JP3908098B2 - 光学フィルム製造用キャリアフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶ディスプレイや液晶カラーテレビ等に使用される光学フィルムの製造に用いられる光学フィルム製造用キャリアフィルムに関するものである。より詳しくは、作業性を向上させることができるとともに、原料溶液が流延される側の表面の平坦性を維持することができる光学フィルム製造用キャリアフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、光学フィルムは、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、非晶性オレフィン樹脂等の透明性に優れている非晶性熱可塑性樹脂材料の押出成形法や溶液流延法(溶液キャスト法)により製造されている。溶液流延法では、まず非晶性熱可塑性樹脂材料をキシレン等の溶媒に溶解することにより、光学フィルムを製造するための原料溶液を調製する。次いで、この原料溶液を光学フィルム製造用キャリアフィルム(以下、単にキャリアフィルムともいう)の一方の表面に流延する。続いて、原料溶液が乾燥された後にキャリアフィルムから剥離され、光学フィルムが製造される。
【0003】
従来、この種のキャリアフィルムは、特開2001−260152号公報に示すような構成のものが知られている。この従来構成においては、キャリアフィルムはアルミニウム等の金属材料やポリエチレン等の合成樹脂材料により形成されている。このキャリアフィルムにおいて、原料溶液が流延される側の表面(以下、A面ともいう)は、製造される光学フィルムの平坦性を向上させるために、三次元算術平均粗さ(Ra)は15nm以下に設定され、三次元最大高さ(Ry)は250nm以下に設定されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この従来のキャリアフィルムにおいては、原料溶液が流延されない側の表面(以下、B面ともいう)の平坦性が高いときには、キャリアフィルムのブロッキング性が高くなるために、キャリアフィルムの搬送性や巻取り性等の作業性が低下するという問題があった。さらに、キャリアフィルムを搬送、又は巻取るときには、ブロッキングが発生することによって、キャリアフィルムに撓みが発生したり表面に凹凸が形成され、A面の平坦性が低下するという問題があった。
【0005】
一方、B面に大きな凹凸が形成されることによりその平坦性が低いときには、キャリアフィルムを搬送、又は巻取るときに、この凹凸によってA面に大きな凹凸が形成され、A面の平坦性が低下するという問題があった。これらA面の平坦性が低下したキャリアフィルムを用いて光学フィルムを製造するときには、A面に流延される原料溶液の量が不均一となることによって光学フィルムに厚みムラが発生したり、A面の凹凸由来の凹凸が表面に形成されることにより、光学フィルム表面の平坦性が低下する。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、作業性を向上させることができるとともに、原料溶液が流延される側の表面の平坦性を維持することができる光学フィルム製造用キャリアフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の光学フィルム製造用キャリアフィルムは、合成樹脂材料により形成され、光学フィルムを製造するための原料溶液が一方の表面に流延されるように構成され、原料溶液が流延される側の表面の最大突起高さをRmaxAとし、原料溶液が流延されない側の表面の最大突起高さをRmaxBとしたとき、RmaxAは500nm以下に設定され、RmaxBは300〜1000nmに設定されるとともにRmaxA以上に設定されているものである。
【0008】
請求項2に記載の発明の光学フィルム製造用キャリアフィルムは、請求項1に記載の発明において、前記原料溶液が流延される側の表面は、該表面からの高さが350nm以上の突起の数が200個/mm2以下に設定されているものである。
【0009】
請求項3に記載の発明の光学フィルム製造用キャリアフィルムは、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記合成樹脂材料はポリエステルである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態を詳細に説明する。
キャリアフィルムは合成樹脂材料により形成されている。合成樹脂材料の具体例としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリアラミド、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。これらの中でも、機械的強度、寸法安定性及び耐熱性が高いとともに安価であるために、ポリエステルが好ましい。
