JP2015025126A - 熱可塑性樹脂用相溶化材、改質材及び樹脂組成物 - Google Patents
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- BASNXGXHMRQPHY-UHFFFAOYSA-N CC(C)c(cccc1)c1P(c1ccccc1OC)c(cccc1)c1S(O)(=O)=O Chemical compound CC(C)c(cccc1)c1P(c1ccccc1OC)c(cccc1)c1S(O)(=O)=O BASNXGXHMRQPHY-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
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Abstract
Description
なお、高圧ラジカル法重合プロセスを用いずに重合された極性基含有オレフィン共重合体の例としては、いわゆるマスキング法と呼ばれる、特定のメタロセン系触媒及び十分な量の有機アルミニウム(極性基含有モノマーと等モル以上)の存在下で重合する製法発明の中に、(2,7−octadien−1−yl)succinic anhydrideとエチレン、及び1−ブテンを共重合させた極性基含有オレフィン共重合体が示されている(特許文献8を参照)。
しかし、この発明によると、極性基含有オレフィンの共重合の重合に際し、多量の有機アルミニウムを必要とし、製造コストが高くならざるを得ない。また、多量の有機アルミニウムは不純物として極性基含有オレフィン共重合体中に存在する事となり、機械物性の低下や変色、劣化の促進を引き起こし、これを除去するには更なるコストアップにつながる。更に発明の効果は、主として高い重合活性で極性基含有オレフィン共重合体を製造することであり、ポリアミドや他のエンジニアリングプラスチックスへの改質効果についても触れられていない。
I)エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーとの共重合体である。
II)ランダム共重合体である。
III)共重合体の分子鎖内部に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量が、分子鎖末端に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量より多い。
IV)直鎖状の分子構造を有する共重合体である。
V)遷移金属触媒の存在下に共重合される共重合体である。
I)エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーとの共重合体である。
II)ランダム共重合体である。
III)共重合体の分子鎖内部に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量が、分子鎖末端に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量より多い。
IV)直鎖状の分子構造を有する共重合体である。
V)遷移金属触媒の存在下に共重合される共重合体である。
また、本発明による特定の分子構造を持った相溶化材、改質材及びそれにより得られた樹脂組成物は、有用な多層成形体として応用可能であり、さまざまな用途に使用可能である。
(1)極性基含有オレフィン共重合体(C)
本発明に関わる熱可塑性樹脂用相溶化材または改質材は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有オレフィン共重合体である。
本発明に関わる相溶化材とは、極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)に対してオレフィン系樹脂(A)を相溶化させるにあたり、分散性を向上させる樹脂材料の事を示している。また、本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(C)を、極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)に対して単独で添加する事により、極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)を改質する事も可能である。このような効果を持った本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体を改質材と表記する事がある。
本発明に関わるα−オレフィンは構造式:CH2=CHR18で表される、炭素数3〜20のα−オレフィンである(R18は炭素数1〜18の炭化水素基であり、直鎖構造であっても分岐を有していてもよい)。より好ましくは、炭素数3〜12のα−オレフィンであり、さらに好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンから選択されるα−オレフィンであり、より好適には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンから選択されるα−オレフィンである。重合に供するα−オレフィンは単独でも良いし、2種以上であっても構わない。
本発明に関わる極性基を含有しないモノマーは、分子構造中に炭素−炭素二重結合を1つ以上有するモノマーであり、かつ、分子を構成する元素が炭素と水素のみであれば限定されず、例えば、ジエン、トリエン、芳香族ビニルモノマー、環状オレフィン等が挙げられ、好ましくは、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、シクロヘキセン、ビニルノルボルネン、ノルボルネンである。
本発明に関わる極性基含有モノマーは、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含有する必要がある。カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を持った極性基含有オレフィン共重合体を、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマーなどの極性基を持つ熱可塑性樹脂に対して添加する事により、耐衝撃性、耐薬品性、流動性、成形性等の物性に対する改質効果を付与する事が可能となる。さらに、相溶化材又は改質材を構成する共重合体中に含有される官能基がジカルボン酸無水物であると、極性基を持つ熱可塑性樹脂の改質効果の面からより有用である。
構造式(I)
特定の官能基:カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を必須で含み、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)
構造式(II)
(特定の官能基:カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を必須で含み、さらに、炭化水素基、カルボニル基、エーテル基のいずれかを更に必須で含む、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)
これらの中で特に、下記化学式で表される2,7−オクタジエン−1−イルコハク酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物などが好ましい。
さらに、極性基を持つ熱可塑性樹脂の耐衝撃性改質効果の面から、2,7−オクタジエン−1−イルコハク酸無水物などの、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基が結合するコモノマー骨格が、炭素数1〜20、好ましくは炭素数3〜20の、分岐又は不飽和結合を有してもよい脂肪族炭化水素であるコモノマーがより有用である。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体の構造単位と構造単位量について説明する。
エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィン、及び極性基含有モノマー、それぞれ1分子に由来する構造を、極性基含有オレフィン共重合体中の1構造単位と定義する。そして、極性基含有オレフィン共重合体中の各構造単位の比率をmol%で表したものが構造単位量である。例えば、下記の構造中のA1、A2及びA3の極性基含有モノマーに由来する構造がそれぞれ構造単位であり、それぞれの存在比率が構造単位量となる。
