JPH0444928Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は歯車式変速機、特に入力軸と出力軸と
がパイロツトベアリングを介して同軸上に配設さ
れた歯車式変速機の上記パイロツトベアリングに
対する潤滑構造に関する。

（従来技術） 自動車に搭載されて手動で操作される歯車式変
速機は、変速機ハウジングの前部壁にメインベア
リングを介して回転自在に支持された入力軸と、
該入力軸の後端部に形成された中空部にパイロツ
トベアリングを介して前端部が回転自在に嵌合さ
れて入力軸の同軸上後方に配設された出力軸と、
該出力軸の下方に平行に配設されたカウンタ軸と
を備えると共に、該カウンタ軸と出力軸との間に
複数の歯車列を配列させた構成とされ、エンジン
出力軸からクラツチを介して入力軸に伝達された
回転を上記カウンタ軸に伝達すると共に、該カウ
ンタ軸の回転を、上記複数の歯車列のうちの１つ
を選択的に動力伝達状態とすることにより、その
選択された歯車列の歯車比に対応する減速比で上
記出力軸に伝達するようになつている。

ところで、この種の変速機においては、変速機
ハウジング内の底部に溜められた潤滑油が主とし
てカウンタ軸上の各変速用歯車の回転に伴つて掻
き揚げられることにより、該油が上記メインベア
リングやパイロツトベアリング等の各潤滑部に供
給されるようになつているが、これらのベアリン
グに対する給油をより積極的に行わせるものとし
て、例えば実開昭56−146159号公報に開示された
考案がある。この考案は、変速機ハウジングの前
部壁に変速歯車側に突出する油受けを設けると共
に、上記メインベアリングの周辺部と上記油受け
とを連通させる油孔を該前部壁に穿設することに
より、変速機ハウジング内で掻き揚げられた潤滑
油が上記油受けによつて受けられた上で油孔を介
して上記メインベアリングに導入されるようにし
たものであつて、この考案によれば入力軸を支持
する上記メインベアリングに潤滑油が効果的に供
給されることになる。しかし、この考案は、メイ
ンベアリングに対する給油を目的とするもので、
入力軸と出力軸との間に介在されたパイロツトベ
アリングに対しては潤滑油を効果的に供給するこ
とができない。

これに対して、パイロツトベアリングに対する
給油を積極的に行うものとして、例えば実開昭59
−96461号公報に示された歯車式変速機がある。
この変速機においては、第７図に示すように、入
力軸１の後端に形成された中空部１ａにパイロツ
トベアリング２を介して出力軸３の前端３ａが嵌
合され、且つ上記パイロツトベアリング２が嵌合
された入力軸１の後端部外周に該入力軸１の回転
をカウンタ軸４に伝達する駆動歯車１ｂが形成さ
れた構成において、該歯車１ｂの歯底部から上記
中空部１ａ内におけるパイロツトベアリング２の
嵌合部に連通する半径方向の油孔１ｃが穿設され
ている。これによれば、変速機ハウジング５内で
掻き上げられた潤滑油が上記油孔１ｃを通つて上
記パイロツトベアリング２に供給されることにな
る。しかし、この構造によれば、上記油孔１ｃが
駆動歯車１ｂの歯底部から形成されているので、
該歯車１ｂの強度が低下すると共に、特に上記油
孔１ｃは入力軸１に半径方向に穿設された孔であ
るので、該軸１の回転による遠心力により潤滑油
のパイロツトベアリング２側への導入が妨げられ
て、該ベアリング２に潤滑油が効果的に供給され
ないという問題が生じる。

さらに実開昭56−111353号公報によれば、第８
図に示すように、入力軸６の後端に設けられた中
空部６ａにパイロツトベアリング７を介して出力
軸８の前端部が支持された構成において、入力軸
６に、該軸６を支持するメインベアリング９の前
方の空間から上記中空部６ａに通じる油孔６ｂを
設け、該油孔６ｂによりメインベアリング９の周
辺に供給された潤滑油を上記パイロツトベアリン
グ７にも供給するようにした構成が示されてい
る。これによれば、入力軸後端の駆動歯車６ｃの
強度の低下を招くことなくパイロツトベアリング
７を潤滑することが可能となる。しかし、この構
成においても、上記油孔６ｂの前半部が半径方向
の外方から内方へ向けて傾斜状に設けられている
ので、入力軸６の回転による遠心力により、潤滑
油のパイロツトベアリング７側への導入が妨げら
れ、該ベアリング７に効果的に供給されないとい
う問題がある。

