JP2013123385A - 骨髄液処理方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】冷蔵温度で保存された骨髄液を、骨髄液から必要細胞を実質的に捕捉し、不要細胞を実質的に通過させる細胞分離材を充填した骨髄液流入部と骨髄液流出部を有する容器に、当該骨髄液を細胞処理温度で通液し、不要細胞含有液を当該容器から導出させ、次に当該必要細胞を捕捉した当該容器に細胞分離溶液を通液して容器に捕捉された当該必要細胞を回収する骨髄液処理方法において、
冷蔵温度が1〜6℃であり、かつ細胞処理温度が29〜40℃であることを特徴とする骨髄液処理方法。
【選択図】なし
Description
しかし、間葉系幹細胞を含む骨髄液は、細胞、タンパク質、及び脂質等の様々な因子を含んだ体液であるので、温度変化等の外的環境によって性質が変わりやすいという特徴を有する。そのため、骨髄液から細胞を分離・濃縮する際の処理温度や骨髄液の状態によっては細胞分離材の目詰まりを生じ、それと共に細胞分離材を充填した容器内圧が上昇する恐れがある。さらに、目詰まりが生じると細胞分離効率や回収効率が低下し、また、容器内圧上昇による細胞捕捉のダメージも懸念される。
すなわち、本発明が提供するのは以下の通りである。
(1)冷蔵温度で保存された骨髄液を、骨髄液から必要細胞を実質的に捕捉し、不要細胞を実質的に通過させる細胞分離材を充填した骨髄液流入部と骨髄液流出部を有する容器に、当該骨髄液を細胞処理温度で通液し、不要細胞含有液を当該容器から導出させ、次に当該必要細胞を捕捉した当該容器に細胞分離溶液を通液して容器に捕捉された当該必要細胞を回収する骨髄液処理方法において、
冷蔵温度が1〜6℃であり、かつ細胞処理温度が29〜40℃であることを特徴とする骨髄液処理方法。
(2)骨髄液から必要細胞を実質的に捕捉し、不要細胞を実質的に通過させる細胞分離材を充填した骨髄液流入部と骨髄液流出部を有する容器に、当該骨髄液流入部側の圧力を100mmHg以下で通液することを特徴とする請求項1記載の骨髄液処理方法。
(3)必要細胞が間葉系幹細胞であることを特徴とする請求項1または2に記載の骨髄液処理方法。
本発明において必要細胞とは、増殖し分化能を有する幹細胞をいう。具体的には、間葉系幹細胞、骨髄ストローマ細胞など多分化能を有する細胞を挙げることができる。その中でも、臨床例が豊富で実用性が高いという観点から間葉系幹細胞が好ましい。間葉系幹細胞とは、体液中から分離され、増殖を繰り返す能力を有し、下流の細胞系譜への分化が可能な細胞を指し、分化誘導因子により骨芽細胞や軟骨細胞、血管内皮細胞、歯周靱帯繊維芽細胞等へ分化する細胞である。
2種以上の合成高分子を組み合わせて繊維とする場合の繊維の形態としては、1本の繊維が異成分同士の合成高分子よりなる繊維、あるいは異成分同士が剥離分割した分割繊維でもよい。また成分の異なる合成高分子単独よりなる繊維をそれぞれ複合化した形態でもよい。ここでいう複合化とは、特に限定は無く、2種以上の繊維が混在した状態より構成される形態、あるいは合成高分子単独よりなる形態をそれぞれ張り合わせたもの等が挙げられる。
当該細胞分離材は、液流入部と液流出部を有する容器に充填することが好ましいが、このとき、細胞分離材は、圧縮せず容器に充填しても良いし、圧縮して容器に充填しても良い。細胞分離材は、前期の条件を満たせば、形状等の限定はない。好ましい具体例としては、不織布状の細胞分離材を、充填した状態での厚み0.1〜5cm程度で、容器に充填して得られたもの等が挙げられる。この場合、細胞分離材の厚み(充填した状態で)は、0.1cm〜5cmが好ましいが、目的とする必要細胞の回収率及び赤血球等の除去効率の点から、0.15〜4cmがより好ましく、さらに好ましくは0.2〜3cmである。細胞分離フィルターの厚みが、前記厚みに満たない時は、細胞分離材を積層して条件を満たしても良い。