本発明に関わるカルボキシル基又はジカルボン酸無水物基含有モノマーに由来する構造単位量は、通常20〜0.001mol%の範囲、好ましくは15〜0.01mol%の範囲、より好ましくは10〜0.02mol%の範囲、より好適には5〜0.03mol%の範囲から選択され、必ず本発明の極性基含有オレフィン共重合体に存在していることが好ましい。もし、この範囲より極性基含有モノマーに由来する構造単位量が少なければ、極性基を持つ熱可塑性樹脂との相互作用が十分ではなく、オレフィン系樹脂をブレンドした際の改質効果が発揮されない。また、この範囲より多ければ充分な機械物性が得られない。更に、用いられるカルボキシル基又はジカルボン酸無水物基含有モノマーは単独でも良く、2種類以上を合わせて用いても良い。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体中の極性基の構造単位量は1H−NMRスペクトルを用いて求められる。1H−NMRスペクトルは以下の方法によって測定した。
試料200〜250mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C6D5Br)=4/1(体積比)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れて窒素置換した後封管し、加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定に供した。NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400M型NMR装置を用いて120℃で行った。1H−NMRはパルス角1°、パルス間隔1.8秒、積算回数を1,024回以上として測定した。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチルプロトンのピークを0.088ppmとして設定し、他のプロトンによるピークの化学シフトはこれを基準とした。13C−NMRはパルス角90°、パルス間隔20秒、積算回数512回以上とし、プロトン完全デカップリング法で測定した。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチル炭素のピークを1.98ppmとして設定し、他の炭素によるピークの化学シフトはこれを基準とした。
1H−NMRスペクトルから以下の方法によってコモノマー含有量を求めた。
ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物(NB−DCA)の構造単位量
極性基含有モノマーが5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物である場合、極性基含有モノマーが分子鎖末端に導入された場合には、下記A1の構造(以下構造A1と記す)を、分子鎖の主鎖内部に導入された場合にはA2の構造(以下構造A2と記す)を持つ。13C−NMRスペクトルの33.6ppm付近には構造A1の二重結合に隣接するメチレン炭素A1αのピークが、42.1ppm付近には構造A2のメチン炭素A2brのピークが検出される。また、29.9ppm付近には主鎖メチレン炭素によるピークが検出される。例えば33.6ppm付近の炭素A1αのピークの積分強度をI33.6等と表記した時、構造A1及びA2の含有量は以下の式−1、2より求められる。
=2×I33.6×100/(2×I33.6+I42.1+I29.9)・・・式−1
構造A2含有量(mol%)
=I42.1×100/(2×I33.6+I42.1+I29.9)・・・式−2
極性基の総構造単位量は上記式−1及び2で求めた構造A1含有量と構造A2含有量の和として求めることができる。
極性基含有モノマーが(2,7−オクタジエン−1−イル)コハク酸無水物である場合、極性基含有モノマーが分子鎖の主鎖内部に導入された場合にはA3の構造(以下構造A3と記す)を持つ。この場合、38.0ppm付近に主鎖に結合した構造A3のメチン炭素A3brのピークが検出される。また、極性基含有モノマーが主鎖内部に導入されても、分子鎖末端に導入されても何れも41.0ppm付近にコハク酸無水物基のメチン炭素A3CHのピークを生じる。38.0ppm付近の炭素A3brのピークの積分強度をI38.0、41.0ppm付近の炭素A3CHのピーク積分強度をI41.0等と表記した時、極性基の総構造単位量と構造A3の含有量は式−3、4より求められる。
=2×I41.0×100/(2×I41.0+I29.9)・・・式−3
=2×I38.0×100/(2×I41.0+I29.9)・・・式−4
一方、分子鎖末端に含まれるカルボキシル基又はジカルボン酸無水物基含有モノマーに由来する構造単位量は、15mol%以下、好ましくは10mol%以下より好ましくは5mol%以下、更に好ましくは0.1mol%以下の範囲から選択され、0.001mol%程度の極めて微量存在するか又は0mol%であってもよい。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンとカルボキシル基又はジカルボン酸無水物基含有モノマーの共重合体のランダム共重合体である。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体の分子構造例を下記段落に示す。ランダム共重合体とは、下記段落に示した分子構造例のA構造単位とB構造単位の、ある任意の分子鎖中の位置においてそれぞれの構造単位を見出す確率が、その隣接する構造単位の種類と無関係な共重合体である。また、極性基含有オレフィン共重合体の分子鎖末端は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンであっても良く、極性基含有モノマーであっても良い。
B:カルボキシル基またはジカルボン酸無水物基を含むモノマー
B:カルボキシル基またはジカルボン酸無水物基を含むモノマー
本発明に関わる熱可塑性樹脂用相溶化材または改質材は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーを少なくとも含む極性基含有オレフィン共重合体であり、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーを必須で含まなくてはならないが、さらにその他のモノマーを第3の成分として含んでも良い。その他のモノマーは通常、20〜0.00mol%の範囲、好ましくは15〜0.00mol%、より好ましくは10〜0.00mol%、更に好ましくは5〜0.00mol%の範囲である。
好ましい(メタ)アクリル酸エステルとして、R1は、水素原子または炭素数1〜5の炭化水素基である(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。より好ましいものとしては、R1が水素原子であるアクリル酸エステル又はR1がメチル基であるメタクリル酸エステルが挙げられる。
なお、単独の(メタ)アクリル酸エステルを使用してもよいし、複数の(メタ)アクリル酸エステルを併用してもよい。
また、極性基含有コモノマーとして、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジメチルアミド等も、(メタ)アクリル酸エステルに類似する化合物として、例示される。
好ましい化合物として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、(4−ヒドロキシブチル)アクリレートグリシジルエーテル、4−(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)アクリレートが挙げられる。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常1,000〜2,000,000、好ましくは5,000〜1,000,000、更に好ましくは10,000〜500,000の範囲であることが望ましい。
Mwが1,000未満では極性基を持つ熱可塑性樹脂に対する改質効果が充分ではなく、2,000,000を超えると溶融粘度が非常に高くなり、極性基を持つ熱可塑性樹脂とのメルトブレンドが困難となる。
(測定条件)使用機種:ウォーターズ社製150C 検出器:FOXBORO社製MIRAN1A・IR検出器(測定波長:3.42μm) 測定温度:140℃ 溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB) カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本) 流速:1.0mL/分 注入量:0.2mL
(試料の調製)試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
(分子量の算出)標準ポリスチレン法により行い、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の、(F380、F288、F128、
