JP7353728B2 - 導電性エラストマー、導電性ローラ、及びこれらの製造方法、並びに画像形成装置 - Google Patents
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Description
ところが、イオン導電剤は、通電によりブリードすることが課題となっている。イオン導電剤のブリードを抑制するために、下記特許文献1、2の技術が検討されている。
特許文献1には、イオン導電剤のブリードを抑えるために保護層を形成する技術が開示されている。
また、特許文献2には、イオン導電剤のブリードを抑えるために水性UVウレタンコーティング層を形成する技術が開示されている。
これらの技術のように、表面にコーティングすることでブリード抑制効果は高まる。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、表面にコーティングすることなく、導電剤のブリードを抑制することを目的とする。本発明は、以下の形態として実現することが可能である。
ビニルエーテル基、アリルエーテル基、及び(メタ)アクリレート基からなる群より選ばれた少なくとも1つを1分子中に複数有するウレタンプレポリマーであって、
ウレタンプレポリマーは、複数の分子から構成され、
ウレタンプレポリマーの少なくとも一部の分子は、更に、活性水素基を有する導電剤に由来する構造を備えるウレタンプレポリマー。
重量平均分子量が1700~12000である〔1〕に記載のウレタンプレポリマー。
40℃における粘度(JIS K 7117-2)が、10~150Pa・sである〔1〕又は〔2〕に記載のウレタンプレポリマー。
〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載のウレタンプレポリマーと、チオール基を複数有するポリチオールとの光重合反応硬化物を含有する導電性エラストマー。
前記ポリチオールの平均官能基数が2.1~6.0である〔4〕に記載の導電性エラストマー。
前記ポリチオールが有するチオール基の全当量数の、前記ウレタンプレポリマーが有するビニルエーテル基、アリルエーテル基、及び(メタ)アクリレート基の全当量数に対する比率が0.7~1.8である〔4〕又は〔5〕に記載の導電性エラストマー。
前記ポリチオールの量が、
前記ウレタンプレポリマーを100重量部とした場合に2~15重量部の割合である請求項〔4〕~〔6〕のいずれか1項に記載の導電性エラストマー。
〔4〕~〔7〕のいずれか1項に記載の導電性エラストマーからなる弾性層を備えた導電性ローラ。
〔8〕に記載の導電性ローラを備えた画像形成装置。
ウレタンプレポリマーの製造方法であって、
ポリイソシアネートと、
ポリオールと、
活性水素基を有する導電剤と、
ビニルエーテル基、アリルエーテル基、及びアクリレート基からなる群より選ばれた少なくとも1つの官能基を有する化合物とを
反応させるウレタンプレポリマーの製造方法。
〔10〕のウレタンプレポリマーの製造方法によって製造されたウレタンプレポリマーと、チオール基を複数有するポリチオールとを混合して混合物を調製する混合工程と、
前記混合物に光開始剤を添加した状態で、光を照射して光重合反応する光重合工程と、を備えた導電性エラストマーの製造方法。
〔10〕のウレタンプレポリマーの製造方法によって製造されたウレタンプレポリマーと、チオール基を複数有するポリチオールとを混合して混合物を調製する混合工程と、
前記混合物を軸部材に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後の前記混合物に光を照射して光重合反応する光重合工程と、を備えた導電性ローラの製造方法。
本発明のウレタンプレポリマーは、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、及び(メタ)アクリレート基からなる群より選ばれた少なくとも1つを複数有する。そして、ウレタンプレポリマーの少なくとも一部の分子は、更に、活性水素基を有する導電剤に由来する構造を備える。なお、本願明細書において、「(メタ)アクリレート基」はアクリレート基又はメタクリレート基を意味する。
本発明のウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートに、ポリオールと、活性水素基を有する導電剤と、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、及びアクリレート基からなる群より選ばれた少なくとも1つの官能基を有する化合物とを反応させることで製造される。さらに、本発明のウレタンプレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとから合成されたNCO(イソシアネート)基末端のプレポリマーに、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、及び(メタ)アクリレート基からなる群より選ばれた少なくとも1つを有する化合物を付加するとともに、活性水素基を有する導電剤を反応させることで製造されることが、活性水素基を有する導電剤を確実に所定量反応させられる点で好ましい。