【0011】
ここで、ポリエステルとは、ジカルボン酸とジオールとのポリエステル、又はヒドロキシカルボン酸とジオールとのポリエステルを主たる成分、即ち50重量%以上含有するものが好適である。
【0012】
ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、コハク酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。一方、ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0013】
ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0014】
このポリエステルは、第三成分を含有した共重合ポリエステルとして構成してもよい。このときの第三成分としては、主成分と異なるジカルボン酸として、テレフタル酸、コハク酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
【0015】
また、主成分と異なるヒドロキシジカルボン酸として、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等が挙げられる。さらに、主成分と異なるジオールとして、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0016】
これら主成分と異なるジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、又はジオールは、単独でそれぞれ含有してもよいし、二種以上を組み合わせてそれぞれ含有してもよい。
【0017】
このポリエステルは、ジカルボン酸又はヒドロキシカルボン酸とジオールとを直接重縮合させることにより得られる。また、ジカルボン酸ジアルキルエステル又はヒドロキシカルボン酸ジアルキルエステルとジオールとをエステル交換反応させた後に重縮合させる方法、又は、ジカルボン酸又はヒドロキシカルボン酸のジオールエステルを重縮合させる方法等によって得られる。
【0018】
ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。
【0019】
キャリアフィルムを形成する合成樹脂材料は、ポリカーボネートやポリスルホン等の他の合成樹脂材料を含有してもよい。さらに、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、顔料、蛍光増白剤等を含有してもよい。
【0020】
キャリアフィルム表面には凹凸が形成されている。キャリアフィルムにおいて、A面、即ち光学フィルムを製造するための原料溶液が流延される側の表面の最大突起高さをRmaxAとする。このRmaxAは、A面の平坦性を維持するために、500nm以下、好ましくは400nm以下、さらに好ましくは350nm以下に設定されている。500nmを超えると、A面に形成される凹凸が大きくなるために、A面の平坦性が低下する。
【0021】
ここで、最大突起高さは、キャリアフィルム表面に形成される凹凸の内、最も高い突起と最も深い谷との高低差を示し、JIS B 0601−1982により定義される「最大高さ(Rmax)」と同義である。
【0022】
さらに、A面は、光学フィルム表面の平坦性を維持するために、A面からの高さが350nm以上の突起の数が200個/mm2以下に設定されているのが好ましい。A面からの高さが350nm以上の突起の数が200個/mm2を超えると、光学フィルム表面に形成されるA面の突起由来の深い谷の数が増加するために、光学フィルム表面の平坦性が低下しやすい。
【0023】
一方、キャリアフィルムにおいて、B面、即ち光学フィルムを製造するための原料溶液が流延されない側の表面の最大突起高さをRmaxBとする。このRmaxBは、キャリアフィルムの作業性を向上させるとともに、A面の平坦性を維持するために、300〜1000nm、好ましくは400〜900nm、さらに好ましくは500〜700nmに設定されている。
【0024】
300nm未満では、B面の平坦性が高すぎるために、キャリアフィルムの搬送性や巻取り性等の作業性が低下する。さらに、キャリアフィルムを搬送するときや巻取るときに、ブロッキングが発生することによって、キャリアフィルムに撓みが発生したり表面に凹凸が形成され、A面の平坦性が低下する。一方、1000nmを超えると、キャリアフィルムを巻取るとき等に、B面の大きな凹凸によってA面に大きな凹凸が形成され、A面の平坦性が低下する。
【0025】
