JP6042836B2 - オレフィン系樹脂組成物及び積層体 - Google Patents
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Description
なお、高圧ラジカル法重合プロセスを用いずに重合された極性基含有オレフィン共重合体の例としては、いわゆるマスキング法と呼ばれる、特定のメタロセン系触媒及び十分な量の有機アルミニウム(極性基含有モノマーと等モル以上)の存在下で重合する製法発明の中に、1,2−epoxy−9−deceneとエチレン、及び1−ブテンを共重合させた極性基含有オレフィン共重合体が示されている(特許文献9を参照)。
しかし、この発明によると、極性基含有オレフィンの共重合に際し、多量の有機アルミニウムを必要とし、製造コストが高くならざるを得ない。また、多量の有機アルミニウムは不純物として極性基含有オレフィン共重合体中に存在する事となり、機械物性の低下や変色、劣化の促進を引き起こし、これを除去するには更なるコストアップにつながる。更に発明の効果は、主として高い重合活性で極性基含有オレフィン共重合体を製造することであり、極性の高い異種材料との具体的な接着性能について触れられていない。しかもこの特許文献には、極性基含有オレフィン共重合体が極性の高い異種材料と十分な接着性を得るために必要な樹脂物性についても全く触れられておらず、高い接着性能を目的とした極性基含有オレフィン共重合体としての使用は開示されていない。
本発明者らはさらに、極性基含有オレフィン共重合体と混合するオレフィン系樹脂の物性、極性基含有オレフィン共重合体とオレフィン系樹脂の組成比率等について吟味実証した結果、特定の分子鎖構造を持った極性基含有オレフィン共重合体に対し、特定範囲の密度を有するオレフィン系樹脂を適当な配合割合でブレンドする事によって、異種材料との接着性が十分維持され、かつ耐熱性にも優れたオレフィン系樹脂組成物が得られることを見い出した。この発明により、極性基含有オレフィン共重合体単独では成し得なかった、異種材料との十分な接着性と耐熱性がバランスされたオレフィン系樹脂組成物の製造が、経済性にも優れた方法によって実現することが可能となり、本発明の創作に至った。
オレフィン系樹脂組成物の構成成分としては、エポキシ基含有モノマーを重合することで得られる特定の極性基含有オレフィン共重合体を主要成分として必須で含み、かつ、特定範囲の密度を有するオレフィン系樹脂がさらに、規定の組成比率範囲で混合されている事が必要である。それによって、異種材料との十分な接着性と耐熱性が十分バランスされた樹脂組成物の製造が可能となり、積層体へ応用して顕著な効能を示すことができる。
構造式(I)
特定の官能基:エポキシ基を必須で含み、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)
構造式(II)
特定の官能基:エポキシ基を必須で含み、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)
(1)極性基含有オレフィン共重合体(A)の基本的な特徴
本発明における主要成分である、極性基含有オレフィン共重合体(A)は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基含有モノマーとの共重合体であって、該モノマー単位がランダムに共重合したランダム共重合体であり、かつ分子構造が実質的に直鎖状の共重合体である。なお、極性基含有オレフィン共重合体(A)の分子構造や製造方法は、本発明の関連発明である、特願2013−67402に記載の極性基含有オレフィン共重合体と、基本的には同一である。
本発明に関わるα−オレフィンは構造式:CH2=CHR18で表される、炭素数3〜20のα−オレフィンである(R18は炭素数1〜18の炭化水素基であり、直鎖構造であっても分岐を有していてもよい)。より好ましくは、炭素数3〜12のα−オレフィンであり、さらに好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンから選択されるα−オレフィンであり、より好適には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンから選択されるα−オレフィンである。重合に供するα−オレフィンは単独でも良いし、2種以上であっても構わない。
本発明における極性基を含有しないモノマーは、分子構造中に炭素−炭素二重結合を1つ以上有するモノマーであり、かつ、分子を構成する元素が炭素と水素のみであれば限定されず、例えば、ジエン、トリエン、芳香族ビニルモノマー、環状オレフィン等が挙げられ、好ましくは、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、シクロヘキセン、ビニルノルボルネン、ノルボルネンである。
本発明に関わる極性基含有モノマーは、エポキシ基を含有する必要がある。エポキシ基を持った極性基含有オレフィン共重合体を含むオレフィン系樹脂組成物であれば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、接着性を付与したフッ素樹脂などの極性の高い熱可塑性樹脂、及びアルミニウム、スチ−ルなどの金属材料の基材と積層接着することが可能となる。
構造式(I)
特定の官能基:エポキシ基を必須で含み、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)
構造式(II)
更には、構造式(I)で示されるエポキシ基含有モノマーのうち、R1が水素原子または炭素数1〜10のアルキル基、R2、R3、R4はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、又はエポキシ基を含む下記の特定の官能基のうちいずれかであり、かつ、R2〜R4のいずれか1つはエポキシ基を含む特定の官能基であるものが、より好ましい。(特定の官能基:エポキシ基を必須で含み、さらに、炭化水素基、カルボニル基、エーテル基のいずれかを更に必須で含む、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)
重合に供されるエポキシ基含有モノマーは単独でも良く、2種類以上を合わせて用いても良い。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体の構造単位と構造単位量について説明する。
エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィン、及びエポキシ基含有モノマー、それぞれ1分子に由来する構造を、極性基含有オレフィン共重合体中の1構造単位と定義する。そして、極性基含有オレフィン共重合体中の各構造単位の比率をmol%で表したものが構造単位量である。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)のエポキシ基含有モノマーに由来する構造単位量は、通常20〜0.001mol%の範囲、好ましくは15〜0.01mol%の範囲、より好ましくは10〜0.02mol%の範囲、より好適には5〜0.03mol%の範囲から選択され、必ず本発明の極性基含有オレフィン共重合体に存在していることが好ましい。もし、この範囲よりエポキシ基含有モノマーに由来する構造単位量が少なければ、極性の高い異種材料との接着性が充分ではなく、この範囲より多ければ充分な機械物性が得られない。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体中のエポキシ基の構造単位量は1H−NMRスペクトルを用いて求められる。1H−NMRスペクトルは、例えば、以下の方法によって測定することができる。
試料200〜250mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C6D5Br)=4/1(体積比)2.4mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れて窒素置換した後封管し、加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定に供した。NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のAV400M型NMR装置を用いて120℃で行った。1H−NMRはパルス角1°、パルス間隔1.8秒、積算回数を1,024回以上として測定した。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチルプロトンのピークを0.088ppmとして設定し、他のプロトンによるピークの化学シフトはこれを基準とした。13C−NMRはパルス角90°、パルス間隔20秒、積算回数512回以上とし、プロトン完全デカップリング法で測定した。化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチル炭素のピークを1.98ppmとして設定し、他の炭素によるピークの化学シフトはこれを基準とした。
