JP7320954B2 - 離型フィルム - Google Patents

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Description

本発明は離型フィルムに関し、詳細にはセルロースアシレート樹脂フィルムやポリカーボネート樹脂フィルムなどの樹脂フィルムのキャスト製膜に好適な離型フィルム(支持フィルム)に関する。
離型フィルムは、樹脂フィルムのキャスト製膜用工程フィルム(支持フィルム)、セラミックコンデンサーのグリーンシート成形用工程フィルム、粘着シートの保護フィルム、あるいは感光性樹脂層(フォトレジスト層)の支持基材や保護フィルムとして利用されている。
樹脂フィルムのキャスト製膜用工程フィルム(離型フィルム)として、基材フィルム上にシリコーン樹脂からなる離型層を備えた離型フィルムが知られている(特許文献1、2)。
また、基材フィルム上にメラミン樹脂からなる離型層を備えた離型フィルムが知られている(特許文献3~5)
特開2010-6079号公報 特開2015-107606号公報 特開平11-300896号公報 特開2008-213416号公報 特開2014-151448号公報
例えば、光学用途に使用される樹脂フィルムは、膜が均一で平滑性が高いことが好ましい。しかし、樹脂フィルムのキャスト製膜において、上記特許文献1~5に記載された離型フィルムを用いても、樹脂フィルムの平滑性および均一性を十分に高めることはできなかった。
また、キャスト製膜の製膜工程において、樹脂フィルムの浮き上がりや膜剥がれを抑制するために、離型フィルムと樹脂フィルムとが適度に密着していることが好ましい。しかし、一方、製膜後の剥離工程においては、離型フィルムと樹脂フィルムとが比較的容易に剥離できることが好ましい。
そこで、本発明の目的は、樹脂フィルムのキャスト製膜に好適な離型フィルムを提供することにある。つまり、製膜時の浮き上がりや膜剥がれが抑制され、製膜後の剥離性が良好であって、かつ膜の均一性および平滑性の高い樹脂フィルムを製造することができる離型フィルムを提供することにある。
本発明は、上記目的は以下の発明によって達成された。
[1]基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムであって、前記離型層が該離型層を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を80質量%以上含有し、前記離型層の表面粗さSRa(A)が5.0nm未満であることを特徴とする、離型フィルム。
本発明によれば、例えば、樹脂フィルムのキャスト製膜において、製膜工程における浮き上がりや膜剥がれが抑制され、製膜後の剥離性が良好であって、かつ膜の均一性および平滑性の高い樹脂フィルムを製造することができる離型フィルムを提供することができる。
本発明の離型フィルムは、樹脂フィルムのキャスト製膜用工程フィルム(支持フィルム)として好適である。以下、樹脂フィルムのキャスト製膜を例に挙げて説明する。但し、本発明はこれに限定されない。
樹脂フィルムのキャスト製膜法(ソルベントキャスト製膜法、溶液流延製膜法とも言う)は、樹脂溶液を離型フィルムの離型層上にキャスト(流延)して樹脂フィルムを製造する方法である。樹脂フィルムを製膜した後、離型フィルムと樹脂フィルムは剥離される。
本発明の離型フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に、メラミン樹脂を主成分とする離型層を有する。つまり、本発明における離型層は、該離型層を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を80質量%以上含有する。
離型層がメラミン樹脂を樹脂全体に対して80質量%以上含有し、かつ離型層の表面粗さSRa(A)が5.0nm未満であることによって、キャスト製膜工程における樹脂溶液の流延性が良好となり均一に製膜することができる。これによって得られた樹脂フィルムには高い平滑性が付与される。
また、離型層がメラミン樹脂を樹脂全体に対して80質量%以上含有することによって、キャスト製膜された樹脂と離型層との間に適度な密着性が付与されるので製膜時に樹脂の浮き上がりや膜剥がれが抑制できる。
また、離型層がメラミン樹脂を樹脂全体に対して80質量%以上含有することによって、樹脂フィルム製膜後の剥離性が良好となる。
上記観点から、離型層はメラミン樹脂を樹脂全体に対して90質量%以上含有することが好ましく、95質量%以上含有することがより好ましく、98質量%以上含有することが特に好ましい。上限は100質量%である。
メラミン樹脂は、メラミン化合物が重縮合したものである。上記メラミン化合物としては、メチロール化メラミン、アルキルエーテル化メラミンが挙げられる。つまり、本発明におけるメラミン樹脂としては、メチロール化メラミン樹脂、アルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましい。離型層の膜強度を向上させ、離型層と基材フィルムとの密着性を向上させるという観点から、アルキルエーテル化メラミン樹脂がより好ましく、さらに部分アルキルエーテル化メラミン樹脂が好ましい。
上記メチロール化メラミンは、例えば、メラミンまたはメラミン誘導体とホルムアルデヒドとの付加反応によって得られる。アルキルエーテル化メラミンは、例えば、上記メチロール化メラミンのメチロール基をアルコールによって部分的もしくは完全にエーテル化することによって得られる。アルキルエーテル化メラミンにおけるアルキルは炭素1~6が好ましく、炭素数1~4がより好ましい。
上記メラミン誘導体としては、例えば、グアナミン、ベンゾグアナミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物などが挙げられる。
また、エーテル化に用いられるアルコールとしては、炭素数1~6のアルコールが好ましく、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコールなどが挙げられる。
