全油脂量中のカカオ由来油脂の含有量が、チョコレート生地の内部及び表層に発生するブルームが抑制される範囲とされていることが好ましい。
一方、本発明の焼成チョコレートの製造方法は、上記の含気チョコレート生地の製造方法により得られた含気チョコレート生地を所定形状に成形し、焼成することを特徴とする。
本発明によれば、ノーテンパー型非カカオ脂を含有するチョコレート生地を完全な溶融状態から、凝固点温度より0.5〜5℃低い温度に冷却し、その温度より1〜5℃高い温度に再加温し、含気させて比重0.3〜1.1の含気チョコレートを得るので、ノーテンパー型非カカオ脂を含有するチョコレート生地中に、非常に効率よく、細かな気泡を均一に含有させることができる。
示差走査熱量計を用いてチョコレート生地試料を50℃から5℃/分の速度で温度低下させたときの凝固熱と、その後温度上昇させた時の融解熱を測定した結果の一例を示す図表である。 試験例1で製造した各チョコレートについてノーテンパー型非カカオ脂A,B,Cの20℃での固体脂含量(SFC)をX軸にとりチョコレート生地中の全油脂量に対するカカオ由来油脂の配合割合をY軸にとって作成した散布図である。
本明細書において「チョコレート」は、規約や法規上の規定によって限定されるものではなく、カカオマス、ココア、ココアバター、ココアバター代用脂等を使用した油脂加工食品全般を意味するものとする。
本明細書において「ノーテンパー型非カカオ脂」は、チョコレートを構成する、カカオ豆に由来しない油脂であって、チョコレートにブルームが発生するのを防ぐためのテンパリング処理が不要とする、該油脂をいう。具体的には、パーム油等の分画軟質部や大豆油等の液状油をトランス異性化硬化して得られるトランス酸型油脂、ヤシ油、パーム核油、ババス油のようなラウリン酸基を多く含むグリセリドからなる油脂及びその分画油より得られるラウリン酸型油脂、1,2−ジ飽和脂肪酸−3−モノ不飽和脂肪酸グリセリド(SSU)といった非対称型グリセリドや、それを2−不飽和脂肪酸−1,3−ジ飽和脂肪酸のトリグリセリドといったSUS型のグリセリドと共存させた油脂などである。
本明細書において「カカオ由来油脂」は、カカオ豆に由来する油脂であり、具体的には、チョコレートを構成する、カカオマス、カカオ豆から油脂成分を抽出してなるココアバターである。なお、カカオマスには通常50〜55質量%程度の油脂成分が含まれている。
本明細書において「ブルーム」は、チョコレートが部分的又は全体的に淡色化することであり、視覚で認識できる程度のものをいう。
本明細書において「固体脂含量」は、パルスNMRにより測定したものをいう。
本発明に用いられるチョコレート生地は、ノーテンパー型非カカオ脂を含有し、ブルームの発生が抑制されたノーテンパー型のチョコレート生地であればよく、一般的に用いられるチョコレート生地、準チョコレート生地、ミルクチョコレート生地、準ミルクチョコレート生地などを採用することができる。
また、そのようなチョコレート生地は、カカオマス及び/又はココア、糖類、粉乳、乳化剤、ココアバター及び/又はココアバター代用脂、香料等のチョコレート原料を用いて、常法に従って、原料をミキシングし、リファイニングを行った後、コンチングを行うことで製造できる。その糖類としては、例えば、砂糖に、必要に応じてトレハロース、乳糖等の他の糖類や、糖アルコールなどを配合したものが好ましく用いられる。また、その粉乳としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳などを用いることができる。また、その乳化剤としては、レシチンなどが好ましく用いられる。
本発明の含気チョコレート生地の製造方法は、ノーテンパー型非カカオ脂を含有するチョコレート生地を完全な溶融状態から、凝固点温度より0.5〜5℃低い温度に冷却し、その温度より1〜5℃高い温度に再加温し、含気させて比重を0.3〜1.1にすることを特徴としている。
ここで、凝固点温度とは、チョコレート生地を完全な溶融状態から温度を低下させていき、その途中で生地中の脂肪成分等が凝固することによって発生する凝固熱を、示差走査熱量計(differential scanning calorimeter;DSC)によって測定したとき、凝固熱ピークが立上りを示す温度をいう。図1には、より具体的に、示差走査熱量計(商品名「Pyris1 DSC」、株式会社パーキンエルマージャパン製)を用いて、チョコレート生地試料5mgにつき、50℃から5℃/分の速度で温度を低下させたときに発生する凝固熱を測定した結果の一例を示す。この場合、図1に矢印Aで示す部分の温度が凝固点温度である。
