JP7419935B2 - 特定のアイオノマーを含むポリアミド樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、新規アイオノマーを含むポリアミド樹脂組成物に関するものである。
ポリアミド樹脂は、機械特性、耐熱性、電気特性や成形加工性等に優れていることから、自動車部品、外装部品、機械部品、電気電子部品等において広く用いられている。これら部品は、多種多様な形状に成形され、様々な用途、環境で使用されているが、ポリアミド樹脂は本質的に耐衝撃性が低く、靱性が求められる用途には展開しにくいという問題がある。
ポリアミド樹脂の耐衝撃性を改良する試みとして、ポリアミド樹脂に改質剤としてアイオノマー樹脂を含有させる検討が成されている。例えば特許文献1には、ポリアミド50~95重量%とエチレン系アイオノマー樹脂及び/又はカルボキシ変性ニトリルゴム5~50重量%との緊密混合物が提案されている。また、別の例として、特許文献2には、分子間及び/又は分子内に金属イオンによる架橋構造を有するポリオレフィン系熱可塑性樹脂100重量部に対して、特定の融点を有するポリアミド樹脂を5~100重量部含む熱可塑性樹脂組成物が提案されている。特許文献3では、特定のポリアミドに対して一定割合でアイオノマーを配合し、ポリアミドの成形性の向上を図っている。これら例示した特許文献では、ポリアミド樹脂の耐衝撃性等の物性改質を目的として、従来一般に市販されているアイオノマーを使用している。
アイオノマーは金属イオンで高分子を凝集した合成樹脂であり、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体を前駆体樹脂とし、ナトリウムや亜鉛等の金属イオンで分子間結合した樹脂であるエチレン系アイオノマーが知られている(特許文献4)。エチレン系アイオノマーは強靭で弾性に富み、かつ柔軟性があり、耐摩耗性、透明性等の特徴がある。
現在、市販されているエチレン系アイオノマーとしては、Dupont社が開発したエチレン-メタクリル酸共重合体のナトリウム塩や亜鉛塩「Surlyn(登録商標)」、及び、三井・ダウポリケミカル社が販売している「ハイミラン(登録商標)」等が知られている。
しかしながら、これら市販されているエチレン系アイオノマーに用いられる前駆体樹脂のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体には、いずれも、エチレンと不飽和カルボン酸等の極性基含有モノマーを、高圧ラジカル重合法により重合した極性基含有オレフィン共重合体が用いられている。高圧ラジカル重合法は、比較的極性基含有モノマーの種類を選ばずに安価に重合可能であるという利点がある。しかし、この高圧ラジカル重合法で製造される極性基含有オレフィン共重合体の分子構造は、図1に示すイメージ図のように、多くの長鎖分岐及び短鎖分岐を不規則に有する構造であり、強度的には不十分という欠点がある。
高圧ラジカル重合法によって得られる極性基含有オレフィン共重合体の欠点を改良する為、図2に示すイメージ図のような分子構造が直鎖状の極性基含有オレフィン共重合体を、触媒を用いて重合する方法が模索されてきた。しかし、極性基含有モノマーは一般的に触媒毒となるため、触媒を用いた重合が難しい。それ故、工業的に安価で、かつ、安定的な方法によって所望の物性を有する極性基含有オレフィン共重合体を得ることは困難であった。
しかしながら近年、本願出願人等により開発された新触媒及び新製造方法を用いることにより、分子構造が実質的に直鎖状の極性基含有オレフィン共重合体を、工業的に安価で、かつ、安定的に得る方法が提案された。
そして、エチレン系アイオノマーの前駆体樹脂となる極性基含有オレフィン共重合体の製造方法として、後周期遷移金属触媒を用い、エチレンとアクリル酸t-ブチルの共重合体を製造し、得られた極性基含有オレフィン共重合体を熱又は酸処理を行うことでエチレン-アクリル酸共重合体に変性した後、金属イオンと反応させ二元アイオノマーを製造することに成功したことが本願出願人等により報告されている(特許文献5)。
特公昭55-41659号公報 特開2015-163692号公報 特開2007-204674号公報 米国特許第3264272号明細書 特開2016-79408号公報
ポリアミドの改質においては様々な試みがなされているが、特許文献1~3記載のアイオノマーは、高圧ラジカル重合法で製造されており多くの長鎖分岐及び短鎖分岐を不規則に有する構造であるため、強度的には不十分である。改質剤であるアイオノマー自体が強度の問題を有しており、ポリアミド樹脂組成物の耐衝撃性改善において十分なものではなかった。また特に特許文献3では特定の配合におけるポリアミドに対してしか効果を奏することが見出されておらず、アイオノマーに基づく物性の付与という観点では不十分なものであった。
本発明は、かかる従来技術の状況に鑑み、耐衝撃性に優れたポリアミド樹脂を与えることができる改質剤、及びそれを配合することによって耐衝撃性が改良されたポリアミド樹脂組成物の提供を目的とする。
上記課題の解決のため本発明者らが検討を重ねた結果、特定のアイオノマー樹脂を用いることで、ポリアミドを含む樹脂の耐衝撃性に関し優れた効果を有することを見出した。
特許文献5に記載されているようなエチレン系アイオノマーは、前駆体樹脂が実質的に直鎖状の分子構造を有すると共にアイオノマーとしての機能も有する、従来にはない新規のエチレン系アイオノマーであり、その物性等は従来のエチレン系アイオノマーとは大きく異なり、特有の特性及び適した用途についても未知であった。本発明は、実質的に直鎖状のエチレン系アイオノマーが、意外にもポリアミド樹脂の耐衝撃性改良に関し優れた効果を有することを見出したことに基づくものである。
すなわち、本発明の第一の態様は、ポリアミド樹脂(I)とアイオノマー(II)からなるポリアミド樹脂組成物であって、アイオノマー(II)が、エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構造単位(A)と、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位(B)を必須構成単位として含む共重合体(P)中の、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の少なくとも一部が周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換されてなり、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δが、50度~75度であることを特徴とする、ポリアミド樹脂組成物である。
本発明により、優れた耐衝撃性を備えたポリアミド樹脂組成物が得られる。実質的に直鎖状構造である本発明に関わるアイオノマーを含む本発明のポリアミド樹脂組成物は、従来のポリアミド樹脂組成物に比べ耐衝撃性に優れるため、靱性が必要とされる材料として有用である。
図1は、高圧ラジカル重合法で製造される極性基含有オレフィン共重合体の分子構造の概略を示す図である。 図2は、触媒による重合で得られる極性基含有オレフィン共重合体の分子構造の概略を示す図である。
本発明はエチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構造単位(A)と、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位(B)とを必須構成単位として含み、これらが実質的に直鎖状に共重合、好ましくはランダム共重合した共重合体(P)を前駆体樹脂とし、該構造単位(B)のカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の少なくとも一部が周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換されていることを特徴とするアイオノマーを改質剤として用いた、ポリアミド樹脂組成物である。
以下、本発明に関わるアイオノマー、アイオノマーを含むポリアミド樹脂組成物及び、その用途などについて、項目毎に詳細に説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
1.ポリアミド樹脂(I)
ポリアミド樹脂は、例えば3員環以上のラクタムの開環重合、アミノカルボン酸の重縮合、又はジカルボン酸とジアミンとの重縮合によって得ることができる、分子鎖中にアミド結合を有する高分子である。開環重合に用いられるラクタムの具体例としては、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ラウリルラクタム等が挙げられる。重縮合に用いられるアミノカルボン酸の具体例としては、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等が挙げられる。ジカルボン酸とジアミンとの重縮合に用いられるモノマーの具体例としては、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,5-ヘキサンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、α,ω-ジアミノポリプロピレングリコール、m-若しくはp-フェニレンジアミン等のジアミンと、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、グルタール酸、テレフタル酸、イソフタル酸等のジカルボン酸との任意の組み合わせが挙げられる。ポリアミド樹脂は異なる複数種のモノマーから得られる共重合体であってもよく、単独重合体又は共重合体を任意の割合でブレンドして用いてもよい。
ポリアミド樹脂としては市販のグレードのものを用いることができるが、より好ましいポリアミドの具体例としては、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン、12-ナイロン、11-ナイロン、9-ナイロン、7-ナイロン、ポリアミド4,6、ポリアミド6,12、ポリメタキシリレンアジパミド、芳香族ナイロン、例えば、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのポリアミド樹脂の末端は、炭素数6~22のカルボン酸又はアミンで封止されていてもよい。具体的に封止に用いるカルボン酸としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。また、アミンとしては、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン等の脂肪族第一級アミンが挙げられる。
ポリアミド樹脂は、具体的な用途に応じてある程度自由に調節することができるが、ある範囲内の分子量を有するものが好ましい。高分子は相対粘度(ηr)によっても分子鎖の長さ即ち分子量を表すことができる。ポリアミド樹脂の好ましい相対粘度は、JIS K6810に従って98%硫酸中、樹脂濃度1%、温度25℃で測定した値で1.5~5.0の範囲であり、より好ましくは2.0~5.0の範囲である。
