以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これら説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂複合材を模式的に表す図である。以下に、樹脂複合材1について、詳細に説明する。
<1.樹脂複合材1>
図1に示すように、樹脂複合材1は、ゼオライト2と、樹脂3と、を含有する。
また、樹脂複合材は、0℃以上、前記樹脂のガラス転移温度以下におけるゼオライトの平均熱膨張係数は0ppm/K未満であり、かつ、下記式(1)を満たす。
αc<αm×(100-Wz)/100 (1)
式(1)中、αcは0℃以上、前記樹脂のガラス転移温度以下における樹脂複合材の平均熱膨張係数であり、αmは0℃以上、前記樹脂のガラス転移温度以下における樹脂の平均熱膨張係数であり、Wzは樹脂複合材中のゼオライトの質量分率である。なお、樹脂複合材中のゼオライトの質量分率とは、樹脂複合材の全質量を100%とした場合のゼオライトの質量分をパーセンテージで表した数値である。
通常、樹脂フィルムは、ガラス等の材料上に、該樹脂組成物を塗布し、その後、加熱することにより形成される。しかしながら、一般的に、樹脂は高い平均熱膨張係数を有する傾向があるために、樹脂フィルム作製の際の加熱後の冷却時において、ガラス等の材料との熱膨張差によって反りが生じてしまう傾向がある。そこで、樹脂の平均熱膨張係数を低減する方法として、フィラーとしてシリカ微粒子を添加する方法が知られている。
しかしながら、本発明者らの検討によると、樹脂フィルムの平均熱膨張係数を低下させるには、フィラーであるシリカ微粒子を多量に添加する必要があり、多量のシリカ微粒子を添加した樹脂複合材は、時間が経過するにつれ、部分的に白濁が目立ち、樹脂フィルム本来の高い透明性を維持することが困難であることが判明した。この理由としては、主に、以下の2つが考えられる。1つ目の理由としては、シリカ微粒子は、樹脂中において凝集しやすい傾向があるために、樹脂中のシリカ微粒子の凝集部分が部分的に白濁化していき、時間経過と共に白濁が目立つようになることが考えられる。また2つ目の理由としては、上述の通り、樹脂に対して透明性の低いシリカ微粒子の量が多くなり、白濁が目立つようになることが考えられる。また、樹脂複合材中のフィラーの含有量が多いために、樹脂本来のフレキシブル性が失われ、脆化や変形が発生しやすくなる。
一方、本発明においては、フィラーとして、周期的な原子の配置構造が存在する構造単位を有する、ゼオライトを使用しているために、周期的な原子の配置構造が存在しにくいシリカ粒子等のフィラーと比較して凝集が発生しにくくなる。さらに、本発明においては、ゼオライトが0ppm/K未満の平均熱膨張係数を有するために、ゼオライトを含有していない樹脂と比較して、樹脂複合材の平均熱膨張係数を低くすることができる。さらには、後述するように、上記式(1)を満たすには特定のゼオライトを使用することが好ましいが、樹脂組成物が上記式(1)を満たすようなゼオライトを使用すれば、少量のゼオライトにより樹脂複合材の平均熱膨張係数を大幅に低下することができる。そのため、多量のゼオライトを添加する必要がないために、時間が経過しても、白濁化を防ぐことができ、高い透明性を維持することができる。また、ゼオライトの含有量が小さいために高いフレキブル性も維持することができ、脆化や変形等を防ぐことも可能となる。
上記式(1)は、複合材の平均熱膨張係数が、単にマトリクス樹脂の平均熱膨張係数より低いのみならず、樹脂部分の割合のみを取り出した時よりも熱膨張が抑えられていることを表している。
また、上記式(1)は、複合材中のマトリクス樹脂とゼオライトとの相互作用に関係していると推測する。具体的には、マトリクス樹脂とゼオライトとの間の相互作用が弱いと、マトリクス樹脂中に開いた穴の中にゼオライトがあるだけの状態であるといえ、複合材が熱膨張した際に、マトリクス樹脂の熱膨張により上記の開いた穴が大きくなり、かつ、ゼオライトが収縮するだけとなり、複合材全体の平均熱膨張係数はマトリクス樹脂単体の平均熱膨張係数とほぼ同等になり式(1)を満たすことはない。しかし、マトリクス樹脂との相互作用が強く現れるようなゼオライトを用いることにより、複合材が熱膨張した際に、ゼオライトが周囲の樹脂からはがれることなく樹脂を引き付けるため、マトリクス樹脂単体どころか、マトリクス樹脂の体積割合分よりも更に小さい平均熱膨張係数を有する複合材、つまり上記式(1)を満たす複合材を得ることができる。
上記式(1)とゼオライトとは以下に述べる関係にあると推測する。
ゼオライトは、ケイ素や金属元素(M)を中心としたMOx多面体が頂点共有した空隙が多い結晶構造を持っている。このような多面体ネットワークにより構成された結晶構造では、構造の揺らぎに起因した格子振動により、負の熱膨張が発生する。このメカニズムは、Rigid Unit Mode (RUM)と呼ばれている(Sci. Technol. Adv. Mater. 13, 1-11 (2012).)。特に、一般的な樹脂のTg以下では、ゼオライトは、RUMが働き、負に熱膨張しやすいことが知られている(Microporous Mesoporous Mater. 202,
226-233 (2015).)。
今回、本発明者の検討により、0ppm/K未満の平均熱膨張係数を有するゼオライトとして、CBUにd6r、mtw、及びd4rがそれぞれ含まれるゼオライトを用いた比較実験を行ったところ、CBUにd6r又はmtwのいずれかが1以上含まれているゼオライトを用いた態様では上記式(1)を満たし、CBUにd4rが含まれているゼオライトを用いた態様では上記式(1)を満たさないことが分かった。これは、前者では、構造の揺らぎに起因した格子振動を取りやすい構造であるので、ゼオライト-樹脂の相互作用により、樹脂が、構造の揺らぎをより引き起こし、ゼオライト単体より大きな値の負の熱膨張を発揮したことで、式(1)を満たしたと考えられる。一方、後者では、樹脂が、構造の揺らぎを引き起こさなかったので、ゼオライトの負の熱膨張がゼオライト単体以下の値で発揮されたことから、式(1)を満たさなかったと考えられる。このように、ゼオライトの結晶構造の揺らぎと上記式(1)とが密接に関係していると考えられる。
また、構造の揺らぎに起因した格子振動は、回転振動のしやすさも関与している。つまり、構造単位であるCBU以外に、ゼオライトの空隙度合を表現している、ゼオライトの単位体積あたりに存在するT原子の数である、フレームワーク密度も、熱膨張に関与していると考えられる。
なお、本発明におけるフレームワーク密度は、後述するが、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段に限定されるものではなく、好ましくは、12.0T/1000Å3以上、17.0T/1000Å3以下である。
樹脂複合材の平均熱膨張係数(αc)、及び樹脂の平均熱膨張係数(αm)は、JIS
K7197(2012年)に準拠する方法により、熱機械分析によって測ることが出来る。例えば、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製熱機械分析装置TMA/SS6100を使用して、シート状にした樹脂複合材の伸縮により測定出来る。
なお、本発明において、0℃以上、樹脂複合材に用いる樹脂のガラス転移温度以下における平均熱膨張係数とは、当該範囲において、任意で選択した100℃以上の連続的な温度範囲における平均熱膨張係数とみなすこととする。これは、樹脂複合材及び樹脂の平均熱膨張係数は、ガラス転移温度以下の温度ではほとんど変化がないためである。すなわち、0℃以上、ガラス転移温度以下において、任意で選択した100℃以上の連続的な温度範囲において樹脂複合材の平均熱膨張係数(αc)及び樹脂の平均熱膨張係数(αm)が上記式(1)の関係を満たしていれば、樹脂複合材は上記式(1)を満たすものとする。
なお、樹脂、及び樹脂複合材の平均熱膨張係数を算出する際の温度範囲は同じ温度範囲を選択するものとする。また、平均熱膨張係数は上記温度範囲における伸縮-温度曲線における平均の勾配により求めることができる。
また、樹脂、及び樹脂複合材の平均熱膨張係数の測定は、前記樹脂のガラス転移点温度を測定範囲に含むと、そこで熱膨張係数が大きく変わるため、ガラス転移温度を含まないよう測定することが好ましい。
また、樹脂のガラス転移温度が100℃未満の場合、0℃以上、樹脂複合材に用いる樹脂のガラス転移温度以下の範囲において、任意で選択した100℃以上の連続的な温度範囲における平均熱膨張係数が算出できないため、樹脂のガラス転移温度以上、樹脂の溶融温度以下の温度範囲であり、かつ、任意で選択した100℃以上の連続的な温度範囲における平均熱膨張係数を採用することができる。なお、本発明の効果が十分に得られる、また、高温でも安定した樹脂複合材が得られる、という観点から、ガラス転移温度が100℃未満の樹脂よりも、ガラス転移温度が100℃以上の樹脂の方が好ましい。
具体的に、αc及びαmの測定温度範囲を例示すると、
前記樹脂のガラス転移温度が100℃以下の場合には、ガラス転移温度より高い温度域である150℃以上250℃以下(樹脂の溶融温度が250℃を超える場合)の平均熱膨張係数を測定すればよく、
前記樹脂のガラス転移温度が100℃を超えて150℃以下の場合には、0℃以上から100℃以下の平均熱膨張係数を測定すればよく、
前記樹脂のガラス転移温度が150℃を超えて250℃以下の場合には、50℃以上150℃以下の平均熱膨張係数を測定すればよく、
前記樹脂のガラス転移温度が250℃を超えて320℃以下の場合には、それなりに高温にさらされるものと考えられるため、100℃以上250℃以下の平均熱膨張係数を測定するとよく、
前記樹脂のガラス転移温度が320℃を超える場合には、あまり高温側は測定が難しくなるため、60℃以上220℃以下の平均熱膨張係数を測定するとよい。
また、樹脂のガラス転移温度は、熱機械分析により測定した変曲点から求めることができる。
また、0℃以上、前記樹脂のガラス転移温度以下のゼオライトの平均熱膨張係数に関して、ゼオライトの平均熱膨張係数は、通常0~500℃の範囲ではほとんど変化しない。つまり、ゼオライトの平均熱膨張係数は、樹脂のガラス転移温度の範囲ではほとんど変わらないため、100℃以上250℃未満の値を測定して用いればよい。
なお、ゼオライトの平均熱膨張係数は、ゼオライトが通常紛体であるため、熱機械分析での測定が困難な場合が多い。そこでX線回折を用い、格子定数の変化より求める。具体的には、例えばBRUKER社製X線回折装置D8ADVANCEとX線回折解析ソフトJADEとから得られる格子定数を用いて算出することができる。
また、後述するように、樹脂複合材は、樹脂及びゼオライト以外の化合物を含有している場合があるが、質量を測定した樹脂複合材を500℃で焼成することにより残存した化合物の質量分率を樹脂複合材中のゼオライトの質量分率(Wz)とみなすこととする。
樹脂複合材の膜厚は、上記式(1)を満たす限りにおいて、特段の制限はなく、目的とする用途に合わせて適宜設定すればよいが、通常0.5μmより大きく、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上であり、さらに好ましくは3μm以上であり、特に好ましくは5μm以上であり、一方、通常5mm以下であり、好ましくは1mm以下であり、より好ましくは0.5mm以下であり、さらに好ましくは0.3mm以下であり、特に好ましくは0.1mm以下である。膜厚が、上記範囲内であることにより、ゼオライトが均一分散した上で、平均熱膨張係数を低下させやすく、透明性を確保することができる。
樹脂複合材の膜厚は、非接触式膜厚計や接触式膜厚計等、通常の膜厚計で測定できる。非接触式としては、共焦点顕微鏡(例えば、キーエンス社製形状測定レーザマイクロスコープVK-X200)等が挙げられる。
樹脂複合材中に含有されるゼオライトの含有率(質量百分率)は、上記式(1)を満たす限りにおいて、特段の制限はないが、通常、1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、最も好ましくは15質量%以上であり、一方、通常、80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下、ことさら特に好ましくは30質量%以下、最も好ましくは20質量%以下である。上述の通り、本発明においては、樹脂に少量のゼオライトを添加すれば、フィラーとしてシリカ等を用いた場合と比較して、得られる平均熱膨張係数を低下させることができるために、ゼオライト含有率が上記範囲内であれば、樹脂複合材の脆化や変形等を抑制しながら、長期的に白濁を少なくすることができる。
ゼオライトは、樹脂複合材中に、1種を単独で含有していてもよく、2種以上を任意の
組み合わせ及び比率で含有していてもよい。
本発明において、上記のゼオライトのように、2種以上を併用することができる材料の含有量の範囲について言及する場合には、その合計量が当該範囲を満たすようにすればよい。
樹脂複合材中に含まれる樹脂の含有率は、特段の限定はないが、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、一方、通常90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。樹脂の含有率が、上記範囲内であることにより、高い透明性、及び樹脂複合材の脆化や変形等を抑制しつつ、耐熱性の高い樹脂複合材を提供することができる。
樹脂は、樹脂複合材中に、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ、及び比率で併用してもよい。
また、樹脂複合材は、ゼオライト、及び樹脂以外に、他の化合物を含有していてもよい。他の化合物は後述に例を示すが、樹脂複合材中のその他の化合物の含有量は、ゼオライト、及び樹脂の含有量を考慮して任意で選択すればよい。
樹脂複合材の波長450nmにおける光の透過率は、70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが特に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。樹脂複合材の透過率が70%以上であれば、樹脂複合材を透明性が求められる用途に使えることから好ましい。このような用途としては、代表的な用途として、触媒モジュール、分子篩膜モジュール、光学部材、吸湿部材、食品、建築部材、及び電子デバイスの構成部材や包装部材等が挙げられる。なお、透過率は、分光光度計(例えば、島津製作所社製分光光度計UV-2500PC)で測定することができる。
また、樹脂複合材の可視光線透過率は、60%を超えることが好ましく、65%を超えることがより好ましく、70%を超えることがさらに好ましく、75%を超えることが特に好ましく、80%を超えることが最も好ましい。可視光線透過率が高いほど、透明用途に適している。可視光線透過率は、分光光度計(例えば、島津製作所社製分光光度計UV-2500PC)で測定した値から、JIS R3106(1998年)に定義されている方法により算出することができる。
また、樹脂複合材のD65光におけるヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、2%以下であることが特に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。ヘイズ値が低いほど、透明性が求められる用途に適している。これらの用途としては、触媒モジュール、分子篩膜モジュール、光学部材、吸湿部材、食品、建築部材、及び電子デバイスの構成部材や包装部材等が挙げられる。なお、ヘイズ値は、JIS K7136(2000年)、及びJIS K7361-1(1997年)に準拠する方法により測定する。具体的には、ヘイズ計(例えば、スガ試験機社製TMダブルビーム自動ヘーズコンピュータHZ-2)で測定することができる。
また、樹脂複合材のリタデーション値は、300nm以下であることが好ましく、250nm以下であることがより好ましく、200nm以下であることがさらに好ましく、175nm以下であることが特に好ましく、150nm以下であることが最も好ましい。リタデーション値が低いほど、光学補償用途に適している。光学補償用途としては、位相差
フィルム等の光学補償フィルム等として、触媒モジュール、分子篩膜モジュール、光学部材、吸湿部材、食品、建築部材、及び電子デバイスの構成部材や包装部材等が挙げられる。なお、リタデーション値は、位相差フィルム・光学材料検査装置を用いて測定することができる。例えば、大塚電子社製RETS-100を用いて、膜厚10μmの膜に対して、波長460nmの値として算出することができる。
また、樹脂複合材のイエローインデックス(黄色度)値は、-20以上であることが好ましく、-10以上であることがより好ましく、-5以上であることがさらに好ましく、-3以上であることが特に好ましく、-1以上であることが最も好ましい。一方、上限は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、3以下であることが特に好ましく、1以下であることが最も好ましい。イエローインデックス値が上記範囲内にあれば、無色透明フィルム用途に適している。無色透明フィルム用途としては、触媒モジュール、分子篩膜モジュール、光学部材、吸湿部材、食品、建築部材、及び電子デバイスの構成部材や包装部材等が挙げられる。なお、イエローインデックス値は、JIS K7373(2006年)に準拠する方法により測定することができる。具体的には、スガ試験機社製カラーコンピューターSM5を用いて、膜厚10μmの膜に対して算出することができる。
また、樹脂複合材に対する水分吸着量の割合は、40℃-90%RHの条件において、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましく、3質量%以上であることが特に好ましく、5質量%以上であることが最も好ましい。樹脂複合材に対する水分吸着量が大きいほど、当該樹脂複合材は吸湿フィルム用途に適している。吸湿フィルム用途としては、触媒モジュール、分子篩膜モジュール、光学部材、吸湿部材、食品、建築部材、及び電子デバイスの構成部材や包装部材等が挙げられる。なお、水分吸着量は、JIS Z0208(1976年)に準拠する方法(カップ法)により測定することができる。
また、樹脂複合材の水蒸気透過度(WVTR)は、40℃-90%RHの条件において、1×10-1g/(m2・day)以下であることが好ましく、1×10-2g/(m2・day)以下であることがより好ましく、1×10-3g/(m2・day)以下であることがさらに好ましく、1×10-4g/(m2・day)以下であることが特に好ましく、1×10-5g/(m2・day)以下であることが最も好ましい。WVTRが低いほど、バリアフィルム用途に適している。バリアフィルム用途としては、触媒モジュール、分子篩膜モジュール、光学部材、吸湿部材、食品、建築部材、及び電子デバイスの構成部材や包装部材等が挙げられる。なお、水蒸気透過度(WVTR)は、JIS K7129(2008年)に準拠する方法により測定することができる。具体的には、MOCON社製 AQUATRANを使って測定することができる。
また、樹脂複合材の比誘電率は、3以下であることが好ましく、2.7以下であることがより好ましく、2.5以下であることがさらに好ましく、2.3以下であることが特に好ましく、2以下であることが最も好ましい。比誘電率が低いほど、低誘電率部材用途に適している。低誘電率部材用途としては、触媒モジュール、分子篩膜モジュール、光学部材、吸湿部材、食品、建築部材、及び電子デバイスの構成部材や包装部材等が挙げられる。なお、比誘電率は、インピーダンスアナライザ(例えばキーサイト社製E4991B)により測定することができる。
なお、樹脂複合材における、時間経過に伴う白濁化については、上述の波長450nmにおける光の透過率、可視光線透過率、及びD65光におけるヘイズ値等で定量的に数値化できるが、目視により定性的な判断をすることができる。
また、樹脂複合材における、フレキシブル性については、耐屈曲性試験等で定量的に数値化できるが、手で折り曲げることによる亀裂や筋の数を数えることにより定性的な判断をすることができる。
樹脂複合材の成形体の形状としては、特段に制限はなく、シート状、フィルム状、板状、粒子状、塊状、繊維状、棒状、多孔体状、発泡体状、及びパッキン状等が挙げられる。なかでも、シート状、フィルム状、及び板状であれば、触媒モジュール、分子篩膜モジュール、光学部材、吸湿部材、食品、建築部材、及び電子デバイスの構成部材や包装部材等といった用途に用いやすいという理由から好ましい。
<1.1.ゼオライト2>
以下に、樹脂複合材に含有されるゼオライトについて説明する。なお、ゼオライトとは、ケイ素又はアルミニウムと、酸素と、を含んで構成される、TO4ユニット(T元素とは、骨格を構成する酸素以外の元素を表す)を基本単位としたものであり、具体的には、結晶性多孔質なアルミノケイ酸塩、結晶性多孔質なアルミノリン酸塩(ALPO)、又は結晶性多孔質なシリコアルミノリン酸塩(SAPO)が挙げられる。さらに、このTiO4ユニットが、いくつか(数個~数十個)つながった、Composite Building Unit(CBU)と呼ばれる構造単位から成り立っている。そのために、規則的なチャンネル(管状細孔)とキャビティ(空洞)を有している。
具体的に、ゼオライトは、製造しやすい点で、アルミノケイ酸塩であることが好ましいが、樹脂複合材が上記式(1)を満たす限りにおいて、ケイ素又はアルミニウムの代わりに、ガリウム、鉄、ホウ素、チタン、ジルコニウム、スズ、亜鉛、リン等の元素を用いてもよく、ケイ素、アルミニウムと共にガリウム、鉄、ホウ素、チタン、ジルコニウム、スズ、亜鉛、リン等の元素を含んでいてもよい。
ゼオライトの構造は、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードで示すことができる。なお、ゼオライトの構造は、X線構造解析装置(例えば、BRUKER社製卓上型X線回析装置D2PHASER)により得られたX線回折パターンを基に、ゼオライト構造データベース2017年版(http://www.iza-structure.org/databases/)を用いて特定することができる。
