JP6310282B2 - 極性基含有オレフィン共重合体、その製造方法及び光安定化剤、並びにそれを用いた樹脂組成物、成形品及び農業用フィルム - Google Patents

極性基含有オレフィン共重合体、その製造方法及び光安定化剤、並びにそれを用いた樹脂組成物、成形品及び農業用フィルム Download PDF

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本発明は、新規の極性基含有オレフィン共重合体、その製造方法及び該共重合体からなる光安定剤、並びにそれを含有する樹脂組成物、成形品及び農業用フィルムに関し、より詳しくは、特定のヒンダードアミン骨格を有する極性基をポリエチレン骨格にランダム共重合した実質的に直鎖状の極性基含有オレフィン共重合体であって、各種のオレフィン系樹脂に対して、格別に優れた光安定性能を有する共重合体、その製造方法及び光安定剤、並びにそれを含有するオレフィン系樹脂組成物、成形品及び農業用フィルムに関する。
従来から、ポリオレフィン等の一般プラスチックの耐候性を向上させるための一技術として、光劣化を防止する光安定剤として、通称HALSと呼ばれる、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を有するヒンダードアミン化合物を、ポリオレフィン樹脂に添加することが知られている。通常、よく用いられるヒンダードアミン化合物としては、分子量が500以下程度の低分子化合物を用いるのが一般的であって、光安定性能を長期間維持できないため、ヒンダードアミン基を有する化合物をポリエチレン等の高分子に付加した高分子型タイプの光安定剤を得ようとする試みも、行われている。
例えば、ヒンダードアミンを側鎖に有するビニル化合物の単独重合体および重合可能な二重結合を少なくとも1つ含む化合物から成る共重合体は、特許文献1に開示され、また、ヒンダードアミンを側鎖に有するビニル化合物とエチレン共重合体の類似物質は、特許文献2に開示されている。
特許文献1に記載の共重合体は、ベンゼン、トルエン等の有機溶媒中にヒンダードアミン基を側鎖に有するビニル化合物を単独にて、またはそれに共重合可能なモノマーを仕込み、α,α′−アゾイソブチロニトリル等の遊離基発生開始剤を加え、特に圧力を加えることなく重合するものであるが、当該共重合体の場合、重合条件下における重合可能な二重結合を少なくとも1つ含む化合物とヒンダードアミン基を側鎖に有するビニル化合物の重合速度の差のため、重合体の分子鎖中に、ヒンダードアミン基を側鎖に有するビニル化合物が2個以上連続的に結合した、いわゆるブロック構造を生ずることが多く、共重合体を単独、または、ポリオレフィン等他の高分子材料にブレンド使用した場合、光安定性能が十分に発揮されないという問題があった。
また、特許文献2は、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/メチルアクリレート共重合体とヒンダードアミン基を有するアルコールとのエステル交換反応にて、ヒンダードアミン基を側鎖に有する化合物とエチレンとの共重合体の類似物質を提供しようとするものであるが、エステル交換反応が可逆反応であるため、どうしても少量のアクリル酸エステル残基が残り、その光安定化効果には、限界があった。
ところで、オレフィン系樹脂同士の分子間架橋やゲル化及び分子鎖の切断が無く、オレフィン系樹脂中に、極性基含有モノマーを含量せしめる手段として、高圧ラジカル法重合プロセスを用いて、エチレンと極性基含有ビニルモノマーとを共重合させ、極性基含有オレフィン共重合体を得る方法も、開示されている(例えば、特許文献3〜5参照。)。
なお、高圧ラジカル法重合プロセスを用いて極性基を導入したオレフィン系樹脂の分子構造例を図1(a)に示すが、この方法によれば、グラフト変性によって発生する問題点は、解決され、オレフィン系樹脂中の極性基含有モノマーの含有量をグラフト変性と比較して高めることが可能である。しかし、重合プロセスが高圧ラジカル法であるため、図1(a)に示されるように、得られる極性基含有オレフィン共重合体は、多くの長鎖分岐及び短鎖分岐を不規則に持つ分子構造となる。このために、遷移金属触媒を用いて重合されるオレフィン系樹脂と比較して、低弾性率かつ機械物性の低い極性基含有オレフィン共重合体しか得られず、高強度が要求される用途への適用には、限定的である。
一方、従来、一般のポリエチレン樹脂の製造に用いられているメタロセン触媒を用いた重合方法においては、エチレンと極性基含有モノマーを共重合させる際に、触媒重合活性が低下し、共重合し難いとされていたため、上記ヒンダードアミン等の極性基含有モノマーを、ランダムに重合し、かつ実質直鎖状を有する極性基含有オレフィン共重合体を得ることができなかった。
しかし、近年、本出願人により、特定のリガンドが遷移金属に配位した、いわゆるポストメタロセン触媒の存在下で、極性基含有オレフィン共重合体を重合する方法が提案されている(例えば、特許文献6〜9参照。)。また、特許文献10には、シクロペンタジエニル基やその他の特殊な配位子を導入した特定の遷移金属触媒の存在下に、オレフィンと極性基含有モノマーを共重合することで、高い重合活性で、極性基を含むオレフィン重合体を製造する方法が提案されている。
これらの方法によれば、高圧ラジカル法プロセスで得られる極性基含有オレフィン共重合体と比較して、高い弾性率と機械強度を有し、極性基含有量を高めることが可能だが(なお、遷移金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体の分子構造のイメージ図を、図1(b)、図1(c)に示す。)、該特殊な遷移金属触媒であっても、コモノマーの種類によっては、殆ど実用化レベルの反応活性を示さないこともあり、用いるコモノマー種は、限られている。また、これらの特許文献に記載の方法は、主にメチルアクリレートやエチルアクリレートといったアクリレート基を含むモノマーや、酢酸ビニルといった特定の極性基含有モノマーとエチレン若しくはα−オレフィンとの共重合体に主眼を置いており、これらの官能基を有する極性基含有オレフィン共重合体は、光安定性が充分ではない。また、光安定性能についても、触れられておらず、光安定性能を目的とした、特定の極性基含有オレフィン共重合体としての使用は、全く開示されていない。
特開昭54−021489号公報 特開昭57−180616号公報 特許第2792982号公報 特開平03−229713号公報 特開平04−080215号公報 特開2010−150532号公報 特開2010−150246号公報 特開2010−260913号公報 特開2013−213121号公報 特許第4672214号公報
本発明の目的は、上記した従来技術の問題点に鑑み、それぞれの問題点を内包する従来のいずれの方法にもよらずに、簡易で効率の良い重合法により製造され、諸物性、特に光安定化作用に優れた新規な極性基含有オレフィン共重合体を提供し、また、該極性基含有オレフィン共重合体を含有することにより、光安定性能を格段に向上させることができるオレフィン系樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、先ず、極性基含有オレフィン共重合体の製造においては、簡易で効率的な製法による当共重合体の製造を目指し、極性基の導入方法や重合触媒の選択について、検証し、また、光安定化性能、特にその持続性に優れ、かつ製造コスト等の経済性にも優れたオレフィン系樹脂組成物を得るべく、該極性基含有オレフィン共重合体の更なる検討を行ったところ、驚くべきことに、近年、本出願人等が開発中の触媒を用いた重合方法により、該ヒンダードアミン基を有するビニル化合物が重合可能であり、しかも、得られた共重合体は、新規の重合体であって、該重合体を含有したオレフィン系樹脂組成物は、従来のヒンダードアミン基を有するオレフィン共重合体を用いる場合に比べて、光安定性が飛躍的に優れたオレフィン系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、ヒンダードアミン基を有する極性基含有ビニルモノマーとを共重合して得られる極性基含有オレフィン共重合体であって、該極性基含有オレフィン共重合体は、ランダム共重合体であり、かつ分子構造が直鎖状であることを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記ヒンダードアミン基を有する極性基含有ビニルモノマーは、下記一般式(1)で表されるビニルモノマーであることを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体が提供される。
Figure 0006310282
