JPH04329965A - 白血球の選択的除去方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】本公報は電子出願前の出願データであるた
め要約のデータは記録されません。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、血液、体液等の多量の
血球浮遊液から白血球および変性血液成分を選択的に除
去するための方法に関するものである。さらに詳しくは
血液の入口と出口を有する容器内に、変性血液成分除去
用プレフィルターと不織布からなる白血球除去フィルタ
ーとを積層させ内蔵した白血球除去フィルター装置に、
保存した血液、保存した体液等の血球浮遊液を供給し、
該液から白血球および変性血液成分を選択的に除去する
方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、血液学、免疫学の発達により、従
来の全血輸血に代わって、患者が必要とする血液の成分
だけを与え、不要な成分は極力与えない成分輸血が注目
をあびている。成分輸血には、赤血球輸血、白血球輸血
、血小板輸血、血漿輸血などがあり、貧血、心臓及び肺
疾患の患者等に赤血球のみを輸注する症例は極めて多い
。その理由として、全血赤血球濃厚液を輸血された患者
が、悪寒、発熱、頭痛、吐き気などの副作用を示すこと
が報告されている。これらの原因は、輸注される血液中
の白血球が有しているＨＬＡ抗原、ないしは組織抗原と
呼ばれる抗原と受血者の抗体との免疫反応、すなわち、
抗白血球抗体産生によるものと言われる。したがって、
赤血球輸血の場合には、白血球、血小板等、抗原となる
物質をできるだけ除去した赤血球濃厚液を輸注すること
が望ましい。

【０００３】これらの知見より、現在、白血球、血小板
をできるだけ除去した濃厚赤血球を得る方法が種々検討
されている。この方法は、大別すると３通りある。一つ
には、遠心分離により白血球、血小板、血漿を分離し、
濃厚赤血球を得る方法、二つには、全血にデキストラン
を加え、赤血球を沈降させた後、白血球を含む血漿を除
去し、さらに、生理的食塩水でデキストランを洗浄除去
し、洗浄濃厚赤血球を得る方法、三つには、繊維を適当
に充填したフィルターで白血球を捕捉し、白血球除去濃
厚赤血球を得る方法である。

【０００４】しかしながら、遠心分離法は、その装置が
高価であること、白血球および血小板を９０％程度除去
するためには、生理食塩水での洗浄を３回以上くり返さ
なければならないこと、白血球を吸引せずに、分離した
赤血球を吸引して分離するため、赤血球の２０％程度は
無駄となることに問題があるが、デキストラン沈降法も
白血球除去率を９０％程度にするには、３回以上の生理
食塩水の洗浄とデキストランの洗浄が必要であり、時間
がかかり、操作性も難儀である。

【０００５】本発明者らは、これらの点について研究し
、白血球除去フィルターとして、繊維の直径が３μｍ未
満で、嵩密度が０．１５ｇ／ｃｍ３　を超え０．５０ｇ
／ｃｍ３　以下の不織布からなるものであって、好まし
くは該不織布が繊維の互いのもつれによりその位置に固
定されているものが、繊維層が薄くできて、その結果、
短時間処理ができ、しかも、純度、収率よく白血球を分
離除去できることを確認した。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、血液に
は新鮮血、凍結保存血および４℃で保存した保存血があ
るが、新鮮血は、最近の全血、成分輸血、医療技術の発
達、普及により需要が大であり、入手が困難であること
、また、凍結保存血は、凍結損傷の危険より、グリセリ
ンを添加しており、解凍およびグリセリン除去に数時間
を要することから、赤血球の生理的機能を考慮した４℃
、３週間保存血がひんぱんに使われている。この４℃の
保存血は、赤血球の機能としては、３週間まで保証でき
るものの、保存期間が長くなるにしたがい血液は変性し
、血小板、フイブリン、白血球などよりなる凝集物質（
　Ｍｉｃｒｏａｇｇｒｅｇａｔｅ　）　およびフイブリ
ン、蛋白ゲルなどよりなる粘着物質が発生してくる。こ
れらの凝集物質、粘着物質は、保存期間が長くなるにし
たがい数は増大し、かつ大きく成長してくる。そのため
、凝集物および粘着物質等の変性血液成分が発生してい
る保存血を、平均直径が３μｍ以下の繊維からなる不織
布が充填された白血球除去フィルターで処理すると、こ
の変性血液成分が白血球除去フィルターに詰まって処理
ができなくなる。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、赤血球の
生存可能な長期間保存した血液または血球浮遊液でも処
理できる白血球除去用フィルターについて鋭意検討した
結果、血液の入口と出口を有する容器内に、繊維の直径
が３〜６０μｍで、嵩密度が０．０５〜０．５ｇ／ｃｍ
３　である繊維塊を少なくとも１種類含む変性血液成分
除去用プレフィルターと、繊維の直径が３μｍ未満で、
嵩密度が０．１５ｇ／ｃｍ３　を超え０．５０ｇ／ｃｍ
３　以下の不織布からなる白血球除去フィルターとを積
層させて内蔵した白血球除去用フィルター装置を用いる
と、赤血球の生存可能な長期間の３週間保存血でも、詰
まることなく、しかも、短時間に処理できることを見出
した。

【０００８】本発明の方法を使用することにより、長期
保存血中の凝集物および粘着物質等の変性血液成分は、
変性血液成分除去用プレフィルターで捕捉されると共に
、長期保存することにより血球が会合状態になっている
ものも、変性血液成分除去用プレフィルターでほぐされ
、長期保存血でも変性血液成分除去用プレフィルターを
通過することにより、新鮮血と同様な血球および蛋白成
分となる効果があり、このような血液が、下流側に積層
されている繊維の直径３μｍ未満で、嵩密度が０．１５
ｇ／ｃｍ３　を超え０．５０ｇ／ｃｍ３　以下の不織布
よりなる白血球除去用フィルター装置で処理されるため
、赤血球の生存可能な長期間の３週間保存血でも、詰ま
ることなく、しかも、短時間に白血球と変性血液成分の
分離除去処理ができることになる。本発明に用いられる
変性血液成分除去用プレフィルターは白血球除去フィル
ターと共に、血液の入口、出口を有する容器内に一緒に
積層して充填されているため、容器は一つでよく、容器
を連結する回路等も要らないので、フィルターのコスト
は低くなる上、白血球除去用フィルター装置としての全
容積も小さくて済み、フィルターの小型化、プライミン
グボリュームの減少にも著しい効果がある。

【０００９】本発明でいう血球浮遊液とは、血液や体液
、たとえば腹水や骨髄液それ自身、およびこれらの液に
何らかの処理、例えばデキストランやヒドロキシエチル
スターチなどの赤血球凝集剤のような血球凝集剤を加え
て得た血球浮遊液や、密度勾配遠心分離などのような遠
心分離操作により得た血球浮遊液、細胞電気泳動により
得られた血球浮遊液などをいう。

【００１０】本発明に用いる白血球除去フィルターでは
、繊維径が極端に細い繊維からなる不織布を使用するの
で、フィルター装置の縦方向および横方向に、繊維を均
密に充填することができる。さらには、細い繊維を均密
に充填できるため、太い繊維では考えられないほど充填
密度を上げることが可能である。そのため、血球浮遊液
との接触面積を大きくすると共に、白血球除去に必要な
縦方向の長さ（厚み）を著しく短く、すなわち、薄くす
ることができる。その結果、血球浮遊液を流した場合の
フィルターの圧力損失が少なく、処理速度も速くなり、
短時間処理が実現できる。