メラミン化合物としては、上記したメチロール化メラミンおよびアルキルエーテル化メラミンが好ましく、これらの化合物は下記一般式(1)で表すことができる。
Figure 0007320954000001
式中、R~Rはそれぞれ独立的に、水素原子、メチロール基、またはアルコキシメチル基を表すが、そのうちの少なくとも1個はメチロール基またはアルコキシメチル基である。
~Rのうちの3個以上がメチロール基またはアルコキシメチル基であることが好ましく、4個以上がメチロール基またはアルコキシメチル基であることがより好ましく、さらに5個以上がメチロール基またはアルコキシメチル基であることが好ましい。
特に、R~Rの全てメチロール基および/またはアルコキシメチル基であることが好ましく、メチロール基とアルコキシメチル基とが混在することが最も好ましい。ここで、メチロール基とアルコキシメチル基とが混在するとは、メチロール化メラミンがアルコールによって部分的にエーテル化されていることを意味する。
ここで、アルコキシメチル基(-CHOR)のアルコキシ基(OR)としては、炭素数1~6のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基が挙げられる。これらの中でも炭素数1~4のアルコキシ基がより好ましい。
アルコキシメチル基(-CHOR)は、メチロール基(-CHOH)をアルコールによってエーテル化することによって得られる。アルコールとしては前述したように炭素数1~6のアルコールが好ましく用いられる。
上記一般式(1)に含まれるメラミン化合物としては、R~Rの1~6個がメチロール基であるメチロール化メラミン、R~Rの1~6個がアルコキシメチル基であるアルキルエーテル化メラミン、およびR~Rの1~5個がメチロール基でかつ1~5個がアルコキシメチル基である部分アルキルエーテル化メラミンである。
上記メラミン化合物の中でも、R~Rの全てがメチロール基であるメチロール化メラミンが部分エーテル化された部分アルキルエーテル化メラミンが特に好ましい。さらに、部分アルキルエーテル化メラミンのアルキルとしては炭素数1~6が好ましく、1~4がより好ましい。特にブチル基が好ましい。
部分アルキルエーテル化メラミンのエーテル化度は、10~95%が好ましく、15~90%がより好ましく、20~80%が特に好ましい。ここで、エーテル化度は、エーテル化されたメチロール基とエーテル化されていないメチロール基の総モル量に対するエーテル化されたメチロール基のモル量の比率である。エーテル化度は、例えばエーテル化するためのアルコールの添加量を調整することによって制御することができる。
上記した部分アルキルエーテル化メラミンを用いて形成された離型層は、樹脂フィルムのキャスト製膜時の樹脂溶液の流延性がさらに良好となり、また樹脂と離型層との間に適度な密着性が付与されるので製膜時に樹脂の浮き上がりや膜剥がれがさらに抑制され、かつ樹脂フィルム製膜後の剥離性がさらに良好となる。また、離型層の硬度が比較的高くなるので、耐熱性や耐溶剤性が良好になる。
上記したメラミン化合物は、一般に市販されており、市販品の中から適宜選択して用いることができる。市販品としては、例えば、DIC(株)の“スーパーベッカミン(登録商標)”L-105-60、同J-820-60、同J-821-60、同J-1090-65、同J-110-60、同J-117-60、同J-127-60、同J-166-60B、同J-105-60、同G840、同G821、三井化学(株)の“ユーバン(登録商標)”20SB、同20SE60、同21R、同22R、同122、同125、同128、同220、同225、同228、同28-60、同2020、同60R、同62、同62E、同360、同165、同166-60、同169、同2061、住友化学(株)の“スミマール(登録商標)”M-100、同M-40S、同M-55、同M-66B、日本サイテックインダストリーズの“サイメル(登録商標)”303、同325、同327、同350、同370、同235、同202、同238、同254、同272、同1130、(株)三和ケミカルの“ニカラック(登録商標)”MS17、同MX15、同MX430、同MX600、ハリマ化成(株)のバンセミンSM-975、同SM-960、日立化成(株)の“メラン(登録商標)”265、同2650Lなどが挙げられる。
本発明における離型層は、例えば、上記メラミン化合物を含有する塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥・加熱することによって得られる。メラミン化合物は加熱すると重縮合を起こしメラミン樹脂となる。
離型層を形成するための塗布液の塗布は、例えば、ウェットコーティング法により行うことができる。ウェットコーティング法としては、例えば、リバースコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、ダイコート法、スピンコート法、エクストルージョンコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
塗布後の乾燥・加熱は、通常オンラインで連続的に実施される。乾燥・加熱工程は、例えば、50~100℃で予備乾燥し、100~160℃で加熱することが好ましい。予備乾燥時間は10~100秒、加熱時間は10~100秒が適当である。
離型層を形成するための塗布液は、酸触媒を含有することが好ましい。酸触媒は、メラミン化合物の重縮合を促進することができる。
酸触媒としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。酸触媒を含有する場合の酸触媒の含有量は、メラミン化合物に対して、1~20質量%の範囲が好ましく、2~15質量%の範囲がより好ましく、3~10質量%の範囲が特に好ましい。