本発明のウレタンプレポリマーでは、ポリオールとポリイソシアネート等から合成されたウレタンプレポリマー(第1ウレタンプレポリマー)の末端等のイソシアネート基の少なくとも一部に、活性水素基を有する導電剤が反応して、ウレタンプレポリマーの骨格に導電剤が固定された分子が存在している。「末端等」は、イソシアネート基が存在する部位がウレタンプレポリマーの末端のみならず、その他の部分であってもよいことを意味する。
なお、本発明のウレタンプレポリマーは、上記末端等のイソシアネート基の上記一部以外には、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、及び(メタ)アクリレート基からなる群より選ばれた少なくとも1つを有する化合物が付加している。
導電剤が固定された分子では、第1ウレタンプレポリマーの末端等のイソシアネート基の全量を100モル%とした場合に、導電剤と反応したイソシアネート基の量は特に限定されない。導電剤と反応したイソシアネート基の量(ウレタンプレポリマーと結合した導電剤の量)は好ましくは1~10モル%であり、より好ましくは1.5~9モル%であり、更に好ましくは2~8モル%である。
本発明のウレタンプレポリマーでは、導電剤が固定された分子と、導電剤が固定されていない分子の割合は特に限定されない。ウレタンプレポリマー全数を100モル%とした場合に、導電剤が固定された分子は好ましくは2~10モル%であり、より好ましくは3~18モル%であり、更に好ましくは4~16モル%である。
導電剤が固定された分子と、導電剤が固定されていない分子の割合をコントロールすることで、後述する導電性エラストマーの硬度等の諸物性を調整できる。
なお、ウレタンプレポリマーの重量平均分子量をコントロールすることで、後述する導電性エラストマーの硬度等の諸物性を調整できる。
また、1分子当たりの官能基数は、1~3であることが好ましく、特に2であることが好ましい。
例えば、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート等が挙げられる。また、ポリイソシアネートは、プレポリマータイプ、アダクトタイプ、ブロックタイプ等を任意に使用できる。
芳香族イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(クルードMDI)、キシリレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂肪族イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環族イソシアネートとしては、例えば、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート(HMDI)、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。それら種々のポリイソシアネートのうちの1種または2種以上を併用したものを、上記ウレタンプレポリマーの原料として用いることが可能である。
ポリオールとして、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、PTMG(ポリテトラメチレングリコール)、PCDL(ポリカーボネートジオール)、PCL(ポリカプロラクトンポリオール)、アクリルポリオール、ゴム系ポリオール、ひまし油、ダイマー酸ポリオール等が挙げられる。ポリエステルポリオールとしては、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合反応により得られるものがある。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられ、これらを1種または2種以上併用して用いることが可能である。
多価カルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられ、これらを1種または2種以上併用して用いることが可能である。
それら種々のポリオールのうちの1種または2種以上を併用したものを、上記ウレタンプレポリマーの原料として用いることが可能である。
ポリオールの中でも、エチレンオキサイド(EO)含有のポリプロピレングリコール(PPG)が、イオン導電機構発現の観点から好適に用いられる。EO含有のポリプロピレングリコールを用いる場合には、EOユニットを多くすることで、後述する導電性エラストマーの抵抗値を低下させることが可能である。すなわち、導電性エラストマーの導電性を向上させることが可能である。
アミン系触媒としては、例えば、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン等が挙げられる。