[式(1)中、RおよびRは、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、GPCによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値:Mw/Mn)が1.5〜3.5であることを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、DSCにより測定される吸収曲線の最大ピーク位置の温度で表される融点が50〜140℃であることを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体が提供される。
本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、遷移金属触媒の存在下に、共重合して得られることを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明において、前記遷移金属触媒は、キレート性配位子を有する周期表第5〜11族金属の遷移金属触媒であることを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第5又は6の発明において、前記遷移金属触媒は、パラジウム又はニッケル金属に、トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒であることを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体が提供される。
一方、本発明の第8の発明によれば、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、ヒンダードアミン基を有する極性基含有ビニルモノマーとを、パラジウム又はニッケル金属にトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒の存在下に、共重合することを特徴とする第1〜7のいずれかの発明に係る極性基含有オレフィン共重合体の製造方法が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明に係る極性基含有オレフィン共重合体からなる光安定化剤が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、他のオレフィン系樹脂100重量部に対して、第1〜7のいずれかの発明に係る極性基含有オレフィン共重合体0.01〜20重量部を含むことを特徴とするオレフィン系樹脂組成物が提供される。
さらに、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、前記他のオレフィン系樹脂は、エチレン単独重合体、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体またはエチレン−酢酸ビニル共重合体の少なくとも一種であることを特徴とするオレフィン系樹脂組成物が提供される。
本発明の第12の発明によれば、第10又は11の発明に係るオレフィン系樹脂組成物を押出成形してなることを特徴とする押出成形品が提供される。
また、本発明の第13の発明によれば、第10又は11の発明に係るオレフィン系樹脂組成物を射出成形してなることを特徴とする射出成形品が提供される。
さらに、本発明の第14の発明によれば、第10又は11の発明に係るオレフィン系樹脂組成物からなることを特徴とする農業用フィルムが提供される。
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、近年、本出願人等により開発された遷移金属触媒を用いることにより、製造可能となった新規な共重合体であって、簡易で効率の良い重合法で製造され、諸物性に優れた、特定の分子構造を有する極性基含有オレフィン共重合体であり、そのため、本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、高い光安定性と光安定化持続性を有し、工業的に有用な成形品の製造を可能にするという顕著な効果を奏する。
なお、かかる顕著な効果は、後述する本発明の各実施例のデータ及び各実施例と各比較例との対比により、実証されている。
また、本発明による極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂の混合したオレフィン系樹脂組成物は、優れた光安定性を有し、さまざまな用途、例えば、押出成形、吹込成形、射出成形などによって、多層フィルム、多層ブロー瓶などに成形され、特に、長期間屋外で用いられる農業用フィルム等の広範囲な用途に、好適に使用可能である。
図1(a)は、従来技術の高圧ラジカル法重合プロセスを用いて極性基を導入したオレフィン共重合体の分子構造を説明するイメージ図である。また、図1(b)は、ポストメタロセン触媒の遷移金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体の長鎖分岐が無い場合の分子構造を説明するイメージ図である。ポストメタロセン触媒の遷移金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体の少量の長鎖分岐がある場合の分子構造を説明するイメージ図である。さらに、図1(c)は、ポストメタロセン触媒の遷移金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体の少量の長鎖分岐がある場合の分子構造を説明するイメージ図である。 実施例/比較例における耐候性評価での引張破断伸度(%)を照射時間(h)に対してプロットした図である。 実施例/比較例における耐候性評価での引張破断強度(%)を照射時間(h)に対してプロットした図である。
本発明は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、ヒンダードアミン基を有する極性基含有ビニルモノマーとを共重合して得られる極性基含有オレフィン共重合体であって、該極性基含有オレフィン共重合体は、ランダム共重合体であり、かつ分子構造が直鎖状であることを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体、その製造方法及び該共重合体からなる光安定剤、並びにそれを含有する樹脂組成物、成形品及び農業用フィルムなどに関するものである。
以下、本発明の極性基含有オレフィン共重合体(A)、他のオレフィン系樹脂(B)及びオレフィン系樹脂組成物(C)について、更には、それらの製造方法、並びにその組成物を用いた成形品について、項目毎に、具体的かつ詳細に説明する。
1.極性基含有オレフィン共重合体(A)
(1)極性基含有オレフィン共重合体の基本的な特徴
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、ヒンダードアミンを含む極性基含有モノマーとの共重合体である。
当該共重合体は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、ヒンダードアミンを含む極性基含有モノマーとを、遷移金属触媒、特にいわゆるポストメタロセン触媒の存在下に、共重合することで得られることを特徴とする。
すなわち、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、ヒンダードアミンを含む極性基含有モノマーとを、共重合することで得られる極性基含有オレフィン共重合体は、グラフト重合や高圧ラジカル法重合その他前述した重合法において、既に公知のものであるが、本発明においては、かかる公知の極性基含有オレフィン共重合体に対して、遷移金属の存在下に重合された、ランダムで、実質的に直鎖状の分子構造を有する共重合体であるという特徴または要件を備えており、これは、上記の従来の極性基含有オレフィン共重合体とは、顕著に異なるものである。
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、遷移金属触媒の存在下で、重合され、製造されることを特徴としており、その分子構造は、主に直鎖状(長鎖分岐を全く含まないか、少量の長鎖分岐を含む構造)であり、高圧ラジカル重合法によって得られる長鎖分岐を過多に含む分子構造の共重合体とは、この点で明確に異なる。
高圧ラジカル重合法プロセスにより重合されたオレフィン共重合体のイメージ図を図1(a)に、また、遷移金属触媒を用いて重合されたオレフィン共重合体のイメージ図を、図1(b)及び図1(c)にそれぞれ例示した様に、製造方法によって、その分子構造は、異なる。この分子構造の違いは、製造方法を選択することによって、分子構造の制御が可能であるが、例えば、前記特許文献6(特開2010−150532号公報)に示される様な、回転式レオメータで測定した複素弾性率によっても、その分子構造を推定することができる。