離型層は、メラミン樹脂以外の樹脂を含有することができる。例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂を含有することができる。離型層におけるメラミン樹脂以外の樹脂の含有量は、樹脂全体に対して20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、2質量%が特に好ましい。
離型層は、従来から離型剤として一般的に知られている、長鎖アルキル基含有樹脂(炭素数8以上のアルキル基含む樹脂)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂は、含有しないことが好ましい。これらの樹脂を含有すると、キャスト製膜時の樹脂溶液の流延性や密着性が低下することがある。これらの樹脂は、含有する場合であっても、樹脂全体に対して5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下が特に好ましい。
離型層は、さらに、帯電防止剤、界面活性剤などを含有することができる。
本発明における離型層は、その表面粗さSRa(A)が5.0nm未満である。これによって、離型フィルムの離型層上に樹脂溶液を流延してキャスト製膜された樹脂フィルムの表面平滑性が高くなる。上記観点から、離型層の表面粗さSRa(A)は、4.0nm未満が好ましく、3.0nm未満がより好ましく、2.5nm未満が特に好ましい。下限は、特に限定されないが、0.1nm程度である。
ここで、表面粗さSRa(A)は、後述の方法により測定する。
離型層の表面粗さSRa(A)を5.0nm未満に制御する方法は、特に限定されないが、例えば、
(i)表面の平滑性が高い基材フィルムを用いる、
(ii)離型層の塗布面が均一になるように塗布形成する、
(iii)離型層には実質的に粒子(フィラー)を含有させない、
(iv)離型層の厚みを比較的大きくして基材フィルムの表面性の影響を小さくする、
などが挙げられる。
上記(i)としては、例えば、実質的に粒子(フィラー)を含有しない基材フィルムを用いる態様が挙げられる。ここで、実質的に粒子を含有しないとは、粒子を意図的に添加しないことを意味する。
上記(ii)は、塗布液の固形分濃度や溶媒組成などを調整することによって行うことができる。例えば、塗布液の固形分濃度としては、0.5~10質量%が好ましく、1~5質量%がより好ましい。塗布液の溶媒組成としては、例えば、異なる種類の溶媒を2種以上併用することが好ましい。溶媒の種類としては、例えば、ケトン類、アルコール類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、環式炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。好ましい例としては、ケトン類と芳香族炭化水素類の併用が挙げられる。
上記(iii)としては、例えば、離型層には平均粒子径が200nm以上の粒子(フィラー)は実質的に含有させないことが挙げられる。ここで、実質的に粒子を含有させないとは、粒子を意図的に添加しないことを意味する。
上記(iv)としては、例えば、離型層の厚み(乾燥厚み)は30nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましく、70nm以上が特に好ましい。
離型層の表面粗さSRa(A)を5.0nm未満とするためには、上記した(i)~(iv)の2以上を組み合わせることが好ましく、3以上を組み合わせることがより好ましく、全ての要件を組み合わせることが特に好ましい。
離型層上に流延する樹脂溶液の流延性(塗布性)を高めるという観点から、離型層の表面自由エネルギーは、35mJ/m超が好ましく、37mJ/m超が好ましく、40mJ/m超が特に好ましい。一方、離型層の表面自由エネルギーが高くなりすぎるとキャスト製膜された樹脂フィルムの剥離性が低下するので、50mJ/m未満が好ましく、48mJ/m未満が好ましく、47mJ/m未満が特に好ましい。
離型層の表面自由エネルギーは、離型層におけるメラミン樹脂の含有量を樹脂全体に対して80質量%とすることによって上記範囲に調整可能である。また、メラミン樹脂としてアルキルエーテル化メラミン樹脂を用いることによって、好ましくは部分アルキルエーテル化メラミン樹脂を用いることによって上記範囲とすることができる。
ここで、表面自由エネルギーは、後述の方法により測定する。
離型フィルムの離型層の粘着テープに対する剥離力は、8.0~20.0N/50mmが好ましく、10.0~19.0N/50mmがより好ましく、12.0~18.0N/50mmが特に好ましい。
離型層の粘着テープに対する剥離力が上記範囲であることによって、樹脂フィルムのキャスト製膜工程において、離型層とキャスト製膜された樹脂フィルムとが適度に密着し、キャスト製膜時に樹脂の浮き上がりや膜剥がれが抑制され、かつ樹脂フィルム製膜後の剥離性が良好となる。
上記剥離力は、離型層におけるメラミン樹脂の含有量を樹脂全体に対して80質量%とすることによって調整可能である。また、メラミン樹脂としてアルキルエーテル化メラミン樹脂を用いることによって、好ましくは部分アルキルエーテル化メラミン樹脂を用いることによって上記範囲とすることができる。
ここで、離型層の粘着テープに対する剥離力は、後述の方法により測定する。
離型層の厚みは、表面を超平滑にして表面粗さSRa(A)を5.0nm未満にするためには、30nm以上が好ましく、50nm以上が好ましく、70nm以上が特に好ましい。一方、離型層の厚みが大きくなり過ぎると離型層形成時の加熱工程で熱ジワが発生することがあるので、500nm未満が好ましく、300nm未満がより好ましく、200nm未満が特に好ましい。
本発明の離型フィルムに用いられる基材フィルムとしては、特に限定されず、各種プラスチックフィルムを使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロースフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、アクリルフィルム、環状オレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。
