JP7362243B2 - レオロジー改質剤 - Google Patents

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Description

本発明は、レオロジー改質剤に関する。
水溶液又はスラリーの状態で利用される多くの工業製品には、その物性を改善する目的で様々な種類の添加剤が用いられている。例えば、水溶液やスラリーのレオロジーを改質するために、粘度を目的や用途に応じて適正に調整されることが望まれる場合がある。従来、水溶液やスラリーの粘度を調整するために、増粘剤や減粘剤の添加、加熱や冷却操作、電解質濃度の調整などの方策が採られている。また、界面活性剤が、水溶液やスラリーの粘性、弾性、増粘性などに影響を及ぼすことが知られている(特許文献1、2)。
セメントのような水硬性粉体を含有する水硬性スラリーでは、粘性、材料分離抵抗性などの物性を改善するためにレオロジー改質剤が用いられることがある。特許文献3には、4級カチオン基と芳香族アニオン基とを含む特定の4級塩型化合物と、アニオン性芳香族化合物とを、特定のカチオン基/(アニオン基+アニオン性芳香族化合物)モル比で含有するレオロジー改質剤が開示されている。
特表2014-502602号公報 特開平8-133805号公報 特開2010-065189号公報
本発明は、幅広い温度領域でレオロジー改質効果が発現するレオロジー改質剤を提供する。
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物を2種以上含有するレオロジー改質剤であって、
前記2種以上の化合物は、一般式(1)中のXが異なっており、
前記2種以上の化合物のうち、少なくとも1つは一般式(1)中のXのR1a又はR1bがアルケニル基の化合物である、
レオロジー改質剤に関する。
Figure 0007362243000001
〔式中、Xは、R1a又はR1b-[CONH-CHCHCH-で表される基である。R1aは、炭素数14以上22以下のアルキル基又は炭素数14以上22以下のアルケニル基である。R1bは、炭素数13以上21以下のアルキル基又は炭素数13以上21以下のアルケニル基である。nは1以上3以下の整数である。R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基又は-(CO)Hで表される基である。pは、平均付加モル数であり、R及びRの合計で0以上5以下の数である。〕
また、本発明は、前記本発明のレオロジー改質剤、水及び粉体を含有する、スラリー組成物に関する。
また、本発明は、前記本発明のレオロジー改質剤、水及び粉体を混合する、スラリー組成物の製造方法に関する。
本発明によれば、幅広い温度領域でレオロジー改質効果が発現するレオロジー改質剤が提供される。本発明のレオロジー改質剤は、例えば、水溶液やスラリーの粘性や弾性といったレオロジーを幅広い温度領域で改質することができる。
<レオロジー改質剤>
本発明のレオロジー改質剤は、前記一般式(1)で表される化合物〔以下、化合物(1)ともいう〕を2種以上含有する。そして、前記2種以上の化合物は、互いに一般式(1)中のXが異なっており、前記2種以上の化合物のうち、少なくとも1つは一般式(1)中のXのR1a又はR1bがアルケニル基の化合物である。
化合物(1)について、一般式(1)中のXが異なるとは、化合物(1)が2種である場合を例に考えると、例えば、以下のような態様が挙げられる。なお、以下の態様において、2種の化合物(1)のうち、少なくとも一方の化合物(1)のR1a又はR1bはアルケニル基である。
(i)一方のR1a又はR1bがアルキル基であり、他方のR1a又はR1bがアルケニル基である。
(ii)一方のR1a又はR1bの炭素数と、他方のR1a又はR1bの炭素数が異なっている。
(iii)一方のXがR1aであり、他方のXがR1b-[CONH-CHCHCH-である。
(iv)Xが共にR1b-[CONH-CHCHCH-であり、一方のnと他方のnが異なっている。
(v)前記(i)~(iv)の組み合わせ。
一般式(1)中、Xは、R1a又はR1b-[CONH-CHCHCH-で表される基である。
1aは、炭素数14以上22以下のアルキル基又は炭素数14以上22以下のアルケニル基である。
1aがアルケニル基の場合、炭素数は、好ましくは18以上、そして、好ましくは22以下である。
1aがアルキル基の場合、炭素数は、好ましくは16以上、そして、好ましくは22以下である。
1bは、炭素数13以上21以下のアルキル基又は炭素数13以上21以下のアルケニル基である。
1bがアルケニル基の場合、炭素数は、好ましくは17以上、そして、好ましくは21以下である。
1bがアルキル基の場合、炭素数は、好ましくは15以上、そして、好ましくは21以下である。
nは、好ましくは0又は1である。
及びRは、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1以上2以下のアルキル基または-(CO)Hで表される基である。
pは、好ましくは0以上3以下の数である。
本発明のレオロジー改質剤は、一般式(1)中のXが異なる化合物(1)を2種以上、好ましくは5種以下、より好ましくは2種含有する。そして、レオロジー改質剤が含有する2種以上の化合物(1)は、少なくとも1つが一般式(1)中のXのR1a又はR1bが炭素数14以上22以下のアルケニル基の化合物、つまり、一般式(1)中のXにおけるR1aとして炭素数14以上22以下のアルケニル基又はR1bとして炭素数13以上21以下のアルケニル基を含む化合物である。
本発明では、化合物(1)が2種であり、上記(i)~(v)を含め、2種の化合物(1)のうち、一方が、一般式(1)中のXがR1aで且つ炭素数14以上22以下のアルケニル基の化合物であることが好ましい。すなわち、本発明のレオロジー改質剤として、前記一般式(1)で表される化合物を2種含有するレオロジー改質剤であって、前記2種の化合物は、一般式(1)中のXが異なっており、前記2種の化合物のうち、一方は、一般式(1)中のXがR1aであり且つR1aがアルケニル基の化合物である、レオロジー改質剤が挙げられる。