より具体的には、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G*=0.1MPaにおける位相角δ(G*=0.1MPa)が40度以上である場合、その分子構造は、図1(b)に示されるような、長鎖分岐を全く含まないか、図1(c)に示されるような機械的強度に影響を与えない程度の少量の長鎖分岐を含む構造を示し、遷移金属触媒の存在下で、重合されたものと、推定される。
また、回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δ(G=0.1MPa)が40度より低い場合、その分子構造は、図1(a)に示されるような、長鎖分岐を過多に含む構造を示し、高圧ラジカル重合法により重合されたものと、推定され、機械的強度が劣るものとなる。回転式レオメータで測定した複素弾性率の絶対値G=0.1MPaにおける位相角δは、分子量分布と長鎖分岐の両方の影響を受けるが、Mw/Mn≦4、好ましくはMw/Mn≦3のものに限れば、長鎖分岐の量の指標になり、長鎖分岐が多いほど、位相角δ(G=0.1MPa)値は、小さくなる。なお、Mw/Mnが1.5以上であれば、長鎖分岐をもたない場合でも、位相角δ(G=0.1MPa)値が75度を上回ることはない。
(2)極性基含有オレフィン共重合体(A)の構成モノマー
(2−1)エチレン及びα−オレフィン
本発明の極性基含有オレフィン共重合体において、重合に供せられる原料の極性基を持たないモノマーは、エチレン及び/又はα−オレフィンから選択される。α−オレフィンの炭素数は、3〜20の範囲であれば良く、更にその中でも3〜12のものが好ましく、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。エチレン及び/又はα−オレフィンの中では、特に、エチレンが好ましく選択される。
また、本発明の極性基含有オレフィン共重合体において、これらのエチレン又はα−オレフィンに由来する構造単位の割合は、通常90〜99.999mol%、好ましくは95〜99.99mol%の範囲から、選択されることが望ましい。
また、用いられるエチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンは、単独でも良く、2種類以上を組み合せて併用しても良い。
(2−2)極性基含有モノマー
本発明の極性基含有オレフィン共重合体の重合に供せられる極性基含有モノマーは、少なくともヒンダードアミン構造を含有する必要がある。ヒンダードアミン構造を持ったオレフィン共重合体であれば、光安定性を向上させることが可能となる。
ここで、ヒンダードアミン構造とは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を意味し、本発明に係る極性基含有オレフィン共重合体の重合に供せられる極性基含有モノマーは、ヒンダードアミン構造を有していれば、特に限定されないが、下記一般式(1)で示されるビニル化合物であると、光安定性の観点から、更に好ましい。
Figure 0006310282
[式(1)中、RおよびRは、水素原子またはメチル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
上記一般式(1)のヒンダードアミン基を有するビニルモノマーは、公知であり、公知の方法、例えば、特公昭47−8539号公報、特開昭48−65180号公報記載の方法にて、合成することができる。また、市販の一般式(1)で示されるビニル化合物の商品を用いることができ、例えば、(株)ADEKA、東京化成工業(株)などから、入手できる。
一般式(1)のヒンダードアミン基を有するビニルモノマーの代表例を挙げれば、下記のとおりである。
4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−アクリルイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリルイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリルイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどが挙げられる。
上記の中でも、下記の化合物が好ましい。
4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−アクリルイルオキシ−1−エチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリルイルオキシ−1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリルイルオキシ−1−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが挙げられる。
(3)極性基含有オレフィン共重合体(A)の構造単位
本発明の極性基含有オレフィン共重合体の構造単位と構造単位量について、説明する。
エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィン、及び極性基含有モノマー、それぞれ1分子に由来する構造を、極性基含有オレフィン共重合体中の1構造単位と定義する。
(4)ヒンダードアミン基を有するビニルモノマーの構造単位量
これらのヒンダードアミン基を有するビニルモノマーに由来する構造単位量は、通常、1〜0.0001mol%の範囲、好ましくは0.85〜0.0005mol%、より好ましくは0.55〜0.0005mol%の範囲から選択されることが望ましい。
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、光安定効果に優れるため、単独使用の場合、共重合体の全構造単位(すなわち、エチレンおよび側鎖にヒンダードアミン基を有するビニル化合物)に対し、0.0001モル%の含量にて、十分な光安定効果を発揮する。
一方、ブレンドの場合でも、本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、その光安定効果に優れるため、ヒンダードアミン基を有するビニル化合物の濃度は、単独使用時の0.0001モル%に相応する濃度にて十分である。ブレンド使用の場合、重量比にて、1000倍希釈以上の希釈率では、その添加精度が悪いので、ブレンド使用時の本共重合体中のヒンダードアミン基を有するビニル化合物の最大濃度は、1モル%となる。これ以上の側鎖にヒンダードアミン基を有するビニル化合物を含有するエチレン共重合体の使用は、実質的に不経済である。
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと極性基含有モノマーの共重合体のランダム共重合体であることが望ましい。
本発明の極性基含有オレフィン共重合体の分子構造例を、下記に示す。
ランダム共重合体とは、A構造単位とB構造単位の、ある任意の分子鎖中の位置において、それぞれの構造単位を見出す確率が、その隣接する構造単位の種類と無関係な共重合体である。
また、極性基含有オレフィン共重合体の分子鎖末端は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンであっても良く、極性基含有モノマーであっても良い。
下記のように、本発明の極性基含有オレフィン共重合体の分子構造(例)は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、ヒンダードアミン基を含むビニルモノマーとが、ランダム共重合体を形成している。
分子構造例: −ABAAAABBAABAAA−
(分子構造例中、Aは、エチレンまたは炭素数3〜20のα―オレフィン、Bは、ヒンダードアミン基を含むビニルモノマーである。)
(5)極性基含有オレフィン共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)
本発明の極性基含有オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜300,000の範囲であることが望ましい。
Mwが1,000未満では、機械強度や耐衝撃性といった樹脂物性が充分ではなく、一方、Mwが1,000,000を超えると、溶融粘度が非常に高くなり、成形加工が困難となる。
また、極性基含有オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)には、特に制限はないが、通常1.5〜3.5、好ましくは1.6〜3.3、更に好ましくは1.7〜3.0の範囲であることが望ましい。
本発明に係る重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に、数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnを算出するものである。