これらのプラスチックフィルムの中でも、平滑性が比較的高く、耐熱性が良好であるポリエステルフィルムが好ましい。ポリエステルフィルムの中でもポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、さらに二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
基材フィルムの厚みは、30~300μmが好ましく、50~250μmがより好ましく、100~200μmが特により好ましい。離型層形成時の加熱工程における熱ジワの発生を抑制するという観点から、基材フィルムの厚みは120~200μmが最も好ましい。
基材フィルムは、表面の平滑性が高いことが好ましい。具体的には、基材フィルムの離型層を積層する側の面の表面粗さSRa(a)は、5.0nm未満が好ましく、4.0nm未満がより好ましく、3.0nm未満が特に好ましい。下限は0.1nm程度である。ここで、表面粗さSRa(a)は、後述の実施例の「(1)離型層の表面粗さSRa(A)の測定」と同様の方法により、測定することができる。
上記観点から、基材フィルムは実質的に粒子(フィラー)を含有しないことが好ましい。ここで、実質的に粒子を含有しないとは、粒子を意図的に添加しないことを意味する。
本発明の離型フィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する。離型層は、基材フィルムの片面のみの設けられていてもよいし、両面の設けられていてもよいが、片面のみに設けられていることが好ましい。
本発明の離型フィルムが、基材フィルムの片面のみに離型層が設けられている場合、基材フィルムの離型層とは反対面は、粒子を含有するバックコート層が設けられていることが好ましい。このようなバックコート層を設けることによって、離型フィルムの滑り性(搬送性)や巻取り性が良好となる。
本発明に好ましく用いられる基材フィルムは、上記したように高い平滑性を有することが好ましく、また離型層も高い平滑性を有することから、離型フィルムの生産工程における滑り性(搬送性)や巻取り性が低下することがある。これらの課題は、上記バックコート層を設けることによって解消することができる。
バックコート層に含有させる粒子の平均粒子径は、滑り性(搬送性)や巻取り性を向上させるという観点から、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、50nm以上が特に好ましい。粒子の平均粒子径が大きくなりすぎると、離型フィルムがロール状に巻き取られた際に離型層と接触して離型層の平滑性を低下させることがあるので、粒子の平均粒子径は500nm以下が好ましく、400nm以下がより好ましく、300nm以下が特に好ましい。
また、少ない粒子含有量で滑り性(搬送性)や巻取り性を向上させるという観点から、粒子の平均粒子径は、バックコート層の厚みの1.1倍以上が好ましく、1.3倍以上がより好ましく、1.5倍以上が特に好ましい。一方、上記比率が大きくなりすぎると、バックコート層から粒子が脱落することがあるので、上記比率は10.0倍以下が好ましく、5.0倍以下がより好ましく、3.0倍以下が特に好ましい。
バックコート層における粒子の含有量は、バックコート層の固形分総量100質量%に対して0.1~7.0質量%が好ましく、0.3~5.0質量%がより好ましく、0.5~3.0質量%が特に好ましい。
粒子としては、例えば、コロイダルシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、ゼオライト等の無機粒子、アクリル系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、ポリエステル系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、ポリカーボネート系樹脂粒子、ポリアミド系樹脂粒子等の有機粒子が挙げられる。これらの中でも、コロイダルシリカが好ましく用いられる。
バックコート層の厚みは、5~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましく、20~150nmが特に好ましい。
バックコート層の表面粗さSRa(B)が大きくなりすぎると、離型フィルムがロール状に巻き取られた際に離型層と接触して離型層の平滑性を低下させることがあるので、上記SRa(B)は10.0nm未満が好ましく、7.0nm未満がより好ましく、5.0nm未満が特に好ましい。下限は、0.5nm程度である。ここで、表面粗さSRa(B)は、後述の実施例の「(1)離型層の表面粗さSRa(A)の測定」と同様の方法により、測定することができる。
バックコート層は、樹脂を含有することが好ましい。かかる樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなる群の中から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有することが好ましい。
バックコート層おける樹脂の含有量は、バックコート層層の固形分総量100質量%に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、特に80質量%以上であることが好ましい。上記含有量は98質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましく、特に95質量%以下が好ましい。
バックコート層は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系架橋剤、アクリルアミド系架橋剤、ポリアミド系樹脂、アミドエポキシ化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。これらの中でも、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、およびカルボジイミド系架橋剤が好適に用いられる。