F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000)の銘柄である。各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体の融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク温度によって示される。最大ピーク温度とは、DSC測定において、縦軸に熱流(mW)、横軸に温度(℃)をとった際に得られる吸熱曲線に複数ピークが示された場合、そのうちベースラインからの高さが最大であるピークの温度の事を示し、ピークが1つだった場合には、そのピークの温度の事を示している。
ポリエチレンを想定した場合、融点は50℃〜140℃であることが好ましく、60℃〜138℃であることが更に好ましく、70℃〜135℃が最も好ましい。この範囲より低ければ耐熱性が充分ではなく、この範囲より高い場合は極性基を持つ熱可塑性樹脂に対する改質効果が劣るものとなる。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体は、遷移金属触媒を用いてエチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含んだ極性基含有モノマーと、必要に応じてその他のモノマーを共重合させることによって得られる。
本発明に関わる重合触媒の種類は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含んだ極性基含有モノマーとを共重合することが可能なものであれば特に限定されないが、例えば、キレート性配位子を有する第5〜11族の遷移金属化合物を触媒として用い、重合する方法がある。
好ましい遷移金属の具体例として、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子、マンガン原子、鉄原子、白金原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子、銅原子などが挙げられる。
これらの中で好ましくは、バナジウム原子、鉄原子、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子、ロジウム原子、であり、特に好ましくは、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子である。これらの金属は、単一であっても複数を併用してもよい。
さらに、本発明に関わる遷移金属錯体の遷移金属は、Mがニッケル(II)、パラジウム(II)、白金(II)、コバルト(II)及びロジウム(III)からなる群から選択される元素であることが、さらには第10族の元素であることが重合活性の観点から好ましく、特に価格等の観点から、ニッケル(II)が好ましい。キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位( bidentate )又は多座配位(multidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Brookhartらによる総説に、その構造が例示されている(Chem.Rev.,2000,100,1169)。
好ましくは、二座アニオン性P,O配位子として例えば、リンスルホン酸、リンカルボン酸、リンフェノール、リンエノラートが挙げられ、他に、二座アニオン性N,O配位子として例えば、サリチルアルドイミナ−トやピリジンカルボン酸が挙げられ、他に、ジイミン配位子、ジフェノキサイド配位子、ジアミド配位子が挙げられる。
より好ましくは、下記構造式(C)で表される遷移金属錯体である。
Shop系触媒は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがニッケル金属に配位した触媒である(例えば、WO2010‐050256号公報を参照)。また、Drent系は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがパラジウム金属に配位した触媒である(例えば、特開2010−202647号公報を参照)。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体の製造において、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基含有モノマーと少量の有機金属化合物とを接触させた後、前記の遷移金属触媒の存在下、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基含有モノマーとを共重合させることにより重合活性をより高められる。
有機金属化合物は、置換基を有してもよい炭化水素基を含んだ有機金属化合物であり、下記構造式(H)で示すことができる。
R30 nM30X30 m−n 構造式(H)
(式中、R30は、炭素原子数1〜12の置換基を有してもよい炭化水素基を示し、M30は、周期表第1族、第2族、第12族及び第13族からなる群から選択される金属、X30は、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは、M30の価数、nは、1〜mである。)
有機金属化合物は、極性基含有コモノマーに対するモル比が10−5〜0.9、好ましくは10−4〜0.2、更に好ましくは10−4〜0.1となる量を接触させることが、重合活性やコストの観点から好ましい。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体の1g中に残留するアルミニウム(Al)量は、100,000μgAl/g以下が好ましく、70,000μgAl/g以下がより好ましく、20,000μgAl/g以下が更に好ましく、10,000μgAl/g以下が特に好ましく、5,000μgAl/g以下が好適であり、1,000μgAl/g以下がより好適であり、500μgAl/g以下が最も好適である。これよりも多い場合、極性基含有オレフィン共重合体の機械物性の低下、重合生成物の変色や劣化の促進等が起こる。アルミニウム(Al)の残留量は可能な範囲で少ない方が良く、例えば、1μgAl/g程の極少量であっても良いし、0μgAl/gであっても構わない。なお、μgAl/gは極性基含有オレフィン共重合体1g中に含まれるアルミニウム(Al)の量をμg単位で表していることを意味する。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体に含まれるアルミニウム(Al)量は、重合に供したアルキルアルミニウム中に含有されるアルミニウム量を、得られた極性基含有オレフィン共重合体の収量で除した値として算出することができる。
測定試料を3〜10g秤量し、加熱プレス機で加熱加圧成型して直径45mmの平板状サンプルを作製する。測定は平板状サンプルの中心部直径30mmの部分について行い、理学電気工業社製の走査型蛍光X線分析装置「ZSX100e」(Rh管球4.0kW)を用いて、以下の条件で測定する。
・X線出力:50kV−50mA
・分光結晶:PET
・検出器:PC(プロポーショナルカウンター)
・検出線:Al−Kα線
アルミニウム含有量は、予め作成した検量線と上記条件で測定した結果から求める事が出来る。検量線は複数のポリエチレン樹脂のアルミニウム含量をICP分析にて測定し、それらポリエチレン樹脂を上記の条件でさらに蛍光X線分析する事で作成する事ができる。
測定試料及び特級硝酸3ml、過酸化水素水(過酸化水素含量30重量%)1mlをテフロン(登録商標)製容器に入れ、マイクロウェーブ分解装置(マイルストーンゼネラル社製 MLS−1200MEGA)を用い、最大500Wで加熱分解操作を実施し、測定試料を溶液化する。溶液化した測定試料をICP発光分光分析装置(サーモジャーレルアッシュ社製 IRIS−AP)に供することによりアルミニウム含有量が測定できる。アルミニウム含有量の定量はアルミニウム元素濃度が既知の標準液を用いて作成した検量線を用いて行う。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体の重合方法は限定されない。媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが好ましく用いられる。また、重合形式としては、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。また、リビング重合であってもよいし、連鎖移動を併発しながら重合を行ってもよい。更に、いわゆるchain shuttling agent(CSA)を併用し、chain shuttling反応や、coordinative chain transfer polymerization(CCTP)を行ってもよい。具体的な製造プロセス及び条件については、例えば、特開2010−260913号公報、特開2010−202647号公報を参照することができる。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体への極性基の導入方法は限定されない。本発明の主旨は遷移金属触媒の存在下に共重合され、分子構造が直鎖状でかつランダム共重合であり、かつ特定の極性基を有する極性基含有オレフィン共重合体を用いることである。本発明の主旨を逸脱しない範囲においては種々の方法により特定の極性基を導入することができる。例えば、特定の極性基を有する極性基含有コモノマーを直接共重合する方法や、他の極性基含有コモノマーを共重合した後、変性により特定の極性基を導入する方法などが挙げられる。変性により特定の極性基を導入する方法としては、例えばカルボン酸を導入する場合、アクリル酸t−ブチルを共重合した後、熱分解によりカルボン酸に変化させる方法等が挙げられる。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体には、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、架橋剤、発泡剤、核剤、難燃剤、導電材、充填材などの添加剤を配合しても良い。
