以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
(容器の全体構成および製造方法)
図1は本発明の一実施形態に係る容器の斜視図である。本実施形態に係る容器100は、容器本体110と、蓋体130とを含む。容器本体110は、凹部111と、凹部111の周縁から外方に延出するフランジ部112とを含む。蓋体130は、凹部111の開口を覆うフィルム状の部材であり、フランジ部112に形成される接合領域140でヒートシールまたは超音波シールなどを用いて容器本体110に接合されることによって凹部111との間に内部空間SPを形成する。なお、図1では容器100の平面形状が円形である例が示されているが、他の例において容器100の平面形状は矩形など任意の形状でありうる。蓋体130の非接合領域、すなわち接合領域140に囲まれた内側で内部空間SPに面する領域には、後述するような脱気機構150が設けられる。
図2は、本発明の一実施形態の第1の例に係る容器の部分断面図である。図示された例において、容器本体110は、基材層114A、表面下層114Bおよび表面層114Cを含む積層体114を、真空成形または圧空成形などによって凹部111およびフランジ部112を含む形状に成形したものである。基材層114Aは、容器本体110の外側に位置し、容器本体110の形状の保持に必要とされる剛性を発揮する。表面下層114Bは、基材層114Aと表面層114Cとの間にあり、それぞれの層に接合されている。表面層114Cは、容器本体110の内側、すなわち内部空間SPに面する側に位置し、フランジ部112に形成される接合領域140に面する。
ここで、積層体114の基材層114Aおよび表面下層114Bは、例えばオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂で形成される。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、およびポリエチレンが例示される。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示される。基材層114Aおよび表面下層114Bとの間では、例えば剛性が異なる。基材層114Aには、剛性を向上させるためにタルクなどの無機フィラーが添加されてもよい。
一方、積層体114の表面層114Cは、例えばエチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体またはスチレングラフトプロピレン樹脂の少なくともいずれかを、ポリプロピレン系樹脂にブレンドして得られた樹脂組成物で形成される。この場合、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体またはスチレングラフトプロピレン樹脂は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは10質量部から50質量部、特に好ましくは15質量部から40質量部程度、添加すればよい。
なお、図示された例において積層体114は基材層114A、表面下層114Bおよび表面層114Cの3つの層を含むが、他の例において積層体114は追加の層を含んでもよい。例えば、積層体114は、高い剛性が必要とされる場合に、複数の基材層と、基材層同士を接着する接着層とを含んでもよい。接着層は、例えばウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、またはエチレン酢酸ビニル(EVA)などで形成される。また、積層体114は、酸素などを遮断するガスバリア層を含んでもよい。ガスバリア層は、例えばエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、またはポリアクリロニトリル(PAN)などで形成される。
蓋体130は、外層131Aおよびシール層131Bを含むフィルム状の積層体131からなる。外層131Aは、蓋体130の表側、すなわち容器本体110に面しない側に位置し、蓋体130に必要とされる柔軟性や引張強度を発揮する。外層131Aは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、または二軸延伸ナイロンフィルム(O-Ny)などで形成される。一方、シール層131Bは、蓋体130の裏側、すなわち容器本体110に向けられる側に位置し、フランジ部112に形成される接合領域140に面する。シール層131Bは、例えばランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、またはポリエチレンなどの樹脂組成物で形成される。第1の例において、外層131Aとシール層131Bとは互いに接合されている。なお、他の例では、積層体131にも追加の層が含まれてもよい。
ここで、第1の例において、積層体114の表面層114Cの凝集強度は、接合領域140における蓋体130と容器本体110との間の接合強度よりも弱く、積層体114および積層体131を構成する表面層114C以外の各層の凝集強度よりも弱く、また積層体114および積層体131の各層の間の層間接合強度よりも弱い。つまり、表面下層114Bを第1層、表面層114Cを第2層、シール層131Bを第3層、外層131Aを第4層とした場合に、第2層の凝集強度は、蓋体130と容器本体110との間の接合強度、第1層、第3層および第4層の凝集強度、ならびに第1層と第2層との間および第3層と第4層との間の層間接合強度よりも弱い。これによって、後述するように、第1の例では表面層114Cを凝集層とすることによって容器100を容易に開封することができる。なお、本明細書において、凝集強度は、積層体の各層を構成する樹脂を結合させている分子間力(凝集力)によって発揮される強度を意味する。
さらに、第1の例では、図2に示されるように、接合領域140の凹部111側の端縁部に、第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122が形成される。第1樹脂溜まり部121は、積層体114の表面下層114Bおよび表面層114Cを形成する樹脂からなる瘤状断面を有する。第2樹脂溜まり部122は、蓋体130のシール層131Bを形成する樹脂からなり、第1樹脂溜まり部121よりも凹部111側に位置する瘤状断面を有する。図示されているように、表面層114Cは、第1樹脂溜まり部121の表面に沿って、かつ第1樹脂溜まり部121と第2樹脂溜まり部122との隙間を通るように形成される。以下の説明では、第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122を総称して樹脂溜まり部120ともいう。
