JP4821234B2 - ガスバリア性積層体 - Google Patents

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Description

本発明は、食品や医薬品等の包装材料や電子デバイス等のパッケージ材料として主に用いられるガスバリア性積層体に関し、更に詳しくは、湿式の成膜プロセスのみで高いガスバリア性を付与した積層体に関する。
ガスバリア積層体は、主に、(イ)内容物の品質を変化させる原因となる酸素や水蒸気等の影響を防ぐために、食品や医薬品等の包装材料として用いられたり、(ロ)液晶表示パネルやEL表示パネル等に形成されている素子が、酸素や水蒸気等の外部から侵入するガス又はカラーフィルターや色変換フィルター等の素子隣接部分から放出されるガス(例えば製造過程で使用された残存有機材料に由来するガス)等と接触することにより発光性能が劣化するのを避けるために、電子デバイス等のパッケージ材料や基板として用いられている。ガスバリア性積層体は、例えば、プラスチック製のフィルム、シート、プレート及びガラス板のような支持体、又はこれらの支持体上にカラーフィルター層、色変換層のような機能層が形成された積層体等の基材上に形成される。そして近年、電子機器の軽量化、デザインの多様化要求への対処等の要請により、可撓性のプラスチックフィルム又はシートを基材としたガスバリア性積層体の需要が高まっている。
従来より、酸素ガスおよび水蒸気等に対するバリア性を備え、食品や医薬品等の良好な保存適性を有する包装用材料として、種々のものが開発され提案されている。近年それら包装材料として、可撓性のプラスチック基材上にポリ塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体のコーティング層を設けた構成からなる透明バリアフィルムや、可撓性のプラスチック基材上に酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を設けた構成からなる透明バリアフィルム、また、それらを使用した包装用積層材および包装用容器等が提案されている。これらは、従来のアルミニウム箔等を使用した包装用積層材等と比較して透明性に優れ、同時に水蒸気、酸素ガス等に対する高いバリア性と保香性等を有し、包装用材料等にその需要が大いに期待されているものである。
しかしながら、上記の透明バリアフィルムのうち、ポリ塩化ビニリデンやエチレンビニルアルコール共重合体のコーティング層を設けた透明バリアフィルムにおいては、酸素、水蒸気に対するバリア性が十分でなく、特に高温での殺菌処理においてバリア性の著しい低下が生じるという問題がある。さらに、ポリ塩化ビニリデンのコーティング層を設けた透明バリアフィルムは、焼却時に有毒なダイオキシンを発生し、環境への悪影響が懸念されている。
一方、酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着膜を設けた透明バリアフィルムは、環境への影響もほとんどなく、良好なバリア性を示す。例えば、特許文献1には、高分子樹脂基材上に乾式の成膜プロセスに属するプラズマCVD法またはスパッタリング法によって金属酸化物からなるガスバリア層を設け、さらに該ガスバリア層の上に有機材料等からなる撥水層を設けてなるガスバリアフィルムが開示されている。しかしながら、上記特許文献1に記載されたガスバリアフィルムは乾式の成膜プロセスで形成するために、装置の導入や維持、及び、該ガスバリアフィルムの製造プロセスの実施にかかるコストが高額になるという問題がある。
このようなコスト面での要請から、湿式の成膜プロセスであるゾルゲル法によって金属化合物を含む組成物を加水分解後又は加水分解と同時に重縮合することで主に無機酸化物からなるガスバリア層を形成してなるガスバリア性積層体が注目されている。例えば、特許文献2では、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂からなる基材上に、ゾルゲル法によって重縮合して得られる複合ポリマーを有するガスバリア性積層体が提案されている。しかし、ゾルゲル法で形成した無機層は、乾式法で形成したものと比べてガスバリア性が劣るという問題がある。無機層の物性改善のため、3官能金属アルコキシドを用いるなどして有機成分を導入する場合には、無機層のガスバリア性はさらに劣ってしまう。従って、ゾルゲル法による無機層では、所望のガスバリア性を必ずしも満足させることができない。特に、近年の大型液晶表示パネル、及び有機EL表示パネルに要求されるガスバリア性は、食品等の分野と比べ極めて高度であり、現状のゾルゲル膜では十分に対応することができない。
特許文献3には、高分子材料からなる基材上に、密着性改善のための有機層を介して、金属化合物の加水分解縮合を含んでなるプロセスにより形成された無機層を有する水蒸気バリア性プラスチックフィルムが開示されている。この特許文献3に記載された水蒸気バリア性プラスチックフィルムにおいて、前記有機層は無機層の下地層であり、撥水層としての機能は持っていない。
特許文献4には、プラスチックフィルム上にゾルゲル法による金属酸化物ガラスからなるガスバリア層を有する表示装置用基板が開示され、前記ガスバリア層上にさらにハードコート層、保護層又は密着層としてエポキシ樹脂などの有機層を積層することが記載されている。この特許文献4に記載された表示装置用基板において、ガスバリア層上の有機層は、表面撥水性の付与を意図したものではない。
また、前記特許文献3には基材としてノルボルネン樹脂を用いることが記載され、前記特許文献4にはプラスチックフィルムとしてノルボルネン系ポリマーを用いることが記載されているが、これらは、ノルボルネン樹脂の耐熱性に着目して支持体材料としての使用について述べているにすぎない。