0.3〜3.1ppmの範囲の極性基含有オレフィン共重合体によるピークの積分強度和をIA1とし、2.4、2.6、3.0、3.3、3.4、3.5、及び4.1ppmに生じる共重合体中に含まれる4―HBAGEのプロトンによるピークの積分強度の和をIX1とした時に、以下の式に従って求めた。
4―HBAGE含有量 (mol%)=40×IX1/(IA1−0.6×IX1)
0.3〜3.2ppmの範囲の極性基含有オレフィン共重合体によるピークの積分強度和をIA2とし、3.0ppm付近に生じる共重合体中に含まれるEP−VCHのプロトンによるピークの積分強度の和をIX2とした時に、以下の式に従って求めた。
EP−VCH含量 (mol%) = 100×IX2/(0.5×IA2−2×IX2)
0.3〜3.2ppmの範囲の極性基含有オレフィン共重合体によるピークの積分強度和をIA3とし、2.5、2.6、3.1、3.9、及び4.3 ppmに生じる共重合体中に含まれるGMAのプロトンによるピークの積分強度の和をIX3とした時に、以下の式に従って求めた。
GMA含有量 (mol%)=80×IX3/(IA3−0.8×IX3)
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンとエポキシ基含有モノマーの共重合体のランダム共重合体である。
本発明における極性基含有オレフィン共重合体(A)の分子構造例を下記段落に示す。ランダム共重合体とは、下記段落に示した分子構造例のA構造単位とB構造単位の、ある任意の分子鎖中の位置においてそれぞれの構造単位を見出す確率が、その隣接する構造単位の種類と無関係な共重合体である。また、極性基含有オレフィン共重合体の分子鎖末端は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンであっても良く、エポキシ基含有モノマーであっても良い。下記のように、本発明における極性基含有オレフィン共重合体の分子構造(例)は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンとエポキシ基含有モノマーとが、ランダム共重合体を形成している。
極性基含有オレフィン共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、通常1,000〜2,000,000、好ましくは5,000〜1,000,000、更に好ましくは8,000〜800,000の範囲であることが望ましい。Mwが1,000未満では機械強度や耐衝撃性といった物性が充分ではなく、2,000,000を超えると溶融粘度が非常に高くなり、成形加工が困難となる。
(測定条件)使用機種:ウォーターズ社製150C 検出器:FOXBORO社製MIRAN1A・IR検出器(測定波長:3.42μm) 測定温度:140℃ 溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB) カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本) 流速:1.0mL/分 注入量:0.2mL
(試料の調製)試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
(分子量の算出)標準ポリスチレン法により行い、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー社製の、(F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000)の銘柄である。各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PE:K=3.92×10−4、α=0.733
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
本発明に関わるオレフィン系樹脂(A)の融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク温度によって示される。最大ピーク温度とは、DSC測定において、縦軸に熱流(mW)、横軸に温度(℃)をとった際に得られる吸熱曲線に複数ピークが示された場合、そのうちベースラインからの高さが最大であるピークの温度の事を示し、ピークが1つだった場合には、そのピークの温度の事を示している。
ポリエチレンを想定した場合、融点は50℃〜140℃であることが好ましく、60℃〜138℃であることが更に好ましく、70℃〜135℃が最も好ましい。この範囲より低ければ耐熱性が充分ではなく、この範囲より高い場合は接着性が劣るものとなる。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)は、遷移金属触媒の存在下、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基含有モノマーとを共重合させることによって得られる。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の製造に用いる重合触媒の種類は、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基含有モノマーとを共重合することが可能なものであれば特に限定されないが、例えば、キレート性配位子を有する第5〜11族の遷移金属化合物が挙げられる。
好ましい遷移金属の具体例として、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子、マンガン原子、鉄原子、白金原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子、銅原子などが挙げられる。
これらの中で好ましくは、バナジウム原子、鉄原子、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子、ロジウム原子、であり、特に好ましくは、白金原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子である。これらの金属は、単一であっても複数を併用してもよい。
さらに、本発明の遷移金属錯体の遷移金属は、Mがニッケル(II)、パラジウム(II)、白金(II)、コバルト(II)及びロジウム(III)からなる群から選択される元素であることが、さらには第10族の元素であることが重合活性の観点から好ましく、特に価格等の観点から、ニッケル(II)が好ましい。キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位( bidentate )又は多座配位(multidentate)であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Brookhartらによる総説に、その構造が例示されている(Chem.Rev.,2000,100,1169)。
好ましくは、二座アニオン性P,O配位子として例えば、リンスルホン酸、リンカルボン酸、リンフェノール、リンエノラートが挙げられ、他に、二座アニオン性N,O配位子として例えば、サリチルアルドイミナ−トやピリジンカルボン酸が挙げられ、他に、ジイミン配位子、ジフェノキサイド配位子、ジアミド配位子が挙げられる。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の製造において、エポキシ基含有モノマーと少量の有機金属化合物とを接触させた後、前記の遷移金属触媒の存在下、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基含有モノマーとを共重合させることにより重合活性をより高められる。
有機金属化合物は、置換基を有してもよい炭化水素基を含んだ有機金属化合物であり、下記構造式(H)で示すことができる。
R30 nM30X30 m−n 構造式(H)
(式中、R30は、炭素原子数1〜12の置換基を有してもよい炭化水素基を示し、M30は、周期表第1族、第2族、第12族及び第13族からなる群から選択される金属、X30は、ハロゲン原子または水素原子を示し、mは、M30の価数、nは、1〜mである。)