上述の通り、使用するゼオライトを選択することにより、樹脂複合材が式(1)を満たすように調整することができる。従って、樹脂複合材が上記式(1)を満たす限りにおいて、ゼオライトの種類は特段の制限はないが、特に、下記の通り、ゼオライトの平均熱膨張係数及びゼオライト骨格を選択することにより、樹脂複合材が好適に上記式(1)を満たすように調整することができる。
上記式(1)を満たす限りにおいて、0℃以上、樹脂のガラス転移温度以下の範囲におけるゼオライトの平均熱膨張係数は、0ppm/K未満であり、好ましくは-2ppm/K以下であり、より好ましくは-3ppm/K以下であり、さらに好ましくは-5ppm/K以下であり、特に好ましくは-7ppm/K以下であり、最も好ましくは-10ppm/K以下であり、一方、通常、-1000ppm/K以上であり、好ましくは-900ppm/K以上であり、より好ましくは-800ppm/K以上であり、さらに好ましくは-700ppm/K以上であり、特に好ましくは-500ppm/K以上であり、最も好ましくは-300ppm/K以上である。ゼオライトの平均熱膨張係数が上記範囲であれば、ゼオライトの含有量が少なくても上記式(1)を満たしやすくなるため、高いフレキブル性も維持することができ、脆化や変形等を防ぐことも可能となる。
なお、ゼオライトの平均熱膨張係数は、BRUKER社製X線回折装置D8ADVANCEとX線回折解析ソフトJADEを用いて格子定数を算出することで、測定することができる。
また、IZAが定めるゼオライトの構造単位Composite Building Unit(CBU)に、d6r又はmtwのいずれかを1以上含むゼオライトであれば、得られる樹脂複合材が、上記式(1)を満たしやすくなり、ゼオライトの含有量が少なくすむので、高いフレキブル性も維持することができ、脆化や変形等を防ぐことも可能となる。
d6rを有するゼオライトとしては、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、CHA、EAB、EMT、ERI、FAU、GME、JSR、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SSF、SZR、TSC、及び-WEN型構造のゼオライトが挙げられる。
また、mtwを有するゼオライトとしては、*BEA、BEC、CSV、GON、ISV、ITG、*-ITN、IWS、MSE、MTW、SFH、SFN、SSF、*-SSO、UOS、及びUOV型構造のゼオライトが挙げられる。
また、ゼオライトの平均熱膨張係数が0ppm/K未満となりやすいという点から、3次元チャネルをさらに有するゼオライトであることがより好ましい。例えば、AEI、AFT、AFX、*BEA、BEC、CHA、EMT、ERI、FAU、GME、ISV、ITG、*-ITN、IWS、JSR、KFI、MOZ、MSE、OFF、SAT、SAV、SBS、SBT、SFW、SZR、TSC、UOS、UOV、及び-WEN型構造のゼオライトが挙げられる。
これらのうち、微粒子化しやすいという観点から、酸素8員環以下の構造をさらに有することが特に好ましく、具体的には、AEI、AFT、AFX、CHA、ERI、KFI、SAT、SAV、SFW、及びTSC構造のゼオライトが挙げられる。
また、2つ以上の構造を有するゼオライトでもよく、例えばERI型とOFF型の混晶である、T型ゼオライトが挙げられる。
なお、本明細書において、酸素8員環を有する構造とは、ゼオライト骨格を形成する酸素とT元素(骨格を構成する酸素以外の元素)で構成される細孔の中で最も酸素数が多い場合の酸素元素の数が8である構造を意味する。
ゼオライト含有樹脂複合材が、上記式(1)を満たすことができる理由としては、ゼオライトが、周期的な原子の配置構造が存在する構造単位を有するために樹脂複合材中に凝集しにくいことに加えて、ゼオライト表面のSi-OH基が樹脂複合材中の樹脂との間で相互作用を発揮すること、さらにはゼオライトが異方的に収縮できるために、平均熱膨張係数が0ppm/Kであるゼオライトを樹脂に加えることによって、樹脂複合材の平均熱膨張係数を低下させられることによるものと考えられる。特に、d6r又はmtwは、異方的に収縮しやすいCBUであるので、d6r又はmtwのいずれかを1以上含むゼオライトを含む樹脂複合材は、上記式(1)をより満たしやすい。
また、ゼオライトのフレームワーク密度は、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段に限定されるものではないが、好ましくは、17.0T/1000Å3以下、より好ましくは、16.0T/1000Å3以下、さらに好ましくは、15.0T/1000Å3以下であり、一方、好ましくは、12.0T/1000Å3以上、より好ましくは、13
.03以上、さらに好ましくは、14.0T/1000Å3以上である。フレームワーク密度が、上記範囲内であれば、ゼオライトを凝集させずに微粒子化しやすくなり、長期的に白濁を少なくすることができる。
なお、フレームワーク密度とは、ゼオライトの単位体積あたりに存在するT原子の数を示し、ゼオライトの構造によって定まる値である。本明細書では、IZAのゼオライト構造データベース2017年版(http://www.iza-structure.org/databases/)に記載の数値を用いればよい。
フレームワーク密度が、16.0T/1000Å3より大きく、17.0T/1000Å3以下のゼオライトの例としては、CSV、ERI、ITG、LTL、LTN、MOZ、MSE、OFF、SAT、SFH、SFN、SSF、*-SSO、-WEN型構造のゼオライトを挙げることができる。
フレームワーク密度が、15.0T/1000Å3より大きく、16.0T/1000Å3以下のゼオライトの例としては、AEI、AFT、AFV、AFX、AVL、*BEA、BEC、CHA、EAB、GME、*-ITN、LEV、MWW、及びSFW型構造のゼオライトを挙げることができる。
フレームワーク密度が、14.0T/1000Å3より大きく、15.0T/1000Å3以下のゼオライトの例としては、ISV、IWS、KFI、SAS、及びSAV型構造のゼオライトを挙げることができる。
フレームワーク密度が、14.0T/1000Å3以下の範囲に存在するゼオライトの例としては、EMT、FAU、JSR、SBS、SBT、及びTSC型構造のゼオライトを挙げることができる。
また、ゼオライトのシリカ/アルミナモル比(SAR)は、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段に制限されるものではないが、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは9以上、特に好ましくは12以上であり、通常2000以下、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは100以下である。シリカ/アルミナモル比(SAR)が、上記範囲内であれば、カウンターカチオンの量を適切に制御でき、また、ゼオライトの製造コストも安くすむ。
なお、ケイ素、アルミニウムの代わりに、ガリウム、鉄、ホウ素、チタン、Zジルコニウム、スズ、亜鉛、リン等の元素を用いた場合は、代わりになった該元素の酸化物のモル比を、アルミナ又はシリカのモル比として換算すればよい。具体的には、アルミニウムの代わりにガリウムを用いた場合は、酸化ガリウムのモル比をアルミナのモル比に換算すればよい。
また、ゼオライトのカウンターカチオンは、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段に限定されるものではないが、通常、構造規定剤、プロトン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンであり、好ましくは、構造規定剤、プロトン、アルカリ金属イオンであり、より好ましくは、構造規定剤、プロトン、Liイオン、Naイオン、Kイオンであり、さらに好ましくは、構造規定剤、プロトン、Liイオンであり、特に好ましくは、プロトンである。構造規定剤である場合には、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンに比べ、柔軟性があるために、ゼオライトが、0ppm/K未満の平均熱膨張係数をより示しやすいために好ましい。また、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンは、そのサイズが小さいほど、ゼオライトが、0ppm/K未満の平均熱膨張係数をより示しやすいために好ましい。なかでも、プロトンである場合が、樹脂複合材の平均熱膨張係
数を低下しやすいために、好ましい。
すなわち、ゼオライトとしては、好ましくは、as-made(構造規定剤含有型)、プロトン型、アルカリ金属型であり、より好ましくは、as-made、プロトン型、Li型、Na型、K型であり、さらに好ましくは、as-made、プロトン型、Li型であり、最も好ましくは、プロトン型である。
なお、構造規定剤とは、後述するように、ゼオライトの製造で用いるテンプレートのことである。
ゼオライトの結晶度は、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段に限定されるものではない。その理由としては、IZAがコードで定める構造よりも、Composite
Building Unit(CBU)が、樹脂複合材の平均熱膨張係数に繋がる因子であると推測されるからである。
なお、ゼオライトの結晶度は、X線回折装置(例えば、BRUKER社製卓上型X線回析装置D2PHASER)で求めた、或るX線回折ピークを基準とするゼオライトのX線回折ピークと比較することで求めることができる。具体的な算出例として、Scientific Reports 2016、6、Article number:29210
のLTA型ゼオライトの結晶度が挙げられる。
ゼオライトの平均一次粒子径は、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段の制限はないが、通常15nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは25nm以上、さらに好ましくは30nm以上、最も好ましくは40nm以上である。一方、上限は、通常2000nm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、さらに好ましくは300nm以下、特に好ましくは200nm以下、最も好ましくは100nm以下である。ゼオライトの平均一次粒子径が、上記範囲内であれば、樹脂複合材内にゼオライトが均一に分散しやすくなり、さらには、得られる樹脂複合材の透明性が高くなる傾向がある。
なお、ゼオライトの平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)による粒子の観察において、任意に選択した30個以上の一次粒子について粒子径を測定し、その一次粒子の粒子径を平均して求める。その際、粒子径は、粒子の投影面積と等しい面積を持つ、最大径となる円の直径(円相当径)を意味するものとする。
ゼオライトは、上記式(1)を満たす限りにおいては、一次粒子が凝集した二次以上の高次粒子状態であってもよい。その状態での平均粒子径は、特段の制限はないが、通常15nm以上、好ましくは20nm以上、より好ましくは25nm以上、さらに好ましくは30nm以上、特に好ましくは40nm、最も好ましくは50nm以上であり、一方、通常3000nm以下、好ましくは2000nm以下、より好ましくは1000nm以下、さらに好ましくは500nm以下、特に好ましくは300nm以下、最も好ましくは100nm以下である。上記範囲内であれば、樹脂複合材内にゼオライトが均一に分散しやすくなり、さらには、得られる樹脂複合材の透明性が高くなる傾向がある。
なお、ゼオライトの二次以上の高次粒子の平均粒子径は、一次粒子同様に、走査電子顕微鏡(SEM)による粒子の観察において、任意に選択した30個以上の粒子について粒子径を測定し、その粒子の粒子径を平均して求めてもよい。その際、粒子径は、粒子の投影面積と等しい面積を持つ、最大径となる円の直径(円相当径)を意味するものとする。また、粒子径分布測定装置を用いて測定した、D50値を用いてもよい。粒子径分布測定装置としては、粒子径に応じて、レーザー回折式粒子径分布測定装置を用いてもよいし、
動的光散乱式粒子径分布測定装置を用いてもよい。
ゼオライトの製造方法としては、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段の制限はなく、公知の水熱合成法により製造することができる。例えば、CHA型のゼオライトを製造する場合、日本国特許4896110号に記載の方法を参照として、製造することができる。
ゼオライトの製造方法では、必要に応じて構造規定剤をテンプレートに用いることができるが、通常は、目的とするゼオライト構造が製造可能な構造規定剤であれば、特に制限はなく、構造規定剤なしで製造可能であれば、構造規定剤を用いなくてもよい。
なお、平均粒子径の小さなゼオライトを製造する場合には、合成時間や温度を通常よりも制御して水熱合成すればよいし、または、水熱合成により得られたゼオライトを、ビーズミル、ボールミル等の湿式粉砕で解砕、及び/又は粉砕すればよい。
上記の解砕、及び/又は粉砕に用いられる粉砕装置としては、例えば、フロイント・ターボ社製「OBミル」、アシザワ・ファインテック社製「ナノ・ゲッター」、「ナノ・ゲッター・ミニ」、「スターミル」、及び「ラボスター」、スギノマシン社製「スターバースト」等が挙げられる。また、一般的に、粉砕後のゼオライトの結晶性は、低下するが、特開2014-189476号公報に記載の方法のように、アルミナ、シリカ等を含む溶液中で再結晶化することができる。
解砕、及び/又は粉砕後のゼオライトの再凝集を抑制する点で、溶媒中で湿式粉砕して、溶媒中に平均粒子径の小さなゼオライトを分散させることが好ましい。なかでも、平均粒子径を小さくできる点で、ビーズミルを行うことが特に好ましい。また、分散後の再凝集を抑制するために、湿式粉砕時に、分散剤を用いてもよい。上記、溶媒、及び分散剤としては、後述のインクの構成成分で挙げる、溶媒、及び分散剤を用いることができる。
また、解砕、及び/又は粉砕されたゼオライトが分散した分散液中のゼオライトの平均粒子径をさらに小さくする目的で、遠心分離を行うことも、平均粒子径の大きな粒子を取り除くことができ、樹脂複合材内により均一に分散しやすくなり、さらには、得られる樹脂複合材の透明性が高くなるので、好ましい。なお、遠心分離に用いる遠心機は、市販の装置(例えば、コクサン社製遠心機H-36、及び日立工機製日立微量高速遠心機CF15RN)を用いることができる。
<1.2.樹脂>
以下に、樹脂について述べる。
樹脂は、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段の制限はないが、透明性が求められる用途に樹脂複合材を用いる場合、樹脂の透明性が高い方が好ましい。従って、樹脂材料としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルエーテル系樹脂等のポリエーテル系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリノルボルネン系樹脂;アクリル系樹脂;アセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリフェニレンスルファイド系樹脂;アラミド、ナイロン等のポリアミド系樹脂;アセチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ABS(アク
リロニトリル-ブタジエン-スチレン)系樹脂;エポキシ系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリベンゾオキサゾール系樹脂;尿素系樹脂;ポリウレタン系樹脂;フェノール系樹脂;ベンゾシクロブテン系樹脂;シリコーン系樹脂;水添加スチレン-イソブチレン共重合体系樹脂等の水素化ブロック共重合体系樹脂等が挙げられる。
そして、本発明の効果が十分に得られる、また、高温でも安定した樹脂複合材が得られる、という観点から、樹脂のガラス転移温度は100℃以上であることが好ましい。
また、樹脂は、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及びゴム成分のいずれも制限なく用いることが出来る。なかでも、活性エネルギー線硬化性樹脂、及び熱硬化性樹脂等の架橋が可能である、硬化性樹脂であれば、熱可塑性樹脂よりも、樹脂複合材内での樹脂とゼオライトの均一分布が向上する点で好ましい。特に、熱硬化性樹脂であれば、露光機を用いない分、製造コストが安い点で好ましい。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂とは、例えば、紫外線、可視光、赤外線、電子線等で硬化する樹脂のことである。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、液晶ポリエステル樹脂等のポリエステル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテル樹脂等のポリエーテル系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリノルボルネン系樹脂;アクリル系樹脂;アセタール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリフェニレンスルファイド系樹脂;アラミド、ナイロン等のポリアミド系樹脂;アセチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のフッ素系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)系樹脂;水添加スチレン-イソブチレン共重合体系樹脂等の水素化ブロック共重合体系樹脂等が挙げられる。また、それらのブロック共重合体、グラフト共重合体等の共重合体も含まれる。
なかでも、核水素化された芳香族化合物を有する水添加スチレン-イソブチレン共重合体系樹脂は、特に、ゼオライトとの相溶性がよりよいという点で好ましい。なお、核水素化された芳香族化合物を有する水添加スチレン-イソブチレン共重合体系樹脂は、例えば、特開2016-135860号公報記載の樹脂や特開2013-216902号公報記載の樹脂が挙げられる。
また、硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリベンゾオキサゾール系樹脂;尿素系樹脂;ポリウレタン系樹脂;フェノール系樹脂;ベンゾシクロブテン系樹脂;シリコーン系樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ系樹脂、及びポリイミド系樹脂は、ゼオライトとの相溶性がいいという点から、より好ましい。特に、ポリイミド系樹脂は、以下の理由で、上記式(1)を満たしやすくなるので、さらに好ましい。
ポリイミド系樹脂が含有する、イミド結合、並びに未反応由来のカルボニル基、及びアミノ基と、ゼオライト表面のSi-OH基との間で相互作用を発揮することにより、分散剤を用いたような分散機能が生じ、樹脂複合材内にゼオライトが均一に分散しやすくなり、上記式(1)を満たしやすくなる。結果として、長期的に白濁化を防ぐことができ、高い透明性を維持することができる。
ポリイミド系樹脂は、具体的には、ポリイミド樹脂、ポリアミノビスマレイミド(ポリビスマレイミド)樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、核水素化された芳香族化合物を有するポリイミド系樹脂等が挙げら
れる。
なかでも、核水素化された芳香族化合物を有するポリイミド系樹脂は、ゼオライト、なかでもd6r又はmtwを有するゼオライトとの相溶性がさらによいという点で好ましい。なお、核水素化された芳香族化合物を有するポリイミド系樹脂は、例えば、国際公開第2014/98042号記載の樹脂や特開2016-128555号公報記載の樹脂が挙げられる。
また、エポキシ系樹脂は、例えば、アルコール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、多官能フェノール型エポキシ樹脂等の、各種エポキシ系樹脂が挙げられる。
エポキシ系樹脂としては、ビスフェノール骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びジシクロペンタジエン骨格からなる群から選択された少なくとも1つの骨格を有するフェノキシ型エポキシ樹脂が好ましい。中でも、耐熱性がより一層高められることから、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格及びビフェニル骨格のうちの少なくとも1つ以上の骨格を有するフェノキシ型エポキシ樹脂が特に好ましく、とりわけビルフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格及びビフェニル骨格のうちの少なくとも1つ以上の骨格を有するフェノキシ型エポキシ樹脂であることが好ましい。
また、ゴム成分としては、例えば、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ポリウレタンゴム等が挙げられる。
なお、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、及びゴム成分で上述した具体的な樹脂は、必ずしも分類通りではなくてもよい。具体的には、ポリイミド系樹脂やエポキシ系樹脂は、硬化性樹脂であるが、場合によっては熱可塑性樹脂として取り扱うこともできる。
樹脂の分子量は、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段の制限はないが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)の値で、通常1000以上、好ましくは3000以上、より好ましくは5000以上である。また、通常200000以下であり、好ましくは180000以下であり、より好ましくは150000以下である。上記範囲内であることで、溶媒に対する溶解性、粘度等が通常の製造設備で扱いやすい傾向となるため、好ましい。