有機金属系触媒としては、例えば、スターナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、オクテン酸鉛、オクチル酸カリウム等が挙げられる。それら種々の触媒のうちの1種または2種以上を併用したものを、上記ウレタンプレポリマーの原料として用いることが可能である。
ビニルエーテル基を有する化合物として、例えば、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等が挙げられる。
アリルエーテル基を有する化合物として、例えば、アリルアルコールやアリルエーテルグリコール、ヒドロキシエチルアリルエーテル等が挙げられる。
(メタ)アクリレート基を有する化合物として、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシブチルメタクリレート等が挙げられる。
なお、ウレタンプレポリマー中に組み込まれた導電剤の量をコントロールすることで、後述する導電性エラストマーの抵抗値を調整可能である。すなわち、導電性エラストマーの導電性を調整可能である。
活性水素基を有する導電剤は、具体的には、次の式(1)(2)挙げるカチオン成分を有することが好ましい。
R’及びR’’のうちの一方は、炭素原子数8~24のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数8~12のアルキル基であることがより好ましい。
R’及びR’’のうちの他方は、炭素原子数1~8のアルキル基、又は炭素原子数8~24のアルキル基であることが好ましい。R’及びR’’のうちの他方は、炭素原子数1~5のアルキル基であることがより好ましい。
また、nは1~20の整数が好ましく、1~5の整数であることがより好ましい。
上記式(1)で、R’=C8H17、R"=CH3、n=3であるカチオン成分が特に好ましい。
Rは、炭素原子数1~24のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~18のアルキル基であることがより好ましい。
また、nは1~20の整数が好ましく、1~10の整数であることがより好ましい。
上記式(2)で、R=C12H25、n=5
であるカチオン成分が特に好ましい。
ウレタンプレポリマーの40℃における粘度をこの範囲内とすることで、ロール形状に塗工し硬化させるまでの成形性を確保することができる。
本発明の導電性エラストマーは、上述のウレタンプレポリマーと、チオール基を複数有するポリチオールとの光重合反応硬化物を含有する。
「ポリチオール」は、ウレタンプレポリマーとエンチオール反応する化合物である。ポリチオールとしては、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル、脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオール等が挙げられる。ポリチオールを用いることで、酸素阻害の影響を受けずに成形が可能となる。
脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオールとしては、エタンジチオール、プロパンジチオール、ヘキサメチレンジチオール、デカメチレンジチオール、トリレン-2,4-ジチオール、キシレンジチオール等が挙げられる。
これらの中では、臭気が少ない点で、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル類が好ましく、具体的には、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサ(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
なお、種々のポリチオールのうちの1種または2種以上を併用したものを、上記ウレタンプレポリマーとのエンチオール反応の原料として用いることが可能である。
また、後述する導電性エラストマーを適度に硬化させ、導電性エラストマーの物性を担保する観点から、ポリチオールの添加量は、ウレタンプレポリマー100重量部に対して、好ましくは2~15重量部であり、より好ましくは2.5~12重量部であり、更に好ましくは3~10重量部である。
ポリチオールの平均官能基数は、ポリチオールのうちの官能基数が2のものと3以上のものとを併用することでコントロールすることができる。
ポリチオールの平均官能基数を上記範囲とすることで、導電性エラストマーの表面が適度に硬化する。
上記比率を上記範囲とすることで、導電性エラストマーの表面が適度に硬化する。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の化合物が挙げられる。
