以下、本発明の一側面に係る媒体搬送装置について図を参照しつつ説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
図1は、イメージスキャナとして構成された媒体搬送装置100を示す斜視図である。媒体搬送装置100は、原稿である媒体を搬送し、撮像する。媒体は、用紙、厚紙、カード又はパスポート等である。カードは、例えばプラスチック製の樹脂カード(プラスチックカード)である。また、カードは、例えば認証情報が記憶されたIC(Integrated Circuit)チップもしくは磁気ストライプ等を有する、又は、表面に利用者の氏名及び写真等が印刷された身分証明書カードである。特に、カードは、ISO(International Organization for Standardization)/IEC(International Electrotechnical Commission)7810で規定されるID-1のID(Identification)カードである。なお、カードは、他の種類のカードでもよい。媒体搬送装置100は、ファクシミリ、複写機、プリンタ複合機(MFP、Multifunction Peripheral)等でもよい。
媒体搬送装置100は、下側筐体101、上側筐体102、載置台103、排出台104、操作装置105及び表示装置106等を備える。
上側筐体102は、媒体搬送装置100の上面を覆う位置に配置され、下側筐体101に係合している。載置台103は、搬送される媒体を載置可能に下側筐体101に係合している。排出台104は、排出された媒体を保持可能に下側筐体101に係合している。
操作装置105は、ボタン等の入力デバイス及び入力デバイスから信号を取得するインタフェース回路を有し、利用者による入力操作を受け付け、利用者の入力操作に応じた操作信号を出力する。表示装置106は、液晶、有機EL(Electro-Luminescence)等を含むディスプレイ及びディスプレイに画像データを出力するインタフェース回路を有し、画像データをディスプレイに表示する。
図2は、媒体搬送装置100内部の搬送経路を説明するための図である。
媒体搬送装置100内部の搬送経路は、第1媒体センサ111、給送ローラ112、ブレーキローラ113、超音波発信器114a、超音波受信器114b、第1搬送ローラ115、第2搬送ローラ116、第2媒体センサ117、第1撮像装置118a、第2撮像装置118b、第3搬送ローラ119及び第4搬送ローラ120等を有している。なお、各ローラの数は一つに限定されず、各ローラの数はそれぞれ複数でもよい。
下側筐体101の上面は媒体の搬送路の下側ガイド107aを形成し、上側筐体102の下面は媒体の搬送路の上側ガイド107bを形成する。図2において矢印A1は媒体の搬送方向を示す。以下では、上流とは媒体の搬送方向A1の上流のことをいい、下流とは媒体の搬送方向A1の下流のことをいう。
第1媒体センサ111は、接触検出センサを有し、載置台103に媒体が載置されているか否かを検出する。第1媒体センサ111は、載置台103に媒体が載置されている状態と載置されていない状態とで信号値が変化する第1媒体信号を生成して出力する。
超音波発信器114a及び超音波受信器114bは、それぞれ超音波発信部及び超音波受信部の一例である。超音波発信器114a及び超音波受信器114bは、給送ローラ112及びブレーキローラ113の下流側且つ第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116の上流側、即ち第1撮像装置118a及び第2撮像装置118bの上流側に設けられる。超音波発信器114a及び超音波受信器114bは、媒体の搬送路の近傍に、搬送路を挟んで対向して配置される。超音波発信器114aは、超音波を発信する。一方、超音波受信器114bは、超音波発信器114aにより発信され、媒体を通過した超音波を受信し、受信した超音波に応じた電気信号である超音波信号を生成して出力する。以下では、超音波発信器114a及び超音波受信器114bを総じて超音波センサ114と称する場合がある。
第2媒体センサ117は、媒体搬送方向A1において第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116の下流側且つ第1撮像装置118a及び第2撮像装置118bの上流側に配置される。第2媒体センサ117は、媒体搬送路に対して一方の側(下側筐体101)に設けられた発光器及び受光器を含む。また、第2媒体センサ117は、媒体搬送路を挟んで発光器及び受光器と対向する位置(上側筐体102)に設けられたミラー等の反射部材を含む。発光器は、媒体搬送路に向けて光を照射する。一方、受光器は、発光器により照射され、反射部材により反射された光を受光し、受光した光の強度に応じた電気信号である第2媒体信号を生成して出力する。第2媒体センサ117の位置に媒体が存在する場合、発光器により照射された光はその媒体により遮光される。そのため、第2媒体センサ117の位置に媒体が存在する状態と存在しない状態とで第2媒体センサ117により生成される信号の信号値は変化する。これにより、第2媒体センサ117は、その位置に媒体が存在するか否かを検出して、搬送された媒体を検出する。なお、第2媒体センサ117の発光器及び受光器は、搬送路を挟んで相互に対向する位置に設けられ、反射部材は省略されてもよい。
第1撮像装置118aは、第1撮像部の一例である。第1撮像装置118aは、主走査方向に直線状に配列されたCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCIS(Contact Image Sensor)によるラインセンサを有する。また、第1撮像装置118aは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第1撮像装置118aは、ラインセンサが配置された撮像位置L1において、給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116によって搬送されている媒体の表面を撮像する。媒体の表面は、媒体の一方の面の一例である。第1撮像装置118aは、一定間隔毎に、搬送されている媒体のラインセンサと対向する領域を撮像した第1ライン画像を順次生成して出力する。即ち、ライン画像の垂直方向(副走査方向)の画素数は1であり、水平方向(主走査方向)の画素数は複数である。
また、第1撮像装置118aは、第2撮像装置118bのラインセンサと対向する位置に配置された裏当て部材を有する。裏当て部材は、白色又は黒色等の特定の色を有し、第2撮像装置118bにより媒体の背景として撮像される。また、裏当て部材は、第2撮像装置118bにより撮像された画像を補正するための基準部材として使用される。
第2撮像装置118bは、第2撮像部の一例である。第2撮像装置118bは、主走査方向に直線状に配列されたCMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサを有する。また、第2撮像装置118bは、撮像素子上に像を結ぶレンズと、撮像素子から出力された電気信号を増幅し、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器とを有する。第2撮像装置118bは、ラインセンサが配置された撮像位置L2において、給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116によって搬送されている媒体の裏面を撮像する。撮像位置L2は、媒体搬送方向A1において、撮像位置L1より下流側に配置される。なお、撮像位置L2は、媒体搬送方向A1において、撮像位置L1と同じ位置に配置されてもよい。媒体の裏面は、媒体の他方の面の一例である。第2撮像装置118bは、一定間隔毎に、搬送されている媒体のラインセンサと対向する領域を撮像した第2ライン画像を順次生成して出力する。
また、第2撮像装置118bは、第1撮像装置118aのラインセンサと対向する位置に配置された裏当て部材を有する。裏当て部材は、白色又は黒色等の特定の色を有し、第1撮像装置118aにより媒体の背景として撮像される。また、裏当て部材は、第1撮像装置118aにより撮像された画像を補正するための基準部材として使用される。
なお、CMOSによる撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサの代わりに、CCD(Charge Coupled Device)による撮像素子を備える等倍光学系タイプのCISによるラインセンサが利用されてもよい。また、CMOS又はCCDによる撮像素子を備える縮小光学系タイプのラインセンサが利用されてもよい。以下では、第1撮像装置118a及び第2撮像装置118bを総じて撮像装置118と称する場合がある。