また、樹脂の数平均分子量(Mn)も、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段の制限はないが、ポリスチレン換算で、通常500以上、好ましくは1000以上、より好ましくは2500以上である。また通常100000以下、好ましくは90000以下、より好ましくは80000以下である。上記範囲内であることで、溶媒に対する溶解性、粘度等が通常の製造設備で扱いやすい傾向となるため、好ましい。ポリスチレン換算の数平均分子量は、前記質量平均分子量と同様の方法で求めることができる。
また、樹脂のMwをMnで除した値(Mw/Mn)は、通常1.5以上、好ましくは2以上、より好ましくは2.5以上であり、一方、通常5以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4以下である。上記範囲内であることで、樹脂複合材中のゼオライトの均一性が高くなる点や、平滑性に優れた樹脂複合材の成形体が得られるという点で好ましい。
樹脂は、通常、0ppm/Kより大きい平均熱膨張材料である。樹脂の平均熱膨張係数は、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段の制限はないが、0℃以上、該樹脂のガラス転移温度以下の温度範囲中での測定範囲において、通常、0ppm/Kより大きく、好ましくは10ppm/K以上であり、より好ましくは20ppm/K以上であり、さらに好ましくは30ppm/K以上であり、特に好ましくは50ppm/K以上であり、一方、通常10000ppm/K以下であり、好ましくは9000ppm/K以下であり、より好ましくは8000ppm/Kであり、さらに好ましくは7000ppm/K以下であり、特に好ましくは5000ppm/K以下である。上記範囲内であることで、上記式(1)を満たしやすくなり、樹脂複合材の脆化や変形等を抑制しながら、長期的に白濁を少なくすることができる。なお、樹脂の平均熱膨張係数は、上述の通りに、測定することができる。
また、樹脂の製造方法は、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段の制限はないが、公知の方法で製造すればよい。例えば、第5版実験化学講座26高分子化学第2章高分子合成(日本化学会編)に記載されている方法で製造することができる。
<1.3.その他の化合物>
樹脂複合材は、ゼオライト及び樹脂以外に、その他の化合物を含んでもよい。例えば、後述するように、樹脂複合材を製造する際に、インクや混練物に、分散剤、表面処理剤、界面活性剤、重合開始剤、溶媒等を含んでもよく、これらの残留成分が樹脂複合材中に含まれていてもよい。
<1.4.樹脂複合材の製造方法>
樹脂複合材の製造方法は、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段の制限はなく、樹脂又は樹脂前駆体と、ゼオライトと、溶媒と、を混合してインクを作製し、インクを支持体等に塗布した後に加熱乾燥する方法が挙げられる。なお、樹脂前駆体を使用する場合、ゼオライトと、溶媒との混合物に、樹脂材料であるモノマー、ダイマー、オリゴマー等を混合して加熱により重合・乾燥させればよい。
<1.4.1.インクの構成成分>
上記のインクは、通常、ゼオライトと、樹脂又は樹脂前駆体と、溶媒と、を混合して製造する。
インクに用いられるゼオライトは、上述の樹脂複合材中のゼオライトが用いることができ、インク中のゼオライトの含有率は、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは7質量%以上、最も好ましくは10質量%以上であり、一方、通常80質量%以下、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下、最も好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であることで、ゼオライトが沈殿等を起こすことがなく、分散状態を長く保ったインクを製造できる。
なお、ゼオライトは、インク中に、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
インクに用いられる樹脂は、上述の樹脂複合材中の樹脂を用いることができ、通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、一方、通常90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%
以下、特に好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であることで、樹脂が沈殿等を起こすことがなく、分散状態を長く保ったインクを製造できる。
なお、樹脂は、インク中に、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
樹脂の原料であるモノマー、ダイマー、オリゴマー等の樹脂前駆体の場合は、上述の発明に係る樹脂複合材中の樹脂のうち、硬化性樹脂の前駆体であればよい。また、樹脂複合材の含有率は、重合した場合に換算できる上述の樹脂の含有率相当であればよい。
溶媒は、樹脂複合材が、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段の制限はないが、例えば、水;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン又はデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-ブトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン又はシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル又は乳酸メチル等のエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類;N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド等のアミド類;等が挙げられる。
なかでも、樹脂の溶解度が高い点で、トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン又はトリクロロエチレン等のハロゲン炭化水素類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエーテル、テトラヒドロフラン又はジオキサン等のエーテル類;N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド又はジメチルアセトアミド等のアミド類が好ましい。
特に、核水素化された芳香族化合物を含む樹脂の溶解性が高いという理由で、トルエン、キシレン、クロロベンゼン又はオルトジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類が好ましい。
また、溶媒は、樹脂複合材中に残留していても、していなくてもよいので、溶媒の含有率や沸点に、特段の制限はない。
インクに用いられる溶媒の含有率は、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、一方、通常99質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。上記範囲内であることは、インクが適度な粘度を持ち、乾燥後に適度な厚みを持った樹脂複合材が得られるという点で好ましい。
なお、溶媒は、インク中に、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、インクには、ゼオライト、樹脂、及び溶媒以外のその他の化合物を含んでもよい。例えば、分散剤、表面処理剤、界面活性剤、重合開始剤等を含んでもよい。分散剤、表面処理剤、界面活性剤、重合開始剤は、上述の樹脂複合材中の分散剤、表面処理剤、界面活性剤、重合開始剤が用いることができる。
インクに用いられる、その他の化合物は、インク中に、通常0.001質量%以上、好
ましくは0.003質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上であり、一方、通常10質量%以下、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。上記範囲内であることで、インク中においても、ゼオライトや樹脂が沈殿等を起こすことなく、分散状態を保つことができる。
分散剤とは、インク中、並びに製造後の樹脂複合材中に、ゼオライトを均一に分散するための化合物を意味する。例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリメトキシシラン、ジメチルポリシロキサン又はジメチコンPEG-7コハク酸塩等のポリシロキサン化合物及びその塩;シラン化合物等(メチルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジクロロフェニルシラン、クロロトリメチルシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、ドデシルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン、又は3-カルボキシプロピルトリメチルトリメトキシシラン等)の有機ケイ素化合物;ギ酸、酢酸、酪酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸等のカルボン酸化合物;ラウリルエーテルリン酸又はトリオクチルホスフィン等の有機リン化合物;ジメチルアミン、トリブチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン又はポリエチレンイミン等のアミン化合物、カルボン酸アミン化合物、及びリン酸アミン化合物等が挙げられる。なお、カルボン酸アミン化合物とは、カルボキシル基とアミノ基の両方の官能基を有する化合物を、リン酸アミン化合物とは、リン酸基とアミノ基の両方の官能基を有する化合物を意味する。
なかでも、リン酸アミン化合物の分散剤は、ゼオライトへの親和性が特に高いという理由から好ましい。
分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。また、後述の表面処理剤や界面活性剤が、分散剤として働いてもよい。なお、分散剤は、樹脂複合材の製造後は、完全に分解されても、一部分解されていても、分解されていなくてもよい。
ゼオライトの凝集を防ぎ、ゼオライトをインク中、並びに製造後の樹脂複合材中に、均一に分散するために、ゼオライトは表面処理剤で処理されてもよい。
表面処理剤は、樹脂複合材が、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段の制限はなく、既知のものを用いてよく、上述の分散剤として用いたものや、ポリイミン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ尿素等のバインダー樹脂等を表面処理剤として用いてよい。
表面処理剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なお、表面処理剤は、樹脂複合材の製造後は、完全に分解されても、一部分解されていても、分解されていなくてもよい。
樹脂複合材の製造時に、微小な泡もしくは異物の付着等により樹脂複合材に凹みや乾燥ムラの発生が起こること等を防止する目的で、インクは、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤は、樹脂複合材が、上記式(1)を満たす限りにおいては、特段の制限はなく、公知の界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤)を用いることができる。なかでも、ケイ素系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、又はアセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。界面活性剤の具体例としては、ノニオン系界面活性剤としてトリトンX100(ダウケミカル社製)、フッ素系界面活性剤としてはゾニルFS300(デュポン社製)、ケイ素系界面活性剤としてはBYK-310、BYK-320、BYK-345(ビックケミー社製)、アセチレングリコール系界面活性剤としては、サーフィノール104、サーフィノール465(エアープロダクツ社製)、オルフィンEXP4036、又はオルフィンEXP4200(日信化学工業社製)が挙げられる。
界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なお、界面活性剤は、樹脂複合材の製造後は、完全に分解されても、一部分解されていても、分解されていなくてもよい。
また、界面活性剤により、後述するインクの濡れ性を向上することができる。濡れ性は、実際に基材に塗布する以外に、接触角で評価できる。インクの接触角としては、PET基材に対して、通常45°以下、好ましくは30°以下、さらに好ましくは15°以下である。また、基材一面に広がることが、接触角が検出されないことであるので、特に好ましくは検出されないことである。45°以下であることにより、インクは、あらゆる基材上で塗布できる。なお、接触角は、接触角計で測定することができる。例えば、協和界面科学社製DM-501で測定することができる。
樹脂は、樹脂複合材の製造中に重合してもよいので、インクは、重合開始剤を含んでもよい。
重合開始剤は、樹脂複合材が、式(1)を満たす限りにおいては、特段の制限はないが、製造方法に応じて選択すればよい。例えば、光硬化方法であれば光重合開始剤を、熱硬化方法であれば熱重合開始剤を選択すればよい。なお、光硬化方法とは、活性エネルギー線硬化方法の内、紫外線、可視光及び赤外線を用いる硬化方法である。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、ヒドロキシケトン類、アシルホスフィンオキシド類、ジアゾニウムカチオンオニウム塩、ヨードニウムカチオンオニウム塩又はスルホニウムカチオンオニウム塩等が挙げられる。また、熱重合開始剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、脂肪族アミン、ポリエーテルアミン、脂環式アミン、芳香族アミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミド系硬化剤、第3級アミン、イミダゾール及びその誘導体、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、ヒドロキシケトン類、アシルホスフィンオキシド類、ジアゾニウムカチオンオニウム塩、ヨードニウムカチオンオニウム塩又はスルホニウムカチオンオニウム塩等が挙げられる。
光重合開始剤の具体例としては、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,4
,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキシド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-メチルチオ]フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー、イソプロピルチオキサントン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、ベンゾフェノン、エチルアントラキノン、ベンゾフェノンアンモニウム塩、チオキサントンアンモニウム塩、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、1,4-ジベンゾイルベンゼン、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラキス(3,4,5-トリメトキシフェニル)-1,2’-ビイミダゾール、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、2-ベンゾイルナフタレン、4-ベンゾイルビフェニル、4-ベンゾイルジフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、ジベンゾイル、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、o-メチルベンゾイルベンゾエート、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル、活性ターシャリーアミン、カルバゾール・フェノン系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、ベンゾイル、トリアリルスルホニウム、ヘキサフルオロホスフェート塩、六フッ化リン系芳香族スルホニウム塩、六フッ化アンチモン系芳香族スルホニウム塩、六フッ化アンチモン系芳香族スルホニウム塩、六フッ化アンチモン系芳香族スルホニウム塩、トリアリルスルホニウム、ヘキサフルオロアンチモン、4-メチルフェニル-[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフルオロホスフェート(1-)、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(o-アセチルオキシム)、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-エチルヘキシル-4-ジメチルアミノベンゾエート、(9-オキソ9H-キサンテン-2-イル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-n-アルキル(C10~13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス[4-n-アルキル(C10~13)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモン、トリフェニルスルホニムトリフルオロスルホネート、トリフェニルスルホニウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-メタンスルフォネート、(9-オキソ-9H-キサンテン-2-イル)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、p-アジドベンズアルデヒド、p-アジドアセトフェノン、p-アジド安息香酸、p-アジドベンズアルデヒド-2-スルホン酸ナトリウム塩、p-アジドベンザルアセトフェノン、4,4’-ジアジドカルコン、4,4’-ジアジドジフェニルスルフィド、3,3’-ジアジドジフェニルスルフィド、2,6-ビス-(4’-アジドベンザル)-4-メチルシクロヘキサン、1,3-ビス-(4’-アジドベンザル)-プロパノン、4,4’-ジアジドカルコン-2-スルホン酸ナトリウム塩、4,4’-ジアジドスチルベン-2,2’-ジスルホン酸ナトリウム塩、1,3’-ビス-(4’-アジドベンザル)-2’-ジスルホン酸ナトリウム塩-2-プロパノン、2,6-ビス-(4’-アジドベンザル)-2’-スルホン酸(ナトリウム塩)シクロヘキサノン、2,6-ビス-(4’-アジドベンザル)-2’-スルホン酸(ナトリウム塩)4-メチル-シクロヘキサノン、α-シアノ-4,4’-ジベンゾスチルベン、2,5-ビス-(4’-アジドベンザルスルホン酸ナトリウム塩)シクロペンタノン、3-スルホニルアジド
安息香酸、4-スルホニルアジド安息香酸、シンナミン酸、α-シアノシンナミリデンアセトン酸、p-アジド-α-シアノシンナミン酸、p-フェニレンジアクリル酸、p-フェニレンジアクリル酸ジエチルエステル、ポリビニルシンナメート、ポリフェノキシ-イソプロピルシンナミリデンアセテート、ポリフェノキシ-イソプロピルα-シアノシンナミリデンアセテート、ナフトキノン(1,2)ジアジド(2)-4-スルホン酸ナトリウム塩、ナフトキノン(1,2)ジアジド(2)-5-スルホン酸ナトリウム塩、ナフトキノン(1,2)ジアジド(2)-5-スルホン酸エステル(I)、ナフトキノン(1、2)ジアジド(2)-5-スルホン酸エステル(II)、ナフトキノン(1、2)ジアジド(2)-4-スルホン酸塩、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノントリ(ナフトキノンジアジドスルホン酸)エステル、ナフトキノン-1,2,5-(トリヒドロキシベンゾフェノン)トリエステル、1,4-イミノキノン-ジアジド(4)-2-スルフォアミド(I)、1-ジアゾ-2,5-ジエトキシ-4-p-トリメルカプトベンゼン塩、5-ニトロアセナフテン、N-アセチルアミノ-4-ニトロナフタレン、有機ホウ素化合物、これら以外の光によりカチオンを発生する光酸発生剤、光によりアニオンを発生する光塩基発生剤等が挙げられる。
また、熱重合開始剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、脂肪族アミン、ポリエーテルアミン、脂環式アミン、芳香族アミンなどのアミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミド系硬化剤、第3級アミン、イミダゾール及びその誘導体、有機ホスフィン類、ホスホニウム塩、テトラフェニルボロン塩、有機酸ジヒドラジド、ハロゲン化ホウ素アミン錯体、ポリメルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ブロックイソシアネート系硬化剤等が挙げられる。