【００１１】また、直径が３μｍ未満という極細繊維の
不織布を用いることにより、フィルター内の繊維間隙を
一定かつ均密で、しかも、小さくすることができるので
、血液のチャンネリングが防止でき、白血球の除去性能
を一段と向上させることが可能となる。さらに、フィル
ター装置の厚みを薄く、小型化することが可能となるの
で、プライミングボリュームを小さくし、赤血球の回収
率を向上させる効果もある。また、処理速度が速く、操
作時間が短いことは、４℃保存の血液を室温で処理する
場合、血液温度の上昇を防ぐことができ、血液の変性等
にも効果がある。さらに、不織布を用いることにより、
処理時に出る糸くずがなくなり、輸血時の糸くずの混入
が防止できるという効果もある。

【００１２】本発明において、変性血液成分除去用プレ
フィルターは合成繊維、半合成繊維、再生人造繊維、無
機繊維、天然繊維の少なくとも１種からなり、この繊維
が容器に充填されているものである。この繊維としては
、変性血液成分を吸着する物質があり、変性蛋白のよう
な粘着物質を捕捉する性質のある繊維が好ましく、例え
ば、合成繊維にはポリエステル、ポリアミド、芳香族ポ
リアミド、ポリアクリロニトリル系繊維などがあり、半
合成繊維にはアセテート繊維、再生人造繊維にはキプラ
アンモニウムレーヨン、ビスコースレーヨンなど、天然
繊維には綿、絹、羊毛などがある。

【００１３】そして、繊維は直径が３〜６０μｍ、好ま
しくは４〜４０μｍのものであり、直径が３μｍ未満の
繊維では、均密に充填すると、繊維間隙が極小になり、
白血球および血小板を捕捉する目的としては効果がある
が、変性血液成分である凝集物、粘着物質がフィルター
の表面を中心に詰まって目詰まりを生じ、処理速度を極
端に遅くしてしまうことになる。一方、例えば６０μｍ
以上の繊維では、均密に充填すると、繊維間隙が大とな
り、凝集物、粘着物質は捕捉されず変性血液成分除去用
プレフィルターの役目をはたさないので、白血球除去フ
ィルターへ凝集物、粘着物質がそのまま移行して、白血
球除去フィルターが目詰まりし、処理速度を遅くしてし
まうことになる。

【００１４】容器への繊維の充填方法は、同一素材の繊
維を繊維径が大きいものから準じ並べて充填するか、ま
たは異種素材を交互に並べて充填するのが好ましい。こ
れは、変性血液成分が凝集物および粘着物質であるため
、親水および疎水素材で捕捉状態が異なり、共存状態が
より効果を発揮すると考えられる。

【００１５】変性血液成分除去用プレフィルターの嵩密
度は０．０５〜０．５ｇ／ｃｍ３　であり、０．０５ｇ
／ｃｍ３　より小さい場合は、例えば、長期保存血３週
間で５０ｍｌ／ｍｉｎ　という短時間処理になると、凝
集物、粘着物質が変性血液成分除去フィルターで捕捉さ
れずに漏れてくることになり、白血球除去フィルター部
で変性血液成分が目詰まりし、処理速度を遅くしてしま
うことになる。 また、０．５ｇ／ｃｍ３　より大きい場合は、繊維間隙
が小になり、変性血液成分である凝集物、粘着物質が変
性血液成分除去用プレフィルターで詰まって、処理速度
を極端に遅くしてしまうことになる。好ましくは０．１
〜０．４ｇ／ｃｍ３　の範囲である。

【００１６】変性血液成分除去用プレフィルター部に充
填されている繊維の充填厚さは、長期保存血の短時間処
理のためには０．１〜３０ｍｍ、好ましくは０．５〜２
０ｍｍ、さらに好ましくは１〜１０ｍｍの範囲である。 繊維の充填厚さが０．１ｍｍより薄くなると、変性血液
成分の捕捉が充分でなく、白血球除去フィルターが目詰
まりしてしまう、また、繊維の充填厚さが３０ｍｍより
厚くなると、圧力損失が大きくなり、処理速度が低下し
てくる。

【００１７】本発明に用いる白血球除去フィルターに使
用する直径３μｍ未満の繊維は、血液を変性させない合
成繊維であり、ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリエ
ステル、ポリアクリロニトリル系、ポリトリフルオロク
ロルエチレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリスチ
レン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどがある。そし
て、直径が３μｍ未満の繊維を作るには、一般的には難
しいが、溶融ブロー法（ｍｅｌｔ−ｂｌｏｗｉｎｇ　ｐ
ｒｏｃｅｓｓ）　があり、この方法により、本発明白血
球除去フィルターを構成する直径が３μｍ未満の繊維を
作成できる。しかし、本発明の前記繊維は、この方法に
限定されるものではない。

【００１８】本発明に用いる白血球除去フィルターを構
成する不織布は、繊維が繊維の互いのもつれによりその
位置に固定されているものであることが好ましく、この
ような不織布とするための繊維間の固定法としては、こ
れらの繊維の融点付近の熱を加えて熱固着させたり、接
着剤による固定法があり、これらは勿論、この本発明で
用いる不織布に使用できるが、本発明で用いる繊維のよ
うに繊維が細くなると、エアーブロー法、高圧蒸気ブロ
ー法などにより、繊維を互いにもつれさせるだけで繊維
間が固定され、このように作成した不織布は、例えば、
破壊するような大きな力を加えない限り安定であり、血
液処理にも充分耐えることができる。したがって、この
ような完全に固着させないエアーブロー法、高圧蒸気ブ
ロー法などによる単に繊維を互いにもつれさせるだけの
繊維の固定法も採用できる。

【００１９】本発明で使用する白血球除去フィルター用
の不織布を構成する繊維の直径は３μｍ未満であり、好
ましくは０．１μｍから３μｍ未満、さらに好ましくは
０．１μｍから２．０μｍの範囲である。繊維の直径が
０．１μｍより小さい場合は、実際には作成が難しいが
、嵩高になりすぎ、均密に充填すると繊維間隙が極小に
なり、白血球と共に赤血球も捕捉されてしまい、目詰ま
りを生じ、処理速度が極端に減少してしまうことになる
。繊維の直径が３μｍ以上の場合は、充填密度を上げて
、繊維間隙を小さくすることが必要であり、例えば、直
径が３μｍ以上の繊維では、０．５０ｇ／ｃｍ３　を超
える充填密度にしないと白血球の除去率が低下してしま
う。さらには、充填密度が高いため、高圧下で充填する
ことになり、繊維の破壊が生じてしまうことになる。ま
た、一定容積での血球浮遊液接触が小さいため、白血球
除去フィルターの容積が著しく大きくなってしまい、病
院では取扱いが難しい。

【００２０】本発明に用いる白血球除去フィルター用の
不織布の嵩密度は、０．１５ｇ／ｃｍ３　を超え０．５
０ｇ／ｃｍ３　の範囲にあることが必要であり、好まし
くは０．２０ｇ／ｃｍ３　から０．３０ｇ／ｃｍ３　の
範囲である。ここで、不織布の嵩密度とは、均一な不織
布１ｃｍ３　当りの、その重さを測定した値である。本
発明の不織布の密度が０．１５ｇ／ｃｍ３　以下の場合
は、例えば、５０ｍｌ／ｍｉｎ　という短時間処理にな
ると白血球が濡れてくる。不織布の密度が０．５０ｇ／
ｃｍ３　より大きくなると、繊維間隙が緻密になりすぎ
て、赤血球も捕捉されるようになり、赤血球の回収率が
低下してくる。