有機金属化合物は、極性基含有コモノマーに対するモル比が10−5〜0.9、好ましくは10−4〜0.2、更に好ましくは10−4〜0.1となる量を接触させることが、重合活性やコストの観点から好ましい。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の1g中に残留するアルミニウム(Al)量は、100,000μgAl/g以下が好ましく、70,000μgAl/g以下がより好ましく、20,000μgAl/g以下が更に好ましく、10,000μgAl/g以下が特に好ましく、5,000μgAl/g以下が好適であり、1,000μgAl/g以下がより好適であり、500μgAl/g以下が最も好適である。これよりも多い場合、極性基含有オレフィン共重合体(A)の機械物性の低下、重合生成物の変色や劣化の促進等が起こる。アルミニウム(Al)の残留量は可能な範囲で少ない方が良く、例えば、1μgAl/g程の極少量であっても良いし、0μgAl/gであっても構わない。なお、μgAl/gは極性基含有オレフィン共重合体1g中に含まれるアルミニウム(Al)の量をμg単位で表していることを意味する。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体に含まれるアルミニウム(Al)量は、重合に供したアルキルアルミニウム中に含有されるアルミニウム量を、得られた極性基含有オレフィン共重合体の収量で除した値として算出することができる。
測定試料を3〜10g秤量し、加熱プレス機で加熱加圧成型して直径45mmの平板状サンプルを作製する。測定は平板状サンプルの中心部直径30mmの部分について行い、理学電気工業社製の走査型蛍光X線分析装置「ZSX100e」(Rh管球4.0kW)を用いて、以下の条件で測定する。
・X線出力:50kV−50mA
・分光結晶:PET
・検出器:PC(プロポーショナルカウンター)
・検出線:Al−Kα線
アルミニウム含有量は、予め作成した検量線と上記条件で測定した結果から求める事が出来る。検量線は複数のポリエチレン樹脂のアルミニウム含量をICP分析にて測定し、それらポリエチレン樹脂を上記の条件でさらに蛍光X線分析する事で作成する事ができる。
測定試料及び特級硝酸3ml、過酸化水素水(過酸化水素含量30重量%)1mlをテフロン(登録商標)製容器に入れ、マイクロウェーブ分解装置(マイルストーンゼネラル社製 MLS−1200MEGA)を用い、最大500Wで加熱分解操作を実施し、測定試料を溶液化する。溶液化した測定試料をICP発光分光分析装置(サーモジャーレルアッシュ社製 IRIS−AP)に供することによりアルミニウム含有量が測定できる。アルミニウム含有量の定量はアルミニウム元素濃度が既知の標準液を用いて作成した検量線を用いて行う。
本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)の重合方法は限定されない。媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが好ましく用いられる。重合形式としては、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。また、リビング重合であってもよいし、連鎖移動を併発しながら重合を行ってもよい。更に、いわゆるchain shuttling agent(CSA)を併用し、chain shuttling反応や、coordinative chain transfer polymerization(CCTP)を行ってもよい。具体的な製造プロセス及び条件については、例えば、特開2010−260913号公報、特開2010−202647号公報に開示されている。
(1)オレフィン系樹脂(B)の基本的な特徴
本発明に関わるオレフィン系樹脂(B)は、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系、フィリップス型又はシングルサイト触媒を用い高中低圧法及びその他の公知の方法により得られる、エチレン単独重合体、炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを重合して得られる単独重合体、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを少なくとも1種含むオレフィン系共重合体から選択する事が出来る。
本発明に関わるα−オレフィンは構造式:CH2=CHR18で表される、炭素数3〜20のα−オレフィンである(R18は炭素数1〜18の炭化水素基であり、直鎖構造であっても分岐を有していてもよい)。より好ましくは、炭素数3〜12のα−オレフィンであり、さらに好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンから選択されるα−オレフィンであり、より好適には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンから選択されるα−オレフィンである。重合に供するα−オレフィンは単独でも良いし、2種以上であっても構わない。
本発明に関わる単独重合体は、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される1種類のモノマーのみを重合して得られる。より好ましい単独重合体は、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、1−ブテン単独重合体、1−ヘキセン単独重合体、1−オクテン単独重合体、1−ドデセン単独重合体等であり、さらに好ましくはエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体である。
本発明に関わるオレフィン系共重合体は、エチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、環状オレフィン、その他の極性基を含有しないビニルモノマー、極性基を含有するビニルモノマー、から選択されるモノマーの2種以上を重合する事で得られる共重合体であって、エチレンもしくは炭素数3〜20のα−オレフィンから選択されるモノマーを少なくとも1種類以上を含有してなるオレフィン系共重合体である。重合に供されるモノマーは2種類であっても良いし、3種類以上であっても良い。オレフィン系共重合体として好ましいのは、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択される1種以上のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと環状オレフィンから選択される1種以上の環状オレフィンとの共重合体である。更に好ましいのはエチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンから選択される1種、もしくは2種以上のα−オレフィンとの共重合体、エチレンとノルボルネンの共重合体である。
本発明に関わる環状オレフィンは、例えば、シクロヘキセン及びシクロオクテン等の単環状オレフィン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、ジシクロペンタジエン、ジヒドロジシクロペンタジエン、テトラシクロドデセン、トリシクロペンタジエン、ジヒドロトリシクロペンタジエン、テトラシクロペンタジエン、ジヒドロテトラシクロペンタジエン等の多環状オレフィン、これらのオレフィンに官能基が結合した置換体などが挙げられる。なかでも、好ましい環状オレフィンとしてはノルボルネンが挙げられる。ノルボルネンが共重合されたオレフィン系共重合体は一般に、主鎖骨格が脂環構造であるため低吸湿性を有し、また、その付加重合体は耐熱性にも優れる。
本発明に関わる極性基を含有しないモノマーは、分子構造中に炭素−炭素二重結合を1つ以上有し、かつ、分子を構成する元素が炭素と水素からなるモノマーである。上記のエチレンとα-オレフィンを除くと、例えば、ジエン、トリエン、芳香族ビニルモノマー等が挙げられ、好ましくは、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネンである。
本発明に関わる極性基を含有するモノマーは限定されないが、例えば、カルボン酸基又は酸無水基含有モノマー(a)、エステル基含有モノマー(b)、ヒドロキシル基含有モノマー(c)、アミノ基含有モノマー(d)、シラン基含有モノマー(e)から選択する事が出来る。