フェノール系硬化剤の具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、フェノールノボラック、ビスフェノールAノボラック、o-クレゾールノボラック、m-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、キシレノールノボラック、ポリ-p-ヒドロキシスチレン、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、t-ブチルカテコール、t-ブチルハイドロキノン、フルオログリシノール、ピロガロール、t-ブチルピロガロール、アリル化ピロガロール、ポリアリル化ピロガロール、1,2,4-ベンゼントリオール、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,8-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,4-ジヒドロキシナフタレン、2,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン、2,8-ジヒドロキシナフタレン、上記ジヒドロキシナフタレンのアリル化物又はポリアリル化物、アリル化ビスフェノールA、アリル化ビスフェノールF、アリル化フェノールノボラック、アリル化ピロガロール等が例示される。
アミン系硬化剤の具体例として、脂肪族アミン類としては、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N-ヒドロキシエチ
ルエチレンジアミン、テトラ(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン等が例示される。ポリエーテルアミン類としては、トリエチレングリコールジアミン、テトラエチレングリコールジアミン、ジエチレングリコールビス(プロピルアミン)、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン類等が例示される。脂環式アミン類としては、イソホロンジアミン、メタセンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノ-3-メチルジシクロヘキシル)メタン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、ノルボルネンジアミン等が例示される。芳香族アミン類としては、テトラクロロ-p-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノアニソール、2,4-トルエンジアミン、2,4-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-1、2-ジフェニルエタン、2,4-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、m-アミノフェノール、m-アミノベンジルアミン、ベンジルジメチルアミン、2-ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン、メチルベンジルアミン、α-(m-アミノフェニル)エチルアミン、α-(p-アミノフェニル)エチルアミン、ジアミノジエチルジメチルジフェニルメタン、α,α’-ビス(4-アミノフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン等が例示される。
酸無水物系硬化剤の具体例としては、ドデセニル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物、ポリ(エチルオクタデカン二酸)無水物、ポリ(フェニルヘキサデカン二酸)無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート二無水物、無水ヘット酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、3、4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、1-メチル-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物等が例示される。
アミド系硬化剤としては、ジシアンジアミド、ポリアミド樹脂等が例示される。
第3級アミンとしては、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が例示される。
イミダゾール及びその誘導体としては、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4(5)-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及びエポキシ樹脂と上記イミダゾール類と
の付加体等が例示される。
有機ホスフィン類としては、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等が例示される。
ホスホニウム塩としては、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレート等が例示される。
テトラフェニルボロン塩としては、2-エチル-4-メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N-メチルモルホリン・テトラフェニルボレート等が例示される。
重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なお、重合開始剤は、組成物中において、単独で存在していてもよいし、溶媒等とともに錯体を形成していてもよい。また、多量体を形成していてもよい。なお、重合開始剤は、樹脂複合材の製造後は、完全に分解されても、一部分解されていても、分解されていなくてもよい。
インクは、24時間以上安定であることが好ましく、1週間以上安定であることがさらに好ましい。安定であればあるほど、インクの大量合成や長期保存が可能となり、製造コストを安くすることができる。
なお、インクの安定性は、沈殿物の生成や粘度の変化等で評価することができる。
沈殿物の生成は、目視や動的光散乱粒子径測定装置で判断することができる。また、粘度は、回転粘度計法(「物理化学実験のてびき」(足立吟也、石井康敬、吉田郷弘編、化学同人(1993)に記載)により求めることができる。
上述の通り、樹脂複合材はインクの塗布することにより製造する例を示したが、樹脂複合材の製造方法はこれに限定されない。例えば、溶媒を使用せずに、樹脂又は樹脂前駆体と、ゼオライトと、を混練した後に加熱することにより樹脂複合材を製造することもできる。
混練物に用いられるゼオライトは、上述した樹脂複合材中のゼオライトが用いることができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、混練物に用いられる樹脂は、上述した樹脂複合材中の樹脂が用いることができ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、混練物に用いられるゼオライト、及び樹脂以外のその他の化合物を含んでもよい。例えば、上述の分散剤、表面処理剤、界面活性剤、重合開始剤等を含んでもよい。その他の化合物は、各々1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
混練物に用いられるゼオライト、樹脂、及びその他の化合物の比率は、混練物から加熱して製造される樹脂複合材が上記式(1)を満たす限りにおいて、特段の制限はない。
但し、樹脂複合材フィルムの成形加工時の粘度調整が容易にできるために、上記の中でも、インクを塗布することにより樹脂複合材を製造することが好ましい。
インク、及び混練物は、特に限定されずに、従来公知の方法で調合することができ、インク、及び混練物の構成成分を混合することで製造することができる。なお、その際、均一性の向上、脱泡等を目的として、ペイントシェーカー、ビーズミル、プラネタリミキサー、攪拌型分散機、ホモジナイザー、自公転攪拌混合機、三本ロール、ニーダー、単軸又は二軸混練機等の一般的な混練装置、及びスターラー等を用いて混合することが好ましい。
各構成成分の混合順序も、反応や沈殿物が発生する等の特段の問題がない限り、任意であり、インク、及び混練物の構成成分のうち、何れか2成分又は3成分以上を予め混合し、その後に残りの成分を混合してもよいし、一度に全部を混合してもよい。
<1.4.2.樹脂複合材の成形>
樹脂複合材を成形する方法は、樹脂の成形に一般に用いられる方法を用いることができる。その際、樹脂複合材の製造に必要な加熱と、成形のための加熱を同時に行ってもよい。
例えば、樹脂複合材が熱可塑性を有する場合、樹脂複合材を所望の形状で、例えば、型へ充填することによって、成形することができる。このような成形体の製造法としては、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、及び圧縮成形法等を用いることができる。
樹脂複合材を構成する樹脂が、熱可塑性樹脂複合材である場合、成形体の成形は、熱可塑性樹脂の溶融温度以上の温度及び所定の成形速度や圧力の条件で行うことができる。
溶融温度は、400℃未満であることが好ましく、370℃以下であることがさらに好ましく、340℃以下であることが特に好ましい。一方、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることが更に好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。400℃未満であることは、ロールツーロール法のような、フレキシブル基材を用いる製造工程においても対応可能な温度である点で好ましい。また80℃以上であることは、樹脂が均一に溶融できる点で好ましい。
また、樹脂複合材を構成する樹脂が、ポリイミド系樹脂やエポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂複合材である場合(熱重合を起こす樹脂前駆体を用いる場合)、樹脂複合材の成形、すなわち硬化は、それぞれの組成に応じた硬化温度条件で行うことができる。
硬化温度は、400℃未満であることが好ましく、370℃以下であることがさらに好ましく、340℃以下であることが特に好ましい。一方、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることが更に好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。400℃未満であることは、ロールツーロール法のような、フレキシブル基材を用いる製造工程においても対応可能な温度である点で好ましい。また、80℃以上であることは、ある程度硬化が進行し、樹脂複合材から未反応成分が溶出することが抑えられる点で好ましい。
流動性を有する樹脂複合材の場合には、所望の支持体に積層し(積層工程)、次いで熱処理を行うこと(熱処理工程)により、樹脂複合材を成形することができる。なお、所望の支持体は、製造後取り除いてもよい。
熱処理方法としては、例えば、熱風乾燥、赤外線ヒーターによる乾燥等の公知の乾燥方法が採用できる。なかでも、乾燥速度が速い熱風乾燥が好適である。風乾で乾燥できるのであれば、熱処理方法を省略してもよい。
熱処理の温度は、400℃未満であることが好ましく、370℃以下であることがさらに好ましく、340℃以下であることが特に好ましい。一方、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることが更に好ましく、100℃以上であることが特に好ましい。400℃未満であることは、ロールツーロール法のような、フレキシブル基材を用いる製造工程においても対応可能な温度である点で好ましい。また80℃以上であることは、シート中の残存溶媒を除去できる点で好ましい。
加熱時間は、特に限定されないが、通常30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、さらに好ましくは3分以上である。一方、通常24時間以下、好ましくは12時間以下、より好ましくは1時間以下、さらに好ましくは15分以下である。上記の範囲にあることは、ロールツーロール法のような実用的な製造工程に適合できる点で好ましい。
支持体の材料は、特に限定されないが、基材の材料の好適な例としては、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;及びフレキシブル基材が挙げられる。
フレキシブル基材とは、曲率半径が通常、0.1mm以上であり、10000mm以下の基材である。なお、フレキシブルな電子デバイスを製造する場合は、屈曲性と支持体としての特性を両立するために、曲率半径が0.3mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがさらに好ましく、一方で、3000mm以下であることが好ましく、1000mm以下であることがさらに好ましい。なお、曲率半径は、ひずみや割れ等の破壊が現れないところまで曲げた基材を、共焦点顕微鏡(例えば、キーエンス社製形状測定レーザマイクロスコープVK-X200)で求めることができる。
フレキシブル基材の具体例としては、限定されるわけではないが、エポキシ系樹脂等の上述の樹脂;紙又は合成紙等の紙材料;銀、銅、ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属箔に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料が挙げられる。
なお、これらの中でも、フレキシブル基材を使用することができると、ロールツーロール方式による製造が可能となり、生産性が向上する。
樹脂基材を使用する場合には、ガスバリア性に留意する必要がある。すなわち、基材のガスバリア性が低過ぎると、基材を通過する外気により樹脂複合材が劣化することがあるので望ましくない。このため、樹脂基材を使用する場合には、少なくとも一方の板面に緻密な酸化ケイ素膜等を設ける等の方法により、ガスバリア性を確保するのが望ましい。
ガラスとしてはソーダガラス、青板ガラス又は無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスからの溶出イオンが少ない点で、これらの中でも無アルカリガラスが好ましい。
支持体の形状に制限はなく、例えば、板状、フィルム状又はシート状等のものを用いることができる。
また、支持体の膜厚に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは20μm以上であり、一方、通常20mm以下、好ましくは10mm以下である。支持体の膜厚が5μm以上であることは、強度が不足する可能性が低くなるために好ましい。支持体の膜厚が20mm以下であることは、コストが抑えられ、かつ重くならないために好ましい。
支持体の材料がガラスである場合の膜厚は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、一方、通常10mm以下、好ましくは5mm以下である。ガラス基材の
膜厚が0.01mm以上であることは、機械的強度が増加し、割れにくくなるために、好ましい。また、ガラス基材の膜厚が5mm以下であることは、重くならないために好ましい。
なお、ロールツーロール方式とは、ロール状に巻かれたフレキシブルな基材を繰り出して、間欠的、或いは連続的に搬送しながら、巻き取りロールにより巻き取られるまでの間に加工を行う方式である。ロールツーロール方式によれば、kmオーダの長尺基板を一括処理することが可能であるため、シートツーシート方式に比べて量産化に適した生産方式である。
ロールツーロール方式に用いることのできるロールの大きさは、ロールツーロール方式の製造装置で扱える限り特に限定されないが、ロール芯の外径は、通常5m以下、好ましくは3m以下、より好ましくは1m以下であり、一方、通常1cm以上、好ましくは3cm以上、より好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上、特に好ましくは20cm以上である。これらの径が上記上限以下であるとロールの取り扱い性が高い点で好ましく、上記下限以上であると、以下の各工程で成膜される層が、曲げ応力により破壊される可能性が低くなる点で好ましい。ロールの幅は、通常5cm以上、好ましくは10cm以上、より好ましくは20cm以上であり、一方、通常5m以下、好ましくは3m以下、より好ましくは2m以下である。幅が上限以下であるとロールの取り扱い性が高い点で好ましく、下限以上であると、樹脂複合材の用途の自由度が高くなるため好ましい。
なお、必ずしも支持体を用いる必要はなく、熱処理を含む成形方法で成形した固形状の樹脂複合材から、所望の形状に削り出すことによって、成形体を得ることもできる。
また、樹脂複合材を構成する樹脂が、光硬化性樹脂複合材である場合(光重合を起こす樹脂前駆体を用いる場合)、熱処理工程に加えて、さらに光処理工程を行うことにより、円滑に、短時間で、樹脂複合材の成形体を製造することも可能である。なお、光処理工程を行う場合は、上述の光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤を含むことにより、より短時間で成形体を製造することができる。
光処理工程の時間は、特に限定されないが、通常30秒以上、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、さらに好ましくは3分以上である。一方、通常60分以下、好ましくは30分以下、より好ましくは20分以下、さらに好ましくは10分以下である。光処理工程の時間が上記の範囲にあることは、ロールツーロール法のような実用的な製造工程に適合できる点で好ましい。
<2.樹脂複合材の用途>
樹脂複合材の用途としては、例えば、触媒モジュール、分子篩膜モジュール、光学部材、吸湿部材、食品、建築部材、及び電子デバイスの構成部材や包装部材等に用いることができる。なかでも、電子デバイスの構成部材、例えば基材、ゲッター材フィルム、封止材等に用いることは、樹脂複合材の高い特性を活かせるので、好ましい。
<2.1.電子デバイス>
電子デバイスは、2個以上の電極を有し、その電極間に流れる電流や生じる電圧を、電気、光、磁気又は化学物質等により制御するデバイス、あるいは、印加した電圧や電流により、光や電場、磁場を発生させる装置である。具体的には、抵抗器、整流器(ダイオード)、スイッチング素子(トランジスタ、サイリスタ)、増幅素子(トランジスタ)、メモリー素子、若しくは化学センサー等、又はこれらの素子を組み合わせ若しくは集積化したデバイスが挙げられる。また、光電流を生じるフォトダイオード若しくはフォトトランジスタ、電界を印加することにより発光する電界発光素子、及び光により起電力を生じる
光電変換素子若しくは太陽電池等の光素子も挙げることができる。電子デバイスのより具体的な例は、S.M.Sze著、Physics of Semiconductor Devices、2nd Edition(Wiley Interscience 1981)に記載されているものを挙げることができる。
なかでも、電子デバイスの好ましい例としては、電界効果トランジスタ(FET)素子、電界発光素子(LED)、光電変換素子又は太陽電池が挙げられる。これらのデバイスで、樹脂複合材の高い特性は、有効に活かすことができる。
本発明の別の実施形態に係る電子デバイスは、上述した樹脂複合材を含有する部材を備える、電子デバイスである。以下、上述した樹脂複合材を含有する部材を構成要素として有する電子デバイスの例として、電界効果トランジスタ素子、電界発光素子、光電変換素子、及び太陽電池について、以下、詳細に説明する。
<2.2.電界効果トランジスタ(FET)素子>
樹脂複合材は、電界効果トランジスタ(FET)素子の構成要素として用いることができる。一実施形態に係る電界効果トランジスタ(FET)素子は、基材上に、半導体層と、絶縁体層と、ソース電極と、ゲート電極と、ドレイン電極とを有する。
一実施形態において、基材は樹脂複合材を有している。特に、本発明の一実施形態である樹脂複合材は、平均熱膨張係数が低いので、基材の材料として好ましく用いられる。また、一実施形態において、絶縁体層は樹脂複合材を有している。特に、本発明の一実施形態である樹脂複合材は、誘電率が低いので、絶縁体層の材料としても好ましく用いられる。
以下、一実施形態に係るFET素子について詳細に説明する。図2は、FET素子の構造例を模式的に表す図である。図2において、11が半導体層、12が絶縁体層、13及び14がソース電極及びドレイン電極、15がゲート電極、16が基材、17がFET素子をそれぞれ示す。図2(A)~(D)にはそれぞれ異なる構造のFET素子が記載されているが、どれもFET素子の構造例を示している。FET素子を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/180230号又は特開2015-134703号公報等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
なお、本明細書において「半導体」とは、固体状態におけるキャリア移動度の大きさによって定義される。キャリア移動度とは、周知であるように、電荷(電子又は正孔)がどれだけ速く(又は多く)移動されうるかを示す指標となるものである。具体的には、「半導体」は、室温におけるキャリア移動度が通常1.0x10-6cm2/V・s以上、好ましくは1.0x10-5cm2/V・s以上、より好ましくは5.0x10-5cm2/V・s以上、さらに好ましくは1.0x10-4cm2/V・s以上であることが望ましい。なお、キャリア移動度は、例えば電界効果トランジスタのIV特性の測定、等により測定できる。
<2.2.1.基材(16)>
FET素子は、通常基材16上に作製する。基材16の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されない。基材16の材料の好適な例は、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;本発明の一実施形態である樹脂複合材の成形体等のフレキシブル基材が挙げられる。
フレキシブル基材とは、曲率半径が通常、0.1mm以上であり、10000mm以下
の基材である。なお、フレキシブルな電子デバイスを製造する場合は、屈曲性と支持体としての特性を両立するために、曲率半径が0.3mm以上であることが好ましく、1mm以上であることがさらに好ましく、一方で、3000mm以下であることが好ましく、1000mm以下であることがさらに好ましい。なお、曲率半径は、ひずみや割れ等の破壊が現れないところまで曲げた基材を、共焦点顕微鏡(例えば、キーエンス社製形状測定レーザマイクロスコープVK-X200)で求めることができる。