次に、容器100の開封動作について説明する。ユーザーは、フランジ部112よりも外側に延出した蓋体130の端部を摘持し、ここから図2(A)に示すように蓋体130を引き剥がすことによって容器100の開封を開始することができる。上述のように、表面層114Cの凝集強度は、接合領域140における蓋体130と表面層114Cとの間の接合強度、積層体114および積層体131の表面層114C以外の各層の凝集強度、ならびに積層体114および積層体131の各層の間の層間接合強度よりも弱い。従って、ユーザーが蓋体130を引き剥がすと、接合領域140で蓋体130に引っ張られた表面層114Cが凝集破壊される。これによって、表面層114Cの一部が蓋体130とともに引き剥がされ、表面層114Cの残りの部分は表面下層114B側に残る。さらにユーザーが蓋体130を引き剥がすと、図2(B)に示すように、樹脂溜まり部120で表面層114Cの凝集破壊が途切れ、そこから先は蓋体130だけが引き剥がされる。これは、樹脂溜まり部120において、表面層114Cの凝集破壊が、第1樹脂溜まり部121の形状に沿って進行するためである。第1樹脂溜まり部121の表面と第2樹脂溜まり部122の表面とが互いに離反する接合領域140の端縁140E付近で表面層114Cは両側から引っ張られて破断し、蓋体130側から離れる。
第1の例に係る容器100は、上記のような手順によって開封される。積層体114の表面層114Cの凝集強度を弱めれば、開封時にユーザーが蓋体130を引き剥がす力が小さくて済み、開封が容易になる。その一方で、開封前、容器本体110と蓋体130とが互いに接合された状態では、内部空間SPの内圧は接合領域140に作用する。接合領域140における蓋体130と容器本体110との間の接合強度は、表面層114Cの凝集強度よりも強くすることが可能であるため、上記のように表面層114Cの凝集強度を弱めることによって開封を容易にした場合であっても、蓋体130と容器本体110との間の接合強度は強いままにして高い内圧に対抗することができる。加えて、接合領域140では第1樹脂溜まり部121の凹部111側の根元付近に応力が集中するため、接合領域140は樹脂溜まり部が形成されない場合よりも高い内圧に対抗することが可能である。このようにして、第1の例に係る容器100では、開封性と耐内圧性とを両立させることができる。
図3は、図2に示す容器の樹脂溜まり部の形成方法を示す図である。図3に示されるように、第1の例に係る容器100の製造工程は、環状シール盤601を用いてヒートシールで蓋体130と容器本体110との間を接合する工程を含む。ここで、環状シール盤601は、容器本体110のフランジ部112に形成される接合領域140の内周側、すなわち凹部111側の端縁部に面する膨出部602と、膨出部602から外側に向かって広がる傾斜面603とを含む。なお、膨出部602および傾斜面603を含む環状シール盤601とは別に、接合領域140の外周側を接合するために、フランジ部112に対してほぼ平行な平坦面604を含む追加の環状シール盤605が配置されてもよい。
上記の製造工程では、図中の上側から環状シール盤601が下降してきたときに、膨出部602が他の部分よりも先に蓋体130に当接される。その後、傾斜面603が順次、蓋体130に当接される。膨出部602および傾斜面603が当接された部分では蓋体130および容器本体110を形成する樹脂に環状シール盤601から熱が加えられ、ヒートシールによって蓋体130と容器本体110との間が接合される。このとき、接合領域140の内周側の端縁部では、加えられた熱によって溶融した容器本体110の表面下層114Bおよび表面層114C、ならびに蓋体130のシール層131Bを形成する樹脂が、膨出部602によって凹部111側に押し出されて第1樹脂溜まり部121および第2樹脂溜まり部122を形成する。
図4は、本発明の一実施形態の第2の例に係る容器の部分断面図である。第2の例において、容器本体110および蓋体130の形状は上記の第1の例と同様である。蓋体130は、接合領域140で容器本体110に接合される。容器本体110は、基材層114A、表面下層114Bおよび表面層214Cを含む積層体214からなる。このうち表面層214Cは、基材層114Aおよび表面下層114Bと同様に、例えばオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂で形成される。一方、蓋体130は、外層131Aおよびシール層231Bを積層体231からなる。このうちシール層231Bは、例えばスチレングラフトプロピレン樹脂、または接着性ポリオレフィン樹脂などで形成される。
上記のような積層体214および積層体231の構成によって、第2の例では、シール層231Bの凝集強度が、接合領域140における蓋体130と容器本体110との間の接合強度よりも弱く、積層体214および積層体231のシール層231B以外の各層の凝集強度よりも弱く、また積層体214および積層体231の各層の間の層間接合強度よりも弱くなる。つまり、表面下層114Bを第1層、表面層214Cを第2層、シール層231Bを第3層、外層131Aを第4層とした場合に、第3層の凝集強度は、蓋体130と容器本体110との間の接合強度、第1層、第2層および第4層の凝集強度、ならびに第1層と第2層との間および第3層と第4層との間の層間接合強度よりも弱い。
さらに、第2の例でも、接合領域140の凹部111側の端縁部に、第1樹脂溜まり部221および第2樹脂溜まり部222が形成される。第1樹脂溜まり部221は、容器本体110の表面下層114Bおよび表面層214Cを形成する樹脂からなる瘤状断面を有する。第2樹脂溜まり部222は、蓋体130のシール層231Bを形成する樹脂からなり、第1樹脂溜まり部221よりも凹部111側に位置する瘤状断面を有する。以下の説明では、第1樹脂溜まり部221および第2樹脂溜まり部222を総称して樹脂溜まり部220ともいう。