本発明に関わるオレフィン系樹脂(B)の製造方法は限定されないが、例えば、高圧ラジカル重合法や、チーグラー系、フィリップス型又はシングルサイト触媒を用い高中低圧法及びその他の公知の方法を例示する事ができる。オレフィン系樹脂(B)は、例えば、特公昭55−14084号公報、特公昭58−1708号公報、特開平08−301933号公報、特開平09−286820号公報、特開平11−228635号公報、特開2003−064187号公報、特開2000−109521号公報、特表2003−519496号公報、特表2003−504442号公報、特表2003−531233号、特開平8−325333号公報、特開平9−031263号公報、特開平9−087440号公報、特開2006−265387号公報、特開2006−265388号公報、特開2006−282927号公報、特表2001−525457号公報、特表2004−531629号公報、特開2005−120385号公報、特開昭58−19309号公報、特開昭59−95292号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭60−35009号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報の各公報、ヨーロッパ特許出願公開第420,436号明細書、米国特許第5,055,438号明細書、及び国際公開公報W091/04257号明細書等、に記載された各種の製造方法によって製造する事が可能である。
本発明に関わるオレフィン系樹脂(B)の密度は、JIS K7112に準拠して測定され、0.890〜1.20g/cm3であることが好ましく、0.895〜0.990g/cm3であることが更に好ましく、0.900〜0.980g/cm3であることがより好ましい。この範囲より低ければ耐熱性が充分ではなく、この範囲より高い場合は耐衝撃性が劣るものとなる。
本発明に関わるオレフィン系樹脂(B)の融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク温度によって示される。
本発明に関わるオレフィン系樹脂(B)には結晶性のものと非晶性のものが存在する。結晶性の場合、上記の融点測定法によって融点を測定する事ができるが、非晶性のものは融点を示さない場合がある。本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体(A)が結晶性樹脂であることから、オレフィン系樹脂(B)も融点を有する方が好ましいが、後述するオレフィン系樹脂組成物(C)が好ましい融点範囲および接着性を示すならば、非晶性のオレフィン系樹脂であっても構わない。上記融点測定方法によって融点が測定されるオレフィン系樹脂(B)の好ましい融点範囲は90℃〜170℃であり、100℃〜155℃の範囲であることがより好ましく、110℃〜140℃の範囲が特に好ましい。この範囲より低ければ耐熱性が充分ではなく、この範囲より高い場合は接着性が劣るものとなる。
(1)樹脂組成物(C)の基本的な特徴
本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)は、極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対してオレフィン系樹脂(B)を1〜99,900重量部、より好ましくは1〜99,000重量部、更に好ましくは1〜90,000重量部、いっそう好ましくは1〜50,000重量部、特に好適には1〜19,900重量部を配合したオレフィン系樹脂組成物である。オレフィン系樹脂(B)の配合量が1重量部より少なくても、また、99,900重量部より多くても、オレフィン系樹脂組成物(C)の接着性が劣るものとなる。
本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)は公知の方法で製造することができ、例えば、極性基含有オレフィン共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)と、所望により添加される他成分を、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、往復式混練機(BUSS KNEADER)、ロール混練機等、などを用いて溶融混練する方法、極性基含有オレフィン共重合体(A)とオレフィン系樹脂(B)と、所望により添加される他成分を適当な良溶媒(例えば、へキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン、キシレンなどの炭化水素溶媒)に溶解し、次いで溶媒を除去する方法で製造することができる。
本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)には、本発明の組成物の機能の主旨を逸脱しない範囲において、他の機能を付加するために、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、着色剤、顔料、架橋剤、発泡剤、核剤、難燃剤、充填材、導電材などの添加剤を配合しても良い。
本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)には、本発明の組成物の機能の主旨を逸脱しない範囲において、各種の樹脂改質材などを配合してもよい。その成分としては、ブタジエン系ゴム、イソブチレンゴム、イソプレン系ゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、石油樹脂などが挙げられ、これらは単独でも混合物でもよい。
本発明に関わるオレフィン系樹脂(C)の融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線の最大ピーク温度によって示される。
オレフィン系樹脂組成物(C)の融点は119℃〜170℃であることが好ましく、119.5℃〜155℃であることが更に好ましく、120℃〜140℃が最も好ましい。この範囲より低ければ耐熱性が充分ではなく、この範囲より高い場合は接着性が劣るものとなる。
本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)の融解熱量ΔHは、JIS K7122に準拠して測定される。すなわち、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク面積より測定される。融解熱量ΔHは、80〜300J/gの範囲であることが好ましく、85〜290J/gの範囲であることが更に好ましく、100〜280J/gの範囲であるとより好適である。この範囲より低ければ耐熱性が充分ではなく、この範囲より高い場合は接着性が劣るものとなる。
(1)積層体の材料
本発明に関わる積層体は、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)からなる層と基材層とを含む積層体であって、該基材層は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの極性の高い熱可塑性樹脂、接着性を有するフッ素樹脂、アルミニウム、スチールなどの金属材料などの基材を例示することができる。
バリア性樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、EVOH、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、延伸ポリプロピレン(OPP)、延伸ポリエステル(OPET)、延伸ポリアミド、アルミナ蒸着フィルム、シリカ蒸着フィルムなどの金属、無機酸化物の蒸着フィルム、アルミ蒸着などの金属蒸着フィルム、金属箔などが挙げられる。
本発明に関わる積層体は、例えば、食品の包装材として好適である。食品の具体例としては、ポテトチップなどのスナック菓子、ビスケット、煎餅、チョコレートなどの菓子類、粉スープなどの粉末調味料、削り節や薫製などの食品などが挙げられる。また、パウチ類の容器としては、上記積層体のエチレン系共重合体層面同士を向かい合わせ、その少なくとも一部をヒートシールすることにより形成することができる。具体的には、例えば、水物包装、一般袋、液体スープ包袋、液体紙器、ラミ原反、特殊形状液体包装袋(スタンディングパウチなど)、規格袋、重袋、セミ重袋、ラップフィルム、砂糖袋、油物包装袋、食品包装用などの各種包装容器、輸液バックなどに好適に使用される。
本発明に関わる積層体の加工方法としては、通常のプレス成形、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、高速インフレーション成形、フラットダイ成形(T−ダイ成形)、水冷インフレーション成形などの押出成形、押出ラミネート加工、サンドラミネート加工、ドライラミネート加工等のラミネート加工法、ブロー成形、圧空成形、射出成形、回転成形など、従来公知の方法が挙げられる。