本発明のレオロジー改質剤としては、一般式(1)中のXがR1a又はR1b-[CONH-CHCHCH-で表される基(ただし、R1aは炭素数14以上22以下のアルケニル基であり、R1bは炭素数13以上21以下のアルケニル基である)である化合物(1a)と、化合物(1a)とは一般式(1)中のXが異なる化合物(1b)とを含有するレオロジー改質剤が挙げられる。
具体的には、下記一般式(1a)で表される化合物(1a)と、下記一般式(1b)で表される化合物(1b)とを含有するレオロジー改質剤が挙げられる。
Figure 0007362243000002
〔式中、
n1、n2は、それぞれ、独立に0以上3以下の整数である。
11aは、n1が0のときは炭素数14以上22以下のアルケニル基であり、n1が1~3のときは炭素数13以上21以下のアルケニル基である。
11bは、n2が0のときは炭素数14以上22以下のアルキル基又は炭素数14以上22以下のアルケニル基であり、n2が1~3のときは炭素数13以上21以下のアルキル基又は炭素数13以上21以下のアルケニル基である。
ただし、n1とn2が同じ数である場合、R11bのアルケニル基はR11aとは異なるアルケニル基である。
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基又は-(CO)Hで表される基である。pは、平均付加モル数であり、R及びRの合計で0以上5以下の数である。〕
一般式(1a)中、R11aの炭素数は、好ましくは17以上、そして、好ましくは22以下である。
一般式(1a)中、n1は、好ましくは0又は1、より好ましくは0である。
一般式(1b)中、n2が0でR11bがアルキル基の場合、R11bの炭素数は、好ましくは16以上、そして、好ましくは22以下である。
一般式(1b)中、n2が0でR11bがアルケニル基の場合、R11bの炭素数は、好ましくは18以上、そして、好ましくは22以下である。
一般式(1b)中、n2が1~3でR11bがアルキル基の場合、R11bの炭素数は、好ましくは15以上、そして、好ましくは21以下である。
一般式(1b)中、n2が1~3でR11bがアルケニル基の場合、R11bの炭素数は、好ましくは17以上、そして、好ましくは21以下である。
一般式(1b)中、R11bは、アルキル基が好ましい。
一般式(1b)中、n2は、好ましくは0又は1である。
一般式(1a)又は(1b)中、R及びRは、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1もしくは2のアルキル基又は-(CO)Hで表される基であり、より好ましくは炭素数1又は2のアルキル基である。
一般式(1a)又は(1b)中、pは、好ましくは0以上3以下の数である。
n1とn2が同じ数である場合、R11bのアルケニル基はR11aとは異なるアルケニル基である。
本発明の好ましいレオロジー改質剤として、下記一般式(11a)で表される化合物(11a)と、下記一般式(1b)で表される化合物(1b)とを含有するレオロジー改質剤が挙げられる。
Figure 0007362243000003
〔式中、
n2は、0以上3以下の整数である。
11aは、炭素数14以上22以下のアルケニル基である。
11bは、n2が0のときは炭素数14以上22以下のアルキル基又は炭素数14以上22以下のアルケニル基であり、n2が1~3のときは炭素数13以上21以下のアルキル基又は炭素数13以上21以下のアルケニル基である。
ただし、n1とn2が同じ数である場合、R11bのアルケニル基はR11aとは異なるアルケニル基である。
及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基又は-(CO)Hで表される基である。pは、平均付加モル数であり、R及びRの合計で0以上5以下の数である。〕
一般式(11a)で表される化合物(11a)は、前記一般式(1a)中、n1が0の化合物に相当する。一般式(11a)中のR11a、R及びRの好ましい態様は、一般式(1a)と同じである。この組み合わせにおいても、化合物(1b)の好ましい態様は前記と同じである。
本発明のレオロジー改質剤では、化合物(1b)/化合物(1a)の質量比は、より広い温度領域でレオロジー改質効果、例えば高い粘弾性が得られる観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは25/75以上、更に好ましくは40/60以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは75/25以下、更に好ましくは60/40以下である。
本発明のレオロジー改質剤では、化合物(1b)/化合物(11a)の質量比は、より広い温度領域でレオロジー改質効果、例えば高い粘弾性が得られる観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは25/75以上、更に好ましくは40/60以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは75/25以下、更に好ましくは60/40以下である。
本発明のレオロジー改質剤は、水を含むことができる。
本発明のレオロジー改質剤は、化合物(1)以外の成分を含有する場合、レオロジー改質剤組成物であってよい。
本発明のレオロジー改質剤は、化合物(1)を合計で、例えば、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは100質量%以下含有する。本発明のレオロジー改質剤は、化合物(1)を100質量%含有するもの、すなわち化合物(1)からなるものであってもよい。
本発明のレオロジー改質剤は、化合物(1)と同様の構造を有する化合物であって、炭素数の小さいアルキル基又はアルケニル基を有する化合物の含有量が少ない方が好ましい。具体的には、炭素数14未満のアルキル基、炭素数14未満のアルケニル基又は炭素数14未満のアシル基を有するアミンオキシド(以下、短鎖アミンオキシドともいう)の含有量が少ない方が好ましい。本発明のレオロジー改質剤は、短鎖アミンオキシドの合計含有量/化合物(1)の合計含有量の質量比が、好ましくは50/50以下、より好ましくは25/75以下、更に好ましくは10/90以下、より更に好ましくは0/100、つまり短鎖アミンオキシドを含有しないことである。短鎖アミンオキシドは、便宜的に一般式(1)で考えると、一般式(1)中のXのR1aが炭素数14未満のアルキル基又は炭素数14未満のアルケニル基である化合物及びR1bが炭素数13未満のアルキル基又は炭素数13未満のアルケニル基である化合物に相当する。