さらに目的とする幹細胞の細胞分離材への付着性を向上させるために、細胞付着性のタンパク質や、目的とする幹細胞上の発現されている特異的抗原に対する抗体を、細胞分離フィルター上に固定化しても良い。細胞付着性のタンパク質としては、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、コラーゲン等が挙げられる。抗体としては、CD73、CD90、CD105、CD166、CD140a、CD271等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、固定化方法としては、例えば、一般的なタンパク質の固定化方法である、臭化シアン活性化法、酸アジド誘導体法、縮合試薬法、ジアゾ法、アルキル化法、架橋法等の方法を任意に用いることが出来る。
本発明における必要細胞を実質的に捕捉するとは、骨髄液中の必要細胞を60%以上捕捉することをいい、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。または、不必要細胞を実質的に通過させるとは、骨髄液中の不要細胞を50%以上通過することをいい、好ましくは60%以上、さらに好ましくは65%以上、もっとも好ましいのは70%以上である。
本発明において冷蔵温度にする方法として、冷蔵温度に設定した冷蔵庫による保管、ウォーターバスによる保管、及びドライアイスによる保管等が挙げられる。汎用性から冷蔵庫で保存することが好ましい。冷蔵温度としては、1℃以上6℃以下が好ましく、より好ましくは3℃以上5℃以下が好ましい。冷蔵温度が1℃未満では細胞は死滅し、6℃を超えて保存すると細菌が繁殖しコンタミネーションを起こす可能性がある。
本発明は骨髄液を通液させる場合に、細胞分離材を充填した骨髄液流入部と骨髄液流出部を有する容器の当該骨髄液流入部側の圧力を100mmHg以下で通液することが好ましく、より好ましくは70mmHg以下、もっとも好ましいのは40mmHg以下である。100mmHg超えると、容器内圧上昇による細胞捕捉のダメージが懸念される。
本発明で得られた必要細胞は、未分化の状態で細胞を培養し増殖させ提供することも、増殖させずに使用することも可能であり、治療用細胞として用いてもよい。具体的な治療対象としては、幹細胞疲弊疾患、骨疾患、軟骨疾患、虚血性疾患、血管系疾患、神経病、やけど、慢性炎症、心疾患、免疫不全、クーロン病等の疾患、豊胸、しわとり、美容成形、組織陥没症等の組織増大術等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
未分化の細胞の増殖に用いられる培地としては、DMEM、αーMEM、MEM、IMEM、RPMI−1640が挙げられ、サイトカイン、抗体やペプチドなどの刺激因子などを用いて培養しても良い。
該分化誘導剤としては、目的とする細胞を分化誘導できるものを使用することが好ましいが、軟骨への分化誘導剤としてはデキサメタゾン、TGFβ、インシュリン、トランスフェリン、エタノールアミン、プロリン、アスコルビン酸、ピルビン酸塩、セレン等が挙げられ;骨への分化誘導剤としてはデキサメタゾン、β−グリセロリン酸、ビタミンC、アスコルビン酸塩等が挙げられ、;心筋への分化誘導剤としてはEGF、PDGF、5−アザシチジン等が挙げられ;神経への分化誘導剤としてはEGF、bFGF、bHLH等が挙げられ;血管への分化誘導剤としてはbFGF、VEGF等が挙げられる。
本発明により回収した必要細胞や増殖させた必要細胞、及び未分化の必要細胞を分化誘導した細胞を凍結保存しても良い。細胞のへのダメージを少なくできる点から、液体窒素を用いて凍結保存することが好ましい。また、凍結保存した細胞を融解し、ヒトや動物への移植、研究への使用、または再度培養することができる。