アセトフェノン系の光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、4-(1-t-ブチルジオキシ-1-メチルエチル)アセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オンや2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等が挙げられる。
また、チオキサントン系としては、例えば、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-(3-ジメチルアミノ-2-ヒドロキシ)-3,4-ジメチル-9H-チオキサントン-9-オンメソクロリド等が挙げられる。
光重合開始剤の含有量がこの範囲内であると、原料の重合が速やかに行われるとともに、適切な架橋密度で比較的均一な架橋構造が得られる。
「導電性ローラ(導電性弾性ローラ)」は、複写機、ファクシミリ、レーザプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置で用いられる。以下の説明における帯電ローラ14が導電性ローラに相当する。
ここで、画像形成装置の一例を図1~2を参照しつつ説明する。
画像形成装置10は、図1に示すように、感光ドラム12と、帯電ローラ14と、トナー供給装置16と、転写ローラ18と、ヒートローラ20と、加圧ローラ22と、クリーニングブレード24と、中間転写体の駆動ローラとを備えている。感光ドラム12は、画像形成装置10の内部において、矢印26の方向に回転可能に支持されている。
帯電ローラ14は、外周面において、感光ドラム12の外周面と密着した状態で回転可能に配設されている。トナー供給装置16は、感光ドラム12の回転方向において、帯電ローラ14の下流側に配設されており、トナーケース30と供給ローラ32と現像ローラ34とを有している。トナーケース30は、トナーを収容するケースであり、収容部36に、トナー38が収容されている。供給ローラ32は、収容部36において、回転可能に支持されている。そして、現像ローラ34が、外周面において、感光ドラム12の外周面、及び、供給ローラ32の外周面と密着した状態で、トナーケース30の内部において回転可能に支持されている。また、転写ローラ18は、感光ドラム12の回転方向において、トナー供給装置16の下流側に配設されており、外周面において、感光ドラム12の外周面と密着した状態で回転可能に配設されている。また、ヒートローラ20は、感光ドラム12及び、転写ローラ18等のローラから離間した状態で、転写ローラ18と概して水平な位置に、回転可能に配設されている。また、加圧ローラ22は、外周面において、ヒートローラ20の外周面と密着した状態で、ヒートローラ20の上方において回転可能に配設されている。また、クリーニングブレード24は、感光ドラム12の回転方向において、転写ローラ18の下流側に配設されており、先端部において、感光ドラム12の外周面に密着している。
帯電ローラ14の弾性層52は、上述の導電性エラストマーから形成されている。
本発明のウレタンプレポリマーの製造方法では、ポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させた後、更に、活性水素基を有する導電剤と、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、及びアクリレート基からなる群より選ばれた少なくとも1つの官能基を有する化合物を反応させることが好ましい。
「ポリイソシアネート」「ポリオール」「活性水素基を有する導電剤」「ビニルエーテル基、アリルエーテル基、及びアクリレート基からなる群より選ばれた少なくとも1つの官能基を有する化合物」については、既述の説明をそのまま引用し、説明は省略する。
本発明の導電性エラストマーの製造方法は、ウレタンプレポリマーの製造方法によって製造されたウレタンプレポリマーと、チオール基を複数有するポリチオールとを混合して混合物を調製する混合工程と、混合物に光を照射して光重合反応する光重合工程と、を備えている。
混合方法は、特に限定されず、公知の方法を幅広く適用することができる。
光の照射は、特に限定されず、光重合反応をする場合の公知の方法及び条件を幅広く適用することができる。例えば、UV照射機を用いて行うことができる。
本発明の導電性ローラの製造方法は、ウレタンプレポリマーの製造方法によって製造されたウレタンプレポリマーと、チオール基を複数有するポリチオールとを混合して混合物を調製する混合工程と、混合物を軸部材に塗布する塗布工程と、塗布工程の後の混合物に光を照射して光重合反応する光重合工程と、を備えている。
混合方法は、特に限定されず、公知の方法を幅広く適用することができる。
塗布方法は、特に限定されず、公知の方法を幅広く適用することができる。
光の照射は、特に限定されず、光重合反応をする場合の公知の方法及び条件を幅広く適用することができる。例えば、UV照射機を用いて行うことができる。
