JP6689677B2 - 水硬性組成物用分散剤組成物 - Google Patents

水硬性組成物用分散剤組成物 Download PDF

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Description

本発明は、水硬性組成物用分散剤組成物、及び水硬性組成物に関する。
水硬性組成物用の分散剤は、セメント粒子を分散させることにより、所要のスランプを得るのに必要な単位水量を減少させ、水硬性組成物の作業性等を向上させるために用いる化学混和剤である。分散剤としては、従来、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のナフタレン系分散剤、カルボン酸とアルキレングリコール鎖を有する単量体との共重合体等のポリカルボン酸系分散剤、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミン系分散剤等が知られている。
ナフタレン系分散剤は、ポリカルボン酸系分散剤と比較して、材料や温度の変化に対する流動性発現の効果の変動が少なく、また得られる水硬性組成物の粘性が比較的低く、水硬性組成物の製造に際して使い易いという特徴がある。
一方で、ナフタレン系分散剤は、ポリカルボン酸系分散剤に比べて水硬性組成物の流動保持性が劣る傾向がある。
特許文献1は、第1の水溶性低分子化合物(A)と、第2の水溶性低分子化合物(B)とを含有するスラリーレオロジー改質剤であって、化合物(A)の水溶液と化合物(B)の水溶液とを等量混合した水溶液の20℃における粘度が、混合前のいずれの水溶液の粘度よりも少なくとも2倍高くすることができる、スラリーレオロジー改質剤を開示する。
特許文献2は、第1の水溶性低分子化合物(A)と、第2の水溶性低分子化合物(B)と粉体と水とを含有するスラリーであって、化合物(A)の水溶液と化合物(B)の水溶液とを等量混合した水溶液の20℃における粘度が、混合前のいずれの水溶液の粘度よりも少なくとも2倍高くすることができる、スラリーを開示する。
特許文献3は、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物またはその塩、ジアルキルスルホコハク酸またはその塩、及びカチオン界面活性剤からなるセメント分散剤を開示する。
特許文献4は、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物塩と水とカチオン性材料とを含む耐硫酸性付与剤を開示する。
特開2003−313536号公報 特開2003−313537号公報 特開平8−231256号公報 特開2010−228985号公報
本発明は、水硬性組成物の流動保持性が向上する水硬性組成物用分散剤組成物及び水硬性組成物を提供する。
本発明は、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、
(B)炭素数10以上22以下の炭化水素基を少なくとも1つ有するカチオン性界面活性剤から選ばれる1種以上の化合物と、
を含有し、(A)と(B)の質量比(A)/(B)が2.0以上30以下である、水硬性組成物用分散剤組成物に関する。
また本発明は、水硬性粉体と、
水と、
(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、
(B)炭素数10以上22以下の炭化水素基を少なくとも1つ有するカチオン性界面活性剤から選ばれる1種以上の化合物と、
を含有し、(A)と(B)の質量比(A)/(B)が2.0以上30以下である、水硬性組成物に関する。
また本発明は、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、
(B)炭素数10以上22以下の炭化水素基を少なくとも1つ有するカチオン性界面活性剤から選ばれる1種以上の化合物と、
を含有し、(A)と(B)の質量比(A)/(B)が2.0以上30以下である、無機粉体用分散剤組成物に関する。
本発明によれば、水硬性組成物の流動保持性が向上する水硬性組成物用分散剤組成物及び水硬性組成物が提供される。
<水硬性組成物用分散剤組成物>
(A)成分はナフタレン系分散剤として機能し得る。ナフタレン系分散剤は、セメントへの吸着性が高すぎるため、ナフタレン系分散剤がセメントに吸着されていくと、ナフタレン系分散剤の流動性向上の機能が次第に損なわれ、流動保持性が低下すると考えられる。
ナフタレン系分散剤に(B)成分を併用すると、(B)成分がナフタレン環と相互作用を示すことでナフタレン系分散剤のセメントへの吸着が抑制されると考えられる。そして、ナフタレン系分散剤と(B)成分を併用することでナフタレン系分散剤のセメントへの吸着が抑制される結果、ナフタレン系分散剤単独では得られなかった水硬性組成物の流動保持性が向上すると考えられる。
<(A)成分>
(A)成分は、ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物である。(A)成分は、例えば、セメントや石膏などの水硬性粉体を含有する水硬性組成物用の分散剤として用いることができる。
(A)成分としては、好ましくはナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩が挙げられる。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合物又はその塩である。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は、性能を損なわない限り、単量体として、例えばメチルナフタレン、エチルナフタレン、ブチルナフタレン、ヒドロキシナフタレン、ナフタレンカルボン酸、アントラセン、フェノール、クレゾール、クレオソート油、タール、メラミン、尿素、スルファニル酸及び/又はこれらの誘導体などのような、ナフタレンスルホン酸と共縮合可能な芳香族化合物と共縮合させてもよい。
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、例えば、マイテイ150、デモール N、デモール RN、デモール MS、デモールSN−B、デモール SS−L(いずれも花王株式会社製)、セルフロー 120、ラベリン FD−40、ラベリン FM−45(いずれも第一工業株式会社製)などのような市販品を用いることができる。