載置台103に載置された媒体は、給送ローラ112が図2の矢印A2の方向に回転することによって、下側ガイド107aと上側ガイド107bの間を媒体の搬送方向A1に向かって搬送される。ブレーキローラ113は、媒体搬送時、矢印A3の方向に回転する。給送ローラ112及びブレーキローラ113の働きにより、載置台103に複数の媒体が載置されている場合、載置台103に載置されている媒体のうち給送ローラ112と接触している媒体のみが分離される。これにより、分離された媒体以外の媒体の搬送が制限されるように動作する(重送の防止)。
媒体は、下側ガイド107aと上側ガイド107bによりガイドされながら、第1搬送ローラ115と第2搬送ローラ116の間に送り込まれる。媒体は、第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116がそれぞれ矢印A4及び矢印A5の方向に回転することによって、第1撮像装置118aと第2撮像装置118bの間に送り込まれる。撮像装置118により読み取られた媒体は、第3搬送ローラ119及び第4搬送ローラ120がそれぞれ矢印A6及び矢印A7の方向に回転することによって排出台104上に排出される。給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1搬送ローラ115及び第2搬送ローラ116は、媒体を搬送する搬送部の一例である。
図3は、媒体搬送装置100の概略構成を示すブロック図である。
媒体搬送装置100は、前述した構成に加えて、駆動装置121、インタフェース装置122、記憶装置130及び処理回路140等をさらに有する。
駆動装置121は、一又は複数のモータを含み、処理回路140からの制御信号によって、給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1搬送ローラ115、第2搬送ローラ116、第3搬送ローラ119及び第4搬送ローラ120を回転させて媒体を搬送させる。
インタフェース装置122は、例えばUSB等のシリアルバスに準じるインタフェース回路を有し、不図示の情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末等)と電気的に接続して入力画像及び各種の情報を送受信する。また、インタフェース装置122の代わりに、無線信号を送受信するアンテナと、所定の通信プロトコルに従って、無線通信回線を通じて信号の送受信を行うための無線通信インタフェース装置とを有する通信部が用いられてもよい。所定の通信プロトコルは、例えば無線LAN(Local Area Network)である。
記憶装置130は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等のメモリ装置、ハードディスク等の固定ディスク装置、又はフレキシブルディスク、光ディスク等の可搬用の記憶装置等を有する。また、記憶装置130には、媒体搬送装置100の各種処理に用いられるコンピュータプログラム、データベース、テーブル等が格納される。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶装置130にインストールされてもよい。可搬型記録媒体は、例えばCD-ROM(compact disc read only memory)、DVD-ROM(digital versatile disc read only memory)等である。
処理回路140は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。処理回路140は、予め記憶装置130に記憶されているプログラムに基づいて動作する。なお、処理回路140は、DSP(digital signal processor)、LSI(large scale integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等でもよい。
処理回路140は、操作装置105、表示装置106、第1媒体センサ111、超音波センサ114、第2媒体センサ117、撮像装置118、駆動装置121、インタフェース装置122及び記憶装置130等と接続され、これらの各部を制御する。処理回路140は、駆動装置121の駆動制御、撮像装置118の撮像制御等を行い、画像を取得し、インタフェース装置122を介して不図示の情報処理装置に送信する。また、処理回路140は、撮像装置118により生成される各ライン画像に基づいて、搬送される媒体の何れかの面を選択し、選択した面を撮像したライン画像から媒体の形状を推定する。
図4は、記憶装置130及び処理回路140の概略構成を示す図である。
図4に示すように、記憶装置130には、制御プログラム131、検出プログラム132、選択プログラム133及び推定プログラム134等が記憶される。これらの各プログラムは、プロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。処理回路140は、記憶装置130に記憶された各プログラムを読み取り、読み取った各プログラムに従って動作する。これにより、処理回路140は、制御部141、検出部142、選択部143及び推定部144として機能する。
図5は、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を示すフローチャートである。
以下、図5に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の媒体読取処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置130に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路140により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。図5に示す動作のフローは、定期的に実行される。
最初に、制御部141は、利用者により操作装置105を用いて媒体の読み取りの指示が入力されて、媒体の読み取りを指示する操作信号を操作装置105から受信するまで待機する(ステップS101)。
次に、制御部141は、第1媒体センサ111から受信する第1媒体信号に基づいて載置台103に媒体が載置されているか否かを判定する(ステップS102)。
載置台103に媒体が載置されていない場合、制御部141は、ステップS101へ処理を戻し、操作装置105から新たに操作信号を受信するまで待機する。
一方、載置台103に媒体が載置されている場合、制御部141は、駆動装置121を駆動して給送ローラ112、ブレーキローラ113、第1~第4搬送ローラ115、116、119及び120を回転させて、媒体を搬送させる(ステップS103)。
次に、制御部141は、搬送された媒体を撮像装置118に撮像させて、第1ライン画像及び第2ライン画像を取得する(ステップS104)。
次に、処理回路140は、形状推定処理を実行する(ステップS105)。形状推定処理において、処理回路140は、第1ライン画像及び第2ライン画像から、搬送される媒体の何れかの面を選択し、選択した面を撮像したライン画像から、媒体の形状を推定する。媒体の形状には、第1形状又は第2形状が含まれる。第1形状は、カードの形状であるか否かである。第2形状は、媒体の外形である。形状推定処理の詳細については後述する。
次に、制御部141は、後述する重送判定処理において、媒体の重送が発生していると判定されたか否かを判定する(ステップS106)。
重送が発生していると判定された場合、制御部141は、異常処理として、駆動装置121を停止して、媒体の搬送を停止させるとともに、不図示のスピーカ、LED等により、異常が発生したことを利用者に通知する(ステップS107)。そして、制御部141は、一連のステップを終了する。なお、制御部141は、異常処理として、媒体の搬送を即時に停止させるのでなく、現在搬送中の媒体を排出させた後に、次の媒体の搬送を停止させてもよい。
一方、重送が発生していると判定されていない場合、制御部141は、搬送された媒体の全体が撮像されたか否かを判定する(ステップS108)。
制御部141は、例えば、第2媒体センサ117から第2媒体信号を取得し、取得した第2媒体信号に基づいて、第2媒体センサ117の位置に媒体が存在するか否かを判定する。制御部141は、第2媒体信号の信号値が、媒体が存在しないことを示す値から媒体が存在することを示す値に変化したときに、媒体の先端が第2媒体センサ117の位置を通過したと判定する。制御部141は、その後、第2媒体信号の信号値が、媒体が存在することを示す値から媒体が存在しないことを示す値に変化したときに、媒体の後端が第2媒体センサ117の位置を通過したと判定する。制御部141は、媒体の後端が第2媒体センサ117の位置を通過したと判定してから一定期間が経過した時に、媒体の全体が撮像されたと判定する。なお、制御部141は、予め定められた数のライン画像を撮像装置118から取得したときに、搬送された媒体の全体が撮像されたと判定してもよい。
まだ搬送された媒体の全体が撮像されていない場合、制御部141は、処理をステップS106へ戻し、ステップS106~S108の処理を繰り返す。