なお、参考例1、2では、本発明のウレタンプレポリマーを用いているが、チオールを用いて硬化させていない。よって、参考例1、2によって形成された導電性エラストマーは、本発明の導電性エラストマーには相当しない。参考例1、2は、本発明の導電性エラストマーと比較するための実験である。
また、参考例3は、従来のウレタンプレポリマーを用い、ローラの表面に被覆層を設けてブリードを防止した従来技術に相当する実験である。
(1)準備
SUS304製アンカー型攪拌翼を攪拌シールを用いて、1Lセパラブルフラスコにセットし、窒素フロー用の三方コック及び温度計をセットし、三方コックからオイルポンプを用いてフラスコ内を極力真空にした。
次いでヒートガンで炙り、ガラス表面に付着した水分の除去を行った。加熱したフラスコが常温に冷めるまで真空ポンプで減圧にしておき、常温になった事を確認後、三方コックより窒素を吹き込んでフラスコ内をほぼ完全に窒素置換した。
(2.1)ウレタンプレポリマーの合成
表1~2に示す配合の原料を用いてウレタンプレポリマーを合成した。なお、表に記載の各原料の配合を示す単位は、特に断らない限り、「重量部」である。
まず、フラスコに三方コックより窒素を流しながらポリイソシアネート(HMDI)を所定量仕込んだ。次いで、窒素を流し攪拌しながら、反応熱に注意してポリオールを滴下し、滴下終了後30分撹拌しながら、触媒(ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、0.3g)を添加した。
2時間反応させた後、サンプリングしてイソシアネート基含有率が、所定のNCO%であることを確認した。
次に、アクリレート化合物を表1~2の配合にしたがって滴下し、2時間反応させる。反応後、サンプリングし、イソシアネート基含有率が0.5%以下になっていることを確認し、0.5%以下の場合、反応完了とし、生成物をウレタンポリマーとした。
なお、このとき、実施例1~10は、アクリレート化合物の滴下に続いて、活性水素基を有する導電剤を滴下して上記操作を行った。一方、比較例1~3及び参考例1~3については、これらのプレポリマー合成段階の終了後、常温になったのちに、プレポリマーに導電剤を混合した。
なお、NCO%の測定法は、JIS K1603-1(プラスチック-ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法 第1部:イソシアネート基含有率の求め方)に準拠した。
所定のNCO%になっていることを確認し、窒素フローからドライエアーフローに切り替えて、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)及び活性水素基含有イオン導電剤を添加した。なお、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの水酸基、及びイオン導電剤の活性水素基の合計量がプレポリマーの末端NCOの量と等しくなるようにした。
添加後、2時間加熱攪拌を行い、NCO%が完全になくなっている事を確認して反応終了とした。
酸化防止剤、重合禁止剤等を添加し、30分攪拌し、完全に溶解したことを確認した。その後、40℃までゆっくりと冷却し、ポリ容器へ移してウレタンプレポリマーの合成を終了した。
<ポリオール>
・ポリオール-1000:ポリプロピレングリコールEO20%含有品
重量平均分子量:1000、平均官能基数:2
・ポリオール-2000:ポリプロピレングリコールEO20%含有品
重量平均分子量:2000、平均官能基数:2
・ポリオール-3000:ポリプロピレングリコールEO20%含有品
重量平均分子量:3000、平均官能基数:2
・ポリオール-10000:ポリプロピレングリコールEO20%含有品
重量平均分子量:10000、平均官能基数:2
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
<ポリイソシアネート>
・HMDI:ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート
・導電剤A
下記式で示される化合物である。但し、R’=C8H17、R"=CH3、n=3である。
下記式で示される化合物である。但し、R=C12H25、n=5である。
Li+ClO4 -/PPG希釈液である。
下記式で示される化合物である。
比較例3及び参考例3のウレタンプレポリマーには、導電剤Aは固定されていない。すなわち、比較例3及び参考例3のウレタンプレポリマーには、導電剤Aに由来する構造はない。
(1)配合
上記方法で合成したウレタンプレポリマーに光開始剤を添加し、よく攪拌した。
次いで、ウレタンプレポリマーの重合性基に相当する量のチオールを添加し、よく攪拌して混合物を得た。
なお、混合物の粘度が高い場合は、予め60℃程度まで加熱した。
・チオールA
官能基数1、メルカプトプロピオン酸オクチル
・チオールB
官能基数2、ブタンジオールビスチオプロピオネート
・チオールC