樹脂組成物中のポリアミド樹脂の量は、特に制限されないが、後述のアイオノマー樹脂との総和に対して0.1~99.9重量%含むことが好ましい。アイオノマー樹脂との総和に対して0.5~99.0重量%の範囲であることがより好ましく、1.0~95.0重量%の範囲であることがさらに好ましい。この範囲とすることで、樹脂としての成形性など要求される物性を満足し、かつ耐衝撃性により優れたポリアミド樹脂組成物を得ることができる。
2.アイオノマー
本発明のアイオノマーは、エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構造単位(A)と、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位(B)とを必須構成単位として含み、これらが実質的に直鎖状に共重合、好ましくはランダム共重合した共重合体(P)を前駆体樹脂とし、該構造単位(B)のカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の少なくとも一部が周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換されていることを特徴とする。
(1)構造単位(A)
構造単位(A)はエチレンに由来する構造単位及び炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位である。
本発明に関わるα-オレフィンは構造式:CH=CHR18で表される、炭素数3~20のα-オレフィンである(R18は炭素数1~18の炭化水素基であり、直鎖構造であっても分岐を有していてもよい)。α-オレフィンの炭素数は、より好ましくは、3~12である。
構造単位(A)の具体例として、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、及び4-メチル-1-ペンテン等が挙げられ、エチレンであってもよい。
また、アイオノマー中に含まれる構造単位(A)は、一種類であってもよいし、複数種であってもよい。二種の組み合わせとしては、エチレン-プロピレン、エチレン-1-ブテン、エチレン-1-ヘキセン、エチレン-1-オクテン、プロピレン-1-ブテン、プロピレン-1-ヘキセン、及びプロピレン-1-オクテン等が挙げられる。三種の組み合わせとしては、エチレン-プロピレン-1-ブテン、エチレン-プロピレン-1-ヘキセン、エチレン-プロピレン-1-オクテン、プロピレン-1-ブテン-ヘキセン、及びプロピレン-1-ブテン-1-オクテン等が挙げられる。
本発明においては、構造単位(A)としては、好ましくは、エチレンを必須で含み、必要に応じて1種以上の炭素数3~20のα-オレフィンをさらに含んでもよい。
構造単位(A)中のエチレンの量は、構造単位(A)の全molに対して、65~100mol%であってもよく、70~100mol%であってもよい。
(2)構造単位(B)
構造単位(B)は、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位である。
カルボキシル基を有するモノマーとしては具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン-5,6-ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸が挙げられ、ジカルボン酸無水物基を有するモノマーとしては無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、3,6-エポキシ-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4,5-ジカルボン酸無水物、2,7-オクタジエン-1-イルコハク酸無水物などの不飽和ジカルボン酸無水物が挙げられる。
具体的な化合物として、アクリル酸、メタクリル酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物が挙げられ、特にアクリル酸であってもよい。
また、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーは、一種類であってもよいし、複数種であってもよい。
なお、ジカルボン酸無水物基は空気中の水分と反応して開環し、一部がジカルボン酸となる場合があるが、本発明の主旨を逸脱しない範囲においてならば、ジカルボン酸無水物基が開環していてもよい。
(3)その他の構造単位(C)
本発明に関わる共重合体(P)は構造単位(A)及び構造単位(B)で示される構造単位以外の構造単位(C)(以下、「任意のモノマー(C)」と表記することがある)を含んでいてもよい。構造単位(C)を与えるモノマーは、構造単位(A)及び構造単位(B)を与えるモノマーと同一でなければ、任意のモノマーを使用できる。構造単位(C)を与える任意のモノマーは、分子構造中に炭素-炭素二重結合を1つ以上有する化合物であれば限定されないが、例えば下記一般式(1)で表される非環状モノマーや下記一般式(2)で表される環状モノマーなどが挙げられる。
・非環状モノマー
Figure 0007419935000001

[一般式(1)中、T~Tはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、水酸基で置換された炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基で置換された炭素数2~20の炭化水素基、炭素数2~20のエステル基で置換された炭素数3~20の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数2~20のエステル基、炭素数炭素数3~20のシリル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基からなる群より選択される置換基であり、
は、水酸基で置換された炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基で置換された炭素数2~20の炭化水素基、炭素数2~20のエステル基で置換された炭素数3~20の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリール基、炭素数2~20のエステル基、炭素数炭素数3~20のシリル基、ハロゲン原子、又は、シアノ基からなる群より選択される置換基である。]
本発明のアイオノマーにおいては、T及びT2は水素原子であってもよく、Tは水素原子又はメチル基であってもよく、Tは炭素数2~20のエステル基であってもよい。
~Tに関する炭化水素基、置換アルコキシ基、置換エステル基、アルコキシ基、アリール基、エステル基、シリル基が有する炭素骨格は、分岐、環、及び/又は不飽和結合を有してもよい。
~Tに関する炭化水素基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、上限値は20以下であればよく、10以下であってもよい。
~Tに関する置換アルコキシ基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、上限値は20以下であればよく、10以下であってもよい。
~Tに関する置換エステル基の炭素数は、下限値が2以上であればよく、上限値は20以下であればよく、10以下であってもよい。
~Tに関するアルコキシ基の炭素数は、下限値が1以上であればよく、上限値は20以下であればよく、10以下であってもよい。
~Tに関するアリール基の炭素数は、下限値が6以上であればよく、上限値は20以下であればよく、11以下であってもよい。
~Tに関するエステル基の炭素数は、下限値が2以上であればよく、上限値は20以下であればよく、10以下であってもよい。
~Tに関するシリル基の炭素数は、下限値が3以上であればよく、上限値は18以下であればよく、12以下であってもよい。シリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリn-プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、及びトリフェニルシリル基等が挙げられる。
非環状モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
本発明に関わる(メタ)アクリル酸エステルは、構造式:CH=C(R21)CO(R22)で表される化合物である。ここで、R21は、水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基であり、分岐、環、及び/又は不飽和結合を有してもよい。R22は、炭素数1~20の炭化水素基であり、分岐、環、及び/又は不飽和結合を有してもよい。さらに、R22内の任意の位置にヘテロ原子を含有してもよい。
(メタ)アクリル酸エステルとして、R21は、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基である(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、R21が水素原子であるアクリル酸エステル又はR21がメチル基であるメタクリル酸エステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
具体的な化合物として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル(nBA)、アクリル酸イソブチル(iBA)、アクリル酸t-ブチル(tBA)、及びアクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられ、特にアクリル酸n-ブチル(nBA)、アクリル酸イソブチル(iBA)、及びアクリル酸t-ブチル(tBA)であってもよい。
なお、非環状モノマーは、一種類を用いてもよいし、複数種を用いてもよい。
・環状モノマー
Figure 0007419935000002

[一般式(2)中、R~R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭素数1~20の炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、R及びR10、並びに、R11及びR12は、各々一体化して2価の有機基を形成してもよく、R又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、nが2以上の場合には、R~Rは、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。]
環状モノマーとしては、ノルボルネン系オレフィン等が挙げられ、ノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ノルボルナジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-1-エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン、などの環状オレフィンの骨格を有する化合物等が挙げられ、2-ノルボルネン(NB)、及び、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン等であってもよい。