本発明に関わるラミネート積層体とは、押出ラミネート加工、サンドラミネート加工、ドライラミネート加工等、公知のラミネート加工法で製造する事が出来る積層体であり、該ラミネート積層体は本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)を含有してなるラミネート材料と、少なくとも1層以上の基材層とをラミネート加工することで製造する事ができる積層体である。本発明におけるラミネート材料とは、各種公知のラミネート加工法に供する事が可能な本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)を含む樹脂材料の事である。押出ラミネート加工は、Tダイより押出した溶融樹脂膜を基材上に連続的に被覆・圧着する方法で、被覆と接着を同時に行う成形加工法である。また、サンドラミネート加工は、紙と積層するフィルムの間に溶融した樹脂を流し込んで、この溶融した樹脂が接着剤のような働きをして接着・積層する方法であり、ドライラミネート加工は、基材と積層するフィルムを貼合する接着剤及び/又は接着剤の塗布ロール付近の雰囲気湿度を除湿するか、前記接着剤及び/又は接着剤の塗布ロールの温度を温熱するか、フィルムシートの貼合面を乾燥させる方法である。
サンドラミネート加工、ドライラミネート加工においては、本発明に用いる基材のオレフィン系樹脂組成物(C)を含む層が形成される側で、基材層とオレフィン系樹脂組成物(C)を含む層との間に、バリア性を向上させるため、アルミ箔、ポリエステル系フィルム、各種バリア性フィルムなどを積層させることが容易である。本発明に関わるラミネート用材料と積層する基材層としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
本発明に関わる押出成形品とは、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)を押出成形によって成形した押出成形品である。本発明に関わる押出成形品は、空冷インフレーション成形、空冷2段冷却インフレーション成形、高速インフレーション成形、水冷インフレーション成形といった各種インフレーション成形、フラットダイ成形、異形押出成形、管状品成形等、公知の押出成形によって製造する事ができる。また、押出成形によって得られた押出成形品が固化しきらない状態で、金型等に挟み込んだり、変形を加えたりといった、各種公知の方法によってさらに賦形してもかまわない。さらには、得られた押出成形品に曲げ、切削、再加熱後に賦形する等、各種公知の方法によって後加工を加えても構わない。
本発明に関わる多層共押出成形品とは、公知の多層共押出成形によって成形する事が可能な多層共押出成形品であり、本発明のオレフィン系樹脂組成物(C)を含有してなる層を少なくとも含む多層共押出成形品である。多層共押出成形品とは、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、種々の賦形方法によって成形することにより製造する事が可能な、多層構造を持った成形品の事である。本発明に関わる多層共押出成形品の製造方法としては、多層空冷インフレーション成形、多層空冷2段冷却インフレーション成形、多層高速インフレーション成形、多層水冷インフレーション成形、多層フラットダイ成形(T−ダイ成形)、多層管状品成形、多層コルゲートパイプ成形等、公知の多層共押出成形を挙げる事ができる。本発明に関わる多層共押出成形品における基材層としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。 本発明に関わる多層共押出成形品は、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)を含む層と適当な基材とを、例示した様な成形方法によって加工することにより、多層フィルム、多層シート、多層パイプ、多層ホース、多層チューブ、多層コルゲートパイプ等の公知の多層共押出成形品として製造する事ができる。また、多層共押出成形によって得られた多層共押出成形品が固化しきらない状態で、金型等に挟み込んだり、変形を加えたりといった、各種公知の方法によってさらに賦形してもかまわない。さらには、得られた多層共押出成形品に曲げ、切削、再加熱後に賦形する等、各種公知の方法によって後加工を加えても構わない。
本発明に関わる多層フィルムとは、公知の多層フィルム成形法によって製造する事が可能な多層フィルムであり、本発明のオレフィン系樹脂組成物(C)を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層フィルムである。本発明に関わる多層フィルムの製造方法としては、多層空冷インフレーション成形、多層空冷2段冷却インフレーション成形、多層高速インフレーション成形、多層水冷インフレーション成形、多層フラットダイ成形(T−ダイ成形)等、公知の多層フィルム成形法を用いる事ができる。本発明に関わる多層フィルムの基材層としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
本発明に関わる多層ブロー成形品とは、公知の多層ブロー成形によって製造する事が可能な多層ブロー成形品であり、本発明のオレフィン系樹脂組成物(C)を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層ブロー成形品である。本発明に関わる多層ブロー成形品の製造方法としては、多層ダイレクトブロー成形、多次元多層ブロー成形、多層ロータリーブロー成形等、公知のブロー成形法を挙げる事ができる。本発明に関わる多層ブロー成形品の基材層としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
本発明に関わる多層管状成形品とは、公知の多層管状成形法によって成形する事が可能な多層管状成形品であり、本発明のオレフィン系樹脂組成物(C)を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層管状成形品である。本発明に関わる多層管状成形法は、例えば、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、円形もしくは異形の吐出口から吐出することによって連続的に吐出口形状に準じた形状の管状成形品が成形され、適当な賦形方法、および冷却方法によって成形、冷却固化することで管状の成形品を得る方法を挙げる事ができる。本発明に関わる多層管状成形法の吐出口形状は特に限定されず、円形、楕円、多角形、その他公知の吐出口形状を選択する事ができる。また、本発明に関わる多層管状成形法の成形方法は特に限定されず、サイジングプレート法、内圧サイジング法、内径サイジング法、真空サイジング法、押出した溶融材料を金型で挟み込み、マンドレル側からの圧空や金型側からの真空引き等で賦形しつつ冷却する方法等、公知の成形法を用いる事ができ、冷却方法も水冷、空冷、金型での挟み込み等、適宜使用することができる。さらに、一度冷却固化させた多層管状成形品を再加熱し、さらに別の形状へと加工することもできる。本発明に関わる多層管状成形品の基材層としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
本発明に関わる多層シートとは、公知の多層シート成形によって製造する事が可能な多層シートであり、本発明のオレフィン系樹脂組成物(C)を含有してなる層と基材層とを少なくとも含む多層シートである。本発明に関わる多層シートの製造方法としては各種公知の方法を用いる事ができ、例えば、複数の熱可塑性材料を同時に押出成形することによって複数の材料を層状に複合化し、フラットダイやサーキュラーダイ等公知のダイから吐出させることでシート状に成形する方法を挙げる事ができる。また、これら方法において、必要に応じてシートの端部をスリットしたり、円形のシートを切り開く加工を加えても良い。さらに、押出成形後に冷却固化していない状態、もしくは、冷却固化した多層シートを再加熱する事により再溶融させた状態で、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、スタンピング成形、プレス成形等、各種公知の成形方法によってさらに賦形しても構わない。本発明に関わる多層シートの基材層としては、前述したような種々の各種材料を適宜用いる事ができる。
本発明に関わる射出成形品とは、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)体を射出成形によって成形した射出成形品である。本発明に関わる射出成形品の製造には公知の方法を用いる事ができる。