一方、搬送された媒体の全体が撮像された場合、制御部141は、形状推定処理において推定された形状、特に媒体の外形である第2形状に基づいて、第1ライン画像及び第2ライン画像から媒体画像を切り出す(ステップS109)。制御部141は、全ての第1ライン画像を結合した第1読取画像から第1媒体画像を切り出し、全ての第2ライン画像を結合した第2読取画像から第2媒体画像を切り出す。制御部141は、形状推定処理において選択された媒体の面を撮像したライン画像から、形状推定処理において推定された媒体の外形に相当する領域を切り出して媒体画像を生成する。一方、制御部141は、形状推定処理において選択されていない方の媒体の面を撮像したライン画像から、形状推定処理において推定された媒体の外形に相当する領域を主走査方向において反転(左右反転)させた領域を切り出して媒体画像を生成する。
次に、制御部141は、第1媒体画像及び第2媒体画像を、インタフェース装置122を介して不図示の情報処理装置へ送信することにより出力する(ステップS110)。
次に、制御部141は、第1媒体センサ111から受信する第1媒体信号に基づいて載置台103に媒体が残っているか否かを判定する(ステップS111)。載置台103に媒体が残っている場合、制御部141は、ステップS104へ処理を戻し、ステップS104~S111の処理を繰り返す。
一方、載置台103に媒体が残っていない場合、制御部141は、駆動装置121を停止し(ステップS112)、一連のステップを終了する。
図6及び図7は、形状推定処理の動作の例を示すフローチャートである。
図6及び図7に示す動作のフローは、図5に示すフローチャートのステップS105において実行される。
最初に、検出部142は、媒体の形状を推定するための媒体の面が既に選択済みであるか否かを判定する(ステップS201)。媒体の面が既に選択済みである場合、検出部142は、処理をステップS210へ移行する。
一方、媒体の面がまだ選択されていない場合、検出部142は、第1ライン画像及び第2ライン画像からエッジ画素を検出する(ステップS202)。即ち、検出部142は、順次生成された第1ライン画像及び第2ライン画像毎にエッジ画素を検出する。検出部142は、各ライン画像の左端から順に各画素と各画素の右側に隣接する画素又は所定距離だけ離れた画素との階調値の差の絶対値(以下、隣接差分値と称する)を算出する。階調値は、輝度値又は色値である。検出部142は、隣接差分値がエッジ閾値以上である最初(最も左側)の画素を左端エッジ画素として検出する。エッジ閾値は、例えば、人が画像上の輝度の違いを目視により判別可能な階調値の差(例えば20)に設定することができる。同様に、検出部142は、各ライン画像の右端から順に各画素と各画素の左側の画素との隣接差分値を算出し、隣接差分値がエッジ閾値以上である最初の画素を右端エッジ画素として検出する。検出部142は、各ライン画像の左端から順に各画素と各画素の左側の画素との隣接差分値を算出し、隣接差分値がエッジ閾値以上である最後の画素を右端エッジ画素として検出してもよい。なお、隣接差分値がエッジ閾値以上である画素が存在しない場合、検出部142は、そのライン画像からエッジ画素を検出しない。
また、検出部142は、各画素の水平又は垂直方向の両隣の画素又は所定距離だけ離れた二つの画素の階調値の差の絶対値を隣接差分値として算出してもよい。また、検出部142は、特定の画素の階調値が閾値未満であり、特定の画素に隣接する画素又は所定距離だけ離れた画素の階調値が閾値以上である場合、特定の画素、特定の画素に隣接する画素又は所定距離だけ離れた画素をエッジ画素として抽出してもよい。
図8A及び図8Bは、エッジ画素について説明するための模式図である。
図8Aの画像800は、裏当て部材Bと異なる色を有する媒体M1が撮像された画像である。画像800に示す例では、裏当て部材Bは黒色を有し、媒体M1は白色を有している。画像800に示すように、裏当て部材Bと媒体M1とが相互に異なる色を有する場合、背景である裏当て部材Bと媒体M1の境界は明瞭に識別される。なお、画像800において、媒体M1と裏当て部材Bの境界に媒体M1による影N1が形成されている。
図8Aのグラフ801は、画像800内の所定ラインEにおける各画素の階調値を示すグラフである。グラフ801の横軸は、画像内の水平方向の位置を示し、縦軸は、各位置の画素の階調値を示す。グラフ801に示すように、裏当て部材B及び影N1に対応する各画素の階調値は十分に低く、媒体M1に対応する各画素の階調値は十分に高い。そのため、裏当て部材B又は影N1に対応し、且つ右隣に位置する画素X2が媒体M1に対応する画素X1が左端エッジ画素として検出される。また、裏当て部材B又は影N1に対応し、且つ左隣に位置する画素X4が媒体M1に対応する画素X3が右端エッジ画素として検出される。
一方、図8Bの画像810は、裏当て部材Bと同系色を有する媒体M2が撮像された画像である。画像810に示す例では、裏当て部材B及び媒体M2は黒色を有している。なお、画像810では、画像800と同様に、媒体M2と裏当て部材Bの境界には媒体M2による影N2が形成されている。画像810に示すように、裏当て部材Bと媒体M2とが相互に類似する色を有する場合、裏当て部材Bと媒体M2の境界は識別されにくい。特に、裏当て部材Bと媒体M2が黒色を有する場合、影N2も識別されにくい。
図8Bのグラフ811は、画像810内の所定ラインEにおける各画素の階調値を示すグラフである。グラフ811の横軸は、画像内の水平方向の位置を示し、縦軸は、各位置の画素の階調値を示す。グラフ811に示すように、裏当て部材B及び影N2に対応する各画素と、媒体M2に対応する各画素とは、相互に近似した階調値を有する。そのため、裏当て部材B又は影N2に対応し、且つ右隣に位置する画素X6が媒体M2に対応する画素X5と、裏当て部材B又は影N2に対応し、且つ左隣に位置する画素X8が媒体M2に対応する画素X7とは、エッジ画素として検出されない可能性がある。
一般に、図8A及び図8Bに示すように、一方の面(表面)が黒色等の暗い色を有し、他方の面(裏面)が白色等の明るい色を有するIDカードが多数存在する。そのため、何れの面を利用するかによって、媒体の形状を正しく推定する精度は大きく異なる。
次に、選択部143は、現在までに検出部142により第1ライン画像及び第2ライン画像から検出されたエッジ画素の数(合計)を計数する(ステップS203)。
次に、選択部143は、第1ライン画像から検出されたエッジ画素の数が画素数閾値を超えたか否かを判定する(ステップS204)。画素数閾値は、ノイズ等により誤って検出されるエッジ画素の数より十分に大きい値に設定される。第1ライン画像から検出されたエッジ画素の数が画素数閾値を超えた場合、選択部143は、第1ライン画像に対応する面(表面)を、媒体の形状を推定するための媒体の面として選択し(ステップS205)、処理をステップS210へ移行する。以下では、媒体の形状を推定するための媒体の面として選択されたライン画像を選択ライン画像と称する場合がある。
一方、第1ライン画像から検出されたエッジ画素の数が画素数閾値以下である場合、選択部143は、第2ライン画像から検出されたエッジ画素の数が画素数閾値を超えたか否かを判定する(ステップS206)。第2ライン画像から検出されたエッジ画素の数が画素数閾値を超えた場合、選択部143は、第2ライン画像に対応する面(裏面)を、媒体の形状を推定するための媒体の面として選択し(ステップS207)、処理をステップS210へ移行する。
一方、第2ライン画像から検出されたエッジ画素の数が画素数閾値以下である場合、選択部143は、ステップS108の処理と同様にして、搬送された媒体の全体が撮像されたか否かを判定する(ステップS208)。媒体の全体が撮像された場合、選択部143は、現在までに第1ライン画像から検出されたエッジ画素の数と、現在までに第2ライン画像から検出されたエッジ画素の数とを比較する。選択部143は、エッジ画素の数が多い方のライン画像に対応する面を、媒体の形状を推定するための媒体の面として選択し(ステップS209)、処理をステップS210へ移行する。なお、選択部143は、媒体の全体が撮像された場合、予め設定された媒体の面を選択してもよい。一方、まだ媒体の全体が撮像されていない場合、選択部143は、まだ媒体の面を選択せずに、一連のステップを終了する。
このように、選択部143は、第1ライン画像及び第2ライン画像が生成されるたびに、検出されたエッジ画素の数を計数し、計数した数が先に画素数閾値を超えた方のライン画像に対応する面を、媒体の形状を推定するための媒体の面として選択する。即ち、選択部143は、順次生成された第1ライン画像及び第2ライン画像から検出されたエッジ画素の数に基づいて、媒体の一方の面及び他方の面の内の何れかの面を選択する。