(4)金属イオン
アイオノマーには、上記(2)の構造単位(B)が有するカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基と塩を形成する金属イオンが含まれる。カルボン酸塩基の金属イオンとしては、周期表の第1族、第2族及び第12族からなる群より選ばれる族の一価又は二価の金属イオンが挙げられる。金属イオンとしては具体的には、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、及び、亜鉛(Zn)のイオン等が挙げられ、取扱い易さの観点から、特にナトリウム(Na)、又は、亜鉛(Zn)のイオンであってもよい。
カルボン酸塩基は、例えば、共重合体のエステル基を加水分解若しくは加熱分解させた後、又は、加水分解若しくは加熱分解させながら、周期表1族、2族、又は12族の金属イオンを含有する化合物と反応させることで、共重合体中のエステル基部分を金属含有カルボン酸塩に変換することで得られる。
なお、金属イオンは、一種類であってもよいし、複数種であってもよい。
(5)共重合体(P)
本発明で用いるアイオノマーの前駆体樹脂となる共重合体(P)は、エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構造単位(A)と、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位(B)とを必須構成単位として含み、これらが実質的に直鎖状に共重合、好ましくはランダム共重合していることを特徴とする。「実質的に直鎖状」とは、共重合体が分岐を有していないか又は分岐構造が現れる頻度が小さく、共重合体を直鎖状とみなしうる状態であることを指す。具体的には、下記の条件下で測定される共重合体の位相角δが50度以上である状態を指す。
本発明に関わる共重合体は、構造単位(A)及び構造単位(B)をそれぞれ1種類以上含有し、合計2種以上のモノマー単位を含むことが必要であり、その他の構造単位(C)を含んでいてもよい。
本発明に関わる共重合体の構造単位と構造単位量について説明する。
エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィン(A)、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマー(B)、及び任意のモノマー(C)それぞれ1分子に由来する構造を、共重合体中の1構造単位と定義する。
そして、共重合体中の構造単位全体を100mol%とした時に各構造単位の比率をmol%で表したものが構造単位量である。
エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィン(A)の構造単位量:
本発明に関わる構造単位(A)の構造単位量は、下限が60.000mol%以上、好ましくは70.000mol%以上、より好ましくは80.000mol%以上、さらに好ましくは85.000mol%以上、さらにより好ましくは90.000mol%以上、特に好ましくは91.200mol%以上であり、上限が97.999mol%以下、好ましくは97.990mol%以下、より好ましくは97.980mol%以下、さらに好ましくは96.980mol%以下、さらにより好ましくは96.900mol%以下、特に好ましくは92.700mol%以下から選択される。
エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィン(A)に由来する構造単位量が60.000mol%よりも少なければポリアミド樹脂組成物の剛性が劣り、97.999mol%よりも多ければポリアミド樹脂組成物の改良効果が低下する場合がある。
・カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマー(B)に由来する構造単位量:
本発明に関わる構造単位(B)の構造単位量は、下限が2.0mol%以上、好ましくは2.9mol%以上であり、より好ましくは5.2mol%以上、上限が20.0mol%以下、好ましくは15.0mol%以下、より好ましくは10.0mol%以下、さらに好ましくは8.0mol%以下、特に好ましくは5.4mol%以下から選択される。
カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマー(B)に由来する構造単位量が2.0mol%よりも少なければ、ポリアミド樹脂に対する、共重合体(P)を前駆体樹脂として作成されるアイオノマーの分散性が充分ではなく耐衝撃性の改良効果が損なわれ、20.0mol%より多ければポリアミド樹脂組成物の充分な機械物性が得られない場合がある。
・任意のモノマー(C)の構造単位量:
本発明に関わる構造単位(C)の構造単位量は、構造単位(C)が含まれる場合、下限が0.001mol%以上、好ましくは0.010mol%以上、より好ましくは0.020mol%以上、さらに好ましくは0.100mol%以上、さらにより好ましくは1.000mol%以上であり、特に好ましくは1.900mol%以上であり、上限が20.000mol%以下、好ましくは15.000mol%以下、より好ましくは10.000mol%以下、さらに好ましくは5.000mol%以下、特に好ましくは3.600mol%以下から選択される。
更に、用いられる任意のモノマーは単独でもよく、2種類以上を合わせて用いてもよい。
・共重合体の炭素1,000個当たりの分岐数:
ポリオレフィンの分子構造には、メチル、エチル、ブチルなど炭素数1~4程度の短い炭素鎖が、分岐として現れることがある。本発明の共重合体は、分岐を有していないか又は分岐構造が現れる頻度が小さく、直鎖状とみなしうる構造を有する。
共重合体においては、弾性率を高くし、充分な機械物性を得る点から、13C-NMRにより算出されるメチル分岐数が、炭素1,000個当たり、上限が50個以下であってもよく、5.0個以下であってもよく、1.0個以下であってもよく、0.5個以下であってもよい。メチル分岐数の下限は、特に限定されず、少なければ少ないほどよい。またエチル分岐数が炭素1,000個当たり、上限が3.0個以下であってもよく、2.0個以下であってもよく、1.0個以下であってもよく、0.5個以下であってもよい。エチル分岐数の下限は、特に限定されず、少なければ少ないほどよい。さらにブチル分岐数が炭素1,000個当たり、上限が7.0個以下であってもよく、5.0個以下であってもよく、3.0個以下であってもよく、0.5個以下であってもよい。ブチル分岐数の下限は、特に限定されず、少なければ少ないほどよい。
共重合体中のカルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基モノマーに由来する構造単位、及び分岐数の測定方法:
本発明の多元共重合体中のカルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基モノマーに由来する構造単位、炭素1,000個当たりの分岐数は13C-NMRスペクトルを用いて求められる。13C-NMRは以下の方法によって測定する。
試料200~300mgをo-ジクロロベンゼン(CCl)と重水素化臭化ベンゼン(CBr)の混合溶媒(CCl/CBr=2/1(体積比))2.4ml及び化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れて窒素置換した後封管し、加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定試料とする。
NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・ジャパン(株)のAV400M型NMR装置を用いて120℃で行う。
13C-NMRは、試料の温度120℃、パルス角を90°、パルス間隔を51.5秒、積算回数を512回以上、逆ゲートデカップリング法で測定する。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とする。
得られた13C-NMRにおいて、共重合体が有するモノマー又は分岐に特有のシグナルを同定し、その強度を比較することで、共重合体中の各モノマーの構造単位量、及び分岐数を解析することができる。モノマー又は分岐に特有のシグナルの位置は公知の資料を参照することもできるし、試料に応じて独自に同定することもできる。このような解析手法は、当業者にとって一般的に行いうるものである。
・重量平均分子量(Mw)と分子量分布(Mw/Mn):
本発明に関わる共重合体の重量平均分子量(Mw)は、下限が通常1,000以上であり、好ましくは6,000以上であり、上限が通常2,000,000以下であり、好ましくは1,500,000以下であり、更に好ましくは1,000,000以下であり、特に好適なのは800,000以下であり、最も好ましくは56,000以下である。
Mwが1,000未満では共重合体の機械的強度や耐衝撃性などの物性が充分ではなく、Mwが2,000,000を超えると共重合体の溶融粘度が非常に高くなり、共重合体の成形加工が困難となる場合がある。
本発明に関わる共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、通常1.5~4.0、好ましくは1.6~3.5、更に好ましくは1.9~2.3の範囲である。Mw/Mnが1.5未満では共重合体の成形を始めとして各種加工性が充分でなく、4.0を超えると共重合体の機械物性が劣るものとなる場合がある。
また、本発明においては(Mw/Mn)を分子量分布パラメーターと表現することがある。
本発明に関わる重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnを算出するものである。
本発明に関わるGPCの測定方法の一例は以下の通りである。
(測定条件)
使用機種:ウォーターズ社製150C
検出器:FOXBORO社製MIRAN1A・IR検出器(測定波長:3.42μm)
測定温度:140℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
流速:1.0mL/分
注入量:0.2mL
(試料の調製)
試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
(分子量(M)の算出)
標準ポリスチレン法により行い、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の、(F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000)の銘柄である。各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量(M)への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