また、キャリアフィルムの作業性を向上させるとともに、A面の平坦性を維持するために、RmaxBはRmaxA以上に設定されている。RmaxBがRmaxA未満では、B面の平坦性が高すぎるために、キャリアフィルムの搬送性や巻取り性等の作業性が低下する。さらに、キャリアフィルムを搬送するときや巻取るときに、ブロッキングが発生することによって、キャリアフィルムに撓みが発生したり表面に凹凸が形成され、A面の平坦性が低下する。
【0026】
キャリアフィルム表面に凹凸を形成する方法としては、コーティング法や練り込み押出法等が挙げられるが、キャリアフィルム表面に凹凸を容易に形成するために、不活性粒子を、キャリアフィルムを形成する合成樹脂材料に配合するのが好ましい。不活性粒子の具体例としては、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、酸化チタン、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ゼオライト等の無機粒子、シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、アクリル樹脂等の有機粒子等が挙げられる。
【0027】
不活性粒子の平均粒径は、RmaxA又はRmaxBを上述の範囲とするために、好ましくは0.1〜4.0μmである。0.1μm未満では、キャリアフィルム表面に十分な高さの突起を形成しにくい。一方、4.0μmを超えると、RmaxA又はRmaxBが上述の範囲を超えやすい。また、不活性粒子を含有する合成樹脂材料から形成されているフィルムを延伸してキャリアフィルムを製造するときに、不活性粒子を起点としてフィルム破断が生じやすい。
【0028】
不活性粒子の含有量は、キャリアフィルム表面に凹凸を形成するために、好ましくは0.1〜1.0重量%である。0.1重量%未満では、キャリアフィルム表面に凹凸を形成しにくい。一方、1.0重量%を超えても、それ以上凹凸を形成しにくいとともに、キャリアフィルムの製造コストが嵩みやすい。また、不活性粒子の粒度分布は、その分散の程度が低い方が好ましい。分散の程度が高いと、キャリアフィルム表面に形成される突起の高さが不均一になりやすい。
【0029】
不活性粒子は、常法に従って合成樹脂材料に配合される。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において不活性粒子が添加される。即ち、エステル化の段階又はエステル交換反応終了後重縮合反応開始前の段階において、不活性粒子をエチレングリコール等に分散させてスラリーとして添加するのが好ましい。また、乾燥された不活性粒子と合成樹脂材料とを溶融練り込みしてもよい。
【0030】
キャリアフィルムは、一層のみから形成されている単層フィルムとして構成してもよいし、複数の層が積層されて形成されている多層フィルムとして構成してもよい。
【0031】
キャリアフィルムは、帯電防止性、易接着性、耐候性、表面硬度等を向上させるために、その表面上に、キャリアフィルムに帯電防止性、易接着性、耐候性、表面硬度等を付与するコート層を形成してもよい。このコート層は、キャリアフィルムのA面上のみ又はB面上のみに形成してもよいし、両面上に形成してもよい。さらに、製造された光学フィルムの剥離性を向上させるために、キャリアフィルムのA面上に離型層を形成してもよい。
【0032】
この離型層は、離型性を有する材料によって形成されている。離型性を有する材料の具体例としては、硬化型シリコーン樹脂を主たる成分、即ち50重量%以上含有するものや、硬化型シリコーン樹脂と、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプを主たる成分、即ち50重量%以上含有するもの等が挙げられる。ここで、硬化型シリコーン樹脂の具体例としては、溶剤付加型、溶剤縮合型、溶剤紫外線硬化型、無溶剤付加型、無溶剤縮合型、無溶剤紫外線硬化型、無溶剤電子線硬化型等が挙げられる。
【0033】
キャリアフィルムのA面上にコート層又は離型層が形成されるときには、コート層又は離型層の表面の最大突起高さは、コート層又は離型層の表面の平坦性を維持するために、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは400nm以下、最も好ましくは350nm以下に設定されている。500nmを超えると、コート層又は離型層の表面に形成される凹凸が大きくなりやすいために、コート層又は離型層の表面の平坦性が低下しやすい。
【0034】
一方、キャリアフィルムのB面上にコート層が形成されるときには、コート層の表面の最大突起高さは、キャリアフィルムの作業性を向上させるとともにA面の平坦性を維持するために、好ましくは300〜1000nm、さらに好ましくは400〜900nm、最も好ましくは500〜700nmに設定されている。
【0035】