本発明のレオロジー改質剤は、重量平均分子量500以上、好ましくは200000以下のポリエチレングリコール、重量平均分子量500以上、好ましくは5000以下のポリプロピレングリコール、重量平均分子量500以上、好ましくは30000以下のエチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、及び炭化水素基、好ましくは炭素数が好ましくは10以上22以下である炭化水素基と平均付加モル数が好ましくは9以上5000以下であるポリオキシアルキレン基とを有するエーテル化合物から選ばれる1種以上の化合物(以下、ポリエーテル化合物ともいう)を含有することができる。ポリエーテル化合物は、本発明のレオロジー改質剤を適用する対象物、例えば水硬性スラリー組成物が、ベントナイトや粘度鉱物を含有する骨材を含む場合でも、良好なレオロジー改質効果を発現させる観点で好ましい成分である。
ポリエーテル化合物の重量平均分子量は、ポリスチレンを標準としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値であり、ポリエーテル化合物がポリエチレングリコールの場合、溶媒として水/エタノールを用いることができる。
ポリエーテル化合物は、重量平均分子量500以上200000以下のポリエチレングリコールから選ばれる1種以上のポリマーが、幅広い分子量において実用上十分な粘弾性が得られるため、より好ましい。
本発明のレオロジー改質剤は、水とポリエーテル化合物を含有する場合、ポリエーテル化合物の含有量が、水100質量部に対して、実用上十分な粘弾性を得る観点から、好ましくは5質量部以上、より好ましくは7.5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、そして、好ましくは70質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。
本発明のレオロジー改質剤は、分散剤を含有することができる。分散剤は、本発明のレオロジー改質剤を適用する対象物が、水硬性スラリー組成物の場合、良好なレオロジー改質効果と流動性を発現させる観点で好ましい成分である。
分散剤としては、ナフタレン系重合体、ポリカルボン酸系重合体、メラミン系重合体、フェノール系重合体、リグニン系重合体が挙げられる。
より詳細には、分散剤は、(E1)ナフタレン系分散剤、(E2)ポリカルボン酸系分散剤、(E3)下記重縮合生成物からなる分散剤(以下、PAE系分散剤ともいう)、(E4)リグニン系分散剤、及び(E5)メラミン系分散剤から選ばれる1種以上の分散剤が挙げられる。
<重縮合生成物>
下記成分E31、成分E33、及び任意に成分E32からなる重縮合生成物
〔成分E31〕
5から10の炭素原子又はヘテロ原子を有する芳香族化合物又は複素芳香族化合物であって、該芳香族化合物又は複素芳香族化合物にO原子又はN原子を介して結合される、1分子当たり平均して1から300の、オキシエチレン及び/又はオキシプロピレン基を含む、芳香族化合物又は複素芳香族化合物
〔成分E32〕
(E32-1)フェノール、(E32-2)フェノールエーテル、(E32-3)ナフトール、(E32-4)ナフトールエーテル、(E32-5)アニリン、(E32-6)フルフリルアルコール、並びに(E32-7)メラミン又はその誘導体、尿素又はその誘導体、及びカルボキサミドからなる群より選択されるアミノプラスト形成剤、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸、イソフタル酸、オキシナフトエ酸、からなる群より選択される、任意成分としての少なくとも1つの芳香族化合物
〔成分E33〕
ホルムアルデヒド、グリオキシル酸、及びベンズアルデヒド、又はその混合物からなる群より選択されるアルデヒド(ここでベンズアルデヒドはさらに、COOM、SO、及びPOの式で表される酸性基(MはH、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、アンモニウム、又は有機アミン基であり、aは1/2、1、又は2であってもよい)を有してもよい。)
分散剤は、水硬性スラリー組成物の流動性の観点から、(E1)ナフタレン系分散剤、(E2)ポリカルボン酸系分散剤、及び(E4)リグニン系分散剤から選ばれる1種以上が好ましく、(E1)ナフタレン系分散剤、及び(E2)ポリカルボン酸系分散剤から選ばれる1種以上がより好ましく、(E2)ポリカルボン酸系分散剤が更に好ましい。以下、分散剤について説明する。
(E1)ナフタレン系分散剤
ナフタレン系分散剤としては、好ましくはナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩が挙げられる。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩である。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は、性能を損なわない限り、単量体として、例えばメチルナフタレン、エチルナフタレン、ブチルナフタレン、ヒドロキシナフタレン、ナフタレンカルボン酸、アントラセン、フェノール、クレゾール、クレオソート油、タール、メラミン、尿素、スルファニル酸及び/又はこれらの誘導体などのような、ナフタレンスルホン酸と共縮合可能な芳香族化合物と共縮合させても良い。
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、例えば、マイテイ150、デモール N、デモール RN、デモール MS、デモールSN-B、デモール SS-L(いずれも花王株式会社製)、セルフロー 120、ラベリン FD-40、ラベリン FM-45(いずれも第一工業株式会社製)などのような市販品を用いることができる。
