JPH04109249U - 差動歯車装置のピニオンシヤフト潤滑構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 ［目的］ ピニオンシャフトとピニオンギヤとの摺動面
への潤滑油の供給量を増大できる差動歯車装置のピニオ
ンシャフト潤滑構造を提供する。 ［構成］ 差動歯車装置１のギヤケース２内にデフケー
ス３を回転自在に配設し、該デフケース３にピニオンシ
ャフト５を固定する。このシャフト５の両端部５，５ｂ
にピニオンギヤ１０を回転自在に装着し、該各ピニオン
ギヤ１０に車軸１３が固定された一対のサイドギヤ１３
を歯合させる。そして、上記ピニオンシャフト５の回転
方向ａの前面部分に潤滑油受け部１５を形成し、該ピニ
オンシャフト５の軸芯に上記ピニオンギヤ１０との摺動
面と上記受け部１５とを連通する導入孔１６，１８を形
成する。さらに上記受け部１５に潤滑油を落下させるガ
イド板１９を上記ギヤケース２に取り付ける。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、自動車に用いられる差動歯車装置におけるピニオンシャフトとピニ オンギヤとの摺動面の潤滑構造に関し、特にピニオンシャフトの摺動面への潤滑 油の供給量を増大して潤滑性を向上できるようにした構造に関する。

【０００２】

【従来の技術】

自動車には左，右の車輪の回転差を吸収して旋回時等における走行性を向上す るために差動歯車装置が配設されている。この差動歯車装置では、例えば左，右 一方の車輪がスリップした場合、ピニオンギヤが急激に回転することから、ピニ オンシャフトとピニオンギヤとの摺動面に潤滑油を供給して焼き付きを防止する ようにしている。このような潤滑構造として、従来、例えば図５に示すように、 ピニオンシャフト３１のピニオンギヤ３２との摺動面に軸方向に伸びる溝状のス リット３３を形成し、該スリット３３に回転時に跳ね上げられた潤滑油を供給す るようにしたものがある。また、上記スリット３３の他に、例えば図６(a) ない し図６(c) に示すように、ピニオンシャフト３１の直径方向に油孔３４を形成し たもの、凹み３５を形成したもの、あるいはピニオンシャフト３３の外周面にス パイラル状の溝３６を形成したものがある。 しかし上記各構造のものは、いずれもデフケース３７の回転によって跳ね上げ られた潤滑油を自然供給する構造であることから、摺動面への供給量が不足し易 い。このような供給量の不足を補うものとして、従来、実開昭58-31463号公報に 記載されているものがある。これはピニオンシャフトの長手方向中心部に空間部 を設け、該空間部に流入した潤滑油を、該シャフトの遠心力で油孔から摺動面に 送るようにしたものである。この構造によれば、ピニオンシャフトの遠心力でも って潤滑油を摺動面に送ることが可能であるので、上述のピニオンシャフトにス リット等を形成する構造に比べて潤滑性を向上できる。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】 しかしながら、上記従来公報による潤滑構造では、ピニオンシャフトの空間部 に流入した潤滑油については、摺動面側に送ることができるものの、この空間部 への潤滑油の供給については自然に流入するのに頼る構造であるから、この点で やはり供給量が不足するという問題点がある。

【０００４】 本考案は上記従来の状況に鑑みてなされたもので、ピニオンシャフトの摺動面 への潤滑油の供給量を増大することができ、潤滑性をさらに向上できる差動歯車 装置のピニオンシャフト潤滑構造を提供することを目的としている。

【０００５】

【課題を解決するための手段】

そこで本考案は、ギヤケース内に軸支されたデフケースにピニオンシャフトを 挿通固定するとともに、該シャフトのデフケース内部分の両端部にピニオンギヤ を回転自在に装着し、該ピニオンギヤに車軸のデフケース内部分に固定された一 対のサイドギヤを歯合させてなる差動歯車装置における上記ピニオンシャフトの 摺動面の潤滑構造において、上記ピニオンシャフトの回転方向前面に潤滑油受け 部を形成し、該ピニオンシャフトに上記受け部から上記ピニオンギヤとの摺動面 に連通する導入部を形成し、潤滑油を上記受け部に向けて落下させるガイド部を 上記ギヤケースに形成したことを特徴としている。