300nm未満では、コート層の表面の平坦性が高すぎるために、コート層が形成されたキャリアフィルムの作業性が低下しやすい。さらに、コート層が形成されたキャリアフィルムを搬送するときや巻取るときに、ブロッキングが発生することによって、A面の平坦性が低下しやすい。一方、1000nmを超えると、キャリアフィルムを巻取るとき等に、コート層の表面の大きな凹凸によってA面に大きな凹凸が形成され、A面の平坦性が低下しやすい。
【0036】
また、コート層の表面の最大突起高さは、キャリアフィルムの作業性を向上させるとともに、A面の平坦性を維持するために、好ましくはRmaxA以上に設定されている。コート層の表面の最大突起高さがRmaxA未満では、コート層の表面の平滑性が高すぎるために、コート層が形成されたキャリアフィルムの作業性が低下しやすい。さらに、コート層が形成されたキャリアフィルムを搬送するときや巻取るときに、ブロッキングが発生することによって、A面の平坦性が低下しやすい。
【0037】
キャリアフィルムは、共押出し法等の押出し法やドライラミネート法等によって製造されている。キャリアフィルムの厚みは、キャリアフィルムの強度を向上させるとともに製造コストを低減するために、好ましくは5〜500μm、さらに好ましくは10〜300μm、最も好ましくは20〜200μmである。5μm未満では、キャリアフィルムの強度が低下しやすい。一方、500μmを超えると、キャリアフィルムの製造コストが嵩みやすい。
【0038】
光学フィルムは、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、非晶性オレフィン樹脂等の透明性に優れている非晶性熱可塑性樹脂材料により形成され、液晶ディスプレイや液晶カラーテレビ等に使用される。
【0039】
次に、キャリアフィルム及び光学フィルムの製造方法について説明する。ここでは、キャリアフィルムは単層フィルムとして構成され、その製造方法においては押出し法について説明する。
【0040】
キャリアフィルムを製造するときには、まず常法に従って乾燥された合成樹脂材料のチップを溶融押出装置に供給し、合成樹脂材料の融点以上の温度に加熱してスリット状のダイから溶融シートとして押出す。次いで、溶融シートを回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、非晶状態の未延伸フィルムを得る。このとき、未延伸フィルムの平面性を向上させるために、静電印加密着法や液体塗布密着法等によって、未延伸フィルムと回転冷却ドラムとの密着性を向上させるのが好ましい。このとき、静電印加密着法と液体塗布密着法とを併用してもよい。
【0041】
ここで、静電印加密着法とは、溶融シートの一方の表面側において、溶融シートの流れる方向に対して直交方向に線状電極を配置し、線状電極に約5〜10kVの直流電圧を印加することによって溶融シートに静電荷を与え、溶融シートと回転冷却ドラムとの密着性を向上させる方法である。また、液体塗布密着法とは、回転冷却ドラム表面の全体、又は、例えば溶融シートの両端部と接触する部分のみ等の回転冷却ドラム表面の一部にアルコール類等の液体を均一に塗布することにより、溶融シートと回転冷却ドラムとの密着性を向上させる方法である。
【0042】
続いて、ロール延伸機を用いて、未延伸フィルムをその長手方向に延伸(縦延伸)することにより、一軸延伸フィルムを得る。このとき、延伸温度は好ましくは70〜145℃であり、延伸倍率は好ましくは2〜6倍である。
【0043】
次いで、テンター延伸機を用いて、一軸延伸フィルムをその短手方向に延伸(横延伸)することにより、二軸延伸フィルムを得る。このとき、延伸温度は好ましくは90〜160℃であり、延伸倍率は好ましくは2〜6倍である。縦延伸及び横延伸は、一段階のみでそれぞれ行ってもよいし、二段階以上に分けてそれぞれ行ってもよい。
【0044】
そして、二軸延伸フィルムを熱処理することによりキャリアフィルムを製造する。このとき、加熱温度は好ましくは150〜240℃であり、加熱時間は好ましくは1〜600秒である。さらに、熱処理時において、二軸延伸フィルムの合成樹脂を結晶化するための最高温度ゾーンと、二軸延伸フィルムを冷却するためのクーリングゾーンとの少なくとも一方において、二軸延伸フィルムの長手方向又は短手方向に0.1〜20%の弛緩を行うのが好ましい。また、二軸延伸フィルムに対して再度縦延伸又は横延伸を行ってもよい。
【0045】
キャリアフィルム表面にコート層を形成するときには、インラインコーティングによってキャリアフィルム表面にコート層を形成してもよい。即ち、まず一軸延伸フィルム表面にコート層を形成するためのコート剤を塗布した後、一軸延伸フィルムを横延伸し、二軸延伸フィルムを形成するとともにコート層を形成する。このとき、コート剤は水系又は水分散系が好ましい。
【0046】