これにより、選択部143は、媒体の端部を特定するために有効なデータが多い方の面を選択することできる。また、選択部143は、複雑な画像処理を実行することなく、媒体の面を選択することができ、形状推定処理の処理負荷の増大を抑制することができる。また、選択部143は、順次生成されたライン画像に対して、リアルタイムで媒体の面を選択するため、媒体全体が撮像される前に媒体の面を選択することができ、形状推定処理の処理負荷の軽減及びメモリ等のリソースの使用量の軽減を図ることができる。また、選択部143が媒体の面を早期に選択することにより、推定部144は、媒体の形状、特に第1形状を早期に推定することができる。
なお、選択部143は、第1撮像装置118aの撮像位置L1より下流側に撮像位置L2がある第2撮像装置118bにより撮像される第2ライン画像の判定を、第1撮像装置118aにより撮像される第1ライン画像の判定より優先的に(先に)実行してもよい。これにより、選択部143は、第1ライン画像及び第2ライン画像から検出されたエッジ画素の数が同数である場合に、媒体が含まれる量が小さい方のライン画像を選択することができ、より信頼性が高い方のライン画像を選択することができる。
また、選択部143は、所定数の第1ライン画像から検出されたエッジ画素の数と、所定数の第2ライン画像から検出されたエッジ画素の数とを比較し、エッジ画素の数が大きい方のライン画像に対応する媒体の面を選択してもよい。この場合も、媒体搬送装置100は、媒体の端部を特定するために有効なデータが多い方の媒体の面を用いて、より高精度に媒体の形状を推定することができる。
次に、推定部144は、媒体の形状として、第1形状、即ちカードの形状であるか否かを推定済みであるか否かを判定する(ステップS210)。第1形状を推定済みである場合、推定部144は、処理をステップS216へ移行する。
一方、第1形状をまだ推定していない場合、推定部144は、選択ライン画像からエッジ画素を検出する(ステップS211)。推定部144は、ステップS202の処理と同様にして、エッジ画素を検出する。なお、推定部144は、ステップS202において既にエッジ画素を検出済みである選択ライン画像については、その検出済みのエッジ画素を使用し、エッジ画素を未検出である選択ライン画像についてのみエッジ画素を検出してもよい。
次に、推定部144は、検出したエッジ画素に基づいて、各選択ライン画像内の媒体幅を検出し、記憶装置130に記憶する(ステップS212)。推定部144は、左端エッジ画素と、右端エッジ画素との間の距離(画素数)を媒体幅として検出する。
次に、推定部144は、各選択ライン画像内の媒体幅に基づいて、順次生成された選択ライン画像に含まれる媒体の頂点数を検出する(ステップS213)。
推定部144は、現在までに取得した何れかの選択ライン画像において、所定幅(例えば1画素)以上の媒体幅が検出されていない場合、媒体の頂点数は0であると判定する。所定幅以上の媒体幅が検出されている場合、推定部144は、各選択ライン画像内の媒体幅の変化を検出する。推定部144は、新たに取得した選択ライン画像を対象画像として特定し、対象画像を取得する直前に取得していた選択ライン画像を基準画像として特定する。対象画像内の媒体幅が基準画像内の媒体幅より増大している場合、推定部144は、媒体の頂点数は1であると判定する。一方、対象画像内の媒体幅が基準画像内の媒体幅と略同一である場合、推定部144は、媒体の頂点数は2であると判定する。一方、対象画像内の媒体幅が基準画像内の媒体幅より減少し、且つ対象画像内の媒体幅が0より大きい場合、推定部144は、媒体の頂点数は3であると判定する。一方、対象画像内の媒体幅が0である場合、推定部144は、媒体の頂点数は4であると判定する。
図9A~図9F及び図10は、媒体幅の変化と頂点数との関係について説明するための模式図である。
図9A~図9Fは、傾いて搬送されている矩形形状を有する媒体Mを示す。図9A~図9Fに示すように、媒体Mは傾いて搬送される可能性があり、媒体Mが傾いて搬送される場合、媒体Mの各頂点V1~V4は、それぞれ異なるタイミングで撮像装置118の撮像位置を通過する。図10は、媒体Mが搬送中に撮像された複数のライン画像P0~P9を示す。なお、説明を容易にするために、図10には、複数のライン画像P0~P9のみが表示されているが、各ライン画像が撮像される間に多数のライン画像が撮像されている。
図9Aは、まだ何れの頂点も撮像位置に到達していない状態の媒体Mを示しており、図10のライン画像P0は、このタイミングで撮像されている。図9Bは、一番目の頂点V1が撮像位置を通過した直後の媒体Mを示しており、図10のライン画像P1は、このタイミングで撮像されている。図9Cは、二番目の頂点V2が撮像位置に到達した状態の媒体Mを示しており、図10のライン画像P3は、このタイミングで撮像されている。図9Dは、三番目の頂点V3が撮像位置に到達した状態の媒体Mを示しており、図10のライン画像P6は、このタイミングで撮像されている。図9Eは、四番目の頂点V4が撮像位置に到達する直前の媒体Mを示しており、図10のライン画像P8は、このタイミングで撮像されている。図9Fは、全ての頂点が撮像位置を通過した状態の媒体Mを示しており、図10のライン画像P9は、このタイミングで撮像されている。
図10に示すように、ライン画像P1の直前に撮像されたライン画像から、ライン画像P3の直前に撮像されたライン画像までのライン画像には、1つの頂点V1のみが含まれる。これらのライン画像では、新たに撮像されたライン画像ほど、両端のエッジ画素L及びRの間の距離Dが増大していく。即ち、推定部144は、対象画像内の媒体幅が基準画像内の媒体幅より増大している場合、現在までに取得したライン画像に含まれる媒体の頂点数は1であると判定することができる。
図10に示すように、ライン画像P1の直前に撮像されたライン画像から、ライン画像P6の直前に撮像されたライン画像までのライン画像には、2つの頂点V1、V2が含まれる。そして、ライン画像P3の直後に撮像されたライン画像から、ライン画像P6の直前に撮像されたライン画像までの各ライン画像では、両端のエッジ画素L及びRの間の距離Dが同一である。即ち、推定部144は、対象画像内の媒体幅が基準画像内の媒体幅と同一である場合、現在までに取得したライン画像に含まれる媒体の頂点数は2であると判定することができる。
図10に示すように、ライン画像P1の直前に撮像されたライン画像から、ライン画像P8までのライン画像には、3つの頂点V1、V2、V3が含まれる。そして、ライン画像P6の直後に撮像されたライン画像からライン画像P8までの各ライン画像では、新たに撮像されたライン画像ほど、両端のエッジ画素L及びRの間の距離Dが減少していき、且つ、媒体が存在している。即ち、推定部144は、対象画像内の媒体幅が基準画像内の媒体幅より減少し、且つ対象画像内に媒体が存在している場合、現在までに取得したライン画像に含まれる媒体の頂点数は3であると判定することができる。
図10に示すように、ライン画像P1の直前に撮像されたライン画像から、ライン画像P8の後に撮像されたライン画像までのライン画像には、4つの頂点V1、V2、V3、V4が含まれる。そして、ライン画像P8の後に撮像されたライン画像には、媒体Mが含まれない。即ち、推定部144は、対象画像内に媒体が存在しない場合、現在までに取得したライン画像に含まれる媒体の頂点数は4であると判定することができる。
次に、推定部144は、順次生成された選択ライン画像に含まれる媒体の垂直方向(副走査方向)、即ち媒体幅と直交する方向の媒体長さを検出する(ステップS214)。上記したように、ライン画像の垂直方向(副走査方向)の画素数は1である。推定部144は、所定幅以上の媒体幅が最初に検出された選択ライン画像から、最新の選択ライン画像又は媒体幅が最初に0になった選択ライン画像までの画像数を、選択ライン画像に含まれる媒体の媒体長さ(垂直方向の画素数)として検出する。
次に、推定部144は、検出した頂点数及び媒体長さに基づいて、媒体の第1形状、即ち媒体の形状がカードの形状であるか否かを推定する(ステップS215)。
推定部144は、検出された何れかの媒体幅が所定の長さを超える場合、媒体の形状がカードの形状でないと推定する。所定の長さは、例えばISO/IEC7810で規定されるIDカードのサイズに基づいて設定される。ISO/IEC7810で規定されるIDカードは、長辺が85.60mmであり且つ短辺が53.98mmである略矩形形状を有する。なお、IDカードの四つの頂点の角度は直角でなく、丸みを有していてもよい。所定の長さは、例えばこのIDカードの対角線の長さ(101.20mm)にマージンを加えた値(例えば102mm)に相当する画素数に設定される。このIDカードがどのように傾いて搬送されたとしても、撮像されるIDカードの幅は、規定された対角線の長さを超えない。そのため、推定部144は、媒体幅が所定の長さを超える場合、媒体の形状がカードの形状でないと判定することができる。
また、推定部144は、媒体長さが第1閾値以上であり且つ頂点数が2未満である場合、媒体の形状がカードの形状でないと推定する。
図11Aは、第1閾値について説明するための模式図である。