フレキシブル基材の具体例としては、限定されるわけではないが、上述したエポキシ系樹脂等の樹脂;紙又は合成紙等の紙材料;銀、銅、ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属箔に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料;本発明の一実施形態である樹脂複合材の成形体が挙げられる。
なお、樹脂複合材の成形体は、フレキシブル基材であれば、ロールツーロール法等の製造上好ましいが、フレキシブル基材でなくても、基材16として用いることができる。
さらに、基材16に処理を施すことにより、FETの特性を向上させることができる。これは基材16の親水性/疎水性を調整することにより、成膜される半導体層11の膜質を向上させること、特に基材13と半導体層11との界面部分の特性を改良することによるものと推定される。このような基材処理としては、ヘキサメチルジシラザン、シクロヘキセン、オクタデシルトリクロロシラン等を用いた疎水化処理;塩酸、硫酸、及び酢酸等の酸を用いた酸処理;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、及びアンモニア等を用いたアルカリ処理;オゾン処理;フッ素化処理;酸素やアルゴン等を用いたプラズマ処理;ラングミュアブロジェット膜の形成処理;その他の絶縁体又は半導体の薄膜の形成処理等が挙げられる。
<2.2.2.絶縁体層(12)>
FET素子の絶縁体層12に用いられる材料としては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルフェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、フェノール系樹脂等の樹脂及びこれらの共重合体;二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;窒化ケイ素等の金属窒化物;チタン酸ストロンチウムやチタン酸バリウム等の強誘電性金属酸化物;並びにこれらの金属酸化物、金属窒化物、強誘電性金属酸化物等の粒子が分散されている樹脂、及び樹脂複合材等が挙げられる。
一般に絶縁体層12の静電容量が大きくなるほどゲート電圧を低電圧で駆動できることになるので、有利になる。このことは、絶縁体層の厚さを薄くする事等で実現できる。
絶縁体層12の形成方法は、特段の制限はなく、例えば、スピンコート法、ブレードコート法及びスピンコート法等の湿式塗布法、蒸着法、スパッタリング法、スクリーン印刷やインクジェット等の印刷法、アルミニウムにアルマイトを形成するように金属上に酸化膜を形成する方法等、材料特性に合わせた公知の方法で形成することができる。
<2.3.電界発光素子(LED)>
樹脂複合材は、電界発光素子(LED)の構成要素として用いることができる。電界発光素子は、電界を印加することにより、陽極より注入された正孔と陰極より注入された電子との再結合エネルギーによって蛍光性物質が発光する原理を利用した自発光素子である。
以下に、電界発光素子について、図面を参照しながら説明する。図3は、電界発光素子
の一実施形態を模式的に示す断面図である。図3において、符号31は基材、32は陽極、33は正孔注入層、34は正孔輸送層、35は発光層、36は電子輸送層、37は電子注入層、38は陰極、39は電界発光素子を示している。なお、電界発光素子がこれらの構成部材を全て有する必要はなく、必要な構成部材を任意に選択することができる。例えば、必ずしも、正孔注入層33、正孔輸送層34、電子輸送層36、及び電子注入層37を設ける必要はない。電界発光素子を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/180230号又は特開2015-134703号公報等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
一実施形態において、基材31は樹脂複合材を有しており、特に、本発明の一実施形態である樹脂複合材は、平均熱膨張係数が低いので、基材31の材料として好ましく用いられる。
<2.3.1.基材(31)>
基材31は、電界発光素子39の支持体となるものであり、その材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されない。基材31の材料の好適な例としては、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;本発明の一実施形態である樹脂複合材の成形体等のフレキシブル基材が挙げられる。
フレキシブル基材の具体例としては、限定されるわけではないが、上述したエポキシ系樹脂等の樹脂;紙又は合成紙等の紙材料;銀、銅、ステンレス、チタン、アルミニウム等の金属箔に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料;本発明の一実施形態である樹脂複合材の成形体が挙げられる。
なお、樹脂複合材の成形体は、フレキシブル基材であれば、ロールツーロール法等の製造方法上好ましいが、フレキシブル基材でなくても、基材31として用いることができる。
樹脂基材を使用する場合には、ガスバリア性に留意する必要がある。すなわち、基材のガスバリア性が低過ぎると、基材を通過する外気により電界発光素子が劣化することがあるので望ましくない。このため、樹脂基材を使用する場合には、少なくとも一方の板面に緻密な酸化ケイ素膜や本発明の一実施形態である樹脂複合材等を設ける等の方法により、ガスバリア性を確保するのが望ましい。
ガラスとしてはソーダガラス、青板ガラス又は無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスからの溶出イオンが少ない点で、これらの中でも無アルカリガラスが好ましい。
基材31の形状に制限はなく、例えば、板状、フィルム状又はシート状等のものを用いることができる。
また、基材31の膜厚に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは20μm以上であり、一方、通常20mm以下、好ましくは10mm以下である。基材の膜厚が5μm以上であることは、電界発光素子の強度が不足する可能性が低くなるために好ましい。基材の膜厚が20mm以下であることは、コストが抑えられ、かつ質量が重くならないために好ましい。
基材31の材料がガラスである場合の膜厚は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、一方、通常1cm以下、好ましくは0.5cm以下である。ガラス基材31の膜厚が0.01mm以上であることは、機械的強度が増加し、割れにくくなるた
めに、好ましい。また、ガラス基材31の膜厚が1cm以下であることは、質量が重くならないために好ましい。
なお、図3は、電界発光素子の一実施形態を示すものにすぎず、電界発光素子が、図示された構成に限定されるわけではない。例えば、図3とは、逆の積層構造とすること、すなわち、基板31上に陰極38、電子注入層37、電子輸送層36、発光層35、正孔輸送層34、正孔注入層33及び陽極32をこの順に積層することも可能である。
電界発光素子の構成は特に限定されず、単一の素子であっても、アレイ状に配置された構造からなる素子であっても、陽極と陰極とがX-Yマトリックス状に配置された構造の素子であってもよい。
<2.4.光電変換素子>
樹脂複合材は、光電変換素子の構成要素として用いることができる。一実施形態に係る光電変換素子は、少なくとも一対の電極と、該電極間に存在する活性層と、を有する。また、一実施形態に係る光電変換素子は、基材、電子取り出し層、及び正孔取り出し層を含むその他の構成要素を有していてもよい。
図4は、光電変換素子の一実施形態を模式的に表す断面図である。図4に示される光電変換素子は、一般的な薄膜太陽電池に用いられる光電変換素子であるが、光電変換素子が、図4に示されるものに限られるわけではない。光電変換素子57は、基材56、カソード(電極)51、電子取り出し層(バッファ層)52、活性層53、正孔取り出し層(バッファ層)54及びアノード(電極)55がこの順に形成された層構造を有する。なお、必ずしも電子取り出し層52及び正孔取り出し層54を設ける必要はない。光電変換素子を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/180230号又は特開2015-134703号公報等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
一実施形態に係る光電変換素子においては、基材56が、樹脂複合材を有しており、特に、本発明の一実施形態である樹脂複合材は、平均熱膨張係数が低いので、基材56の材料として好ましく用いられる。
<2.4.1.基材(56)>
光電変換素子57は、通常は支持体となる基材56を有する。
基材56の材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り特に限定されない。基材56の材料の好適な例としては、石英、ガラス、サファイア又はチタニア等の無機材料;及び本発明の一実施形態である樹脂複合材等の成形体等のフレキシブル基材が挙げられる。
フレキシブル基材の具体例としては、限定されるわけではないが、上述したエポキシ系樹脂等の樹脂;紙又は合成紙等の紙材料;銀、銅、ステンレス、チタン又はアルミニウム等の金属箔に、絶縁性を付与するために表面をコート又はラミネートしたもの等の複合材料;本発明の一実施形態である樹脂複合材等の成形体が挙げられる。
なお、樹脂複合材の成形体は、フレキシブル基材であれば、ロールツーロール法等の製造方法上好ましいが、フレキシブル基材でなくても、基材56として用いることができる。
樹脂基材を使用する場合には、ガスバリア性に留意する必要がある。すなわち、基材のガスバリア性が低過ぎると、基材を通過する外気により活性層が劣化することがあるので
望ましくない。このため、樹脂基材を使用する場合には、少なくとも一方の板面に緻密な酸化ケイ素膜や本発明の一実施形態である樹脂複合材等を設ける等の方法により、ガスバリア性を確保するのが望ましい。
ガラスとしてはソーダガラス、青板ガラス又は無アルカリガラス等が挙げられる。ガラスからの溶出イオンが少ない点で、これらの中でも無アルカリガラスが好ましい。
基材56の形状に制限はなく、例えば、板状、フィルム状又はシート状等のものを用いることができる。
また、基材56の膜厚に制限はないが、通常5μm以上、好ましくは20μm以上であり、一方、通常20mm以下、好ましくは10mm以下である。基材56の膜厚が5μm以上であることは、光電変換素子の強度が不足する可能性が低くなるために好ましい。基材56の膜厚が20mm以下であることは、コストが抑えられ、かつ質量が重くならないために好ましい。
基材56の材料がガラスである場合の膜厚は、通常0.01mm以上、好ましくは0.1mm以上であり、一方、通常1cm以下、好ましくは0.5cm以下である。ガラス基材31の膜厚が0.01mm以上であることは、機械的強度が増加し、割れにくくなるために、好ましい。また、ガラス基材56の膜厚が1cm以下であることは、質量が重くならないために好ましい。
<2.5.太陽電池>
光電変換素子57は、太陽電池、なかでも薄膜太陽電池の太陽電池素子として使用されることが好ましい。図5には、薄膜太陽太陽電池の構成を模式的に表す断面図が示されている。図5に表すように、薄膜太陽電池111は、耐候性保護フィルム101と、紫外線カットフィルム102と、ガスバリアフィルム103と、ゲッター材フィルム104と、封止材105と、太陽電池素子106と、封止材107と、ゲッター材フィルム108と、ガスバリアフィルム109と、バックシート110と、をこの順に備える。薄膜太陽電池111は、太陽電池素子106として、本発明の一実施形態である光電変換素子を有している。そして、耐候性保護フィルム101が形成された側(図5中下方)から光が照射されて、太陽電池素子106が発電するようになっている。なお、薄膜太陽電池111は、これらの構成部材を全て有する必要はなく、必要な構成部材を任意に選択することができる。
薄膜太陽電池を構成するこれらの構成部材及びその製造方法について特段の制限はなく、周知技術を用いることができる。例えば、国際公開第2013/180230号又は特開2015-134703号公報等の公知文献に記載の技術を使用することができる。
また、ここで述べる耐候性保護フィルム、バックシート、紫外線カットフィルム、ガスバリアフィルム、ゲッター材フィルム、及び封止材は、電界効果トランジスタ素子(FET)、及び電界発光素子(LED)等の上述の電子デバイスにも用いることができる。
一実施形態においては、耐候性保護フィルム101及びバックシート110は、樹脂複合材を有しており、特に、本発明の一実施形態である樹脂複合材は、平均熱膨張係数が低いので、耐候性保護フィルム101及びバックシート110の材料として好ましく用いられる。
また、一実施形態においては、紫外線カットフィルム102は、樹脂複合材を有しており、特に、本発明の一実施形態である樹脂複合材は、平均熱膨張係数が低いので、紫外線
カットフィルム2の材料として好ましく用いられる。
また、一実施形態においては、ガスバリアフィルム103、109は樹脂複合材を有しており、特に、本発明の一実施形態である樹脂複合材は、平均熱膨張係数が低いので、ガスバリアフィルム103、109の材料として好ましく用いられる。
また、一実施形態においては、ゲッター材フィルム104、108は、樹脂複合材を有しており、特に、本発明の一実施形態である樹脂複合材は、平均熱膨張係数が低く、かつ吸湿性を有するので、ゲッター材フィルム104、108の材料として好ましく用いられる。
また、一実施形態において、封止材105、107は樹脂複合材を有しており、特に、本発明の一実施形態である樹脂複合材は、平均熱膨張係数が低いので、封止材105、107の材料として好ましく用いられる。
<2.5.1.耐候性保護フィルム(101)>
耐候性保護フィルム101は、天候変化から太陽電池素子106を保護するフィルムである。耐候性保護フィルム101で太陽電池素子106を覆うことにより、太陽電池素子106等を天候変化等から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。耐候性保護フィルム101は、薄膜太陽電池111の最表層に位置するため、耐候性、耐熱性、透明性、撥水性、耐汚染性及び/又は機械強度等の、薄膜太陽電池111の表面被覆材として好適な性能を備え、しかもそれを屋外暴露において長期間維持する性質を有することが好ましい。
また、耐候性保護フィルム101は、太陽電池素子106の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光線透過率が60%以上であることが好ましく、上限に制限はない。透過率は、分光光度計(例えば、島津製作所製分光光度計UV-2500PC)で測定することができ、可視光線透過率は、JIS R3106(1998年)に定義された方法により算出できる。
さらに、薄膜太陽電池111は光を受けて熱せられることが多いため、耐候性保護フィルム101も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、耐候性保護フィルム101の構成材料の融点は、通常80℃以上400℃以下である。
耐候性保護フィルム101を構成する材料は、天候変化から太陽電池素子106を保護することができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、AS(アクリロニトリル-スチレン)系樹脂、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレンテレフタラート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂等のポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、各種ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド-イミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂及び本発明の一実施形態である樹脂複合材等が挙げられる。
なお、耐候性保護フィルム101は、1種の材料単独で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。
また、耐候性保護フィルム101は、単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
耐候性保護フィルム101の厚みは、特に規定されないが、通常10μm以上200μm以下である。
耐候性保護フィルム101には、他のフィルムとの接着性の改良のために、コロナ処理及びプラズマ処理のうち少なくとも一方等の表面処理を行ってもよい。
耐候性保護フィルム101は、薄膜太陽電池111においてできるだけ外側に設けることが好ましい。薄膜太陽電池111の構成部材のうちより多くのものを保護できるようにするためである。
<2.5.2.紫外線カットフィルム(102)>
紫外線カットフィルム102は、紫外線の透過を防止するフィルムである。紫外線カットフィルム102を薄膜太陽電池111の受光部分に設け、紫外線カットフィルム102で太陽電池素子106の受光面106aを覆うことにより、太陽電池素子106及び必要に応じてガスバリアフィルム103、109等を紫外線から保護し、発電能力を高く維持することができるようになっている。
紫外線カットフィルム102に要求される紫外線の透過抑制能力の程度は、紫外線(例えば、波長300nm)の透過率が50%以下であることが好ましく、下限に制限はない。また、紫外線カットフィルム102は、太陽電池素子106の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光線透過率が60%以上であることが好ましく、上限に制限はない。透過率は、分光光度計(例えば、島津製作所製分光光度計UV-2500PC)で測定することができる。
さらに、薄膜太陽電池111は、光を受けて熱せられることが多いため、紫外線カットフィルム102も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、紫外線カットフィルム102の構成材料の融点は、通常80℃以上400℃以下である。
また、紫外線カットフィルム102は、柔軟性が高く、隣接するフィルムとの接着性が良好であり、水蒸気や酸素をカットしうることが好ましい。
紫外線カットフィルム102を構成する材料は、紫外線の強度を弱めることができるものであれば任意である。その材料の例を挙げると、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂又はエステル系樹脂に紫外線吸収剤を配合して成膜したフィルム、及び本発明の一実施形態である樹脂複合材等が挙げられる。また、紫外線吸収剤を樹脂中に分散あるいは溶解させたものの層(以下、適宜「紫外線吸収層」という)を基材フィルム上に形成したフィルムを用いてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系の化合物等を用いることができる。なお、紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。上述のように、紫外線吸収フィルムとしては紫外線吸収層を基材フィルム上に形成したフィルムを用いることもできる。このようなフィルムは、例えば、紫外線吸収剤を含む塗布液を基材フィルム上に塗布し、乾燥させることで作製できる。
基材フィルムの材質は特に限定されないが、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なフィルムが得られる点で、例えばポリエステル系樹脂が挙げられる。
紫外線カットフィルム102の具体的な商品の例を挙げると、カットエース(三菱ケミカルアグリドリーム社製)等が挙げられる。
なお、紫外線カットフィルム102は、1種の材料単独で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。
また、紫外線カットフィルム102は、単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
紫外線カットフィルム102の厚みは、特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
紫外線カットフィルム102は、太陽電池素子106の受光面106aの少なくとも一部を覆う位置に設ければよいが、好ましくは太陽電池素子106の受光面106aの全てを覆う位置に設ける。ただし、太陽電池素子6の受光面106aを覆う位置以外の位置にも紫外線カットフィルム102が設けられていてもよい。
<2.5.3.ガスバリアフィルム(103)>
ガスバリアフィルム103は、水蒸気及び酸素の透過を防止するフィルムである。ガスバリアフィルム103で太陽電池素子106を被覆することにより、太陽電池素子106を、水蒸気及び酸素から保護し、発電能力を高く維持することができる。
ガスバリアフィルム103に要求される防湿能力の程度は、太陽電池素子106の種類等に応じて様々であるが、単位面積(1m2)の1日あたりの水蒸気透過率が、通常1×10-1g/m2/day以下であることが好ましく、下限に制限はない。
ガスバリアフィルム103に要求される酸素透過性の程度は、太陽電池素子6の種類等に応じて様々であるが、単位面積(1m2)の1日あたりの酸素透過率が、通常1×10-1cc/m2/day/atm以下であることが好ましく、下限に制限はない。
また、ガスバリアフィルム103は、太陽電池素子106の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光線透過率が60%以上であることが好ましく、上限に制限はない。透過率は、分光光度計(例えば、島津製作所製分光光度計UV-2500PC)で測定することができる。
さらに、薄膜太陽電池111は光を受けて熱せられることが多いため、ガスバリアフィルム103も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ガスバリアフィルム103の構成材料の融点は、通常80℃以上400℃以下である。