【００２１】本発明に用いる白血球除去フィルター用の
不織布の厚さは、血球浮遊液の短時間処理のためには１
ｍｍ〜３０ｍｍ、好ましくは１ｍｍ〜２０ｍｍ、さらに
好ましくは２ｍｍ〜１０ｍｍの範囲である。不織布の厚
さが１ｍｍより薄くなると、白血球の捕捉が充分ではな
く、白血球の捕捉率が低下してくる。また、不織布の厚
さが３０ｍｍより厚くなると、圧力損失が大きくなり、
処理速度が低下してくる。

【００２２】本発明に用いる白血球除去フィルター装置
に内蔵される変性血液成分除去用プレフィルターと白血
球除去フィルターとは、容器内に入口側から、この順に
積層される。両フィルターは、この順を守っている限り
、それぞれが一層であっても複数層の積層体であっても
よく、また、両フィルター間に別の、例えば各フィルタ
ーを支えるためのメッシュ状支持材などが介在されてい
てもよい。また、両フィルターは、実質的に等しい断面
積を持つことが好ましい。

【００２３】本発明に用いるフィルター部分の面積は、
血球浮遊液の短時間処理のためには、繊維間の間隙部を
含めた変性血液成分除去用プレフィルター側の導入され
た血球浮遊液と接する面の総面積で１０〜２０００ｃｍ
２　／血液５００ｍｌ、好ましくは２０〜１０００ｃｍ
２　／血液５００ｍｌ、さらに好ましくは３０〜３００
ｃｍ２　／血液５００ｍｌの範囲である。フィルター面
積が１０ｃｍ２　／血液５００ｍｌより小さいと、変性
血液成分除去用プレフィルターの表面が変性血液成分で
、また、白血球除去フィルターの表面が白血球でそれぞ
れ処理開始後、すぐに飽和されてくるため、処理速度が
遅くなってしまう。また、フィルター面積が２０００ｃ
ｍ２　／血液５００ｍｌより大きい場合は、白血球除去
処理後の白血球除去フィルター内の赤血球回収のための
生理食塩水が多量に必要であり、かつ、白血球除去フィ
ルター内に残る赤血球も多くなるため、赤血球の回収率
が低下してくる。

【００２４】以下、図面によって本発明に用いる白血球
除去用フィルター装置を説明する。図１および図２は、
本発明に用いる白血球除去用フィルター装置の一実施態
様を示し、図３および図４は、別の実施態様を示すもの
である。図１および図２において、１はフィルター装置
本体で、二つの丸盆状枠体２，２’が空胴部を形成する
ように、リング部材３で嵌合し、丸盆状枠体２，２’の
内面には、それぞれ多数の突条４，４’が形成され、そ
の内側に、メッシュ状支持材５，５’に挟まれて、血液
の入口側に変性血液成分除去フィルター６、血液の出口
側には白血球除去フィルター７が併置されている。８は
血液の入口を形成する血液流入管、９は血液の出口を形
成する血液流出管であり、１０，１０’はパッキングで
ある。そして、メッシュ状支持材５，５’は、変性血液
成分除去用プレフィルター６と白血球除去フィルター７
を構成する不織布の嵩密度を、それぞれ０．０５〜０．
５ｇ／ｃｍ３　および０．１５ｇ／ｃｍ３　を超え０．
５０ｇ／ｃｍ３　以下の範囲に保持している。

【００２５】図３および図４の白血球除去用フィルター
装置も、前記の白血球除去用フィルター装置とほぼ同様
であるが、血液流入管１５および血液流出管が丸盆状枠
体１１，１１’のそれぞれ中心部に設けられ、空洞部に
は、メッシュ状支持材１２，１２’に挟まれて、血液流
入管１５側に変性血液成分除去用プレフィルター１３、
血液流出管１６側に白血球除去フィルター１４が併置さ
れている。１７，１７’はパッキングである。

【００２６】メッシュ状支持材は、血液の流体が均一流
になるようにメッシュ状にしており、流路規制部の役割
もしている。血液は血液流入管８あるいは１５より導入
され、メッシュ状支持材５あるいは１２を通過すること
により、均一流となり、血球の会合状態も一部ほぐされ
ることになる。次に、変性血液成分除去用プレフィルタ
ー６あるいは１３に導入され、血小板、フイブリン、白
血球などよりなる粘着物質、凝集物質および蛋白変性物
質が捕捉され、血球の会合状態もよりほぐされることに
なり、長期保存血でも新鮮血と同様な血球および蛋白成
分となることができる。変性血液成分除去用プレフィル
ター６あるいは１３に導入後、白血球除去フィルター７
あるいは１４に導入される。白血球除去フィルター７あ
るいは１４では、白血球および血小板等が捕捉され、赤
血球および血漿が通過し、白血球除去濃厚赤血球の状態
となることができる。白血球除去濃厚赤血球となった血
液は、メッシュ状支持材５’あるいは１２’を通過する
ことにより、さらに均一流となり、血液流出管９あるい
は１６から回収されることになる。

【００２７】上記白血球除去フィルターの不織布は、繊
維表面の粘着性、荷電性、疎水性および繊維間隙などに
より、血液中の白血球、血小板等を選択的に捕捉し、赤
血球、血漿のみを通過させるもので、繊維表面の粘着性
、荷電性、疎水性の効果は、繊維間隙に大きく影響され
る。また、上記不織布は、直径３μｍ未満の繊維からな
る。該不織布は、繊維が熱溶着により、または繊維が均
一にからまっており、繊維が互いのもつれによりその位
置に固定された不織布であると、繊維間隙が固定され、
均密になることが可能であり、直径３μｍ未満の繊維の
みを充填した白血球除去フィルター装置、ないしは直径
３μｍ未満で単なる不織布を充填した白血球除去フィル
ター装置に比較して、より一層、血液のチャンネリング
防止、白血球および血小板の除去性能の向上、操作時間
の減少および糸クズ等ゴミの混入の防止に効果がある。

【００２８】さらに白血球、血小板等の捕捉性および赤
血球、血漿の通過性は、不織布の嵩密度に関係する。健
康人の全血、ＰＲＣ液、および牛の全血、ＰＲＣ液を使
用した詳細な試験結果によれば、不織布の嵩密度は、０
．１５ｇ／ｃｍ３　を超え０．５０ｇ／ｃｍ３　以下が
適し、ポリエステル糸からなる不織布の嵩密度は０．３
０ｇ／ｃｍ３　程度が好ましい。

【００２９】図５は、本発明に用いる白血球除去用フィ
ルター装置の一使用態様を示すものである。人体から採
取された血液は、採血バッグ１８から落差圧により、回
路１９を通り、白血球除去用フィルター装置２０に供給
される。白血球除去用フィルター装置２０に導入された
多量の血球浮遊液は、変性血液成分除去用プレフィルタ
ーおよび白血球除去フィルターにより、変性血液成分お
よび白血球、血小板は捕捉され、赤血球、血漿が主とな
る血液となり、回路２１を通過後、回収バッグ２２に供
給される。赤血球の回収率をより高める場合は、予め用
意した生理食塩水をバッグ２３より回路２４を通して白
血球除去用フィルター装置２０に導入し、回路および白
血球除去フィルターに一部残存している赤血球を回収で
きる。

【００３０】以上は、人体から採取された血液が採血バ
ッグに入っている例を示したが、直接、人体より血液を
採取し、循環ポンプ等により、白血球除去用フィルター
装置に導入し、白血球などを除去した赤血球、血漿が主
となる血液を再び体内にもどすこともできる。