ポリスチレン(PS):K=1.38×10-4、α=0.7
ポリエチレン(PE):K=3.92×10-4、α=0.733
ポリプロピレン(PP):K=1.03×10-4、α=0.78
・融点(Tm、℃):
本発明に関わる共重合体の融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク温度によって示される。最大ピーク温度とは、DSC測定において、縦軸に熱流(mW)、横軸に温度(℃)をとった際に得られる吸熱曲線に複数ピークが示された場合、そのうちベースラインからの高さが最大であるピークの温度の事を示し、ピークが1つだった場合には、そのピークの温度の事を示している。
融点は50℃~140℃であることが好ましく、60℃~138℃であることが更に好ましく、70℃~135℃が最も好ましい。この範囲より低ければ耐熱性が充分ではなく、この範囲より高い場合はポリアミド樹脂組成物の剛性が劣るものとなる場合がある。
共重合体の融点は、例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のDSC(DSC7020)を使用し、試料約5.0mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間等温保持後、10℃/分で20℃まで降温し、20℃で5分間等温保持後、再度、10℃/分で200℃まで昇温させる際の吸収曲線より求めることができる。
・結晶化度(%):
本発明の共重合体においては、示差走査熱量測定(DSC)により観測される結晶化度は、特に限定されないが、0%を超えていることが好ましい。5%を超えていることがより好ましく、7%以上であることが更に好ましい。結晶化度が0%であると共重合体の靱性が充分とはならなくなる場合がある。また、結晶化度は透明性の指標となり、共重合体の結晶化度が低くなればなるほど、その透明性が優れると判断することができる。透明性が要求される用途においては、共重合体の結晶化度は、30%以下であることが好ましく、25%以下であることが更に好ましく、25%以下であることが特に好ましく、24%以下であることが最も好ましい。
共重合体の結晶化度は、例えば、上記融点の測定と同じ手順でのDSC測定により得られる融解吸熱ピーク面積から融解熱(ΔH)を求め、その融解熱を高密度ポリエチレン(HDPE)の完全結晶の融解熱293J/gで除することにより求めることができる。
・共重合体の分子構造:
本発明に関わる共重合体の分子鎖末端は、エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィンの構造単位(A)であってもよく、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)であってもよく、任意のモノマーの構造単位(C)であってもよい。
また、本発明に関わる共重合体は、エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィンの構造単位(A)、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)、及び任意のモノマーの構造単位(C)のランダム共重合体、ブロック共重合体、並びにグラフト共重合体等が挙げられる。これらの中では、構造単位(B)を多く含むことが可能なランダム共重合体であってもよい。
一般的な三元系の共重合体の分子構造例(1)を下記に示す。
ランダム共重合体とは、下記に示した分子構造例(1)のエチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィンの構造単位(A)とカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)と任意のモノマーの構造単位(C)とが、ある任意の分子鎖中の位置においてそれぞれの構造単位を見出す確率が、その隣接する構造単位の種類と無関係な共重合体である。
下記のように、共重合体の分子構造例(1)は、エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィンの構造単位(A)とカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)と任意のモノマーの構造単位(C)とが、ランダム共重合体を形成している。
Figure 0007419935000003
なお、グラフト変性によってカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)を導入した共重合体の分子構造例(2)も参考に掲載すると、エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィンの構造単位(A)及び任意のモノマーの構造単位(C)とが共重合された共重合体の一部が、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)にグラフト変性される。
Figure 0007419935000004
また、共重合体におけるランダム共重合性は種々の方法により確認することが可能であるが、共重合体のコモノマー含量と融点との関係からランダム共重合性を判別する手法が「特開2015-163691号公報」及び「特開2016-079408」に詳しく述べられている。上記文献から共重合体の融点(Tm、℃)が-3.74×[Z]+130(ただし、[Z]はコモノマー含量/mol%である)よりも高い場合はランダム性が低いと判断できる。
ランダム共重合体である本発明に関わる共重合体は示差走査熱量測定(DSC)により観測される融点(Tm、℃)と、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーの構造単位(B)及び任意のモノマーの構造単位(C)の合計の含有量[Z](mol%)とが下記の式(I)を満たすことが好ましい。
50<Tm<-3.74×[Z]+130・・・(I)
共重合体の融点(Tm、℃)が-3.74×[Z]+130(℃)よりも高い場合はランダム共重合性が低い為、衝撃強度など機械物性が劣り、融点が50℃よりも低い場合は耐熱性が劣る場合がある。
さらに本発明に関わる共重合体は、その分子構造を直鎖状とする観点から、遷移金属触媒の存在下で製造されたものであることが好ましい。
なお、高圧ラジカル重合法プロセスによる重合、金属触媒を用いた重合など、製造方法によって共重合体の分子構造は異なることが知られている。
この分子構造の違いは製造方法を選択する事によって制御が可能であるが、例えば、特開2010-150532号公報に記載されている様に、回転式レオメータで測定した複素弾性率によっても、その分子構造を推定する事ができる。
・複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δ:
本発明の共重合体においては、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δが、50~75度であることを特徴とする。位相角δの下限は51度以上であってもよく、54度以上であってもよく、56度以上であってもよく、58度以上であってもよい。位相角δの上限は75度以下であってもよく、70度以下でもよい。
より具体的には、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δ(G=0.1MPa)が50度以上である場合、共重合体の分子構造は直鎖状の構造であって、長鎖分岐を全く含まない構造か、機械的強度に影響を与えない程度の少量の長鎖分岐を含む、実質的に直鎖状の構造であることを示す。
また、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δ(G=0.1MPa)が50度より低い場合、共重合体の分子構造は長鎖分岐を過多に含む構造を示し、機械的強度が劣るものとなる。
回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δは、分子量分布と長鎖分岐の両方の影響を受ける。しかし、Mw/Mn≦4、より好ましくはMw/Mn≦3である共重合体に限れば長鎖分岐の量の指標になり、その分子構造に含まれる長鎖分岐が多いほどδ(G=0.1MPa)値は小さくなる。なお、共重合体のMw/Mnが1.5以上であれば、当該分子構造が長鎖分岐を含まない構造である場合でもδ(G=0.1MPa)値が75度を上回ることはない。
複素弾性率の測定方法は、以下の通りである。
試料を厚さ1.0mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度180℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで溶融樹脂中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、5分間保持する。その後、試料を表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、厚さが約1.0mmのプレス板を作成した。プレス板を直径25mm円形に加工したものをサンプルとし、動的粘弾性特性の測定装置としてRheometrics社製ARES型回転式レオメータを用い、窒素雰囲気下において以下の条件で動的粘弾性を測定する。
・プレート:φ25mm パラレルプレート
・温度:160℃
・歪み量:10%
・測定角周波数範囲:1.0×10-2~1.0×10 rad/s
・測定間隔:5点/decade
複素弾性率の絶対値G(Pa)の常用対数logGに対して位相角δをプロットし、logG=5.0に相当する点のδ(度)の値をδ(G=0.1MPa)とする。測定点の中にlogG=5.0に相当する点がないときは、logG=5.0前後の2点を用いて、logG=5.0におけるδ値を線形補間で求める。また、測定点がいずれもlogG<5であるときは、logG値が大きい方から3点の値を用いて2次曲線でlogG=5.0におけるδ値を補外して求める。
・共重合体の製造について
本発明に関わる共重合体は、その分子構造を直鎖状とする観点から、遷移金属触媒の存在下で製造されたものであることが好ましい。
・重合触媒
本発明に関わる共重合体の製造に用いる重合触媒の種類は、構造単位(A)、構造単位(B)、及び任意の構造単位(C)を共重合することが可能なものであれば特に限定されないが、例えば、キレート性配位子を有する第5~11族の遷移金属化合物が挙げられる。
好ましい遷移金属の具体例としては、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子、マンガン原子、鉄原子、白金原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子、銅原子などが挙げられる。これらの中で好ましくは、第8~11族の遷移金属であり、さらに好ましくは第10族の遷移金属であり、特に好ましくはニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)である。これらの金属は、単一であっても複数を併用してもよい。
キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位(bidentate)又は多座配位(multidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Brookhartらによる総説に、キレート性配位子の構造が例示されている(Chem.Rev.,2000,100,1169)。
キレート性配位子としては、好ましくは、二座アニオン性P、O配位子が挙げられる。二座アニオン性P、O配位子として例えば、リンスルホン酸、リンカルボン酸、リンフェノール、リンエノラートが挙げられる。キレート性配位子としては、他に、二座アニオン性N、O配位子が挙げられる。二座アニオン性N、O配位子として例えば、サリチルアルドイミナ-トやピリジンカルボン酸が挙げられる。キレート性配位子としては、他に、ジイミン配位子、ジフェノキサイド配位子、及びジアミド配位子等が挙げられる。
キレート性配位子から得られる金属錯体の構造は、置換基を有してもよいアリールホスフィン化合物、アリールアルシン化合物又はアリールアンチモン化合物が配位した下記構造式(c1)又は(c2)で表される。
Figure 0007419935000005
Figure 0007419935000006
[構造式(c1)、及び構造式(c2)において、
Mは、元素の周期表の第5~11族のいずれかに属する遷移金属、即ち前述したような種々の遷移金属を表す。
は、酸素、硫黄、-SO-、又は-CO-を表す。
は、炭素又はケイ素を表す。
nは、0又は1の整数を表す。
は、リン、砒素又はアンチモンを表す。
53及びR54は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。
55は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。
56及びR57は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、OR52、CO52、COM’、C(O)N(R51、C(O)R52、SR52、SO52、SOR52、OSO52、P(O)(OR522-y(R51、CN、NHR52、N(R52、Si(OR513-x(R51、OSi(OR513-x(R51、NO、SOM’、POM’、P(O)(OR52M’又はエポキシ含有基を表す。
51は、水素又は炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。
52は、炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。
M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは、0から3までの整数、yは、0から2までの整数を表す。
なお、R56とR57が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。この時、環員数は5~8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。
は、Mに配位したリガンドを表す。
また、R53とLが互いに結合して環を形成してもよい。]
より好ましくは、重合触媒となる錯体は、下記構造式(c3)で表される遷移金属錯体である。
Figure 0007419935000007
[構造式(c3)において、
Mは、元素の周期表の第5~11族のいずれかに属する遷移金属、即ち前述したような種々の遷移金属を表す。
は、酸素、硫黄、-SO-、又は-CO-を表す。
は、炭素又はケイ素を表す。
nは、0又は1の整数を表す。
は、リン、砒素又はアンチモンを表す。
53及びR54は、それぞれ独立に、水素又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。
55は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、又は炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。
58、R59、R60及びR61は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、炭素数1ないし30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、OR52、CO52、COM’、C(O)N(R51、C(O)R52、SR52、SO52、SOR52、OSO52、P(O)(OR522-y(R51、CN、NHR52、N(R52、Si(OR513-x(R51、OSi(OR513-x(R51、NO、SOM’、POM’、P(O)(OR52M’又はエポキシ含有基を表す。
51は、水素又は炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。
52は、炭素数1ないし20の炭化水素基を表す。
M’は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、xは、0から3までの整数、yは、0から2までの整数を表す。
なお、R58~R61から適宜選択された複数の基が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素、窒素、若しくは硫黄から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。この時、環員数は5~8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。
は、Mに配位したリガンドを表す。
また、R53とLが互いに結合して環を形成してもよい。]
ここで、キレート性配位子を有する第5~11族の遷移金属化合物の触媒としては、代表的に、いわゆる、SHOP系触媒及びDrent系触媒等の触媒が知られている。
SHOP系触媒は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがニッケル金属に配位した触媒である(例えば、WO2010‐050256号公報を参照)。
また、Drent系触媒は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがパラジウム金属に配位した触媒である(例えば、特開2010-202647号公報を参照)。
・共重合体の重合方法:
本発明に関わる共重合体の重合方法は限定されない。
重合方法としては、媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが挙げられる。
重合形式としては、バッチ重合、セミバッチ重合、又は連続重合のいずれの形式でもよい。
また、リビング重合を行ってもよいし、連鎖移動を併発しながら重合を行ってもよい。
更に、重合の際には、いわゆるchain shuttling agent(CSA)を併用し、chain shuttling反応や、coordinative chain transfer polymerization(CCTP)を行ってもよい。
具体的な製造プロセス及び条件については、例えば、特開2010-260913号公報、及び特開2010-202647号公報等に開示されている。
・共重合体へのカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の導入方法:
本発明に関わる共重合体へのカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の導入方法は特に限定されない。
本発明の主旨を逸脱しない範囲においては種々の方法によりカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を導入することができる。
カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の導入方法は、例えば、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するコモノマーを直接共重合する方法や、他のモノマーを共重合した後、変性によりカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を導入する方法などが挙げられる。
変性によりカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を導入する方法としては、例えばカルボン酸を導入する場合、アクリル酸エステルを共重合した後に加水分解し、カルボン酸に変化する方法やアクリル酸t-ブチルを共重合した後、加熱分解によりカルボン酸に変化させる方法等が挙げられる。
上記、加水分解又は加熱分解する際に、反応を促進させる添加剤として、従来公知の酸・塩基触媒を使用してもよい。酸・塩基触媒としては特に制限されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩、モンモリロナイトなどの固体酸、塩酸、硝酸、硫酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸などを適宜用いることが出来る。反応促進効果、価格、装置腐食性等の観点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸が好ましく、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸がより好ましい。
(6)アイオノマー
本発明に関わるアイオノマーは、本発明の共重合体の構造単位(B)のカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の少なくとも一部が、前述の金属イオンによって周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換された、実質的に直鎖状の構造を有するアイオノマーである。
・アイオノマーの構造
本発明に関わるアイオノマーは、前記本発明に関わる共重合体と同様に実質的に直鎖状構造を有するランダム共重合体であることから、構造に関するパラメーターは前記共重合体のものと同じ範囲であることが好ましい。すなわち、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δ、融点(Tm、℃)、結晶化度(%)について、前記共重合体についてと同じ好ましい態様が適用される。アイオノマーは、後述のとおり前駆体樹脂に金属塩を作用させることにより得られ、その際に重合体の分子鎖を切断するような反応は通常起こらない。このため、コモノマーのモル比、分岐の程度、ランダム性等の構造に関するパラメータは、通常は前駆体樹脂とアイオノマーとの間で保存されている。
・中和度(mol%)
アイオノマーにおける金属イオンの含有量としては、前駆体樹脂としての共重合体中のカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の少なくとも一部又は全部を中和する量を含むことが好ましく、好ましい中和度(平均中和度)としては、5~95mol%、より好ましくは10~90mol%、さらに好ましくは20~80mol%である。