官能基数3、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート
・チオールD
官能基数4、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート
・チオールE
官能基数6、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)
硝子板上にPETフィルム(t=75μm)を敷き、厚さ1.5mmのスペーサーを用いて、混合物をスペーサーに囲まれた中に注ぎ入れ、上面にもPETフィルムを重ねて厚みを整えた。そして、高圧水銀ランプにて100mW/cm2以上の出力で、3000mJ/cm2相当照射し、シート状サンプルを得た。
(1)硬度
硬度は、JIS K 6253に基づいて測定した。
(2)導電性
導電性は、体積抵抗率により評価した。体積抵抗率は、具体的には以下のように測定した。A4サイズで肉厚2mmのローラ上に形成したサンプルを平板状に置き、両端に各500gfを荷重した。R8340a(測定装置の名称)の端子を接続し、100V×10sec印加時の平均抵抗値を測定した。測定条件を以下に示す。
測定器 ADVANTEST社製 R8340a
印加電圧 100V
印加時間 10sec
測定環境 22℃ 55%RH
荷重 500gf(両端にそれぞれ荷重)
測定方法 平板測定法
なお、体積抵抗率(LogΩ)は、値が小さいほど、導電性が高いことを示しており、好ましくは3~11(LogΩ)であり、より好ましく5~9(LogΩ)である。
ブリード特性は、以下のようにして評価した。サンプルを感光体へ1kgfの荷重で当接させ、60℃*95%RHの条件で10日間保管テストを行い、その後、感光体表面を観察した。
◎:ブリードが観察されなかった。
○:ブリードがほとんど観察されなかった。
×:ブリードが観察された。
(4)表面性の評価
表面性は、面粗度計を用いて以下の条件により評価した。
測定器 小坂研究所社製 Surfcorder SE-2300
測定条件 カットオフ 0.8mm / Length 2.5mm / 速度 0.1mm
(1)配合
上記方法で合成したウレタンプレポリマーに光開始剤を添加し、よく攪拌した。次いで、ウレタンプレポリマーの重合性基に相当する表1、2に記載のチオールを添加し、よく攪拌した。混合物の粘度が高い場合は予め60℃程度まで加熱した。
(2)成形
金属製の軸を用意した。軸両端を回転治具でチャッキングし、軸を回転させながら、配合された原料を軸の片側端部を起点に必要な長さ(L寸、250mm)まで塗布した。
塗布完了後、照射機(高圧水銀ランプ)により原料にUVを照射し、硬化させた。
なお、照射条件は、100mW/cm2以上で3000mJ/cm2相当とした。
(3)加工
硬化物の両端を切断して必要寸法を残し、硬化物表面を円筒研削機を用い研磨して、ローラ形状とした。
なお、参考例3では、更に、ローラの外周をHARDIC RC5712(DIC製)を5μm程度の厚みになるようにドクターブレードを用いてコーティングし、上記照射条件と同様に回転させながらUV照射し、硬化させた。
画像評価は、以下のようにした。
各ローラを図1に示した画像形成装置にセットして、画像評価を行った。導電性ローラにブリードがあると、他のローラにブリードした低分子量物質が付着して画像に滲み、白抜け、黒ポチ等の現象が観察される。この画像の状態によって評価した。
評価結果を表3、4に示す。
実施例1~10は、いずれも導電性ローラに要求される硬度を有していた。すなわち、実施例1~10は、硬度が20~70の範囲内であった。なお、参考例2では、硬度が高すぎて導電性ローラの要求性能を満足しなかった。
(2)導電性
実施例1~10は、いずれも体積抵抗率が十分に低かった。すなわち、実施例1~10は、いずれも導電性ローラに要求される導電性を有していた。
(3)ブリード特性
実施例1~10は、いずれも導電剤のブリードが抑制されていた。実施例1~10では、導電剤A、導電剤B、導電剤Aと導電剤Bの組合せが用いられ、ウレタンプレポリマーの骨格中に導電剤が組み込まれている。従って、導電剤が固定化され、導電剤のブリードが抑制された。
これに対して、比較例1では、活性水素基のない導電剤Cを用いている。よって、比較例1では、導電剤が遊離した状態で存在するため、導電剤がブリードした。
比較例2では、活性水素基のない導電剤Dを用いている。よって、比較例2では、導電剤が遊離した状態で存在するため、導電剤がブリードした。
比較例3では、ウレタンプレポリマーを合成した後に、導電剤Aを別途添加している。比較例3のウレタンプレポリマーには、導電剤Aが固定されていない。つまり、比較例3では、導電剤が遊離した状態で存在している。このため、比較例3では、導電剤がブリードした。
なお、従来技術の参考例3では、比較例3と同程度の配合でローラ状に成形後に表面にハードコートを施すことで導電剤のブリードの抑制効果はあるものの、実施例1~10に比べ、導電性や表面性が悪化し、結果として画像特性が悪くなった。