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、水硬性スラリー組成物の流動性向上の観点から、重量平均分子量が、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは80,000以下、より更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは30,000以下である。そして、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、水硬性スラリー組成物の流動性向上の観点から、重量平均分子量が、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上、より更に好ましくは5,000以上である。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は酸の状態あるいは中和物であってもよい。
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩の分子量は下記条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
[GPC条件]
カラム:G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー)
溶離液:30mM CHCOONa/CHCN=6/4
流量:0.7ml/min
検出:UV280nm
サンプルサイズ:0.2mg/ml
標準物質:西尾工業(株)製 ポリスチレンスルホン酸ソーダ換算(単分散ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:分子量、206、1,800、4,000、8,000、18,000、35,000、88,000、780,000)
検出器:東ソー株式会社 UV-8020
(E2)ポリカルボン酸系分散剤
ポリカルボン酸系分散剤としては、ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのモノエステルと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体(例えば特開平8-12397号公報に記載の化合物等)、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールと(メタ)アクリル酸等のカルボン酸との共重合体、ポリアルキレングリコールを有する不飽和アルコールとマレイン酸等のジカルボン酸との共重合体等を用いることができる。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれるカルボン酸の意味である。
ポリカルボン酸系分散剤としては、下記一般式(e21)で示される単量体(e21)を構成単量体として含む共重合体が初期流動性の観点から、好ましい。
ポリカルボン酸系分散剤としては、下記一般式(e21)で示される単量体(e21)と下記一般式(e22)で示される単量体(e22)とを構成単量体として含む共重合体がより好ましい。
Figure 0007362243000004
〔式中、
1e、R2e:同一でも異なっていても良く、水素原子又はメチル基
3e:水素原子又は-COO(AO)n11e
1e:水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基
AO:エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基から選ばれる基
n1:AOの平均付加モル数であり、1以上300以下の数
q:0以上2以下の数
p:0又は1の数
を示す。〕
Figure 0007362243000005
〔式中、
4e、R5e、R6e:同一でも異なっていても良く、水素原子、メチル基又は(CHCOOM2eであり、(CHCOOM2eは、COOM1e又は他の(CHCOOM2eと無水物を形成していてもよく、その場合、それらの基のM1e、M2eは存在しない。
1e、M2e:同一でも異なっていても良く、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、アルキルアンモニウム基、置換アルキルアンモニウム基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基又はアルケニル基
r:0以上2以下の数
を示す。〕
ポリカルボン酸系分散剤は、AOの平均付加モル数や単量体(e21)単量体(e22)の割合などが異なる分散剤を2種以上用いることもできる。
好ましいPAE系分散剤として、下記成分E31、成分E32、及び成分E33からなり、前記成分E33:(成分E31+成分E32)のモル比が1:0.01から1:10であり、前記成分E31:成分E32のモル比が10:1から1:10である重縮合生成物からなる分散剤が挙げられる。
〔成分E31〕
フェノール、クレゾール、レソルシノール、ノニルフェノール、メトキシフェノール、ナフトール、メチルナフトール、ブチルナフトール、及びビスフェノールAからなる群より選択される芳香族化合物に対して、O原子又はN原子を介して、1分子当たり平均して1から300の、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基が結合した化合物
〔成分E32〕
フェノキシ酢酸、フェノキシエタノール、フェノキシエタノールホスフェート、フェノキシジグリコール、及びフェノキシ(ポリ)エチレングリコールホスフェート、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸、イソフタル酸、オキシナフトエ酸からなる群より選択される、少なくとも1つの芳香族化合物
〔成分E33〕
ホルムアルデヒド、グリオキシル酸、及びベンズアルデヒド、又はその混合物からなる群より選択されるアルデヒド(ここでベンズアルデヒドはさらに、COOMa、SOMa、又はPOMaの式で表される酸性基(MはH、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属、アンモニウム、又は有機アミン基であり、aは1/2、1、又は2であってもよい)を有してもよい)
