以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。以下の説明では、各図に表す矢印方向の通りに前後方向、左右方向、および上下方向を定義する。以下の説明では、また、図1において時計回りの回転や軸回転を「前転」と表現するとともに、図1において反時計回りの回転や軸回転を「後転」と表現する。
図1はこの発明の実施の形態に係る台車用アシスト機構1を示す側面図であり、図2は台車用アシスト機構1の底面図である。この台車用アシスト機構1は、台車に備え付けられて、種々の資材や荷物などを積載した状態の台車を、該台車の手押しハンドルなどを押して人力で走行させる際に、容易に且つ真っ直ぐに動き出させるための助勢具(助走具)として機能する仕組みである。
図3は、台車用アシスト機構1が台車に備え付けられている状態の一例を模式的に示す概略平面図である。この発明に係る台車用アシスト機構1が備え付けられる台車9は、例えば板状に形成されて資材や荷物などが載せられる荷台91と該荷台91の下面側の四隅のそれぞれに取り付けられるキャスタなどの車輪92とを有し、台車9を人力で押すための着脱自在の若しくは常時備え付けの手押しハンドルなどの手押し部93を備えるものであれば、特定の形態の台車には限定されない。なお、図3は、この発明に係る台車用アシスト機構1が台車に備え付けられている状態のあくまでも概略の構成を模式的に示す図であり、詳細な構造を厳密に表すものではなく、特に、ロック装置7を表していない。また、図1、図2、および図4では、台車9の荷台91(或いは、荷台に相当する構造や部材)をあくまでも模式的に表すものとして図示し、また、助勢駆動車輪6の前方位置や後方位置に設けられて走行面Gに接触している台車9の車輪92の図示を省略している。
この実施の形態に係る台車用アシスト機構1は、台車9の荷台91の下面側に台車9が走行する前後方向に沿って傾動可能に設けられる傾動フレーム2と、傾動フレーム2の後部に回動可能に支持されるペダル3と、傾動フレーム2の前部に前後方向に沿って回転可能に支持されるとともに傾動フレーム2が傾動することによって台車9の走行面Gから浮いたり走行面Gに接地したりする助勢駆動車輪6と、ペダル3の回動操作力を助勢駆動車輪6の転動力として伝達する動力伝達機構4と、を備え、傾動フレーム2の前側が下向きに傾斜して助勢駆動車輪6が走行面Gに接地している状態でペダル3が回動操作されることによって助勢駆動車輪6が前転するようにしている。
傾動フレーム2は、台車用アシスト機構1を構成する各部を支持するとともに、前後方向に沿いつつ台車9(特に、荷台91)に対して傾動(回動、揺動)して助勢駆動車輪6の走行面Gへの接地と走行面Gからの浮き上がりとを実現するためのものである。傾動フレーム2は、前後方向を長手方向とする天板21と、該天板21の左右端のそれぞれから下向きに対向して延出する左右一対の側壁22とを有する。傾動フレーム2の前端および後端は開口している。
傾動フレーム2の天板21の上面の前後方向における中間位置に、左右方向において離間して上向きに対向して突出する左右一対の軸連結部23が設けられ、該左右一対の軸連結部23の上端部に架け渡されて、左右方向に沿う回動軸24が設けられる。
また、台車9の荷台91の下面に、左右方向において離間して下向きに対向して突出する左右一対の軸支持部25が設けられ、これら軸支持部25それぞれの下端寄りの位置に、左右方向に貫通する支持孔が形成される。
そして、傾動フレーム2の回動軸24が荷台91の左右一対の軸支持部25それぞれの支持孔を回動自在に貫通することにより、傾動フレーム2が荷台91に対して回動軸24を中心として傾動可能に支持される。
傾動フレーム2に、この実施の形態では主要なものとして、ペダル3、該ペダル3によって回転動が与えられる第1の一方向クラッチ43および第1の歯車41、該第1の歯車41と噛み合う第2の歯車44、該第2の歯車44と連動する第1のスプロケット48A、該第1のスプロケット48Aの回転動がチェーン49を介して伝達される第2のスプロケット48B、および該第2のスプロケット48Bの回転動が第2の一方向クラッチ47を介して伝達される助勢駆動車輪6が支持される。