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、水硬性組成物の流動性向上の観点から、重量平均分子量が、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下、更に好ましくは80,000以下、より更に好ましくは50,000以下、より更に好ましくは30,000以下である。そして、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩は、水硬性組成物の流動性向上の観点から、重量平均分子量が、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、更に好ましくは4,000以上、より更に好ましくは5,000以上である。ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物は酸の状態あるいは中和物であってもよい。
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩の分子量は下記条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
[GPC条件]
カラム:G4000SWXL+G2000SWXL(東ソー)
溶離液:30mM CHCOONa/CHCN=6/4
流量:0.7ml/min
検出:UV280nm
サンプルサイズ:0.2mg/ml
標準物質:西尾工業(株)製 ポリスチレンスルホン酸ソーダ換算(単分散ポリスチレンスルホン酸ナトリウム:分子量、206、1,800、4,000、8,000、18,000、35,000、88,000、780,000)
検出器:東ソー株式会社 UV−8020
ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩の製造方法は、例えば、ナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとを縮合反応により縮合物を得る方法が挙げられる。前記縮合物の中和を行ってもよい。また、中和で副生する水不溶解物を除去してもよい。具体的には、ナフタレンスルホン酸を得るために、ナフタレン1モルに対して、硫酸1.2〜1.4モルを用い、150〜165℃で2〜5時間反応させてスルホン化物を得る。次いで、該スルホン化物1モルに対して、ホルムアルデヒドとして0.95〜0.99モルとなるようにホルマリンを85〜95℃で、3〜6時間かけて滴下し、滴下後95〜105℃で縮合反応を行う。さらに、得られる縮合物の水溶液は酸性度が高いので貯槽等の金属腐食を抑制する観点から、得られた縮合物に、水と中和剤を加え、80〜95℃で中和工程を行うことができる。中和剤は、ナフタレンスルホン酸と未反応硫酸に対してそれぞれ1.0〜1.1モル倍添加することが好ましい。また、中和により生じる水不溶解物を除去することができ、その方法として好ましくは濾過による分離が挙げられる。これらの工程によって、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物水溶性塩の水溶液が得られる。この水溶液は、そのまま(A)成分の水溶液として使用することができる。更に必要に応じて該水溶液を乾燥、粉末化して粉末状のナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物の塩を得ることができ、これを粉末状の(A)成分として使用することができる。乾燥、粉末化は、噴霧乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥等により行うことができる。
<(B)成分>
(B)成分は、炭素数10以上22以下の炭化水素基を少なくとも1つ有するカチオン性界面活性剤から選ばれる1種以上の化合物である。
(B)成分は、分散性の観点から、好ましくは炭素数10以上18以下の炭化水素基を少なくとも1つ有するカチオン性界面活性剤から選ばれる1種以上である。
炭素数10以上22以下の炭化水素基を少なくとも1つ有するカチオン性界面活性剤において、炭素数10以上22以下の炭化水素基(以下、長鎖炭化水素基ともいう)は、置換基を含む長鎖炭化水素基を含む。
置換基は、最も基本的な有機化合物の水素原子の代わりに導入された原子又は原子団のことである(化学辞典、第一版、第七刷、(株)東京化学同人、2003年4月1日)。置換基を含む長鎖炭化水素基は、炭化水素の誘導体であってよい。誘導体とは、ある炭化水素を母体として考えたとき、官能基の導入、酸化、還元、原子の置き換えなど、母体の構造や性質を大幅に変えない程度の改変がなされた化合物のことである。例えば、置換基としては、エーテル基(−O−)、エステル基(−COO−)、アミド基(−NHCO−)、アミン基(−NH−)又は硫酸エステル基(−OSO−)等が挙げられる。
長鎖炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、炭化水素の水素原子の1つ、2つ又は3つが置換されたアリール基などが挙げられる。長鎖炭化水素基は、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる基が好ましい。
長鎖炭化水素基がアルキル基である場合、好ましくは脂肪族アルキル基、より好ましくは直鎖脂肪族アルキル基、更に好ましくは直鎖第1級脂肪族アルキル基である。
長鎖炭化水素基がアルケニル基である場合、好ましくは脂肪族アルケニル基、より好ましくは直鎖脂肪族アルケニル基、更に好ましくは直鎖第1級脂肪族アルケニル基である。
長鎖炭化水素基は、経済的な観点から、好ましくはアルキル基である。
長鎖炭化水素基は、水への溶解し易さの観点から、好ましくはアルケニル基である。
長鎖炭化水素基の炭素数は、分散性の観点から、10以上、好ましくは12以上、そして、分散性の観点から、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
長鎖炭化水素基の具体例を挙げると、炭素数が10以上、好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下の炭化水素基、及び該炭化水素基の水素原子が置換基で置換された炭化水素基から選ばれる基が挙げられる。
長鎖炭化水素基の他の具体例を挙げると、炭素数が10以上、好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基、及び該アルキル基又は該アルケニル基の水素原子が置換基で置換された基から選ばれる基が挙げられる。