中和度が高いと、アイオノマーの引張強度及び引張破壊応力が高く、引張破壊ひずみが小さくなるが、アイオノマーのメルトフローレート(MFR)が低くなる傾向がある。一方、中和度が低いと、適度なMFRのアイオノマーが得られ、成形性の面でより好ましくなるが、ポリアミド樹脂組成物の耐衝撃性改良効果が十分でない場合がある。
なお、中和度は、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の量と加えた金属イオンのモル比から計算できる。
・アイオノマーの製造方法
本発明に関わるアイオノマーは、上述のとおりの共重合体へのカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の導入方法によって得たエチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィン/不飽和カルボン酸の共重合体を、周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属塩により処理し金属含有カルボン酸塩に変換する変換工程を経ることにより得てもよい。また、本発明に関わるアイオノマーはエチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィン/不飽和カルボン酸エステル共重合体を加熱し、該共重合体中の少なくとも一部のエステル基を、周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換する加熱変換工程を経ることにより得てもよい。
重合体にカルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を導入してからアイオノマーを製造する場合、その製造方法は、例えば、以下のとおりである。すなわち、エチレン/メタクリル酸(MAA)共重合体などの金属イオンを捕捉する物質と金属塩を場合により加熱して混練することで金属イオン供給源を作製し、ついでアイオノマーの前駆体樹脂に当該金属イオン供給源を所望の中和度となる量投入し、混練することで得ることができる。
また、加熱変換工程においては、(i)エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィン/不飽和カルボン酸エステル共重合体を加熱し、加水分解又は加熱分解によりエチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィン/不飽和カルボン酸共重合体にした後、周期表1族、2族、又は12族の金属イオンを含有する化合物と反応させることで、該エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィン/不飽和カルボン酸共重合体中のカルボン酸を該金属含有カルボン酸塩に変換してもよい。又は、(ii)エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィン/不飽和カルボン酸エステル共重合体を加熱し、該共重合体のエステル基を加水分解又は加熱分解させながら、周期表1族、2族、又は12族の金属イオンを含有する化合物と反応させることで、前記エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィン/不飽和カルボン酸エステル共重合体中のエステル基部分を前記金属含有カルボン酸塩に変換してもよい。
さらに金属イオンを含有する化合物は、周期表1族、2族、又は12族の金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、重炭酸塩、酢酸塩、ギ酸塩などであってもよい。
金属イオンを含有する化合物は、粒状あるいは微粉状で反応系に供給してもよく、水や有機溶媒に溶解又は分散させた後、反応系に供給してもよく、エチレン/不飽和カルボン酸共重合体やオレフィン共重合体をベースポリマーとするマスターバッチを作製し、反応系に供給してもよい。反応を円滑に進行させるためにはマスターバッチを作製し、反応系に供給する方法が好ましい。
さらにまた、金属イオンを含有する化合物との反応はベント押出機、バンバリーミキサー、ロールミルの如き種々の型の装置により、溶融混練することによって行ってもよく、反応はバッチ式でも連続法でもよい。反応によって副生する水及び炭酸ガスを脱気装置により排出することにより、円滑に反応を行うことができることからベント押出機のような脱気装置付きの押出機を用い連続的に行うことが好ましい。
金属イオンを含有する化合物との反応に際し、反応を促進させるために、少量の水を注入してもよい。
エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィン/不飽和カルボン酸エステル共重合体を加熱する温度は、エステルがカルボン酸になる温度であればよく、加熱温度が低すぎる場合はエステルがカルボン酸に変換されず、高すぎる場合には脱カルボニル化や共重合体の分解が進む。従って、本発明の加熱温度は、好ましくは80℃~350℃、より好ましくは100℃~340℃、更に好ましくは150℃~330℃、更により好ましくは200℃~320℃の範囲で行われる。
反応時間は加熱温度やエステル基部分の反応性等により変わるが、通常1分~50時間であり、より好ましくは2分~30時間であり、更に好ましくは2分~10時間であり、よりさらに好ましくは2分~3時間であり、特に好ましくは3分~2時間である。
上記工程において、反応雰囲気下に特に制限はないが、一般に不活性ガス気流下で行われるほうが好ましい。不活性ガスの例としては、窒素、アルゴン、二酸化炭素雰囲気が使用でき、なお、少量の酸素や空気の混入があってもよい。
上記工程で用いる反応器としては、特に制限は無いが、共重合体を実質的に均一に攪拌できる方法であれば何ら限定されず、攪拌器を装備したガラス容器やオートクレーブ(AC)を用いてもよいし、ブラベンダープラストグラフ、一軸あるいは二軸押出機、強力スクリュー型混練機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等の従来知られているいかなる混練機も使用することができる。
前駆体樹脂に対し金属イオンが導入され、アイオノマーとなったかどうかは、得られた樹脂のIRスペクトルを測定してカルボン酸(二量体)のカルボニル基に由来するピークの減少を調べることによって確認することができる。中和度も同じく、前述のモル比からの計算のほか、カルボン酸(二量体)のカルボニル基に由来するピークの減少と、カルボン酸塩基のカルボニル基に由来するピークの増加を調べることによって、確認することができる。
ポリアミド樹脂組成物中のアイオノマーの量は、前述のポリアミド樹脂との総和に対して0.1~99.9重量%含むことが好ましい。ポリアミド樹脂との総和に対して0.5~99.0重量%の範囲であることがより好ましく、1.0~95.0重量%の範囲であることがさらに好ましい。この範囲とすることで、ポリアミド樹脂組成物の耐衝撃性をより改良することができる。
3.ポリアミド樹脂組成物
本発明のポリアミド樹脂組成物は、上記ポリアミド樹脂(I)及びアイオノマー樹脂(II)を含む組成物である。本発明のポリアミド樹脂組成物は、上記2成分から構成することが可能であるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、他の物性を導入するために、上記ポリアミド樹脂(I)及びアイオノマー樹脂(II)以外の樹脂を配合することができる。そのような樹脂としては、例えば高分子量ポリエチレン、エチレン単独のホモポリマー、エチレン・α-オレフィン共重合体、ポリプロピレン、等のポリオレフィン樹脂を挙げることができる。これらの樹脂の配合量は、本発明のポリアミド樹脂組成物が奏する耐衝撃性を損なわない程度であれば特に制限されないが、上記ポリアミド樹脂(I)及びアイオノマー樹脂(II)の合計100重量部に対して、0~200重量部の範囲であることが好ましい。
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、従来公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、架橋剤、発泡剤、核剤、導電材、及び、充填材等の添加剤を配合してもよい。これらの添加剤の配合量は、当業者であれば各々適切な量を用いることができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、前記の各成分を前述の配合割合で任意の順序にて配合して、一軸押出機、二軸押出機、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーなど通常の混練機を用いて混練、造粒することによって製造することができる。この場合、各成分の分散を良好にすることができる混練、造粒方法を選択することが好ましく、特に二軸押出機を用いて、混練、造粒することが経済性等の面から好ましい。混練機は異なる混練方法による複数の機械を用いて多段階の混練としてもよい。
4.成形品
本発明の一態様は、上記ポリアミド樹脂組成物を用いた成形品である。本発明のポリアミド樹脂組成物は高い耐衝撃性を備えているため、物理的な強度が求められる、スポイラー、エアインテークダクト、インテークマニホールド、レゾネーター、燃料タンク、燃料フィラーチューブ、燃料デリバリーパイプ、その他各種ホース・チューブ・タンク類などの自動車部品、電動工具ハウジング、パイプ類などの機械部品をはじめ、電気・電子部品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品などの各種用途に有効である。また、アイオノマーが有する特性も活かされるため、食品用フィルムなどの包装材や、ゴルフボールのような衝撃を与えることが前提の製品にも有効に利用することができる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例における物性の測定と評価は、以下に示す方法によって実施した。また、表中のno dataは未測定を意味し、not detectedは検出限界未満を意味する。
(1)メルトフローレート(MFR)
MFRは、JIS K-7210(1999年)の表1-条件7に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定した。
(2)引張衝撃強さ
1)引張衝撃強さ試験サンプルの作製方法
試料を、厚さ1mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度230℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで試料を溶融すると共に試料中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、5分間保持した。その後、4.9MPaの圧力をかけた状態で、10℃/分の速度で徐々に冷却し、温度が室温付近まで低下したところでモールドから成形板を取り出した。得られた成形板を温度23±2℃、湿度50±5℃の環境下で48時間以上、状態調節した。状態調節後のプレス板からASTM D1822 Type-Sの形状の試験片を打ち抜き、引張衝撃強さ試験サンプルとした。