実施例1~10は、いずれも表面性が良好であった。これは、実施例1~10では、いずれもチオール化合物が存在するために、チオール/エン硬化(チオール化合物とエン化合物の硬化)が起きて良好な表面性を保ちつつ硬化したためである。チオール化合物が存在することで活性ラジカルが再生し、逐次反応が進行する。なお、チオール化合物及びエン化合物が多官能であるので硬化が進行している。
一方、参考例1、2では、表面の硬化が不十分となり、表面性が良くなかった。これは、参考例1、2では、チオール化合物が存在しないために、チオール/エン硬化が起きなかったためである。UV硬化では、(メタ)アクリル基の重合が連鎖的な反応として進行しており、この点において、チオール/エン硬化の機構とは相違している。参考例1、2では、空気(酸素)の存在により、硬化し難いという性質があり、空気(酸素)と触れている個所では硬化不良を生じた。
これらの表面性の評価から、導電性エラストマーを作製するためには、チオール化合物が必要であることが分かる。
(5)画像評価
実施例1~10では、比較例1~3と同様に、いずれも滲みのない優れた画像が得られた。ウレタンプレポリマーの骨格中に導電剤を組み込み、チオール化合物を用いることで、画像の滲みを抑制できた。
これに対して、参考例1~3では、画像に滲みが生じた。
○:滲みのない優れた画像が得られた。
△~×:画像に滲みが生じた。
本実施例によれば、イオン導電剤を後添加した場合と比較して、抵抗値は同等レベルであるが、ブリードの抑制効果は大きい。また、本実施例によれば、表面にコーティングする必要がなく、製造コストの面でも有利である。
12…感光ドラム
14…帯電ローラ
16…トナー供給装置
18…転写ローラ
20…ヒートローラ
22…加圧ローラ
24…クリーニングブレード
30…トナーケース
32…供給ローラ
34…現像ローラ
36…収容部
38…トナー
50…軸部
52…弾性層
60…記録媒体
Claims (8)
- ビニルエーテル基、アリルエーテル基、及び(メタ)アクリレート基からなる群より選ばれた少なくとも1つを1分子中に複数有し、NCO基を有しないウレタンプレポリマーであって、
ウレタンプレポリマーは、複数の分子から構成され、
ウレタンプレポリマーの少なくとも一部の分子は、更に、活性水素基を有するイオン導電剤に由来する構造を備えるウレタンプレポリマーと、
チオール基を複数有するポリチオールと、の光重合反応硬化物を含有する導電性エラストマー。 - 前記ポリチオールの平均官能基数が2.1~6.0である請求項1に記載の導電性エラストマー。
- 前記ポリチオールが有するチオール基の全当量数の、前記ウレタンプレポリマーが有するビニルエーテル基、アリルエーテル基、及び(メタ)アクリレート基の全当量数に対する比率が0.7~1.8である請求項1又は2に記載の導電性エラストマー。
- 前記ポリチオールの量が、
前記ウレタンプレポリマーを100重量部とした場合に2~15重量部の割合である請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性エラストマー。 - 請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性エラストマーからなる弾性層を備えた導電性ローラ。
- 請求項5に記載の導電性ローラを備えた画像形成装置。
- NCO基を有しないウレタンプレポリマーの製造方法であって、
ポリイソシアネートと、
ポリオールと、
活性水素基を有するイオン導電剤と、
ビニルエーテル基、アリルエーテル基、及び(メタ)アクリレート基からなる群より選ばれた少なくとも1つの官能基を有し、ヒドロキシル基を有する化合物とを
反応させるウレタンプレポリマーの製造方法によって製造されたウレタンプレポリマーと、チオール基を複数有するポリチオールとを混合して混合物を調製する混合工程と、
前記混合物に光開始剤を添加した状態で、光を照射して光重合反応する光重合工程と、を備えた導電性エラストマーの製造方法。 - NCO基を有しないウレタンプレポリマーの製造方法であって、
ポリイソシアネートと、
ポリオールと、
活性水素基を有するイオン導電剤と、
ビニルエーテル基、アリルエーテル基、及び(メタ)アクリレート基からなる群より選ばれた少なくとも1つの官能基を有し、ヒドロキシル基を有する化合物とを
反応させるウレタンプレポリマーの製造方法によって製造されたウレタンプレポリマーと、チオール基を複数有するポリチオールとを混合して混合物を調製する混合工程と、
前記混合物を軸部材に塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後の前記混合物に光を照射して光重合反応することにより、導電性エラストマーからなる弾性層を形成する光重合工程と、を備えた導電性ローラの製造方法。
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