傾動フレーム2に支持される上記の構成のうちペダル3と助勢駆動車輪6とを除く各部は、ペダル3が回動する動き(ペダル3の回動操作力)を駆動力(転動力)として助勢駆動車輪6へと伝達するための仕組みとしての動力伝達機構4を構成する。この点において傾動フレーム2は、助勢駆動車輪6を回転させるためのペダル3と、該ペダル3の動き(回動操作力)を駆動力(転動力)として伝達する動力伝達機構4と、該動力伝達機構4によって伝達される駆動力(転動力)によって回転する助勢駆動車輪6とを支持するフレーム体として機能する。
傾動フレーム2は、天板21が水平もしくは概ね水平の姿勢では助勢駆動車輪6を走行面Gから浮かせて離した状態で支持し(図1参照)、天板21の前側部分が下向きに傾斜(即ち、図1の姿勢から時計回りに回動して傾斜)した姿勢では助勢駆動車輪6を走行面Gに接地させる(図4参照)。
傾動フレーム2は、回動軸24よりも前側の部分と比べて回動軸24よりも後ろ側の部分の方が重いことにより、或いは、該傾動フレーム2と台車9本体側との間に介在するように配設される付勢手段(図示していない)により、該傾動フレーム2に対して外力が作用していないときには天板21の前側が下向きに傾斜することがなく助勢駆動車輪6が走行面Gから浮いているように構成される。
ペダル3は、作業者により踏み込まれることによって回動(傾動、揺動)して第1の歯車41に回転動を与えるためのものであり、左右方向において離間して対向配置される左右一対の基端部31と、これら基端部31のそれぞれから後ろ向きに対向して延出する左右一対のアーム部32と、これらアーム部32の後端部を連結しつつ左右方向に沿って延出して設けられる足掛部33とを有する。
ペダル3は、左右一対の基端部31がともに、第1の回転軸42によって支持される。第1の回転軸42は、左右方向に沿って配置され、左右一対の側壁22のそれぞれを貫通して傾動フレーム2に回動自在に支持される。これにより、ペダル3は、足掛部33が上下に移動し得るように、第1の回転軸42を中心としてアーム部32が傾動可能に支持される。
ペダル3は、傾動フレーム2との間に介在するように配設される付勢手段(図示していない)により、足掛部33が作業者によって踏み下ろされてアーム部32が下向きに回動した後に足掛部33を押し下げる力が解放されると、アーム部32が上向きに回動して足掛部33が元の位置(図1に示す姿勢)に戻るように構成される。具体的には例えば、第1の回転軸42に巻き回されて、一方の腕がペダル3のアーム部32に掛け止められるとともに他方の腕が傾動フレーム2の側壁22に掛け止められるねじりコイルばね(図示していない)がペダル3と傾動フレーム2との間に介在して配設され、アーム部32が上向きに回動する向きに付勢されるようにしてもよい。
第1の歯車41は、円盤状をなして円盤の外周面に盤面と直交する方向に沿う複数の歯が形成されている平歯車であり、盤面が上下方向および前後方向に沿った姿勢で配設される。第1の歯車41は、該第1の歯車41の円盤中心部分に組み込まれている第1の一方向クラッチ43の中心部を第1の回転軸42が左右方向に貫通することにより、つまり第1の一方向クラッチ43を介在させて、第1の回転軸42を中心として回転可能に傾動フレーム2に支持される。
第1の一方向クラッチ43(ワンウェイクラッチ、フリーホイールとも呼ばれる)は、第1の歯車41の円盤中心部分に組み込まれ、ペダル3の足掛部33が押し下げられることによってアーム部32が下向きに回動して第1の回転軸42が後転する軸回転動は第1の歯車41へと伝達する一方で、アーム部32が上向きに回動して第1の回転軸42が前転する軸回転動は第1の歯車41へと伝達しない(また、第1の歯車41が例えば自ら後転する回転動は第1の回転軸42へと伝達しない)。
第2の歯車44は、円盤状をなして円盤の外周面に盤面と直交する方向に沿う複数の歯が形成されている平歯車であり、盤面が上下方向および前後方向に沿った姿勢で配設されて第2の回転軸45によって支持される。第2の回転軸45は、左右方向に沿って配置され、左右一対の側壁22のそれぞれを貫通して傾動フレーム2に回動自在に支持される。そして、第2の歯車44は、第2の回転軸45が円盤中心部分を左右方向に貫通し、該第2の回転軸45によって該第2の回転軸45を中心として回転可能に傾動フレーム2に支持される。