本発明に関わるGPCの測定方法は、以下の通りである。
ウォーターズ社製150C型を使用し、下記の条件で、測定を行うことによって、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を得た。
・カラム:ShowdexHT−G及び同HT−806M×2本
・溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
・温度:140℃
・流量:1.0ml/分
カラムの較正は、昭和電工製単分散ポリスチレンで行った(S−7300,S−3900,S−1950,S−1460,S−1010,S−565,S−152,S−66.0,S−28.5,S−5.05の各0.2mg/ml溶液)。
n−エイコサン及びn−テトラコンタンの測定を行い、溶出時間と分子量の対数値を4次式で近似した。
なお、ポリスチレンとポリエチレンの分子量の換算には、次式を用いた。
PE=0.468×MPS
(6)極性基含有オレフィン共重合体(A)の融点
本発明の極性基含有オレフィン共重合体の融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク温度によって示される。
ポリオレフィンとして、ポリエチレンを想定した場合、融点は、50〜140℃であることが好ましく、60〜138℃であることが更に好ましく、70℃〜135℃が最も好ましい。
2.極性基含有オレフィン共重合体(A)の製造
本発明の極性基含有オレフィン共重合体の製造方法は、遷移金属触媒を用いて、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、ヒンダードアミン基を含んだ極性基含有モノマーとを共重合させることによって、得られる。本発明に関わる重合触媒の種類は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、ヒンダードアミン基を含んだ極性基含有モノマーとを共重合することが可能なものであれば、特に限定されない。
(1)重合触媒
本発明の極性基含有オレフィン共重合体の製造方法の一例として、いわゆるポストメタロセン触媒と称される、キレート性配位子を有する周期表第5〜11族金属の遷移金属化合物を、触媒として用い、重合する方法がある。
好ましい遷移金属の具体例として、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子、マンガン原子、鉄原子、白金原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子、銅原子などが挙げられる。
これらの中で好ましくは、バナジウム原子、鉄原子、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子、ロジウム原子であり、特に好ましくは、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子である。これらの金属は、単一であっても複数を併用しても良い。
さらに、本発明に係る遷移金属錯体の遷移金属は、ニッケル(II)、パラジウム(II)、白金(II)、コバルト(II)及びロジウム(III)からなる群から選択される元素であることが好ましく、さらには周期表第10族の元素であることが、重合活性の観点から、より好ましく、特に価格等の観点から、ニッケル(II)がさらに好ましい。
キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位(bidentate)又は多座配位(multidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Brookhartらによる総説に、その構造が例示されている(Chem.Rev.,2000,100,1169)。
好ましくは、二座アニオン性P,O配位子として、例えば、リンスルホン酸、リンカルボン酸、リンフェノール、リンエノラートが挙げられ、他に、二座アニオン性N,O配位子として、例えば、サリチルアルドイミナ−トやピリジンカルボン酸が挙げられ、他に、ジイミン配位子、ジフェノキサイド配位子、ジアミド配位子が挙げられる。
キレート性配位子から得られる遷移金属錯体の構造は、置換基を有してもよいアリールホスフィン化合物、アリールアルシン化合物又はアリールアンチモン化合物が配位した遷移金属錯体であって、分子中にリン、砒素又はアンチモン元素を有し、かつ置換基を有してもよいアリール基を有する化合物が配位した遷移金属錯体であり、下記構造式(A)及び/又は(B)で表される。
Figure 0006310282
Figure 0006310282
[構造式(A)、(B)中、Mは、元素の周期表の第5族〜第11族のいずれかに属する遷移金属を表す。Xは、酸素、硫黄、−SO−、又は−CO−を表す。Yは、炭素又はケイ素を表す。nは、0又は1の整数を表す。Eは、リン、砒素又はアンチモンを表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、OR、CO、CO’、C(O)N(R、C(O)R、SR、SO、SOR、OSO、P(O)(OR2−y(R、CN、NHR、N(R、Si(OR3−x(R、OSi(OR3−x(R、NO、SO’、PO、PO’又はエポキシ含有基を表す。M’は、アルカリ金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、M’は、アルカリ土類金属を表し、xは、0〜3までの整数、yは、0〜2までの整数を表す。なお、RとRが互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素、窒素若しくは硫黄から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。この時、環員数は5〜8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。Lは、Mに配位したリガンドを表す。また、RとLが互いに結合して環を形成してもよい。]
より好ましくは、下記構造式(C)で表される遷移金属錯体である。
Figure 0006310282
[構造式(C)中、Mは、元素の周期表の第5族〜第11族のいずれかに属する遷移金属を表す。Xは、酸素、硫黄、−SO−、又は−CO−を表す。Yは、炭素又はケイ素を表す。nは、0又は1の整数を表す。Eは、リン、砒素又はアンチモンを表す。R及びRは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基を表す。R、R、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30のヘテロ原子を含有してもよい炭化水素基、OR、CO、CO’、C(O)N(R、C(O)R、SR、SO、SOR、OSO、P(O)(OR2−y(R、CN、NHR、N(R、Si(OR3−x(R、OSi(OR3−x(R、NO、SO’、PO、PO’又はエポキシ含有基を表す。M’は、アルカリ金属、アンモニウム、4級アンモニウム又はフォスフォニウムを表し、M’は、アルカリ土類金属を表し、xは、0〜3までの整数、yは、0〜2までの整数を表す。なお、R〜R11から適宜選択された複数の基が互いに連結し、脂環式環、芳香族環、又は酸素、窒素若しくは硫黄から選ばれるヘテロ原子を含有する複素環を形成してもよい。この時、環員数は5〜8であり、該環上に置換基を有していても、有していなくてもよい。Rは、水素原子または炭素数1〜20の炭化水素基を表す。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基を表す。Lは、Mに配位したリガンドを表す。また、RとLが互いに結合して環を形成してもよい。]
また、本発明の構造式(A)〜(C)で示される化合物において、式中のXは、酸素または硫黄であることが、重合活性の観点から好適である。
ここで、キレート性配位子を有する周期表第5〜11族の遷移金属化合物の触媒としては、代表的に、いわゆるShop系及びDrent系と称される触媒が知られている。
Shop系触媒は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがニッケル金属に配位した触媒である(例えば、WO2010/050256号パンフレツトを参照。)。また、Drent系触媒は、置換基を有してもよいアリール基を有するリン系リガンドがパラジウム金属に配位した触媒である(例えば、特開2010−202647号公報を参照。)。
(2)重合方法