【００３１】

【発明の効果】以上述べたように、本発明の白血球の選
択的除去方法を用いると、血液中の変性血液成分および
顆粒球、単球、リンパ球、血小板を容易な操作で、目詰
まりすることがなく短時間に除去することができ、白血
球がほとんど１００％除去された赤血球濃厚液を得るこ
とができる。この赤血球濃厚液を用いれば、全血輸血に
基づく組織適合抗原の違いによるＧＶＨ反応や、破壊さ
れた白血球成分による発熱、吐き気などの副作用が防止
でき、さらには、肺毛細管の閉塞等によるショックまた
は肺不全をも防止でき、貧血、心臓疾患等の患者の改善
に繋がると考えられる。以下、実施例を挙げて説明する
。

【００３２】

【実施例】

実施例１ 変性血液成分を除去するためのプレフィルターとして、
直径１２μｍのポリエステル繊維を溶融ブロー法で作成
した嵩密度０．３１ｇ／ｃｍ３　の熱固着した不織布を
、直径１１０ｍｍ、厚さ１．２ｍｍの円柱状に切断し、
変性血液成分を除去するプレフィルターとした。次いで
、白血球を捕捉除去する本フィルターとして、直径１．
０μｍのポリエステル繊維を溶融ブロー法で作成した嵩
密度０．１６ｇ／ｃｍ３　の繊維塊が繊維の互いのもつ
れによってその位置に固定されている不織布を、直径１
１０ｍｍ、厚さ２．０ｍｍの円柱状に切断し、白血球を
捕捉除去する本フィルターとした。

【００３３】上記のプレフィルターと本フィルターを円
柱状に重ね合わせ、有効内径１００ｍｍ（有効内径＝血
液または血球浮遊液が実際にフィルター表面に接触する
部分の径を示す。以下の実施例においても同じ）、内部
空間部の厚さが８ｍｍのカラム中に、血液の入口側にプ
レフィルター、血液の出口側に本フィルターがくるよう
に固定した。３００ｍｌの採血バッグ２個からそれぞれ
落差８００ｍｍの位置に、上記のプレフィルターと本フ
ィルターを入れたカラムをつけ、さらに８００ｍｍ下方
に１リットルの輸液バッグをつけて、処理した液を貯蔵
する回収バッグとし、その間をそれぞれ内径３ｍｍ、外
径５ｍｍのチューブで連結した処理装置を作成した。

【００３４】この処理装置の採血バッグ２個に、Ｏ型の
健康人のヘマトクリット４１％の８日間保存したＣＰＤ
液添加血液全血２００ｍｌずつを入れ、落差を利用した
自然落下法により、室温２５℃で１バッグずつ順番に白
血球除去処理を行った。次に、生理食塩水７０ｍｌを自
然落下法により、このプレフィルターと本フィルターの
入ったカラム内へ流し、カラム内の血球を回収した。

【００３５】その結果、この保存血液４００ｍｌの処理
時間は５分２９秒であり、処理速度にして７３ｍｌ／分
という高流速であった。また、この８日間保存血中の変
性血液成分の凝集物質（　Ｍｉｃｒｏａｇｇｒｅｇａｔ
ｅ　）が、処理前１５μｍ以上で、２バッグの平均が１
．０７×１０６　個／ｍｌ存在したのが、処理後は４，
３００個／ｍｌ（凝集物質の除去率９９．６％）であり
、また、白血球除去率は９８．８％、赤血球回収率は９
４％であった。

【００３６】比較例１ 直径１．０μｍのポリエステル繊維を溶融ブロー法で作
成した嵩密度０．１６ｇ／ｃｍ３　の繊維塊が繊維の互
いのもつれによってその位置に固定されている不織布を
、直径１１０ｍｍ、厚さ２．０ｍｍの円柱状に切断し、
白血球を捕捉除去するフィルターとし、有効内径１００
ｍｍ、内部空間部の厚さが６ｍｍのカラム中に固定した
。３００ｍｌの採血バッグ２個からそれぞれ落差８００
ｍｍの位置に、上記の白血球を捕捉除去するフィルター
を入れたカラムをつけ、さらに８００ｍｍ下方に１リッ
トルの輸液バッグをつけて、処理した液を貯蔵する回収
バッグとし、その間をそれぞれ内径３ｍｍ、外径５ｍｍ
のチューブで連結した処理装置を作成した。この処理装
置の採血バッグ２個に、Ｏ型の健康人のヘマトクリット
４１％の８日間保存したＣＰＤ液添加血液全血２００ｍ
ｌずつを入れ、落差を利用した自然落下法により、室温
２５℃で１バッグずつ順番に白血球除去処理を行った。

【００３７】その結果、この保存血中に発生している変
性血液成分が目詰まりを起こし、処理量３１９ｍｌ、処
理時間１時間２０分で血液が詰まって処理できなくなっ
た。この８日間保存血中の変性血液成分の凝集物質が、
処理前１５μｍ以上で、２バッグの平均が０．９８×１
０６　個／ｍｌ存在し、処理後は５，９００個／ｍｌ（
凝集物質の除去率９９．４％）であった。また、白血球
除去率は９８．５％であった。

【００３８】実施例１によれば、本発明の変性血液成分
除去フィルターと白血球除去フィルターを組み合わせた
ものは、白血球除去フィルターのみのものと比較して、
８日間の保存血でも血液が詰まることなく、７３ｍｌ／
分という高流速で処理ができて、しかも、白血球の除去
率はほとんど差がなかった。

【００３９】実施例２ 変性血液成分を除去するためのプレフィルターとして、
直径１５μｍのキュプラアンモニウムレーヨン繊維で嵩
密度０．１８ｇ／ｃｍ３　の繊維間を溶着させた不織布
を、直径７８ｍｍ、厚さ２．０ｍｍの円柱状に切断し、
変性血液成分を除去するプレフィルターの１層目とした
。次いで、直径１２μｍのポリエステル繊維を溶融ブロ
ー法により作成した嵩密度０．３１ｇ／ｃｍ３　の熱固
着した不織布を、直径７８ｍｍ、厚さ０．６ｍｍの円柱
状に切断し、同じものを２個作成した。そのうちの１個
を変性血液成分を除去するプレフィルターの２層目とし
、１層目の下に重ね合わせた。

【００４０】さらに、直径１５μｍのキュプラアンモニ
ウムレーヨン繊維で嵩密度０．１８ｇ／ｃｍ３　の繊維
間を溶着させた不織布を、直径７８ｍｍ、厚さ０．６５
ｍｍの円柱状に切断し、変性血液成分を除去するプレフ
ィルターの３層目とし、２層目の下に重ね合わせた。変
性血液成分を除去するプレフィルターの４層目として、
２層目作成時に作った２層目と全く同じものを使用し、
３層目の下に重ね合わせた。すなわち、上記の１層から
４層までを１層、２層、３層、４層の順に重ね合わせて
行き、実施例２の変性血液成分を除去するためのプレフ
ィルターとした。

【００４１】白血球を捕捉除去する本フィルターとして
、直径１．８μｍのポリエステル繊維を溶融ブロー法で
作成した嵩密度０．２３ｇ／ｃｍ３　の繊維塊が繊維の
互いのもつれによってその位置に固定されている不織布
を、直径７８ｍｍ、厚さ４ｍｍの円柱状に切断し、白血
球を捕捉除去する本フィルターとした。上記の４層のプ
レフィルターの４層目の下に本フィルターを重ね合わせ
、有効内径６８ｍｍ、内部空間部の厚さが１２ｍｍのカ
ラム中に、血液の入口側にプレフィルター、血液の出口
側に本フィルターがくるように固定した。３００ｍｌの
採血バッグ２個からそれぞれ落差８００ｍｍの位置に、
上記のプレフィルターと本フィルターを入れたカラムを
つけ、さらに８００ｍｍ下方に１リットルの輸液バッグ
をつけて、処理した液を貯蔵する回収バッグとし、その
間をそれぞれ内径３ｍｍ、外径５ｍｍのチューブで連結
した処理装置を作成した。