2)引張衝撃強さ試験条件
上記試験片を用い、JIS K 7160-1996のB法を参考として引張衝撃強さを測定した。なお、JIS K 7160-1996と異なるのは、試験片の形状のみである。その他測定条件等に関しては、JIS K 7160-1996に準じた方法で試験を実施した。
(3)複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δ(G=0.1MPaの測定)
1)試料の準備、測定
試料を厚さ1.0mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度180℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで溶融樹脂中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、5分間保持した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、厚さが約1.0mmの試料からなるプレス板を作製した。試料からなるプレス板を直径25mm円形に加工したものをサンプルとし、動的粘弾性特性の測定装置としてRheometrics社製ARES型回転式レオメータを用い、窒素雰囲気下において以下の条件で動的粘弾性を測定した。
・プレート:φ25mm(直径) パラレルプレート
・温度:160℃
・歪み量:10%
・測定角周波数範囲:1.0×10-2~1.0×10 rad/s
・測定間隔:5点/decade
複素弾性率の絶対値G(Pa)の常用対数logGに対して位相角δをプロットし、logG=5.0に相当する点のδ(度)の値をδ(G=0.1MPa)とした。測定点の中にlogG=5.0に相当する点がないときは、logG=5.0前後の2点を用いて、logG=5.0におけるδ値を線形補間で求めた。また、測定点がいずれもlogG<5であるときは、logG値が大きい方から3点の値を用いて2次曲線でlogG=5.0におけるδ値を補外して求めた。
(4)融点及び結晶化度
融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク温度によって示される。測定にはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製のDSC(DSC7020)を使用し、次の測定条件で実施した。
試料約5.0mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後に10℃/分で30℃まで降温させた。30℃で5分間保持した後、再度、10℃/分で昇温させる際の吸収曲線のうち、最大ピーク温度を融点Tmとし、融解吸熱ピーク面積から融解熱(ΔH)を求め、その融解熱を高密度ポリエチレン(HDPE)の完全結晶の融解熱293J/gで除することにより、結晶化度(%)を求めた。
(5)カルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基モノマーに由来する構造単位、と炭素1,000個当たりの分岐数の測定方法
共重合体中のカルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基モノマーに由来する構造単位、及び炭素1,000個当たりの分岐数は13C-NMRスペクトルを用いて求められる。13C-NMRは以下の方法によって測定した。
試料200~300mgをo-ジクロロベンゼン(CCl)と重水素化臭化ベンゼン(CBr)の混合溶媒(CCl/CBr=2/1(体積比))2.4ml及び化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れて窒素置換した後封管し、加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定試料とした。
NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・ジャパン(株)のAV400M型NMR装置を用いて120℃で行った。
13C-NMRは、試料の温度120℃、パルス角を90°、パルス間隔を51.5秒、積算回数を512回以上、逆ゲートデカップリング法で測定した。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンの13Cシグナルを1.98ppmに設定し、他の13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
1)試料の前処理
試料にカルボン酸塩基が含まれる場合は酸処理を行うことにより、カルボン酸塩基をカルボキシ基へと変性した後に測定に用いた。また試料にカルボキシ基が含まれる場合は、例えばジアゾメタンやトリメチルシリル(TMS)ジアゾメタンなどを用いたメチルエステル化などのエステル化処理を適宜行った。
2)カルボキシ基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位の算出
<E/tBA>
tBAのt-ブチルアクリレート基の四級炭素シグナルは、13C-NMRスペクトルの79.6~78.8に検出される。これらのシグナル強度を用い、以下の式からコモノマー量を算出した。
tBA総量(mol%)=I(tBA)×100/〔I(tBA)+I(E)〕
ここで、I(tBA)、I(E)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I(tBA)=I79.6~78.8
I(E)=(I180.0~135.0+I120.0~5.0-I(tBA)×7)/2
<E/tBA/iBA>
tBAのt-ブチルアクリレート基の四級炭素シグナルは、13C-NMRスペクトルの79.6~78.8ppm、iBAのイソブトキシ基のメチレンシグナルは70.5~69.8ppm、イソブトキシ基のメチルシグナルは19.5~18.9ppmに検出される。これらのシグナル強度を用い、以下の式からコモノマー量を算出した。
tBA総量(mol%)=I(tBA)×100/〔I(tBA)+I(iBA)+I(E)〕
iBA総量(mol%)=I(iBA)×100/〔I(tBA)+I(iBA)+I(E)〕
ここで、I(tBA)、I(iBA)、I(E)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I(tBA)=I79.6~78.8
I(iBA)=(I70.5~69.8+I19.5~18.9)/3
I(E)=(I180.0~135.0+I120.0~5.0-I(iBA)×7-I(tBA)×7)/2
<E/tBA/NB>
tBAのt-ブチルアクリレート基の四級炭素シグナルは、13C-NMRスペクトルの79.6~78.8ppm、NBのメチン炭素シグナルは41.9~41.1ppmに検出される。これらのシグナル強度を用い、以下の式からコモノマー量を算出した。
tBA総量(mol%)=I(tBA)×100/〔I(tBA)+I(NB)+I(E)〕
NB総量(mol%)=I(NB)×100/〔I(tBA)+I(NB)+I(E)〕
ここで、I(tBA)、I(NB)、I(E)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I(tBA)=I79.6~78.8
I(NB)=(I41.9~41.1)/2
I(E)=(I180.0~135.0+I120.0~5.0-I(NB)×7-I(tBA)×7)/2
なお、各モノマーの構造単位量が不等号を含む「<0.1」で示されている場合、多元共重合体中の構成単位として存在しているが有効数字を考慮して0.1mol%未満の量であることを意味する。
3)炭素1,000個当たりの分岐数の算出
多元共重合体に分岐が存在する場合は、主鎖に分岐が単独で存在する孤立型と、複合型(主鎖を介して分岐と分岐が対面した対面タイプ、分岐鎖中に分岐のあるbranched-branchタイプ、及び連鎖タイプ)が存在する。
以下は、エチル分岐の構造の例である。なお、対面タイプの例において、Rはアルキル基を表す。
Figure 0007419935000008
炭素1,000個当たりの分岐数は、以下の式のI(分岐)項に、下記のI(B1)、I(B2)、I(B4)のいずれかを代入し求める。B1はメチル分岐、B2はエチル分岐、B4はブチル分岐を表す。メチル分岐数はI(B1)を用い、エチル分岐数はI(B2)を用い、ブチル分岐数はI(B4)を用いて求める。
分岐数(個/炭素1,000個当たり)=I(分岐)×1000/I(total)
ここで、I(total)、I(B1)、I(B2)、I(B4)は以下の式で示される量である。
I(total)=I180.0~135.0 +I120.0~5.0
I(B1)=(I20.0~19.8+I33.2~33.1+I37.5~37.3)/4
I(B2)=I8.6~7.6 +I11.8~10.5
I(B4)=I14.3~13.7 -I32.2~32.0
ここで、Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI180.0~135.0は180.0ppmと135.0ppmの間に検出した13Cシグナルの積分強度を示す。
帰属は、非特許文献Macromolecules 1984, 17, 1756-1761、Macromolecules 1979,12,41を参考にした。
なお、各分岐数が不等号を含む「<0.1」で示されている場合、多元共重合体中の構成単位として存在しているが有効数字を考慮して0.1mol%未満の量であることを意味する。また、not detectedは検出限界未満を意味する。
<(製造例1):B-27DM/Ni錯体の合成>
B-27DM/Ni錯体は、国際公開第2010/050256号に記載された合成例4に従い、下記の2-ビス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスファノ-6-ペンタフルオロフェニルフェノール配位子(B-27DM)を使用した。国際公開第2010/050256号の実施例1に準じて、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル(0)(Ni(COD)と称する)を用いて、B-27DMとNi(COD)とが1対1で反応したニッケル錯体(B-27DM/Ni)を合成した。
Figure 0007419935000009
<(製造例2、製造例3、製造例10、製造例11):アイオノマー前駆体樹脂用共重合体の製造>
製造例1で作製した遷移金属錯体(B-27DM/Ni錯体)を用いて、エチレン/アクリル酸t-Bu/2-ノルボルネン(製造例2)、エチレン/アクリル酸t-Bu/アクリル酸i-Bu(製造例3)、エチレン/アクリル酸t-Bu共重合体(製造例10、製造例11)を製造した。特開2016-79408号公報に記載された製造例1又は製造例3を参考に共重合体の製造を行った。金属触媒種、金属触媒量、トリオクチルアルミニウム(TNOA)量、トルエン量、コモノマー種、コモノマー量、エチレン分圧、重合温度、重合時間など、適宜変更した製造条件、製造結果を表1に、得られた共重合体の物性を表2に示す。
