JPH0232370B2 - Tokushuhoriesuterukakoitonoseizoho - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は糸条長手方向に沿つて濃染部と淡染部
とを交互に存在せしめた特殊ポリエステル加工糸
の製造法に関するものであり、更に詳しくは、高
配向未延伸糸の長手方向に沿つて水又は水性液体
（以下液体と云う）を間歇的に付着せしめた後、
熱処理、延伸仮撚加工を施すことにより、長手方
向に染着濃淡差特に淡染部を地とし、濃染部を柄
とする加工糸を安定に連続して製造する方法に関
するものである。

従来、合成繊維マルチフイラメント糸に、その
長手方向に沿つて間歇的な染着斑を付与せしめる
加工方法はよく知られており、例えば特公昭41−
6615号、特公昭43−19627号等には未延伸糸を自
然延伸比以内の延伸倍率で延伸することにより部
分的な延伸配向斑を発生せしめた部分未延糸とす
る方法が提案されている。

しかしながらこの方法においては、未延伸糸を
自然延伸比以内の延伸納率で延伸して部分的な配
向斑を発生させるものであるから得られた加工糸
は淡染部と濃染部の比及び長さを適宜変化させて
製造することは極めて難しく、従つてこの加工糸
を用いた織編物の柄範囲は狭いものとなるのみな
らず、この織編物を染色等の加熱処理に付した場
合、糸条が脆化し、強度、耐摩耗性等の点で実用
上、支障となるという欠点を有している。

このため、本出願人は先に高配向ポリエステル
未延伸糸にその長手方向に間歇的に液体を付着せ
しめて熱処理し、次いで延伸仮撚加工を行うこと
により染着斑を有する加工糸を製造する方法（特
願昭56−81471号）を提案した。この方法は高配
向ポリエステル未延伸糸に、その長手方向に沿つ
て間歇的に液体を付着させた部分は熱処理効果を
殆ど受けず、熱処理前の糸質に近い物性を保た
せ、一方液体を付着させない部分は熱処理による
物性の変化を生ぜしめ、しかる後に所定の延伸仮
撚加工を施すことにより、液体を付着させた部分
を淡染部に液体を付着させない部分を濃染部とし
て糸条の長手方向に染着斑を有する加工糸とする
ものである。即ちこの方法は間歇的な液体付着に
よつて染着斑を発生させるものであるから、得ら
れる加工糸はその濃染部の比及び長さを適宜変化
させることができるので、織編物の柄パターンを
広範囲とすることが可能であり、しかも従来の方
法の如き強度、耐摩耗性の問題がない等の点で優
れたものであつた。

しかし、この方法は、液体を付着させない淡染
部を間歇的に現出する糸条即ち濃染部を地とし、
淡染部を柄とする糸条を製造するには好適である
が、逆に液体を付着させた淡染部を地とし、液体
を付着させない濃染部を柄とする糸条を製造する
には次のような問題が残されていた。

即ちこの方法によつて淡染部を地とし、濃染部
を柄とする糸条を製造するには、糸条の長手方向
の大部分に液体を付着させる必要があるが、糸条
の液体部分を40％以上とすると、糸条の濡れてい
る部分が長くなり、連続して操業を行つた場合、
熱処理後のローラー或いは延伸仮撚領域に糸条を
送り込むローラーが糸条によつて濡らされ、これ
らローラーに糸条が捲付いて断糸することにな
る。このため糸条長手方向に液体付着部分を40％
以上として、安定した加工を行うことは困難であ
り、従つて淡染部を地とし、濃染部を柄とする糸
条を操業的に安定して得ることが難しいことであ
る。

本発明は上述の如き濃染部と淡染部とを交互に
存在せしめた特殊ポリエステル加工糸の製造方法
における問題点を踏えて、その解決を図つたもの
であり、その目的とするところは、糸条の長手方
向に染色濃淡差、特に淡染部を地とし、濃染部を
柄とする加工糸を安定に連続して製造することが
できる方法を提供することにある。

即ち、本発明は、複屈折率（△ｎ）が15〜80×
10^-3である高配向ポリエステル未延伸糸を供給糸
条とし、該供給糸条の長手方向に沿つて水又は水
性液体を間歇的に付着せしめ、続いて0.05ｇ／ｄ
（供給糸条のデニール当り）以下の張力で熱処理
を施した後、該糸条を負荷抵抗体を通過せしめて
延伸仮撚領域に送り、引続き連続して供給糸条の
供給速度に対する加工糸の引取速度の比を1.2倍
以上として延伸仮撚することを特徴とする特殊ポ
リエステル加工糸の製造法である。

