JP2012191929A - 食用クリーム - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、トランス脂肪酸含量が十分に低いにもかかわらず、水素添加臭様の風味を有するホイップクリーム、飲料用クリーム、フラワーペースト、バタークリーム等の食用クリームを提供することである。
【解決手段】油脂含量が1〜99質量%である食用クリームであって、カカオ豆より圧搾された高温脱臭処理を経ないカカオ脂を0.01〜4質量%含有し、トランス脂肪酸含量が5質量%以下である食用クリームである。前記カカオ豆が焙煎されたカカオ豆である食用クリームである。
【選択図】なし

Description

本発明は、ホイップクリーム、飲料用クリーム、フラワーペースト、バタークリーム等の食用クリームに関する。
動植物油脂を部分水素添加して得られる硬化油(以下、部分水素添加して得られる硬化油は、部分水素添加油脂とする)は、サラダ油等に代表される液状油と比べ、耐熱性、酸化安定性に優れるため、フライドチキン、フライドポテト、バターピーナッツ、ドーナツ等に用いられる加熱調理用油脂として従来から用いられて来た。また、部分水素添加油脂は、マーガリン、ショートニング等の可塑性油脂組成物やホイップクリーム等の起泡性水中油型乳化物等、広く油脂加工食品にも用いられて来た。
動植物油脂の部分水素添加油脂は、水素添加によって生成するトランス脂肪酸を含有している。近年、トランス脂肪酸に関しては、ヒトをはじめ動物が長期間多量に摂取した場合には、血中総コレステロール値及び悪玉と呼ばれる低密度リポ蛋白質コレステロール値を高め、肥満や虚血性心疾患などの原因となりうるという学説が欧州や米国から出て来ており、一定水準以上のトランス脂肪酸を含有する食品については表示を義務化する等の対策をとる国が増えてきている。我が国においても世界的な流れを受け、食品中のトランス脂肪酸含量を低減させる試みが検討されており、加熱調理用油脂や油脂加工食品についても、トランス脂肪酸含量の低減化が求められている。
動植物油脂の部分水素添加油脂中におけるトランス脂肪酸含量の低減化に関しては、水素添加反応の工程で、触媒や温度等の反応条件を工夫する試みや(例えば、特許文献1、2)、部分水素添加油の替わりにエステル交換油を利用した開発が行われている(例えば、特許文献3、4)。
一方、動植物油脂の部分水素添加油脂は、水素添加臭と呼ばれる独特の風味を有しており、部分水素添加油脂を使用したホイップクリーム、飲料用クリーム、フラワーペースト、バタークリーム等の食用クリームにおいては、商品の個性を特徴付ける重要な風味の一部として定着しているものも多い。
この動植物油脂の部分水素添加油脂の水素添加臭は、前述したトランス脂肪酸に起因することが知られている。従って、前述のトランス脂肪酸含量を低減させる試みにより、トランス脂肪酸含量を減らすと、水素添加臭の独特な風味が失われるという問題がしばしば生じるようになってきた。
以上のような背景から、トランス脂肪酸含量をできる限り低減しつつ、水素添加臭様(水添臭様)の風味を有するホイップクリーム、飲料用クリーム、フラワーペースト、バタークリーム等の食用クリームの開発が望まれていた。
特開平7−316585号公報 特開2006−320275号公報 特開2002−338992号公報 特開2007−174988号公報
本発明の目的は、トランス脂肪酸含量が十分に低いにもかかわらず、水素添加臭様の風味を有するホイップクリーム、飲料用クリーム、フラワーペースト、バタークリーム等の食用クリームを提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ホイップクリーム、飲料用クリーム、フラワーペースト、バタークリーム等の食用クリーム中に、カカオ豆より圧搾されたカカオ脂を特定量含有させることによって、トランス脂肪酸含量が十分に低いにもかかわらず、該食用クリームに水素添加臭様の風味とコク味を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の態様の1つは、油脂含量が1〜99質量%である食用クリームであって、カカオ豆より圧搾された高温脱臭処理を経ないカカオ脂を0.01〜4質量%含有し、トランス脂肪酸含量が5質量%以下である食用クリームである。