また、樹脂として自己架橋型樹脂、例えば自己架橋型ウレタン樹脂を用いることによって、架橋剤の添加を省略あるいは低減することができる。
バックコート層における架橋剤の含有量は、バックコート層の固形分総量100質量%に対して1~35質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましく、特に5~25質量%が好ましい。
バックコート層は、基材フィルムの製造工程とは別にオフラインで塗布形成してもよいが、生産性の観点から基材フィルムの製造工程内でインラインコーティング法によって塗布形成することが好ましい。
以下、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略することがある)フィルムの製造工程内でバックコート層をインラインコーティングする態様を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
PETフィルムの原料である極限粘度0.5~0.8dl/gのPETペレットを真空乾燥した後、押し出し機に供給し260~300℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度10~60℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて、冷却固化せしめて未延伸PETフィルムを作製する。この未延伸PETフィルムを70~100℃に加熱されたロール間で縦方向(フィルムの進行方向を指し「長手方向」ともいう)に2.5~5倍延伸する。この延伸で得られた一軸延伸PETフィルムの少なくとも片面に空気中でコロナ放電処理を施し、その処理面にバックコート層の塗布液を塗布する。
次に、塗布液が塗布された一軸延伸PETフィルムをクリップで把持して乾燥ゾーンに導き、一軸延伸PETフィルムのTg未満の温度で乾燥した後、Tg以上の温度に上げ、再度Tg近傍の温度で乾燥、引き続き連続的に70~150℃の加熱ゾーンで横方向(フィルムの進行方向とは直交する方向を指し「幅方向」ともいう)に2.5~5倍延伸し、続いて180~240℃の加熱ゾーンで5~40秒間熱処理を施し、結晶配向の完了したPETフィルムが得られる。尚、上記熱処理中に必要に応じて3~12%の弛緩処理を施してもよい。二軸延伸は縦、横逐次延伸あるいは同時二軸延伸のいずれでもよく、また縦、横延伸後、縦、横いずれかの方向に再延伸してもよい。
本発明の離型フィルムは、基材フィルムと離型層との密着性を高めるという観点、および離型層の塗布性を高めるという観点から、基材フィルムと離型層との間にアンカーコート層を設けることが好ましい。
上記観点から、アンカーコート層は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなる群の中から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有することが好ましい。
アンカーコート層における上記樹脂の含有量は、アンカーコート層の固形分総量100質量%に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、特に80質量%以上であることが好ましい。上記含有量は98質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましく、特に95質量%以下が好ましい。
アンカーコート層は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤としては、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メチロール化あるいはアルキロール化した尿素系架橋剤、アクリルアミド系架橋剤、ポリアミド系樹脂、アミドエポキシ化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを用いることができる。これらの中でも、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、およびカルボジイミド系架橋剤が好適に用いられる。
また、樹脂として自己架橋型樹脂、例えば自己架橋型ウレタン樹脂を用いることによって、架橋剤の添加を省略あるいは低減することができる。
アンカーコート層における架橋剤の含有量は、アンカーコート層の固形分総量100質量%に対して1~35質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましく、特に5~25質量%が好ましい。
アンカーコート層は、バックコート層と同様の粒子を含有することができる。
アンカーコート層の厚みは、5~200nmが好ましく、10~150nmがより好ましく、20~120nmが特に好ましい。
基材フィルムにアンカーコート層を設ける場合であっても、アンカーコート層の表面粗さSRa(u)は、前述したように基材フィルムの離型層を積層する側の面のSRa(a)と同様に設計されることが好ましい。つまり、アンカーコート層の表面粗さSRa(u)は、5.0nm未満が好ましく、4.0nm未満がより好ましく、3.0nm未満が特に好ましい。下限は0.1nm程度である。ここで、表面粗さSRa(u)は、後述の実施例の「(1)離型層の表面粗さSRa(A)の測定」と同様の方法により、測定することができる。
アンカーコート層は、バックコート層と同様に、基材フィルムの製造工程内でインラインコーティング法によって塗布形成することができる。また、バックコート層とアンカーコート層は、同一組成の塗布液を用いて形成することができる。
[離型フィルムの適用例]
本発明の離型フィルムは、樹脂フィルムのキャスト製膜用工程フィルム(支持フィルム)、セラミックコンデンサーのグリーンシート成形用工程フィルム、粘着シートの保護フィルム、あるいは感光性樹脂層(フォトレジスト層)の支持基材や保護フィルムとして適用することができる。