【０００６】

【作用】

本考案に係る差動歯車装置のピニオンシャフト潤滑構造によれば、ピニオンシ ャフトの回転方向下流側の面に受け部を形成するとともに、ギヤケースにガイド 部を形成したので、跳ね上げられた潤滑油は上記ガイド部によって一旦収集され 、この潤滑油が受け部に向けて効率良く落下する。またピニオンシャフトに上記 受け部から摺動面に連通する導入部を形成したので、上記受け部に落下した潤滑 油はピニオンシャフトの遠心力により導入部を通って摺動面に送られることにな る。このようにして潤滑油の受け部への供給を効率良く行うことができるととも に、ピニオンシャフトの摺動面への供給を遠心力によって強制的に行うことがで き、その結果、潤滑油供給量を増大でき、潤滑性を大幅に向上できる。

【０００７】

【実施例】

以下、本考案の実施例を図について説明する。 図１ないし図３は本考案の一実施例による差動歯車装置のピニオンシャフト潤 滑構造を説明するための図である。 図において、１は本実施例構造が適用された前輪用差動歯車装置であり、これ はギヤケース２内にデフケース３の左，右のボス部３ａを軸受４，４を介して回 転自在に軸支した構造のものである。このデフケース３のフランジ部３ｂには、 図示しないリングギヤが固定されており、該リングギヤにはミッションからのア ウトプットシャフトに連結されたドライブピニオンが噛合している。

【０００８】 上記デフケース３の支持壁３ｃ，３ｄ間にはピニオンシャフト５が配設されて おり、該シャフト５の両端部５ａ，５ｂは上記支持壁３ｃ，３ｄに形成された挿 通孔６内に挿入されている。また上記一方の支持壁３ｄにはピニオンシャフト５ の一端部５ｂを貫通するピン孔８が形成されており、該ピン孔８にはピン９が挿 着されている。これにより上記ピニオンシャフト５はデフケース３に抜け，及び 回転を阻止した状態に固定されている。

【０００９】 また、上記ピニオンシャフト５の両端部５ａ，５ｂにはピニオンギヤ１０，１ ０がブッシュ１１を介在させて回転自在に装着されている。さらにこの両ピニオ ンギヤ１０には一対のサイドギヤ１２，１２が歯合しており、各サイドギヤ１２ は左，右の車軸１３，１３の内端部にスプライン結合されている。これにより、 ドライブシャフトの回転はドライブピニオン，リングギヤからデフケース３に伝 達され、これのピニオンシャフト５を介してピニオンギヤ１０から各サイドギヤ １２に伝達され、左，右の車軸１３を駆動する。そして旋回等において上記車軸 １３，１３に必要な回転速度に差が生じるとピニオンギヤ１０が回転してこの回 転速度差を吸収することとなる。

【００１０】 そして、上記ピニオンシャフト５の中心部分には一対の潤滑油受け部１５が形 成されている。この各受け部１５は上記ピニオンシャフト５の前進時の回転方向 ａ（図１及び図２の→印参照）の前面部分に形成されている。この受け部１５は 漏斗状のもので、これの底面に連なる第１導入孔１６はピニオンシャフト５の直 径方向に中心部に延び、さらに軸方向にこのピニオンシャフト５の両端面にまで 延びている。またこの第１導入孔１６の両端部分にはこれを閉塞するプラグ１７ が挿着されている。さらに、上記ピニオンシャフト５の両端部５ａ，５ｂには上 記第１導入孔１６と直交する第２導入孔１８が貫通して形成されており、該第２ 導入孔１８は上記ピニオンシャフト５とピニオンギヤ１０との摺動面に開口して いる。これにより摺動面と受け部１５とは第１，第２導入孔１６，１８によって 連通している。

【００１１】 また、上記ギヤケース２内の上記ピニオンシャフト５の上方には板金製のガイ ド板１９がボルト締めにより固定されている。またこのガイド板１９の中央部に は、潤滑油を集めるための溝１９ｂが凹設されており、該溝１９ｂの下端部１９ ａは上記受け部１５を臨む部分に位置している。これにより上記デフケース３の 回転によって跳ね上げられた潤滑油は上記ガイド板１９によって収集され、下端 部１９ａから受け部１５部分に向けて落下するようなっている。