長鎖炭化水素基の他の具体例を挙げると、炭素数が10以上、好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下のアルキル基、好ましくは脂肪族アルキル基、より好ましくは直鎖脂肪族アルキル基、更に好ましくは直鎖第1級脂肪族アルキル基、及び、炭素数が10以上、好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下のアルケニル基、好ましくは脂肪族アルケニル基、より好ましくは直鎖脂肪族アルケニル基、更に好ましくは直鎖第1級脂肪族アルケニル基から選ばれる基が挙げられる。
更に具体的には、長鎖炭化水素基としては、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基、イソステアリル基、及びオレイル基から選ばれる基が挙げられ、流動性向上の観点から、好ましくはラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基、イソステアリル基、及びオレイル基から選ばれる基が挙げられ、より好ましくは、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、及びオレイル基から選ばれる基が挙げられる。
本発明の(B)成分としては、下記一般式(B1)で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物であることが好ましい。
Figure 0006689677
〔式中、
11、R12、R13、R14は、これらのうち少なくとも1つが炭素数10以上22以下の炭化水素基であり、残りが炭素数1以上8以下の炭化水素基、
は、対イオン、
を表す。〕
〔(B1)〕
化合物(B1)は、前記一般式(B1)で表される化合物である。
一般式(B1)中のR11、R12、R13、R14は、これらのうち少なくとも1つが炭素数10以上22以下の炭化水素基(以下、長鎖炭化水素基ともいう)であり、残りが炭素数1以上8以下の炭化水素基(以下、短鎖炭化水素基ともいう)である。これらの炭化水素基は、置換基を含む炭化水素基を含む。
置換基は、前記<(B)成分>で示したものと同様である。
一般式(B1)中、長鎖炭化水素基の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、炭化水素の水素原子の1つ、2つ又は3つが置換されたアリール基などが挙げられる。長鎖炭化水素基の炭化水素基は、アルキル基及びアルケニル基から選ばれる基が好ましい。
長鎖炭化水素基がアルキル基である場合、好ましくは脂肪族アルキル基、より好ましくは直鎖脂肪族アルキル基、更に好ましくは直鎖第1級脂肪族アルキル基である。
長鎖炭化水素基がアルケニル基である場合、好ましくは脂肪族アルケニル基、より好ましくは直鎖脂肪族アルケニル基、更に好ましくは直鎖第1級脂肪族アルケニル基である。
長鎖炭化水素基は、経済的な観点から、好ましくはアルキル基である。
長鎖炭化水素基は、水への溶解し易さの観点から、好ましくはアルケニル基である。
長鎖炭化水素基の炭素数は、分散性の観点から、10以上、好ましくは12以上、そして、同様の観点から、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下である。
長鎖炭化水素基の具体例を挙げると、炭素数が10以上、好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下の炭化水素基、及び該炭化水素基の水素原子が置換基で置換された炭化水素基から選ばれる基が挙げられる。
長鎖炭化水素基の他の具体例を挙げると、炭素数が10以上、好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下のアルキル基又はアルケニル基、及び該アルキル基又は該アルケニル基の水素原子が置換基で置換された基から選ばれる基が挙げられる。
長鎖炭化水素基の他の具体例を挙げると、炭素数が10以上、好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下のアルキル基、好ましくは脂肪族アルキル基、より好ましくは直鎖脂肪族アルキル基、更に好ましくは直鎖第1級脂肪族アルキル基、及び、炭素数が10以上、好ましくは12以上、そして、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは16以下のアルケニル基、好ましくは脂肪族アルケニル基、より好ましくは直鎖脂肪族アルケニル基、更に好ましくは直鎖第1級脂肪族アルケニル基から選ばれる基が挙げられる。
更に具体的には、長鎖炭化水素基としては、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基、イソステアリル基、及びオレイル基から選ばれる基が挙げられ、流動性向上の観点から、好ましくはラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、ベヘニル基、イソステアリル基、及びオレイル基から選ばれる基が挙げられ、より好ましくは、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、及びオレイル基から選ばれる基が挙げられる。
一般式(B1)中、短鎖炭化水素基の炭素数は、分散性の観点から、1以上、そして、8以下、好ましくは6以下、より好ましくは3以下である。短鎖炭化水素基は、具体的には、メチル基、エチル基及びプロピル基から選ばれる基が挙げられ、分散性の観点から、好ましくはメチル基及びエチル基から選ばれる基であり、より好ましくはメチル基である。
一般式(B1)中、X は、対イオンであり、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、メチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオンから選ばれる陰イオン基が好ましく、ハロゲン化物イオンから選ばれる陰イオン基がより好ましく、塩化物イオンが更に好ましい。
化合物(B1)としてはトリメチルラウリルアンモニウムカチオン、トリメチルベヘニルアンモニウムカチオン、トリメチルミリスチルアンモニウムカチオン、トリメチルパルミチルアンモニウムカチオン、トリメチルオレイルアンモニウムカチオン及びトリメチルステアリルアンモニウムカチオンから選ばれる1種以上が挙げられ、分散性の観点から、好ましくはトリメチルラウリルアンモニウムカチオン、トリメチルパルミチルアンモニウムカチオン、トリメチルオレイルアンモニウムカチオン及びトリメチルステアリルアンモニウムカチオンから選ばれる1種以上であり、より好ましくはトリメチルラウリルアンモニウムカチオン及びトリメチルパルミチルアンモニウムカチオンから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはトリメチルラウリルアンモニウムカチオンである。