本発明の離型フィルムは、特に、樹脂フィルムのキャスト製膜用工程フィルム(支持フィルム)として好適である。本発明の離型フィルムを用いてキャスト製膜される樹脂フィルムとしては、例えば、ポリイミド樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、セルロースアシレート樹脂フィルム、環状ポリオレフィン樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、メタクリル樹脂フィルム、ポリウレタン樹脂フィルムなどが挙げられる。これらの中でも、ポリイミド樹脂フィルム、セルロースアシレート樹脂フィルム、環状ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルムのキャスト製膜に好適である。これらの樹脂フィルムは、単一膜で構成されていてもよいし、2層以上の多層積層構成であってもよい。
また、本発明の離型フィルムは、高い平滑性が求められる光学用樹脂フィルム(例えば、偏光板保護フィルムや位相差フィルムなど)のキャスト製膜に好適である。
[本発明の好ましい態様]
本発明の好ましい態様を以下に示す。
[1]基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する離型フィルムであって、前記離型層が該離型層を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を80質量%以上含有し、前記離型層の表面粗さSRa(A)が5.0nm未満であることを特徴とする、離型フィルム。
[2]前記離型層の表面自由エネルギーが35mJ/m超50mJ/m未満である、[1]に記載の離型フィルム。
[3]前記離型層の粘着テープに対する剥離力が8.0~20.0N/50mmである、[1]または[2]に記載の離型フィルム。
[4]前記メラミン樹脂がアルキルエーテル化メラミン樹脂である、[1]~[3]のいずれかに記載の離型フィルム。
[5]前記メラミン樹脂が部分アルキルエーテル化メラミン樹脂である、[1]~[4]のいずれかに記載の離型フィルム。
[6]前記基材フィルムが実質的に粒子を含有しない、[1]~[5]のいずれかに記載の離型フィルム。
[7]前記基材フィルムがポリエステルフィルムである、[1]~[6]のいずれかに記載の離型フィルム。
[8]前記基材フィルムの離型層を有する面とは反対面に、平均粒子径が20~500nmの粒子を含有するバックコート層を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の離型フィルム。
[9]前記基材フィルムと前記離型層との間にアンカーコート層を有し、該アンカーコート層がポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびアクリル樹脂からなる群の中から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の離型フィルム。
[10]樹脂フィルムのキャスト製膜用である、[1]~[9]のいずれかに記載の離型フィルム。
[11]前記樹脂フィルムが、ポリイミド樹脂フィルム、セルロースアシレート樹脂フィルム、環状ポリオレフィン樹脂フィルムまたはポリカーボネート樹脂フィルムである、[10]に記載の離型フィルム。
[12]前記樹脂フィルムが、光学用樹脂フィルムである、[10]または[11]に記載の離型フィルム。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[測定方法および評価方法]
(1)離型層の表面粗さSRa(A)の測定
光干渉型顕微鏡((株)菱化システム社製、VertScan2.0、型式:R5300 GL-Lite-AC)を用いて、観察モード=Waveモード、面補正=4次、フィルター=530nmWhite、対物レンズ=5倍、測定領域=939.05μm×702.40μmにて表面形態観察し、求めた。測定は1水準につき10回行い、その平均値を採用した。
(2)離型層の表面自由エネルギーの測定
表面自由エネルギーおよびその各成分(分散力、極性力、水素結合力)の値が既知の3種の液体として、水、ジヨードメタン、1-ブロモナフタレンを用い、23℃、65%RH下で、接触角計DropMasterDM501(協和界面科学(株)製)にて、各液体の離型層上での接触角を測定した。1つの測定面に対し5回測定を行いその平均値を接触角(θ)とした。この接触角(θ)の値および各液体の既知の値(Panzerによる方法IV(日本接着協会誌第15巻、第3号、第96頁に記載)の数値から、北崎・畑の式より導入される下記式を用いて各成分の値を計算した。
(γSd・γLd)1/2+(γSp・γLp)1/2+(γSh・γLh)1/2=γL(1+cosθ)/2
ここで、γLd、γLp、γLhは、それぞれ測定液の分散力、極性力、水素結合力の各成分を表し、θは測定面上での測定液の接触角を表し、また、γSd、γSp、γShは、それぞれ積層膜表面の分散力、極性力、水素結合力の各成分の値を表し、γLは各液体の表面エネルギーを表す。既知の値およびθを上記の式に代入して得られた連立方程式を解くことにより、測定面(離型層表面)の3成分の値を求めた。
下記式の通り、求められた分散力成分の値と極性力成分の値と水素結合力成分の値の和を、表面自由エネルギー(E)の値とした。
E=γSd+γSp+γSh
(3)剥離力の測定
離型フィルムの離型層表面にアクリル系粘着テープ(日東電工(株)製の「No.31B」)の粘着面を自重5kgのゴムローラーで押さえながら一往復させて貼り合わせ、室温(23±2℃)で24時間放置後、引張り試験機((株)島津製作所社製「EZ-SX」品番)にて、300mm/minの速度で、粘着テープ側を180°に引き剥したときの剥離力を測定した。
(4)樹脂フィルムの製膜性試験