また、製造例2及び3の樹脂組成を共重合体のランダム性に関する式に当てはめたところ、それぞれ100.08、101.20という値が得られた。また、製造例10及び製造例11の樹脂組成を共重合体のランダム性に関する式に当てはめたところ、それぞれ116.9、116.4という値が得られた。これらは得られた樹脂の融点より大きい値であり前記関係式50<Tm<-3.74×[Z]+130を満たすので、製造例2及び3の樹脂はいずれもランダム性が高い樹脂であると判断できる。
Figure 0007419935000010
Figure 0007419935000011
<(製造例4,製造例5,製造例12,製造例13):アイオノマー前駆体樹脂の製造>
内容積1.6mの攪拌翼付きSUS316L製のオートクレーブに、得られた製造例2、製造例3、製造例10、製造例11の樹脂のうちいずれか1種を100kgとパラトルエンスルホン酸一水和物を2.0kg、トルエンを173L投入し、105℃で4時間撹拌した。イオン交換水173Lを投入し撹拌、静置した後、水層を抜き出した。以後、抜き出した水層のpHが5以上となるまで、イオン交換水の投入と抜き出しを繰り返し行った。残った溶液を42mmφベント装置付二軸押出機(L/D=42)に投入し、ベントを真空に引くことで溶媒を留去した。さらに押出機先端のダイスから連続的にストランドの形で押出される樹脂を水中で冷却しカッターで切断することにより樹脂のペレットを得た。
得られた樹脂のIRスペクトルにおいて、t-Bu基に由来する850cm-1付近のピークの消失及び、エステルのカルボニル基に由来する1730cm-1付近のピークの減少と、カルボン酸(二量体)のカルボニル基に由来する1700cm-1付近のピークの増加を観測した。これにより、t-Buエステルの分解及びカルボン酸の生成を確認し、製造例4、製造例5、製造例12、製造例13を得た。得られた前駆体樹脂の物性を表3に示す。
Figure 0007419935000012
<(製造例6~製造例9,製造例14~製造例16)アイオノマーの製造>
1)Naイオン供給源の作製
容量60mlの小型ミキサーを取り付けた東洋精機(株)製ラボプラストミル:ローラミキサR60型に、エチレン/メタクリル酸(MAA)共重合体(三井・ダウポリケミカル(株)製 銘柄:Nucrel N1050H)を22gと炭酸ナトリウムを18g投入し、180℃、40rpmで3分間混練することでNaイオン供給源を作製した。
2)Znイオン供給源の作製
容量60mlの小型ミキサーを取り付けた東洋精機(株)製ラボプラストミル:ローラミキサR60型に、エチレン/メタクリル酸(MAA)共重合体(三井・ダウポリケミカル(株)製 銘柄:Nucrel N1050H)を21.8gと酸化亜鉛を18gとステアリン酸亜鉛を0.2g投入し、180℃、40rpmで3分間混練することでZnイオン供給源を作製した。
3):アイオノマーの作製
容量60mlの小型ミキサーを取り付けた東洋精機(株)製ラボプラストミル:ローラミキサR60型に、アイオノマー前駆体樹脂を40g投入し、160℃、40rpmで3分間混練し溶解させた。その後、イオン供給源を所望の中和度となるように投入し、250℃、40rpmで5分間混練を行った。アイオノマー作成に際し、アイオノマー前駆体樹脂の種類を製造例4及び製造例5、製造例12及び製造例13から選択し、また、イオン供給源をNa及びZnをそれぞれ組み合わせて製造例6~製造例9及び製造例14~製造例16のアイオノマーを作成した。それぞれの製造例で得られたアイオノマーのIRスペクトルを確認したところ、カルボン酸(二量体)のカルボニル基に由来する1700cm-1付近のピークが減少し、カルボン酸塩基のカルボニル基に由来する1560cm-1付近のピークが増加していた。得られたアイオノマーの物性を表4に示す。
〔実施例1/ポリアミド樹脂組成物の調製〕
容量60mlの小型ミキサーを取り付けた東洋精機(株)製ラボプラストミル:ローラミキサR60型に、ポリアミド(東レ社製、商品名:アミラン(登録商標)、グレード:CM6246M)樹脂44g、及び製造例6のアイオノマーを11g投入し、230℃、50rpmで5分間混練を行った。混練機から樹脂組成物を取出し冷却する事で実施例1の樹脂組成物を得た。
〔実施例2~8、比較例1~6、実施例9~15、比較例8、比較例9/ポリアミド樹脂組成物の調製〕
ポリアミド樹脂の種類と量、アイオノマーの種類と量、アイオノマー前駆体樹脂の種類と量を、それぞれ表5、6に記載した内容に変更した以外は実施例1と同様の方法で実施例2~8、実施例9~15、及び比較例1~6、比較例8、比較例9の樹脂組成物を得た。なお、表5、6に記載したHIM1605、HIM1707、HIM1555、HIM1707は、三井・ダウポリケミカル(株)製 銘柄:HIMILAN の各グレードを用いた。また、実施例12~実施例15では、ポリアミド12(Ems-Chemie Holding AG製 銘柄:Grilamid L25AH)を使用した。表中のno dataは情報が無く不明であることを示している。
〔比較例7〕
容量60mlの小型ミキサーを取り付けた東洋精機(株)製ラボプラストミル:ローラミキサR60型に、ポリアミド(東レ社製、商品名:アミラン(登録商標)、グレード:CM6246M)のみを55g投入し、230℃、50rpmで5分間混練を行った。混練機から樹脂組成物を取出し冷却する事で比較例7の樹脂組成物を得た。
〔比較例10〕
容量60mlの小型ミキサーを取り付けた東洋精機(株)製ラボプラストミル:ローラミキサR60型に、ポリアミド12(Ems-Chemie Holding AG製 銘柄:Grilamid L25AH)のみを55g投入し、230℃、50rpmで5分間混練を行った。混練機から樹脂組成物を取出し冷却する事で比較例7の樹脂組成物を得た。
Figure 0007419935000013
Figure 0007419935000014
Figure 0007419935000015
4.実施例/比較例の考察
実施例1~実施例11は本発明に関わる構成要件を満たしたポリアミド樹脂組成物であり、高い耐衝撃性を示す。実施例3~実施例8のポリアミド樹脂組成物は、さまざまな樹脂組成比率でありながら、それぞれで優れた耐衝撃性を示しており、アイオノマーの添加量にかかわらず耐衝撃性の改良効果があることを示している。一方で比較例7は、ポリアミド樹脂単体である為、耐衝撃性が劣る。比較例1~比較例4は、ブレンドしたアイオノマーの位相角が50°より小さく本発明に関わる構成要件を満たさない、長鎖分岐を多く含む構造を有するアイオノマーをポリアミド樹脂にブレンドしている為、耐衝撃性の改良が十分では無い。特に比較例3は、従来のアイオノマーでは耐衝撃性を低下させてしまうこともあることが示されている。比較例5及び比較例6はアイオノマーとなる前の前駆体樹脂をポリアミド樹脂にブレンドしている為、耐衝撃性の改良が十分では無い。
実施例12~実施例15は本発明に関わる構成要件を満たしたポリアミド樹脂組成物であり、高い耐衝撃性を発現している。この事実は、ポリアミド樹脂の種類によらず、本願の構成要件を満たしたポリアミド樹脂組成物であれば、耐衝撃性の改良効果があることを示している。一方で、比較例10は、ポリアミド樹脂単体である為、耐衝撃性が劣る。比較例8、比較例9は、ブレンドしたアイオノマーの位相角が50°より小さく本発明に関わる構成要件を満たさない、長鎖分岐を多く含む構造を有するアイオノマーをポリアミド樹脂にブレンドしている為、耐衝撃性の改良が十分では無い。
以上の各実施例の良好な結果、及び各比較例との対照により、本発明の構成(発明特定事項)の有意性と合理性、及び従来技術に対する卓越性が明確にされている。
本開示のアイオノマーを用いたポリアミド樹脂組成物は、従来の樹脂と比較して耐衝撃性に優れている。よって本発明は、特に自動車部品、電動工具ハウジング、機械部品、電気・電子部品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品、包装材や、ゴルフボールのなど各種成形品に有効に利用することができる。

Claims (8)

  1. ポリアミド樹脂(I)とアイオノマー(II)を含むポリアミド樹脂組成物であって、アイオノマー(II)が下記の要件を満たすアイオノマーであることを特徴とするポリアミド樹脂組成物。
    エチレン及び/又は炭素数3~20のα-オレフィンに由来する構造単位(A)と、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基を有するモノマーに由来する構造単位(B)を必須構成単位として含む共重合体(P)中の、カルボキシル基及び/又はジカルボン酸無水物基の少なくとも一部が周期表1族、2族、又は12族から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する金属含有カルボン酸塩に変換されてなり、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δが、50度~75度であり、
    前記ポリアミド樹脂(I)及び前記アイオノマー(II)の組成比率がそれぞれ、
    ポリアミド樹脂(I):5.0重量%~99.0重量%
    アイオノマー樹脂(II):95.0重量%~1.0重量%
    の範囲であることを特徴とするアイオノマー。
  2. 前記共重合体(P)の13C-NMRにより算出されるメチル分岐数が、炭素1,000個当たり50個以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  3. 前記共重合体(P)の13C-NMRにより算出されるメチル分岐数が、炭素1,000個当たり5個以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
  4. 前記共重合体(P)が、共重合体中に前記構造単位(B)を2~20mol%含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 前記構造単位(A)が、エチレンに由来する構造単位であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. 前記共重合体(P)が周期表第8~11族の遷移金属を含む遷移金属触媒を用いて製造されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物。
  7. 前記遷移金属触媒がリンスルホン酸又はリンフェノール配位子とニッケル又はパラジウムからなる遷移金属触媒であることを特徴とする、請求項に記載のポリアミド樹脂組成物。
  8. 請求項1~のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂組成物を成形して成ることを特徴とする成形品。
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