本発明において、重合方法に、特に制限はない。媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが好ましく用いられる。
また、重合形式としては、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。また、リビング重合であってもよいし、連鎖移動を併発しながら重合を行ってもよい。更に、いわゆるchain shuttling agent(CSA)を併用し、chain shuttling反応や、coordinative chain transfer polymerization(CCTP)を行ってもよい。
具体的な製造プロセス及び条件については、例えば、特開2010−260913号公報、特開2010−202647号公報を、参照することができる。
3.他のオレフィン系樹脂(B)
(1)オレフィン系樹脂(B)について
本発明のオレフィン系樹脂組成物において、前記極性基含有オレフィン共重合体(A)以外に、用いられるオレフィン系樹脂(B)は、特に限定されない。
オレフィン系樹脂は、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系、フィリップス型又はシングルサイト触媒を用い、高中低圧法及びその他の公知の方法により得られる、エチレン単独重合体、又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを重合して得られる単独重合体、若しくはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される2種類以上のモノマーを共重合して得られる共重合体、更には、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体から、選択することができる。
その中でも、エチレン単独重合体、又はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンの共重合体、エチレンと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体が好ましい。
(2)単独重合体
オレフィン系樹脂の単独重合体は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを、単独で重合して得られる。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセンなどを挙げることができる。好ましい単独重合体は、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、1−ブテン単独重合体、1−ヘキセン単独重合体、1−オクテン単独重合体、1−ドデセン単独重合体等を挙げることができ、より好ましいのはエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体である。
(3)共重合体
オレフィン系樹脂において、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される2種類以上のモノマーを共重合して得られる共重合体は、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される2種類以上のモノマーを、重合することにより得られる共重合体であれば、特に限定されない。重合に供されるモノマーは、2種類であっても良いし、3種類以上であっても良い。エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される2種類以上のモノマーの共重合体として、好ましいのはエチレンを必須で含み、炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される1種以上のα−オレフィンとの共重合体である。更に好ましいのはエチレンを必須で含み、炭素数3〜10のα−オレフィンから選択される1種以上のα−オレフィンとの共重合体である。より好適に用いることができるのは、エチレンを必須で含み、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンから選択される1種、もしくは2種以上のα−オレフィンとの共重合体である。
(4)極性基含有共重合体
オレフィン系樹脂(B)において、前記極性基含有オレフィン共重合体(A)以外の、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと、極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体は、エチレン及び/または炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと、極性基を含有したビニルモノマーとを重合することにより得られる共重合体であれば、特に限定されない。
エチレン及び/または炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーは、1種であっても2種以上でも良く、また、極性基を含有したビニルモノマーは、1種であっても2種以上でも良い。また、エチレン及び/または炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体の重合に供せられるモノマーは、2種であっても、3種以上であっても良い。エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体として、好ましいのは、エチレンと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合体である。
オレフィン系樹脂組成物に含まれるオレフィン系樹脂(B)の極性基含有共重合体は、配合される極性基含有オレフィン共重合体(A)と同一であってはならないが、含まれる極性基含有モノマーの種類や組成比率、樹脂物性などが異なっていれば、配合しても良い。
エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーと極性基を含有したビニルモノマーとの共重合に供される、極性基を含有したビニルモノマーとしては、好ましくはヒンダードアミン基を含有するモノマーである。
(5)オレフィン系樹脂(B)の製造方法
オレフィン系樹脂(B)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、チューブラー法やオートクレーブ法などの公知の高圧ラジカル重合法、チーグラー系、フィリップス型又はシングルサイト触媒を用いた高中低圧法及びその他の公知の方法によって、製造することができる。
(6)シングルサイト触媒を用いたオレフィン系樹脂(B)の製造方法
シングルサイト触媒を用いたオレフィン系樹脂(B)の製造方法の例として、特開昭58−19309号公報、特開昭59−95292号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭60−35009号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報の各公報、ヨーロッパ特許出願公開第420,436号明細書、米国特許第5,055,438号明細書、及び国際公開公報W091/04257号明細書などに記載されている方法、すなわちシングルサイト系触媒、メタロセン/アルモキサン触媒、又は、例えば国際公開公報W092/07123号明細書等に開示されているようなメタロセン化合物と、以下に述べるシングルサイト系触媒と反応して安定なイオンとなる化合物とからなる触媒を使用し重合させる方法を挙げることができる。
上述のシングルサイト系触媒と反応して、安定なイオンとなる化合物とは、カチオンとアニオンのイオン対から形成されるイオン性化合物或いは親電子性化合物であり、メタロセン化合物と反応して、安定なイオンとなって重合活性種を形成するものである。
このうち、イオン性化合物は、下記式(I)で表される。
[Q]m[Y]m (I)
(mは、1以上の整数である。)
式中のQは、イオン性化合物のカチオン成分であり、カルボニウムカチオン、トロピリウムカチオン、アンモニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオンなどが挙げられ、更には、それ自身が還元され易い金属の陽イオンや有機金属の陽イオンも挙げることができる。
これらのカチオンは、特表平1−501950号公報等に開示されているようなプロトンを与えることができるカチオンだけでなく、プロトンを与えないカチオンでも良い。
これらのカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウム、ジフェニルカルボニウム、シクロヘプタトリエニウム、インデニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、N,N−ジメチルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウム、トリフェニルホスホニウム、トリメチルホスホニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリフェニルオキソニウム、トリエチルオキソニウム、ピリリウム、さらには銀イオン、金イオン、白金イオン、パラジウムイオン、水銀イオン、フェロセニウムイオンなどが挙げられる。
また、上記式中のYは、イオン性化合物のアニオン成分であり、メタロセン化合物と反応して安定なアニオンとなる成分であって、有機ホウ素化合物アニオン、有機アルミニウム化合物アニオン、有機ガリウム化合物アニオン、有機リン化合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アンチモン化合物アニオンなどが挙げられ、具体的には、テトラフェニルホウ素、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ素、テトラキス(3,5−(t−ブチル)フェニル)ホウ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、テトラフェニルアルミニウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)アルミニウム、テトラキス(3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)アルミニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、テトラフェニルガリウム、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ガリウム、テトラキス(3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル)ガリウム、テトラキス(3,5−ジ(t−ブチル)フェニル)ガリウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウム、テトラフェニルリン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)リン、テトラフェニルヒ素、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ヒ素、テトラフェニルアンチモン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)アンチモン、デカボレート、ウンデカボレート、カルバドデカボレート、デカクロロデカボレートなどが挙げられる。
上記親電子性化合物としては、ルイス酸化合物として知られているもののうち、メタロセン化合物と反応して、安定なイオンとなって重合活性種を形成するものであり、種々のハロゲン化金属化合物や固体酸として知られている金属酸化物などが挙げられる。
具体的には、ハロゲン化マグネシウムやルイス酸性無機化合物などが例示される。
また、他のシングルサイト触媒を用いたオレフィン系樹脂(B)の製造法例としては、特開平8−325333号公報、特開平9−031263号公報、特開平9−087440号公報に開示されている、シングルサイト系触媒化合物の混合系からなる固体触媒と助触媒を用いて製造する方法、特開2006−265387号公報、特開2006−265388号公報、特開2006−282927号公報に開示されている、単一反応器で、複数種のシングルサイト系触媒を用いて製造する方法、特表2001−525457号公報に開示されている、ハフニウムメタロセン型触媒を用いて製造する方法、などを挙げることができる。
4.オレフィン系樹脂組成物(C)
(1)オレフィン系樹脂組成物(C)について
オレフィン系樹脂組成物(C)は、極性基含有オレフィン共重合体(A)1重量部に対して、オレフィン系樹脂(B)を5〜10,000重量部配合したものである。すなわち、オレフィン系樹脂(B)100重量部に対して、極性基含有オレフィン共重合体(A)0.01〜20重量部を配合したものである。
極性基含有オレフィン共重合体(A)1重量部に対して、オレフィン系樹脂(B)の配合量は、好ましくは10〜5,000重量部、更に好ましくは15〜3,000重量部、より好ましくは20〜2,000重量部である。オレフィン系樹脂(B)の配合量が5重量部より少ないと、経済的に好ましくなく、一方、10,000重量部より多いと、樹脂組成物(C)の光安定性が劣るものとなる。
(2)オレフィン系樹脂組成物(C)の製造方法
オレフィン系樹脂組成物(C)は、公知の方法を利用して製造することができ、例えば、極性基含有オレフィン共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)と、所望により、添加される他成分を、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、往復式混練機(BUSS KNEADER)、ロール混練機等、などを用いて溶融混練する方法、極性基含有オレフィン共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)と、所望により、添加される他成分を、適当な良溶媒(例えば、へキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、キシレンなどの炭化水素溶媒)に溶解し、次いで、溶媒を除去する方法で製造することができる。
(3)添加剤
オレフィン系樹脂組成物(C)には、本発明の樹脂組成物の機能の主旨を逸脱しない範囲において、他の機能を付加するために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、架橋剤、発泡剤、核剤、難燃剤、充填材、導電材などの公知の添加剤を、適宜、適量配合しても良い。
(4)その他の成分や配合材
また、オレフィン系樹脂組成物(C)には、本発明の樹脂組成物の機能の主旨を逸脱しない範囲において、各種の樹脂改質材などを、適宜、適量配合してもよい。その成分としては、ブタジエン系ゴム、イソブチレンゴム、イソプレン系ゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、石油樹脂などが挙げられ、これらは、単独でも混合物でもよい。
5.用途について
(1)光安定剤
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、エチレンモノマーと、ヒンダードアミン基を含有する極性基含有ビニルモノマーが、ランダムかつ直鎖状に共重合した特定の分子構造を有することにより、種々の性能を有することを期待し得る。
特に、後記の本発明の実施例及び比較例に実証されるように、各種プラスチックへ添加する光安定剤として、格段の光安定維持効果を発現するため、光安定剤として有用である。従って、光安定剤として、公知の利用方法、すなわち必要とされる樹脂との組み合わせや、用途製品への適用、他添加剤との組み合わせを、行うことができる。
(2)成形品
上記オレフィン系樹脂組成物(C)は、公知の手法に従って、押出成形、ブロー成形、射出成形等の各種の成形方法により、各種の成形品を製造することができる。
例えば、押出成形品は、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、高速インフレーション成形、水冷インフレーション成形といった各種インフレーション成形、フラットダイ成形、異形押出成形、管状品成形、カレンダー成形等、公知の押出成形によって製造することができる。
特に、適用される好ましい用途品としては、各種の生活資材製品、産業資材製品、工業部品、家電製品等の耐侯性が要求される成形品に適用され得るが、特に屋外に設置され、かつ長期間耐候性を必要とする各種製品、例えば、農業用フィルムに有用である。
(3)農業用フィルム
本発明に係る農業用フィルムとは、本発明の特徴である特定の極性基含有オレフィン共重合体からなる光安定化剤を添加した農業用フィルムであって、公知の農業用フィルムの樹脂組成物、樹脂層構成、及び製造方法により、製造することが可能である。特に、全層にポリエチレン又はエチレン−ビニル共重合体のいずれかを有する農業用フィルムにおいて、本発明の光安定化剤の耐候性への効果は、大きい。
以下に本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではなく、好適な各実施例のデータ及び各実施例と各比較例の対比により、本発明の構成の合理性と有意性及び従来技術に対する卓越性を実証する。