本発明の好ましい態様としては、前記カカオ豆が焙煎されたカカオ豆である食用クリームである。
本発明の好ましい態様としては、前記カカオ豆の焙煎温度が100〜150℃である食用クリームである。
本発明の好ましい態様としては、前記カカオ豆の焙煎がニブ焙煎である食用クリームである。
本発明の好ましい態様としては、前記食用クリームが、カカオ豆由来の無脂固形分を含まない食用クリームである。
本発明の好ましい態様としては、前記食用クリームがホイップクリーム、飲料用クリーム、フラワーペースト、バタークリーム、無水クリームから選ばれる何れか1種である食用クリームである。
本発明の好ましい態様としては、前記食用クリームを使用した食品を提供する。
また、本発明の態様の1つは、油脂含量が1〜99質量%である食用クリーム中に、カカオ豆より圧搾された高温脱臭処理を経ないカカオ脂を0.01〜4質量%含有させることによって、食用クリームの風味を改質する方法である。
また、本発明の態様の1つは、カカオ豆より圧搾された高温脱臭処理を経ないカカオ脂である食用クリームの風味改質剤である。
本発明によれば、トランス脂肪酸含量が十分に低いにもかかわらず、水素添加臭様の風味とコク味が付与された嗜好性の高いホイップクリーム、飲料用クリーム、フラワーペースト、バタークリーム等の食用クリームを提供できる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の食用クリームは、カカオ豆より圧搾されたカカオ脂を0.01〜4質量%含有する。溶剤等によりカカオ豆より抽出されたカカオ脂は、風味の面から、本発明の食用クリームに使用するのは適当でない。
本発明の食用クリームに使用されるカカオ脂は、また、焙煎されたカカオ豆より圧搾されたカカオ脂であることが好ましい。カカオ豆の焙煎条件は、焙煎温度は100〜150℃が好ましく、110〜140℃であることがより好ましく、120〜140℃であることが最も好ましい。焙煎時間は5〜40分間が好ましく、10〜30分間がより好ましい。前記焙煎条件で焙煎すると、食用クリームに使用した場合、水素添加臭様の風味とコク味が発現し易いので好ましい。
また、焙煎方式に特に限定はないが、カカオ豆をスチーム処理した後、皮を分離した実(カカオニブ)の状態で焙煎するニブ焙煎や、カカオ豆を皮付きのまま焙煎するビーンズ焙煎が挙げられる。ニブ焙煎の場合は、皮を分離したカカオニブを、滅菌、乾燥した後、焙煎、磨潰して得られたカカオマスを圧搾することによりカカオ脂が得られる。ビーンズ焙煎の場合は、カカオ豆を皮付きのまま殺菌、焙煎した後、皮を分離し、磨潰して得られたカカオマスを圧搾することによりカカオ脂が得られる。また、カカオ脂はカカオマスを圧搾することにより得られるが、圧搾前にカカオマスをアルカリ処理しても良い。焙煎は、食用クリームに使用した場合、水素添加臭様の風味とコク味が発現し易いので、カカオ豆の実部を直接加熱するニブ焙煎であることが好ましい。
本発明の食用クリームに使用されるカカオ豆より圧搾されたカカオ脂は、高温脱臭処理を経ないカカオ脂である。高温脱臭処理とは、油脂の精製工程の1つである脱臭工程において、脱臭温度が230℃以上での脱臭をいう。また、脱臭処理温度は210℃以上でないことが好ましい。さらに、本発明の食用クリームに使用されるカカオ豆より圧搾されたカカオ脂は、脱臭処理を経ない未脱臭カカオ脂であることが好ましく、食用油脂を得るために通常行われる脱酸、脱色、脱臭の精製工程を経ない、圧搾されたままの未精製カカオ脂であることが、食用クリームに使用した場合、水素添加臭様の風味とコク味が発現し易いので最も好ましい。
本発明の食用クリームは、カカオ豆より圧搾されたカカオ脂を0.01〜3質量%含有することが好ましい。より好ましくは0.01〜2質量%であり、さらに好ましくは、0.02〜0.9質量%であり、最も好ましくは、0.03〜0.6質量%である。食用クリーム中にカカオ豆より圧搾されたカカオ脂を前記含量含有させることにより、ほど良い水素添加臭様の風味とコク味が得られるので好ましい。カカオ豆より圧搾された高温脱臭処理を経ないカカオ脂は、食用クリームの風味改質剤として使用できる。