(1)オレフィン系樹脂(A)の基本的な特徴
本発明に関わるオレフィン系樹脂(A)は、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系、フィリップス型又はシングルサイト触媒を用い高中低圧法及びその他の公知の方法により得られる、エチレン単独重合体、炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを重合して得られる単独重合体、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを少なくとも1種含むオレフィン系共重合体から選択する事が出来る。
本発明に関わるα−オレフィンは構造式:CH2=CHR18で表される、炭素数3〜20のα−オレフィンである(R18は炭素数1〜18の炭化水素基であり、直鎖構造であっても分岐を有していてもよい)。より好ましくは、炭素数3〜12のα−オレフィンであり、さらに好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンから選択されるα−オレフィンであり、より好適には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンから選択されるα−オレフィンである。重合に供するα−オレフィンは単独でも良いし、2種以上であっても構わない。
本発明に関わる単独重合体は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される1種類のモノマーのみを重合して得られる。より好ましい単独重合体は、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、1−ブテン単独重合体、1−ヘキセン単独重合体、1−オクテン単独重合体、1−ドデセン単独重合体等であり、さらに好ましくはエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体である。
本発明に関わるオレフィン系共重合体は、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、環状オレフィン、その他の極性基を含有しないビニルモノマー、極性基を含有するビニルモノマー、から選択されるモノマーの2種以上を重合する事で得られる共重合体であって、エチレンもしくは炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを少なくとも1種類以上を含有してなるオレフィン系共重合体である。重合に供されるモノマーは2種類であっても良いし、3種類以上であっても良い。オレフィン系共重合体として好ましいのは、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される1種以上のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと環状オレフィンから選択される1種以上の環状オレフィンとの共重合体である。更に好ましいのはエチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンから選択される1種、もしくは2種以上のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとノルボルネンの共重合体である。
本発明に関わる環状オレフィンは、例えば、シクロヘキセン及びシクロオクテン等の単環状オレフィン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環状オレフィン、これらのオレフィンに官能基が結合した置換体などが挙げられる。なかでも、好ましい環状オレフィンとしてはノルボルネンが挙げられる。ノルボルネンが共重合されたオレフィン系共重合体は一般に、主鎖骨格が脂環構造であるため低吸湿性を有し、また、その付加重合体は耐熱性にも優れる。
本発明に関わる極性基を含有しないモノマーは、分子構造中に炭素−炭素二重結合を1つ以上有し、かつ、分子を構成する元素が炭素と水素からなるモノマーである。上記のエチレンとα-オレフィンを除くと、例えば、ジエン、トリエン、芳香族ビニルモノマー等が挙げられ、好ましくは、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネンである。
本発明に関わる極性基を含有するモノマーは限定されないが、例えば、カルボン酸基又は酸無水基含有モノマー(a)、エステル基含有モノマー(b)、ヒドロキシル基含有モノマー(c)、アミノ基含有モノマー(d)、シラン基含有モノマー(e)から選択する事が出来る。
本発明に関わるオレフィン系樹脂(A)の製造方法は限定されないが、例えば、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系、フィリップス型又はシングルサイト触媒を用い高中低圧法及びその他の公知の方法を例示する事ができる。オレフィン系樹脂(A)は、例えば、特公昭55−14084号公報、特公昭58−1708号公報、特開平08−301933号公報、特開平09−286820号公報、特開平11−228635号公報、特開2003−064187号公報、特開2000−109521号公報、特表2003−519496号公報、特表2003−504442号公報、特表2003−531233号、特開平8−325333号公報、特開平9−031263号公報、特開平9−087440号公報、特開2006−265387号公報、特開2006−265388号公報、特開2006−282927号公報、特表2001−525457号公報、特表2004−531629号公報、特開2005−120385号公報、特開昭58−19309号公報、特開昭59−95292号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭60−35009号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報の各公報、ヨーロッパ特許出願公開第420,436号明細書、米国特許第5,055,438号明細書、及び国際公開公報W091/04257号明細書等、に記載された各種の製造方法によって製造する事が可能である。
本発明に関わるオレフィン系樹脂(A)の密度は、JIS K7112−A法(1999年)に準拠し測定され、通常0.840〜1.20g/cm3、好ましくは0.850〜0.990g/cm3、更に好ましくは0.860〜0.980g/cm3、好適には0.870〜0.970g/cm3の範囲であることが望ましい。密度が1.20g/cm3を超える場合には耐衝撃性などの物性が充分ではなく、0.840g/cm3未満では耐熱性が劣るものとなる。
本発明に関わるオレフィン系樹脂(A)のMFRは、JIS K7120(1999年)に準拠し条件Dに基づき、温度190℃において荷重2.16kgの条件で測定され、通常0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜80g/10分、更に好ましくは0.3〜50g/10分の範囲であることが望ましい。MFRが100g/10分を超える場合には機械的強度や耐衝撃性などの物性が充分ではなく、0.01g/10分未満では溶融粘度が非常に高くなり、成形加工が困難となる。
(1)極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)について