<水硬性組成物用分散剤組成物の組成等>
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、(A)成分を、固形分中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下含有する。
なお、水硬性組成物用分散剤組成物について、固形分とは、水以外の成分をいう。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、(B)成分を、固形分中、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは5質量%以上、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下含有する。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、分散性の観点から、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)で、2.0以上、そして、30以下、好ましくは15以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは5以下である。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、更に、(C)消泡剤〔以下、(C)成分という〕を含有することができる。
(C)成分としては、非イオン界面活性剤系の消泡剤が好ましい。(C)成分としては、シリコーン系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、エーテル系消泡剤が好ましく、シリコーン系消泡剤ではジメチルポリシロキサンがより好ましく、脂肪酸エステル系消泡剤ではポリアルキレングリコール脂肪酸エステルがより好ましく、エーテル系消泡剤ではポリアルキレングリコールアルキルエーテルがより好ましい。
(C)成分としては、強度低下を抑制できる観点から、脂肪酸エステル系消泡剤が好ましい。
シリコーン系消泡剤は水と相溶性のある乳化タイプが好ましく、そのような乳化タイプのものとしては、KM−70、KM−73A〔何れも信越シリコーン(株)〕、TSAシリーズ(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)、FSアンチフォームシリーズ〔東レ・ダウコーニング(株)〕、アンチフォームE−20〔花王(株)〕等の市販品が挙げられる。
脂肪酸エステル系消泡剤のうちポリアルキレングリコール脂肪酸エステルとしては、レオドールTW−L120〔花王(株)〕、ニコフィックス、フォームレックス〔何れも日華化学(株)〕等の市販品が挙げられる。
エーテル系消泡剤のうちポリアルキレングリコールアルキルエーテルとしては、消泡剤No.1、消泡剤No.5〔何れも花王(株)〕、アデカプルロニックシリーズ〔(株)アデカ〕等の市販品が挙げられる。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、(C)成分を、固形分中、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下含有する。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、起泡抑制及び破泡の観点から、(B)成分と(C)成分の質量比が、(C)/(B)で、好ましくは0.00001以上、より好ましくは0.00005以上、更に好ましくは0.0001以上、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.05以下である。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、従来のセメント分散剤、水溶性高分子化合物、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張材、防水剤、遅延剤、急結剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、防腐剤などの成分〔(A)〜(C)成分に該当するものを除く〕を含有することができる。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、形態が、液体、固体の何れでもよい。本発明の水硬性組成物用分散剤組成物が液体の場合は、水を含有することが好ましい。
水硬性組成物用分散剤組成物が水を含有する液体である場合の水の含有量は、取扱いしやすさの観点から、該組成物中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、水硬性組成物の流動性を向上する観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
水硬性組成物用分散剤組成物が水を含有する液体である場合の(A)成分の含有量は、分散性と取扱いしやすさの観点から、該組成物中、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは35量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
水硬性組成物用分散剤組成物が水を含有する液体である場合の(B)成分の含有量は、分散性と取扱いしやすさの観点から、該組成物中、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
〔無機粉体用分散剤組成物〕
本発明の無機粉体用分散剤組成物に用いられる(A)成分と(B)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。また、本発明の無機粉体用分散剤組成物は、(C)成分の消泡剤を含有することができる。(C)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
無機粉体としては、特に限定されないが、以下のものが挙げられる。無機粉体のうち、水硬性粉体に対して用いるものが、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物である。
(1)セメント、石膏などの水硬性粉体