また、本発明の食用クリームは、水素添加臭様の風味よりチョコレート風味が全面に強く出てしまうので、カカオマス、ココアパウダー等のカカオ豆由来のカカオ脂以外の固形分(無脂固形分)は含有しない方が好ましい。
本発明の食用クリームは、カカオ豆より圧搾されたカカオ脂を含めて、油脂を1〜99質量%含有する。本発明の食用クリームに使用されるカカオ脂以外の油脂は、植物油脂であることが好ましい。植物油脂としては、従来食用に供される大豆油、菜種油、高オレイン酸菜種油、綿実油、ヒマワリ種子油、高オレイン酸ヒマワリ種子油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、高オレイン酸サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、イリッペ脂、サル脂、シア脂、パーム油、パーム核油、ヤシ油等、並びに、これらに、硬化、分別、エステル交換(油脂と脂肪酸または脂肪酸エステルとのエステル交換も含む)等の加工を加えた加工油脂の中から1種あるいは2種以上を選択して使用できる。
本発明の食用クリームは、コレステロールを排除する意味において植物油脂のみを原料油脂とすることが好ましいが、植物油脂以外の油脂としては、必要に応じて食用に供される牛脂、豚脂、乳脂、並びに、これらに加工を加えた加工油脂を0.1〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、さらに好ましくは0.1〜3質量%含有させても良い。
本発明の食用クリームは、カカオ豆より圧搾されたカカオ脂を含めて、油脂を1〜90質量%含有することが好ましく、3〜80質量%含有することがより好ましく、5〜70質量%含有することが更に好ましい。
本発明の食用クリームは、トランス脂肪酸の摂取を低減させるという意味において、トランス脂肪酸含量は5質量%以下である。トランス脂肪酸含量は、できる限り低減させることが好ましいが、少量のトランス脂肪酸が存在することで水素添加臭様の風味とコク味を強めることができるので、食用クリーム中に5質量%以下含有していてもよい。食用クリーム中のトランス脂肪酸含量は0〜2質量%であることが好ましく、0〜1質量%であることがより好ましく、0〜0.5質量%であること更に好ましい。
なお、トランス脂肪酸含量は、AOCS法(Celf−96)に準じてガスクロマトグラフィー法にて食用クリームの油脂中のトランス脂肪酸含量を測定することにより、食用クリーム中の含量を定量することができる。
本発明の食用クリームの好ましい態様としては、少なくとも油脂と糖類とを練り合わせた、水を配合しない、無水クリームが挙げられる。無水クリームは、そのままで、または、適宜起泡化して、例えば、コーティングクリーム、サンドクリーム、フィリングクリームとして使用できる。
本発明の食用クリームのまた別の好ましい態様としては、少なくとも油脂と水とを含み、乳化された含水クリームが挙げられる。含水クリームは、O/W型、W/O型、複合乳化型の何れの乳化型であっても良い。O/W型含水クリームであって、起泡化して使用される所謂ホイップクリームは、糖類を配合して起泡化することにより、もしくは、予め糖類が配合された加糖ホイップクリームを起泡化することにより、例えば、コーティングクリーム、サンドクリーム、フィリングクリームとして使用できる。また、O/W型含水クリームであって、コーヒー等の飲料に添加して使用する飲料用クリーム、あるいは、ソースやルウ等に添加使用する調理用クリーム、製菓製パン生地に練り込んで使用するベーカリークリーム、アイスクリームやプリン等の冷菓に練り込んで使用する冷菓練り込み用クリーム等も、本発明の食用クリームの好ましい態様の1つである。また、O/W型含水クリームであって、さらに澱粉(穀物粉に含まれる澱粉も含む)を含み、澱粉を加熱糊化することによってボデーを付与した、所謂フラワーペーストも、本発明の食用クリームの好ましい態様の1つである。