【００１２】 次に本実施例の作用効果について説明する。 本実施例では、デフケース３が前進方向ａに回転して潤滑油が跳ね上げられる と、これの一部はガイド板１９に当たって下端部１９ａから連続的に落下する。 そしてピニオンシャフト５の回転によりこれの受け部１５が上記潤滑油の落下点 に位置すると、落下した潤滑油が受け部１５内に供給される。この受け部１５内 に供給された潤滑油は上記ピニオンシャフト５の回転による遠心力によって第１ ，第２導入部１６，１８を通ってピニオンギヤ１０との摺動面に圧送される。 このように本実施例によれば、ピニオンシャフト５の回転方向下流側に受け部 １５を形成するとともに、該受け部１５とピニオンギヤ１０との摺動面とを第１ ，第２導入孔１６，１８で連通し、さらにギヤケース２の上記受け部１５を臨む 部分に、潤滑油を落下させるガイド板１９を配設したので、上述のように多量の 潤滑油を受け部１５内に供給することができ、かつ該潤滑油を上記摺動面に遠心 力でもって強制圧送することができ、潤滑性を大幅に向上できる。 なお、上記実施例では、ガイド板１９をボルトで固定するようにしたが、本考 案ではギヤケースにガイド部を一体形成してもよい。

【００１３】 図４は上記実施例の変形例を示す。これはピニオンシャフト２０の回転方向前 面部分に溝状の受け部２１を形成し、該受け部２１に続いて摺動面に伸びる導入 部２２を形成して構成されている。この例においても潤滑油は上記受け部２１に 落下し、遠心力により導入部２２から摺動面に送られるので、上記実施例と略同 様の効果が得られる。

【００１４】

【考案の効果】

以上のように本考案に係る差動歯車装置のピニオンシャフト潤滑構造によれば 、ピニオンシャフトの回転方向前面に受け部を形成するとともに、該受け部とピ ニオンギヤとの摺動面とを連通する導入部を形成し、さらにギヤケースに上記受 け部に潤滑油を落下させるガイド部を形成したので、潤滑油の受け部への供給量 を増大できるとともに、この潤滑油をピニオンシャフトの摺動面に確実に送るこ とができ、潤滑性を大幅に向上できる効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の一実施例による差動歯車装置のピニオ
ンシャフト潤滑構造を説明するための該差動歯車装置を
示す断面正面図である。

【図２】上記実施例のピニオンシャフトに潤滑油を供給
する状態を示す概略側面図である。

【図３】上記実施例のピニオンシャフトを示す斜視図で
ある。

【図４】上記実施例のピニオンシャフトの変形例を示す
斜視図である。

【図５】従来のピニオンシャフトの潤滑構造を示す断面
図である。

【図６】従来の他の潤滑構造を示す図である。

【符号の説明】

１ 差動歯車装置 ２ ギヤケース ３ デフケース ５，２０ ピニオンシャフト １０ ピニオンギヤ １２ サイドギヤ １３ 車軸 １５，２１ 受け部 １６，１８ 導入孔（導入部） １９ ガイド板（ガイド部） ２２ 導入部

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ギヤケース内に回転自在に軸支されたデ
   フケースにピニオンシャフトを挿通固定するとともに、
   該シャフトのデフケース内部分の両端部にピニオンギヤ
   を回転自在に装着し、該ピニオンギヤに車軸のデフケー
   ス内部分に固定された一対のサイドギヤを歯合させてな
   る差動歯車装置の、上記ピニオンシャフトとピニオンギ
   ヤとの摺動面を潤滑する構造において、上記ピニオンシ
   ャフトの回転方向前面に潤滑油受け部を形成し、該ピニ
   オンシャフトに上記受け部からピニオンギヤとの摺動面
   に連通する導入部を形成し、潤滑油を上記受け部に向け
   て落下させるガイド部を上記ギヤケースに形成したこと
   を特徴とする差動歯車装置のピニオンシャフト潤滑構
   造。