極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)としては、その分子構造中にカルボキシル基又はジカルボン酸無水物基と化学的な結合が可能な極性基を含有していると、メルトブレンドした際の改質効果を十分に発揮する事が可能となり、好ましい。具体的には、例えば、アミノ基、アミド基、イミド基、カルボキシル基、ハロゲン化カルボキシル基、ヒドロキシル基、カーボネート基、エステル基、エーテル基、イソシアネート基、シラノール基、アルデヒド基、スルフィド基、等が挙げられ、特に、アミノ基、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルフィド基が好ましい。
ポリアミドとしては、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、12−ナイロン、11−ナイロン、9−ナイロン、7−ナイロン、ポリアミド4,6、ポリアミド6,12、ポリメタキシリレンアジパミド、芳香族ナイロン、例えば、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリエステルとしては、芳香環含有ポリエステルおよび脂肪族ポリエステルが挙げられる。ここで、芳香環含有ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリ−p−フェニレンマロネート、ポリ−p−フェニレンアジペート、ポリ−p−フェニレンテレフタレート等のポリ−p−フェニレンエステル等が挙がられ、脂肪族ポリエステルとしては、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート、等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリカーボネートは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法や、ジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法等によって得られる重合体または共重合体である。これらの中で、代表的なのもとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)とホスゲンから製造された芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリアセタールとしては、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリオキシフェニレン(PPO)およびポリ−1,3−ジオキソラン等が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリフェニレンエーテルは、芳香族ポリエーテル構造を持つ合成樹脂であり、前記ポリフェニレンエーテル系樹脂の具体例としては、例えば、ポリ(2,6−ジメチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチルフェニレン−4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2,6−ジエチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−プロピルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−メチル−6−ブロムフェニレン−1,4−エーテル)、ポリ(2−エチル−6−クロルフェニレン−1,4−エーテル)などがあげられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリフェニレンサルファイドとは、フェニル基(ベンゼン環)とイオウ(S)が交互に繰り返される分子構造を持った高性能エンジニアリング・プラスチックである。これらは単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
液晶ポリマー(LCP)は、一般に溶融状態で液晶性(分子が規則正しく並んだ結晶と、無秩序に並んだ液体の中間に当たる状態)を示すスーパーエンプラである。厳密には、パラヒドロキシ安息香酸などを基本構造としつつ、それのみによるホモポリマーでは融点が熱分解温度を上回ってしまうため、各種の成分と直鎖状にエステル結合させた芳香族ポリエステル系樹脂である。
(1)熱可塑性樹脂組成物について
本発明に関わる熱可塑性樹脂組成物は、極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)の100重量部に対し、極性基含有オレフィン共重合体(C)からなる相溶化材又は改質材とオレフィン系樹脂(A)の合計が1〜1000重量部配合したものである。極性基含有オレフィン共重合体(C)とオレフィン系樹脂(A)の配合量の合計は、好ましくは2〜800重量部、より好ましくは3〜500重量部、さらに好ましくは4〜300重量部、特に5〜100重量部であれば好適である。極性基含有オレフィン共重合体(C)とオレフィン系樹脂(A)の配合量が1より少なくても、また1000重量部より多くても、極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)に対する改質効果が低いものとなる。また、熱可塑性樹脂組成物に含まれる極性基含有オレフィン共重合体(C)は単独であっても良く、複数を用いても良い。また、オレフィン系樹脂(A)は単独であっても複数を用いても良い。さらには、極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)は単独であっても複数を用いても良い。
本発明に関わる熱可塑性樹脂組成物に含まれる相溶化材に対するオレフィン系樹脂(A)の配合量の割合は、極性基含有オレフィン共重合体(C)からなる相溶化材又は改質材100重量部に対し、オレフィン系樹脂(A)が0〜10000重量部である。極性基含有オレフィン共重合体(C)100重量部に対するオレフィン系樹脂(A)の配合量の割合は、好ましくは0〜8000重量部、より好ましくは1〜6000重量部、さらに好ましくは2〜4000重量部、特に5〜1000重量部であれば好適である。極性基含有オレフィン共重合体(C)100重量部に対するオレフィン系樹脂(A)の配合量の割合が10000より多いと、相溶化材に含有されているカルボキシル基又はジカルボン酸無水物基の量が相対的に低くなり、極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)とオレフィン系樹脂(A)との化学的な相互作用がほとんどなくなる為、極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)に対する改質効果が十分ではなくなる。また、極性基含有オレフィン共重合体(C)に対するオレフィン系樹脂(A)の配合量の割合は低いほど、極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)に対する改質効果が高まると考えられるが、コスト面を考慮すると、オレフィン系樹脂(A)の配合量は多い方が有利である。すなわち、極性基含有オレフィン共重合体(C)に対するオレフィン系樹脂(A)の配合量は0であっても十分な改質効果が得られるものの、極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)に対する改質効果が満足される範囲であれば、オレフィン系樹脂(A)の配合量は多い方が良い。
本発明に関わる熱可塑性樹脂組成物は公知の方法を利用して製造することができ、例えば、相溶化材とオレフィン系樹脂(A)と極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)、および、所望により添加される他成分を、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、往復式混練機(BUSS KNEADER)、ロール混練機等、などを用いて溶融混練する方法等で製造することができる。
溶融混練は、全ての材料を同時に混練装置に供して行っても良いが、例えば以下の要領で複数の工程で実施しても良い。例えば、相溶化材とオレフィン系樹脂(A)とを予め、上記の混練方法等によって溶融混練し、得られた混合物と極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)とをさらに溶融混練する方法、予め極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)を溶融混練しておき、相溶化材とオレフィン系樹脂(A)とをさらに加えて溶融混練する方法、相溶化材と極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)とを予め溶融混練し、得られた混合物とオレフィン系樹脂(A)をさらに加えて溶融混練する方法等が挙げられる