本発明に関わる多層射出成形品とは、本発明のオレフィン系樹脂組成物(C)を含有してなる層を少なくとも含み、射出成形を用いて複数の層を複合化することで製造できる多層射出成形品である。多層射出成形品は2種類以上の材料が複合化されていればよく、例えば、2種の異なる本発明のオレフィン系樹脂組成物(C)を含有してなる層が積層化されていても良く、本発明のオレフィン系樹脂組成物(C)を含有してなる層と基材からなる層が多層化されていても良い。さらに、3種以上の層が多層化されていても良い。本発明に関わる多層射出成形品は、公知の射出成形法によって成形する事ができる。本発明のオレフィン系樹脂組成物(C)を含有してなる層の2種類以上を多層化してなる多層射出成形品であってもよいが、本発明の特徴である異種材料との高い接着性を有する点を考慮すると、異種材料からなる層と多層化させた複合化射出成形品であるほうが好ましい。多層射出成形品の製造が可能な射出成形法としては、公知の方法を挙げる事ができる。例えば、あらかじめ射出成形や押出成形、プレス成形、切削加工等公知の方法により本発明のオレフィン系樹脂組成物(C)を部材へと加工し、該部材を射出金型内部にインサートした状態でさらに基材材料を射出することで多層化させる方法、あらかじめ基材を部材へと加工し、基材の部材を射出金型内にインサートした状態で本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)を射出することで多層化させる方法、複数の射出ユニットを有する多色射出成形機を用い、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)と基材材料を適当な順序で順次、金型内に射出することによって多層化する方法などを挙げる事ができる。本発明に関わる多層射出成形品において、本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)と複合化させる部材の種類としては、前述したような種々の各種基材を適宜使用する事ができる。
本発明に関わる被覆金属部材とは、金属に本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)を金属被覆材料として用い、金属被覆材料を金属に被覆することにより製造できる、被覆金属部材である。本発明に関わる被覆金属部材は公知の金属被覆方法によって製造する事ができる。被覆金属部材の例としては、例えば、鋼管の外面もしくは内面に、必要に応じてアンダーコート等を介して被覆材料を被覆させた被覆鋼管、金属被覆材料で被覆された被覆金属ワイヤー、金属被覆材料で被覆された電線、紛体性状の被覆金属材料を用いて流動浸漬法によって被覆された被覆金属、紛体性状の被覆金属材料を用いて静電塗装法によって被覆された被覆金属、あらかじめシートやフィルム等に加工した金属被覆材料を金属材用に熱溶着させる事で被覆された被覆金属、等を挙げる事ができる。
本発明に関わるオレフィン系樹脂組成物(C)は、上記の接着性樹脂材料として好適に用いられるばかりでなく、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などの各種樹脂の改質材、或いは、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂とポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、液晶樹脂などのエンジニアリングプラスチックとの相溶化剤としても好適に適用される。また、難燃剤に使用されるカップリング材、タルクやガラスファイバー、等のフィラーの分散材などとして好適に使用される。
極性基含有オレフィン共重合体中の極性基含有構造単位量は、1H−NMRスペクトルを用いて求めた。詳しくは前述している。
重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求めた。また、分子量分布パラメーター(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって、更に数平均分子量(Mn)を求め、MwとMnの比、Mw/Mnによって算出した。詳しくは前述している。
融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定した吸熱曲線のピーク温度によって示される。測定にはエスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社社製のDSC(DSC7020)を使用し、次の測定条件で実施した。
試料約5.0mgをアルミパンに詰め、10℃/分で200℃まで上昇し、200℃で5分間保持した後に10℃/分で30℃まで降温させた。30℃で5分間保持した後、再度、10℃/分で昇温させる際の吸収曲線のうち、最大ピーク温度を融点とした。
接着強度は、オレフィン系樹脂組成物のプレス板と各種基材フィルムをそれぞれ調製し、その2種を重ね合わせて熱プレスすることによって積層体を作製し、剥離試験を行うことによって測定した。各工程の調整方法/測定方法を順に説明する。
測定サンプルを、寸法:50mm×60mm、厚さ0.5mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度180℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで溶融樹脂中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaの圧力で加圧し、5分間保持した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、厚さが約0.5mmのオレフィン系樹脂組成物樹脂板を作製した。
多層Tダイ成形機を用い、中央層がポリアミド、両外層がLLDPEの2種3層多層フィルムを成形後、外層のLLDPEを剥離することで、厚さ100μmのポリアミド単層フィルムを調製した。フィルム成形条件は以下の通りである。
成形機:2種3層Tダイ 成形温度:250℃ 層構成:LLDPE/ポリアミド/LLDPE 膜厚:300μm(100μm/100μm/100μm) 外層:LLDPE(日本ポリエチレン(株)社製 銘柄:ノバテック UF943)MFR=2.0g/10分、密度=0.937/cm3 中間層:ポリアミド(東レ(株)製 銘柄:アミラン CM1021FS)
多層Tダイ成形機を用い、中央層がフッ素樹脂、両外層がLLDPEの2種3層多層フィルムを成形後、外層のLLDPEを剥離することで、厚さ100μmのフッ素樹脂単層フィルムを調製した。フィルム成形条件は以下の通りである。
成形機:2種3層Tダイ 成形温度:230℃ 層構成:LLDPE/フッ素樹脂/LLDPE 膜厚:300μm(100μm/100μm/100μm) 外層:LLDPE(日本ポリエチレン(株)社製 銘柄:ノバテック UF943)MFR=2.0g/10分、密度=0.937/cm3 中間層:フッ素樹脂(ダイキン工業(株)製 銘柄:ネオフロンEFEP RP−5000)
上記の樹脂板調製方法によって得られたオレフィン系樹脂組成物の樹脂板と、上記ポリアミドフィルムの調製方法によって得られたポリアミドフィルムを50mm×60mmの寸法に切断したものを重ね合わせ、寸法:50mm×60mm、厚さ0.5mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度250℃の熱プレス機を用いて4.9MPaの圧力で5分間加圧した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、オレフィン系樹脂組成物とポリアミドの積層体を調製した。
上記の樹脂板調製方法によって得られたオレフィン系樹脂組成物の樹脂板と、上記フッ素樹脂フィルムの調製方法によって得られたフッ素樹脂フィルムを50mm×60mmの寸法に切断したものを重ね合わせ、寸法:50mm×60mm、厚さ0.5mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度200℃の熱プレス機を用いて4.9MPaの圧力で3分間加圧した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、オレフィン系樹脂組成物とフッ素樹脂の積層体を調製した。
積層体の調製方法によって得られた積層体を10mm幅に切断し、テンシロン(東洋精機(株)製)引張試験機を用いて、50mm/分の速さでT剥離することで接着強度を測定した。接着強度の単位はgf/10mmで示した。また、接着強度が非常に強い場合、剥離試験に際してオレフィン系樹脂組成物層、もしくは基材層が降伏し、さらには破断する。これは、積層体の接着強度が、オレフィン系樹脂組成物層又は基材層の引張破断強度のうち低い方と比較して高い強度を示す為に発生する現象であり、その接着性は非常に高いものと判断できる。該現象により接着強度が測定できない場合、各実施例の接着強度測定結果には「剥離不可」と記載し、接着強度の数値が測定されたものよりも、より高度に接着されたと判断する。