次に、第2の例に係る容器の開封動作について説明する。ユーザーが図4(A)に示すように蓋体130を引き剥がすことによって容器の開封が開始される。上述のように、シール層231Bの凝集強度は蓋体130と容器本体110との間の接合強度、シール層231B以外の各層の凝集強度、ならびに積層体214および積層体231の各層の間の層間接合強度よりも弱いため、ユーザーが蓋体130を引き剥がすと、接合領域140に対応する位置で容器本体110に接合されたシール層231Bが凝集破壊される。これによって、蓋体130はシール層231Bの一部を容器本体110の表面層214C側に残したまま引き剥がされる。さらにユーザーが蓋体130を引き剥がすと、図4(B)に示すように、樹脂溜まり部220でシール層231Bの凝集破壊が途切れ、そこから先はシール層231Bの全体が蓋体130とともに引き剥がされる。これは、樹脂溜まり部220において、シール層231Bの凝集破壊が進行する向きと交差するように第2樹脂溜まり部222が形成されているためである。第1樹脂溜まり部221の表面と第2樹脂溜まり部222の表面とが互いに離反する接合領域140の端縁140E付近でシール層231Bは両側から引っ張られて破断し、容器本体110側から離れる。
上記のような第2の例に係る容器でも、シール層231Bの凝集強度を弱めることによって開封を容易にしつつ、蓋体130と容器本体110との間の接合強度は強いままにして高い内圧に対抗することができる。加えて、接合領域140では第1樹脂溜まり部121の凹部111側の根元付近に応力が集中するため、接合領域140は樹脂溜まり部が形成されない場合よりも高い内圧に対抗することが可能である。第2の例に係る容器も、上記で図3を参照して説明したような製造方法で製造することができる。
図5は、本発明の一実施形態の第3の例に係る容器の部分断面図である。本変形例に係る容器は、図1の例と同形状の容器本体110と、蓋体130とを含む。蓋体130は、接合領域140で容器本体110に接合される。容器本体110は、基材層314Aおよび表面層314Bを含む積層体314からなる。基材層314Aは、容器本体110の外側に位置し、容器本体110の形状の保持に必要とされる剛性を発揮する。表面層314Bは、容器本体110の内側、すなわち内部空間SPに面する側に位置する。接合領域140において、蓋体130は積層体314の表面層314Bに接合される。接合領域140における蓋体130と表面層314Bとの間の接合強度は、積層体314における基材層314Aと表面層314Bとの間の層間接合強度よりも強い。
積層体314の基材層314Aは、例えばオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、およびポリエステル系樹脂からなる群の少なくともいずれかを含む樹脂で形成される。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、およびポリエチレンが例示される。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示される。基材層314Aには、剛性を向上させるためにタルクなどの無機フィラーが添加されてもよい。表面層314Bは、例えばポリオレフィン系樹脂で形成される。ポリオレフィン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(HPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)、およびブロックポリプロピレンのようなポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)、および低密度ポリエチレン(LDPE)のようなポリエチレン系樹脂、ならびに直鎖状エチレン-α-オレフィン共重合体などが例示される。なお、図示された例において積層体314は基材層314Aおよび表面層314Bの2つの層を含むが、図2を参照して説明した例と同様に、他の例において積層体314は追加の層を含んでもよい。
さらに、第3の例では、容器本体110のフランジ部112に、接合領域140に沿う切り込み315が形成される。切り込み315は、接合領域140よりも凹部111側のフランジ部112で、少なくとも積層体314の表面層314Bに形成される。後述するように、切り込み315は、表面層314Bの欠落部の例である。図示された例では切り込み315がちょうど表面層314Bだけを貫通して基材層314Aには達していないが、切り込み315は基材層314Aの一部に達していてもよい。あるいは、切り込み315は表面層314Bを貫通せず、表面層314Bが容器100の開封時に容易に破断できる程度の厚さで残されてもよい。なお、切り込み315の断面形状は図示された例ではV字形であるが、U字形またはI字形などの他の形状であってもよい。
次に、第3の例に係る容器の開封動作について説明する。ユーザーが図5(A)に示すように蓋体130を引き剥がすことによって容器の開封が開始される。上述のように、接合領域140における蓋体130と表面層314Bとの間の接合強度は、積層体314の基材層314Aと表面層314Bとの間の層間接合強度よりも強い。従って、上記のようにユーザーが蓋体130を引き剥がすと、積層体314の端部に近い接合領域140で蓋体130に接合された表面層314Bが蓋体130とともに引き剥がされる一方で、積層体314の基材層314Aと表面層314Bとの間は層間剥離する。さらにユーザーが蓋体130を引き剥がすと、図5(B)に示すように、切り込み315で表面層314Bが蓋体130から離れ、そこから先は蓋体130だけが引き剥がされる。これは、上述のように、切り込み315が表面層314Bを貫通して形成されているか、または切り込み315によって表面層314Bが容易に破断できる程度の厚さにされているためである。
上記のような第3の例に係る容器では、積層体314の基材層314Aと表面層314Bとの間の層間接合強度を弱めることによって開封を容易にできる。一方、開封前、容器本体110と蓋体130とが互いに接合された状態では内部空間SPの内圧は接合領域140の凹部111側の端縁部に集中するため、切り込み315を接合領域140の端縁部から離隔させることによって、集中した内圧が切り込み315を起点にして積層体114を層間剥離させるように作用することが防止される。それゆえ、上記のように層間接合強度を弱めることによって開封を容易にした場合であっても、蓋体130と表面層314Bとの間の接合強度を強くすることによって高い内圧に対抗することが可能である。