第2の歯車44は、第1の歯車41と噛み合い、第1の歯車41が後転する回転動が伝達されて前転する。また、第2の歯車44と第2の回転軸45とは相互に固着され、第2の歯車44が前転すると第2の回転軸45も前転する。
第2の歯車44と左右方向において隣接し対向して、第2の回転軸45を中心部に貫通させて第1のスプロケット48Aが配設される。第2の回転軸45と第1のスプロケット48Aとは相互に固着され、第2の歯車44が前転すると第2の回転軸45を介して第1のスプロケット48Aも前転する。
助勢駆動車輪6は、車軸が左右水平方向に沿った姿勢で配設されて、車軸としての第3の回転軸46によって支持される。第3の回転軸46は、左右方向に沿って配置され、左右一対の側壁22のそれぞれを貫通して傾動フレーム2に回動自在に支持される。そして、助勢駆動車輪6は、車軸としての第3の回転軸46によって該第3の回転軸46を中心として回転可能に傾動フレーム2に支持される。助勢駆動車輪6と第3の回転軸46とは相互に固着される。
助勢駆動車輪6と左右方向において隣接し対向して、第2のスプロケット48Bが配設される。第2のスプロケット48Bは、該第2のスプロケット48Bの円盤中心部分のボス48cに組み込まれている第2の一方向クラッチ47の中心部を第3の回転軸46が左右方向に貫通することにより、つまり第2の一方向クラッチ47を介在させて、第3の回転軸46を中心として回転可能に傾動フレーム2に支持される。
第1のスプロケット48Aと第2のスプロケット48Bとの間に、これら二つのスプロケット48A、48Bに噛み合ってこれらスプロケット48A、48Bを連動させるチェーン49が巻き掛け渡される。これにより、第1のスプロケット48Aが前転するとチェーン49を介して第2のスプロケット48Bも前転する。
第2の一方向クラッチ47(ワンウェイクラッチ、フリーホイールとも呼ばれる)は、第2のスプロケット48Bの円盤中心部分のボス48cに組み込まれ、第2のスプロケット48Bが前転する回転動は第3の回転軸46へと伝達する一方で、第2のスプロケット48Bが後転する回転動は第3の回転軸46へと伝達しない(また、助勢駆動車輪6とともに第3の回転軸46が例えば自ら前転する軸回転動は第2のスプロケット48Bへと伝達しない)。
以上の構成により、図1や図4に示す状態からペダル3の足掛部33が押し下げられてアーム部32が下向きに回動すると第1の回転軸42とともに第1の歯車41が後転し、第1の歯車41と噛み合う第2の歯車44が前転して第2の回転軸45とともに第1のスプロケット48Aが前転し、第1のスプロケット48Aと噛み合うチェーン49を介して第2のスプロケット48Bが前転して第3の回転軸46とともに助勢駆動車輪6が前転する。このとき、第1の一方向クラッチ43は第1の回転軸42が後転する軸回転動を第1の歯車41へと伝達し、また、第2の一方向クラッチ47は第2のスプロケット48Bが前転する回転動を第3の回転軸46へと伝達する。
この実施の形態に係る台車用アシスト機構1は、伸縮自在に構成されて伸長状態でロック可能であるとともにロックが解除されることによって収縮するロック装置7をさらに備え、伸長状態においてロック装置7が傾動フレーム2の後端部に当接して傾動フレーム2の前側が下向きに傾斜し、助勢駆動車輪6が走行面Gに接地している状態が保持されるようにしている。
ロック装置7は、傾動フレーム2の天板21が水平もしくは概ね水平の姿勢になって助勢駆動車輪6が走行面Gから浮いて離れている状態を許容したり、天板21の前側が下向きに傾斜(即ち、図1の姿勢から時計回りに回動して傾斜)した姿勢になって助勢駆動車輪6が走行面Gに接地している状態を保持したりするためのものである。
ロック装置7は、台車9本体側に設けられる支持構造を介して台車9本体に対して固定された上で、傾動フレーム2に対して作用し得るように備え付けられる。この実施の形態では、台車9の荷台91の後端部に、ロック装置7を備え付けるための支持構造8が取り付けられる。なお、図2では、ロック装置7および支持構造8を表していない。