また、W/O型含水クリームであって、スプレッドとして、また、製菓製パン用として使用するW/O型可塑性油脂組成物、及び、W/O型可塑性油脂組成物を起泡化させて液糖等の糖類を混ぜ合わせた、もしくは、W/O型可塑性油脂組成物に液糖等の糖類を配合して起泡させたバタークリームも、本発明の食用クリームの好ましい態様の1つである。またさらに、無水の可塑性油脂組成物(所謂ショートニング)を起泡化させて液糖類を混ぜ合わせた、もしくは、無水の可塑性油脂組成物に液糖類を配合して起泡させたものも本発明の食用クリームであるバタークリームに含まれる。
本発明の食用クリームは、ホイップクリームの場合、カカオ豆より圧搾されたカカオ脂を含む油脂を10〜70質量%含有することが好ましく、20〜60質量%含有することがより好ましい。また、飲料用クリームの場合、カカオ豆より圧搾されたカカオ脂を含む油脂を5〜40質量%含有することが好ましく、10〜30質量%含有することがより好ましい。また、フラワーペーストの場合、カカオ豆より圧搾されたカカオ脂を含む油脂を1〜60質量%含有することが好ましく、3〜50質量%含有することがより好ましい。また、バタークリームの場合、カカオ豆より圧搾されたカカオ脂を含む油脂を20〜80質量%含有することが好ましく、30〜60質量%含有することがより好ましい。
本発明の食用クリームは、油脂以外の他の成分を含有することができる。他の成分としては、水、乳化剤、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、蔗糖、ソルビトール、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β−カロテン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵及び各種卵加工品、香料、脱脂粉乳やホエイパウダー等の乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、香辛料、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
本発明の食用クリームは、ホイップクリームの場合、水を20〜80質量%含有することが好ましく、30〜70質量%含有することがより好ましい。また、飲料用クリームの場合、水を50〜90質量%含有することが好ましく、60〜80質量%含有することがより好ましい。また、フラワーペーストの場合、水を10〜70質量%含有することが好ましく、15〜60質量%含有することがより好ましい。また、バタークリームの場合、水を5〜50質量%含有することが好ましく、10〜40質量%含有することがより好ましい。
上記乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、縮合リシノレイン脂肪酸エステル、グリセリドエステル等の合成乳化剤や、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の合成乳化剤でない乳化剤等が挙げられる。
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、澱粉、ゼラチン等が挙げられる。
上記澱粉としては、小麦、コーン、ジャガイモ、サツマイモ、米、もち米、タピオカ等由来の澱粉が挙げられ、またそれらに、エステル化、リン酸架橋、α化、酸化、熱処理等の化学的、物理的処理を施した化工澱粉乃至加工澱粉が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。フラワーペーストの場合、澱粉の添加量は、フラワーペースト中、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは2〜8質量%である。