（考案の目的） 本考案は歯車式変速機における潤滑構造に関す
る上記のような実情に対処するもので、入力軸と
出力軸とがパイロツトベアリングを介して同軸上
に配設される歯車式変速機において、入力軸の軸
受部周辺の潤滑構造を改良することにより、歯車
の強度の著しい低下を来たすことなく、上記パイ
ロツトベアリングに対して十分に潤滑油を供給し
得るようにすることを目的とする。

（考案の構成） 本考案に係る歯車式変速機の潤滑構造は上記目
的達成のため次のように構成したことを特徴とす
る。

即ち、後端部が中空状とされた入力軸と、該入
力軸の中空部に収納されたパイロツトベアリング
を介して入力軸と同軸上に指示された出力軸と、
ケースに設けられて上記入力軸を軸支するメイン
ベアリングと、該入力軸におけるメインベアリン
グによつて支持された軸部の後方に該入力軸に一
体的に設けられた駆動歯車と、該駆動歯車に噛み
合う歯車を備え且つ上記入力軸及び出力軸に平行
に配設されたカウンタ軸とを有し、且つ上記メイ
ンベアリングの前方の入力軸回りに空間が設けら
れた歯車式変速機において、上記入力軸の軸部と
該軸部を支持するメインベアリングとの間に入力
軸と一体的に回転するスリーブを介在させ、該ス
リーブに、前方の上記空間から後方の上記駆動歯
車のハブ部に通じる第１潤滑用油路と、上記空間
内の潤滑油を該第１潤滑用油路内にかき込む潤滑
油かき込み手段とを設けると共に、上記入力軸に
おける中空部の内径を上記軸部の外径より大径と
して、駆動歯車のハブ部におけるパイロツトベア
リングに対応する径方向位置に、上記第１潤滑用
油路に連通し且つ該ハブ部を軸方向に貫通して上
記中空部内のパイロツトベアリング側に通じる第
２潤滑用油路を形成したことを特徴とする。

上記の構成によれば、入力軸支持用のメインベ
アリングの前方の空間に供給される該メインベア
リング潤滑用の潤滑油が、該メインベアリングと
入力軸の軸部との間のスリーブに設けられた第１
潤滑用油路及び入力軸における駆動歯車のハブ部
に設けられた第２潤滑用油路を通つて、パイロツ
トベアリング側に導かれることになる。その場合
に、該パイロツトベアリングが収納された入力軸
後端部の中空部の内径が前方の軸部の外径よりも
大径とされ、上記第２潤滑用油路がパイロツトベ
アリングに対応する径方向位置において入力軸の
軸方向に平行に設けられており、また、上記スリ
ーブに設けられた第１潤滑用油路もその径方向位
置が変化しないから、これらの油路内で潤滑油が
入力軸の回転による遠心力の影響を受けることが
なく、しかも、スリーブに設けられたかき込み手
段が上記空間内の潤滑油を第１潤滑用油路ないし
第２潤滑用油路に積極的に導入させるので、潤滑
油がこれらの油路を通つてパイロツトベアリング
に確実且つ十分に供給されることになる。

（考案の効果） 以上のように本考案によれば、入力軸と出力軸
とがパイロツトベアリングを介して同軸上に配設
された歯車式変速機において、従来、特に潤滑油
が供給され難かつたパイロツトベアリングに、入
力軸の回転に伴う遠心力によつて妨げられること
なく、潤滑油が効果的に供給されることになる。
これにより、入力軸と出力軸との間の抵抗が減少
してエンジン出力の伝達効率が向上し、また上記
パイロツトベアリングの摩耗等が防止されること
になる。尚、この考案によれば、潤滑用油路が入
力軸の歯車の歯底部、即ち大きな応力が作用する
歯の近傍部には設けられないので、該入力軸に設
けられる歯車の著しい強度の低下等の弊害を伴わ
ない利点がある。