本実施形態に係る容器は、例えば上記で説明した例のような構造によって、内部での水蒸気の発生に耐えうる程度のパンク圧強度を有する。ここで、パンク圧強度は、破袋時の最大圧力であり、例えば容器本体と蓋体との間の内部空間SPに所定の送風量で空気を送入することによって測定できる。容器のパンク圧強度は、例えば0.001MPa以上であり、好ましくは0.005MPa以上であり、より好ましくは0.01MPa以上、さらに好ましくは0.02MPa以上、よりさらに好ましくは0.03MPa以上、特に好ましくは0.05MPa以上である。また、容器のパンク圧強度の上限は、容器の薄肉化の観点から、例えば0.120MPa以下であり、好ましくは0.10MPa以下であり、より好ましくは0.08MPa以下である。パンク圧強度は、JIS Z0238「8.容器の破裂強さ試験」に準拠し測定することができる。その際、バケットに収納された容器100の内部空間SPに0.6L/minの送風量で空気を流入させる。破袋強度試験機としては、例えばサン科学社製305-BPを用いることができる。なお、本実施形態において、容器の内部空間SPの容積は例えば20cm3以上であり、好ましくは50cm3以上であり、より好ましくは130cm3以上であり、特に好ましくは300cm3以上である。また、内部空間SPの容積は、例えば2000cm3以下であり、好ましくは1500cm3以下であり、より好ましくは1200cm3以下である。
また、本実施形態に係る容器は、例えば上記で説明した例のような構造によって、パンク圧強度を高めても開封性を維持することができる。具体的には、開封時において蓋体を引き剥がす力の最大値である開封強度は、例えば2.5kgf以下であり、好ましくは2.0kgf以下であり、より好ましくは1.6kgf以下である。開封強度の下限は特に限定されないが、意図されない開封を防止する観点から、例えば0.1kgf以上である。開封強度は、蓋材の開封起点部(タブ部)に測定用の治具を取り付け、蓋材の開封開始側を容器本体のフランジ面に対して135度の角度で引っ張り、その引張強度の最大値を測定する。開封強度測定装置としては、IMADA製プッシュプルゲージを使用することができる。
既に述べたように、環境対応のために、機能性が確保できる範囲で容器を薄肉化して使用樹脂量を削減することが望ましい。本実施形態に係る容器では、容器本体の厚みが例えば3mm以下であり、好ましくは1.5mm以下であり、より好ましくは1.0mm以下である。また、機能性を確保する観点から、容器本体の厚みは例えば0.1mm以上であり、好ましくは0.3mm以上であり、より好ましくは0.4mm以上である。より具体的には、上記の第1および第2の例のような樹脂溜まりを有する容器の場合、容器本体の厚みは1.5mm以下にすることが可能である。この場合において、容器本体の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.8mm以下であり、さらに好ましくは0.6mm以下である。第3の例の場合、積層体がバリア層を含む場合は、切り込みがバリア層に達するのを防ぐために容器本体が上記の厚みよりも厚くなりうるが、例えば後述するようにバリア層を層厚中心から偏心させる構成によって、第1および第2の例と同様の容器本体の厚みが実現できる。
(脱気機構の構成)
図6Aおよび図6Bは、本発明の一実施形態で容器の蓋体に設けられる脱気機構の第1の例を示す図である。図1に示す容器100における脱気機構150は、この第1の例に係る脱気機構150Aである。脱気機構150Aは、蓋体130に形成された開孔151と、開孔151を覆う封止フィルム152とを含む。図6Aの例では封止フィルム152が開孔151の外側に熱溶着または接着剤で接着され、図6Bの例では封止フィルム152が開孔151の内部空間SP側に熱溶着または接着剤で接着される。例えば封止フィルム152を蓋体130よりも低強度のフィルムで形成することによって、内容物の加熱によって発生した水蒸気のために内部空間SPの圧力が上昇した場合には、封止フィルム152を蓋体130の他の部分や接合領域140が破壊されるよりも先に破断させ、安定的に水蒸気を排出することができる。
図7A、図7Bおよび図8は、本発明の一実施形態で容器の蓋体に設けられる脱気機構の第2の例を示す図である。図示された例において、脱気機構150Bは、蓋体130に形成された非貫通の切り込み153を含む。図7および図7Aの例では切り込み153が外側から形成され、図7Bの例では切り込み153が内部空間SP側から形成される。この場合、内容物の加熱によって発生した水蒸気のために内部空間SPの圧力が上昇すると、切り込み153のために蓋体130の強度が低下している部分を蓋体130の他の部分や接合領域140が破壊されるよりも先に破断させ、安定的に水蒸気を排出することができる。あるいは、図8に示されるように内部空間SP側からの切り込み153を接合領域140に近い位置に形成し、内部空間SPの圧力が上昇した場合には切り込み153から蓋体130を形成する積層体の層間接着(例えば、図2の例における積層体131の外層131Aとシール層131Bとの間の接着)を破壊させて、接合領域140を越えた蓋体130の端部から水蒸気を排出してもよい。
図9、図10Aおよび図10Bは、本発明の一実施形態で容器の蓋体に設けられる脱気機構の第3の例を示す図である。図示された例では、蓋体130が、2つの部分130A,130Bからなる。これらの部分はヒートシール、超音波シールまたは接着剤を用いたシール部132によって互いに接合されるが、脱気機構150Cの部分ではシール部132に図10Aのような未接合部154、または図10Bのような切り込み155が設けられる。いずれの場合も、脱気機構150Cでは未接合部154または切り込み155のためにシール部132の接合幅が狭くなっている。従って、内容物の加熱によって発生した水蒸気のために内部空間SPの圧力が上昇すると、未接合部154または切り込み155のためにシール部132の接合幅が狭くなっている脱気機構150Cの部分を蓋体130の他の部分や接合領域140が破壊されるよりも先に破断させ、安定的に水蒸気を排出することができる。
他の例として、脱気機構は、蓋体に接して配置される発熱要素を含んでもよい。発熱要素は、例えば電子レンジのマイクロ波が集中して発熱する要素であり、例えば蓋体の少なくとも一部に接合される金属箔や金属蒸着部を有するフィルムなどの部材であってもよいし、蓋体に塗布される例えば金属粉を含有する塗料であってもよいし、蓋体に金属蒸着を行ったものでもよい。このような発熱要素としては、例えばアルミニウム、ニッケル、クロムを用いることができる。
既に述べたように、本実施形態に係る容器は、内部での水蒸気の発生に耐えうる程度のパンク圧強度を有する。このような容器において、上記のような脱気機構を設けることによって、容器内に水蒸気を充満させた状態で高圧を維持し、調理の効率を向上させることができる。例えば、容器の圧力を0.0196MPaにした場合、水蒸気が充満した容器内の温度は100℃ではなく102.5℃まで上昇するため、加熱時間を約17%短縮することができる。
(積層体の構成例)