【００４２】この処理装置の採血バッグ２個に、Ａ型の
健康人のヘマトクリット４３％の２１日間保存したＣＰ
Ｄ液添加血液全血２５０ｍｌずつを入れ、落差を利用し
た自然落下法により、室温２５℃で１バッグずつ順番に
白血球除去処理を行った。次に、生理食塩水５０ｍｌを
自然落下法により、このプレフィルターと本フィルター
の入ったカラム内へ流し、カラム内の血球を回収した。

【００４３】その結果、この保存血液５００ｍｌの処理
時間は９分１３秒であり、処理速度にして５４ｍｌ／分
という高流速であった。また、２１日間保存血中の変性
血液成分の凝集物質が、処理前１５μｍ以上で、２バッ
グの平均が３．４１×１０６　個／ｍｌ存在したのが、
処理後は２７，２００個／ｍｌ（凝集物質の除去率９９
．２％）であり、また、白血球除去率は９８．２％、赤
血球回収率は９５．８％であった。

【００４４】比較例２ 直径が１．８μｍのポリエステル繊維を溶融ブロー法で
作成した嵩密度０．２３ｇ／ｃｍ３　の繊維塊が繊維の
互いのもつれによってその位置に固定されている不織布
を、直径７８ｍｍ、厚さ４ｍｍの円柱状に切断し、白血
球を捕捉除去するフィルターとし、有効内径６８ｍｍ、
内部空間部の厚さが８ｍｍのカラム中に固定した。３０
０ｍｌの採血バッグ２個からそれぞれ落差８００ｍｍの
位置に、上記の白血球を捕捉除去するフィルターを入れ
たカラムをつけ、さらに８００ｍｍ下方に１リットルの
輸液バッグをつけて、処理した液を貯蔵する回収バッグ
とし、その間をそれぞれ内径３ｍｍ、外径５ｍｍのチュ
ーブで連結した処理装置を作成した。この処理装置の採
血バッグ２個に、Ａ型の健康人のヘマトクリット４３％
の２１日間保存したＣＰＤ液添加血液全血２５０ｍｌず
つを入れ、落差を利用した自然落下法により、室温２５
℃で１バッグずつ順番に白血球除去処理を行った。

【００４５】その結果、この保存血中に発生している変
性血液成分が目詰まりを起こし、処理量１７５ｍｌ、処
理時間４１分で血液が詰まって処理できなくなった。こ
の２１日間保存血中の変性血液成分の凝集物質が、処理
前１５μｍ以上で、２バッグの平均が３．２９×１０６
　個／ｍｌ存在し、処理後は２９，６００個／ｍｌ（凝
集物質の除去率９９．１％）であった。また、白血球除
去率は９８．１％であった。

【００４６】実施例２によれば、本発明の変性血液成分
除去フィルターと白血球除去フィルターを組み合わせた
ものは、白血球除去フィルターのみのものと比較して、
２１日間の保存血でも血液が詰まることなく、５４ｍｌ
／分という高流速で処理ができて、しかも、白血球の除
去率は変わらなかった。

【００４７】実施例３ 変性血液成分を除去するためのプレフィルターとして、
直径４．６μｍのポリエステル繊維を溶融ブロー法で作
成した嵩密度０．１８ｇ／ｃｍ３　の繊維塊が繊維の互
いのもつれによってその位置に固定されている不織布を
、直径２１０ｍｍ、厚さ０．２５ｍｍの円柱状に切断し
、変性血液成分を除去するプレフィルターとした。次い
で、白血球を捕捉除去する本フィルターとして、直径０
．７μｍのポリエステル繊維を溶融ブロー法で作成した
嵩密度０．１５ｇ／ｃｍ３　の繊維塊が繊維の互いのも
つれによってその位置に固定されている不織布を、直径
２１０ｍｍ、厚さ１．５ｍｍの円柱状に切断し、白血球
を捕捉除去する本フィルターとした。

【００４８】上記のプレフィルターと本フィルターを円
柱状に重ね合わせ、有効内径２００ｍｍ、内部空間部の
厚さが６ｍｍのカラム中に、血液の入口側にプレフィル
ター、血液の出口側に本フィルターがくるように固定し
た。３００ｍｌの採血バッグ２個からそれぞれ落差８０
０ｍｍの位置に、上記のプレフィルターと本フィルター
を入れたカラムをつけ、さらに８００ｍｍ下方に１リッ
トルの輸液バッグをつけて、処理した液を貯蔵する回収
バッグとし、その間をそれぞれ内径３ｍｍ、外径５ｍｍ
のチューブで連結した処理装置を作成した。

【００４９】この処理装置の採血バッグ２個に、Ａ型の
健康人のヘマトクリット３５％の７日間保存したＡＣＤ
−Ａ液添加血液全血２００ｍｌずつを入れ、落差を利用
した自然落下法により、室温２５℃で１バッグずつ順番
に白血球除去処理を行った。次に、生理食塩水１９０ｍ
ｌを自然落下法により、この白血球除去フィルターに流
し、フィルター内の赤血球を回収した。

【００５０】その結果、この保存血液４００ｍｌの処理
時間は４分４７秒であり、処理速度にして８４ｍｌ／分
という高流速であった。また、この７日間保存血中の変
性血液成分の凝集物質が、処理前１５μｍ以上で、２バ
ッグの平均が１．０２×１０６　個／ｍｌ存在したのが
、処理後は０であり、また、白血球除去率は９９．６％
、赤血球回収率は８６．６％であった。

【００５１】比較例３ 直径が０．７μｍのポリエステル繊維を溶融ブロー法で
作成した嵩密度０．１８ｇ／ｃｍ３　の繊維塊が繊維の
互いのもつれによってその位置に固定されている不織布
を、直径２１０ｍｍ、厚さ１．５ｍｍの円柱状に切断し
、白血球を捕捉除去するフィルターとし、有効内径２１
０ｍｍ、内部空間部の厚さが６ｍｍのカラム中に固定し
た。３００ｍｌの採血バッグ２個からそれぞれ落差８０
０ｍｍの位置に、上記の白血球を捕捉除去するフィルタ
ーを入れたカラムをつけ、さらに８００ｍｍ下方に１リ
ットルの輸液バッグをつけて、処理した液を貯蔵する回
収バッグとし、その間をそれぞれ内径３ｍｍ、外径５ｍ
ｍのチューブで連結した処理装置を作成した。この処理
装置の採血バッグ２個に、Ａ型の健康人のヘマトクリッ
ト３５％の７日間保存したＡＣＤ−Ａ液添加血液全血２
００ｍｌずつを入れ、落差を利用した自然落下法により
、室温２５℃で１バッグずつ順番に白血球除去処理を行
った。

【００５２】その結果、この保存血中に発生している変
性血液成分が目詰まりを起こし、処理量４０７ｍｌ、処
理時間１時間３０分で、血液が詰まって処理できなくな
った。この７日間保存血中の変性血液成分の凝集物質が
、処理前１５μｍ以上で、２バッグの平均が０．９５×
１０６　個／ｍｌ存在し、処理後は０であった。また、
白血球除去率は９９．５％であった。