(2)フライアッシュ、シリカフューム、火山灰、けい酸白土などのポソラン作用を持つ粉体
(3)石炭灰、高炉スラグ、けい藻土などの潜在水硬性粉体
(4)カオリン、ケイ酸アルミニウム、クレー、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、セリサイト、ベントナイトなどのケイ酸塩
(5)炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸鉛などの炭酸塩
(6)硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩
(7)ストロンチウムクロメート、ピグメントイエローなどのクロム酸塩
(8)モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム亜鉛、モリブデン酸マグネシウムなどのモリブデン酸塩
(9)アルミナ、酸化アンチモン、酸化チタニウム、酸化コバルト、四酸化三鉄、三酸化ニ鉄、四酸化三鉛、一酸化鉛、酸化クロムグリーン、三酸化タングステン、酸化イットリウムなどの金属酸化物
(10)水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、メタチタン酸などの金属水酸化物
(11)炭化ケイ素、炭化タングステン、炭化ホウ素、炭化チタンなどの金属炭化物
(12)窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、チタン酸バリウム、サチンホワイト、カーボンブラック、グラファイト、クロムイエロー、硫化水銀、ウルトラマリン、パリスブルー、チタニウムイエロー、クロムバーミリオン、リトポン、アセト亜ヒ酸銅、ニッケル、銀、パラジウム、チタン酸ジルコン酸鉛などの、上記(1)〜(11)に分類されない他の無機粉体
本発明の無機粉体用分散剤組成物は、無機粉体スラリーに用いることができる。無機粉体スラリーは、無機粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分を含有するスラリーである。無機粉体が水硬性粉体である場合、スラリーは、本発明の水硬性組成物である。
本発明のスラリーに用いられる(A)成分と(B)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
無機粉体スラリーとしては、例えば無機粉体として高炉スラグを使用したスラリー(以下、高炉スラグスラリーという)が挙げられる。高炉スラグスラリーは、高炉スラグ100質量部に対して、本発明の無機粉体用分散剤組成物を、固形分で0.01質量部以上5.0質量部以下含有することが好ましい。高炉スラグスラリーは、高炉スラグ100質量部に対して、水を、好ましくは40質量部以上、より好ましくは45質量部以上、そして、好ましくは250質量部以下、より好ましく230質量部以下含有する。また、高炉スラグスラリーは、(C)成分を含有することが好ましい。高炉スラグスラリーは、(B)成分と(C)成分の質量比が、(C)/(B)で、好ましくは0.00001以上、より好ましくは0.00005以上、更に好ましくは0.0001以上、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.05以下である。
〔水硬性組成物〕
本発明は、水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分とを含有し、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が2.0以上30以下である、水硬性組成物を提供する。(A)成分と、(B)成分は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を添加して用いて水硬性組成物を調製しても良く、それぞれを別々に水硬性粉体と水とを含む系に添加して水硬性組成物を調製してもよい。
本発明の水硬性組成物に使用される水硬性粉体とは、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、セメント、石膏等が挙げられる。好ましくは普通ポルトランドセメント、ビーライトセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸塩セメント等のセメントである。また、セメント等に高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどのポゾラン作用及び/または潜在水硬性を有する粉体や、石粉(炭酸カルシウム粉末)等が添加された高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等でもよい。
本発明の水硬性組成物は、水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の質量百分率(質量%)、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記される。〕が、水が少ない配合でも流動性を発現できる点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、そして、好ましくは100質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。
本発明の水硬性組成物に用いられる(A)成分と(B)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
本発明の水硬性組成物は、水硬性粉体100質量部に対して、(A)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.3質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは0.6質量部以上、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下含有する。
本発明の水硬性組成物は、水硬性粉体100質量部に対して、(B)成分を、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、より更に好ましくは0.1質量部以上、そして、好ましくは0.45質量部以下、より更に好ましくは0.40質量部以下含有する。