この実施の形態では、支持構造8は、あくまで一例として、左右方向において離間して各々が前後方向に沿って対向して延出する左右一対の棒状の取付部81と、これら取付部81それぞれの後端から下向きに対向して延出する左右一対の棒状の垂下部82と、これら垂下部82によって支持されて前向きに張り出す板状の支持台部83とを有する。支持構造8は、取付部81が台車9の荷台91の上面に対して固着されることにより、台車9本体に対して固定されて設けられる。そして、ロック装置7は、支持構造8の支持台部83に備え付けられる。
ロック装置7は、伸縮自在の仕組みとして構成され、ロックが解除されて収縮(短縮)した状態で(図5)、傾動フレーム2の天板21が水平もしくは概ね水平の姿勢になることを許容し(図1)、また、伸長した状態でロックされて(図6)、天板21の前側が下向きに傾斜した姿勢で傾動フレーム2を保持する(図4)。
ロック装置7としては、例えばフロアーロック、ハンマーロック、或いは台車ストッパーなどと呼ばれる仕組みが用いられ得る。これらフロアーロック等は具体的には種々の構造のものがあって周知の仕組みである(例えば、特開2006-240504号公報、特開2009-154630号公報参照)ので詳細な説明はここでは省略するが、例えば概略下記の構造を備える仕組みがロック装置7として用いられ得る。
この実施の形態では、ロック装置7は、水平な平板状の当接部71と、該当接部71が上端に取り付けられている伸縮自在の伸縮部72と、該伸縮部72に対して回動可能に取り付けられたロックレバー73と、該ロックレバー73の側方に配置されて当接部71の下面に対して回動可能に取り付けられた解除レバー74と、ロックレバー73と当接部71および解除レバー74との間に介在するように掛け渡されて相互に回動可能に配設されたリンク75とを有する。
伸縮部72は、下端のベース部721と、該ベース部721から立ち上がって設けられる支持脚部722と、該支持脚部722に支持される内筒部723と、該内筒部723の外周に対して上下に摺動可能に嵌合する外筒部724とを有する。そして、外筒部724の上端に当接部71が固定されて取り付けられる。
引張コイルばね725が、内筒部723と外筒部724との間に介在するように、これら内筒部723および外筒部724に内蔵されて設けられる。引張コイルばね725は、外筒部724の天板の下面に上端部が掛け止められるとともに、内筒部723を左右方向に沿って貫通する内筒軸726に下端部が掛け止められる。引張コイルばね725は、伸縮部72が伸長した状態(図6参照)において、伸長して反発力(具体的には、内筒部723と外筒部724とを相互に引き付ける力)を蓄えた状態になる。なお、内筒軸726は、左右方向に沿って配置され、内筒部723を貫通して左右両端部が前記内筒部723の周壁から外方へと突出して設けられる。
ロックレバー73は、各々が側面視においてく字形の板状に形成されるとともに左右方向において離間して伸縮部72を挟んで対向配置される左右一対のレバー本体731と、該左右一対のレバー本体731それぞれの後端部に架け渡されて取り付けられるロック踏板732と、左右一対のレバー本体731それぞれの前端部に架け渡されて取り付けられるロック軸733とを有する。ロック軸733は、左右方向に沿って配置され、左右一対のレバー本体731のそれぞれを貫通して左右両端部が前記左右一対のレバー本体731のそれぞれから外方へと突出して設けられる。
左右一対のレバー本体731のそれぞれは、伸縮部72から後方へと延出するとともに前方へも延出する態様で、前後中間部の屈曲部が、内筒部723の周壁から外方へと突出している内筒軸726によって該内筒軸726を中心として回動可能に支持されて取り付けられる。
解除レバー74は、ロックレバー73の左右一対のレバー本体731の外側(側方/図に示す例では右側)に配置される傾動部741と、該傾動部741の後端部に設けられる解除踏板742とを有する。解除レバー74は、傾動軸744によって支持されて配設される。