本発明において、製造される極性基含有オレフィン共重合体の物性試験方法は、以下の通りである。
1.評価方法
(1)極性基含有オレフィン共重合体中の極性基含有構造単位量:
極性基含有オレフィン共重合体中の極性基含有構造単位量は、IRを用いて求めた。
(2)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布パラメーター(Mw/Mn):
重量平均分子量(Mw)及び分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求めた。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnによって算出した。
(3)融点:
融点は、以下のDSC測定により求めた。
セイコー電子社製EXSTAR6000 DSC示差走査熱量測定装置を使用して、試料(約5mg)を180℃で5分間融解後、10℃/minの速度で−20℃まで降温し、−20℃で5分保持した後に、10℃/minの速度で180℃まで昇温することにより、融解曲線を得た。
融解曲線を得るために行った最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tmとした。
(4)耐候性:
極性基含有オレフィン共重合体を微量添加した直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを用いて、サンシャインウェザオメーターで劣化促進試験を行った。
劣化促進試験後に、引張試験を行い、力学物性の経時変化を測定することにより、耐候性を評価した。
(i)極性基含有オレフィン共重合体を添加した直鎖状低密度ポリエチレンフィルムの調製方法:
極性基含有オレフィン共重合体と直鎖状低密度ポリエチレンを小型混練機(DSM社製)にて溶融混練し、20g程度のサンプルを得た。添加する極性基含有オレフィン共重合体は、1wt%に設定した。なお、混練条件は、以下の通りである。
・設定温度:200℃
・スクリュー回転数:50rpm
・混練時間:2分
・仕込量(1バッチ):8〜9g
・直鎖状低密度ポリエチレン:日本ポリエチレン(株)社製、銘柄ノバテック UF230(MFR=1.0g/10min、密度=0.921g/cm
得られた上記のサンプル1.5g程度を、寸法:15cm×15cm、厚さ50μmの加熱プレス用モールド(アルミシート)に入れ、溶融プレス成形し、厚み約100μmの測定用フィルムを調製した。プレス成形条件は、以下の通りである。
・成形機:2連式100tプレス(ダイシン機械株式会社製)
・成形温度:180℃
・余熱時間:5分
・脱気回数:20回
・加圧時間:5分
・成形圧力:50kgf/cm
(ii)フィルム試験片の作製方法:
上記の調製方法によって得られた厚み約100μmの測定用フィルムを幅10mm、ゲージ長50mmのJIS Z1702号ダンベル型(DUMBELL社製)に打ち抜き、フィルム試験片を作製した。
(iii)劣化促進試験方法:
上記より得られたダンベル型のフィルム試験片をサンシャインウェザオメーター(スガ試験機株式会社製)に投入した。試験条件は、以下の通りである。
・光源:カーボン
・対象照度:255W/m(300−700nm)
・試験槽温度:43℃
・温湿度範囲:ブラックパネル温度63±3℃、湿度50±5%
・試料枠回転数:1rpm
・試料枠直径:φ960mm
・照射時間:〜1500hr
・水噴射サイクル:102分照射後、18分照射及び水噴射
(iv)引張試験による力学物性評価方法:
劣化促進試験において、所定の時間紫外線照射を行ったダンベル型フィルム試験片をテンシロン(東洋精機(株)製)引張試験機を用いて、500mm/minの速さで引っ張ることで、引張破断伸度と引張破断強度を測定した。
引張破断伸度の単位は%、引張破断強度の単位はMPaで示し、照射時間0時間における各物性値を100%とした。
尚、図2、3のプロット図では、引張破断強度も、照射時間0時間における物性値を100%とした相対値(%)で、示した。
[実施例1]
1.Drent系配位子(配位子I)の合成:
無水ベンゼンスルホン酸(0.6g,3.8mmol)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,3mL,7.6mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(0.33mL,3.8mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液I)。
1−ブロモ−2−イソプロピル−4−ヘキシルベンゼン(2.2g,7.6mmol)のジエチルエーテル(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,3.0mL,7.6mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温で3時間撹拌した。
この溶液を、先ほどの反応液Iに、−78℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。LC−MS純度51%。水を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)。塩化メチレン抽出し(50mL×3)、硫酸ナトリウムにより乾燥した後、溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=70/1)により精製し、白色の目的物を0.8g得た。
HNMR(CDCl,ppm/d):8.34(d,J=6.0Hz,1H),7.70(d,J=7.6Hz,1H),7.40(m,1H),7.29(d,J=4.4Hz,2H),7.04(m,3H),6.85(dd,J=7.6,14.8Hz,2H),2.97(m,2H),2.60(t,J=7.6Hz,4H),1.54(m,4H),1.25(s,12H),1.2−1.0(m,12H),0.82(br,6H).31PNMR(CDCl,ppm/d):−9.9.
Figure 0006310282
2.錯体の形成:
充分に窒素置換した50mLフラスコに、200μmolのパラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(20mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、10μmol/mlの均一な触媒溶液(I)を調製した。
3.重合:
エチレンと4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(4AP)との共重合:
内容積2.4リットルの攪拌翼付きオートクレーブに、乾燥トルエン(0.8リットル)と、4−メトキシフェノールを1g、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンの酢酸エチル溶液(37wt%)を100ml仕込んだ。
攪拌しながらオートクレーブを100℃に昇温し、窒素を1.0MPaまで供給した後、エチレンをオートクレーブに供給し、圧力が2.0MPaになるように調整した。調整終了後、上記で形成させた遷移金属錯体溶液(I)を17ml(170μmol)窒素で圧入して、共重合を開始させた。180分間重合させた後、冷却、脱圧して反応を停止した。
反応溶液は、1リットルのアセトンに投入してポリマーを析出させた後、濾過により得られた固形の極性基含有オレフィン共重合体をアセトンで洗浄後、60℃で3時間減圧乾燥後、最終的に極性基含有オレフィン共重合体を28.7g回収した。
得られた共重合体の分子量(Mw)は、7700、分子量分布(Mw/Mn)は、3.27、Tmは、126.7であった。
[実施例2]
1.SHOP系配位子(配位子II)の合成:
WO2010/050256号パンフレットに記載(合成例4)の方法に従い、下記の化学式で示される配位子II(リガンドB−27DM)を得た。
Figure 0006310282
2.錯体の形成:
充分に窒素置換した50mlのナス型フラスコに、上記の配位子II(B−27DM)を112mg(200μmol)秤り取った。
次に、ビス−1、5−シクロオクタジエンニッケル(0)(以下Ni(COD)と称する)を50mlナス型フラスコに56mg(200μmol)秤り取り、20mlの乾燥トルエンに溶解させ、10mmol/lのNi(COD)トルエン溶液を調製した。
ここで得られたNi(COD)トルエン溶液全量(20ml)を、B−27DMの入ったナス型フラスコに加え、40℃の湯浴で30分攪拌することで、B−27DMとNi(COD)の反応生成物の10mmol/l溶液を、20ml得た。
3.重合:
エチレンと4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(4AP)との共重合:
内容積2.4リットルの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、極性含有モノマー濃度が0.02mol/Lとなるように、精製トルエン(1.0L)、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(4AP)の酢酸エチル溶液(37wt%)を12.5ml(4PAとして20mmol)を精製窒素雰囲気下にオートクレーブ内に導入した。
オートクレーブの温度を90℃とした後、0.1mol/lに希釈したトリノルマルオクチルアルミニウムのトルエン溶液を1ml加えた。
その後、窒素を0.3MPaまで導入し、さらにエチレンを2.8MPaまで導入した。
温度と圧力が安定した後、先に調製した錯体溶液2ml(20μmol)を窒素で圧入することで反応を開始した。反応中は、温度を90℃に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給して30分間重合を行った。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られた極性基含有オレフィン共重合体は、アセトン(1L)を用いて析出させ、析出した共重合体を濾過した。
濾過により得られた固形の極性基含有オレフィン共重合体をアセトンで洗浄後、60℃で3時間減圧乾燥後、最終的に極性基含有オレフィン共重合体を54g回収した。
共重合体の分子量(Mw)は、97000、分子量分布(Mw/Mn)は、2.0、Tmは、119.1であった。
[比較例1]
エチレンと4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンを、高圧ラジカル重合にて、重合した極性基含有オレフィン共重合体[日本ポリエチレン(株)社製、KOKANOX XJ100H(MFR=3.0g/10min、密度=0.932g/cm)]を比較例1とした。
[比較例2]
極性基含有オレフィン共重合体を添加しない直鎖状低密度ポリエチレン[日本ポリエチレン(株)社製、銘柄ノバテック UF230(MFR=1.0g/10min、密度=0.921g/cm)]単体を、比較例2とした。
各実施例、比較例において、得られた極性基含有オレフィン共重合体の分析データを表1に示す。耐候性評価結果を表2に示し、そのうち、引張破断伸度の比較を図2に、引張破断強度の比較を図3に示す。
Figure 0006310282
Figure 0006310282
[実施例と比較例の評価結果の考察]
表1、表2と図2、3から、実施例1、2において、サンシャインウェザオメーターで1500時間紫外線照射を行った後の引張破断伸度は、照射前のそれと比較して、大きな低下は、見られない。引張破断強度においても、同様である。
一方、比較例1においては、照射時間600時間以降で、引張破断伸度及び引張破断強度に大きな低下がみられる。
また、比較例2においては、引張破断伸度は、照射時間500時間を境に大きく低下する。引張破断強度は、照射開始とともに低下する。
一般的に、このような耐候性を発現するのは、極性基含有モノマーである4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが劣化に伴って発生するラジカルを捕捉するためと、考えられている。ほぼ同程度の極性基モノマー含有量である実施例1、2と比較例1を、耐候性の観点から、対比した際、分岐状構造を有する比較例1よりも、直鎖状構造を有する実施例1、2の方が優れた耐候性を示すことが、明らかになった。
以上の各実施例の良好な結果、及び各比較例との対比により、本発明の有意性と合理性及び従来技術に対する卓越性が明確にされている。
本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、特定の遷移金属触媒を用いることにより、製造可能となった新規な共重合体であって、簡易で効率の良い重合法で製造され、諸物性に優れた、特定の分子構造を有する極性基含有オレフィン共重合体であり、そのため、高い光安定性と光安定化持続性を有し、工業的に有用な成形品の製造を可能にする。そして、本発明の極性基含有オレフィン共重合体を光安定化剤として、用いると、極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂の混合したオレフィン系樹脂組成物は、優れた光安定性を有し、さまざまな用途、例えば、押出成形品や射出成形品などに成形され、特に、長期間屋外で用いられる農業用フィルム等の広範囲な用途に、好適に使用可能であり、工業的に極めて有用である。

Claims (13)

  1. エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、下記一般式(1)で表されるヒンダードアミン基を有する極性基含有ビニルモノマーとを共重合して得られる極性基含有オレフィン共重合体であって、
    該極性基含有オレフィン共重合体は、ランダム共重合体であり、かつ分子構造が直鎖状であることを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体。
    Figure 0006310282
    [式(1)中、R およびR は、水素原子またはメチル基を表し、R は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
  2. GPCによって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Q値:Mw/Mn)が1.5〜3.5であることを特徴とする請求項1に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
  3. DSCにより測定される吸収曲線の最大ピーク位置の温度で表される融点が50〜140℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の極性基含有オレフィン共重合体。
  4. エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、ヒンダードアミン基を有する極性基含有ビニルモノマーとを、キレート性配位子を有する周期表第7〜11族金属の遷移金属触媒の存在下に、共重合することを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体の製造方法。
  5. 前記遷移金属触媒の遷移金属は、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、又はパラジウム原子であることを特徴とする請求項4に記載の極性基含有オレフィン共重合体の製造方法。
  6. 前記遷移金属触媒は、パラジウム又はニッケル金属に、トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒であることを特徴とする請求項4又は5に記載の極性基含有オレフィン共重合体の製造方法
  7. 前記ヒンダードアミン基を有する極性基含有ビニルモノマーは、下記一般式(1)で表されるビニルモノマーであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の極性基含有オレフィン共重合体の製造方法。
    Figure 0006310282
    [式(1)中、R およびR は、水素原子またはメチル基を表し、R は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
  8. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体からなる光安定化剤。
  9. 他のオレフィン系樹脂100重量部に対して、請求項1〜3のいずれか1項に記載の極性基含有オレフィン共重合体0.01〜20重量部を含むことを特徴とするオレフィン系樹脂組成物。
  10. 前記他のオレフィン系樹脂は、エチレン単独重合体、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとの共重合体またはエチレン−酢酸ビニル共重合体の少なくとも一種であることを特徴とする請求項9に記載のオレフィン系樹脂組成物。
  11. 請求項9又10に記載のオレフィン系樹脂組成物を押出成形してなることを特徴とする押出成形品。
  12. 請求項9又は10に記載のオレフィン系樹脂組成物を射出成形してなることを特徴とする射出成形品。
  13. 請求項9又は10に記載のオレフィン系樹脂組成物からなることを特徴とする農業用フィルム。
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