図11Aに示すように、第1閾値は、例えばISO/IEC7810で規定されるIDカードCの対角線Xと、その対角線Xに含まれない頂点との間の距離T1(45.66mm)にマージンを加えた値(例えば46mm)に相当する画素数に設定される。なお、距離T1は、IDカードCの長辺をW(85.60mm)、短辺をH(53.98mm)として、以下の関係式(1)、(2)を解くことにより算出される。
H2+W2=X2 (1)
H×W=X×T1 (2)
IDカードCが搬送される場合、IDカードCがどのように傾いていても、頂点V1が撮像位置を通過してからさらに距離T1だけ搬送されたときには、頂点V1と辺を共有する頂点V2又は頂点V3の少なくとも一方は、必ず撮像位置を通過する。そのため、推定部144は、媒体長さが第1閾値以上であり且つ頂点数が2未満である場合、その媒体はカードより大きい媒体であると判定することができる。
また、推定部144は、媒体長さが第2閾値以上であり且つ頂点数が3未満である場合、媒体の形状がカードの形状でないと推定する。
図11Bは、第2閾値について説明するための模式図である。
図11Bに示すように、第2閾値は、例えばISO/IEC7810で規定されるIDカードCの長辺Wの長さT2(85.60mm)にマージンを加えた値(例えば86mm)に相当する画素数に設定される。
IDカードCが搬送される場合、IDカードCがどのように搬送されても、頂点V1が撮像位置を通過してからさらに距離T2だけ搬送されたときには、頂点V1と辺を共有する頂点V2及び頂点V3の両方が、必ず撮像位置を通過する。そのため、推定部144は、媒体長さが第2閾値以上であり且つ頂点数が3未満である場合、その媒体はカードより大きい媒体であると判定することができる。
また、推定部144は、媒体長さが第3閾値以上であり且つ頂点数が4未満である場合、媒体の形状がカードの形状でないと推定する。
図11Cは、第3閾値について説明するための模式図である。
図11Cに示すように、第3閾値は、例えばISO/IEC7810で規定されるIDカードCの対角線Xの長さT3(101.20mm)にマージンを加えた値(例えば102mm)に相当する画素数に設定される。
IDカードCが搬送される場合、IDカードCがどのように傾いていても、頂点V1が撮像位置を通過してから距離T3だけ搬送される前に、他の全ての頂点V2~V4が撮像位置を通過する。そのため、推定部144は、媒体長さが第4閾値以上であり且つ頂点数が4でない場合、その媒体はカードより大きい媒体であると判定することができる。
また、推定部144は、媒体長さが第4閾値未満であり且つ頂点数が4である場合、媒体の形状がカードの形状でないと推定する。
図11Dは、第4閾値について説明するための模式図である。
図11Dに示すように、第3閾値は、例えばISO/IEC7810で規定されるIDカードCの短辺Hの長さT4(53.98mm)からマージンを引いた値(例えば53mm)に相当する画素数に設定される。
IDカードCが搬送される場合、IDカードCがどのように搬送されても、頂点V1が撮像位置を通過してから距離T4だけ搬送される前に、他の全ての頂点V2~V4が撮像位置を通過することはない。そのため、推定部144は、媒体長さが第4閾値未満であり且つ頂点数が4である場合、その媒体はカードより小さい媒体であると判定することができる。
一方、推定部144は、媒体長さが第2閾値以下であり且つ頂点数が3以上である場合、媒体の形状がカードの形状であると推定する。
図11Bに示すように、IDカードCが搬送される場合、IDカードCがどのように搬送されても、頂点V1が撮像位置を通過してからさらに距離T2だけ搬送されたときには、頂点V1と辺を共有する頂点V2及び頂点V3の両方が、必ず撮像位置を通過する。そのため、推定部144は、検出された媒体長さが第2閾値以下であり且つ検出された頂点数が3以上である場合、その媒体はカードと同等の大きさを有する媒体又カードより小さい媒体であると判定することができる。一般に、カードより小さい媒体が搬送される可能性は低いため、その媒体はカードであると推定される。
一方、推定部144は、上記の各条件が満たされず且つ頂点数が4である場合、媒体の形状がカードの形状であると推定する。
上記の各条件が満たされないまま、全ての頂点が撮像位置を通過した場合、推定部144は、その媒体はカードと同等の大きさを有する媒体又カードより小さい媒体であると判定することができる。一般に、カードより小さい媒体が搬送される可能性は低いため、その媒体はカードであると推定される。
一方、上記の各条件が満たされず且つ頂点数が4未満である場合、推定部144は、まだ媒体の形状を推定できないと判定する。
このように、推定部144は、頂点数と媒体搬送方向の媒体長さとに基づいて媒体の形状を推定することにより、媒体が傾いて搬送される場合でも、媒体がカードであるか否かを高精度に推定することができる。また、推定部144は、複雑な画像処理を実行することなく、媒体の形状を推定することができ、形状推定処理の処理負荷の増大を抑制することができる。また、推定部144は、順次生成されたライン画像に対して、リアルタイムで媒体の形状を推定するため、媒体全体が撮像される前に媒体の形状を推定することができる。特に、推定部144は、カード以外の媒体が搬送された場合に媒体の形状を早期に推定できるため、制御部141は、カード以外の媒体に対して後述する重送判定処理を早期に実行できる。一方、推定部144は、カード特有の特徴が検出されるまでは媒体の形状がカードの形状であると推定しないため、レシート等の長尺原稿が長手方向に向けて搬送された場合でも、媒体をカードと誤って推定することを防止することができる。
次に、推定部144は、媒体の形状として、第2形状、即ち媒体の外形を推定済みであるか否かを判定する(ステップS216)。第2形状を推定済みである場合、推定部144は、一連のステップを終了する。
一方、第2形状をまだ推定していない場合、推定部144は、ステップS108の処理と同様にして、媒体の全体が撮像されたか否かを判定する(ステップS217)。まだ媒体の全体が撮像されていない場合、推定部144は、一連のステップを終了する。
一方、媒体の全体が撮像された場合、推定部144は、現在までに取得した選択ライン画像を結合することにより入力画像を生成し、生成した入力画像からエッジ画素を検出する(ステップS218)。推定部144は、ステップS202の処理と同様にして、入力画像から左端エッジ画素及び右端エッジ画素を検出する。また、推定部144は、入力画像内の各垂直ラインについて、入力画像の上端から順に各画素と各画素の下側の画素との隣接差分値を算出し、隣接差分値がエッジ閾値以上である最初の画素を上端エッジ画素として検出する。また、推定部144は、入力画像内の各垂直ラインについて、入力画像の下端から順に各画素と各画素の上側の画素との隣接差分値を算出し、隣接差分値がエッジ閾値以上である最初の画素を下端エッジ画素として抽出する。推定部144は、入力画像内の各垂直ラインについて、入力画像の上端から順に各画素と各画素の下側の画素との隣接差分値を算出し、隣接差分値がエッジ閾値以上である最後の画素を下端エッジ画素として抽出してもよい。
次に、推定部144は、検出したエッジ画素から媒体の第2形状、即ち媒体の外形を推定し(ステップS219)、一連のステップを終了する。推定部144は、まず、エッジ画素から複数の直線を検出する。推定部144は、左端エッジ画素から媒体の左辺に対応する直線を検出し、右端エッジ画素から媒体の右辺に対応する直線を検出し、上端エッジ画素から媒体の上辺に対応する直線を検出し、下端エッジ画素から媒体の下辺に対応する直線を検出する。推定部144は、最小二乗法を用いて直線を検出する。なお、推定部144は、ハフ変換を用いて直線を検出してもよい。
また、推定部144は、左端エッジ画素及び右端エッジ画素の内、その水平位置が、垂直方向に隣接する左端エッジ画素及び右端エッジ画素の水平位置から所定距離以上離れている左端エッジ画素及び右端エッジ画素を除いて直線を検出してもよい。同様に、推定部144は、上端エッジ画素及び下端エッジ画素の内、その垂直位置が、水平方向に隣接する上端エッジ画素及び下端エッジ画素の垂直位置から所定距離以上離れている上端エッジ画素及び下端エッジ画素を除いて直線を検出してもよい。これにより、推定部144は、媒体が傾いて搬送された場合に、左端エッジ画素及び右端エッジ画素として検出された媒体の上端及び下端、又は、上端エッジ画素及び下端エッジ画素として検出された媒体の左端及び右端の影響を受けないように、直線を検出できる。
次に、推定部144は、検出した複数の直線の中から、二つずつが略直交する四つの直線を抽出する。推定部144は、まず原稿の左辺に対応する直線の中から直線を一つ選択し、原稿の右辺に対応する直線の中から、選択した直線と略平行(例えば±3°以内)する直線を抽出する。次に、推定部144は、媒体の上辺及び下辺にそれぞれ対応する直線の中から、原稿の左辺に対応する直線から選択した直線と略直交する(例えば90°に対して±3°以内)直線を抽出する。推定部144は、上記の条件を満たす直線の組合せの中で、各直線で囲まれる領域の面積が最も大きい組合せに係る四つの直線を抽出する。推定部144は、抽出した四つの直線で形成される領域を媒体の外形として推定する。