本発明の水硬性組成物は、水硬性粉体100質量部に対して、(A)成分と(B)成分とを合計で、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、より更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.2質量部以上、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下含有する。
本発明の水硬性組成物は、強度発現の観点から、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)で、2.0以上、そして、30以下、好ましくは15以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは5以下である。
本発明の水硬性組成物は、更に、(C)成分として、消泡剤を含有することができる。消泡剤の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。(C)成分を用いる場合、本発明の水硬性組成物は、水硬性粉体100質量部に対して、(C)成分を、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.00025質量部以上、更に好ましくは0.0005質量部以上、そして、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.075質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下含有する。本発明の水硬性組成物は、起泡抑制及び破泡の観点から、(B)成分と(C)成分の質量比が、(C)/(B)で、好ましくは0.00001以上、より好ましくは0.00005以上、更に好ましくは0.0001以上、そして、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.05以下である。
本発明の水硬性組成物は、骨材を含有することが好ましい。骨材としては、細骨材及び粗骨材から選ばれる骨材が挙げられる。細骨材として、JIS A0203−2014中の番号2311で規定されるものが挙げられる。細骨材としては、川砂、陸砂、山砂、海砂、石灰砂、珪砂及びこれらの砕砂、高炉スラグ細骨材、フェロニッケルスラグ細骨材、軽量細骨材(人工及び天然)及び再生細骨材等が挙げられる。また、粗骨材として、JIS A0203−2014中の番号2312で規定されるものが挙げられる。例えば粗骨材としては、川砂利、陸砂利、山砂利、海砂利、石灰砂利、これらの砕石、高炉スラグ粗骨材、フェロニッケルスラグ粗骨材、軽量粗骨材(人工及び天然)及び再生粗骨材等が挙げられる。細骨材、粗骨材は種類の違うものを混合して使用しても良く、単一の種類のものを使用してもよい。
水硬性組成物がコンクリートの場合、粗骨材の使用量は、水硬性組成物の強度の発現とセメント等の水硬性粉体の使用量を低減し、型枠等への充填性を向上する観点から、嵩容積は、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上、そして、好ましくは100%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下である。嵩容積は、コンクリート1m中の粗骨材の容積(空隙を含む)の割合である。
また、水硬性組成物がコンクリートの場合、細骨材の使用量は、型枠等への充填性を向上する観点から、好ましくは500kg/m以上、より好ましくは600kg/m以上、更に好ましくは700kg/m以上であり、そして、好ましくは1000kg/m以下、より好ましくは900kg/m以下である。
水硬性組成物がモルタルの場合、細骨材の使用量は、好ましくは800kg/m以上、より好ましくは900kg/m以上、更に好ましくは1000kg/m以上であり、そして、好ましくは2000kg/m以下、より好ましくは1800kg/m以下、更に好ましくは1700kg/m以下である。
水硬性組成物としては、コンクリート等が挙げられる。なかでもセメントを用いたコンクリートが好ましい。本発明の水硬性組成物は、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、地盤改良用、グラウト用、寒中用等の何れの分野においても有用である。
本発明の水硬性組成物は、更にその他の成分を含有することもできる。例えば、AE剤、遅延剤、起泡剤、増粘剤、発泡剤、防水剤、流動化剤、等〔(A)〜(C)成分に該当するものを除く〕が挙げられる。
〔水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法〕
本発明は、(A)成分と、(B)成分とを混合し、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が2.0以上30以下となるように混合する、水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法を提供する。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法に用いられる(A)成分と(B)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。更に、(A)成分と(B)成分と(C)成分とを混合して、(A)成分と(B)成分と(C)成分を含有する水硬性組成物用分散剤組成物を製造することもできる。
また、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べた事項は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法に適宜適用することができる。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を製造する方法として好適である。
本発明の水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法としては、(A)成分と(B)成分と水とを含有する水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法が挙げられる。この場合、(A)成分と(B)成分と水との混合は、性能を低下させない範囲で任意の方法で行うことができる。例えば、(B)成分の凝固点以上に加熱した(A)成分の水溶液、及び(B)成分を攪拌機で混合する方法や、(A)成分及び(B)成分をそれぞれ水に溶解させ、(A)成分の水溶液及び(B)成分の水溶液を混合する方法のように行うことができる。
〔水硬性組成物の製造方法〕