上記甘味料としては、ショ糖(砂糖、粉糖)、乳糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、還元澱粉糖化物、液糖、酵素転化水飴、異性化液糖、ショ糖結合水飴、還元糖ポリデキストロース、オリゴ糖、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトース、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、ラフィノース、デキストリン、ステビア、アスパルテーム等が挙げられる。
本発明の食用クリームの製造方法は、カカオ豆より圧搾された高温脱臭を経ないカカオ脂を配合する以外は特に限定されるものではなく、ホイップクリーム、飲料用クリーム、バタークリーム、フラワーペースト等の製造に通常用いられる方法により製造できる。例えば、ホイップクリームや飲料用クリームのように水中油型乳化物である場合、カカオ豆より圧搾されたカカオ脂とカカオ脂以外の油脂とを混合し、さらに油溶性のその他の成分を溶解または分散させて油相を調製する。一方、水に水溶性のその他の成分を溶解または分散させて調製した水相も調製する。そして、調製した水相に対して油相を混合して予備的に乳化させた乳化物を均質化処理することにより製造することができる。また、必要に応じて殺菌処理することもできる。均質化処理は、殺菌処理の前に行う前均質であっても、殺菌処理の後に行う後均質であってもよく、また前均質および後均質の両者を組み合わせた二段均質を行うこともできる。均質化処理の後は、冷却、エージングの工程に供してもよい。ホイップクリームのように起泡化させて使用する場合、調製した水中油型乳化物を、必要に応じて糖類等を加えた後、起泡化(ホイップ)して使用できる。
バタークリームや無水クリームの場合、例えば、カカオ豆より圧搾されたカカオ脂とカカオ脂以外の油脂とを混合し、さらに油溶性のその他の成分を溶解または分散させて油相を調製する。調製した油相に対し、必要に応じて、水に水溶性のその他の成分を溶解または分散させて調製した水相を混合乳化した後、冷却し(必要に応じてガスを注入してもよい)、結晶化させて可塑性油脂組成物を製造する。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクター等のマーガリン製造機やプレート型熱交換機等が挙げられる。また、冷却する機器としては、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組合せも挙げられる。工程上、油相の溶解後又は混合乳化後に、殺菌処理することができる。殺菌は、タンクでのバッチ式や、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式で行うことができる。バタークリームや無水クリームは、得られた可塑性油脂組成物に、必要に応じて、粉糖、液糖等の糖類、及びその他副素材を添加混合して起泡化(ホイップ)することにより得られる。
フラワーペーストの場合、例えば、油脂を除く他の原料のすべてを温水に溶解混合し、次いで高速攪拌機にてホモジナイズして溶解物を得る。次に、カカオ豆より圧搾されたカカオ脂とカカオ脂以外の油脂を加温溶解し、上記の溶解物に徐々に添加しながら、更に同条件で追加ホモジナイズを行なう。次いでホモミキサーにて均質化処理を行なう。これを攪拌付き加熱釜に移して攪拌しながら約90℃まで加熱・糊化させる。加熱終了後、シリンダー型掻き取り式熱交換機、たとえばボテーター、コンビネーター、パーフェクター等を使用し、約50℃まで予備冷却した後、充填し、室温まで自然放冷することにより得られる。高速攪拌機としては例えば特殊機化工業社製ホモジナイザーが挙げられ、ホモミキサーとしては、例えばSANWA MACHINE CO.INC製高圧ホモミキサーが挙げられる。
本発明の食用クリームは、クリーム単品として使用する他に、トッピング、コーティング、サンド、フィリング、生地練り込み等の用途で、パン類(食パン、テーブルロール、菓子パン、調理パン、フランスパン、ライブレッドなど)、イースト菓子(シュトーレン、パネトーネ、クグロフ、ブリオッシュ、ドーナツなど)、ペストリー(デニッシュ、クロワッサン、パイなど)、ケーキ(バターケーキ、スポンジ、ビスケット、クッキー、ドーナツ、ブッセ、ホットケーキ、ワッフルなど)、和菓子(饅頭、乳菓、蒸しパン、カステラ饅頭、どら焼きなど)等の食品に使用できる。また、ホワイトニングや風味向上のために、飲料用クリームや調理用クリームとして、コーヒー・紅茶等の各種飲料や、ソース・ルウ等に使用できる。また、アイスクリーム、ババロア、プリン等の冷菓の練り込み用クリームとして使用できる。