温度調整の方法に特に制限はなく、例えば、チョコレート生地を入れたボールを恒温水につける方法、大理石を用いる方法、自動テンパリング機を用いる方法等が使用される。温度条件としては、ノーテンパー型非カカオ脂を含有するチョコレート生地を完全な溶融状態から、凝固点温度より0.5〜5℃低い温度に冷却し、その温度より1〜5℃高い温度に再加温する。凝固点温度より1.0〜5.0℃低い温度に冷却し、その温度より1〜4℃高い温度に再加温することがより好ましい。上記範囲を外れると、チョコレート生地中に細かな気泡を均一に含有させる作用効果に乏しくなるので好ましくない。
含気の方法に特に制限はなく、空気を巻き込ませるように高速で攪拌する方法や、ポンプ等で空気を強制的に吹き込みながら攪拌する方法、更にその攪拌を、加熱、冷却、加圧、又は減圧しつつ行う方法など、各種の方法で行うことができる。装置としては、例えばエアレーションミキサー、モンドミキサー、オーバーミキサーなどが使用される。
含気は、得られる含気チョコレート生地の比重が0.3〜1.1となるように行う。得られる含気チョコレート生地の比重が0.7〜1.0となるように行うことがより好ましい。比重が低いほど軽い食感となる傾向がある。また、焼成チョコレートにした場合に、歯触りが良くなる傾向がある。比重は、例えば冷却前の流動性を有する状態のチョコレート生地を200ml容のカップにすり切り入れてその質量を測定する方法などで測定することができる。
含気は、チョコレート生地を冷却固化した状態での平均含気泡径が10〜100μmとなるように行うことが好ましく、10〜50μmとなるように行うことがより好ましく、10〜25μmとなるように行うことが更により好ましい。このような微細な気泡径にすることによって、焼成チョコレートにした場合に、軽くてなめらかな食感となる。比重が上記範囲にあっても、平均含気泡径が100μmを超えると、ぼそつきのある食感となってしまうので好ましくない。平均含気泡径は、チョコレート断面の顕微鏡写真を画像解析する方法などで測定することができる。具体的には、例えば、チョコレート生地を冷却固化して割り、その断面の顕微鏡写真を画像解析に付することによって、多数の気泡径を偏りなく計測し、これらの気泡径を統計処理して、その平均含気泡径を求めることができる。
本発明の好ましい態様においては、上記温度調整において再加温した後、その温度と同じか、その温度から±1℃以内の温度に維持しつつ含気させることが好ましく、その温度と同じか、その温度から±0.5℃以内の温度に維持しつつ含気させることがより好ましい。上記範囲外であると、一旦温度調整の処理を施したチョコレート生地に経時的な変化が起こり、チョコレート生地中に細かな気泡を均一に含有させる作用効果に乏しくなるおそれがあるので好ましくない。
上記含気後のチョコレート生地には、副原料として、例えば、ナッツ類破砕物、膨化型スナック食品、ビスケットチップ、キャンディーチップ、チョコレートチップなどを含有させてもよい。ナッツ類の破砕物としては、アーモンド、ピーナッツ、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、マカダミアナッツ、クルミ等を所望の大きさに破砕したものが好ましく用いられる。また、膨化型スナック食品としては、例えば、とうもろこし、小麦、米等の原料をエクストルーダで加圧、加熱して押出して膨化させたものや、小麦粉、米粉、各種澱粉等の澱粉質原料に、副原料、調味料、水等を加えて加熱糊化し、膨化させたものなどが好ましく用いられる。
上記含気後のチョコレート生地は、公知の方法で所望の形状に成形することができる。成形の方法に特に制限はなく、例えば、モールド(型)に入れて成形する方法、押出機のダイから所定形状に押出して切断する方法、コンベア等の上にチョコレート生地を直接落として固化させるドロップ成形方法などが好ましく採用される。
上記含気後のチョコレート生地は、これを所定形状に成形し、焼成することで焼成チョコレートを製造することができる。その場合、含気チョコレートの焼成度合いを調整して、表面は加熱により溶融性を示さない状態に熱変性し、内部は熱変性しない状態を維持するようにすることが好ましい。これにより、表面はパリッとした食感になるとともに、手でつかんでも熱変性してべとつくようなことがなく、内部はチョコレート本来の軟らかい組織が残った、なめらかで軽い食感とすることができる。