(実施例1)
細胞分離材を使用した骨髄液中からの間葉系幹細胞分離:
(1)冷蔵温度骨髄液の調製
体重約30Kgの家畜ブタに筋肉注射にてケタラール、セラクタールを注入し、その後ネンブタールを静脈注射にて追加することにより麻酔を行った。10mLのシリンジに約20IU/mLになるように予めヘパリンを入れておき、腸骨より15Gの穿刺針を用いて骨髄液を採取した。次に採取した骨髄プールにヘパリンを最終濃度で50IU/mLになるように添加して、十分に転倒混和を行った骨髄液を冷蔵庫で1.5時間程度保管し、冷蔵温度(4℃)にした。なお、当該骨髄液を用いて、分離前の血球数測定を自動血球計測装置(シスメックスK−4500)にて実施した。
(2)細胞分離具の作製
骨髄液流入部及び骨髄液流出部を供えた内径が2.6cmの円筒状のハウジングに、レーヨンとポリエチレンからなる不織布を充填し、不織布の上下をストッパーで挟み込む(充填時不織布厚み0.9cm)ことにより、不織布を36枚充填した細胞分離具を作製した。不織布の目付は90g/m2であるので、不織布の密度(=目付け/厚み)は3.8×105g/m3である。なお、不織布の繊維径は15±10μmである。
(3)細胞分離処理
細胞分離具の体積の約10倍量の生理食塩液(大塚製薬)を、骨髄液流入部から骨髄液流出部の方向に通液して不織布の洗浄を行った。(1)で調製した冷蔵温度で保存された骨髄液をウォーターバスで37℃に加温し、当該骨髄液30mLを細胞分離具の骨髄液流入部側から、シリンジポンプを用いて流速6mL/分で通液した。このとき、骨髄液流入部側に三方活栓を装着し、三方活栓の片側に通液する骨髄液の入ったシリンジをつなぎ、もう方側にデジタル圧力計DG631E(東京航空計器)をつなぎ、骨髄液通液時の細胞分離具の骨髄液流入部側の圧を30秒置きに測定した。骨髄液通液時の細胞分離具の骨髄液流入部側の圧は24mmHg以下であった。次に、生理食塩液30mLを骨髄液流入部側の圧から通液し、赤血球、白血球、及び血小板の洗浄除去を行った。このとき、細胞分離具の骨髄液流出部から流出した骨髄液、及び生理食塩液を通過画分とした。最後に、牛胎児血清10%を含むα−MEM培養液(Gibco)50mLを、骨髄液等を流した方向と逆方向から勢いよく流すことにより、目的とする必要細胞画分を回収した。当該必要細胞画分を用いて、分離後の血球数測定を自動血球計測装置にて実施した。本細胞分離処理での赤血球除去率、白血球除去率及び血小板除去率はそれぞれ99%、80%、97%であった。なお、除去率の算出方法は以下の計算式(式(1))にて算出した。
採取した骨髄液を4℃で保管し、25℃に加温後に細胞分離処理を行った以外は、実施例1と同様の方法で実施した。その結果、骨髄液通液時の細胞分離具の骨髄液流入部側の圧は100mmHgを超えた。骨髄液18mL通液した時点で完全に目詰まりし、安全面が危惧されたため細胞分離処理を中止し、洗浄、及び回収操作は実施しなかった。
採取した骨髄液を4℃で保管し、15℃に加温後に細胞分離処理を行った以外は、実施例1と同様の方法で実施した。その結果、骨髄液通液時の細胞分離具の骨髄液流入部側の圧は100mmHgを超えた。骨髄液15mL通液した時点で完全に目詰まりを起こし、安全面が危惧されたため細胞分離処理を中止し、洗浄、及び回収操作は実施しなかった。
採取した骨髄液を4℃で保管し、当該温度のまま細胞分離処理を行った以外は、実施例1と同様の方法で実施した。その結果、骨髄液通液時の細胞分離具の骨髄液流入部側の圧は100mmHgを超えた。骨髄液18mL通液した時点で完全に目詰まりを起こし、安全面が危惧されたため細胞分離処理を中止し、洗浄、及び回収操作は実施しなかった。