製膜性試験1(セルロースアシレート樹脂フィルム)、製膜性試験2(ポリカーボネート樹脂フィルム)、および製膜性試験3(ポリイミド樹脂フィルム)について、それぞれ、(i)樹脂フィルムの製膜性、(ii)製膜時の離型フィルムと樹脂フィルムとの密着性、および(iii)製膜後の樹脂フィルムと離型フィルムとの剥離性を、以下の基準で評価した。
(i)製膜性
A;均一で平滑性の高い樹脂フィルムが得られた場合、
B;均一で平滑性の高い樹脂フィルムが得られなかった場合
(ii)密着性
A;製膜時に膜の浮き上がりや剥がれがない場合、
B;製膜時に膜の浮き上がりまたは剥がれがある場合
(iii)剥離性
A;軽い力で剥離できる場合、
B;強い力を掛けないと剥離できない場合。
(4-1)製膜性試験1;セルロースアシレート樹脂フィルムの製膜性試験
下記の樹脂溶液1を離型フィルムの離型層上にアプリケーターにて塗布し、60℃で5分間乾燥して、離型フィルム上に樹脂フィルムを積層した。続いて、樹脂フィルムを離型フィルムから剥離し、樹脂フィルムの一端を固定し、もう一方の端部に0.5kgfの張力をかけた状態で、100℃で20分間乾燥させ、厚みが80μmのセルロースアシレート樹脂フィルムを作製した。
<樹脂溶液1>
セルロースアシレート樹脂(セルロースアセテートプロピオネート;イーストマンケミカル製「CAP-482-20」)100質量部をジクロロメタン500質量部に溶解した。
(4-2)製膜性試験2;ポリカーボネート樹脂フィルムの製膜性試験
下記の樹脂溶液2に変更する以外は、上記製膜試験1と同様にしてポリカーボネート樹脂フィルムを作製した。
<樹脂溶液2>
ポリカーボネート樹脂(帝人化成(株)製、品番「パンライトC-1400」)100質量部をジクロロメタン500質量部に溶解した。
(4-3)製膜性試験3;ポリイミド樹脂フィルムの製膜性試験
下記の樹脂溶液3を離型フィルムの離型層上にアプリケーターにて塗布し、90℃で10分間乾燥して、離型フィルム上に樹脂フィルムを積層した。続いて、樹脂フィルムを離型フィルムから剥した後、端部を固定して100℃~450℃へ連続的に加熱し、更に450℃で5分間加熱しイミド化させて、厚みが50μmのポリイミド樹脂フィルム得た。
<樹脂溶液3>
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)407.5質量部に、4,4’-オキシジアニリン(ODA)22質量部と、p-フェニレンジアミン(PDA)7.9質量部とを溶解して、この溶液を0℃に保った。ここに、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)29.5質量部を徐々に添加し、1時間撹拌してBTDAを完全に溶解させた。この溶液にp-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)(TMHQ)25.2質量部を徐々に添加して1時間撹拌した後、さらにピロメリット酸二無水物(PMDA)8質量部を添加して1時間撹拌して、固形分濃度18.5質量%のポリアミド酸溶液を得た。
このポリアミド酸溶液100質量部に、無水酢酸11.4質量部、イソキノリン4.8質量部およびDMF33.8質量部からなる硬化剤を混合し、攪拌した。得られた溶液を、遠心分離により脱泡して、樹脂溶液を調製した。
(5)アンカーコート層およびバックコート層に含有される粒子の平均粒子径の測定
アンカーコート層およびバックコート層の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察(約1万~10万倍)し、その断面写真から、無作為に選択した30個の粒子のそれぞれの最大長さを計測し、それらを算術平均した値を粒子の平均粒子径とした。
(6)離型フィルムの滑り性評価
離型フィルムのカットシート片(20cm×15cm)を2枚用意し、この2枚のシート片の離型層面と反対面とが向き合うように2枚のシート片を僅かにずらして重ね合わせて平滑な台上の置き、下方のシート片を指で台上に固定し、上方のシート片を手で滑らせる方法で滑り性の良否判定を行った。測定環境は23℃、55%RHである。
・A;上方のシート片の滑り性が良好である。
・B;上方のシート片が滑らない。
[実施例1]
<基材フィルム1の作製>
下記要領にてバックコート層とアンカーコート層が積層されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを作製した。
実質的に外部添加粒子を含有しないPETペレット(極限粘度0.63dl/g)を充分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し285℃で溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度25℃の鏡面キャスティングドラムに巻き付けて冷却固化せしめた。この未延伸フィルムを90℃に加熱して長手方向に3.4倍延伸し、一軸延伸フィルムとした。この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施した後、一軸延伸フィルムの両面にそれぞれ下記のバックコート層用塗布液a1(アンカーコート層塗布液を兼ねる)を塗布した。
次に、両面にそれぞれ塗布液a1が塗布された1軸延伸フィルムをクリップで把持して予熱ゾーンに導き、雰囲気温度75℃で乾燥、ラジエーションヒーターを用いて110℃に上げ、再度90℃で乾燥した後、引き続き連続的に120℃の加熱ゾーンで幅方向に3.5倍延伸し、続いて220℃の加熱ゾーンで20秒間熱処理を施し、結晶配向の完了した二軸延伸PETフィルムを作製した。
このようにして得られたPETフィルムの厚みは150μm、バックコート層の厚みは90nm、アンカーコート層の厚みは90nmであった。
<バックコート層用塗布液a1(アンカーコート層塗布液を兼ねる)>