次に、本発明の一実施形態において容器本体を形成する積層体の構成例について説明する。以下の説明において、積層体の各層を形成する樹脂組成物の主成分は、その層を形成している樹脂組成物の中で最も含有率が多い樹脂成分を意味する。従って、樹脂組成物は主成分に加えて他の成分を含んでもよい。主成分は、例えばIR法によって確認することができる。以下の説明において、積層体の各層を形成する樹脂組成物の成分の含有率は、別途記載がない限りその層を形成する樹脂組成物全体に対する質量%で表記する。
また、以下の説明において、ポリエチレン系樹脂中の全炭素量に対する植物由来の炭素の割合は、バイオマス度と呼ばれ、ポリエチレン系樹脂中に含まれる14C(炭素の放射性同位体)の濃度を測定することによって求められる。すなわち、大気中には一定割合の14Cが含まれる一方、石油由来の樹脂の炭素には14Cが含まれていないことから、ポリエチレン系樹脂中に含まれる14Cの濃度を測定することによってバイオマス度を求めることができる。具体的に、ポリエチレン系樹脂中の炭素が全て石油由来である場合にはバイオマス度は0%となり、ポリエチレン系樹脂中の炭素が全て植物由来である場合にはバイオマス度は100%となる。バイオマス由来のポリエチレン系樹脂の配合割合は、例えばこの方法で確認することができる。具体的には、例えば、ASTM D6866のB法により確認することができる。
図11は、積層体の第1の構成例を示す模式的な断面図である。図示された例において、積層体10は、表面層11と、第1の基材層12,15と、第2の基材層13,14と、バリア層16と、接着層17とを有する。積層体10では、表面層11、第1の基材層12(表面下層)、第2の基材層13、接着層17、バリア層16、接着層17、第2の基材層14、第1の基材層15がこの順で積層されている。積層体10では、例えば必要とされる剛性やバリア性に応じて追加の層が含まれてもよく、またいずれかの層が省略されてもよい。例えば、他の例では、上記の第1の基材層または第2の基材層のいずれかが省略され、表面層と、単一の基材層と、接着層と、バリア層と、接着層と、単一の基材層とがこの順で積層されてもよい。また、さらに他の例では、第1の基材層12,15と第2の基材層13,14とが同じ樹脂組成で形成されてもよい。積層体10は、容器を構成するのに適した厚み、具体的には例えば0.2mm以上、1.4mm以下の厚みで形成されるが、この例には限定されない。積層体10を図2に示された積層体114に対応付けると、表面層11は表面層114Cに、第1の基材層12は表面下層114Bに、第2の基材層13から第1の基材層15までの層は基材層114Aに、それぞれ対応する。以下、各層の構成について説明する。
表面層11は、積層体10が容器に成形されたときに、ヒートシールなどによって蓋体に接合される層である。表面層11は、例えばポリオレフィン系樹脂で形成される。具体的には、表面層11を形成するポリオレフィン系樹脂は、高密度ポリエチレン(HDPE)もしくは低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリエチレン系樹脂、またはランダムポリプロピレン(RPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)またはホモポリプロピレン(HPP)などのポリプロピレン系樹脂の少なくともいずれかを含有する。表面層11は、例えばその用途に応じて、ポリエチレン系樹脂を含有しポリプロピレン系樹脂を含有しなくてもよく、ポリプロピレン系樹脂を含有しポリエチレン系樹脂を含有しなくてもよく、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂の両方を含有してもよい。
上記のような表面層11において、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂は、上記に例示した各種のポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂のいずれか一種によって構成されてもよく、あるいは二種以上が併用されてもよい。表面層11がポリエチレン系樹脂を含有する場合、ポリエチレン系樹脂の少なくとも一部が、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂(バイオポリエチレン)であってもよい。また、表面層11がポリプロピレン系樹脂を含有する場合、ポリプロピレン系樹脂の少なくとも一部が、バイオマス由来のポリプロピレン系樹脂(バイオポリプロピレン)であってもよい。バイオポリプロピレンは、例えば、非可食植物であるソルゴーの糖蜜を微生物で発酵させて中間素材を生成し、脱水することにより得ることができる。
また、表面層11を形成するポリオレフィン系樹脂は、直鎖状エチレン-α-オレフィン共重合体などを含んでもよい。限定的でない例として、容器の開封時に表面層11が破断される場合、表面層11の厚みを10μm以上40μm以下にすることが好ましく、10μm以上30μm以下にすることがより好ましい。
第1の基材層12,15は、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を含有する樹脂組成物で形成される。ポリプロピレン系樹脂としては、例えばホモポリプロピレン(HPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)が使用でき、ホモポリプロピレン(HPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)であることが好ましく、用途に応じこれらのいずれか一種、または二種以上を併用することができる。ポリエチレン系樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が使用でき、高密度ポリエチレンまたは低密度ポリエチレンであることが好ましく、用途に応じこれらのいずれか一種、または二種以上を併用することができる。ポリプロピレン系樹脂と、ポリエチレン系樹脂の配合比率(質量比)は、例えば95:5~60:40であり、92:10~75:25であることが好ましく、87:13~82:17であることがより好ましい。
例えば、表面層11の主成分をポリエチレン系樹脂とし、第1の基材層12の主成分をポリプロピレン系樹脂とすることによって、表面層11と第1の基材層12との間を剥離し易くすることができる。第1の基材層12は、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂の他、各種ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、これらの混合物などを含有してもよい。第1の基材層12,15の厚みは、それぞれ積層体全体の5%以上20%以下であり、12%以上18%以下であることが好ましい。