本発明のレオロジー改質剤は、水と分散剤を含有する場合、分散剤の含有量が、水100質量部に対して、実用上十分な水硬性スラリー組成物の流動性及び良好な水硬性スラリー組成物用混和剤の長期保存安定性を得る観点から、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、そして、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。
本発明のレオロジー改質剤は、化合物(1)の含有量の合計と、分散剤の含有量との質量比である化合物(1)/分散剤が、良好な水硬性スラリーの粘弾性及び水硬性スラリー組成物用混和剤の長期保存安定性の観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上、更に好ましくは10/90以上、そして、好ましくは97/3以下、より好ましくは95/5以下、90/10以下である。
本発明のレオロジー改質剤は、幅広い温度領域でより良好なレオロジー改質効果が発現する観点から、アニオン性芳香族化合物を含有することができる。アニオン性芳香族化合物としては、芳香環を有するスルホン酸、芳香環を有するカルボン酸、芳香環を有するホスホン酸、またはこれらの塩から選ばれる1種以上の化合物が挙げられる。アニオン性芳香族化合物は、酸型化合物として、総炭素数が6以上12以下であるものが好ましい。アニオン性芳香族化合物としては、具体的には、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、スルホサリチル酸、安息香酸、m-スルホ安息香酸、p-スルホ安息香酸、4-スルホフタル酸、5-スルホイソフタル酸、p-フェノールスルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸、クメンスルホン酸、メチルサリチル酸、スチレンスルホン酸、クロロ安息香酸等が挙げられる。これらは塩を形成していていも良い。アニオン性芳香族化合物は、2種以上を使用してもよい。アニオン性芳香族化合物は、芳香環を有するスルホン酸、芳香環を有するカルボン酸、またはこれらの塩から選ばれる1種以上の化合物が好ましい。
本発明のレオロジー改質剤は、化合物(1)の含有量の合計と、アニオン性芳香族化合物の含有量との質量比である化合物(1)/アニオン性芳香族化合物が、良好な水硬性スラリーの粘弾性の観点から、好ましくは50/50以上、より好ましくは70/30以上、更に好ましくは80/20以上、そして、好ましくは99.9/0.1以下、より好ましくは95/5以下である。
<スラリー組成物>
本発明のスラリー組成物は、本発明のレオロジー改質剤、水及び粉体を含有する。
本発明のスラリー組成物は、前記一般式(1)で表される化合物〔以下、化合物(1)ともいう〕を2種以上、水及び粉体を含有するスラリー組成物であって、前記2種以上の化合物は、一般式(1)中のXが異なっており、前記2種以上の化合物のうち、少なくとも1つは一般式(1)中のXのR1a又はR1bがアルケニル基の化合物である、スラリー組成物であってよい。
本発明のスラリー組成物には、本発明のレオロジー改質剤で述べた事項を適宜適用することができる。
粉体としては、無機粉体が挙げられる。無機粉体としては、特に限定されないが、以下のものが挙げられる。無機粉体のうち、水硬性粉体を用いるものが、水硬性スラリー組成物である。粉体は、水硬性粉体を含むものが好ましい。(1)セメント、石膏などの水硬性粉体
(2)フライアッシュ、シリカフューム、火山灰、けい酸白土などのポゾラン作用を持つ粉体
(3)石炭灰、高炉スラグ、けい藻土などの潜在水硬性粉体
(4)カオリン、ケイ酸アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、セリサイト、ベントナイトなどのケイ酸塩
(5)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸鉛などの炭酸塩
(6)硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩
(7)ストロンチウムクロメート、ピグメントイエローなどのクロム酸塩
(8)モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛、モリブデン酸マグネシウムなどのモリブデン酸塩
(9)アルミナ、酸化アンチモン、酸化チタニウム、酸化コバルト、四酸化三鉄、三酸化ニ鉄、四酸化三鉛、一酸化鉛、酸化クロムグリーン、三酸化タングステン、酸化イットリウムなどの金属酸化物
(10)水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、メタチタン酸などの金属水酸化物
(11)炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化ホウ素、炭化チタンなどの金属炭化物
(12)窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、チタン酸バリウム、サチンホワイト、カーボンブラック、グラファイト、クロムイエロー、硫化水銀、ウルトラマリン、パリスブルー、チタニウムイエロー、クロムバーミリオン、リトポン、アセト亜ヒ酸銅、ニッケル、銀、パラジウム、チタン酸ジルコン酸鉛などの、上記(1)~(11)に分類されない他の無機粉体
粉体は、水硬性粉体又は水硬性粉体とベントナイトとの混合物が挙げられる。また粉体は、セメント又はセメントとベントナイトとの混合粉体が挙げられる。
本発明のスラリー組成物は、化合物(1)の合計含有量が、水100質量部に対して、実用上十分な粘弾性を得る観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、より更に好ましくは3質量部以上、そして、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、より更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。ここでの水は、スラリー組成物の水相部分の水である。