また、オフラインコーティングによってキャリアフィルム表面にコート層を形成してもよい。即ち、キャリアフィルムを製造した後にその表面にコート剤を塗布し、コート剤を乾燥させてコート層を形成する。このときに使用するコート剤は、水系、溶媒系いずれでも良い。
【0047】
次いで、キャリアフィルムのA面に、非晶性熱可塑性樹脂材料をキシレン等の溶媒に溶解することより調製された原料溶液を流延する。続いて、原料溶液が乾燥した後にキャリアフィルムから剥離し、光学フィルムを製造する。
【0048】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
・ 本実施形態の光学フィルム製造用キャリアフィルムにおいては、RmaxAは500nm以下に設定されている。さらに、RmaxBは300〜1000nmに設定されるとともにRmaxA以上に設定されている。このため、キャリアフィルムの作業性を向上させることができるとともに、原料溶液が流延される側の表面の平坦性を維持することができる。
【0049】
・ 本実施形態の光学フィルム製造用キャリアフィルムにおいては、A面は、A面からの高さが350nm以上の突起の数が200個/mm2以下に設定されているのが好ましい。よって、A面の高い突起及び深い谷の数を減少することにより、A面の平坦性をより確実に維持することができる。このため、キャリアフィルムを用いて製造される光学フィルム表面の平坦性を維持することができる。
【0050】
・ 本実施形態の光学フィルム製造用キャリアフィルムにおいては、合成樹脂材料は好ましくはポリエステルである。このため、キャリアフィルムの機械的強度、寸法安定性及び耐熱性を向上させることができるとともに、キャリアフィルムの製造コストを低減することができる。
【0051】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記キャリアフィルムを、未延伸フィルムとして構成してもよい。また、縦延伸又は横延伸のみで形成される一軸延伸フィルムとして構成してもよい。
【0052】
・ 前記キャリアフィルムのA面及びB面に、異なる粒径の不活性粒子をそれぞれコーティングしてもよい。
【0053】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
まず、以下の各例のキャリアフィルムにおける評価方法又は測定方法について説明する。
【0054】
(1)最大突起高さ
各例のキャリアフィルムにおいて、まず縦3cm及び横3cmのキャリアフィルム表面にAl蒸着を行った。ここで、Al蒸着は、キャリアフィルムのA面とB面とにそれぞれ行った。次いで、直接位相検出干渉法、即ち2光束干渉法を用いた非接触式3次元粗さ計(マイクロマップ社製512)で、測定波長が554nm、対物レンズ倍率が20倍の条件下で、232μm×177μmの測定領域におけるP−V値を求めた。キャリアフィルムのA面とB面とにおいて、測定数を50とし、それらの平均値をそれぞれ最大突起高さとした。
【0055】
(2)A面からの高さが350nm以上の突起の1mm2当たりにおける数
各例のキャリアフィルムにおいて、まず縦3cm及び横3cmのキャリアフィルムのA面にAl蒸着を行った。次いで、直接位相検出干渉法、即ち2光束干渉法を用いた非接触式3次元粗さ計(マイクロマップ社製512)で、測定波長が554nm、対物レンズ倍率が20倍の条件下で、232μm×177μmの測定領域における突起高さ分布曲線を作成した。続いて、この突起高さ分布曲線から、350nm以上の高さを持つ突起の数を算出した。測定数は50とし、それらの平均値から、A面からの高さが350nm以上の突起の1mm2当たりにおける数を算出した。
【0056】
(3)A面の平坦性
各例のキャリアフィルムにおいて、まず縦200cm及び横50cmのキャリアフィルムを切出した後、平坦性の優れている台の上に、A面が上側に位置するように載置した。そしてA面を目視にて観察し、その平坦性について、平坦性が良く、フィルムの波うち、凹凸跡が見られない(○)、フィルムの波うち、凹凸跡がわずかに見えるが、実用上問題のないレベル(△)、フィルムの波うちが大きく、あるいは凹凸跡が多く、実用上問題があるレベル(×)の3段階で評価した。
【0057】
(4)原料溶液の流延性
各例のキャリアフィルムにおいて、まず非晶性オレフィン樹脂としてのZEONEX490(日本ゼオン株式会社製)をキシレンに溶解させて原料溶液を調製した。この原料溶液におけるZEONEX490の濃度は30重量%であった。次いで、原料溶液をバーコーター法によってキャリアフィルムのA面に流延した。そして、原料溶液の流延性について、流延性良好(○)、流延時に厚みムラがあったが、実用上問題のないレベル(△)、流延時に厚みムラが大きく、実用上問題があるレベル(×)の3段階で評価した。
【0058】
(5)光学フィルム表面の平坦性