上記のような第1の基材層12,15のそれぞれにおいて、含有されるポリエチレン系樹脂の少なくとも一部は、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂(バイオポリエチレン)であってもよい。積層体10の機能性の観点から、バイオポリエチレンの配合量は、積層体10全体に対して例えば70質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。一方、環境負荷を実効的に軽減する観点から、バイオポリエチレンの配合量は、積層体10全体に対して0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上である。なお、この配合量は、積層体10の複数の層にバイオポリエチレンが含有される場合には各層に含有されるバイオポリエチレンの合計になる。第1の基材層12,15のそれぞれに含有されるポリエチレン系樹脂は、全量がバイオポリエチレンであってもよいし、化石燃料由来のポリエチレン系樹脂と、バイオポリエチレンとが併用されてもよい。
他の例では、第1の基材層12,15のうち一方のみについて含有されるポリエチレン系樹脂の少なくとも一部がバイオポリエチレンであり、他方についてはバイオポリエチレンが含有されなくてもよい。また、第1の基材層12,15にバイオポリプロピレンが含有される場合や、表面層11または第2の基材層13,14にバイオポリエチレンまたはバイオポリプロピレンが含有される場合は、第1の基材層12,15のいずれについてもバイオポリエチレンが含有されなくてもよい。
また、第1の基材層12,15のそれぞれにおいて、含有されるポリプロピレン系樹脂の少なくとも一部が、バイオマス由来のポリプロピレン系樹脂(バイオポリプロピレン)であってもよい。バイオポリプロピレンについても、第1の基材層12,15のそれぞれに含有されるポリプロピレン系樹脂の全量がバイオポリプロピレンであってもよいし、化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂とバイオポリプロピレンとが併用されてもよい。また、積層体10のうち第1の基材層12,15のポリプロピレン系樹脂以外の部分にバイオポリエチレンまたはバイオポリプロピレンが含有される場合は、第1の基材層12,15にバイオポリプロピレンが含有されなくてもよい。バイオマス由来のポリエチレン系樹脂の材料としては、例えば、トウモロコシ、キャッサバ、サトウキビ、さとう大根、パームヤシ、大豆、ヒマ等があげられる。また、バイオマス由来のポリエチレンは、発酵、菌発酵、化学変化、培養抽出など、どのような方法で製造されたものであってもよい。
第2の基材層13,14は、第1の基材層12,15と同様に、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂を含有する樹脂組成物で形成される。ポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン(HPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)、ランダムポリプロピレン(RPP)が使用でき、ホモポリプロピレン(HPP)、ブロックポリプロピレン(BPP)であることが好ましく、用途に応じこれらのいずれか一種、または二種以上を併用することができる。ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)が使用でき、高密度ポリエチレンまたは低密度ポリエチレンであることが好ましく、用途に応じこれらのいずれか一種、または二種以上を併用することができる。ポリプロピレン系樹脂と、ポリエチレン系樹脂の配合比率(質量比)は、例えば95:5~60:40であり、92:10~75:25であることが好ましく、87:13~82:17であることがより好ましい。
上記のような第2の基材層13,14は、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂の他、各種ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、これらの混合物などを含有してもよい。第2の基材層13,14には、剛性を向上させるためにタルクなどの無機フィラーが添加されてもよい。第2の基材層13,14の厚みは、それぞれ積層体全体の5%以上42%以下であり、20%以上37%以下であることが好ましく、26%以上32%以下であることがより好ましい。第1の基材層12,15と同様に、第2の基材層13,14のそれぞれにおいて、含有されるポリエチレン系樹脂の少なくとも一部が、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂(バイオポリエチレン)であってもよい。第2の基材層13,14のそれぞれに含有されるポリエチレン系樹脂は、全量がバイオマス由来のポリエチレン系樹脂であってもよいし、化石燃料由来のポリエチレン系樹脂と、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂とが併用されてもよい。
なお、他の例では、第2の基材層13,14のうち一方のみについて含有されるポリエチレン系樹脂の少なくとも一部がバイオポリエチレンであり、他方についてはバイオポリエチレンが含有されなくてもよい。また、第2の基材層13,14にバイオポリプロピレンが含有される場合や、表面層11または第1の基材層12,15にバイオポリエチレンまたはバイオポリプロピレンが含有される場合は、第2の基材層13,14のいずれについてもバイオポリエチレンが含有されなくてもよい。
また、第2の基材層13,14のそれぞれにおいて、含有されるポリプロピレン系樹脂の少なくとも一部が、バイオマス由来のポリプロピレン系樹脂(バイオポリプロピレン)であってもよい。バイオポリプロピレンについても、第2の基材層13,14のそれぞれに含有されるポリプロピレン系樹脂の全量がバイオポリプロピレンであってもよいし、化石燃料由来のポリプロピレン系樹脂とバイオポリプロピレンとが併用されてもよい。また、積層体10のうち第2の基材層13,14のポリプロピレン系樹脂以外の部分にバイオポリエチレンまたはバイオポリプロピレンが含有される場合は、第2の基材層13,14にバイオポリプロピレンが含有されなくてもよい。