本発明は、水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分とを混合し、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が2.0以上30以下となるように混合する水硬性組成物の製造方法を提供する。
本発明の水硬性組成物の製造方法に用いられる(A)成分と(B)成分の具体例及び好ましい態様は、それぞれ、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。
また、本発明の水硬性組成物の製造方法に用いられる水硬性粉体の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物で述べたものと同じである。
更に、水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分を混合して、水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分と、(C)成分を含有する水硬性組成物用分散剤組成物を製造することもできる。
また、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物、及び水硬性組成物で述べた事項は、本発明の水硬性組成物の製造方法に適宜適用することができる。
本発明の水硬性組成物の製造方法では、水硬性粉体100質量部に対して、(A)成分を、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.3質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは0.6質量部以上、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下混合する。
本発明の水硬性組成物の製造方法では、水硬性粉体100質量部に対して、(B)成分を、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、より更に好ましくは0.1質量部以上、そして、好ましくは0.45質量部以下、より好ましくは0.40質量部以下混合する。
本発明の水硬性組成物の製造方法では、水硬性粉体100質量部に対して、(A)成分と(B)成分とを合計で、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.03質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、より更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.2質量部以上、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下混合する。
本発明の水硬性組成物の製造方法では、生産効率の観点から、(A)成分と(B)成分とを、(A)/(B)の質量比が、2.0以上、そして、30以下、好ましくは15以下、より好ましくは9以下、更に好ましくは5以下となるように混合する。
本発明の水硬性組成物の製造方法では、更に、(C)成分として、消泡剤を混合してもよい。消泡剤の具体例及び好ましい態様は、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物で述べたものと同じである。(C)成分を用いる場合、本発明の水硬性組成物の製造方法では、水硬性粉体100質量部に対して、(C)成分を、好ましくは0.0005質量部以上、より好ましくは0.00025質量部以上、更に好ましくは0.0005質量部以上、そして、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.075質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下混合する。
本発明の水硬性組成物の製造方法では、(A)成分及び(B)成分とセメント等の水硬性粉体とを円滑に混合する観点から、(A)成分及び(B)成分と水とを予め混合し、水硬性粉体と混合することが好ましい。水を含有する本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を用いることができる。
また、本発明の水硬性組成物の製造方法では、セメント等の水硬性粉体と、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物とを混合する方法が好ましい。本発明の水硬性組成物用分散剤組成物は、粉末であっても液体であってもよく、水硬性粉体に対して、(A)成分、(B)成分、さらには(C)成分が、前述の添加量となるように添加されることが好ましい。具体的には、本発明の水硬性組成物用分散剤組成物を、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、より更に好ましくは0.15質量部以上、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、より更に好ましくは2質量部以下混合する。
水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分との混合は、モルタルミキサー、強制二軸ミキサー等のミキサーを用いて行うことができる。また、好ましくは1分間以上、より好ましくは2分間以上、そして、好ましくは5分間以下、より好ましくは3分間以下混合する。水硬性組成物の調製にあたっては、水硬性組成物で説明した材料や薬剤及びそれらの量を用いることができる。
得られた水硬性組成物は、更に、水硬性組成物を型枠に充填し養生し硬化させる。型枠として、建築物の型枠、コンクリート製品用の型枠等が挙げられる。型枠への充填方法として、ミキサーから直接投入する方法、水硬性組成物をポンプで圧送して型枠に導入する方法等が挙げられる。
水硬性組成物の養生の際、硬化を促進するために加熱養生し、硬化を促進させてもよい。ここで、加熱養生は、40℃以上80℃以下の温度で水硬性組成物を保持して硬化を促進することができる。
本発明により、
水硬性粉体と、水と、(A)成分と、(B)成分とを混合し、(A)成分と(B)成分の質量比(A)/(B)が2.0以上30以下となるように混合して水硬性組成物を調製する工程
調製された前記水硬性組成物を型枠に充填、養生、硬化させる工程、及び、
硬化した前記水硬性組成物を脱型する工程、
を有する硬化体の製造方法が提供される。本発明の水硬性組成物用分散剤組成物、水硬性組成物、水硬性組成物用分散剤組成物の製造方法、及び水硬性組成物の製造方法で述べた事項は、この硬化体の製造方法にも適用することができる。