各例のキャリアフィルムにおいて、まず(4)原料溶液の流延性と同様にして、原料溶液をキャリアフィルムのA面に流延した。次いで、室温で5分間乾燥した後に60℃で5分間乾燥し、さらに140℃で30分間乾燥することにより、厚さ75μmの光学フィルムを得た。続いて、この光学フィルムをキャリアフィルムから剥離した後、キャリアフィルムのA面に接していた側の表面にAl蒸着を行った。このとき、Al蒸着は縦3cm及び横3cmの範囲で行った。
【0059】
次いで、直接位相検出干渉法、即ち2光束干渉法を用いた非接触式3次元粗さ計(マイクロマップ社製512)で、測定波長が554nm、対物レンズ倍率が20倍の条件下で、232μm×177μmの測定領域におけるP−V値を求めた。測定数は50とし、それらの平均値を最大突起高さとした。そして、光学フィルム表面の平坦性について、最大突起高さが350nm以下であり、平坦性良好(○)、最大突起高さが350nmを超えるとともに500nm以下であり、実用上問題のないレベル(△)、最大突起高さが500nmを超え、実用上問題があるレベル(×)の3段階で評価した。
【0060】
次いで、各例で用いられる各ポリエステルの製造方法について説明する。ここで、炭酸カルシウム及び非晶性シリカについては、遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製SA−CP3)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値をそれぞれ平均粒径とした。
【0061】
(ポリエステルA)
ポリエステルAにおいては、まずジメチルテレフタレート100重量部、エチレングリコール70重量部及び酢酸カルシウム一水塩0.07重量部を反応容器に入れてエステル交換反応を行った。即ち、反応溶液を加熱するとともにメタノール留出させ、エステル交換反応を開始してから約4時間半後に230℃にまで加熱してエステル交換反応を行った。
【0062】
次いで、リン酸0.04重量部及び三酸化アンチモン0.035重量部を加え、常法に従って重縮合反応を行った。即ち、反応溶液を最終的に280℃にまで徐々に加熱するとともに、系内の圧力を最終的に6.7Paにまで徐々に減圧した。4時間で重縮合反応を終了させた後、常法に従ってチップ化してポリエステルAを得た。
【0063】
(ポリエステルB)
ポリエステルBにおいては、重縮合反応時に平均粒径0.7μmの炭酸カルシウムを含有するエチレングリコールスラリーを加えた以外は、上述のポリエステルAと同様にしてポリエステルBを得た。このポリエステルBにおける炭酸カルシウムの含有量は20000ppmであった。
【0064】
(ポリエステルC)
ポリエステルCにおいては、重縮合反応時に平均粒径0.8μmの炭酸カルシウムを含有するエチレングリコールスラリーを加えた以外は、上述のポリエステルAと同様にしてポリエステルCを得た。このポリエステルCにおける炭酸カルシウムの含有量は20000ppmであった。
【0065】
(ポリエステルD)
ポリエステルDにおいては、重縮合反応時に平均粒径2.4μmの非晶質シリカを含有するエチレングリコールスラリーを加えた以外は、上述のポリエステルAと同様にしてポリエステルDを得た。このポリエステルDにおける非晶質シリカの含有量は20000ppmであった。
【0066】
(実施例1〜8及び比較例1)
実施例1においては、ポリエステルAを64重量%とポリエステルBを36重量%とが混合されたポリエステルをA層及びB層の原料とするとともに、ポリエステルAをC層の原料とした。次いで、各ポリエステルを、別々の押出機を用いて285℃でそれぞれ溶融した。
【0067】
続いて、A/C/Bの順番に積層した状態、即ち2種3層の層構成となるように各ポリエステルを20℃に冷却された回転冷却ドラム上に共押出し、冷却固化させて未延伸フィルムを得た。そして、この未延伸フィルムを90℃にて4倍に縦延伸して一軸延伸フィルムを得た。次いで、この一軸延伸フィルムをテンター内で予熱工程を経て90℃にて4倍に横延伸した。さらに、230℃で10秒間熱処理し、総厚さ100μmのキャリアフィルムを得た。
【0068】
実施例2〜5においては、A、B層の原料及び各層の厚さを表1に示すようにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にしてキャリアフィルムをそれぞれ得た。また、実施例6においては、ポリエステルAを64重量%とポリエステルBを36重量%とが混合されたポリエステルをA層の原料とするとともに、ポリエステルAを94重量%とポリエステルDを6重量%とが混合されたポリエステルをB層の原料とした。さらに、ポリエステルAをC層の原料とした。
【0069】
次いで、各ポリエステルを別々の押出機を用いて285℃でそれぞれ溶融した。続いて、A/C/Bの順番に積層した状態、即ち3種3層の層構成となるように各ポリエステルを20℃に冷却された回転冷却ドラム上に共押出し、冷却固化させて未延伸フィルムを得た。そして、実施例1と同様にしてキャリアフィルムを得た。