以下、具体的な実施例に基づいて、本発明について詳しく説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例の内容に、何ら限定されるものではない。
カカオ脂1〜4の調製を以下のように行った。
(カカオ脂の調製)
〔カカオ脂1〕
カカオ豆をスチーム処理して皮を分離したカカオニブを乾燥した後、焙煎器により125℃で20分間焙煎した。焙煎したカカオニブをコーヒーミルで粉砕し、卓上圧搾器で圧搾して、トランス脂肪酸含量0.0質量%であるニブ焙煎カカオ豆からのカカオ脂1を得た。
〔カカオ脂2〕
カカオ豆を焙煎器により125℃で20分間焙煎した後、皮を分離して得たカカオニブをコーヒーミルで粉砕し、卓上圧搾器で圧搾して、トランス脂肪酸含量0.0質量%であるビーンズ焙煎カカオ豆からのカカオ脂2を得た。
〔カカオ脂3〕
カカオ豆をスチーム処理して皮を分離したカカオニブを乾燥した後、コーヒーミルで粉砕し、卓上圧搾器で圧搾して、トランス脂肪酸含量0.0質量%である未焙煎カカオ豆からのカカオ脂3を得た。
〔カカオ脂4〕
カカオ脂1を、常法により、脱酸、脱色、脱臭(260℃、90分)処理を行い、トランス脂肪酸含量0.1質量%である精製工程を経たカカオ脂4を得た。
植物油脂1〜13の調製を以下のように行った。
(植物油脂の調製)
〔植物油脂1〕
RBDPMF(パームミッドフラクション、マレーシアISF社製、ヨウ素価45)を常法に従って、脱色、脱臭の精製処理を行い、トランス脂肪酸含量0.1質量%である植物油脂1を得た。
〔植物油脂2〕
極度硬化ヤシ油(商品名:ヤシ硬34、日清オイリオグループ株式会社製、ヨウ素価1未満、トランス脂肪酸含量0.0質量%)を植物油脂2とした。
〔植物油脂3〕
RBDパームオレイン(マレーシアISF社製、ヨウ素価56)を常法に従って、ナトリウムメチラートを触媒としてエステル交換した後、中和、脱色、脱臭の精製処理を行い、トランス脂肪酸含量が0.3質量%である植物油脂3を得た。
〔植物油脂4〕
RBDパーム核オレイン(マレーシアISF社製、ヨウ素価27)を常法に従って、脱色、脱臭の精製処理を行い、トランス脂肪酸含量0.0質量%である植物油脂4を得た。
〔植物油脂5〕
ハイオレイックひまわり油(日清オイリオグループ株式会社社内製、ヨウ素価88、トランス脂肪酸含量0.1質量%)を植物油脂5とした。
〔植物油脂6〕
大豆油(商品名:大豆白絞油、日清オイリオグループ株式会社製、ヨウ素価131、トランス脂肪酸含量1.5質量%)を植物油脂6とした。
〔植物油脂7〕
60質量部の植物油脂1と40質量部の植物油脂2とを混合し、トランス脂肪酸含量が0.1質量%である植物油脂7を得た。
〔植物油脂8〕
30質量部の植物油脂1と70質量部の植物油脂3とを混合し、トランス脂肪酸含量が0.3質量%である植物油脂8を得た。
〔植物油脂9〕
50質量部の植物油脂4と50質量部の植物油脂5とを混合し、トランス脂肪酸含量が0.1質量%である植物油脂9を得た。
〔植物油脂10〕
極度硬化パーム油と極度硬化パーム核油とのエステル交換油(マレーシアISF社製、ヨウ素価2以下)を常法に従って、脱色、脱臭の精製処理を行い、トランス脂肪酸含量0.0質量%である植物油脂10を得た。
〔植物油脂11〕
パーム油(商品名:精製パーム油、日清オイリオグループ株式会社製、ヨウ素価52、トランス脂肪酸含量0.3質量%)を植物油脂11とした。
〔植物油脂12〕
綿実油(商品名:綿実白絞油、日清オイリオグループ株式会社製、ヨウ素価110、トランス脂肪酸含量0.8質量%)を植物油脂12とした。
〔植物油脂13〕
18質量部の植物油脂10、52質量部の植物油脂11及び30質量部の植物油脂12を混合し、トランス脂肪酸含量が0.4質量%である植物油脂13を得た。
(ホイップクリームの製造及び評価)