以下、本発明方法を更に詳細に説明する。

本発明方法における供給糸条としては複屈折率
（△ｎ）が15〜80×10^-3である高配向ポリエステ
ル未延伸糸が使用される。

複屈折率（△ｎ）が15×10^-3未満の場合には、
後述する熱処理により液体を付着させない部分が
脆化し、後続する延伸仮撚工程において糸切れが
多発するため不適当である。一方複屈折率（△
ｎ）が80×10^-3を超える場合には糸条の配向が比
較的進んでいるため、間歇液体付着−熱処理によ
つて液体を付着させた部分と付着させない部分と
の物性差が十分得られず、鮮明な染着差か得られ
ないので好ましくない。

前記高配向ポリエステル未延伸糸は、先づ、そ
の長手方向に沿つて水又は水性液体が間歇的に付
着される。

ここでいう水性液体とは重量比で水を過半数
（50重量パーセント以上）含有するものであり、
水以外の物質としては界面活性剤、染色助剤、防
錆剤などが挙げられる。

供給糸条に液体を間歇的に付着させるには適宜
の長さで間歇的に付着できる方法ならばどのよう
な方法でもよく、比較的簡単な方法としては例え
ばローラー表面に突条を設けたギヤ型変形回転ロ
ーラーで付着させる方法、また周期糸長をかなり
大きくし得る方法としては電磁ソレノイト法を適
用して糸条を間歇的かつ任意の長さで液体に接触
させる方法等が挙げられる。とりわけ、マイクロ
コンピユータとランダムパルス発生ユニツトを併
用する方法はランダムな間隔及び長さで液体を付
着し得るので、特に好適である。

前記の間歇的に液体を付着された糸条は次いで
0.05ｇ／ｄ（供給糸条のデニール当り）以下の張
力下で熱処理が施される。この場合、熱処理時の
張力が0.05ｇ／ｄを越えると、液体を付着させた
部分と、付着させない部分との間に染着差が認め
られなくなるので適当でない。

この理由としては、熱処理を0.05ｇ／ｄを越え
た張力下で行うと、液体を付着させない部分は収
縮状態で熱処理させないので、延伸状態で熱処理
されるので収縮状態で熱処理される場合に比して
高配向化しているため淡染化し、延伸仮撚によつ
て延伸、高配向化されて淡染化する液体を付着さ
せた部分との間に染着差が認められなくなるもの
と考えられる。

熱処理温度は液体を付着させた部分には熱処理
の効果が及ばないか若しくは極めて小さく、一方
液体を付着させない部分に対しては熱処理の効果
が十分付与し得る温度に設定することが望まし
く、180〜230℃の温度が好ましい。なお、熱処理
においては、高配向ポリエステル未延伸糸の溶融
軟化点が低く、融化切断することから糸条を加熱
装置に接触させない非接触式とすることが好まし
い。

上記の如くして熱処理された糸条は、次に糸条
移送装置を用いることなく、負荷抵抗体を通過せ
しめて延伸仮撚領域に送られる。本発明にいう負
荷抵抗体とは走行する糸条に張力を付与する装置
を言い具体的には磁力によつて調整できるマグネ
ツト式テンサー、スプリングを嵌装したワツシヤ
ーテンサー、或いは接触角を変更しうる１個又は
複数個のセラミツクガイド等が挙げられ、これら
は適宜調整して用いられる。

通常、糸条を熱処理して延伸仮撚加工を施す場
合には、熱処理後の糸条はローラー等の糸条移動
装置を用いて延伸仮撚領域に送り込まれるが、こ
の場合には液体を付着させた部分を40％以上と多
くすると、熱処理後において、なお糸条に残存す
る水分によつて糸条移送装置が濡らされ、このた
め糸条が移送装置に捲付いて糸切れが発生し、安
定して操業することができない。

これに対して本発明方法においては、熱処理さ
れた糸条はローラー等の移送装置を用いることな
く、負荷抵抗体を使用するものであるから後述す
る延伸仮撚加工時に1.2倍以上で延伸しても熱処
理の張力を0.05ｇ／ｄ以下の低張力とすることが
可能であり、しかも液体を付着させた部分を40％
以上と多くした加工条件においても、糸条の捲付
がなく、安定した操業性を得ることができる。

このようにして延伸仮撚領域に送られた糸条は
続いて供給糸条の供給速度に対する加工糸の引取
速度の比（以下延伸比と云う）を1.2倍以上にし
て延伸仮撚される。

この場合、延伸比が1.2倍未満では液体を付着
させた部分と、液体を付着させない部分との間の
配向差が少くなり、染着差として確認できないの
で好ましくない。一方、延伸比は大きい程染着差
は鮮明になるが、1.2倍を大巾に超える延伸比で
延伸仮撚を行うと、単糸切れの発生が著しくなり
操業性が不良となるので、実用的には1.8倍迄の
延伸比で延伸仮撚することが望ましい。なお延伸
仮撚時の熱処理は、接触式、非接触式のいづれで
もよい。