本発明に関わる熱可塑性樹脂組成物には、本発明の樹脂組成物の機能の主旨を逸脱しない範囲において、他の機能を付加するために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、架橋剤、発泡剤、核剤、難燃剤、充填材、導電材などの添加剤を配合しても良い。
本発明に関わる熱可塑性樹脂組成物には、本発明の樹脂組成物の機能の主旨を逸脱しない範囲において、各種の樹脂改質材などを配合してもよい。その成分としては、ブタジエン系ゴム、イソブチレンゴム、イソプレン系ゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、石油樹脂などが挙げられ、これらは単独でも混合物でもよい。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体の製造方法、熱可塑性樹脂組成物の製造方法、各種の物性測定方法は以下の通りである。
極性基含有オレフィン共重合体中の極性基含有構造単位量は、1H−NMRスペクトルを用いて求めた。詳しくは前述している。
重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求めた。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnによって算出した。詳しくは前述している。
融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク温度によって示される。測定にはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社社製のDSC(DSC7020)を使用し、次の測定条件で実施した。
試料約5.0mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで上昇し、200℃で5分間保持した後に10℃/分で30℃まで降温させた。30℃で5分間保持した後、再度、10℃/分で昇温させる際の吸収曲線のうち、最大ピーク温度を融点とした。
JIS K7210「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイトI(MVR)の試験方法」(1999年)に準拠し、温度190℃において荷重2.16kgの条件で測定した。詳しくは前述している。
密度は、JIS K7112−A法(1999年)に準拠し測定した。詳しくは前述している。
(1)引張衝撃強さ試験サンプルの作成方法
各実施例および各比較例の樹脂組成物ペレットを、厚さ1mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度230℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで樹脂を溶融すると共に溶融樹脂中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、5分間保持した。その後、4.9MPaの圧力をかけた状態で、10℃/分の速度で徐々に冷却し、温度が室温付近まで低下したところでモールドから成形板を取り出した。得られた成形板を温度23±2℃、湿度50±5℃の環境下で48時間以上、状態調節した。状態調節後のプレス板からASTM D1822 Type−Sの形状の試験片を打ち抜き、引張衝撃強さ試験サンプルとした。
上記試験片を用い、JIS K 7160−1996のB法を参考として引張衝撃強さを測定した。なお、JIS K 7160−1996と異なるのは、試験片の形状のみである。その他測定条件等に関しては、JIS K 7160−1996に準じた方法で試験を実施した。
試料を厚さ1.0mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度180℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで溶融樹脂中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、5分間保持した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、厚さが約1.0mmの試料からなるプレス板を作成した。試料からなるプレス板を直径25mm円形に加工したものをサンプルとし、動的粘弾性特性の測定装置としてRheometrics社製ARES型回転式レオメータを用い、窒素雰囲気下において以下の条件で動的粘弾性を測定した。
・プレート:φ25mm パラレルプレート
・温度:160℃
・歪み量:10%
・測定角周波数範囲:1.0×10−2〜1.0×102 rad/s
・測定間隔:5点/decade
複素弾性率の絶対値G*(Pa)の常用対数logG*に対して位相角δをプロットし、logG*=5.0に相当する点のδ(度)の値をδ(G*=0.1MPa)とした。測定点の中にlogG*=5.0に相当する点がないときは、logG*=5.0前後の2点を用いて、logG*=5.0におけるδ値を線形補間で求めた。また、測定点がいずれもlogG*<5であるときは、logG*値が大きい方から3点の値を用いて2次曲線でlogG*=5.0におけるδ値を補外して求めた。
極性基含有オレフィン共重合体に含まれるアルミニウム(Al)量は、重合に供したアルキルアルミニウム中に含有されるアルミニウム(Al)量を、得られた極性基含有オレフィン共重合体の収量で除した値として算出する方法と蛍光X線分析により測定する方法により求めることができる。
以下の計算式により算出した。
アルミニウム(Al)含有量の単位:μgAl/g
(μgAl/gとは極性基含有オレフィン共重合体の1g中に含まれるアルミニウム(Al)量をμg単位で表していることを意味する。)
μgAl=n×Mw(Al)×103(μg)
n:重合に供したアルキルアルミニウム添加量(mmol)
Mw(Al):アルミニウム(Al)元素の分子量(26.9g/mol)
極性基含有オレフィン共重合体中に含まれるアルミニウム(Al)量は蛍光X線分析を用いて求めた。詳しくは前述している。
Drent系配位子:(2−イソプロピル−フェニル)(2’−メトキシ−フェニル)(2’’−スルホニル−フェニル)ホスフィン(I)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(2g,12.6mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,10mL,25.3mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(1.0mL,12.6mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液A)。
マグネシウムをテトラヒドロフラン(20mL)に分散させ、1−ブロモ−2−メトキシベンゼン(2.3g,12.6mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Aに−78℃で滴下し、1時間撹拌した(反応液B)。
1−ブロモ−2−イソプロピルベンゼン(2.5g,12.6mmol)のジエチルエーテル(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,5.0mL,12.6mmol)を−30℃でゆっくりと滴下し、室温で2時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Bに−78℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。LC−MS純度60%。
水(50mL)を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)後、塩化メチレン抽出し(100mL)、硫酸ナトリウムにより乾燥し、溶媒を留去した。メタノールで再結晶化
することにより、白色の目的物(I)を1.1g得た。収率22%。
1H NMR (CDCl3, ppm): 8.34 (t, J = 6.0 Hz, 1 H), 7.7-7.6 (m, 3 H), 7.50 (t, J = 6
.4 Hz, 1 H), 7.39 (m, 1 H), 7.23 (m, 1 H), 7.1-6.9 (m, 5 H), 3.75 (s, 3 H), 3.05
(m, 1 H), 1.15 (d, J = 6.8 Hz, 3 H), 1.04 (d, J = 6.4 Hz, 3 H). 31P NMR (CDCl3,
ppm): -10.5.