【0070】
実施例7においては、B層の原料及びA、C層の厚さを表1に示すようにそれぞれ変更した以外は、実施例6と同様にしてキャリアフィルムを得た。また、実施例8においては、A、B層の原料及び各層の厚さを表1に示すようにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にしてキャリアフィルムを得た。
【0071】
一方、比較例1においては、A、B層の原料及び各層の厚さを表1に示すようにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にしてキャリアフィルムを得た。
実施例1〜8及び比較例1について、上述の(1)〜(5)の項目に関して評価又は測定を行った。ここで、各例のキャリアフィルムにおいて、A層の表面をA面とするとともに、B層の表面をB面とした。それらの結果を表1に示す。尚、表1において、キャリアフィルムのA面の最大突起高さをRmaxAで示すとともに、B面の最大突起高さをRmaxBで示す。さらに、A面からの高さが350nm以上の突起の1mm2当たりにおける数をPc350で示す。
【0072】
【表1】
表1に示すように、実施例1〜8においては、A面の平坦性、原料溶液の流延性及び光学フィルムの平坦性において優れた評価となった。さらに、実施例1〜8においては、RmaxBが300〜1000nmであるとともに、RmaxA以上であるために、作業性に優れていた。
【0073】
一方、比較例1においては、RmaxBが300nm未満であるために、A面の平坦性において、フィルムの波うちが大きく、あるいは凹凸跡が多く、実用上問題があるレベルと評価された。さらに、原料溶液の流延性において、流延時に厚みムラが大きく、実用上問題があるレベルと評価された。
【0074】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1)前記合成樹脂材料には、平均粒径が0.1〜4.0μmの不活性粒子が含有されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光学フィルム製造用キャリアフィルム。この構成によれば、光学フィルム製造用キャリアフィルム表面に凹凸を容易に形成することができる。
【0075】
(2)請求項1から請求項3及び上記(1)のいずれか一項に記載の光学フィルム製造用キャリアフィルムの一方の表面に原料溶液を流延し、原料溶液を乾燥した後に光学フィルム製造用キャリアフィルムから剥離することにより製造されることを特徴とする光学フィルムの製造方法。この構成によれば、光学フィルム製造用キャリアフィルムにおいて原料溶液が流延される側の表面の平坦性を維持することにより、光学フィルム表面の平坦性を維持することができる。
【0076】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明の光学フィルム製造用キャリアフィルムによれば、作業性を向上させることができるとともに、原料溶液が流延される側の表面の平坦性を維持することができる。
【0077】
請求項2に記載の発明の光学フィルム製造用キャリアフィルムによれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、原料溶液が流延される側の表面の平坦性をより確実に維持することができる。
【0078】
請求項3に記載の発明の光学フィルム製造用キャリアフィルムによれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、光学フィルム製造用キャリアフィルムの機械的強度、寸法安定性及び耐熱性を向上させることができるとともに、光学フィルム製造用キャリアフィルムの製造コストを低減することができる。
Claims (3)
- 合成樹脂材料により形成され、光学フィルムを製造するための原料溶液が一方の表面に流延されるように構成され、
原料溶液が流延される側の表面の最大突起高さをRmaxAとし、原料溶液が流延されない側の表面の最大突起高さをRmaxBとしたとき、RmaxAは500nm以下に設定され、RmaxBは300〜1000nmに設定されるとともにRmaxA以上に設定されていることを特徴とする光学フィルム製造用キャリアフィルム。 - 前記原料溶液が流延される側の表面は、該表面からの高さが350nm以上の突起の数が200個/mm2以下に設定されている請求項1に記載の光学フィルム製造用キャリアフィルム。
- 前記合成樹脂材料はポリエステルである請求項1又は請求項2に記載の光学フィルム製造用キャリアフィルム。
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