（実施例） 以下、本考案の実施例について説明する。

第１図は該実施例に係る歯車式変速機の前部を
示す縦断面図で、同図に示すように該歯車式変速
機１０は、変速機ハウジング１１内に、前端部が
図示しないエンジン出力軸にクラツチを介して連
結されている入力軸１２と、該入力軸１２の後方
において該入力軸１２と同軸上に配設された出力
軸１３と、該出力軸１３の下方に平行に配設され
たカウンタ軸１４とを有する。そして、上記入力
軸１２の後端部と、上記カウンタ軸１４の前端部
とには、互いに噛合う駆動歯車１２ａと入力歯車
１４ａとが夫々一体的に設けられ、これらの歯車
１２ａ，１４ａを介して入力軸１２の回転がカウ
ンタ軸１４に常時伝達されるようになつている。
また、該カウンタ軸１４と上記出力軸１３との間
には各一対の変速用歯車１４′，１３′でなる複数
の歯車列と同期装置１５（最前部の歯車列及び同
期装置のみ図示）とが設けられており、シフトレ
バー（図示せず）の操作時にシフトロツド１６な
いし上記同期装置１５等を介して、カウンタ軸１
４から上記歯車列を介して出力軸１３に至る回転
伝達経路が選択的に切換えられるように構成され
ている。尚、上記変速機ハウジング１１内には所
定量の潤滑油Ｘが貯留されており、入力軸１２の
回転に伴つて上記カウンタ軸１４が回転する時
に、該カウンタ軸１４の入力歯車１４ａや変速用
歯車１４′によつて上記潤滑油Ｘが上方に激しく
掻き揚げられるようになつている。

ところで、上記入力軸１２はメインベアリング
１７を介して変速機ハウジング１１の前部壁１１
ａに回転自在に支持されていると共に、該入力軸
１２の後部は中空状とされており、該中空部１２
ｂの後端部の最も大径とされた部位にパイロツト
ベアリング１８が収納されている。そして、この
パイロツトベアリング１８に上記出力軸１３の小
径とされた前端部１３ａが嵌合支持されている。
また、上記変速機ハウジング１１の前部壁１１ａ
の前面には、上記入力軸１２の外周面に摺接する
シール部材１９が固着されたフロントカバー２０
がボルト２１により取付けられている。そして、
該フロントカバー２０の後面と上記メインベアリ
ング１７との間には空間Ａが形成されていると共
に、上記ハウジング前部壁１１ａの上部及びフロ
ントカバー２０の上部には変速機ハウジング１１
内から上記空間Ａに通じる潤滑油導入通路１１
ｂ，２０ａが形成され、変速機ハウジング１１内
で掻き揚げられた潤滑油Ｘがこれらの通路１１
ｂ，２０ａを通過して、上記空間Ａに導入される
ように構成されている。尚、この空間Ａには、上
記メインベアリング１７を通り抜けた潤滑油も導
入される。

然して、第１，２図に示すように上記メインベ
アリング１７のインナーレース内周と入力軸１２
との間にはスリーブ２２が嵌合固着され、このス
リーブ２２の内面に入力軸１２の軸方向に延びる
第１潤滑用油路２２ａが対称位置に２本設けられ
ていると共に、該スリーブ２２の直後方に続く入
力軸１２における駆動歯車１２ａのハブ部１２ｃ
にも上記第１潤滑用油路２２ａ，２２ａに続いて
軸方向に延びる２本の第２潤滑用油路１２ｄ，１
２ｄが穿設されており、この第２潤滑用油路１２
ｄ，１２ｄが上記入力軸後端における中空部１２
ｂ内に連通されている。ここで、該中空部１２ｂ
の後端部のパイロツトベアリング１８が収納され
た部位の内径は、該入力軸１２における駆動歯車
１２ａより前方のメインベアリング１７によつて
支持された軸部１２ｅの外径よりも大径とされ、
これに伴つて上記第２潤滑用油路１２ｄ，１２ｄ
がパイロツトベアリング１８に対応する径方向位
置において入力軸１２の軸方向と平行に設けられ
ている。そして、特にこの実施例においては、第
３、４図に示すように、上記スリーブ２２におけ
る２本の第１潤滑用油路２２ａ，２２ａに潤滑油
を積極的に導入させる潤滑油かき込み手段とし
て、該油路２２ａ，２２ａが後方側に行くに従つ
て入力軸１２の回転方向（ａ方向）と反対方向に
向かうように傾斜して設けられている。尚、該第
１潤滑用油路２２ａの後端側である該スリーブ２
２の後端内面には全周に渡る周溝２２ｂが穿設さ
れており、この周溝２２ｂにより第１潤滑用油路
２２ａと第２潤滑用油路１２ｄとが常に連通され
るようになつている。