また、本発明のスラリー組成物が、前記化合物(1a)と前記化合物(1b)とを含有する場合、前記化合物(1a)の含有量は、水100質量部に対して、幅広い温度で高い粘弾性を得る観点から、好ましくは0.25質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、そして、ハンドリング性の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。ここでの水は、スラリー組成物の水相部分の水である。
また、本発明のスラリー組成物が、前記化合物(1a)と前記化合物(1b)とを含有する場合、前記化合物(1b)の含有量は、水100質量部に対して、幅広い温度で高い粘弾性を得る観点から、好ましくは0.25質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、そして、ハンドリング性の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。ここでの水は、スラリー組成物の水相部分の水である。
本発明のスラリー組成物は、化合物(1a)と化合物(1b)の合計含有量が所定の範囲内であり、かつ化合物(1a)と化合物(1b)の各含有量が所定の範囲内であることが好ましい。
本発明のスラリー組成物は、前記したアニオン性芳香族化合物を含有することができる。この場合も、化合物(1)/アニオン性芳香族化合物の質量比は前記範囲が好ましい。また、アニオン性芳香族化合物の含有量は、スラリー組成物の水100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.25質量部以下である。ここでの水は、スラリー組成物の水相部分の水である。
本発明のスラリー組成物は、水/粉体比(W/P)が、スラリー組成物の流動性を確保する観点から、好ましくは12質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは100質量%以上、より更に好ましくは150質量%以上、そして、スラリー組成物の乾燥による収縮を抑える観点から、好ましくは1000質量%以下、より好ましくは500質量%以下、更に好ましくは300質量%以下である。
ここで、水/粉体比(W/P)は、スラリー組成物中の水と粉体の質量百分率(質量%)であり、水/粉体×100で算出される。
〔水硬性スラリー組成物〕
本発明のスラリー組成物として、水硬性スラリー組成物が挙げられる。以下、水硬性スラリー組成物について説明する。
本発明は、本発明のレオロジー改質剤、水、及び水硬性粉体を含有する、水硬性スラリー組成物を提供する。すなわち、本発明の水硬性スラリー組成物は、前記所定の関係を満たす2種以上の化合物(1)、水、及び水硬性粉体を含有する。
本発明の水硬性スラリー組成物には、本発明のレオロジー改質剤及びスラリー組成物で述べた事項を適宜適用することができる。
本発明の水硬性スラリー組成物に使用される水硬性粉体とは、水と混合することで硬化する粉体であり、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。これらの中でも、水硬性スラリー組成物の必要な強度に達するまでの時間を短縮する観点から、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、耐硫酸性ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントから選ばれるセメントが好ましく、早強ポルトランドセメント、及び普通ポルトランドセメントから選ばれるセメントがより好ましい。
また、水硬性粉体には、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム、無水石膏等が含まれてよく、また、非水硬性の石灰石微粉末等が含まれていてもよい。水硬性粉体として、セメントと高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等とが混合された高炉セメントやフライアッシュセメント、シリカヒュームセメントを用いてもよい。また、ベントナイトなどの粘土を含んでいてもよい。粘土を含む場合は、本発明の水硬性スラリー組成物は、前記所定のポリエーテル化合物を含有することが好ましい。
本発明の水硬性スラリー組成物は、骨材を含有することが好ましい。骨材は、細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。
水硬性スラリー組成物は、本発明の効果に影響ない範囲で、化合物(1)以外のその他の成分を含有することもできる。例えば、前記した分散剤、前記したポリエーテル化合物、前記したアニオン性芳香族化合物、AE剤、遅延剤、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、流動化剤、消泡剤等が挙げられる。
本発明の水硬性スラリー組成物は、化合物(1)の合計含有量が、水100質量部に対して、実用上十分な粘弾性を得る観点から、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上、より更に好ましくは3質量部以上、そして、水硬性スラリー組成物の水和反応を阻害させない観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、より更に好ましくは6質量部以下、より更に好ましくは5質量部以下である。ここでの水は、水硬性スラリー組成物の水相部分の水である。
また、本発明の水硬性スラリー組成物が、前記化合物(1a)と前記化合物(1b)とを含有する場合、前記化合物(1a)の含有量は、水100質量部に対して、幅広い温度で高い粘弾性を得る観点から、好ましくは0.25質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、そして、ハンドリング性の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。ここでの水は、水硬性スラリー組成物の水相部分の水である。