特開2003−103688号公報 特開平4−345841号公報 特開2003−213025号公報 特開2003−11262号公報
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、コストの高い乾式の成膜プロセスを用いることなく、さらに、ポリエステルフィルム等の低価格で可撓性の汎用プラスチック基材を用いた場合でもガスバリア性の高い積層構造を形成することを可能とし、かかるプロセス上又はコスト上のメリットの大きい積層構造を設けた高ガスバリア性積層体、特に可撓性の高ガスバリア性積層体を提供することを目的とする。
このような目的を達成するために、本発明のガスバリア性積層体は、基材上に、少なくともゾルゲル層と環状オレフィン樹脂層を夫々1層以上含む複数の層を積層してなり、その積層構造中において少なくとも一つのゾルゲル層の基材から遠い側に該ゾルゲル層に隣接して環状オレフィン樹脂層が積層されており、蒸着膜を含まないことを特徴とする構成とした。
本発明に係るガスバリア性積層体は、乾式の製造プロセスを用いる必要がなく、該積層体に含まれる各層を全て湿式のプロセスのみで製造することも可能であるために低コストで生産できる。
しかも、本発明に係るガスバリア性積層体は、湿式の製造プロセスで製造されるにもかかわらず非常に高いガスバリア性を有している。本発明のように、ゾルゲル層と環状オレフィン樹脂層が隣接した積層構造が形成されると、前記2つの各層が接する界面が生じ、結合の歪んだ空間が形成される。このような空間は、通常の無機膜や有機膜が単一でとりうる結合により形成される空間よりも狭い空間となる。そのため、酸素や水蒸気等のガスの透過を妨げる効果の高い複合バリア膜として作用すると考えられる。
また、ゾルゲル層の基材よりも遠い側に隣接して積層された環状オレフィン樹脂層は、その撥水作用によってゾルゲル層表面へのガス成分の吸着を抑制するので、ガスバリア性を向上させる効果を発揮する。
また、本発明においては、ガスバリア性積層体の各層を湿式プロセスで形成できることから、膜中にピンホール等の欠陥が生じにくくなり、さらに欠陥が生じたとしても次の層を形成する際に穴埋め効果が生じ、欠陥の少ない複合バリア膜を形成できる。
従って、本発明に係るガスバリア性積層体は、非常に優れたガスバリア性能を発揮することができ、しかも低コストで生産することができる。
本発明に係るガスバリア性積層体は、基材上に、少なくともゾルゲル層と環状オレフィン樹脂層を夫々1層以上含む複数の層を積層してなり、その積層構造中において少なくとも一つのゾルゲル層の基材から遠い側に該ゾルゲル層に隣接して環状オレフィン樹脂層が積層されており、蒸着膜を含まないことを特徴とする。すなわち、本発明に係るガスバリア性積層体は、ゾルゲル層の基材から遠い側の面に隣接して環状オレフィン樹脂層を積層した部分を基本構造として有している。ここで、「隣接して積層する」とは、前記ゾルゲル層の上に前記環状オレフィン樹脂層が直接積層されている構造のことを言うが、アンカーコート層のような薄い層を介して積層されていてもよい。
図1は、本発明に係るガスバリア性積層体の一例(101)について積層構造を模式的に示す断面図である。図1においてガスバリア性積層体の一例101は、基材1の片面側に、アンカー層2を介してゾルゲル層3を積層し、さらに該ゾルゲル層3の上に環状オレフィン樹脂層4を積層した構造を有する。
以下、図1を参照しつつ本発明を説明する。
(基材)
本発明のガスバリア性積層体に用いられる基材は、ゾルゲル層、環状オレフィン樹脂層、および、その他のアンカーコート層などの任意の層からなるバリア性積層構造を支持することができる基材であれば、プラスチック製のフィルム、シート、又はプレートやガラス板、及び、これらの上にカラーフィルターや色変換フィルター等を設けたもの、さらにはガスバリア性を必要とする立体物など、いかなるものを用いてもよい。
特に、本発明では、汎用樹脂であるポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などのプラスチックを用いる基材とした場合にも、高度なガスバリア性積層体を提供することができることを特徴としている。
基材がプラスチックの場合、例えば、エチレン、ポリプロピレン、ブテン、塩化ビニル、アクリロニトリル、スチレン等のオレフィン又はその誘導体から選ばれるオレフィン系モノマーの単独重合体又は共重合体等のポリオレフィン(PO)樹脂;環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン樹脂(APO);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン2,6−ナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド系樹脂;各種ポリウレタン樹脂;各種アクリル、メタクリル樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等のポリビニルアルコール系樹脂;ポリイミド(PI)樹脂;ポリエーテルイミド(PEI)樹脂;ポリスルホン(PS)樹脂;ポリエーテルスルホン(PES)樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂;ポリカーボネート(PC)樹脂;ポリビニルブチラート(PVB)樹脂;ポリアリレート(PAR)樹脂;エチレン−四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PFA)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニル(PVF)、パーフルオロエチレン−パーフロロプロピレン−パーフロロビニルエーテル共重合体(EPA)等のフッ素系樹脂、等を用いることができる。上記アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含んでなる樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のオリゴマーを多官能アクリレートモノマーに溶解せしめた樹脂組成物等の光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、及び、これらの混合物等を用いることも可能である。これらの樹脂は2種以上を混合して用いてもよい。