表1の配合に従って、ホイップクリームを製造した。すなわち、油脂に乳化剤を溶解させて油相を調製した。同時に、水に脱脂粉乳、メタリン酸ナトリウム、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル0.13%)を溶解し、分散させて水相を調製した。次に、水相に油相を加え、60℃〜70℃に調温しながら、ホモミキサーにて予備乳化した。予備乳化後、6.0MPaの圧力下で均質化し、85℃、15分のバッチ殺菌を行い、約10℃まで冷却した後、5℃の冷蔵庫にて約18時間エージングし、実施例1〜2及び比較例1〜3のホイップクリームを得た。
得られたホイップクリームを、以下の評価基準に従ってパネラー5名により風味評価を行った。総合評価及びパネラーのコメントを表1に示した。

評価基準
水添臭様の風味・コク味が強く感じられる 4点
水添臭様の風味・コク味が感じられる 3点
水添臭様の風味・コク味が僅かに感じられる 2点
水添臭様の風味・コク味が感じられない 1点
水添臭様とは異質の風味となっている 0点

各パネラーの評点を合計して以下の基準により総合評価した。
15点以上 ◎
11点以上15点未満 ○
8点以上11点未満 △
5点以上 8点未満 ▲
5点未満 ×
Figure 2012191929
(コーヒークリームの製造及び評価)
表2の配合に従って、コーヒークリーム(飲料用クリーム)を製造した。すなわち、油脂に乳化剤を溶解させて油相を調製した。同時に、水に脱脂粉乳、メタリン酸ナトリウム、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル0.13%)を溶解し、分散させて水相を調製した。次に、水相に油相を加え、60℃〜70℃に調温しながら、ホモミキサーにて予備乳化した。予備乳化後、15.0MPaの圧力下で均質化し、85℃、15分のバッチ殺菌を行い、約10℃まで冷却した後、5℃の冷蔵庫にて約18時間エージングし、実施例3〜6及び比較例4のコーヒークリームを得た。
得られたコーヒークリームについて、インスタントコーヒー2gに熱湯100gを注ぎ、コーヒークリームを5g添加して撹拌した後、以下の評価基準に従ってパネラー5名により風味評価を行った。総合評価及びパネラーのコメントを表2に示した。

評価基準
水添臭様の風味・コク味が強く感じられる 4点
水添臭様の風味・コク味が感じられる 3点
水添臭様の風味・コク味が僅かに感じられる 2点
水添臭様の風味・コク味が感じられない 1点
水添臭様とは異質の風味となっている 0点

各パネラーの評点を合計して以下の基準により総合評価した。
15点以上 ◎
11点以上15点未満 ○
8点以上11点未満 △
5点以上 8点未満 ▲
5点未満 ×
Figure 2012191929
(フラワーペーストの製造及び評価)
表3の配合に従って、フラワーペーストを製造した。すなわち、油溶成分を除く原料のすべてを50℃に加温した水に溶解混合し、次いで高速攪拌機(特殊機化工業社製)にて6000rpmの攪拌速度で10分ホモジナイズして溶解物を得た。次に、60℃に加温させた油脂、乳化剤混合物を上記の溶解物に徐々に添加しながら、更に同条件で20分ホモジナイズした。次いで高圧ホモミキサー(SANWA MACHINE CO.INC製)にて均質化処理(100kg/cm2)を行なった。これを攪拌付き加熱釜に移して攪拌(50rpm)しながら90℃まで加熱・糊化させた。加熱終了後、シリンダー型掻き取り式熱交換機(Gerstenberg Schroder社製:ドイツ)を使用し、50℃まで予備冷却した後、充填し、室温まで自然放冷し、実施例7〜10及び比較例5のフラワーペーストを得た。
得られたフラワーペーストを、以下の評価基準に従ってパネラー5名により風味評価を行った。総合評価及びパネラーのコメントを表3に示した。

評価基準
水添臭様の風味・コク味が強く感じられる 4点
水添臭様の風味・コク味が感じられる 3点
水添臭様の風味・コク味が僅かに感じられる 2点
水添臭様の風味・コク味が感じられない 1点
水添臭様とは異質の風味となっている 0点