また、本発明の水硬性スラリー組成物が、前記化合物(1a)と前記化合物(1b)とを含有する場合、前記化合物(1b)の含有量は、水100質量部に対して、幅広い温度で高い粘弾性を得る観点から、好ましくは0.25質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、そして、ハンドリング性の観点から好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。ここでの水は、水硬性スラリー組成物の水相部分の水である。
本発明の水硬性スラリー組成物は、化合物(1a)と化合物(1b)の合計含有量(すなわち化合物(1)の含有量)が所定の範囲内であり、かつ化合物(1a)と化合物(1b)の各含有量が所定の範囲内であることが好ましい。
本発明の水硬性スラリー組成物が、前記化合物(1a)と前記化合物(1b)とを含有する場合、化合物(1b)/化合物(1a)の質量比は、より広い温度領域でレオロジー改質効果、例えば高い粘弾性が得られる観点から、好ましくは5/95以上、より好ましくは25/75以上、更に好ましくは40/60以上、そして、好ましくは95/5以下、より好ましくは75/25以下、更に好ましくは60/40以下である。
本発明の水硬性スラリー組成物は、水/水硬性粉体比(W/P)が、水硬性スラリー組成物の流動性を確保する観点から、好ましくは12質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは50質量%以上、そして、水硬性スラリー組成物の水硬性を確保する観点から、好ましくは500質量%以下、より好ましくは400質量%以下、更に好ましくは300質量%以下である。
ここで、水/水硬性粉体比(W/P)は、水硬性スラリー組成物中の水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)であり、水/水硬性粉体×100で算出される。水/水硬性粉体比は、水和反応により硬化する物性を有する粉体の量に基づいて算出される。またW/Pは、水硬性粉体がセメントである場合は、W/Cで表記される場合がある。
なお、水硬性粉体が、セメントなどの水和反応により硬化する物性を有する粉体の他、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体、及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。また、水和反応により硬化する物性を有する粉体が、高強度混和材を含有する場合、高強度混和材の量も水硬性粉体の量に算入する。これは、水硬性粉体の質量が関係する他の質量部などにおいても同様である。
本発明の水硬性スラリー組成物が、前記したポリエーテル化合物を含有する場合、本発明の水硬性スラリー組成物中のポリエーテル化合物の含有量は、水100質量部に対して、実用上、十分な粘弾性を得る観点から、好ましくは0.15質量部以上、より好ましくは0.25質量部以上、更に好ましくは0.35質量部以上、より更に好ましくは0.45質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、そして、水硬性スラリー組成物の増粘抑制の観点から、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1.5質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下である。ここでの水は、水硬性スラリー組成物の水相部分の水である。
本発明の水硬性スラリー組成物が、前記した分散剤を含有する場合、分散剤の含有量は、水硬性粉体100質量部に対して、実用上十分な流動性を得る観点から、好ましくは0.06質量部以上、より好ましくは0.09質量部以上、更に好ましくは0.12質量部以上、そして、水硬性スラリー組成物の水和反応を阻害しない観点から、好ましくは1.0質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、更に好ましくは0.6質量部以下である。
本発明の水硬性スラリー組成物は、前記したアニオン性芳香族化合物を含有することができる。この場合も、化合物(1)/アニオン性芳香族化合物の質量比は前記範囲が好ましい。また、アニオン性芳香族化合物の含有量は、水硬性スラリー組成物の水100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、より好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下、より好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.25質量部以下である。ここでの水は、水硬性スラリー組成物の水相部分の水である。
<スラリー組成物の製造方法>
本発明のスラリー組成物の製造方法は、本発明のレオロジー改質剤、水及び粉体を混合する、スラリー組成物の製造方法である。
本発明のスラリー組成物の製造方法には、本発明のレオロジー改質剤、及びスラリー組成物で述べた事項を適宜適用することができる。
本発明のスラリー組成物の製造方法は、予め水と粉体とを含むスラリーを調製し、本発明のレオロジー改質剤を該スラリーに添加し、混合してスラリー組成物を製造することが好ましい。
また本発明のレオロジー改質剤の成分である2種以上の化合物(1)、例えば化合物(1a)と化合物(1b)は、別々に添加してもよい。この場合、予め水と粉体とを含むスラリーを調製し、化合物(1a)を該スラリーに添加し混合した後に、化合物(1b)を添加し、混合してスラリー組成物を製造することが好ましい。
粉体は、水硬性粉体又は水硬性粉体とベントナイトとの混合物が挙げられる。また粉体は、セメント又はセメントとベントナイトとの混合粉体が挙げられる。粉体は、水硬性粉体を含むものが好ましい。
本発明のスラリー組成物及びスラリー組成物の製造方法で得られたスラリー組成物は、幅広い温度領域でスラリーのレオロジーが改質される。本発明のスラリー組成物及びスラリー組成物の製造方法は、例えば、水硬性スラリー組成物及び水硬性スラリー組成物の製造方法として有用である。
本発明のスラリー組成物は、粘性、弾性、あるいは粘弾性を有するため、材料分離抵抗性に優れていると考えられる。粘弾性が高い場合は、スラリー粒子の沈降を抑制しやすくなると考えられる。