バリア層16は、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)などのエチレンビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン、またはポリアクリロニトリルなどを含む酸素バリア層である。バリア層16の厚みは、例えば積層体10全体の0.1%以上15%以下である。接着層17は、例えばウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、またはエチレン酢酸ビニル(EVA)などで形成される。接着層17の厚みは、例えばそれぞれ積層体10全体の0.1%以上5%以下である。
図12は、積層体の第2の構成例を示す模式的な断面図である。図示された例において、積層体20は、第1の基材層21と、第1の基材層21の両側にそれぞれ積層される第2の基材層22,23とを含む。積層体20を図2に示された積層体114に対応付けると、第2の基材層22は表面下層114Bに、第1の基材層21および第2の基材層23は基材層114Aに、それぞれ対応する。表面層114Cに対応する層は積層体20には含まれず、別途積層される。以下、各層の構成について説明する。
第1の基材層21は、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを混合した樹脂組成物を主成分とする。ポリプロピレン系樹脂は、少なくともプロピレンを含む重合体であればよい。プロピレンを含む重合体としては、例えば、ホモポリプロピレン、およびプロピレンとオレフィンとの共重合体等が挙げられる。プロピレンとオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。あるいは、これらの混合物であってもよい。耐熱性および硬度の観点から、ポリプロピレン系樹脂は、ホモポリプロピレンが好ましい。第1の基材層21に含有されるポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、0.5g/10分以上5.0g/10分以下であることが好ましい。メルトフローレートの測定については、JIS K7210-1に準拠し、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定する。ポリプロピレン系樹脂は少なくとも一部が、バイオマス由来のポリプロピレン系樹脂(バイオポリプロピレン)であってもよい。バイオポリプロピレンは、例えば、非可食植物であるソルゴーの糖蜜を微生物で発酵させて中間素材を生成し、脱水することにより得ることができる。
一方、第1の基材層21に含有されるポリエチレン系樹脂は、少なくともエチレンを含む重合体であればよい。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン系樹脂、特に、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂等が挙げられる。なお、ポリエチレン系樹脂は、少なくとも一部にバイオマス由来のポリエチレンを含有してもよい。バイオマス由来のポリエチレンの材料としては、例えば、トウモロコシ、キャッサバ、サトウキビ、さとう大根、パームヤシ、大豆、ヒマ等があげられる。また、バイオマス由来のポリエチレンは、発酵、菌発酵、化学変化、培養抽出など、どのような方法で製造されたものであってもよい。このようなバイオマス由来のポリエチレンは、例えば、バイオマス由来の低密度ポリエチレンであってもよい。また、ポリエチレン系樹脂として、化石燃料由来のポリエチレン系樹脂と、バイオマス由来のポリエチレン系樹脂とを併用してもよい。
上述したバイオマス由来のポリエチレンを含有するポリエチレン系樹脂のメルトフローレートは、0.3g/10分以上4.0g/10分以下であることが好ましい。メルトフローレートの測定については、JIS K7210-1に準拠し、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定する。上述したバイオマス由来のポリエチレンを含有するポリエチレン系樹脂の密度は、898kg/m3以上925kg/m3以下であることが好ましい。また、ポリエチレン系樹脂の含有率は、第1の基材層21全体に対して30.0質量%以下であることが好ましい。なお、上述したバイオマス由来のポリエチレンを含有するポリエチレン系樹脂の含有率は、第1の基材層21全体に対して0.5質量%以上30.0質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上25.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上20.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以上10.0質量%以下であり、特に好ましくは3.0質量%以上5.0質量%以下である。
また、第1の基材層21は、ポリプロピレン系樹脂およびポリエチレン系樹脂以外の樹脂、および、添加剤等を含有していてもよい。第1の基材層21の厚さは特に限定されず、積層体20の用途によって適宜設定される。
第2の基材層22,23は、ポリプロピレン系樹脂を含有する。第2の基材層22,23に含有されるポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、30.0g/10分以下、より好ましくは15.0g/10分以上25.0g/10分以下であることが好ましい。メルトフローレートの測定については、JIS K7210-1に準拠し、測定温度230℃、荷重2.16kgで測定する。ポリプロピレン系樹脂の少なくとも一部が、バイオマス由来のポリプロピレン系樹脂(バイオポリプロピレン)であってもよい。バイオポリプロピレンは、例えば、非可食植物であるソルゴーの糖蜜を微生物で発酵させて中間素材を生成し、脱水することにより得ることができる。第2の基材層22,23は、ポリプロピレン系樹脂の他にも、ポリプロピレン系樹脂以外の樹脂および添加剤等を含有していてもよい。また、第2の基材層22,23は、造核剤を含んでもよい。造核剤としては、例えば、ソルビトール系結晶核剤等が挙げられる。市販品としては、例えば、ゲルオールMD(新日本理化株式会社製)、リケマスターFC-2(理研ビタミン株式会社製)等が挙げられる。第2の基材層22,23の厚みは特に限定されず、積層体20の用途によって適宜設定される。
積層体20全体の厚みは、積層体20の用途によって適宜設定される。例えば、積層体20の厚みは、0.25mm以上0.35mm以下とすることができる。