ガスバリアフィルム103の具体的な構成は、太陽電池素子106を水蒸気及び酸素から保護できる限り任意である。ただし、ガスバリアフィルム103を透過しうる水蒸気や酸素の量を少なくできるフィルムほど製造コストが高くなるため、これらの点を総合的に勘案して適切なものを使用することが好ましい。
なかでも好適なガスバリアフィルム103としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)或いはポリエチレンナフタレート(PEN)等の基材フィルムに酸化ケイ素や窒素ケイ素を真空蒸着したフィルム、及び本発明の一実施形態である樹脂複合材の成形体等が挙げられる。
なお、ガスバリアフィルム103は、1種の材料単独で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。
また、ガスバリアフィルム103は、単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。なお、積層フィルムの場合、ある層のフィルムが水蒸気の透過防止に寄与し、別の層が酸素の透過防止に寄与するといった、層で役割分担をしていてもよい。
ガスバリアフィルム103の厚みは、特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
ガスバリアフィルム103は、太陽電池素子106を被覆して、水蒸気及び酸素から保護できればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子106の正面(受光面側の面。図5では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図5では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池111においては、その正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いためである。本実施形態ではガスバリアフィルム103が太陽電池素子106の正面を覆い、後述するガスバリアフィルム9が太陽電池素子106の背面を覆うようになっている。なお、後述するバックシート110としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム108及びガスバリアフィルム109のうち少なくとも一方を用いなくてもよい。
<2.5.4.ゲッター材フィルム(104)>
ゲッター材フィルム104は、水分及び酸素のうち少なくとも一方を吸収するフィルムである。ゲッター材フィルム104で太陽電池素子106を覆うことにより、太陽電池素子106等を水分及び酸素のうち少なくとも一方から保護し、発電能力を高く維持するようにしている。ここで、ゲッター材フィルム104は上記のようなガスバリアフィルム103とは異なり、水分及び/又は酸素の透過を妨げるものではなく、水分及び/又は酸素を吸収するものである。
水分を吸収するフィルムを用いることにより、ガスバリアフィルム103等で太陽電池素子106を被覆した場合に、ガスバリアフィルム103及び109で形成される空間に僅かに浸入する水分をゲッター材フィルム104が捕捉して水分による太陽電池素子106への影響を排除できる。
ゲッター材フィルム104の水分吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm2以上であり、上限に制限は無いが、通常10mg/cm2以下である。
また、ゲッター材フィルム104が酸素を吸収することにより、ガスバリアフィルム103及び109等で太陽電池素子106を被覆した場合に、ガスバリアフィルム103及び109で形成される空間に僅かに浸入する酸素をゲッター材フィルム104が捕捉して酸素による太陽電池素子106への影響を排除できる。
ゲッター材フィルム104の酸素吸収能力の程度は、通常0.1mg/cm2以上であり、上限に制限は無いが、通常10mg/cm2以下である
さらに、ゲッター材フィルム104は、太陽電池素子106の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光線透過率が60%以上であることが好ましく、上限に制限はない。透過率は、分光光度計(例えば、島津製作所製分光光度計UV-2500PC)で測定することができる。
さらに、薄膜太陽電池111は、光を受けて熱せされることが多いため、ゲッター材フィルム104も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、ゲッター材フィ
ルム104の構成材料の融点は、通常80℃以上400℃以下である。
ゲッター材フィルム104を構成する材料は、水分及び酸素のうち少なくとも一方を吸収することができるものであれば任意である。
その材料の例を挙げると、水分を吸収する物質としてアルカリ金属、アルカリ土類金属又はアルカリ土類金属の酸化物;アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;シリカゲル;ゼオライト;硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム又は硫酸ニッケル等の硫酸塩;アルミニウム金属錯体又はアルミニウムオキシドオクチレート等の有機金属化合物、及び本発明の一実施形態である樹脂複合材等が挙げられる。具体的には、アルカリ土類金属としては、カルシウム、ストロンチウム又はバリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム又は酸化バリウム等が挙げられる。その他にZr-Al-BaOやアルミニウム金属錯体等も挙げられる。
酸素を吸収する物質としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、モレキュラーシーブ等のゼオライト、酸化マグネシウム、酸化鉄、及び本発明の一実施形態である樹脂複合材等が挙げられる。また、鉄、マンガン、亜鉛、及びこれら金属の硫酸塩・塩化物塩・硝酸塩等の無機塩も挙げられる。
ゲッター材フィルム104の具体的な商品名を挙げると、例えば、水分用としては、OleDry(双葉電子工業社製)やモイストキャッチ(共同印刷社製)等が挙げられる。また酸素用としては、ダイアミロン(三菱ケミカル社製)、オキシキャッチ(共同印刷社製)、エージレスオーマック(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
なお、ゲッター材フィルム104は、1種の材料単独で形成されていてもよく、2種以上の材料で形成されていてもよい。
また、ゲッター材フィルム104は、単層フィルムにより形成されていてもよいが、2層以上のフィルムを備えた積層フィルムであってもよい。
ゲッター材フィルム104の厚みは、特に規定されないが、通常5μm以上200μm以下である。
ゲッター材フィルム104は、ガスバリアフィルム103及び109で形成される空間内であればその形成位置に制限は無いが、太陽電池素子106の正面(受光面側の面。図5では下側の面)及び背面(受光面とは反対側の面。図5では上側の面)を覆うことが好ましい。薄膜太陽電池111においては、その正面及び背面が他の面よりも大面積に形成されることが多いため、これらの面を介して水分及び酸素が浸入する傾向があるからである。この観点から、ゲッター材フィルム104はガスバリアフィルム103と太陽電池素子106との間に設けることが好ましい。本実施形態では、ゲッター材フィルム104が太陽電池素子106の正面を覆い、後述するゲッター材フィルム108が太陽電池素子106の背面を覆い、ゲッター材フィルム104、108がそれぞれ太陽電池素子106とガスバリアフィルム103、109との間に位置するようになっている。なお、後述するバックシート110としてアルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合は、用途によりゲッター材フィルム108及びガスバリアフィルム109のうち少なくとも一方を用いなくてもよい。
<2.5.5.封止材(105)>
封止材105は、太陽電池素子106を補強するフィルムである。太陽電池素子106は薄いため通常は強度が弱く、ひいては薄膜太陽電池の強度が弱くなる傾向があるが、封
止材105により強度を高く維持することが可能である。
また、封止材5は、薄膜太陽電池111の強度保持の観点から強度が高いことが好ましい。具体的強度については、封止材105以外の耐候性保護フィルム101やバックシート110の強度とも関係することになり一概には規定しにくいが、薄膜太陽電池111全体が、良好な曲げ加工性を有し、折り曲げ部分の剥離を生じないような強度を有するのが望ましい。
また、封止材105は、太陽電池素子106の光吸収を妨げない観点から可視光を透過させることが好ましい。例えば、可視光線透過率が60%以上であることが好ましく、上限に制限はない。透過率は、分光光度計(例えば、島津製作所製分光光度計UV-2500PC)で測定することができる。
封止材105の厚みは、特に規定されないが、通常2μm以上700μm以下である。
封止材105の基板に対するT型剥離接着強さは通常1N/インチ以上通常2000N/インチ以下である。T型剥離接着強さが1N/インチ以上であることは、モジュールの長期耐久性を確保できる点で好ましい。T型剥離接着強さが2000N/インチ以下であることは、太陽電池を廃棄する際に、基材やバリアフィルムと接着材を分別して廃棄できる点で好ましい。T型剥離接着強さは、JIS K6854-3(1999年)に準拠する方法により測定できる。
封止材105の構成材料としては、上記特性を有する限り特段の制限はないが、有機太陽電池及び無機太陽電池の封止、有機電界発光素子(LED)及び無機電界発光素子(LED)の封止、又は電子回路基板の封止等に一般的に用いられている封止用材料、及び本発明の一実施形態である樹脂複合材等を用いる事ができる。
なお、ここでは、太陽電池用の封止材105の構成材料として、本発明の一実施形態である樹脂複合材を用いる事ができると述べているが、有機太陽電池及び無機太陽電池、有機電界発光素子(LED)及び無機電界発光素子(LED)等の電子デバイス、及び電子回路基板の封止材としても、本発明の一実施形態である樹脂複合材を用いることができる。
封止材105の具体的な構成材料としては、熱硬化性樹脂複合材、熱可塑性樹脂複合材及び活性エネルギー線硬化性樹脂複合材、及び本発明の一実施形態である樹脂複合材が挙げられる。なお、活性エネルギー線硬化性樹脂複合材とは、例えば、紫外線、可視光、赤外線、電子線等で硬化する樹脂のことである。
より具体的な構成材料としては、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂複合材、炭化水素系樹脂複合材、エポキシ系樹脂複合材、ポリエステル系樹脂複合材、アクリル系樹脂複合材、ウレタン系樹脂複合材、又はシリコーン系樹脂複合材及び本発明の一実施形態である樹脂複合材等が挙げられ、それぞれの高分子の主鎖、分岐鎖、末端の化学修飾、分子量の調整、添加剤等によって、熱硬化性、熱可塑性及び活性エネルギー線硬化性等の特性が発現する。
また、薄膜太陽電池111は、光を受けて熱せられることが多いため、封止材105も熱に対する耐性を有することが好ましい。この観点から、封止材105の構成材料の融点は、通常80℃以上400℃以下である。
封止材105中の封止材用構成材料の密度は、0.80g/cm3以上が好ましく、上
限に制限はない。なお、密度の測定と評価は、JIS K7112(1999年)に準拠する方法によって実施することができる。
封止材105を設ける位置に制限は無いが、通常は太陽電池素子106を挟み込むように設ける。太陽電池素子106を確実に保護するためである。本実施形態では、太陽電池素子106の正面及び背面にそれぞれ封止材105及び封止材107を設けるようにしている。
<2.5.6.太陽電池素子(106)>
太陽電池素子106は、前述の光電変換素子57と同様である。すなわち、光電変換素子57を用いて薄膜太陽電池111を製造することができる。
太陽電池素子106は、薄膜太陽電池111一個につき一個だけを設けてもよいが、通常は2個以上の太陽電池素子106を設ける。具体的な太陽電池素子106の個数は任意に設定すればよい。太陽電池素子106を複数設ける場合、太陽電池素子106はアレイ状に並べて設けられていることが多い。
太陽電池素子106を複数設ける場合、通常は、太陽電池素子106同士は電気的に接続され、接続された一群の太陽電池素子106から生じた電気を端子(図示せず)から取り出すようになっていて、この際、電圧を高めるため、通常は、太陽電池素子106は直列に接続される。
このように太陽電池素子106同士を接続する場合には、太陽電池素子106間の距離は小さいことが好ましく、ひいては、太陽電池素子106と太陽電池素子106との間の隙間は狭いことが好ましい。太陽電池素子106の受光面積を広くして受光量を増加させ、薄膜太陽電池111の発電量を増加させるためである。
<2.5.7.封止材(107)>
封止材107は、上述した封止材105と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は、封止材107と同様のものを同様に用いることができる。また、太陽電池素子106よりも背面側の構成部材は、必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<2.5.8.ゲッター材フィルム(108)>
ゲッター材フィルム108は、上述したゲッター材フィルム104と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は、ゲッター材フィルム104と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、太陽電池素子106よりも背面側の構成部材は、必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<2.5.9.ガスバリアフィルム(109)>
ガスバリアフィルム109は、上述したガスバリアフィルム103と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は、ガスバリアフィルム109と同様のものを同様に必要に応じて用いることができる。また、太陽電池素子106よりも背面側の構成部材は、必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
<2.5.10.バックシート(110)>
バックシート110は、上述した耐候性保護フィルム101と同様のフィルムであり、配設位置が異なる他は、耐候性保護フィルム101と同様のものを同様に用いることがで
きる。また、太陽電池素子106よりも背面側の構成部材は、必ずしも可視光を透過させる必要が無いため、可視光を透過させないものを用いることもできる。
また、このバックシート110が、水分及び酸素を透過させ難いものであれば、バックシート110をガスバリア層として機能させることも可能である。具体的には、バックシート110として、アルミ箔の両面にフッ素系樹脂フィルムを接着したシート等の防水性の高いシートを用いる場合には、用途によりゲッター材フィルム108及びガスバリアフィルム109のうち少なくとも一方を用いなくてもよい。
<2.5.11.寸法等>
本実施形態の薄膜太陽電池111は、通常、膜状の薄い部材である。このように膜状の部材として薄膜太陽電池111を形成することにより、薄膜太陽電池111を建材、自動車又はインテリア等に容易に設置できる。薄膜太陽電池111は、軽く、割れにくく、従って安全性の高い太陽電池が得られ、また曲面にも適用可能であるため、さらに多くの用途に使用しうる。薄くて軽いため輸送や保管等流通面でも好ましい。さらに、膜状であるためロールツーロール方式の製造が可能であり大幅なコストカットが可能である。
薄膜太陽電池111の具体的な寸法には、制限は無いが、その厚みは、通常300μm以上3000μm以下である。
<2.5.12.製造方法>
本実施形態の薄膜太陽電池111の製造方法には、制限は無いが、例えば、図6の形態の太陽電池製造方法としては、図5に示される積層体を作成した後に、ラミネート封止工程を行う方法が挙げられる。本実施形態の太陽電池素子106は、耐熱性に優れるため、ラミネート封止工程による劣化が低減される点で好ましい。
図5に示される積層体作成は、周知の技術を用いて行うことができる。ラミネート封止工程の方法は、本発明の効果を損なわなければ特に制限はないが、例えば、ウェットラミネート、ドライラミネート、ホットメルトラミネート、押出しラミネート、共押出成型ラミネート、押出コーティング、光硬化接着剤によるラミネート、サーマルラミネート等が挙げられる。なかでも有機電界発光素子の封止で実績のある光硬化接着剤によるラミネート、太陽電池で実績のあるホットメルトラミネート又はサーマルラミネートが好ましく、さらに、ホットメルトラミネート又はサーマルラミネートがシート状の封止材を使用できる点でより好ましい。
ラミネート封止工程の加熱温度は、通常130℃以上、好ましくは140℃以上であり、通常180℃以下、好ましくは170℃以下である。ラミネート封止工程の加熱時間は、通常10分以上、好ましくは20分以上であり、通常100分以下、好ましくは90分以下である。ラミネート封止工程の圧力は、通常0.001MPa以上、好ましくは0.01MPa以上であり、通常0.2MPa以下、好ましくは0.1MPa以下である。圧力をこの範囲とすることで封止を確実に行い、かつ、端部からの封止材105、107のはみ出しや過加圧による膜厚低減を抑え、寸法安定性を確保しうる。なお、2個以上の太陽電池素子106を直列又は並列接続したものも上記と同様にして、製造することができる。
太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池111の用途に制限はなく、任意の用途に用いることができる。例えば、一実施形態に係る太陽電池は、建材用太陽電池、自動車用太陽電池、インテリア用太陽電池、鉄道用太陽電池、船舶用太陽電池、飛行機用太陽電池、宇宙機用太陽電池、家電用太陽電池、携帯電話用太陽電池又は玩具用太陽電池として用いることができる。
<2.5.13.太陽電池モジュール>
太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池111は、そのまま用いてもよいし、太陽電池モジュールの構成要素として用いてもよい。例えば、図6に示すように、太陽電池、特には上述した薄膜太陽電池111を基材112上に備える太陽電池モジュール113を作製し、この太陽電池モジュール113を使用場所に設置して用いることができる。
基材112としては、周知技術を用いることができ、例えば、基材112の材料としては、国際公開第2013/180230号又は特開2015-134703号公報等に記載の材料を用いることができる。また、基材112に、本発明の一実施形態である樹脂複合材を用いてもよい。例えば、基材112として建材用板材を使用する場合、この板材の表面に薄膜太陽電池111を設けることにより、太陽電池モジュール113として、建物の外壁用太陽電池パネルを作製することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により制限されるものではない。なお、後述の実施例において得られたゼオライト、及びフィルムの評価は、下記の方法により行った。
<ゼオライトの評価>
(ゼオライトの平均一次粒径)
JEOL社製オートファインコーターJFC-1600にて、ゼオライト-白金ターゲット間距離30mmとし、60秒間のスパッタリングにより、ゼオライト試料表面の白金厚みが約9nmになるように蒸着させてから、SEMによる観察を行った。SEMにおける作動距離は10~11mmとし、加速電圧10kV、スポットサイズは30mmとした。平均一次粒子径は、JEOL社製走査電子顕微鏡JSM-6010LVによる粒子の観察において、任意に選択した30個の一次粒子について粒子径を測定し、その一次粒子の粒子径を平均して求めた。なお、粒子径は、粒子の投影面積と等しい面積を持つ、円の直径(円相当径)とした。
(ゼオライトの平均熱膨張係数)
BRUKER社製X線回折装置D8ADVANCEとX線回折解析ソフトJADEを用いて格子定数を算出することで、ゼオライトの100~250℃における平均熱膨張係数を測定した。
X線源としては、CuKαを用い、出力40kV、40mA、捜査範囲は2θが5-70°の範囲とした。
測定は100℃、150℃、200℃、250℃の各温度で5分間保持して行った。
受講側は半導体アレイ検出器(Lynx Eye)を用い、Niフィルターを使用した。
XRD測定結果よりX線回折解析ソフトJADEを用いて各ピーク位置をピークサーチし、格子定数を求め、平均熱膨張係数を、100~250℃における、格子定数の変位-温度曲線の平均の勾配として、求めた。
<フィルムの評価>
(フィルムの平均熱膨張係数)
フィルムの平均熱膨張係数(樹脂複合材フィルム:αc、樹脂フィルム:αm)を、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製熱機械分析装置TMA/SS6100を使用して測定した。なお、サンプル形状は幅4mm、チャック間距離20mmとし、昇温速度10℃/minで昇温させた。
(フィルムの透過率)
フィルムの透過率は、島津製作所社製分光光度計UV-2500PCを用いて測定した。
(フィルムのヘイズ値)
フィルムのヘイズ値は、スガ試験機社製TMダブルビーム自動ヘイズコンピュータHZ-2を用いて測定した。今回用いたヘイズ値は、D65光に対する値である。
(フィルムのイエローインデックス値)
フィルムのイエローインデックス値(以下YI値)は、JIS K7373(2006年)に準拠する方法により測定した。具体的には、スガ試験機社製カラーコンピューターSM5を用いて測定した。
<ゼオライトの合成方法>
(合成例1:ゼオライトZ1の合成方法)