錯体の形成充分に窒素置換した30mLフラスコに、100μmolのパラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。
内容積2.4リットルの攪拌翼付きオートクレーブを精製窒素で置換したのち、乾燥トルエン(1.0リットル)と、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物が0.1mol/Lとなるように仕込んだ。攪拌しながらオートクレーブを98℃に昇温し、窒素を0.3MPaまで供給した後、エチレン分圧が2MPaになるよう圧力が2.3MPaまでエチレンを供給した。圧力調整終了後、上記方法で作成した遷移金属錯体5μmolを窒素で圧入して共重合を開始させた。反応中は温度を98℃に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給し、75分間重合させた後、冷却、脱圧して反応を停止した。反応溶液は、1リットルのアセトンに投入してポリマーを析出させた後、ろ過洗浄を行い回収し、さらに減圧下60℃で恒量になるまで乾燥を行なった。
重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。なお、重合活性は、配位子とパラジウムビスジベンジリデンアセトンが1対1で反応してパラジウム錯体を形成しているとして計算した。
なお、表2中の末端導入は末端に導入された極性基含有モノマーの極性基含有構造単位量を、主鎖導入は分子鎖の内部(主鎖中)に導入された極性基含有モノマーの極性基含有構造単位量を、総構造単位は導入された極性基含有構造単位の総量をそれぞれ示している。
製造例1に記載の方法のうち、配位子種、配位子量、コモノマー種、モノマー濃度、重合圧量、重合温度、重合時間をそれぞれ変更して重合することにより、製造例2〜製造例6の極性基含有オレフィン共重合体を調製した。重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。表2中、「ND」とは未測定を意味する。また、表1中の配位子種(I)、(II)を下記化学式に示す。
SHOP系配位子(B−27DM)の合成
WO2010−050256記載(合成例4)の方法に従い、下記の配位子B−27DMを得た。
充分に窒素置換した50mlのナス型フラスコに、B−27DMを112mg(200μmol)秤り取った。次に、ビス−1、5−シクロオクタジエンニッケル(0)(以下Ni(COD)2と称する)を50mlナス型フラスコに56mg(200μmol)秤り取り、20mlの乾燥トルエンに溶解させ10mmol/lのNi(COD)2トルエン溶液を調製した。ここで得られたNi(COD)2トルエン溶液全量(20ml)を、B−27DMの入ったナス型フラスコに加え、40℃の湯浴で30分攪拌することで、B−27DMとNi(COD)2の反応生成物の10mmol/l溶液を20ml得た。
内容積2.4リットルの攪拌翼付きオートクレーブを精製窒素で置換したのち、乾燥トルエン(1.0リットル)と、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物が0.02mol/Lとなるように仕込んだ。攪拌しながらオートクレーブを100℃に昇温し、窒素を0.3MPaまで供給した後、エチレン分圧が2.5MPaになるよう圧力が2.8MPaまでエチレンを供給した。圧力調整終了後、温度と圧力が安定した後、先に調製したB−27DM‐Ni錯体溶液を4.5ml(45μmol)を窒素で圧入して共重合を開始させた。反応中は温度を100℃に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給し、41分間重合させた後、冷却、脱圧して反応を停止した。反応溶液は、1リットルのアセトンに投入してポリマーを析出させた後、ろ過洗浄を行い回収し、さらに減圧下60℃で恒量になるまで乾燥を行なった。
重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。重合活性は、B−27DMとNi(COD)2が1対1で反応してニッケル錯体を形成しているとして計算した。なお、表2中の末端導入は末端に導入された極性基含有モノマーの極性基含有構造単位量を、主鎖導入は分子鎖の内部(主鎖中)に導入された極性基含有モノマーの極性基含有構造単位量を、総構造単位は導入された極性基含有構造単位の総量をそれぞれ示している。
SHOP系配位子(B−111)の合成
特開2013−043871記載(合成例1)の方法に従い、下記の配位子B−111を得た。
充分に窒素置換した50mlのナス型フラスコに、上記B−111を137mg(200μmol)秤り取った。次に、ビス−1、5−シクロオクタジエンニッケル(0)(以下Ni(COD)2と称する)を50mlナス型フラスコに56mg(200μmol)秤り取り、20mlの乾燥トルエンに溶解させ10mmol/lのNi(COD)2トルエン溶液を調製した。ここで得られたNi(COD)2トルエン溶液全量(20ml)を、B−27DMの入ったナス型フラスコに加え、40℃の湯浴で30分攪拌することで、B−111とNi(COD)2の反応生成物の10mmol/l溶液を20ml得た。
内容積2.4リットルの攪拌翼付きオートクレーブに、乾燥トルエンを1000mlと、トリn−オクチルアルミニウム(TNOA)を0.10mmol、及び5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物を9.8g(60mmol)仕込んだ。攪拌しながらオートクレーブを100℃に昇温し、窒素を0.3MPaまで供給した後、エチレン分圧が2.5MPaになるよう圧力が2.8MPaまでエチレンを供給した。温度と圧力が安定した後、先に調製したB−111‐Ni錯体溶液を4.5ml(45μmol)を窒素で圧入して共重合を開始させた。反応中は温度を100℃に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給した。40分間重合させた後、冷却、脱圧して反応を停止した。反応溶液は、1リットルのアセトンに投入してポリマーを析出させた後、ろ過洗浄を行い回収し、さらに減圧下、60℃で恒量になるまで乾燥を行なうことで、極性基含有共重合体中に残存していた極性基含有モノマーを取り除き、最終的に極性基含有オレフィン共重合体を30.0g回収した。蛍光X線分析により得られた極性基含有オレフィン共重合体に含まれるアルミニウム(Al)量を測定した結果は、80.2μgAl/gであった。重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。重合活性は、B−111とNi(COD)2が1対1で反応してニッケル錯体を形成しているとして計算した。
極性基含有オレフィン共重合体(A−1)2.0gと、ポリアミド(東レ社製、商品名:アミラン、グレード:CM6246M、表中では「PA」と表記する)とをドライブレンドし、小型二軸混練機(DSM Xplore社製 型式:MC15)に投入し、5分間溶融混練した。その際のバレル温度は230℃、スクリュー回転数は100rpmとした。5分経過後、樹脂吐出口から棒状の樹脂組成物を押出し、ステンレス製トレーの上に載せ、室温で冷却して固化させた。冷却した熱可塑性樹脂組成物をペレット状に裁断して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを上記の引張衝撃強さ測定に供し、引張衝撃強さを測定した。引張衝撃強さの測定結果を表3に示す。
実施例1に記載の方法のうち、極性基含有オレフィン共重合体の種類を変更して製造することにより実施例2〜8の熱可塑性樹脂組成物を製造した。引張衝撃強さの測定結果を表3に示す。
実施例1に記載の方法のうち、極性基含有オレフィン共重合体(A−1)を2gから0.5gへと変更し、さらに、線状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:F30HG、密度:0.920g/cm3、MFR:2.1g/10分、表中では「LLDPE」と表記する)を1.5g追加した以外は同様の方法で製造する事により実施例9、実施例10の熱可塑性樹脂組成物を製造した。引張衝撃強さの測定結果を表3に示す。