実施例1で使用したブタ骨髄液とは別個体のブタ骨髄液を用いた点と、採取した骨髄液を4℃で保管し、36℃に加温後に細胞分離処理を行った以外は実施例1と同様の方法で実施した。その結果、骨髄液通液時の細胞分離具の骨髄液流入部側の圧は16mmHg以下であり、赤血球除去率、白血球除去率及び血小板除去率はそれぞれ99%、75%、83%であった。
採取した骨髄液を4℃で保管し、31℃に加温後に細胞分離処理を行った以外は実施例2と同様の方法で実施した。その結果、骨髄液通液時の細胞分離具の骨髄液流入部側の圧は34mmHg以下であり、赤血球除去率、白血球除去率及び血小板除去率はそれぞれ99%、81%、97%であった。
採取した骨髄液を4℃で保管し、28℃に加温後に細胞分離処理を行った以外は実施例2と同様の方法で実施した。その結果、骨髄液通液時の細胞分離具の骨髄液流入部側の圧は100mmHgを超えた。骨髄液29mL通液した時点で目詰まりを起こし、安全面が危惧されたため細胞分離処理を中止し、洗浄、及び回収操作は実施しなかった。
採取した骨髄液を4℃で保管し、25℃に加温後に細胞分離処理を行った以外は実施例2と同様の方法で実施した。その結果、骨髄液通液時の細胞分離具の骨髄液流入部側の圧は100mmHgを超えた。骨髄液24mL通液した時点で完全に目詰まりを起こし、安全面が危惧されたため細胞分離処理を中止し、洗浄、及び回収操作は実施しなかった。
なお、実施例1〜3、参考例1〜2、及び比較例1〜5の骨髄液通液時の細胞分離具の骨髄液流入部側の圧を30秒置きに測定した結果を表1に示した。
次に、実施例1〜3、及び参考例1及び2の赤血球除去率、白血球除去率及び血小板除去率を表2に示した。
実施例1で得た回収液に含まれる間葉系幹細胞数の測定:
骨髄液1mLあたりの間葉系幹細胞の数をコロニーアッセイによって求めるため、実施例1の細胞分離具から回収した必要細胞画分(50mL)のうち、その1/30量を直径10cmのポリスチレン製シャーレ(IWAKI)に移し、37℃のCO2インキュベーター内で培養を行った。2〜3日ごとに培地交換し非接着細胞等を除去し、培養開始7日後にクリスタルバイオレット(和光純薬)でコロニーを染色して出現したコロニー数を測定した。この出現コロニー数を、間葉系幹細胞の数とした。
同様にして、細胞分離具を通過した通過画分に含まれる間葉系幹細胞の数を求めた。ただし、通過液は赤血球を多く含むため、間葉系幹細胞のシャーレへの接着を赤血球が阻害することを防ぐため、通過液(60mL)の1/30量に、0.83%(w/w)塩化アンモニウム水溶液を添加して赤血球を溶血させ、その後、生理食塩液にて1回洗浄した後に、回収液と同様のコロニーアッセイを行った。その結果、回収液の出現コロニー数は、骨髄液1mLあたり125個であった。また、通過液のコロニー数は、骨髄液1mLあたり3個であった。
Claims (3)
- 冷蔵温度で保存された骨髄液を、骨髄液から必要細胞を実質的に捕捉し、不要細胞を実質的に通過させる細胞分離材を充填した骨髄液流入部と骨髄液流出部を有する容器に、当該骨髄液を細胞処理温度で通液し、不要細胞含有液を当該容器から導出させ、次に当該必要細胞を捕捉した当該容器に細胞分離溶液を通液して容器に捕捉された当該必要細胞を回収する骨髄液処理方法において、
冷蔵温度が1〜6℃であり、かつ細胞処理温度が29〜40℃であることを特徴とする骨髄液処理方法。 - 骨髄液から必要細胞を実質的に捕捉し、不要対象細胞を実質的に通過させる細胞分離材を充填した骨髄液流入部と骨髄液流出部を有する容器に、当該骨髄液流入部側の圧力を100mmHg以下で通液することを特徴とする請求項1記載の骨髄液処理方法。
- 必要細胞が間葉系幹細胞であることを特徴とする請求項1または2に記載の骨髄液処理方法。
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