各パネラーの評点を合計して以下の基準により総合評価した。
15点以上 ◎
11点以上15点未満 ○
8点以上11点未満 △
5点以上 8点未満 ▲
5点未満 ×
Figure 2012191929
(バタークリームの製造及び評価)
表4の配合に従って、バタークリームを製造した。すなわち、配合表に従って、各油相部全量を混合融解し、常法に従ってコンビネーターを用いて急冷混捏を行い、可塑性油脂組成物を得た。得られた油脂組成物を縦型ミキサーでホイッパーを使用して起泡し、比重を0.45とした。さらに水相部を混合溶解し、徐々にホイップ済み可塑性油脂組成物へ攪拌しながら添加し、最終比重を0.60へ調整し、実施例11〜13及び比較例6〜7のバタークリームを得た。
得られたバタークリームを、以下の評価基準に従ってパネラー5名により風味評価を行った。総合評価及びパネラーのコメントを表4に示した。

評価基準
水添臭様の風味・コク味が強く感じられる 4点
水添臭様の風味・コク味が感じられる 3点
水添臭様の風味・コク味が僅かに感じられる 2点
水添臭様の風味・コク味が感じられない 1点
水添臭様とは異質の風味となっている 0点

各パネラーの評点を合計して以下の基準により総合評価した。
15点以上 ◎
11点以上15点未満 ○
8点以上11点未満 △
5点以上 8点未満 ▲
5点未満 ×
Figure 2012191929
(無水クリームの製造及び評価)
表5の配合に従って、無水クリームを製造した。すなわち、配合表に従って、各油相部全量を混合融解し、常法に従ってコンビネーターを用いて急冷混捏を行い、可塑性油脂組成物を得た。得られた油脂組成物50質量部と粉糖50質量部とを縦型ミキサーでホイッパーを使用して起泡し、比重を0.55に調整し、実施例14〜16及び比較例8〜9の無水クリームを得た。
得られた無水クリームを、以下の評価基準に従ってパネラー5名により風味評価を行った。総合評価及びパネラーのコメントを表5に示した。

評価基準
水添臭様の風味・コク味が強く感じられる 4点
水添臭様の風味・コク味が感じられる 3点
水添臭様の風味・コク味が僅かに感じられる 2点
水添臭様の風味・コク味が感じられない 1点
水添臭様とは異質の風味となっている 0点

各パネラーの評点を合計して以下の基準により総合評価した。
15点以上 ◎
11点以上15点未満 ○
8点以上11点未満 △
5点以上 8点未満 ▲
5点未満 ×
Figure 2012191929
本発明によれば、トランス脂肪酸含量が十分に低いにもかかわらず、水素添加臭様の風味とコク味が付与された嗜好性の高いホイップクリーム、飲料用クリーム、フラワーペースト、バタークリーム等の食用クリームを提供でき、健全で豊かな食生活に貢献できる。

Claims (9)

  1. 油脂含量が1〜99質量%である食用クリームであって、カカオ豆より圧搾された高温脱臭処理を経ないカカオ脂を0.01〜4質量%含有し、トランス脂肪酸含量が5質量%以下である食用クリーム。
  2. 前記カカオ豆が焙煎されたカカオ豆である請求項1記載の食用クリーム。
  3. 前記カカオ豆の焙煎温度が100〜150℃である請求項2記載の食用クリーム。
  4. 前記カカオ豆の焙煎がニブ焙煎である請求項2〜3の何れか1項に記載の食用クリーム。
  5. カカオ豆由来の無脂固形分を含まない請求項1〜4の何れか1項に記載の食用クリーム。
  6. 前記食用クリームがホイップクリーム、飲料用クリーム、フラワーペースト、バタークリーム、無水クリームから選ばれる何れか1種である請求項1〜5の何れか1項に記載の食用クリーム。
  7. 請求項1〜6の何れか1項に記載の食用クリームを使用した食品。
  8. 油脂含量が1〜99質量%である食用クリーム中に、カカオ豆より圧搾された高温脱臭処理を経ないカカオ脂を0.01〜4質量%含有させることによって、食用クリームの風味を改質する方法。
  9. カカオ豆より圧搾された高温脱臭処理を経ないカカオ脂である食用クリームの風味改質剤。
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