【００５３】本発明の変性血液成分除去用プレフィルタ
ーと白血球除去フィルターを組み合わせたものは、白血
球除去フィルターのみのものと比較して、７日間の保存
血で血液が詰まることなく、８４ｍｌ／分という高流速
で処理ができて、しかも、白血球の除去率はほとんど差
がなかった。

【００５４】実施例４ 変性血液成分を除去するためのプレフィルターとして、
直径１４μｍのポリエステル繊維を嵩密度０．２９ｇ／
ｃｍ３　の熱固着した不織布を、直径１３０ｍｍ、厚さ
４ｍｍの円柱状に切断し、変性血液成分を除去するプレ
フィルターの１層目とした。次いで、直径７．６μｍの
ポリプロピレン繊維を溶融ブロー法により作成した嵩密
度０．２２ｇ／ｃｍ３　の熱固着した不織布を、直径１
３０ｍｍ、厚さ０．１５ｍｍの円柱状に切断し、変性血
液成分を除去するプレフィルターの２層目とし、１層目
の下に重ね合わせた。

【００５５】白血球を捕捉除去する本フィルターとして
、直径が１．４μｍのポリアミド繊維（ナイロン６６）
を溶融ブロー法で作成した嵩密度０．１８ｇ／ｃｍ３　
の不織布を製造する際に、溶融ブロー時２５０℃で０．
５秒間熱処理し、繊維の互いにもつれ合った接点を熱固
着した不織布を作成した。この不織布を直径１３０ｍｍ
、厚さ３ｍｍの円柱状に切断し、白血球を捕捉除去する
本フィルターとした。上記の２層のプレフィルターの２
層目の下に本フィルターを重ね合わせ、有効内径１２０
ｍｍ、内部空間部の厚さが８ｍｍのカラム中に、血液の
入口側にプレフィルター、血液の出口側に本フィルター
がくるように固定した。３００ｍｌの採血バッグ２個か
らそれぞれ落差８００ｍｍの位置に、上記のプレフィル
ターと本フィルターを入れたカラムをつけ、さらに８０
０ｍｍ下方に１リットルの輸液バッグをつけて、処理し
た液を貯蔵する回収バッグとし、その間をそれぞれ内径
３ｍｍ、外径５ｍｍのチューブで連結した処理装置を作
成した。

【００５６】この処理装置の採血バッグ２個に、Ｂ型の
健康人のヘマトクリット６４％のＣＰＤ液添加血液濃厚
液（遠心分離法により１部血漿を除去したもの）の１７
日間保存した血液２００ｍｌずつを入れ、落差を利用し
た自然落下法により、室温２５℃で１バッグずつ順番に
白血球除去処理を行った。次に、生理食塩水１００ｍｌ
を自然落下法により、このプレフィルターと本フィルタ
ーの入ったカラム内へ流し、カラム内の血球を回収した
。

【００５７】その結果、この保存血液４００ｍｌの処理
時間は５分１６秒であり、処理速度にして７６ｍｌ／分
という高流速であった。また、この１７日間保存血中の
変性血液成分の凝集物質が、処理前１５μｍ以上で、２
バッグの平均が２．８１×１０６　個／ｍｌ存在したの
が、処理後は１４，０００個／ｍｌ（凝集物質の除去率
９９．５％）であり、また、白血球除去率は９８．８％
、赤血球回収率は９１．８％であった。

【００５８】比較例４ 直径が１．４μｍのポリアミド繊維（ナイロン６６）を
溶融ブロー法で作成した嵩密度０．１８ｇ／ｃｍ３　の
不織布を製造する際に、溶融ブロー時に２５０℃で０．
５秒間熱処理し、繊維の互いにもつれ合った接点を熱固
着した不織布を作成した。この不織布を、直径１３０ｍ
ｍ、厚さ３ｍｍの円柱状に切断し、白血球を捕捉除去す
るフィルターとし、有効内径１２０ｍｍ、内部空間部の
厚さが７ｍｍのカラム中に固定した。３００ｍｌの採血
バッグ２個からそれぞれ落差８００ｍｍの位置に、上記
の白血球を捕捉除去するフィルターを入れたカラムをつ
け、さらに８００ｍｍ下方に１リットルの輸液バッグを
つけて、処理した液を貯蔵する回収バッグとし、その間
をそれぞれ内径３ｍｍ、外径５ｍｍのチューブで連結し
た処理装置を作成した。この処理装置の採血バッグ２個
に、Ｂ型の健康人のヘマトクリット６４％のＣＰＤ液添
加血液濃厚液（遠心分離法により１部血漿を除去したも
の）の１７日間保存した血液２００ｍｌずつを入れ、落
差を利用した自然落下法により、室温２５℃で１バッグ
ずつ順番に白血球除去処理を行った。

【００５９】その結果、この保存血中に発生している変
性血液成分が目詰まりを起こし、処理量２４３ｍｌ、処
理時間５０分で血液が詰まって処理できなくなった。こ
の１７日間の保存血中の変性血液成分の凝集物質が、処
理前１５μｍ以上で、２バッグの平均が０．８９×１０
６　個／ｍｌ存在し、処理後は５，３００個／ｍｌ（凝
集物質の除去率９９．４％）であった。また、白血球除
去率は９８．９％であった。本発明の変性血液成分除去
用プレフィルターと白血球除去フィルターを組み合わせ
たものは、白血球除去フィルターのみのものと比較して
、１７日間の保存血で血液が詰まることなく、７６ｍｌ
／分という高流速で処理ができて、しかも、白血球の除
去率もほとんど差がなかった。

【００６０】実施例５ 変性血液成分を除去するためのプレフィルターとして、
直径３２μｍのポリエステル繊維を溶融ブロー法で作成
した嵩密度０．１８ｇ／ｃｍ３　の樹脂固着した不織布
を、直径９０ｍｍ、厚さ３ｍｍの円柱状に切断し、変性
血液成分を除去するプレフィルターの１層目とした。次
いで、直径１６μｍのポリエステル繊維を溶融ブロー法
により作成した嵩密度０．２０ｇ／ｃｍ３　の熱固着し
た不織布を、直径９０ｍｍ、厚さ０．４ｍｍの円柱状に
切断し、変性血液成分を除去するプレフィルターの２層
目とし、１層目の下に重ね合わせた。

【００６１】さらに、直径１４μｍのポリエステル繊維
を溶融ブロー法により作成した嵩密度０．２５ｇ／ｃｍ
３　の熱固着した不織布を、直径９０ｍｍ、厚さ１．０
ｍｍの円柱状に切断し、変性血液成分を除去するプレフ
ィルターの３層目とし、２層目の下に重ね合わせた。直
径１２μｍのポリエステル繊維を溶融ブロー法により作
成した嵩密度０．３１ｇ／ｃｍ３　の熱固着した不織布
を、直径９０ｍｍ、厚さ１．８ｍｍの円柱状に切断し、
変性血液成分を除去するプレフィルターの４層目とし、
３層目の下に重ね合わせた。すなわち、上記の１層から
４層までを１層、２層、３層、４層の順に重ね合わせて
行き、実施例５の変性血液成分を除去するためのプレフ
ィルターとした。