なお、推定部144は、検出した左端エッジ画素、右端エッジ画素、上端エッジ画素及び下端エッジ画素で囲まれる領域の外接矩形を媒体の外形として推定してもよい。
また、推定部144は、頂点数と媒体搬送方向の媒体長さとに基づいて媒体の形状がカードの形状であるか否かを推定するのでなく、媒体の外形のサイズに基づいて媒体の形状がカードの形状であるか否かを推定してもよい。その場合、推定部144は、ステップS219と同様にして媒体の外形を推定し、推定した媒体の外形のサイズとIDカードのサイズとの差が閾値以下であるか否かにより、媒体の形状がカードの形状であるか否かを推定する。
このように、推定部144は、選択部143により選択された面を撮像したライン画像から、媒体の形状を推定する。これにより、推定部144は、媒体と裏当て部材の境界が明瞭に識別されるライン画像から媒体の形状を推定することができ、媒体の形状を高精度に推定することができる。
図12は、重送判定処理の動作の例を示すフローチャートである。
以下、図12に示したフローチャートを参照しつつ、媒体搬送装置100の重送判定処理の動作の例を説明する。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶装置130に記憶されているプログラムに基づき主に処理回路140により媒体搬送装置100の各要素と協働して実行される。図12に示す動作のフローは、図5のステップS103において、制御部141が媒体の搬送を開始した後、定期的に実行される。
最初に、制御部141は、超音波センサ114から超音波信号を取得する(ステップS301)。
次に、制御部141は、形状推定処理において、媒体の第1形状が既に推定されたか否か、即ち媒体の形状がカードの形状であるか否かが推定されたか否かを判定する(ステップS302)。
媒体の形状がカードの形状であるか否かがまだ推定されていない場合、制御部141は、取得した超音波信号の信号値を記憶装置130に記憶し(ステップS303)、一連のステップを終了する。
一方、媒体の形状がカードの形状であるか否かが推定された場合、制御部141は、媒体の形状がカードの形状であると推定されたか否かを判定する(ステップS304)。
媒体の形状がカードの形状であると推定された場合、制御部141は、重送が発生しているか否かの判定を停止し(ステップS305)、一連のステップを終了する。
一方、媒体の形状がカードの形状でないと判定された場合、制御部141は、現在までに取得した超音波信号の各信号値が重送閾値未満であるか否かを判定する(ステップS306)。
図13は、超音波信号の特性について説明するための模式図である。
図13のグラフ1300において、実線1301は媒体として一枚の用紙が搬送されている場合の超音波信号の特性を示し、点線1302は用紙の重送が発生している場合の超音波信号の特性を示す。グラフ1300の横軸は時間を示し、縦軸は超音波信号の信号値を示す。重送が発生していることにより、区間1303において点線1302の超音波信号の信号値が低下している。重送閾値は、一枚の用紙が搬送されているときの超音波信号の信号値S1と、用紙の重送が発生しているときの超音波信号の信号値S2との間の値に設定される。これにより、制御部141は、超音波信号の信号値が重送閾値未満であるか否かを判定することによって媒体の重送が発生したか否かを判定することができる。
一方、一点鎖線1304は、プラスチック製のカードが一枚だけ搬送されている場合の超音波信号の特性を示す。カードが搬送されている場合、超音波信号の信号値は重送閾値より小さくなるため、制御部141は、媒体の重送が発生したと誤って判定する。特に、薄紙の重送が発生している場合の超音波信号の信号値は、カードが搬送されている場合の超音波信号の信号値に近く、重送閾値をその二つの信号値の間の値に設定することは困難である。しかしながら、制御部141は、媒体がカードであると推定された場合、重送の検出を停止するため、媒体の重送の検出誤りを防止できる。
制御部141は、現在までに取得した超音波信号の信号値の内の何れかが重送閾値未満である場合、重送が発生していると判定し(ステップS307)、一連のステップを終了する。この場合、制御部141は、図5のステップS106において、媒体の重送が発生していると判定し、ステップS107において、媒体の搬送を停止するように、搬送部を制御する。一方、制御部141は、現在までに取得した超音波信号の信号値の全てが重送閾値以上である場合、重送が発生していないと判定し(ステップS308)、一連のステップを終了する。このように、制御部141は、超音波信号を重送閾値と比較することにより媒体の重送が発生しているか否かを判定する。
また、制御部141は、搬送される媒体の形状がカードの形状であるか否かに応じて、重送が発生しているか否かの判定を停止する。即ち、制御部141は、推定部144により推定された形状に基づいて、搬送部を制御する。
なお、制御部141は、推定部144により推定された形状に応じて、媒体の搬送速度(駆動装置121のモータ回転速度)が異なるように搬送部を制御してもよい。その場合、制御部141は、搬送される媒体がカードである場合の搬送速度を、搬送される媒体がカードでない場合の搬送速度より低く(遅く)して、滑りやすいプラスチック製のカードがより安定して搬送されるように制御する。
また、推定部144により推定された形状に基づく搬送部の制御、又は、媒体画像の切り出しの内の何れかは省略されてもよい。推定された形状に基づく媒体画像の切り出しが省略される場合、制御部141は、媒体の各面を撮像した各画像から媒体の外形を検出し、各画像から、検出した外形の領域を切り出す。
また、推定部144は、選択部143により選択された媒体の面を撮像したライン画像から、公知の画像処理技術を利用して、媒体の形状として、媒体のサイズ(幅及び/又は長さ)、搬送される媒体の傾き等を推定してもよい。その場合、制御部141は、推定された媒体のサイズに従って、第1ライン画像及び第2ライン画像から切り出す媒体画像のサイズを決定して、媒体画像を切り出す。または、制御部141は、搬送される媒体の傾きが大きいほど媒体の搬送速度が低くなるように搬送部を制御して、媒体の傾きがより大きくなることを抑制する。
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、媒体の両面をそれぞれ撮像したライン画像から何れかの面を選択し、選択した面を撮像したライン画像から媒体の形状を推定する。これにより、媒体の両面を撮像する媒体搬送装置100において、搬送される媒体の形状を推定するための媒体の面をより早期に選択することが可能となった。
特に、媒体搬送装置100は、表面の色と裏面の色とが異なる媒体が搬送された場合に、より適切な面を利用して、媒体の形状を良好に推定することが可能となった。
また、利用者は、媒体搬送装置100にカードを搬送させる際に、媒体の重送が発生したと誤って検出されることを防止するために重送検出機能をOFFに設定する必要がなくなり、媒体搬送装置100は、利用者の利便性を向上させることが可能となった。
また、媒体搬送装置100は、厚さセンサ等の特殊なセンサを使用せずに、媒体がカードであるか否かを判定できるため、装置コストの増大を抑制することが可能となった。
図14は、他の実施形態に係る形状推定処理の一部の動作の例を示すフローチャートである。
図14に示す形状推定処理は、図6に示す形状推定処理の代わりに実行される。図14のステップS401~S402の処理は、図6のステップS201~S202の処理と同様であるため、詳細な説明を省略し、以下ではステップS403~S409の処理についてのみ説明する。
選択部143は、第1ライン画像及び第2ライン画像のそれぞれから検出された各エッジ画素の階調値と各エッジ画素の周辺画素の階調値とを比較した比較値を算出する(ステップS403)。選択部143は、各エッジ画素を検出した際に使用した、各エッジ画素との隣接差分値がエッジ閾値以上であった画素を各エッジ画素に対する周辺画素として設定する。選択部143は、第1ライン画像及び第2ライン画像のそれぞれについて、各ライン画像に含まれる各エッジ画素の階調値と各エッジ画素の周辺画素の階調値の差の絶対値の第1統計値(平均値、最大値又は最小値等)を各ライン画像の比較値として算出する。または、選択部143は、各エッジ画素の階調値と各エッジ画素の周辺画素の階調値の内、大きい方の階調値を小さい方の階調値で除算した除算値の第1統計値を比較値として算出してもよい。
図8Aのグラフ801に示した例では、エッジ画素X1の周辺画素として画素X2が設定され、エッジ画素X3の周辺画素として画素X4が設定される。エッジ画素X1の画素値と周辺画素X2の画素値の階調値の差又は比、及び、エッジ画素X3の画素値と周辺画素X4の画素値の階調値の差又は比が大きい程、即ち、媒体M1と裏当て部材B又は影N1との境界が明瞭である程、比較値が大きくなる。