かくして、液体を付着させた部分は、熱処理に
よる効果が殆んど及ばず、延伸仮撚加工時に延
伸、高配向化されて淡染部となり、一方液体を付
着させない部分は熱処理による高収縮性と結晶配
向特性のため、延伸仮撚加工時の延伸変形が少な
く、濃淡部を形成する。

図はかかる本発明方法の製造工程の一例を示す
工程概略図であり、高配向ポリエステル未延伸糸
スプール１より引き出された糸条Ｆはフイードロ
ーラー２を経て液体付着装置３によつて間歇的に
液体が付着され、続いて第１ヒーター４に入り、
フイードローラー２と負荷抵抗体５によつて所定
の張力として熱処理され、負荷抵抗体５を通過し
て延伸仮撚領域に送り込まれ、フイードローラー
２とデリベリローラー８によつて所定の延伸比で
延伸されると同時に、仮撚スピンドル７により加
撚されつつ第２ヒーター６により熱固定され、デ
リベリローラー８を経て捲取ローラー９により、
仮撚捲縮糸としてパツケージ１０に捲取られる。

本発明におけるポリエステルとは、ポリエチレ
ンテレフタレートで代表される分子鎖中にエステ
ル結合を含有するポリエステルを総称し、イソフ
タル酸、パラオキシエトオキシ安息香酸などの第
３成分を含有する変性ポリエステルをも包含す
る。

なお、本発明は糸条長手方向に液体を間歇的に
付着して染着差を有する加工糸を得るものである
が、種々の液体を連続的に付着せしめる加工糸の
製造方法にも適用可能である。

以上述べた如く、本発明方法は高配向ポリエス
テル未延伸糸に、その長手方向に間歇的に液体を
付着し熱処理時の張力を0.05ｇ／ｄ以下とするこ
と、熱処理後の糸条を移送装置を用いることなく
負荷抵抗体を通過せしめて延伸仮撚領域に送るこ
と、及び延伸比を1.2倍以上として延伸仮撚加工
を行うことの各条件に特定して実施するものであ
り、かくして液体付着部分を40％以上と多くした
加工条件においても糸条の捲付きがなく、従来、
加工が困難とされていた淡染部を地とし、濃淡部
を柄とする加工糸を安定かつ連続して製造するこ
とができる。

以下、本発明方法を実施例により具体的に説明
する。

実施例 高速紡糸して得た高配向ポリエステル未延伸糸
230d／48f（複屈折率（△ｎ）40×10^-3）を図に示
す工程において、フイードローラーに供給し、マ
イクロコンピユーターとランダムパルス発生ユニ
ツトを併用して糸条の長手方向に沿つて水付着部
分が80％となるように間歇的に水を付着し、第１
ヒーター温度200℃、張力0.02ｇ／ｄで熱処理を
施した後、この糸条をマグネツトテンサーを通過
せしめて延伸仮撚領域に送り、フイードローラー
とデリベリローラーにより延伸比を1.4倍とし、
第２ヒーター温度200℃、スピンドル回転数20×
10⁴r.p.m、仮撚数2750T／Ｍで延伸仮撚加工を行
い本発明方法による加工糸を製造した。このよう
な本発明法によつて188錘について30日間操業を
行つたところ操業時の糸切れ回数は僅か23回であ
り、極めて安定した操業性が得られた。

一方比較のためにマグネツトテンサーの代りに
ローラーを用いて加工を行つたところ糸掛け後30
秒で糸条のローラーへの捲付きが多発し、糸切れ
が起り、加工は不可能であつた。

上記本発明方法により得られた加工糸を経糸密
度72本／吋、緯糸密度66本／吋で平組織に織成
し、分散染料で染色したところ淡染部が地組織と
なり、濃染部がカスリ模様の好ましい織物が得ら
れた。

【図面の簡単な説明】

図は本発明方法の製造工程の一例を示す工程概
略図である。 １……スプール、２……フイードローラー、３
……液体付着装置、４……第１ヒーター、５……
負荷抵抗体、６……第２ヒーター、７……仮撚ス
ピンドル、８……デリベリローラー、９……捲取
ローラー、１０……パツケージ、Ｆ……糸条。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 複屈折率（△ｎ）が15〜80×10^-3である高配
   向ポリエステル未延伸糸を供給糸条とし、該糸条
   にその長手方向に沿つて水又は水性液体を間歇的
   に付着せしめ、次いで0.05ｇ／ｄ（供給糸条のデ
   ニール当り）以下の張力で熱処理を施した後、該
   糸条を負荷抵抗体を通過せしめて延伸仮撚領域に
   送り、引続き連続して、供給糸条の供給速度に対
   する加工糸の引取速度の比を1.2倍として延伸仮
   撚加工することを特徴とする特殊ポリエステル加
   工糸の製造法。