【００６２】白血球を捕捉除去する本フィルターとして
、直径２．６μｍのポリエステル繊維を溶融ブロー法で
作成した嵩密度０．３５ｇ／ｃｍ３　の繊維塊が繊維の
互いのもつれによってその位置に固定されている不織布
を、直径９０ｍｍ、厚さ４ｍｍの円柱状に切断し、白血
球を捕捉除去する本フィルターとした。上記の４層のプ
レフィルターの４層目の下に本フィルターを重ね合わせ
、有効内径８０ｍｍ、内部空間部の厚さが１５ｍｍのカ
ラム中に、血液の入口側にプレフィルター、血液の出口
側に本フィルターがくるように固定した。３００ｍｌの
採血バッグ２個からそれぞれ落差８００ｍｍの位置に、
上記のプレフィルターと本フィルターを入れたカラムを
つけ、さらに８００ｍｍ下方に１リットルの輸液バッグ
をつけて、処理した液を貯蔵する回収バッグとし、その
間をそれぞれ内径３ｍｍ、外径５ｍｍのチューブで連結
した処理装置を作成した。

【００６３】この処理装置の採血バッグ２個に、Ｂ型の
健康人のヘマトクリット３８％の２１日間保存したＣＰ
Ｄ液添加血液全血２５０ｍｌずつを入れ、落差を利用し
た自然落下法により、４℃に保冷した上記保存血をとり
出し、ただちに室温１０℃で、１バッグずつ順番に白血
球除去処理を行った。次に、生理食塩水９０ｍｌを自然
落下法により、このプレフィルターと本フィルターの入
ったカラム内へ流し、カラム内の血球を回収した。

【００６４】その結果、この保存血液５００ｍｌの処理
時間は７分５６秒であり、処理速度にして６３ｍｌ／分
という高流速であった。また、この２１日間保存血中の
変性血液成分の凝集物質が、処理前１５μｍ以上で、２
バッグの平均が３．５２×１０６　個／ｍｌ存在したの
が、処理後は４２，２００個／ｍｌ（凝集物質の除去率
９８．８％）であり、また、白血球除去率は９７．６％
、赤血球回収率は９５．１％であった。

【００６５】比較例５ 直径が２．６μｍのポリエステル繊維を溶融ブロー法で
作成した嵩密度０．３５ｇ／ｃｍ３　の繊維塊が繊維の
互いのもつれによってその位置に固定されている不織布
を、直径９０ｍｍ、厚さ４ｍｍの円柱状に切断し、白血
球を捕捉除去するフィルターとし、有効内径８０ｍｍ、
内部空間部の厚さが８ｍｍのカラム中に固定した。３０
０ｍｌの採血バッグ２個からそれぞれ落差８００ｍｍの
位置に、上記の白血球を捕捉除去するフィルターを入れ
たカラムをつけ、さらに８００ｍｍ下方に１リットルの
輸液バッグをつけて、処理した液を貯蔵する回収バッグ
とし、その間をそれぞれ内径３ｍｍ、外径５ｍｍのチュ
ーブで連結した処理装置を作成した。この処理装置の採
血バッグ２個に、Ｂ型の健康人のヘマトクリット３８％
の２１日間保存したＣＰＤ液添加血液全血２５０ｍｌず
つを入れ、落差を利用した自然落下法により、４℃に保
冷した上記保存血をとり出し、ただちに室温１０℃で、
１バッグずつ順番に白血球除去処理を行った。

【００６６】その結果、この保存血中に発生している変
性血液成分が目詰まりを起こし、処理量１８９ｍｌ、処
理時間５３分で、血液が詰まって処理できなくなった。 この２１日間保存血中の変性血液成分の凝集物質が、処
理前１５μｍ以上で、２バッグの平均が３．３５×１０
６　個／ｍｌ存在したのが、処理後は５０，２００個／
ｍｌ（凝集物質の除去率９８．５％）であった。また、
白血球除去率は９６．８％であった。

【００６７】本発明の変性血液成分除去用プレフィルタ
ーと白血球除去フィルターを組み合わせたものは、白血
球除去フィルターのみのものと比較して、２１日間の保
存血でも血液が詰まることなく、６３ｍｌ／分という高
流速で処理ができて、しかも、白血球の除去率もほとん
ど差がなかった。

【００６８】比較例６ 変性血液成分を除去するためのプレフィルターとして、
直径１４μｍのポリエステル繊維を嵩密度０．２９ｇ／
ｃｍ３　の熱固着した不織布を、直径１３０ｍｍ、厚さ
４ｍｍの円柱状に切断し、これを１層目とし、次いで、
直径７．６μｍのポリプロピレン繊維を嵩密度０．２２
ｇ／ｃｍ３　の熱固着した不織布を、直径１３０ｍｍ、
厚さ０．１５ｍｍの円柱状に切断し、これを２層目とし
、１層目の下に重ね合わせたものを用いた。

【００６９】白血球を捕捉除去する本フィルターとして
、直径が３．８μｍのポリエステル繊維からなる嵩密度
０．１８ｇ／ｃｍ３　の不織布を直径１３０ｍｍ、厚さ
３ｍｍの円柱状に切断したものを用いた。上記２層のプ
レフィルターの２層目の下に本フィルターを重ね合わせ
、有効内径１２０ｍｍ、内部空間部の厚さが８ｍｍのカ
ラム中に、血液の入口側にプレフィルター、血液の出口
側に本フィルターがくるように固定した。３００ｍｌの
採血バッグ２個からそれぞれ落差８００ｍｍの位置に、
上記のプレフィルターと本フィルターを入れたカラムを
つけ、さらに８００ｍｍ下方に１リットルの輸液バッグ
をつけて、処理した液を貯蔵する回収バッグとし、その
間をそれぞれ内径３ｍｍ、外径５ｍｍのチューブで連結
した血液の処理装置を作成した。

【００７０】この血液処理装置の採血バッグ２個に、健
康人の血液から調整したヘマトクリット６２％のＣＰＤ
加濃厚赤血球（遠心分離法により１部の血漿を除去した
もの）を１７日間保存したものを２００ｍｌずつを入れ
、落差を利用した自然落下法により、室温２５℃で１バ
ッグずつ順番に白血球除去処理を行った。次に、生理食
塩水１００ｍｌを自然落下法により、このプレフィルタ
ーと本フィルターの入ったカラム内へ流し、カラム内の
血液を回収した。

【００７１】その結果、この保存血液４００ｍｌの処理
時間は４分３９秒であり、処理速度にして８６ｍｌ／分
と速かったが、白血球除去率は７１％と低かった。１５
μｍ以上の変性血液成分凝集物質除去率は９９．１％、
赤血球回収率は９２．４％であった。

【００７２】比較例７ 変性血液成分を除去するためのプレフィルターとして、
直径１４μｍのポリエステル繊維を嵩密度０．２９ｇ／
ｃｍ３　の熱固着した不織布を、直径１３０ｍｍ、厚さ
４ｍｍの円柱状に切断し、これを１層目とし、次いで、
直径７．６μｍのポリプロピレン繊維を嵩密度０．２２
ｇ／ｃｍ３　の熱固着した不織布を、直径１３０ｍｍ、
厚さ０．１５ｍｍの円柱状に切断し、これを２層目とし
、１層目の下に重ね合わせたものを用いた。

【００７３】白血球を捕捉除去する本フィルターとして
、直径が１．４μｍのポリエステル繊維からなる嵩密度
０．０５ｇ／ｃｍ３　の不織布を直径１３０ｍｍ、厚さ
３ｍｍの円柱状に切断したものを用いた。上記２層のプ
レフィルターの２層目の下に本フィルターを重ね合わせ
、有効内径１２０ｍｍ、内部空間部の厚さが８ｍｍのカ
ラム中に、血液の入口側にプレフィルター、血液の出口
側に本フィルターがくるように固定した。３００ｍｌの
採血バッグ２個からそれぞれ落差８００ｍｍの位置に、
上記のプレフィルターと本フィルターを入れたカラムを
つけ、さらに８００ｍｍ下方に１リットルの輸液バッグ
をつけて、処理した液を貯蔵する回収バッグとし、その
間をそれぞれ内径３ｍｍ、外径５ｍｍのチューブで連結
した処理装置を作成した。