また、選択部143は、エッジ画素を含む画素群の階調値と、周辺画素を含む画素群の階調値とを比較することにより比較値を算出してもよい。その場合、選択部143は、エッジ画素と、エッジ画素から周辺画素の反対側に所定距離(例えば5画素)内に位置する画素とをエッジ画素群として抽出する。また、選択部143は、周辺画素と、周辺画素からエッジ画素の反対側に所定距離内に位置する画素とを周辺画素群として抽出する。選択部143は、各エッジ画素群に含まれる画素の階調値の第2統計値(平均値、中央値、最頻値、最大値又は最小値等)と、各周辺画素群に含まれる画素の階調値の第2統計値との差の絶対値を算出する。そして、選択部143は、算出した絶対値の第1統計値を各ライン画像の比較値として算出する。または、選択部143は、各エッジ画素群に含まれる画素の階調値の第2統計値と、各周辺画素群に含まれる画素の階調値の第2統計値との内、大きい方の第2統計値を小さい方の第2統計値で除算した除算値の第1統計値を比較値として算出する。
この場合、図8Aのグラフ801に示した例では、エッジ画素X1について、エッジ画素群として画素群G1が設定され、周辺画素群として画素群G2が設定される。また、エッジ画素X3について、エッジ画素群として画素群G3が設定され、周辺画素群として画素群G4が設定される。選択部143は、複数の画素の階調値を用いて比較値を算出するため、ノイズ等の影響を抑制し、比較値の信頼性をより向上させることができる。
次に、選択部143は、所定数以上の第1ライン画像及び所定数以上の第2ライン画像からそれぞれエッジ画素が検出されたか否かを判定する(ステップS404)。所定数は、1以上の数に設定される。選択部143は、所定数を2以上の数、特に大きい数に設定することにより、媒体の形状を推定するのに適した媒体の面をより高精度に選択できる。一方、選択部143は、所定数を小さい数に設定することにより、媒体の形状を推定するための媒体の面を短時間で選択できる。
まだ所定数以上の第1ライン画像及び第2ライン画像からエッジ画素が検出されていない場合、選択部143は、ステップS108の処理と同様にして、媒体の全体が撮像されたか否かを判定する(ステップS405)。媒体の全体が撮像されていない場合、選択部143は、一連のステップを終了する。
一方、所定数以上の第1ライン画像及び第2ライン画像からエッジ画素が検出された場合、又は、媒体の全体が撮像された場合、選択部143は、エッジ画素の階調値と周辺画素の階調値との比較に基づく第3統計値を算出する(ステップS406)。選択部143は、第3統計値として、各ライン画像から算出された比較値の平均値、中央値、最頻値、最大値又は最小値を算出する。
所定数以上の第1ライン画像及び第2ライン画像からエッジ画素が検出された場合、選択部143は、その所定数の第1ライン画像から算出された比較値の第3統計値と、その所定数の第2ライン画像から算出された比較値の第3統計値とを算出する。一方、媒体の全体が撮像された場合、選択部143は、現在までにエッジ画素が検出された第1ライン画像から算出された比較値の第3統計値と、現在までにエッジ画素が検出された第2ライン画像から算出された比較値の第3統計値とを算出する。
次に、選択部143は、第1ライン画像から算出された第3統計値が、第2ライン画像から算出された第3統計値以上であるか否かを判定する(ステップS407)。第1ライン画像から算出された第3統計値が、第2ライン画像から算出された第3統計値以上である場合、選択部143は、第1ライン画像に対応する面(表面)を、媒体の形状を推定するための面として選択し(ステップS408)、一連のステップを終了する。第1ライン画像から算出された第3統計値が、第2ライン画像から算出された第3統計値未満である場合、選択部143は、第2ライン画像に対応する面(裏面)を、媒体の形状を推定するための面として選択し(ステップS409)、一連のステップを終了する。なお、選択部143は、媒体の全体が撮像された場合、予め設定された媒体の面を選択してもよい。
このように、選択部143は、所定数の第1ライン画像及び所定数の第2ライン画像のそれぞれから検出された各エッジ画素の階調値と各エッジ画素の周辺画素の階調値との比較に基づく第3統計値を算出する。そして、選択部143は、算出した第3統計値に基づいて、媒体の一方の面及び他方の面の内の何れかの面を、媒体の形状を推定するための面として選択する。即ち、選択部143は、検出されたエッジ画素の階調値とそのエッジ画素の周辺画素の階調値との比較に基づいて、媒体の一方の面及び他方の面の内の何れかの面を選択する。
これにより、選択部143は、裏当て部材との境界(コントラスト)がより明瞭に識別される面を選択することできる。また、選択部143は、複雑な画像処理を実行することなく、媒体の面を選択することができ、形状推定処理の処理負荷の増大を抑制することができる。また、選択部143は、順次生成されたライン画像に対して、リアルタイムで媒体の面を選択するため、媒体全体が撮像される前に媒体の面を選択することができ、形状推定処理の処理負荷の軽減及びメモリ等のリソースの使用量の軽減を図ることができる。また、選択部143が媒体の面を早期に選択することにより、推定部144は、媒体の形状、特に第1形状を早期に推定することができる。
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、エッジ画素の階調値とその周辺画素の階調値との比較に基づいて、媒体の形状を推定するための媒体の面を選択する場合にも、媒体の面をより早期に選択することが可能となった。
図15は、さらに他の実施形態に係る形状推定処理の動作の例を示すフローチャートである。
図15に示す形状推定処理は、図6に示す形状推定処理の代わりに実行される。図15のステップS501~S502の処理は、図6のステップS201~S202の処理と同様であるため、詳細な説明を省略し、以下ではステップS503~S509の処理についてのみ説明する。
選択部143は、第1ライン画像及び第2ライン画像のそれぞれから検出された各エッジ画素から所定距離内の画素の階調値のばらつき度合い及び/又は各エッジ画素の周辺画素から所定距離内の画素の階調値のばらつき度合いを算出する(ステップS503)。選択部143は、図14のステップS403の処理と同様にして、周辺画素、エッジ画素群及び周辺画素群を抽出する。
選択部143は、エッジ画素群に含まれる画素の内、エッジ画素の階調値を中心とする所定範囲の階調値、即ちエッジ画素の階調値との差が所定閾値以下である階調値を有する画素を抽出する。また、選択部143は、周辺画素群に含まれる画素の内、周辺画素の階調値を中心とする所定範囲の階調値、即ち周辺画素の階調値との差が所定閾値以下である階調値を有する画素を抽出する。
選択部143は、第1ライン画像及び第2ライン画像のそれぞれについて、各ライン画像内の各エッジ画素群及び/又は各周辺画素群から抽出した画素の数の第4統計値の逆数を各ライン画像のばらつき度合いとして算出する。第4統計値は、平均値、中央値、最頻値、最小値又は最大値である。なお、選択部143は、その第4統計値を上限値から減算した減算値をばらつき度合いとして算出してもよい。また、選択部143は、各エッジ画素群及び/又は各周辺画素群においてエッジ画素又は周辺画素から連続して抽出された画素(相互に隣接する画素)の数の第4統計値の逆数をばらつき度合いとして算出してもよい。また、選択部143は、その第4統計値を上限値から減算した減算値をばらつき度合いとして算出してもよい。また、選択部143は、各エッジ画素群及び/又は各周辺画素群に含まれる各画素の階調値の分散の第4統計値をばらつき度合いとして算出してもよい。また、選択部143は、各エッジ画素群及び/又は各周辺画素群に含まれる各画素の階調値の最大値から最小値を減算した減算値の第4統計値、又は、その減算値を各画素の平均値で除算した除算値の第4統計値をばらつき度合いとして算出してもよい。
図8Aのグラフ801に示した例では、画素群G1~G4において、各画素群内の各画素の階調値のばらつきが大きいほど大きくなり、ばらつきが小さいほど小さくなるように、ばらつき度合いが算出される。
次に、選択部143は、所定数以上の第1ライン画像及び所定数以上の第2ライン画像からそれぞれエッジ画素が検出されたか否かを判定する(ステップS504)。
まだ所定数以上の第1ライン画像及び第2ライン画像からエッジ画素が検出されていない場合、選択部143は、ステップS108の処理と同様にして、媒体の全体が撮像されたか否かを判定する(ステップS505)。媒体の全体が撮像されていない場合、選択部143は、一連のステップを終了する。
一方、所定数以上の第1ライン画像及び第2ライン画像からエッジ画素が検出された場合又は媒体の全体が撮像された場合、選択部143は、エッジ画素又は周辺画素から所定距離内の画素の階調値のばらつきに基づく第5統計値を算出する(ステップS506)。選択部143は、第5統計値として、エッジ画素又は周辺画素から所定距離内の画素の階調値のばらつき度合いの平均値、中央値、最頻値、最大値又は最小値を算出する。