具体的には、伸縮部72の前方位置において、当接部71の下面から左右方向において離間して下向きに対向して突出する左右一対の軸支持部743が設けられて、左右方向に沿って配置される傾動軸744が前記左右一対の軸支持部743に架け渡されて支持される。傾動軸744は、左右一対の軸支持部743のそれぞれを貫通して左右両端部が前記左右一対の軸支持部743のそれぞれから外方へと突出して設けられる。そして、解除レバー74は、傾動部741の前端部寄りの位置を傾動軸744が左右方向に貫通して回動自在に支持されることにより、傾動軸744を中心として傾動可能に支持されて配設される。
リンク75は、左右方向において離間して左右一対のレバー本体731を挟んで左右一対のものとして対向配置される。なお、左右一対のリンク75は、これらリンク75のそれぞれと連接する連結片部により、相互に連結されるようにしてもよい。
左右一対のリンク75それぞれは、各々の、一方の端部がロック軸733を介してロックレバー73のレバー本体731の後端部と相互に回動可能に連結されるとともに、他方の端部が傾動軸744を介して解除レバー74の傾動部741の後端部寄りの位置と相互に回動可能に連結されて配設される。
解除レバー74は、当接部71(または外筒部724)との間に介在するように配設される付勢手段(図示していない)により、解除踏板742が作業者によって踏み下ろされて傾動部741が下向きに回動した後に解除踏板742を押し下げる力が解放されると、傾動部741が上向きに回動して解除踏板742が元の位置(図5に示す姿勢)に戻るように構成される。具体的には例えば、傾動軸744に巻き回されて、一方の腕が当接部71の下面に掛け止められるとともに他方の腕が解除レバー74の傾動部741に掛け止められるねじりコイルばね(図示していない)が当接部71と解除レバー74との間に介在して配設され、傾動部741が上向きに回動する向きに付勢されるようにしてもよい。
以上の構成により、図5に示す状態からロックレバー73のロック踏板732が押し下げられて左右一対のレバー本体731が回動すると(図5において反時計回り)、リンク75を介して当接部71とともに伸縮部72の外筒部724が上昇して伸縮部72が伸長し、また、ロック軸733が内筒軸726を中心として伸縮部72の外筒部724へと近づくように周回(公転)する。
ここで、伸縮部72に内蔵される引張コイルばね725によって作用する付勢力(具体的には、内筒部723と外筒部724とを相互に引き付ける力)は、ロック軸733が内筒軸726と傾動軸744とを結ぶ直線Lよりも外筒部724に近い側(即ち、後ろ側)に位置するときには、ロック軸733を外筒部724へと近づける向き(即ち、後ろ向き)に押す力として働く。このため、ロックレバー73のロック踏板732が押し下げられてロック軸733が内筒軸726を中心として外筒部724へと近づくように周回(公転)して内筒軸726と傾動軸744とを結ぶ直線Lよりも外筒部724に近い側に位置すると、ロック踏板732を押し下げる力が解放されても、引張コイルばね725の付勢力により、ロック軸733が外筒部724の外周面へと押し付けられて当接した状態で左右一対のレバー本体731の姿勢が維持され、延いては伸縮部72が伸長して当接部71が上昇した位置でロックされる(図6参照)。
一方、図6に示す状態から解除レバー74の解除踏板742が押し下げられて傾動部741が下向きに回動すると(図6中の矢印M1に沿う動き)、該傾動部741の後ろ側の下端がロック軸733へと当接して該ロック軸733が前方へと押され、ロック軸733が内筒軸726(また、傾動軸744)を中心として伸縮部72の外筒部724から離れるように周回(公転)する(図6中の矢印M2に沿う動き)。
そして、伸縮部72に内蔵される引張コイルばね725によって作用する付勢力(具体的には、内筒部723と外筒部724とを相互に引き付ける力)は、ロック軸733が内筒軸726と傾動軸744とを結ぶ直線Lよりも外筒部724から離れた側(即ち、前側)に位置するときには、ロック軸733を外筒部724から離れる向き(即ち、前向き)に押す力として働く。このため、解除レバー74の解除踏板742が押し下げられてロック軸733が内筒軸726を中心として外筒部724から離れるように周回(公転)して内筒軸726と傾動軸744とを結ぶ直線Lよりも外筒部724から離れた側に位置すると、引張コイルばね725の付勢力により、当接部71とともに伸縮部72の外筒部724が下降して伸縮部72が収縮(短縮)して図5に示す状態に戻る。