【００７４】この血液処理装置の採血バッグ２個に、健
康人の血液から調整したヘマトクリット６５％のＣＰＤ
加濃厚赤血球（遠心分離法により１部の血漿を除去した
もの）を１７日間保存したものを２００ｍｌずつを入れ
、落差を利用した自然落下法により、室温２５℃で１バ
ッグずつ順番に白血球除去処理を行った。次に、生理食
塩水１００ｍｌを自然落下法により、このプレフィルタ
ーと本フィルターの入ったカラム内へ流し、カラム内の
血液を回収した。

【００７５】その結果、この保存血液４００ｍｌの処理
時間は４分０２秒であり、処理速度にして９９ｍｌ／分
と速かったが、白血球除去率は６０％と低かった。１５
μｍ以上の変性血液成分凝集物質除去率は９８．７％、
赤血球回収率は９３．６％であった。

【００７６】比較例８ 変性血液成分を除去するためのプレフィルターとして、
直径１４μｍのポリエステル繊維を嵩密度０．２９ｇ／
ｃｍ３　の熱固着した不織布を、直径１３０ｍｍ、厚さ
４ｍｍの円柱状に切断し、これを１層目とし、次いで、
直径７．６μｍのポリプロピレン繊維を嵩密度０．２２
ｇ／ｃｍ３　の熱固着した不織布を、直径１３０ｍｍ、
厚さ０．１５ｍｍの円柱状に切断し、これを２層目とし
、１層目の下に重ね合わせたものを用いた。

【００７７】白血球を捕捉除去する本フィルターとして
、直径が１．４μｍのポリエステル繊維からなる嵩密度
０．６０ｇ／ｃｍ３　の不織布を直径１３０ｍｍ、厚さ
３ｍｍの円柱状に切断したものを用いた。上記２層のプ
レフィルターの２層目の下に本フィルターを重ね合わせ
、有効内径１２０ｍｍ、内部空間部の厚さが８ｍｍのカ
ラム中に、血液の入口側にプレフィルター、血液の出口
側に本フィルターがくるように固定した。３００ｍｌの
採血バッグ２個からそれぞれ落差８００ｍｍの位置に、
上記のプレフィルターと本フィルターを入れたカラムを
つけ、さらに８００ｍｍ下方に１リットルの輸液バッグ
をつけて、処理した液を貯蔵する回収バッグとし、その
間をそれぞれ内径３ｍｍ、外径５ｍｍのチューブで連結
した処理装置を作成した。

【００７８】この血液処理装置の採血バッグ２個に、健
康人の血液から調整したヘマトクリット６７％のＣＰＤ
加濃厚赤血球（遠心分離法により１部の血漿を除去した
もの）を１７日間保存したものを２００ｍｌずつを入れ
、落差を利用した自然落下法により、室温２５℃で１バ
ッグずつ順番に白血球除去処理を行おうとした。しかし
、フィルターが詰まってしまい、血液は１５ｍｌしか得
られなかった。得られた血液だけについて分析したとこ
ろ、白血球除去率は１００％、１５μｍ以上の変性血液
成分凝集物質除去率は１００％、赤血球回収率は４％で
あった。

【００７９】比較例９ 変性血液成分を除去するためのプレフィルターを用いず
に、白血球を捕捉除去する本フィルターとして、直径が
８μｍのポリエステル繊維からなる嵩密度０．１８ｇ／
ｃｍ３　の不織布を、直径１３０ｍｍ、厚さ３ｍｍの円
柱状に切断したものを用いた。本フィルターを有効内径
１２０ｍｍ、内部空間部の厚さが８ｍｍのカラム中に固
定した。３００ｍｌの採血バッグ２個からそれぞれ落差
８００ｍｍの位置に、上記の本フィルターを入れたカラ
ムをつけ、さらに８００ｍｍ下方に１リットルのバッグ
をつけて、処理した血液を貯蔵する回収バッグとし、そ
の間を内径３ｍｍ、外径５ｍｍのチューブで連結して血
液の処理装置を作成した。

【００８０】この血液処理装置の採血バッグ２個に、健
康人の血液から調整したヘマトクリット５８％のＣＰＤ
加濃厚赤血球（遠心分離法により１部の血漿を除去した
もの）を１７日間保存したものを２００ｍｌずつを入れ
、落差を利用した自然落下法により、室温２５℃で１バ
ッグずつ順番に白血球除去処理を行った。次に、生理食
塩水１００ｍｌを自然落下法により、プレフィルターと
本フィルターの入ったカラム内へ流し、カラム内の血液
を回収した。

【００８１】その結果、この保存血液４００ｍｌの処理
時間は５４分１８秒であり、処理速度にして１．８ｍｌ
／分とやや遅めであるが、４００ｍｌの血液を全て処理
することができた。１５μｍ以上の変性血液成分凝集物
質除去率は９８．９％、赤血球回収率は９１．３％であ
ったが、白血球除去率は６１％と低かった。各実施例お
よび比較例の結果をまとめて表１に示す。

【００８２】

【表１】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の白血球除去用フィルター装置の一実施
態様を示す正面図である。

【図２】本発明の白血球除去用フィルター装置の一実施
態様を示す縦断側面図である。

【図３】別の実施態様を示す正面図である。

【図４】別の実施態様を示す縦断側面図である。

【図５】本発明の白血球除去用フィルター装置の使用態
様を示す説明図である。

【符号の説明】

１　　　　　　　　フィルター装置本体２，２’　　丸
盆状枠体 ３　　　　　　　　リング部材 ４，４’　　突状 ５，５’　　メッシュ状支持材 ６　　　　　　　　変性血液成分除去用プレフィルター
７　　　　　　　　白血球除去フィルター８　　　　　
　　　血液流入管 ９　　　　　　　　血液流出管 １０，１０’　　パッキング １１，１１’　　丸盆状枠体 １２，１２’　　メッシュ状支持材 １３　　　　　　変性血液成分除去用プレフィルター１
４　　　　　　白血球除去フィルター１５　　　　　　
血液流入管 １６　　　　　　血液流出管 １７，１７’　　　　パッキング １８　　　　　　採血バッグ １９　　　　　　回路 ２０　　　　　　白血球除去用フィルター装置２１　　
　　　　回路 ２２　　　　　　回収バッグ ２３　　　　　　生理食塩水バッグ ２４　　　　　　回路 ２５　　　　　　回収バッグ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 血液の入口と出口を有する容器内に、繊維の直径が３〜
   ６０μｍで、嵩密度が０．０５〜０．５ｇ／ｃｍ３　で
   ある繊維塊を少なくとも１種類含む変性血液成分除去用
   プレフィルターと、繊維の直径が３μｍ未満で、嵩密度
   が０．１５ｇ／ｃｍ３　を超え０．５ｇ／ｃｍ３　以下
   の不織布からなる白血球除去フィルターとを積層させて
   なる白血球除去用フィルター装置に、血球浮遊液を前記
   入口から導入し、前記出口側へ通過させることにより前
   記血球浮遊液中の変性血液成分を前記変性血液成分除去
   用プレフィルターに、また、白血球を実質的に全て前記
   不織布にそれぞれ捕捉させることを特徴とする白血球浮
   遊液中の白血球の選択的除去方法。