容器内に、キシダ化学社製水酸化ナトリウム、構造規定剤(SDA;Structure Directing Agent)として、セイケム社製N,N,N-トリメチル-1-アダマンタアンモニウム水酸化物(TMAdaOH)、アルドリッチ社製水酸化アルミニウム、日揮触媒化成社製Cataloid SI-30を順次加えた。得られた混合物の組成及びモル比は、SiO2:Al2O3:NaOH:TMAdaOH:H2O=1.0:0.02:0.1:0.1:20であった。その後、種結晶として、SiO2に対して2質量%のCHA型ゼオライトを混合物に加えて、よく混合した後、得られた混合物を耐圧容器に入れ、160℃のオーブン中で、15rpmで回転させながら、24時間水熱合成を行った。吸引濾過、洗浄した後に、乾燥することで、CHA型ゼオライト(as-made)である、ゼオライトZ1を得た。
(合成例2:ゼオライトZ2の合成方法)
合成例1により得られたゼオライトZ1を、600℃、6時間、空気流通下で焼成することにより、構造規定剤(SDA)であるTMAdaOHを除去した。その後、ゼオライトを、硝酸アンモニウム水溶液中で80℃、2時間撹拌することで、イオン交換を行い、アンモニウム型ゼオライトに変換した。次に、500℃、2時間、空気流通下で焼成することでプロトン型に変換した。こうして、プロトン型のCHA型ゼオライトであるゼオライトを合成した。得られたゼオライトを、さらにジェットミル処理を施すことで凝集体を解砕して、プロトン型のCHA型ゼオライトであるゼオライトZ2を作製した。得られたゼオライトZ2をSEM観察したところ、平均一次粒子径は、100nmであった。
また、ゼオライトZ2の100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、ゼオライトZ2の100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、ゼオライトZ2の平均熱膨張係数は-9.0ppm/Kであった。
(合成例3:ゼオライトZ3の合成方法)
混合物の組成及びモル比を、SiO2:Al2O3:NaOH:KOH:TMAdaOH:H2O=1.0:0.033:0.1:0.06:0.07:20とし、オートクレーブでの加熱時間を48時間とした以外は、合成例1と同様の方法で、CHA型ゼオライト(as-made)である、ゼオライトZ3を得た。
得られたゼオライトZ3をSEM観察したところ、平均一次粒子径は、1000nmであった。また、ゼオライトZ3の100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、ゼオライトZ3の平均熱膨張係数は-9.1ppm/Kであった。
(合成例4:ゼオライトZ4の合成方法)
合成例2で得たゼオライトZ2を150℃10時間乾燥させた後、1gのゼオライトZ2を、30mlサンプル瓶に秤量し、そこに、東京化成工業社製ヘキサメチルジシロキサン5gを加えた後、IKA社製ホモジナイザ―(T18)を用いて2.0×104rpmで5分間撹拌した。その後、内容物をヘキサメチルジシロキサン6.3gで洗いこみながら、ナスフラスコに移し、窒素置換した後に、東京化成工業社製ジクロロジフェニルシラン0.5mlを加え、窒素気流下で、100℃で8時間加熱した。加熱終了後、放冷した後に、内容物を濾過し、アセトンで洗浄、乾燥させ、シリル化されたCHA型ゼオライトである、ゼオライトZ4を得た。
得られたゼオライトZ4をSEM観察したところ、平均一次粒子径は、100nmであった。また、ゼオライト4の100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、ゼオライトZ4の平均熱膨張係数は-9.1ppm/Kであった。
(合成例5:ゼオライトZ5の合成方法)
国際公開第2017/090382号に記載の方法に基づいて、脱塩水、セイケム社製テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)、和光純薬工業社製水酸化ナトリウム、及びゼオリスト社製FAU型ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=30)をよく撹拌することで、SiO2:Al2O3:NaOH:TEAOH:H2O=1.0:0.033:0.4:0.15:5の組成及びモル比である混合物を得た。次に、種結晶として、SiO2に対して20質量%のAEI型ゼオライトを加えて、さらによく混合した後に、得られた混合物を耐圧容器に入れ、160℃のオーブン中で、15rpmで回転させながら、48時間水熱合成した。吸引濾過、洗浄した後に、乾燥することで、AEI型ゼオライト(as-made)を合成した。得られたAEI型ゼオライト(as-made)を精製水中で、ビーズミルすることによって、ゼオライト水分散液を得た。ビーズミルにはアシザワ・ファインテック社製のラボスターミニを用いた。
次に、ゼオライト水分散液を凍結乾燥することによって、AEI型ゼオライト(as-made)である、ゼオライトZ5を得た。
得られたゼオライトZ5をSEM観察したところ、平均一次粒子径は100nmであった。また、ゼオライト5の100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、ゼオライトZ5の平均熱膨張係数は-8.6ppm/Kであった。
(合成例6:ゼオライトZ6の合成方法)
合成例5で得たゼオライトZ5を、550℃で6時間焼成して、構造規定剤であるTEAOHを除去した、Na型のAEI型ゼオライトZ6を得た。
得られたゼオライトZ6をSEM観察したところ、平均一次粒子径は100nmであった。また、ゼオライトZ6の100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、ゼオライトZ6の平均熱膨張係数は-8.5ppm/Kであった。
(合成例7:ゼオライトZ7の合成方法)
容器内に、和光純薬工業社製85%リン酸、脱塩水、Sasol社製ベーマイトCATAPAL C1を入れて、約1時間撹拌し、ベーマイトを解膠させてから、さらにエボニック社製のアエロジル200、脱塩水を入れて撹拌し、そこに構造規定剤として、和光純薬工業社製ジイソプロピルエチルアミン、及びナカライテスク社製トリエチルアミンを加え、約20分間撹拌することで混合物を得た。混合物の組成及びモル比は、Al2O3:P2O5:SiO2:ジイソプロピルエチルアミン:トリエチルアミン:H2O=1.0:0.86:0.28:1.0:1.0:50であった。得られた混合物を耐圧容器に入
れ、170℃のオーブン中で、15rpmで回転させながら48時間水熱合成を行った。吸引濾過、洗浄した後に、乾燥することで、SAPO-AEI型のゼオライト(as-made)を得た。
得られたゼオライト(as-made)を600℃、6時間、空気流通下で焼成することにより、構造規定剤であるジイソプロピルエチルアミン、及びトリエチルアミンを除去し、プロトン型のSAPO-AEI型ゼオライトである、ゼオライトZ7を得た。
得られたゼオライトZ7をSEM観察したところ、平均一次粒子径は1000nmであった。また、ゼオライト7の100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、ゼオライトZ7の平均熱膨張係数は-8.6ppm/Kであった。
(合成例8:ゼオライトZ8の合成方法)
容器内に、キシダ化学社製水酸化ナトリウム、脱塩水、構造規定剤としてセイケム社製テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)を入れて混合した後に、日産化学社製シリカゾル ST-40、日揮触媒化成社製FAU型ゼオライトUSY-7(シリカ/アルミナモル比=7)を入れて、1時間撹拌することで混合物を得た。混合物の組成及びモル比は、SiO2:Al2O3:NaOH:TEAOH:H2O=1.0:0.033:0.2:0.4:15であった。得られた混合物に種結晶として、CHA型ゼオライト(ゼオライトZ3)をSiO2質量の10質量%を添加して撹拌したものを耐圧容器に入れ、160℃のオーブン中で、15rpmで回転させながら24時間水熱合成を行った。
次に、遠心分離と洗浄を5回繰り返した後に、脱塩水中に、得られた生成物を分散させ、分散液を凍結乾燥することにより、CHA型(as-made)ゼオライトである、ゼオライトZ8を得た。
得られたゼオライトZ8をSEM観察したところ、平均一次粒子径は200nmであった。また、ゼオライト8の100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、ゼオライトZ8の平均熱膨張係数は-9.1ppm/Kであった。
(合成例9:ゼオライトZ9の合成方法)
容器に、和光純薬工業社製85%リン酸、脱塩水、Sasol社製ベーマイトCATAPAL C1、エボニック社製アエロジル200、構造規定剤としてセイケム社製テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)を混合することで、Al2O3:P2O5:SiO2:TEAOH:H2O=1.0:0.95:0.1:1.1:60の組成及びモル比である混合物を得た。得られた混合物を耐圧容器に入れ、185℃のオーブン中で、15rpmで回転させながら48時間水熱合成を行った。吸引濾過、洗浄した後に、乾燥することで、ゼオライト(as-made)を得た。
得られたゼオライト(as-made)を、600℃、6時間、空気流通下で焼成することにより、構造規定剤である、TEAOHを除去し、プロトン型のSAPO-CHA型ゼオライトである、ゼオライトZ9を得た。
得られたゼオライトZ9をSEM観察したところ、平均一次粒子径は200nmであった。また、ゼオライト9の100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、ゼオライトZ9の平均熱膨張係数は-9.1ppm/Kであった。
(合成例10:ゼオライトZ10の合成方法)
容器内に、水、キシダ化学社製アルミン酸ナトリウム、キシダ化学社製水酸化ナトリウ
ムを順次加え撹拌し、続けて、構造規定剤として、東京化成工業社製ヘキサメチレンイミン(HMI)、日産化学社製スノーテックス40を加え、よく撹拌した。混合物の組成は、SiO2:Al2O3:NaOH:HMI:H2O=1.0:0.0167:0.21:0.5:45であった。その後、種結晶としてSiO2に対して2質量%分のMWW型ゼオライトを混合物に加え、得られた混合物を耐圧容器に入れ、160℃のオーブン中で、静置させた状態で5日間水熱合成を行った。吸引濾過、洗浄した後に、乾燥させることでゼオライト(as-made)を得た。
得られたゼオライト(as-made)を、700℃、6時間、空気流通下で焼成することにより、構造規定剤である、HMIを除去し、MWW型ゼオライトである、ゼオライトZ10を得た。
得られたゼオライトZ10をSEM観察したところ、板状であり、最長の一辺の平均は1000nmであった。また、ゼオライト10の100~250℃における平均熱膨張係数を測定したが、ピークの重なりが大きく、-9~-20ppm/Kまでの幅をもった数値で得られ、正確な値は得られなかった。
(合成例11:ゼオライトZ11の合成方法)
容器内に、水、キシダ化学社製リン酸、Sasol社製ベーマイトCATAPAL C1を加えて、よく撹拌した。続けて、エボニック社製アエロジル200、構造規定剤として、東京化成工業社製N,N,N‘,N’-テトラメチルテトラメチルヘキサメチレンジアミン(TMHD)を加え、よく撹拌した。混合物の組成は、Al2O3:P2O5:SiO2:TMHD:H2O=1.0:1.0:0.4:2.0:40であった。得られた混合物を耐圧容器に入れ、200℃のオーブン中で、静置させた状態で3日間水熱合成を行った。生成物を吸引濾過、洗浄した後に、乾燥させることで、ゼオライト(as-made)を得た。
得られたゼオライト(as-made)を700℃、6時間、空気流通下で焼成することにより、構造規定剤であるTMHDを除去し、プロトン型のSAPO-AFX型ゼオライトである、ゼオライトZ11を得た。
得られたゼオライトZ11をSEM観察したところ、板状であり、最長の一辺の平均は1000nmであった。また、ゼオライト11の100~250℃における平均熱膨張係数を測定したが、ピーク強度が小さいので、-5~-10ppm/Kまでの幅をもった数値で得られ、正確な値は得られなかった。
<樹脂組成物の製造方法>
(樹脂組成物製造例1:ポリイミド前駆体含有組成物P1の製造方法)
窒素ガス導入管、冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、3,3’,4,4’-ビシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物48.52g(0.16mol)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル32.04g(0.16mol)、N-メチル-2-ピロリドン322gを加え、80℃で6時間加熱撹拌することで、ポリイミド前駆体を20質量%含むポリイミド前駆体含有組成物P1を得た。
(樹脂組成物製造例2:ポリイミド前駆体含有組成物P2の製造方法)
窒素ガス導入管、冷却器、攪拌機を備えた4つ口フラスコに、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 311g(1.06mol)、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物 324g(1.06mol)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン 340g(1.06mol)、4,4’-ビス(ジアミノジフェニル)スルホン 263g(1.06mol)、N-メチルピロリド
ン 2890gを加え、80℃で8時間加熱撹拌することで、ポリイミド前駆体を30質量%含むポリイミド前駆体含有組成物P2を得た。
(樹脂組成物製造例3:ポリイミド含有組成物T1の製造方法)
窒素ガス導入管、冷却器、熱電対、トルエンを満たしたディーンスターク管及び攪拌機を備えた3つ口フラスコに、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
7.28g(0.025mol)、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物 7.58g(0.025mol)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン 8.00g(0.025mol)、4,4’-ビス(ジアミノジフェニル)スルホン 6.21g(0.025mol)、N-メチルピロリドン70g、及びトルエン 17.4gを加え、190℃で13時間加熱還流することで、ポリイミドを25重量%含むポリイミド含有組成物T1を得た。
<実験1:ポリイミド前駆体含有組成物P1を使用した樹脂複合材フィルムの製造>
(実施例1-1:ポリイミド樹脂複合材フィルム1-1の製造方法)
4.5gのポリイミド前駆体含有組成物P1と、0.1gのゼオライトZ2とを、混合して得られたインクを、アルカリガラス(コーニング社製イーグルXGガラス)上に、スピンコート法にて、乾燥・焼成後の膜厚が10μmになるように塗布し、330℃で30分間、乾燥・焼成を行うことで、ポリイミド樹脂複合材フィルム1-1を得た。なお、得られたフィルム中のゼオライト含有量は、10.0質量%であった。また、東洋精機製作所社製THICKNESS METER B-1により膜厚を測定した結果、フィルム1-1の膜厚は、10μmであった。
(比較例1-1:ポリイミド樹脂複合材フィルム1-2の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりに、アドマテックス社製シリカ微粒子(平均一次粒子径100nm、100~250℃の平均熱膨張係数:1ppm/K)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、ポリイミド樹脂複合材フィルム1-2を得た。なお、得られたフィルム1-2中のシリカ微粒子含有量は、10.0質量%であり、フィルム1-2の膜厚は、10μmであった。
(比較例1-2:ポリイミド樹脂フィルム1の製造方法)
ゼオライトZ2を用いなかった以外は、実施例1-1と同様にして、ポリイミドフィルム1を作製した。なお、得られたポリイミド樹脂フィルム1の膜厚は、10μmであった。
実施例1-1、比較例1-1、及び比較例1-2で得られたフィルムについて、上述の方法により、フィルムの透過率を測定した。450nmにおける透過率を表1に示す。
また、実施例1-1、比較例1-1、及び比較例1-2により得られたフィルムの100℃~250℃の範囲における平均熱膨張係数αc及びαm×(100-Wz)/100の値を求めた。得られた結果を表1に示す。なお、平均熱膨張係数測定時の変曲点から求めたポリイミド樹脂フィルム1のガラス転移温度(Tg)は、250.2℃であった。
表1の結果より、実施例1-1のポリイミド樹脂複合材フィルム1-1、及び比較例1-1のポリイミド樹脂複合材フィルム1-2と、比較例1-2のポリイミド樹脂フィルム1との比較から、フィラーを含有することで、複合材樹脂フィルムの平均熱膨張係数(αc)が小さくなっていることがわかる。また、比較例1-1のシリカ微粒子を含むポリイミド樹脂複合材フィルム1-2は、αm×(100-Wz)/100の値よりも、平均熱膨張係数(αc)が大きくなっているのに対して、実施例1-1のポリイミド樹脂複合材フィルム1-1は、αm×(100-Wz)/100の値よりも、平均熱膨張係数(αc)の値が小さくなっていることが分かる。従って、フィラーとしてCHA型ゼオライトを
用いることにより、ポリイミド樹脂複合材のαm×(100-Wz)/100の値よりも樹脂複合材フィルムの平均熱膨張係数よりも小さくすることができることが分かる。
また、表1に示すように、波長450nmにおける初期の透過率で比較すると、ポリイミド樹脂複合材フィルム1-1の透過率の方がポリイミド樹脂複合材フィルム1-2の透過率よりも低くなった。しかし、製造後3ヶ月後の樹脂複合材フィルムを目視で比較すると、ポリイミド樹脂複合材フィルム1-1は、透明性を維持していたのに対して、ポリイミド樹脂複合材フィルム1-2は、やや白濁が起きていた。また、製造後1年後の樹脂複合材フィルムを目視で比較すると、ポリイミド樹脂複合材フィルム1-1は、透明性を維持していたのに対して、ポリイミド樹脂複合材フィルム1-2は、目立つ白濁が起きていた。従って、上記式(1)を満たすポリイミド樹脂複合材は、長期間、透明性を維持しやすいことが分かる。
さらに、フィルムを手で10回以上折り曲げたところ、ポリイミド樹脂複合材フィルム1-1は折り曲げ由来の筋がほぼ発生しなかったのに対して、ポリイミド樹脂複合材フィルム1-2は、折り曲げ由来の筋の数が多く発生した。この結果から、上記式(1)を満たすポリイミド樹脂複合材は、変形等が少なく、フレキシブル性を維持しやすいといえる。
<実験2:ポリイミド前駆体含有組成物P2を使用した樹脂複合材フィルムの製造>
(比較例2-1:ポリイミド樹脂フィルム2の製造方法)
ポリイミド前駆体含有組成物P2を、N-メチルピロリドンで希釈し、ポリイミド前駆体が20質量%となるように調整した。得られたインクを実施例1と同様にガラス上にスピンコート法によって塗布し、330℃で30分間、乾燥・焼成を行うことでポリイミド樹脂フィルム2を得た。得られたフィルムの膜厚は、8μmであった。
(実施例2-1:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-1の製造方法)
0.2gのゼオライトZ2と、N-メチル-2-ピロリドン3.33gを混合し、IKA社製ホモジナイザ―(T18)を用いて、1.0×104rpmで5分間撹拌して、ゼオライト分散液を作製した。その後、該分散液と、6.67gのポリイミド前駆体含有組成物P2とを混合し、撹拌子で撹拌することにより、ゼオライトZ2とポリイミド前駆体含有組成物P2とを混合したインクを得た。得られたインクを比較例2-1と同様の方法により、ガラス上にスピンコート法によって塗布し、330℃で30分間、乾燥・焼成を行うことで、ポリイミド樹脂複合材フィルム2-1を得た。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例2-2:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-2の製造方法)
ゼオライトZ2の量を0.4gとした以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-2を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して16.7質量%であった。
(実施例2-3:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-3の製造方法)
ゼオライトZ2の量を0.5gとした以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-3を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して20.0質量%であった。
(実施例2-4:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-4の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりにゼオライトZ4を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-4を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例2-5:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-5の製造方法)
N-メチル-2-ピロリドンと、ゼオライトZ2と、ゼオライトZ2に対し20質量%となるようにリン酸アミン化合物系分散剤であるビックケミージャパン社製BYK145を加え、アシザワ・ファインテック社製ラボスターミニでビーズミルすることによって、ゼオライトZ2の含有量が、5.0質量%であるゼオライト分散液を得た。
次に、得られたゼオライト分散液2.26gと、4.0gのポリイミド前駆体含有組成物P2とを混合し、撹拌子で撹拌することで、ゼオライトZ2とポリイミド前駆体含有組成物とを混合したインクを得た。得られたインクを実施例2-1と同様にガラス上にスピンコート法によって塗布し、330℃で30分間、乾燥・焼成を行うことでポリイミド樹脂複合材フィルム2-5を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例2-6:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-6の製造方法)