コンクリート製品である型枠を用いる水硬性組成物の硬化体としては、土木用製品では、護岸用の各種ブロック製品、ボックスカルバート製品、トンネル工事等に使用されるセグメント製品、橋脚の桁製品等が挙げられ、建築用製品では、カーテンウォール製品、柱、梁、床板に使用される建築部材製品等が挙げられる。
(1)モルタルの調製
モルタルミキサー(株式会社ダルトン製 万能混合撹拌機 型式:5DM−03−γ)を用いて、セメント(C)、細骨材(S)を投入し空練りをモルタルミキサーの低速回転(63rpm)にて10秒行い、(A)成分、(B)成分、及び消泡剤を含む練り水(W)を加えた。そして、モルタルミキサーの低速回転(63rpm)にて120秒間本混練りして、モルタルを調製した。
モルタルの配合条件は、セメント400g、細骨材700gであり、水/セメント比(W/C)は30質量%とした。
成分は以下のものである。
・水(W):上水道水を用いた。
・セメント(C):普通ポルトランドセメント(二種混合:太平洋セメント/住友大阪セメント=1/1、質量比) 密度3.16g/cm
・細骨材(S):城陽産山砂 密度2.55g/cm
・(A)成分:ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物のナトリウム塩、重量平均分子量15,000
・(B)成分:表1中に記載のものを用いた。
・(C)成分:フォームレックス797(脂肪酸エステル系消泡剤)、日華化学株式会社製、上記モルタル配合に0.05g添加した。
(2)流動性の評価
JIS R 5201の試験方法に従って、調製したモルタルのフローを測定した。ただし、落下運動を与える操作は行っていない。モルタルフローの測定は、接水(水硬性粉体(セメント)と水が最初に接触した時点)から3分経過後、及び接水から60分経過後に行った。結果を表1に示した。また下記数式より算出した各モルタルの流動性保持率(%)の値を表1に示した。流動性保持率が100%に近いほど流動保持性に優れていることがいえる。
流動性保持率(%)=(接水60分後のモルタルフロー値−フローコーンの下部内径100mm)/(接水3分後のモルタルフロー値−フローコーンの下部内径100mm)×100
Figure 0006689677
*1 添加量:セメント100質量部に対する添加量(質量部)
*2 合計添加量:セメント100質量部に対する(A)成分と(B)成分の合計の添加量(質量部)
(考察)
比較例1及び2では、接水後3分では所望のモルタルフローが得られたが、接水後60分ではモルタルフローが大きく低下していることが分かる。
また、質量比(A)/(B)が2.0〜30の範囲であると、接水後3分のモルタルフローが良い結果を示していることが分かる。また接水後60分のモルタルフローの結果から、実施例1から5は流動性保持に優れていることが分かる。
比較例3は特許文献3の実施例に記載されたものであり、カチオン分子の長鎖炭化水素基の炭化水素鎖が短すぎる場合には、モルタルフローが大きく低下していることが分かる。

Claims (11)

  1. (A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、
    (B)炭素数10以上22以下の炭化水素基を少なくとも1つ有するカチオン性界面活性剤から選ばれる1種以上の化合物と、
    を含有し、(A)と(B)の質量比(A)/(B)が2.0以上以下である、水硬性組成物用分散剤組成物。
  2. (B)が、下記一般式(B1)で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物である、請求項1記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
    Figure 0006689677

    〔式中、
    11、R12、R13、R14は、これらのうち少なくとも1つが炭素数10以上22以下の炭化水素基であり、残りが炭素数1以上8以下の炭化水素基、
    は対イオン、
    を表す。〕
  3. 更に、(C)消泡剤を含有する、請求項1又は2に記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
  4. (A)が、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩である、請求項1〜3の何れか1項記載の水硬性組成物用分散剤組成物。
  5. 水硬性粉体と、
    水と、
    (A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、
    (B)炭素数10以上22以下の炭化水素基を少なくとも1つ有するカチオン性界面活性剤から選ばれる1種以上の化合物と、
    を含有し、(A)と(B)の質量比(A)/(B)が2.0以上以下である、水硬性組成物。
  6. (B)が、下記一般式(B1)で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物である、請求項5記載の水硬性組成物。
    Figure 0006689677

    〔式中、
    11、R12、R13、R14は、これらのうち少なくとも1つが炭素数10以上22以下の炭化水素基であり、残りが炭素数1以上8以下の炭化水素基、
    は対イオン、
    を表す。〕
  7. 更に、(C)消泡剤を含有する、請求項5又は6に記載の水硬性組成物。
  8. (A)が、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩である、請求項5〜7の何れか1項記載の水硬性組成物。
  9. 水硬性粉体100質量部に対して、(A)を0.01質量部以上5質量部以下含有する、請求項5〜8の何れか1項記載の水硬性組成物。
  10. 水硬性粉体100質量部に対して、(B)を0.001質量部以上0.45質量部以下含有する、請求項5〜9の何れか1項記載の水硬性組成物。
  11. (A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、
    (B)炭素数10以上22以下の炭化水素基を少なくとも1つ有するカチオン性界面活性剤から選ばれる1種以上の化合物と、
    を含有し、(A)と(B)の質量比(A)/(B)が2.0以上以下である、無機粉体用分散剤組成物。
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