なお、積層体20全体の厚みに関して、第1の基材層21の厚みに対する第2の基材層22,23の総厚みの比(第2の基材層22,23の総厚み/第1の基材層21の厚み)は、1/99以上20/80以下であることが好ましい。より好ましくは、上述の比は、5/95以上15/85以下であることが好ましい。
また、ポリエチレン系樹脂の含有率は、積層体20全体に対して30.0質量%以下であることが好ましい。なお、上述したバイオマス由来のポリエチレンを含有するポリエチレン系樹脂の含有率は、積層体20全体に対して0.5質量%以上30.0質量%以下であり、好ましくは積層体20全体に対して0.5質量%以上25.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上20.0質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以上10.0質量%以下であり、特に好ましくは2.0質量%以上4.0質量%以下である。
また、積層体20は、上記の例のように第1の基材層21と第2の基材層22,23とからなる3層構造に限定されず、4層以上の多層構造でもよい。4層以上の多層構造の積層体は、例えば、第1の基材層および第2の基材層以外に、その他の層を有していてもよい。例えば、図1の積層体20において、第1の基材層21と第2の基材層22,23との間等に、図示しないその他の層を有する積層体が挙げられる。その他の層としては、例えば、バリア層、接着層、または防曇剤を含有する防曇層等が挙げられる。また、積層体は、第1の基材層21の片面のみに第2の基材層22を有していてもよい。例えば、図13に示すように、第1の基材層21の片面のみに、第2の基材層22が積層された積層体20Aでもよい。また、第2の基材層22,23は、第1の基材層21の少なくとも片側に積層されるが、第1の基材層21と第2の基材層22,23との間に例えばバリア層や接着層などの他の層が介在してもよい。
図14は、第2の構成例に係る積層体の製造工程を示す図である。製造工程では、押出機のTダイ501より共押出された積層体20を、金属製無端ベルト506とともに第1冷却ロール502と第2冷却ロール503との間に挟み込む。金属製無端ベルト506は、各冷却ロール、および搬送ロール505によって連続的に搬送されている。また、各冷却ロールには、水冷管などの図示しない冷却手段が備えられている。成形直後の積層体20は、第1冷却ロール502および第2冷却ロール503のそれぞれの周面、および金属製無端ベルト506との接触によって冷却される。第2冷却ロール503の略下半周に対応する部分では金属製無端ベルト506と第2冷却ロール503との間に積層体20を挟み込みながら、金属製無端ベルト506の裏面側に吹き付けノズル507を用いて冷却水を吹き付けることによってさらに積層体20を冷却する。吹き付けられた冷却水は、水槽508を用いて回収される。積層体20は金属製無端ベルト506とともに第2冷却ロール503を離れて第3冷却ロール504上に移動し、第3冷却ロール504の略上半周に対応する部分で冷却された後、剥離ロール510によりガイドされて第3冷却ロール504および金属製無端ベルト506から離れて冷却工程を終了し、さらに搬送される。なお、金属製無端ベルト506の裏面に付着した水は、第2冷却ロール503から第3冷却ロール504への搬送途中に設けられている吸水ロール509で除去される。
上記のような製造工程によれば、複数の冷却ロールおよび金属製無端ベルトとの接触、ならびに冷却水の吹き付けによって、成形直後の積層体20を必要な温度まで急冷し、例えば機械物性や透明性などを発揮させることができる。
図15に示された例では、積層体10Aの積層構成は上記の図11の例と同じであるものの、バリア層16の表面層11側に積層される第1の基材層12の層厚が、表面層11とは反対側に積層される第1の基材層15よりも大きい。また、バリア層16の表面層11側に積層される第2の基材層13の層厚が、表面層11とは反対側に積層される第2の基材層14よりも大きい。結果として、図15の例において、バリア層16は、積層体10Aの全層厚中心Ctから表面層11とは反対側に10%以上偏心している。つまり、図15の例において、バリア層16の層厚中心は、積層体10Aの全層厚中心Ctから積層体10Aの全層厚tの10%(0.1t)以上離れて位置する。バリア層16の偏心量は、5%以上であればよく、好ましくは10%以上であり、より好ましくは15%以上であり、特に好ましくは20%以上である。
上記の図15の例では、表面層11からバリア層16までの距離が、バリア層16が偏心しない場合よりも大きくなる。これによって、例えば、表面層11に形成される切り込み(例えば、図5の例における切り込み315)の深さの許容される変動幅が大きくなる。つまり、図15の例では、たとえ切り込みが設計上の深さよりも深く形成されたとしても、切り込みがバリア層16に到達しにくい。従って、切り込みの形成誤差を考慮して積層体10Aを厚くしなくてもよく、機能上必要な範囲で積層体10Aを薄肉化できる。
なお、図15に示された例に限らず、例えば第1の基材層12,15または第2の基材層13,14のいずれか一方だけで表面層11と表面層11とは反対側での層厚の差をつけることによってバリア層16を偏心させてもよい。また、積層体10Aがバリア層16の表面層11側だけに積層される追加の層を含み、この追加の層の層厚によってバリア層16が偏心させられてもよい。
既に述べたように、容器が図5に示された第3の例のような構造であり、積層体がバリア層を含む場合は、切り込みがバリア層に達するのを防ぐ必要があるが、上記のようにバリア層を層厚中心から偏心させる構成によって、容器本体を構成する積層体10Aの厚みを例えば1.5mm以下、好ましくは1.2mm以下、より好ましくは0.8mm以下、さらに好ましくは0.6mm以下にすることができる。
上述した例以外にも、本実施形態の容器本体には様々な構成の積層体を用いることができる。例えば、紙シートを樹脂で形成される積層体でラミネートした複合容器が容器本体として用いられてもよい。この場合、紙シートで補強されることによって表面層以外の樹脂を薄肉化でき、樹脂使用量を削減することができる。また、上記の説明でも言及したが、HPPや石油樹脂、タルクなどを所定の配合で積層体を形成する樹脂組成物に含有させることによって、積層体の耐変形性を向上させ、必要な強度を確保しながら容器本体を薄肉化することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれらの例に限定されない。本発明の属する技術の分野の当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。