ポリアミド(東レ社製、商品名:アミラン、グレード:CM6246M、表中では「PA」と表記する)のみ10.0gを、実施例1と同様の方法で溶融混練し、ポリアミド単体のペレットを得た。引張衝撃強さの測定結果を表3に示す。
実施例1に記載の方法のうち、極性基含有オレフィン共重合体(A−1)を線状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:F30HG、密度:0.920g/cm3、MFR:2.1g/10分、表中では「LLDPE」と表記する)に変更した以外は同一の方法で比較例2の熱可塑性樹脂組成物を製造した。引張衝撃強さの測定結果を表3に示す。
実施例1に記載の方法のうち、極性基含有オレフィン共重合体(A−1)をレクスパールET(高圧ラジカル重合法で製造したエチレン−メチルアクリレート−無水マレイン酸三元共重合体、日本ポリエチレン社製、商品名:レクスパールET、グレード:ET530H、表中では「レクスパールET」と表記する)に変更した以外は同一の方法で比較例3の熱可塑性樹脂組成物を製造した。引張衝撃強さの測定結果を表3に示す。
実施例1〜実施例8はポリアミドに対し本発明の極性基含有オレフィン共重合体(A−1〜A−8)をブレンドした熱可塑性樹脂組成物であり、ポリアミドを単独で用いた比較例1に対し、耐衝撃性が飛躍的に向上され、十分な耐衝撃性を示している。一方、ポリアミドに対し、極性基を含有しないオレフィン共重合体(LLDPE)をブレンドした熱可塑性樹脂組成物である比較例2では、ポリアミド単独で用いた場合よりも耐衝撃性が低下する結果となった。更にポリアミドに対し、高圧ラジカル重合法プロセスによって製造された極性基含有オレフィン共重合体(レクスパールET)をブレンドした熱可塑性樹脂組成物である比較例3の場合でも、ポリアミド単独で用いた場合の耐衝撃性とほぼ変わらず、耐衝撃性改質効果は非常に小さい結果となった。この事実は、遷移金属触媒の存在下で製造され分子構造が直鎖状でランダム共重合体である本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体を相溶化材として用いることで、ポリアミドをはじめとする極性基を持つ熱可塑性樹脂の耐衝撃性を飛躍的に向上さられることを明らかにした。
Claims (15)
- 以下のI)〜V)要件を満たすことを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体(C)からなる、熱可塑性樹脂用相溶化材。
I)エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーとの共重合体である。
II)ランダム共重合体である。
III)共重合体の分子鎖内部に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量が、分子鎖末端に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量より多い。
IV)直鎖状の分子構造を有する共重合体である。
V)遷移金属触媒の存在下に共重合される共重合体である。 - オレフィン系樹脂(A)と、極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)とを相溶化させる事を特徴とする、請求項1に記載された熱可塑性樹脂用相溶化材
- 極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)が、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマーから選択されることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれか1項に記載された相溶化材。
- 相溶化材を構成する極性基含有オレフィン共重合体(C)の、GPCによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が1.5〜3.5の範囲であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載された相溶化材。
- 相溶化材を構成する極性基含有オレフィン共重合体(C)の、DSCにより測定される吸収曲線の最大ピーク位置の温度で表される融点が、50℃〜140℃の範囲であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載された相溶化材。
- 相溶化材を構成する極性基含有オレフィン共重合体(C)が、キレート性配位子を有する第5〜11族の遷移金属触媒の存在下に重合されたことを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載された相溶化材。
- 相溶化材を構成する極性基含有オレフィン共重合体(C)が、パラジウム又はニッケル金属にトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒の存在下に重合されたことを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載された相溶化材。
- 相溶化材を構成する極性基含有オレフィン共重合体(C)中に含まれるアルミニウム(Al)量が、共重合体1g当たり0〜100,000μgであることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載された相溶化材。
- 以下のI)〜V)要件を満たすことを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体(C)からなる、極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)の改質材。
I)エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、カルボキシル基又はジカルボン酸無水物基を含む極性基含有モノマーとの共重合体である。
II)ランダム共重合体である。
III)共重合体の分子鎖内部に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量が、分子鎖末端に含まれる極性基含有モノマーに由来する構造単位量より多い。
IV)直鎖状の分子構造を有する共重合体である。
V)遷移金属触媒の存在下に共重合される共重合体である。 - 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体(C)からなる相溶化材又は改質材と、極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)と、必要に応じてオレフィン系樹脂(A)を含有する事を特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
- オレフィン系樹脂(A)が、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれるモノマーを少なくとも1種以上、重合することで得られるオレフィン系樹脂であることを特徴とする、請求項10に記載された熱可塑性樹脂組成物。
- オレフィン系樹脂(A)が、エチレン単独重合体又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とする、請求項10または請求項11のいずれか1項に記載された熱可塑性樹脂組成物。
- 極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)の100重量部に対し、極性基含有オレフィン共重合体(C)とオレフィン系樹脂(A)との合計が1〜1000重量部であることを特徴とする、請求項10〜請求項12のいずれか1項に記載された熱可塑性樹脂組成物。
- 熱可塑性樹脂組成物中の極性基含有オレフィン共重合体(C)とオレフィン系樹脂(A)の割合が、極性基含有オレフィン共重合体(C)100重量部に対し、オレフィン系樹脂(A)が0〜10000重量部であることを特徴とする、請求項10〜請求項13のいずれか1項に記載された熱可塑性樹脂組成物。
- 極性基を持つ熱可塑性樹脂(B)がポリアミドであることを特徴とする、請求項10〜請求項14のいずれか1項に記載された熱可塑性樹脂組成物。
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