Tg(ガラス転移温度)が120℃のポリエステル樹脂aを固形分換算で26質量部、Tgが80℃のポリエステル樹脂bを固形分換算で54質量部、メラミン系架橋剤を固形分換算で18質量部、粒子を固形分換算で2質量部混合して水分散塗布液を調製した。
・ポリエステル樹脂a;2,6-ナフタレンジカルボン酸43モル%、5-ナトリウムスルホイソフタル酸7モル%、エチレングリコールを含むジオール成分50モル%を共重合して得られたポリエステル樹脂
・ポリエステル樹脂b;テレフタル酸38モル%、トリメリット酸12モル%、エチレングリコールを含むジオール成分50モル%を共重合して得られたポリエステル樹脂
・メラミン系架橋剤;三和ケミカル(株)製の「ニカラック MW12LF」)
・粒子;平均粒子径190nmのコロイダルシリカ。
<離型フィルムの作製>
上記で作製した基材フィルム(PETフィルム)の一方の面のアンカーコート層上に、下記組成の離型層用塗布液p1をグラビアコーターで塗布し80℃で予備乾燥後、140℃で加熱乾燥し離型層を形成して、離型フィルムを作製した。離型層の厚みは120nmであった。
<塗布液p1>
・メラミン化合物;部分アルキルエーテル化メラミン(三井化学(株)の“ユーバン(登録商標)”28-60;アルキル=ブチル)を固形分換算で100質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-707)を固形分換算で7質量部
・溶媒;混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=45:45:10(質量比))で固形分濃度2.0質量%に調整。
[実施例2]
離型層用塗布液p2に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
<塗布液p2>
・メラミン化合物;部分アルキルエーテル化メラミン(DIC(株)の“スーパーベッカミン(登録商標)”L-105-60);アルキル=メチル)を固形分換算で100質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-707)を固形分換算で7質量部
・溶媒;混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=45:45:10(質量比))で固形分濃度2.0質量%に調整。
[比較例1]
離型層用塗布液p3に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
<塗布液p3>
・メラミン化合物;部分アルキルエーテル化メラミン(DIC(株)の“スーパーベッカミン(登録商標)”L-105-60);アルキル=メチル)を固形分換算で75質量部
・長鎖アルキル基含有樹脂:ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)の「ピーロイル」HTを固形分換算で25質量部
・酸触媒;p-トルエンスルホン酸(テイカ(株)の「TAYCACURE」AC-707)を固形分換算で5質量部
・溶媒;混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=45:45:10(質量比))で固形分濃度2.0質量%に調整。
[比較例2]
下記の基材フィルム2に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
<基材フィルム2>
厚みが100μmの二軸延伸PETフィルム(東レ(株)の“ルミラー(登録商標)”S10)を用いた。
[実施例3]
下記の基材フィルム3に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
<基材フィルムの作製3>
実施例1の基材フィルム1の作製において、バックコート層用塗布液(アンカーコート層塗布液を兼ねる)を下記の塗布液a2に変更する以外は、基材フィルム1と同様にして作製した。
<バックコート層用塗布液a2(アンカーコート層塗布液を兼ねる)>
下記のポリエステル樹脂を固形分換算で22質量部、自己架橋型ポリウレタン樹脂水溶液(第一工業製薬製:商品名エラストロンH-3;固形分濃度20質量%)を固形分換算で78質量部、エラストロン用触媒(第一工業製薬製:商品名Cat64)を5質量部、および粒子(平均粒子径が190nmのシリカ)を2質量部含む。
<ポリエステル樹脂>
ジメチルテレフタレート95質量部、ジメチルイソフタレート95質量部、エチレングリコール35質量部、ネオペンチルグリコール145質量部、酢酸亜鉛0.1質量部及び三酸化アンチモン0.1質量部を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に5-ナトリウムイソフタル酸6質量部を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(固形分濃度30質量%の水分散液)を得た。
[実施例4]
下記の基材フィルム4に変更する以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作製した。
<基材フィルムの作製4>
実施例1の基材フィルム1の作製において、バックコート層およびアンカーコート層を積層しない以外は、基材フィルム1と同様にして作製した。
[評価]
上記で作製した実施例および比較例の離型フィルムについて、上述の測定方法および評価方法に従って評価した。その結果を表1に示す。
Figure 0007320954000002

Claims (1)

  1. 基材フィルムの少なくとも一方の面に離型層を有する樹脂フィルムのキャスト製膜用離型フィルムであって、
    前記離型層が該離型層を構成する樹脂全体に対してメラミン樹脂を80質量%以上含有し、前記離型層の表面粗さSRaが5.0nm未満であり、離型層の表面自由エネルギーが35mJ/m超、50mJ/m未満であることを特徴とする、樹脂フィルムのキャスト製膜用離型フィルム。
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