上記含気後のチョコレート生地は、成形し、更に、チョコレート表面の少なくとも一部に衣材を付着させてもよい。衣材としては、例えば、小麦粉、澱粉、卵、砂糖、食塩、粉乳、ショートニングなどから選ばれた原料混合物に、水を加えてビスケット生地様、ケーキ生地様等にしたものが好ましく使用されるが、小麦粉、澱粉、砂糖などの混合粉体をまぶすだけでもよい。衣材を付着させることにより、焼成時の保形性が更に良くなり、チョコレート表面に衣材の薄皮が形成されて、きんつばのような斬新な外観となり、衣材によって内部まで熱が通りにくくなる。これにより、表面は焼成によって歯ごたえのあるクリスピーな食感となり、内部はチョコレート本来の軟らかい組織が残った、なめらかで軽い食感とすることができる。
焼成は、例えば、オーブン、シュバンクバーナー、ガスバーナー、電子レンジなどを用いて行うことができるが、オーブンの場合には、200〜270℃で1〜10分間行うことが好ましい。このような条件下に焼成することにより、適度な硬さの食感を有し、チョコレート本来の風味が維持された製品が得易い。なお、焼成時にチョコレート生地の中心温度が90℃前後になるようにすることが好ましい。また、シュバンクバーナーの場合には、そのヒータ表面温度を400℃〜1200℃に設定して、ヒータとチョコレート表面との距離を10〜150mmにして、1〜10秒間行うことが好ましい。シュバンクバーナーとは、主に赤外線の照射により焼成対象物の表面から内部に向けて熱伝導させることができるシュバンクヒータを具備してなる焼成装置である。シュバンクバーナーを用いて焼成すると、表層の浅い部分のみが硬い組織となっており、表面のパリパリ感がより際立ち、快い歯触りの製品が得易い。焼成後には、送風等による強制冷却を行うことにより、除熱して、焼成チョコレートを得ることができる。
本発明は、全油脂量(レシチンを除く)中のカカオ由来油脂の含有量が、0.3×N20+50質量%(但し、N20は乳脂及びレシチンを除くノーテンパー型非カカオ脂の20℃での固体脂含量)未満、あるいは全油脂量(レシチンを除く)中のカカオ由来油脂の含有量が、0.3×N20+8質量%(但し、N20は乳脂及びレシチンを除くノーテンパー型非カカオ脂の20℃での固体脂含量)未満であるチョコレート生地に適用することが好ましい。その理由は、後述の実施例で示されるように、全油脂に対するカカオ由来油脂の含有量がこのような関係式を満たすチョコレート生地は、一般に、前者の関係式であれば生地の内部、あるいは後者の関係式であれば内部及び表層に発生するブルームが抑制される傾向となるが、その一方で、このような生地では気泡を安定に含有させ難い傾向があるからである。本発明を適用することにより、その生地中に効率よく細かな気泡を均一に含有させることができる。
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
<試験例1>
表1には、本試験例で製造したチョコレートの仕込配合を示す。なお、表1中の中段には、チョコレート原料中に含まれる全油脂(レシチンを除く、以下同様)の量、カカオ由来油脂の成分量、ノーテンパー型非カカオ脂の成分量(乳脂及びレシチンを含まない量)、全油脂中のカカオ由来油脂の割合(質量%)を示し、表1中の最下欄には焼成の有無を示す。

上記表1に示す仕込配合のチョコレート原料を用いて、例1〜12のチョコレートを製造した。具体的には、各チョコレート原料を混合し、常法に従って微粒化、精練を行って、チョコレート生地を得、得られたチョコレート生地を成形し、10℃で30分間冷却固化してチョコレートを得た。また、焼成を施す場合には、得られたチョコレートを固定式オーブンに入れ、200℃で3分間焼成し、その後10℃で10分間冷却して焼成チョコレートを得た。
表2には、得られたチョコレート又は焼成チョコレートについて、ブルームの有無について評価した結果を示す。

表2に示すように、それぞれの原料の仕込配合が同じ、例1と例2、例5と例6、及び例9と例10とを比べると、いずれも、焼成しない例1、例5、及び例9において、チョコレート内部にはブルームが生じていないが、表層にはブルームが生じていた。そして、焼成した例2、例6、及び例10においては、焼成後の表層にブルームが発生することはなかった。これは、焼成チョコレートにおいては、チョコレートの表層にブルームが発生しても、焼成によって消失又は抑制されるからであると考えられた。