表に示した化合物(1a)および化合物(1b)は以下のものを用いた。
<化合物(1a)>
・化合物(1a-1):オレイルジメチルアミンオキシド(一般式(1a)中、R11a:炭素数18のアルケニル基(オレイル基)、n1:0、R:メチル基、R:メチル基)
・化合物(1a-2):オレイン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド(一般式(1a)中、R11a:炭素数17のアルケニル基、n1:1、R:メチル基、R:メチル基)(一部の例では表の化合物(1b)の欄に示した。)
<化合物(1b)>
・化合物(1b-1):ステアリルジメチルアミンオキシド(一般式(1b)中、R11b:炭素数18のアルキル基(ステアリル基)、n2:0、R:メチル基、R:メチル基)
・化合物(1b-2):パルミチルジメチルアミンオキシド(一般式(1b)中、R11b:炭素数16のアルキル基(パルミチル基)、n2:0、R:メチル基、R:メチル基)
・化合物(1b-3):ラウリルジメチルアミンオキシド(一般式(1b)中、R11b:炭素数12のアルキル基(ラウリル基)、n2:0、R:メチル基、R:メチル基)
化合物(1a)、化合物(1b)は、それぞれ、例えば、特開2001-213859に記載の方法で製造することができる。本例では、化合物(1a)、化合物(1b)は、それぞれに対応する、アルキルジメチルアミン、アルケニルジメチルアミンまたはアルケニルアミドプロピルアミンを酸化することにより製造した。
<水硬性スラリー組成物の調製>
表に示す所定の温度に調整した水400gとセメント(普通ポルトランドセメント、太平洋セメント製と住友大阪セメント製を質量比50/50で混合した物)400gとを混合し、市販のハンドミキサーを用いて30秒間撹拌し、その後、レオロジー改質剤として表に記載の化合物(1a)と化合物(1b)、必要により表に記載のアニオン性芳香族化合物を添加し、レオロジー改質剤の添加後に3分間撹拌(10℃の水を使用した場合には5分間)を続けることで、水硬性スラリー組成物を調製した。
最初にセメントに添加した水量と各組成物中の水量との合計は400gとなるように調製した。
なお、水100質量部に対するレオロジー改質剤の添加量〔化合物(1a)と化合物(1b)成分の合計の添加量〕と、化合物(1b)/化合物(1a)の質量比は、表に記載の通りとした。
また、各水硬性スラリー組成物の水/水硬性粉体比(W/P)は100質量%であった。
<スラリー粘度の測定>
得られた水硬性スラリー組成物の粘度をB型粘度計(RION株式会社製、VISCOTESTER VT-04E、ローターNo.1、回転数:62.5rpm)により測定した。測定温度は表の各温度とした。この評価では、粘度が300mPa・s以上であることが好ましい。結果を表に示す。
また、実施例の水硬性スラリー組成物について、粘弾性を確認するために、曳糸性と巻き返し現象の確認を行った。実施例では、いずれも、水硬性スラリーに曳糸性と巻き返し現象が確認され、粘弾性があることが確認できた。ここで、曳糸性は、各水硬性スラリーについて、直径6mmの表面平滑なガラス棒をビーカー底中央に垂直に立て、その状態からガラス棒を約1秒間で引き抜き、その際のガラス棒先端における曳糸状態を目視で観察して判断した。巻き返し現象とは、水硬性スラリー内の会合体が絡み合いを生じ、弾性的性質を有することを意味しており、水硬性スラリーに巻き込まれた気泡が撹拌停止時に回転方向と逆向きに移動する状態のことを言う。実施例では、いずれも、この状態が確認された。なお、表中、比較例の水硬性スラリー組成物で粘度が0mPa・sである場合は、曳糸性、巻き返し現象の何れも確認できなかった。
Figure 0007362243000006
Figure 0007362243000007
表中、レオロジー改質剤の添加量は、水硬性スラリーの水100質量部に対する質量部である。
表の結果から明らかなように、実施例では、10℃~30℃の何れの温度でも水硬性スラリーの粘度が高く、粘弾性が発現していることがわかる。一方、比較例では、この温度領域では増粘できずに粘弾性を付与できないか、狭い温度領域でしか粘弾性を付与できないことがわかる。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1a)で表される化合物(1a)と、下記一般式(1b)で表される化合物(1b)を含有し、化合物(1b)/化合物(1a)の質量比が、5/95以上95/5以下である、レオロジー改質剤であり、水、及び無機粉体を含有するスラリー用である、レオロジー改質剤。

    〔式中、
    n1、n2は、それぞれ、独立に0以上3以下の整数である。
    11aは、n1が0のときは炭素数14以上22以下のアルケニル基であり、n1が1~3のときは炭素数13以上21以下のアルケニル基である。
    11bは、n2が0のときは炭素数14以上22以下のアルキル基又は炭素数14以上22以下のアルケニル基であり、n2が1~3のときは炭素数13以上21以下のアルキル基又は炭素数13以上21以下のアルケニル基である。
    ただし、n1とn2が同じ数である場合、R11bのアルケニル基はR11aとは異なるアルケニル基である。
    及びRは、それぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基又は-(CO)Hで表される基である。pは、平均付加モル数であり、R及びRの合計で0以上5以下の数である。〕
  2. スラリーが水硬性組成物である、請求項1のレオロジー改質剤。
  3. アニオン性芳香族化合物を含有する、請求項1又は2記載のレオロジー改質剤。
  4. 請求項1~3の何れか1項に記載のレオロジー改質剤、水及び無機粉体を含有する、スラリー組成物。
  5. 無機粉体が水硬性粉体を含む、請求項4に記載のスラリー組成物。
  6. 請求項1~3の何れか1項に記載のレオロジー改質剤、水及び無機粉体を混合する、スラリー組成物の製造方法。
  7. 無機粉体が水硬性粉体を含む、請求項6に記載のスラリー組成物の製造方法。
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