N-メチルピロリドンに、ゼオライトZ3を加え、アシザワ・ファインテック社製ラボスターミニで、ビーズミルすることによって、ゼオライトZ3の含有量が、5.5質量%であるゼオライト分散液を得た。
次に、得られたゼオライト分散液2.18gと、4.0gのポリイミド前駆体含有組成物P2とを混合し、撹拌子で撹拌することで、ゼオライトとポリイミド前駆体含有組成物P2とを混合したインクを得た。得られたインクを実施例2-1と同様の方法によりガラス上にスピンコート法によって塗布し、330℃で30分間、乾燥・焼成を行うことでポリイミド樹脂複合材フィルム2-6を得た。なお、フィルムの膜厚は9μmであり、得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例2-7:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-7の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりにゼオライトZ5を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-7を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例2-8:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-8の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりにゼオライトZ6を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-8を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例2-9:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-9の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりに、ゼオライトZ7を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-9を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例2-10:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-10の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりに、ゼオライトZ8を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-10を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例2-11:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-11の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりに、ゼオライトZ9を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-11を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例2-12:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-12の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりに、日揮触媒化成社製FAU型ゼオライト NaY(5)(シリカ/アルミナモル比=5)を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-12を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
なお、NaY(5)の100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、NaY(5)の平均熱膨張係数は-3.2ppm/Kであった。
(実施例2-13:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-13の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりに、東ソー社製プロトン型FAU型ゼオライト HSZ-350HUA(シリカ/アルミナモル比=10、平均一次粒子径300μm)を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-13を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
なお、HSZ-350HUAの100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、HSZ-350HUAの平均熱膨張係数は-3.3ppm/Kであった。
(実施例2-14:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-14の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりに、東ソー社製プロトン型FAU型ゼオライト HSZ-390HUA(シリカ/アルミナモル比=200、平均一次粒子径300μm)を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-14を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
なお、HSZ-390HUAの100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、HSZ-390HUAの平均熱膨張係数は-3.3ppm/Kであった。
(実施例2-15:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-15の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりに、東ソー社製プロトン型*BEA型ゼオライト HSZ-940HOA(シリカ/アルミナモル比=40)を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-15を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
なお、HSZ-940HOAは、BEAとBEBの混晶である*BEA型であるので、HSZ-940HOAの100~250℃における平均熱膨張係数を測定したが、ピークが重なりが大きく、-3~-20までの幅をもった数値で得られ、正確な値は得られなかった。
(実施例2-16:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-16の製造方法)
N-メチルピロリドンに、ゼオライトZ3を加え、アシザワ・ファインテック社製ラボスターミニで、ビーズミルすることによって、ゼオライトZ3の含有量が、5質量%であるゼオライト分散液を得た。
次に、得られたゼオライト分散液約20gをコクサン社製遠心機H-36を用いて3500rpmで、60分間遠心分離し、上澄みを取ることで、遠心分離後のゼオライト分散液を得た。遠心分離後のゼオライト分散液中のゼオライト量は、1.9質量%であった。
次に、得られた遠心分離後のゼオライト分散液5.24gと3.33gのポリイミド前
駆体含有組成物P2とを混合し、撹拌子で撹拌することで、ゼオライトとポリイミド前駆体含有組成物P2とを混合したインクを得た。得られたインクを、実施例2-1と同様の方法によりガラス上にスピンコート法によって塗布し、330℃で30分間、乾燥・焼成を行うことでポリイミド樹脂複合材フィルム2-16を得た。なお、フィルムの膜厚は、5μmであり、得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例2-17:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-17の製造方法)
N-メチルピロリドンに、ゼオライトZ3を加え、アシザワ・ファインテック社製ラボスターミニで、ビーズミルすることによって、ゼオライトZ3の含有量が、4質量%であるゼオライト分散液を得た。
次に、得られたゼオライト分散液約20gを、日立工機製日立微量高速遠心機CF15RNを用いて5000rpmで、30分間遠心分離し、上澄みを取ることで、遠心分離後のゼオライト分散液を得た。遠心分離後のゼオライト分散液中のゼオライト量は、2.5質量%であった。また、動的光散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル社Nanotrac WaveII-EX150)で測定したD50値は、35nmであった。
次に、得られた遠心分離後のゼオライト分散液4.8gと4gのポリイミド前駆体含有組成物P2とを混合し、撹拌子で撹拌することで、ゼオライトとポリイミド前駆体含有組成物P2とを混合したインクを得た。得られたインクを、テスター産業社製アプリケーターによって塗布し、330℃で30分間、乾燥・焼成を行うことでポリイミド樹脂複合材フィルム2-17を得た。なお、フィルムの膜厚は、6μmであり、得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例2-18:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-18の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりに、ゼオライトZ10を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-18を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例2-19:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-19の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりに、ゼオライトZ11を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-19を作製した。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(比較例2-2:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-20の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりに、アドマテックス社製シリカ微粒子(平均一次粒子径100nm)を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-20を作製した。得られたフィルム中のシリカの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(比較例2-3:ポリイミド樹脂複合材フィルム2-21の製造方法)
ゼオライトZ2の代わりに、中村超硬社製ZeoalZ4A-005(平均一次粒子径50nm、アルミノシリケートLTA型)を用いた以外は、実施例2-1と同様の方法によりポリイミド樹脂複合材フィルム2-21を作製した。なお、フィルムの膜厚は、13μmであり、得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
なお、ZeoalZ4A-005は、CBUにd4r、Sod、及びltaを有するが、
d6r又はmtwを有さない、LTA型ゼオライトであり、ZeoalZ4A-005の100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、ZeoalZ4A-005の平均熱膨張係数は-5.1ppm/Kであった。
測定温度範囲を60℃~220℃として実施例2-1~実施例2-19、比較例2-1~比較例2-3により得られたフィルムの平均熱膨張係数αc及びαm×(100-Wz)/100の値を求めた。得られた結果を表2に示す。また、実施例2-1~実施例2-19、比較例2-1~比較例2-3の一部のフィルムについて、上述の方法により、450nmにおけるフィルムの透過率、ヘイズ値、及びYI値を求めた。得られた結果を表2に示す。また、図7に、上述の方法により測定した、実施例2-6のポリイミド樹脂複合材フィルム2-6と比較例2-1のポリイミド樹脂フィルム2の450~750nmにおける透過率スペクトルを示す。また、図8に、実施例2-1~2-3、及び比較例2-1のフィルムの平均熱膨張係数(αc)を縦軸に、ゼオライトの質量分率(Wz)を横軸としたグラフを示す。なお、平均熱膨張係数測定時の変曲点から求めたポリイミド樹脂フィルム2のガラス転移温度(Tg)は、320.5℃であった。
<実験3:ポリイミド含有組成物T1を用いた樹脂複合材フィルムの製造>
(比較例3-1:ポリイミド樹脂フィルム3の製造方法)
ポリイミド樹脂の割合が、20質量%となるようにポリイミド含有組成物T1を、N-メチルピロリドンで希釈したインクを、実施例1と同様に、ガラス上にスピンコート法によって塗布し、330℃で30分間、乾燥・焼成を行うことで、ポリイミド樹脂フィルム3を得た。得られたフィルム3の膜厚は、29μmであった。
(実施例3-1:ポリイミド樹脂複合材フィルム3-1の製造方法)
N-メチルピロリドンに、ゼオライトZ3を加え、アシザワ・ファインテック社製ラボスターミニで、ビーズミルすることによって、ゼオライトZ3の含有量が、5.5質量%であるゼオライト分散液を得た。
次に、得られたゼオライト分散液1.82gと、4.0gのポリイミド含有組成物T1とを混合し、撹拌子で撹拌することで、ゼオライトとポリイミド含有組成物とを混合した
インクを作製した。得られたインクを、比較例3-1と同様にガラス上にスピンコート法によって塗布し、330℃で30分間、乾燥・焼成を行うことで、ポリイミド樹脂複合材フィルム3-1を得た。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例3-2:ゼオライト樹脂複合材フィルム3-2の製造方法)
150℃で一晩乾燥させた、日揮触媒化成社FAU型ゼオライト 製NaY(5)(シリカ/アルミナモル比=5、平均一次粒子径500μm)0.2gを秤量し、N-メチルピロリドン2.0gを混合した後に、IKA社製ホモジナイザ―(T18)を用いて1.0×104rpmで5分間撹拌した。その後、8.0gのポリイミド含有組成物T1を加え、撹拌子で撹拌することで、ゼオライトとポリイミド含有組成物T1とを含有するインクを得た。
得られたインクを、比較例3-1と同様に、ガラス上にスピンコート法によって塗布し、330℃で30分間、乾燥・焼成を行うことで、ポリイミド樹脂複合材フィルム3-2を得た。得られたフィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
なお、NaY(5)の100~250℃における平均熱膨張係数を測定した結果、NaY(5)の平均熱膨張係数は-3.2ppm/Kであった。
実施例2と同様の方法により、実施例3-1、実施例3-2及び比較例3-1により得られたフィルムの60℃~220℃における平均熱膨張係数αc及びαm×(100-Wz)/100の値を求めた。得られた結果を表3に示す。また、実施例3-1、実施例3-2、及び比較例3-1により得られたフィルムの一部のフィルムについて、上述の方法により、ヘイズ値を求めた。得られた結果を表3に示す。なお、平均熱膨張係数測定時の変曲点から求めたポリイミド樹脂フィルム3のガラス転移温度(Tg)は、320.5℃であった。
<実験4:ポリエーテルスルホン含有樹脂複合材フィルムの製造>
(比較例4-1:ポリエーテルスルホンのフィルム4の製造方法)
Good Fellow社製Polyethersulfone,granule,3mm nominal granule size,clear amber, 分子量58,000g/mol, 比重1.37g/cm3(以下、PES)2gに、N-メチルピロリドン10.72gを加え、2時間撹拌して完全に溶解させた後、一晩静置して脱泡した。得られたインクを、実施例1と同様に、ガラス上にスピンコート法によって塗布し、窒素気流下で、205℃で1時間、乾燥・焼成させることで、PES樹脂フィルム4を得
た。得られたPES樹脂フィルム1の膜厚は、9μmであった。
(実施例4-1:PES樹脂複合材フィルム4-1の製造方法)
N-メチルピロリドンに、ゼオライトZ2と、ゼオライトZ2に対し20質量%分のアミン化合物系分散剤である、ビックケミージャパン社製BYK2155を加え、アシザワ・ファインテック社製ラボスターミニで、ビーズミルすることによって、ゼオライトZ2の含有量が、5.0質量%であるゼオライト分散液を得た。
次に、得られたゼオライト分散液2.02gと、PESの顆粒1gと、N-メチル-2-ピロリドン3.77gを2時間撹拌して完全に溶解させた後、一晩静置して脱泡した。得られたインクを、比較例4-1と同様にガラス上にスピンコート法によって塗布し、窒素気流下で、205℃で1時間、乾燥・焼成させることで、PES-ゼオライト樹脂複合材フィルム4-1を得た。得られたフィルムの膜厚は7μmであり、フィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
(実施例4-2:PES樹脂複合材フィルム4-2の製造方法)
N-メチルピロリドンに、ゼオライトZ3を加え、アシザワ・ファインテック社製ラボスターミニで、ビーズミルすることによって、ゼオライトZ3の含有量が、5.5質量%であるゼオライト分散液を得た。
次に、得られたゼオライト分散液1.82gと、PESの顆粒1gと、N-メチルピロリドン3.95を2時間撹拌して完全に溶解させた後、一晩静置して脱泡して混合液を得た。得られたインクを、比較例4-1と同様に、ガラス上にスピンコート法によって塗布し、窒素気流下で、205℃で1時間乾燥させることでPES樹脂複合材フィルム4-2を得た。得られたフィルムの膜厚は7μmであり、フィルム中のゼオライトの含有量は、フィルム質量に対して9.1質量%であった。
測定温度範囲を50℃~150℃として、実施例4-1、実施例4-2及び比較例4-1により得られたフィルムの平均熱膨張係数αc及びαm×(100-Wz)/100の値を求めた。得られた結果を表4に示す。また、実施例4-1、実施例4-2、及び比較例4-1の一部のフィルムについて、上述の方法により、ヘイズ値を求めた。得られた結果を表4に示す。なお、平均熱膨張係数測定時の変曲点から求めたポリエーテルスルホン含有樹脂複合材フィルムのガラス転移温度(Tg)は、220.8℃であった。
表2~4の結果から、熱硬化性樹脂であるポリイミド樹脂、及び熱可塑性樹脂であるPES樹脂に関わらず、構造が、アルミノシリケートCHA型、SAPO-CHA型、アルミノシリケートAEI型、SAPO-AEI型、アルミノシリケートFAU型、アルミノシリケート*BEA型、アルミノシリケートMWW型、及びSAPO-AFX型であるゼオライトをフィラーとして含有する樹脂複合材フィルムの平均熱膨張係数(αc)は、ゼオライトを含有していない樹脂よりも平均熱膨張係数が低くなっており、さらには、平均熱膨張係数(αc)の値が、αm×(100-Wz)/100の値より小さくなっていることが分かる。なかでも、アルミノシリケートCHA型、構造規定剤含有アルミノシリケ
ートAEI型、SAPO-AEI型、プロトンFAU型、プロトン*BEA型、アルミノシリケートMWW型、及びSAPO-AFX型で、より小さくなることが分かる。
一方、アルミノシリケートLTA型は、100~250℃における平均熱膨張係数は、-5.1ppm/Kであったが、αm×(100-Wz)/100の値より大きいことがわかる。
理由としては、CHA型、AEI型、FAU型、MWW型、及びAFX型構造のゼオライトは、ゼオライトの構造単位 Composite Building Unit(CBU)のd6rを含んでいることで、樹脂複合材の平均熱膨張係数がより小さくなったと推測される。また、*BEA型構造のゼオライトは、mtwを含んでいるために平均熱膨張係数がより小さくなったと推測される。一方、LTA型構造のゼオライトは、d6r、又はmtwを含んでいないために平均熱膨張係数が小さくならなかったと推測される。
また、図8に示したように、実施例2-1~2-3、及び比較例2-1におけるフィルムの平均熱膨張係数(αc)とゼオライトの含有量(Wz)とを比較すると、平均熱膨張係数が、ゼオライト含有量の増加に伴って直線的に低下していることが分かる。このことから、ゼオライトを少量加えるだけでも、平均熱膨張係数をαm×(100-Wz)/100の値より小さくできることが分かる。
また、図7、及び表2~4の波長450nmにおける透過率とヘイズ値の結果から、ゼオライトを含有した場合でも、ゼオライトを含有していない場合と比べて、透明性が大きく低下していないことが分かる。また、長期的にも高い透明性が維持できることが想定され、さらにはゼオライトの含有量が小さくても平均熱膨張係数を低下することができるためにフレキシブル性を維持しつつ高い耐熱性を備えた樹脂複合材フィルムを提供できることが分かる。
また、表2のYI値で示すように、CHA型、及びAFX型構造のゼオライトと比べ。LTA型構造のゼオライトを含む樹脂複合材フィルムは、製作時にすでに黄変していた。このことから、d6r又はmtwのいずれか1以上をCBUに含有するゼオライトを含む樹脂複合材フィルムは、長期的にも変化しにくいことが想定される。
以上の実験1~4より、本発明により、長期間の高い透明性及び高いフレキシブル性を維持した耐熱性の高い樹脂複合材を提供することができることが分かる。