上記の構成によれば、ハウジング前部壁１１ａ
及びフロントカバー２０に設けられた潤滑油導入
通路１１ｂ，２０ａとメインベアリング１７内を
通過して空間Ａに集つた潤滑油Ｘはスリーブ２２
に設けられた第１潤滑用油路２２ａ，２２ａに流
入すると共に、更に該スリーブ２２における周溝
２２ｂないし入力軸１２に設けられた第２潤滑用
油路１２ｄ，１２ｄとに導入されることになる。
そして、該潤滑油Ｘは第２潤滑用油路１２ｄ，１
２ｄから入力軸１２の後端の中空部１２ｂ内を通
過して該入力軸１２と出力軸１３との間に介在す
るパイロツトベアリング１８まで導入されること
になる。その場合に、スリーブ２２に設けられた
第１潤滑用油路２２ａと入力軸に設けられた第２
潤滑用油路１２ｄとは共に入力軸１２の軸方向に
延びて、該入力軸１２の回転に伴う遠心力の影響
を受けないので、潤滑油Ｘはこれらの潤滑用油路
２２ａ，１２ｄを通つて上記中空部１２ｂ側に確
実に導入されることになる。そして特に、この実
施例においては、上記スリーブ２２に設けられた
第１潤滑用油路２２ａ，２２ａはパイロツトベア
リング１８の位置する後方側に行くに従つて当該
入力軸１２の反回転方向（反ａ方向）に傾斜しな
がら穿設されているので、第４図に示すように該
第１潤滑用油路２２ａ，２２ａに導入された潤滑
油Ｘが回転方向に対する後方側の壁に押圧力Ｆ
（但し押圧力Ｆは軸の回転速度に対応する）で押
圧された時に、その分力F′により矢印ｂで示すよ
うに第１潤滑用油路２２ａの傾斜に沿つて後方へ
向う積極的な流れが形成されることになり、これ
により入力軸１２の第２潤滑用油路１２ｄ，１２
ｄを介して潤滑油Ｘが上記中空部１２ｂ側に一層
確実に導入されることになる。

これにより、入力軸１２と出力軸１３との間に
介在されたパイロツトベアリング１８に確実に且
つ十分に潤滑油Ｘが供給されることになり、該ベ
アリング１８の摩耗や入力軸１２と出力軸１３と
の間の摺動抵抗の増大等が防止される。

また、第５，６図に示すように、スリーブ２
２′に設けられた２本の第１潤滑用油路２２a′、
２２a′の入口側に入力軸回転方向（a′方向）に対
する後方側に案内羽根２２c′，２２c′を設けても
よく、これによれば周辺の潤滑油が更に積極的に
第１潤滑用油路２２a′，２２a′に導入され、第２
潤滑用油路及び中空部を介してパイロツトベアリ
ング側へ導入されることになる。

【図面の簡単な説明】

第１〜６図は本考案の実施例を示すもので、第
１図は歯車式変速機の一部を示す縦断側面図、第
２図は該変速機における入力軸の要部拡大縦断側
面図、第３図はスリーブの正面図、第４図は第３
図−線で切断した横断平面図、第５図は第２
実施例を示すスリーブの正面図、第６図は第５図
−線で切断した横断平面図である。また、第
７，８図は従来例を示す歯車式変速機の一部縦断
側面図である。 １０……歯車式変速機、１２……入力軸、１２
ａ……駆動歯車、１２ｂ……中空部、１２ｃ……
ハブ部、１２ｄ……第１潤滑用油路、１７……メ
インベアリング、１８……パイロツトベアリン
グ、２２……スリーブ、２２ａ，２２a′……第２
潤滑用油路、Ａ……空間、Ｘ……潤滑油。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 後端部が中空状とされた入力軸と、該入力軸の
   中空部に収納されたパイロツトベアリングを介し
   て入力軸と同軸上に支持された出力軸と、ケース
   に設けられて上記入力軸を軸支するメインベアリ
   ングと、該入力軸におけるメインベアリングによ
   つて支持された軸部の後方に該入力軸に一体的に
   設けられた駆動歯車と、該駆動歯車に噛み合う歯
   車を備え且つ上記入力軸及び出力軸に平行に配設
   されたカウンタ軸とを有し、且つ上記メインベア
   リングの前方の入力軸回りに空間が設けられた歯
   車式変速機の潤滑構造であつて、上記入力軸の軸
   部と該軸部を支持するメインベアリングとの間に
   入力軸と一体的に回転するスリーブが介在され、
   該スリーブに、前方の上記空間から後方の上記駆
   動歯車のハブ部に通じる第１潤滑用油路と、上記
   空間内の潤滑油を該第１潤滑用油路内にかき込む
   潤滑油かき込み手段とが設けられていると共に、
   上記入力軸における中空部の内径が上記軸部の外
   径より大径とされて、駆動歯車のハブ部における
   パイロツトベアリングに対応する径方向位置に、
   上記第１潤滑用油路に連通し且つ該ハブ部を軸方
   向に貫通して上記中空部内のパイロツトベアリン
   グ側に通じる第２潤滑用油路が形成されているこ
   とを特徴とする歯車式変速機の潤滑構造。