試料を厚さ1.0mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度180℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで溶融樹脂中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaの圧力で加圧し、5分間保持した。その後、表面温度25℃のプレス機に移し替え、4.9MPaの圧力で3分間保持することで冷却し、厚さが約1.0mmのプレス板を作成した。プレス板を直径25mm円形に加工したものをサンプルとし、動的粘弾性特性の測定装置(Rheometrics社製ARES型回転式レオメータ)を用い、窒素雰囲気下、以下の条件で動的粘弾性を測定した。
・プレート:φ25mm パラレルプレート
・温度:160℃
・歪み量:10%
・測定角周波数範囲:1.0×10−2〜1.0×102 rad/s
・測定間隔:5点/decade
複素弾性率の絶対値G*(Pa)の常用対数logG*に対して位相角δをプロットし、logG*=5.0に相当する点のδ(度)の値をδ(G*=0.1MPa)とした。測定点の中にlogG*=5.0に相当する点がないときは、logG*=5.0前後の2点を用いて、logG*=5.0におけるδ値を線形補間で求めた。また、測定点がいずれもlogG*<5であるときは、logG*値が大きい方から3点の値を用いて2次曲線でlogG*=5.0におけるδ値を補外して求めた。
極性基含有オレフィン共重合体に含まれるアルミニウム(Al)量は、重合に供したアルキルアルミニウム中に含有されるアルミニウム(Al)量を、得られた極性基含有オレフィン共重合体の収量で除した値として算出する方法と蛍光X線分析により測定する方法により求めることができる。
具体的には以下の計算式により算出した。
アルミニウム(Al)含有量の単位:μgAl/g
(μgAl/gとは極性基含有オレフィン共重合体の1g中に含まれるアルミニウム(Al)量をμg単位で表していることを意味する。)
μgAl=n×Mw(Al)×103(μg)
n:重合に供したアルキルアルミニウム添加量(mmol)
Mw(Al):アルミニウム(Al)元素の分子量(26.9g/mol)
極性基含有オレフィン共重合体中に含まれるアルミニウム(Al)量は蛍光X線分析を用いて求めた。詳しくは前述している。
Drent系配位子(2−イソプロピル−フェニル)(2’−メトキシ−フェニル)(2’’−スルホニル−フェニル)ホスフィン(I)の合成
無水ベンゼンスルホン酸(2g,12.6mmol)のテトラヒドロフラン(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,10mL,25.3mmol)を0℃でゆっくりと滴下し、室温まで温度を上昇させながら1時間撹拌した。反応液を−78℃まで冷却し、三塩化リン(1.0mL,12.6mmol)を加え、2時間撹拌した(反応液A)。
マグネシウムをテトラヒドロフラン(20mL)に分散させ、1−ブロモ−2−メトキシベンゼン(2.3g,12.6mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Aに−78℃で滴下し、1時間撹拌した(反応液B)。
1−ブロモ−2−イソプロピルベンゼン(2.5g,12.6mmol)のジエチルエーテル(20mL)溶液に、ノルマルブチルリチウムヘキサン溶液(2.5M,5.0mL,12.6mmol)を−30℃でゆっくりと滴下し、室温で2時間撹拌した。この溶液を、先ほどの反応液Bに−78℃で滴下し、室温で一晩撹拌した。LC−MS純度60%。
水(50mL)を加え、塩酸を加えて酸性にした(PH<3)後、塩化メチレン抽出し(100mL)、硫酸ナトリウムにより乾燥し、溶媒を留去した。メタノールで再結晶化することにより、白色の目的物(I)を1.1g得た。収率22%。
1H NMR (CDCl3, ppm): 8.34 (t, J = 6.0 Hz, 1 H), 7.7-7.6 (m, 3 H), 7.50 (t, J = 6.4 Hz, 1 H), 7.39 (m, 1 H), 7.23 (m, 1 H), 7.1-6.9 (m, 5 H), 3.75 (s, 3 H), 3.05(m, 1 H), 1.15 (d, J = 6.8 Hz, 3 H), 1.04 (d, J = 6.4 Hz, 3 H).
31P NMR (CDCl3,ppm): -10.5.
充分に窒素置換した30mLフラスコに、100μmolのパラジウムビスジベンジリデンアセトンとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて10分間処理することで、触媒スラリーを調製した。
内容積2.4リットルの攪拌翼付きオートクレーブを精製窒素で置換したのち、乾燥トルエン(1.0リットル)と、4−ビニル―1,2−エポキシシクロへキセンを20.9ml(0.2mol)仕込んだ。攪拌しながらオートクレーブを100℃に昇温し、窒素を0.3MPaまで供給した後、エチレン分圧が2.0MPaになるよう圧力が2.3MPaまでエチレンを供給した。圧力調整終了後、遷移金属錯体(I−Pd錯体)50μmolを窒素で圧入して共重合を開始させた。反応中は温度を100℃に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給し、240分間重合させた後、冷却、脱圧して反応を停止した。反応溶液は、1リットルのアセトンに投入してポリマーを析出させた後、ろ過洗浄を行い回収し、さらに減圧下60℃で恒量になるまで乾燥を行なった。
重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。なお、表2中の「ND」は未測定を意味する。表1において重合活性は、重合に用いた錯体1molあたりの共重合体収量(g)を表す。なお、重合活性は、配位子とパラジウムビスジベンジリデンアセトンが1対1で反応してパラジウム錯体を形成しているとして計算した。
SHOP系配位子の合成
WO2010−050256記載(合成例4)の方法に従い、下記の配位子B−27DMを得た。
充分に窒素置換した50mlのナス型フラスコに、下記B−27DMを112mg(200μmol)秤り取った。次に、ビス−1、5−シクロオクタジエンニッケル(0)(以下Ni(COD)2と称する)を50mlナス型フラスコに56mg(200μmol)秤り取り、20mlの乾燥トルエンに溶解させ10mmol/lのNi(COD)2トルエン溶液を調製した。ここで得られたNi(COD)2トルエン溶液全量(20ml)を、B−27DMの入ったナス型フラスコに加え、40℃の湯浴で30分攪拌することで、B−27DMとNi(COD)2の反応生成物の10mmol/l溶液を20ml得た。
内容積2.4リットルの攪拌翼付きオートクレーブに、乾燥トルエンを1000mlと、トリn−オクチルアルミニウム(TNOA)を54.9mg(0.15mmol)及び4−HBAGEを2.7ml(15mmol)仕込んだ。攪拌しながらオートクレーブを105℃に昇温し、窒素を0.3MPaまで供給した後、エチレン分圧が2.5MPaになるよう圧力が2.8MPaまでエチレンを供給した。温度と圧力が安定した後、先に調製したB−27DM‐Ni錯体溶液を3.0ml(30μmol)を窒素で圧入して共重合を開始させた。反応中は温度を105℃に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給した。60分間重合させた後、冷却、脱圧して反応を停止した。反応溶液は、1リットルのアセトンに投入してポリマーを析出させた後、ろ過洗浄を行い回収し、さらに減圧下、60℃で恒量になるまで乾燥を行なうことで、極性基含有オレフィン共重合体中に残存していた極性基含有モノマーを取り除き、最終的に極性基含有オレフィン共重合体を38g回収した。重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。表1において重合活性は、重合に用いた錯体1molあたりの共重合体収量(g)を表す。なお、重合活性は、B−27DMとNi(COD)2が1対1で反応してニッケル錯体を形成しているとして計算した。
また、共重合に用いた4−HBAGEは、モレキュラーシーブ3Aにより脱水したものを使用した。
製造例2に記載の方法のうち、配位子量、極性基含有モノマー濃度、重合温度、重合時間、をそれぞれ変更して重合することにより、製造例4〜製造例7の極性基含有オレフィン共重合体を調製した。重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。