例1(例2)の仕込配合を基準にして、そのココアバターの配合量を2質量部増やして、同じ量だけノーテンパー型非カカオ脂Aを減らして製造された例3や、例5(例6)の仕込配合を基準にして、そのココアバターの配合量を3質量部増やして、同じ量だけノーテンパー型非カカオ脂Bを減らして製造された例7や、例9(例10)の仕込配合を基準にして、そのココアバターの配合量を4.5質量部増やして、同じ量だけノーテンパー型非カカオ脂Cを減らして製造された例11についてみると、いずれもチョコレート内部にブルームが発生していた。
一方、カカオマス30質量部の代わりにココアパウダー15質量部を配合し、更にノーテンパー型非カカオ脂の配合量を増やして、ノーテンパー型非カカオ脂の量に対するカカオ由来油脂の量を減らしたチョコレート(例4、例8、例12)では、その表層や内部にブルームが発生しなかった。このことは、焼成の処理の前に観察してみても、同様であった。
上記の結果をもとに、チョコレート生地の組成とブルーム発生の関係性について考察した。そのために、チョコレート原料として用いられた各ノーテンパー型非カカオ脂A,B,Cの、20℃での固体脂含量(SFC)を、常法に従い、パルスNMRにより測定した。そして、その値をX軸にとり、チョコレート生地中の、全油脂に対するカカオ由来油脂の配合割合(質量%)をY軸にとって、散布図を作成した。図2にその散布図を示す。
上記の結果のとおり、チョコレートの表層のみにブルームが発生し、チョコレート内部にブルームを生じない例1、例5、例9に比して、それぞれカカオ由来油脂の含有量を増やしてノーテンパー型非カカオ脂の含有量を減らした例3、例7、例11では、いずれもチョコレート内部にブルームが発生した。これは、カカオ由来油脂の含有量が増大し、それぞれのノーテンパー型非カカオ脂に見合った上限の限界を超えたため、チョコレートの表層のみでなく内部にもブルームが生じてしまうからであると考えられた。また、チョコレートの表層のみにブルームを生じる例1、例5、例9に比して、それぞれノーテンパー型非カカオ脂の量に対するカカオ由来油脂の量を減らした例4、例8、例12では、焼成の有無にかかわらず、チョコレート内部にも表層にもブルームが生じなかった。これは、カカオ由来油脂の含有量が、それぞれのノーテンパー型非カカオ脂に見合った下限の限界、すなわちノーテンパー型非カカオ脂との相溶性の限界点を超えないからであると考えられた。ここで、ノーテンパー型非カカオ脂との相溶性の限界点とは、ノーテンパー型非カカオ脂を含有するチョコレート生地において、全油脂量に対するカカオ由来油脂の配合割合をそれ以上増やすとチョコレート表層においてブルームが発生するようになる限界点を意味する。相溶性の限界点は、カカオ由来油脂の配合割合を徐々に増やしてブルームの発生を見る試験を行うことにより求めることができる。また、ノーテンパー型非カカオ脂を供給するメーカーによって、それぞれの製品に対する相溶性の限界点が求められ、ユーザーに提供されていることも多い。
以上から、図2の散布図には、それ以上全油脂量に対するカカオ由来油脂の配合割合を増やすとチョコレート表層においてブルームが発生することが想定される境界(相溶性の限界点)を表す境界線Iを引くことができる。また、それ以上全油脂量に対するカカオ由来油脂の配合割合を増やすとチョコレート表層のみならず内部においてもブルームが発生することが想定される境界を表す境界線IIを引くことができる。
ここで、図2の散布図中の境界線Iは、全油脂量中のカカオ由来油脂の含有量が、0.3×N20+8質量%(但し、N20は乳脂及びレシチンを除くノーテンパー型非カカオ脂の20℃での固体脂含量)である関係をほぼ満たし、境界線IIは、全油脂量中のカカオ由来油脂の含有量が、0.3×N20+50質量%(但し、N20は乳脂及びレシチンを除くノーテンパー型非カカオ脂の20℃での固体脂含量)である関係をほぼ満たしている。よって、この関係式に基づいて、チョコレート生地の仕込配合からブルームの発生の有無を予測できる。ただし、このような境界線や関係式は、境界付近での試験例を増やして、より実証的なものを適宜設定することができることは、勿論である。
<試験例2>
表3には、本試験例で製造したチョコレートの仕込配合を示す。なお、表1中の下段には、チョコレート原料中に含まれる全油脂(レシチンを除く、以下同様)の量、カカオ由来油脂の成分量、ノーテンパー型非カカオ脂の成分量(乳脂及びレシチンを含まない量)、全油脂中のカカオ由来油脂の割合(質量%)を示す。

上記表3に示す仕込配合のチョコレート原料を用いて、実施例1〜11、比較例1〜6のチョコレート生地を製造した。具体的には、各チョコレート原料を混合し、常法に従って微粒化、精練を行って、チョコレート生地を得、得られたチョコレート生地を50℃で完全に溶融し、下記表4〜6に示す温度条件で、冷却、再加温を行った後、含気のためすぐに加圧式のミキサーに入れて、2気圧下で2分間撹拌した。