さらに、これらの樹脂の1種又は2種以上をラミネート、コーティング等の手段によって積層したものをプラスチック基材として用いることも可能である。
上記に挙げた樹脂等を用いた本発明の基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明で用いられる基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸のプラスチックフィルムを製造することができる。また、未延伸のフィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの公知の方法により、プラスチックフィルムの流れ(縦軸)方向、またはフィルムの流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸フィルムを製造することができる。この場合の延伸倍率は、樹脂の種類に合わせて適宜選択されるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍の範囲とすることが一般的である。
更に、これらプラスチック支持体上にカラーフィルターや色変換フィルターのような機能層をあらかじめ設けた基材を用いてもよい。
またガラス基材には、ソーダガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラスなどと呼ばれるものがあり、液晶表示装置では無アルカリガラスが好ましく用いられる。
基材には、ゾルゲル層又はその他の層を形成する前に、基材表面に対する塗膜の密着性を向上させるために、何らかの表面処理を行ってもよい。例えば、密着性を向上させるためには、コロナ放電処理、熱処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、酸素を含む雰囲気中で200〜400nm付近の波長の紫外線照射、紫外線オゾン処理、基材表面の洗浄、粗面化処理、薬品処理等の表面改質やアンカーコート層の形成等の表面処理を行うことができる。
上記の洗浄処理としては、アルコール、アセトン、ヘキサンなどの有機溶媒による脱脂洗浄、アルカリや酸による洗浄、研磨剤で表面を研磨する洗浄、超音波洗浄等の手法が挙げられる。
また、上記のアンカーコート層を形成するためのアンカーコート剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート、又はそれらから選ばれる混合樹脂を、2種以上併せて使用することができる。これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。そして、上記のアンカーコート剤を、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、ナイフコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法等の公知の方法により基材上にコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去することによりアンカーコート層を形成することができる。上記のアンカーコート剤の塗布量としては、0.1〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
基材の形状としては、ロール状に巻き上げられた長尺品が便利であり、可撓性のプラスチックフィルムは、そのような長尺品として利用可能である。基材の厚さは、得られるガスバリアフィルムの用途によって異なるので一概には規定できないが、一般的な包装材料やパッケージ材料用の基材として用いる場合には、3〜188μmが好ましい。
(ゾルゲル層)
本発明においてゾルゲル層とは、いわゆる湿式プロセスに属するゾルゲル法により生成させた反応物を用いて形成した固形状塗膜である。一般にゾルゲル層は、無機酸化物構造の、又は、無機酸化物部分と有機ポリマー部分が混在した構造の縮重合物からなるか、又は、そのような縮重合物を多量に含む混合物からなり、緻密で透明性が高い塗膜である。
本発明には、通常のゾルゲル法を広く適用することができ、そのほかにも例えば、上記特許文献3の段落0006に記載された湿式の成膜プロセス(金属酸化物を基材に接触・吸着させる工程、洗浄工程、金属酸化物を加水分解縮合させる工程、乾燥工程からなる一連のプロセス)等の変法も適用可能である。ゾルゲル法の好ましい例として、以下に2つの方法を詳しく説明する。
(第1の方法)