製造例2に記載の方法を基本とし、重合開始後にエチレンの補給を行わないで重合を行った。その際、配位子量、極性基含有モノマー濃度、重合温度、重合時間、をそれぞれ変更して重合することにより、製造例3、製造例8の極性基含有オレフィン共重合体を調製した。重合の条件及び重合結果を表1に、物性測定の結果を表2に記載した。この重合方法においてはエチレンの補給を行わない為、重合終了時のエチレン分圧が、重合開始時と比較して低下する。表1中のエチレン分圧が、「2.5→1.5」のような表記になっているのは、重合開始時のエチレン分圧が2.5MPa、重合終了時のエチレン分圧が1.5MPaであったことを表している。
エチレンとグルシジルメタクリレートの共重合体であって、高圧法プロセスによって製造された極性基含有オレフィン共重合体(住友化学(株)製 銘柄:ボンドファーストE)である。物性測定の結果を表2に記載した。
エチレンとグルシジルメタクリレートの共重合体であって、高圧法プロセスによって製造された極性基含有オレフィン共重合体(住友化学(株)製 銘柄:ボンドファースト2C)である。物性測定の結果を表2に記載した。
極性基含有オレフィン共重合体(A−1)7.0gとオレフィン系樹脂として高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、商品名:HS330P)3.0gとをドライブレンドし、小型二軸混練機(DSM Xplore社製 型式:MC15)に投入し、5分間溶融混練した。その際のバレル温度は180℃、スクリュー回転数は100rpmとした。5分経過後、樹脂吐出口から棒状のオレフィン系樹脂組成物を押出し、ステンレス製トレーの上に載せ、室温で冷却して固化させた。冷却したオレフィン系樹脂組成物をペレット状に裁断して、オレフィン系樹脂組成物のペレットを製造し、各種物性試験に供した。使用したポリエチレンのメーカー、グレード、商品名、樹脂分類、重合に供されたモノマー種、および樹脂物性を表3に、オレフィン系樹脂組成物中の配合比率を表4に、物性評価結果を表5に示す。
なお、表3中の「HDPE」は高密度ポリエチレンを、「LLDPE」は線状低密度ポリエチレンを、「PP」はポリプロピレンを、「COC」は環状オレフィンコポリマーをそれぞれ表している。
実施例1に記載の方法のうち、極性基含有オレフィン共重合体の種類、オレフィン系樹脂の種類、配合比率をそれぞれ変更して製造することにより実施例2〜実施例12、比較例1〜比較例4の樹脂組成物を製造した。各オレフィン系樹脂のメーカー、グレード、商品名、樹脂分類、重合に供されたモノマー種、樹脂物性を表3に、原料樹脂の配合比率を表4に、物性評価結果を表5に示す。なお、表5中「ND」とあるのは、未測定であることを意味する。
実施例1〜12は極性基含有オレフィン共重合体(A−1、A−2、A−3、A−4、A−5、A−6、A−7、A−8)各々100重量部に対し、密度が0.890g/cm3以上のオレフィン系樹脂を1〜99,900重量部の配合比率で適宜ブレンドしたオレフィン系樹脂組成物であり、ポリアミドに対して十分な接着性を示し、融点も119℃以上と十分に優れた耐熱性を示している。更に、融点が90℃以上のオレフィン系樹脂をブレンドした実施例1〜実施例3、実施例5〜実施例12は、融点が119℃以上で、かつ融解熱量△Hが80J/g以上とより優れた耐熱性を示した。
オレフィン系樹脂として密度が0.890g/cm3を下回るものを用いた比較例1、比較例2は融点が119℃を下回っており、耐熱性が劣るものとなっている。さらには、融解熱量△Hも80J/gを下回っており、より耐熱性に劣るものとなっている。
比較例3、比較例4は、同様に高圧ラジカル法プロセスによって製造された極性基含有オレフィン共重合体(A−9、A−10)100重量部に対し、密度が0.890g/cm3以上のオレフィン系樹脂を1〜99,900重量部の配合比率で適宜ブレンドしたオレフィン系樹脂組成物であるが、耐熱性こそ十分なものの、ポリアミドとの接着性は非常に低かった。この事実より、本発明の極性基含有オレフィン共重合体は、高圧ラジカル重合法プロセスによって製造された極性基含有オレフィン共重合体と比較し、密度が0.890g/cm3以上のオレフィン系樹脂を配合せしめた場合の接着性能の低下が小さく、本発明に関わる極性基含有オレフィン共重合体100重量部に対し、密度が0.890g/cm3以上のオレフィン系樹脂を1〜99,900重量部ブレンドしさえすれば、接着性と耐熱性をバランスできる事を示した。
Claims (12)
- エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンと、エポキシ基を含む極性基含有モノマーとを、遷移金属触媒の存在下に共重合することで得られる、エチレン又は炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位量が99.999〜90mol%、エポキシ基を含む極性基含有モノマーに由来する構造単位量が10〜0.001mol%であり、分子構造が直鎖状でかつランダム共重合である極性基含有オレフィン共重合体(A)と、JIS K7112に準拠して測定される密度が0.896〜1.20g/cm3であるオレフィン系樹脂(B)とを含むオレフィン系樹脂組成物(C)であって、オレフィン系樹脂(B)の配合量が極性基含有オレフィン共重合体(A)100重量部に対し、1〜99,900重量部であることを特徴とするオレフィン系樹脂組成物。
- 該エポキシ基を含む極性基含有モノマーが、下記構造式(I)または下記構造式(II)で表されるエポキシ基を含む極性基含有モノマーであることを特徴とする請求項1記載のオレフィン系樹脂組成物。
構造式(I)
特定の官能基:エポキシ基を必須で含み、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基)
構造式(II)
特定の官能基:エポキシ基を必須で含み、炭素原子、酸素原子、水素原子からなる分子構造を有した基) - 該オレフィン系樹脂(B)が、エチレン及び/又は炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれるモノマーを重合する事で得られる単独重合体及び/又は共重合体であることを特徴とする、請求項1又2に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
- 該極性基含有オレフィン共重合体(A)の、示差走査型熱量測定(DSC)により測定される吸収曲線のうち、最大ピーク位置の温度で表される融点が、50〜140℃の範囲であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
- 該オレフィン系樹脂(B)の、示差走査型熱量測定(DSC)により測定される吸収曲線の最大ピーク位置の温度で表される融点が、90〜170℃の範囲であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
- 該オレフィン系樹脂組成物(C)の、示差走査型熱量測定(DSC)により測定される吸収曲線の最大ピーク位置の温度で表される融点が、119〜170℃の範囲であることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
- 該オレフィン系樹脂脂組成物(C)の示差走査型熱量測定(DSC)により測定される融解熱量ΔHが、80〜300J/gの範囲であることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
- 該極性基含有オレフィン共重合体(A)が、キレート性配位子を有する第5〜11族金属の遷移金属触媒の存在下に重合された共重合体であることを特徴とする、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
- 該極性基含有オレフィン共重合体(A)が、パラジウム又はニッケル金属にトリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が配位した遷移金属触媒の存在下に重合された共重合体であることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物。
- 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載されたオレフィン系樹脂組成物と、基材層とを少なくとも含むことを特徴とする積層体。
- 該基材層が、オレフィン系樹脂、極性の高い熱可塑性樹脂、金属、無機酸化物の蒸着フィルム、紙類、セロファン、織布、不織布から選ばれることを特徴とする、請求項10に記載された積層体。
- 該基材層が、ポリアミド系樹脂又はフッ素系樹脂であることを特徴とする、請求項11に記載された積層体。
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