所定数以上の第1ライン画像及び第2ライン画像からエッジ画素が検出された場合、選択部143は、その所定数の第1ライン画像から算出されたばらつき度合いの第5統計値と、その所定数の第2ライン画像から算出されたばらつき度合いの第5統計値を算出する。一方、媒体の全体が撮像された場合、選択部143は、現在までにエッジ画素が検出された第1ライン画像から算出されたばらつき度合いの第5統計値と、現在までにエッジ画素が検出された第2ライン画像から算出されたばらつき度合いの第5統計値を算出する。
次に、選択部143は、第1ライン画像から算出された第5統計値が、第2ライン画像から算出された第5統計値以上であるか否かを判定する(ステップS507)。第1ライン画像から算出された第5統計値が、第2ライン画像から算出された第5統計値未満である場合、選択部143は、第1ライン画像に対応する面(表面)を、媒体の形状を推定するための面として選択し(ステップS508)、一連のステップを終了する。第1ライン画像から算出された第5統計値が、第2ライン画像から算出された第5統計値以上である場合、選択部143は、第2ライン画像に対応する面(裏面)を、媒体の形状を推定するための面として選択し(ステップS509)、一連のステップを終了する。なお、選択部143は、媒体の全体が撮像された場合、予め設定された媒体の面を選択してもよい。
このように、選択部143は、所定数の第1ライン画像及び所定数の第2ライン画像のそれぞれから検出された各エッジ画素又は各エッジ画素の周辺画素から所定距離内の画素の階調値のばらつきに基づく統計値を算出する。そして、選択部143は、算出した統計値に基づいて、媒体の一方の面及び他方の面の内の何れかの面を、媒体の形状を推定するための面として選択する。即ち、選択部143は、検出されたエッジ画素又はそのエッジ画素の周辺画素から所定距離内の画素の階調値のばらつきに基づいて、媒体の一方の面及び他方の面の内の何れかの面を選択する。
これにより、選択部143は、裏当て部材との境界の周辺において媒体側の領域及び/又は裏当て部材側の領域の濃淡(ムラ、ノイズ)がより小さい面を選択することでき、推定部144は、媒体の形状をより安定的に推定することができる。また、選択部143は、複雑な画像処理を実行することなく、媒体の面を選択することができ、形状推定処理の処理負荷の増大を抑制することができる。また、選択部143は、順次生成されたライン画像に対して、リアルタイムで媒体の面を選択するため、媒体全体が撮像される前に媒体の面を選択することができ、形状推定処理の処理負荷の軽減及びメモリ等のリソースの使用量の軽減を図ることができる。また、選択部143が媒体の面を早期に選択することにより、推定部144は、媒体の形状、特に第1形状を早期に推定することができる。
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、エッジ画素又は周辺画素から所定距離内の画素の階調値のばらつきに基づいて、媒体の形状を推定するための媒体の面を選択する場合にも、媒体の面をより早期に選択することが可能となった。
図16は、他の実施形態に係る重送判定処理の一部の動作の例を示すフローチャートである。
図16に示す重送判定処理は、図12に示す重送判定処理の代わりに実行される。図16のステップS601~S604、S608~S610の処理は、図12のステップS301~S304、S306~S308の処理と同様であるため、詳細な説明を省略し、以下ではステップS605~S607の処理についてのみ説明する。
ステップS604において、媒体の形状がカードの形状であると判定された場合、制御部141は、現在までに取得した超音波信号の各信号値が第2重送閾値未満であるか否かを判定する(ステップS605)。第2重送閾値は、カードが搬送されているか用紙の重送が発生しているかを判別できるように、図13に示すカードが搬送されているときの超音波信号の信号値S3と、用紙の重送が発生しているときの超音波信号の信号値S2との間の値に設定される。なお、重送の検出誤りが発生することを防止するためには、カードが搬送されていないときに使用される重送閾値は、用紙の重送が発生しているときの超音波信号の信号値S2より十分に大きい値に設定されることが好ましい。そのため、重送閾値は、カードが搬送されているときの超音波信号の信号値S3より大きい値に設定される。即ち、媒体の形状がカードの形状である場合の第2重送閾値は、媒体の形状がカードの形状でない場合の重送閾値より小さい値に設定される。
制御部141は、現在までに取得した超音波信号の信号値の内の何れかが第2重送閾値未満である場合、重送が発生していると判定し(ステップS606)、一連のステップを終了する。この場合、制御部141は、図5のステップS106において、媒体の重送が発生していると判定し、ステップS107において、媒体の搬送を停止するように、搬送部を制御する。一方、制御部141は、現在までに取得した超音波信号の信号値の全てが第2重送閾値以上である場合、重送が発生していないと判定し(ステップS607)、一連のステップを終了する。このように、制御部141は、搬送される媒体の形状がカードの形状であるか否かに応じて、重送が発生しているか否かを判定するための重送閾値を変更する。
以上詳述したように、媒体搬送装置100は、媒体の形状がカードの形状であるか否かに応じて、重送閾値を変更する場合にも、媒体の形状を推定するための媒体の面をより早期に選択し、搬送部を適切に制御することが可能となった。
なお、媒体搬送装置100は、図6のステップS203~S209、図14のステップS403~S409及び図15のステップS503~S509に示した媒体の面の選択処理の内の一つだけを実行するのでなく、二つ以上を組み合わせて実行してもよい。
その場合、選択部143は、各ライン画像から検出されたエッジ画素の数が大きいほど高くなるように、各ライン画像の第1評価値を算出する。また、選択部143は、各ライン画像について算出された比較値が大きいほど高くなるように、各ライン画像の第2評価値を算出する。また、選択部143は、各ライン画像について算出されたばらつき度合いが小さいほど高くなるように、各ライン画像の第3評価値を算出する。選択部143は、第1評価値、第2評価値及び第3評価値の内の二つ以上の評価値の和、積又は重み付き和を評価値として算出し、算出した評価値が大きい方のライン画像に対応する面を選択する。これにより、選択部143は、媒体の形状を推定するのにより適した面を選択することができる。
図17は、さらに他の実施形態に係る媒体搬送装置における処理回路240の概略構成を示す図である。処理回路240は、媒体搬送装置100の処理回路140の代わりに使用され、制御回路241、検出回路242、選択回路243及び推定回路244等を有する。
なお、処理回路が有する各部は、それぞれ独立した集積回路、マイクロプロセッサ、ファームウェア等で構成されてもよい。また、処理回路の一部は回路で構成され、一部はプロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールで構成されてもよい。
制御回路241は、制御部の一例であり、制御部141と同様の機能を有する。制御回路241は、操作装置105から操作信号を、第1媒体センサ111から第1媒体信号を、第2媒体センサ117から第2媒体信号を受信し、受信した各信号に応じて駆動装置121を駆動して搬送部を制御する。また、制御回路241は、撮像装置118からライン画像を受信して記憶装置130に記憶する。制御回路241は、記憶装置130から媒体の形状の推定結果を読み出し、推定結果に基づいて各ライン画像から媒体画像を切り出してインタフェース装置122を介して不図示の情報処理装置へ出力する。また、制御回路241は、超音波センサ114から超音波信号を受信し、超音波信号に基づいて媒体の重送が発生しているか否かを判定し、媒体の重送が発生していると判定した場合、媒体の搬送を停止するように搬送部を制御する。また、制御回路241は、記憶装置130から媒体の形状の推定結果を読み出し、推定結果に基づいて搬送部を制御する。
検出回路242は、検出部の一例であり、検出部142と同様の機能を有する。検出回路242は、記憶装置130から各ライン画像を読み出し、各ライン画像からエッジ画素を検出し、検出結果を記憶装置130に記憶する。
選択回路243は、選択部の一例であり、選択部143と同様の機能を有する。選択回路243は、記憶装置130からエッジ画素の検出結果を読み出し、エッジ画素に基づいて、媒体の形状を推定するための媒体の面を選択し、選択結果を記憶装置130に記憶する。
推定回路244は、推定部の一例であり、推定部144と同様の機能を有する。推定回路244は、媒体の面の選択結果を読み出すとともに、選択された面を撮像したライン画像を読み出し、読み出したライン画像から媒体の形状を推定し、推定結果を記憶装置130に記憶する。
以上詳述したように、媒体搬送装置は、処理回路240を用いる場合においても、搬送される媒体の形状を推定するための媒体の面をより早期に選択することが可能となった。