ここで、ロック装置7は、伸縮部72のベース部721が支持構造8の支持台部83の上面に対して固定されて取り付けられることにより、台車9本体(特に、荷台91)に対して備え付けられる。すなわち、ロック装置7は、台車9本体に対し、伸縮部72の内筒部723の位置が固定された上で、外筒部724が上下に移動する仕組みとして設けられる。そして、ロック装置7(具体的には、伸縮部72)が伸長した状態では、当接部71が傾動フレーム2の天板21の下面の後端部に当接して(後端部を押し上げて)、傾動フレーム2の前側が下向きに傾斜して助勢駆動車輪6が走行面Gへと接地している(押し当てられている)状態が保持される。一方、ロック装置7(具体的には、伸縮部72)が収縮した状態では、当接部71が高い位置で傾動フレーム2の天板21の下面の後端部に当接する(後端部を押し上げる)ことがなく、傾動フレーム2が水平もしくは概ね水平の姿勢になって助勢駆動車輪6が走行面Gから浮いて離れている状態が許容される。
次に、上述のような構成の台車用アシスト機構1の動作や作用などについて説明する。まず、図1に示す状態(ロック装置7は図5に示す状態)から作業者によってロックレバー73のロック踏板732が踏み下ろされるとレバー本体731が回動し、当接部71が上昇するとともにロック軸733が周回(公転)して外筒部724へと当接して、伸縮部72が伸長した状態でロックされる(ロック装置7は図6に示す状態)。これにより、当接部71が傾動フレーム2の後端部に当接し(後端部を押し上げ)、傾動フレーム2の前側が下向きに傾斜して助勢駆動車輪6が走行面Gへと接地している(押し当てられている)状態が保持される(図4)。この状態で、作業者によってペダル3の足掛部33が踏み下ろされるとアーム部32が下向きに回動し、第1の一方向クラッチ43および第1の歯車41(後転)、第2の歯車44および第1のスプロケット48A(前転)、チェーン49、並びに第2のスプロケット48Bおよび第2の一方向クラッチ47(前転)によって駆動力(転動力)が伝達されて、助勢駆動車輪6が強制的に前転する。すなわち、助勢駆動車輪6が走行面Gに接地している状態で強制的に前転し、これにより、台車9に対して前向きに走行する推進力が与えられる。なお、上記の操作に関し、ロックレバー73のロック踏板732のみが踏み下ろされて傾動フレーム2の傾動が単独で行われるようにしてもよく、或いは、ロックレバー73のロック踏板732とペダル3の足掛部33とが同時に踏み下ろされて傾動フレーム2の傾動と助勢駆動車輪6の強制的な前転とが並行して行われるようにしてもよい。
助勢駆動車輪6が走行面Gに接地している状態で強制的に前転して台車9に対して前向きに走行する推進力が与えられることにより、台車9本体に取り付けられている車輪92としての複数の自在車輪の各々が相互に異なる方向を向いていても、これら自在車輪の各々を台車9が前向きに走行する向きに揃えるように回転して前向きに動き出そうとする。
続いて、作業者によって足掛部33が踏み下ろされる力が解放されると、アーム部32が上向きに回動して足掛部33が元の位置に戻る。この際、アーム部32が上向きに回動して第1の回転軸42が前転する軸回転動は第1の一方向クラッチ43の働きによって第1の歯車41へと伝達されず、したがって助勢駆動車輪6が前転する回転動は阻害されない。
車輪92としての複数の自在車輪のすべての向きを揃えて台車9を動き出させるためとしての助勢駆動車輪6による助勢(助走)が足りない場合には、ロック装置7が伸長した状態でロックされて助勢駆動車輪6が走行面Gに接地している(押し当てられている)状態のままで、元の位置に戻ったペダル3の足掛部33の踏み下ろしが繰り返し行われる。これにより、一層確実に、複数の自在車輪のすべてが、台車9が前向きに走行する向きに揃って回転し、台車9が前向きに動き出す。また、動き始めた後もペダル3の足掛部33の踏み下ろしが繰り返し行われることにより、台車9に対して前向きに走行する推進力が引き続き与えられて台車9の走行が補助される。