表4には、実施例1〜5、比較例1〜6のチョコレート生地の含気泡の状態について評価した結果を示す。なお、実施例1〜5、比較例1〜6のチョコレート生地(同じ仕込配合)について、示差走査熱量計(differential scanning calorimeter;DSC)によってその凝固点温度を測定したところ、31.7℃であった。また、実施例1〜5、比較例1〜6のチョコレート生地の仕込配合は、試験例1で示した図2の散布図中の境界線Iを超えない配合であった。

その結果、実施例1〜5の結果に示されるように、チョコレート生地を完全な溶融状態から、凝固点温度31.7℃より0.7〜4.7℃低い温度に冷却し、その温度より1〜5℃高い温度に再加温し、その生地に含気させることで、生地中に均一で細かな気泡を含有させることができた。これに対して、30℃に冷却した後に再加温の処理をしない比較例1では、一部に大きな気泡が発生した。凝固点温度より高い32℃に冷却したのみの比較例2では、気泡がほとんど含有されなかった。凝固点温度より0.2℃低い温度に冷却した比較例3や、凝固点温度より5.7℃低い温度に冷却した比較例4や、冷却から再加温の温度幅が0.5℃の比較例5や、冷却から再加温の温度幅が6℃の比較例6でも、一部に大きな気泡が発生したり、気泡がほとんど含有されなかったり、生地の流動性が悪く操作できなかったりして、いずれも生地中に均一で細かな気泡を含有させることができなかった。
表5には、上記の実施例1の結果に加え、実施例6〜8の結果を示す。なお、実施例6〜8のチョコレート生地について、示差走査熱量計(differential scanning calorimeter;DSC)によってその凝固点温度を測定したところ、それぞれ29.9℃、29.2℃、25.1℃であった。また、実施例6〜8のチョコレート生地の仕込配合は、試験例1で示した図2の散布図中の境界線Iを超えない配合であった。

その結果、上記実施例1の結果に加え、実施例6〜8の結果に示されるように、各種ノーテンパー型非カカオ脂の違い(ラウリン系、非ラウリン系、SFC)によらず、いずれの実施例でも、凝固点温度より所定温度低い温度に冷却し、その温度より所定温度高い温度に再加温し、その生地に含気させることで、生地中に均一で細かな気泡を含有させることができた。
表6には、上記の実施例1の結果に加え、実施例9〜11の結果を示す。なお、実施例9〜11のチョコレート生地について、示差走査熱量計(differential scanning calorimeter;DSC)によってその凝固点温度を測定したところ、それぞれ33.4℃、29.1℃、28.6℃であった。また、実施例9のチョコレート生地の仕込配合は、試験例1で示した図2の散布図中の境界線Iを超えない配合であり、実施例10のチョコレート生地の仕込配合は、試験例1で示した図2の散布図中の境界線Iを超え、境界線Iを超えない配合であり、実施例11のチョコレート生地の仕込配合は、試験例1で示した図2の散布図中の境界線IIを超える配合であった。

その結果、上記実施例1の結果に加え、実施例9〜11の結果に示されるように、全油脂量中のカカオ由来油脂の含有量やノーテンパー型非カカオ脂の含油量の違いによらず、いずれの実施例でも、凝固点温度より所定温度低い温度に冷却し、その温度より所定温度高い温度に再加温し、その生地に含気させることで、生地中に均一で細かな気泡を含有させることができた。

Claims (4)

  1. ノーテンパー型非カカオ脂を含有するチョコレート生地を完全な溶融状態から、凝固点温度より0.5〜5℃低い温度に冷却し、その温度より1〜5℃高い温度に再加温し、含気させて比重を0.3〜1.1にすることを特徴とする含気チョコレート生地の製造方法。
  2. 全油脂量中のカカオ由来油脂の含有量が、チョコレート生地の内部に発生するブルームが抑制される範囲とされている、請求項1記載の含気チョコレート生地の製造方法。
  3. 全油脂量中のカカオ由来油脂の含有量が、チョコレート生地の内部及び表層に発生するブルームが抑制される範囲とされている、請求項1記載の含気チョコレート生地の製造方法。
  4. 請求項1〜3に記載の含気チョコレート生地の製造方法により得られた含気チョコレート生地を所定形状に成形し、焼成することを特徴とする焼成チョコレートの製造方法。
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