ここで、台車9が動き出してからも助勢駆動車輪6を走行面Gに接地させたままで台車9を走行させることにより、助勢駆動車輪6の回転方向は前後方向に固定されているので、台車9の進行方向が前後方向に保持されて安定し、台車9が意図しない方向に進んでしまう(曲がってしまう)ことが防止される。
一方、台車9の進行方向を変える場合には、解除レバー74の解除踏板742が踏み下ろされて傾動部741が下向きに回動することにより、ロック軸733が前方へと押されて伸縮部72の伸長状態のロックが解除され、当接部71が下降して傾動フレーム2の後端部から離れて傾動フレーム2の前側が上向きに回動して助勢駆動車輪6が走行面Gから浮いて離れる。これにより、助勢駆動車輪6による前後方向走行の制限が解除されるので、意図する方向に応じた外力を与えることによって自在車輪の向きを変えて台車9の進行方向を変えることができる。
この実施の形態に係る台車用アシスト機構1や台車9によれば、ペダル3を操作して助勢駆動車輪6を走行面Gに接地させた状態で助勢駆動車輪6を前転させることにより、台車9に対して前向きに走行する推進力を与えることができるので、台車9の動き始めの抵抗を低減させて台車9を容易に動き出させることが可能となる。さらに、台車9に車輪92として複数の自在車輪が取り付けられている場合でも、台車9に対して与えられる前向きに走行する推進力により、複数の自在車輪の各々を台車9が前向きに走行する向きに揃えて前向きに動き出させることができるので、複数の自在車輪の各々が相互に異なる方向を向いていても、台車9の動き始めの抵抗を低減させて台車9を容易に且つ真っ直ぐに動き出させることが可能となる。
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では荷台91の下面側に車輪92として自在車輪(キャスタ)が取り付けられている台車9に対して台車用アシスト機構1が備え付けられるようにしているが、台車9に取り付けられている車輪92は自在車輪でなくてもよい。この発明に係る台車用アシスト機構1は、前後方向に沿って回転する固定車輪が取り付けられている台車9に備え付けられる場合でも、助勢駆動車輪6が走行面Gに接地した状態で強制的に前転することにより、台車9の動き始めの抵抗を低減させて台車9を容易に動き出させることを可能にするという作用効果を発揮する。
また、上記の実施の形態ではペダル3と助勢駆動車輪6との間に介在する動力伝達機構4が第1の一方向クラッチ43、第1の歯車41、第2の歯車44、第1のスプロケット48A、チェーン49、第2のスプロケット48B、および第2の一方向クラッチ47を含むものとして構成されているが、本発明における動力伝達機構は、ペダル3の動きを伝達して助勢駆動車輪6を前転させる仕組みであれば上記の実施の形態における構成には限定されない。
また、上記の実施の形態では本発明に係る台車用アシスト機構1に組み込まれるロック装置として図5および図6に示す仕組みが用いられるようにしているが、本発明に係る台車用アシスト機構に組み込まれ得るロック装置の具体的な構成は図5および図6に示す仕組みに限定されるものではなく、伸長状態でロックされるとともにロックが解除されて収縮(短縮)する仕組みであれば具体的な構成はどのようなロック装置でもよい。
さらに言えば、上記の実施の形態では本発明に係る台車用アシスト機構1にロック装置7が組み込まれるようにしているが、ロック装置7が組み込まれないようにしてもよい。この場合は、ペダル3の足掛部33が踏み下ろされることによってアーム部32が下向きに回動して第1の歯車41が後転しようとすると第2の歯車44との噛み合いの摩擦力/抵抗力によって傾動フレーム2の後ろ側が持ち上げられて前側が下向きに傾斜して助勢駆動車輪6が走行面Gへと接地し、足掛部33がさらに踏み下ろされることによって助勢駆動車輪6が走行面Gに接地している状態で強制的に前転する。