第1のゾルゲル法は、加水分解重縮合性有機金属化合物及び/又はその部分加水分解重縮合物(a)、水溶性高分子(b)、シランカップリング剤(c)、及び必要に応じて、さらにその他の成分をゾルゲル法により反応させる方法である。この方法では一般に、(1)上記各成分(a)、(b)、(c)及びその他の任意成分を含有する組成物を、ゾルゲル法触媒及び/又は鉱酸、水、及び有機溶剤の存在下に部分的に重縮合することにより、各成分が相互に反応して生成した直鎖状の複合ポリマーを含有する塗工液を調整する工程、(2)基材にこの塗工液を塗布する工程、(3)前記基材を90℃以上で熱処理し基材上で前記塗工液をさらに重縮合し、必要に応じ乾燥させる工程によりゾルゲル層(I)を形成する。このゾルゲル層(I)は主な構成元素として珪素、酸素を含む膜であり、この他、成膜原料や硬化条件により構成元素として炭素や窒素を含む膜が形成される。
(a)成分である加水分解重縮合性有機金属化合物は特に限定されないが、好ましくは、金属原子に少なくともアルコキシル基又はアシルオキシ基が1つ結合した化合物(但し、シランカップリング剤(c)を除く)を用いることができる。典型的には、下記式(2)で表される有機金属化合物を例示することができ、
mM(OR)n (2)
(Rは水素原子又は低級アルキル基であり、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。Rは水素原子又は低級アルキル基又は低級アシル基であり、炭素数1〜4のアルキル基又はアシル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることが特に好ましい。Mは金属原子、好ましくはSi、Al、Sr、Ba、Pb、Ti、Zr、La、若しくはNa等から選ばれる金属原子であり、そのなかでもケイ素(Si)又はアルミニウム(Al)が特に好ましい。mは0以上の整数であり、nは1以上の整数であり、m+nは金属原子Mの価数であり、例えば、MがSiの場合にはm+n=4、Alの場合にはm+n=3である。m及び/又はnが2以上の場合には、同一符号で表される複数のR及び/又はRは夫々異なっていてもよい。)
最終的に得られるガスバリア層の耐煮沸性、耐湿性、耐水性を考慮すると、加水分解重縮合性有機金属化合物としては、トリ又はテトラアルコキシシランが好ましく、特にテトラアルコキシシランが好ましい。テトラアルコキシシランとして具体的には、テトラメトキシシランやテトラエトキシシランを例示できる。
水溶性高分子(b)としては、天然、合成、半合成いずれの水溶性高分子でもよく、例えば、ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;デンプン;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、又はアルギン酸ナトリウム等が用いられる。
ゾルゲル反応の原料組成物中に水溶性高分子を添加することによって、ゾルゲル層(I)のガスバリア性が著しく向上する。水溶性高分子の中でも水酸基含有高分子が好ましく、特にポリビニルアルコール(PVA)が好ましい。水溶性高分子の含有量は、上記アルコキシシラン及び/又はその部分加水分解重縮合物(a)、及び、後述するその他の金属アルコキシドを含有する場合には、その合計量100重量部に対して通常50〜200重量部の範囲であり、好ましくは、70〜150重量部である。水溶性高分子が200重量部を上回るとゾルゲル層の脆性が大きくなり、最終的に得られる積層体の耐水性も低下する。一方、水溶性高分子が50重量部を下回ると、ガスバリア性が低下する傾向がある。
第1のゾルゲル法においてシランカップリング剤(c)は、基材及び後述する環状シクロオレフィン樹脂層に対するゾルゲル層の接着性を向上させるために用いられるが、シランカップリング剤(c)を用いなくてもゾルゲル層を形成することが可能である。
シランカップリング剤(c)としては、例えば、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤及びその加水分解物から選択される1種あるいは2種以上を用いることができる。
この他、他の官能基と反応する有機反応性基を有するオルガノアルコキシシラン及びその加水分解物から選択される1種あるいは2種以上を用いることもできる。そのような有機反応性基含有オルガノアルコキシシランとしては、アクリルポリオールの水酸基、ポリエステルポリオールの水酸基、及びイソシアネート化合物のイソシアネート基のうちの少なくとも1つと反応する官能基を持つものが特に好ましく。例えば、イソシアネート基、アミノ基またはエポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが挙げられる。
イソシアネート基を有するオルガノアルコキシシランの具体例としては、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アミノ基を有するオルガノアルコキシシランの具体例としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N‐β‐(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランの具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
これらの有機反応性基含有オルガノアルコキシシランは、その一端に存在する有機官能基がアクリルポリオールまたはポリエステルポリオールとイソシアネート化合物からなる複合物中で相互作用を示し、あるいは、アクリルポリオールの水酸基、ポリエステルポリオールの水酸基、及びイソシアネート化合物のイソシアネート基のうち少なくとも1つと反応する官能基を含むシランカップリング剤を用いて共有結合をもたせることにより、さらに強固なゾルゲル層を形成することができる。また、他端のアルコキシ基等の加水分解によって生成したシラノール基が、金属や、無機酸化物の表面の活性の高い水酸基等と強い相互作用により蒸着薄膜層との高い密着性を発現する。よって、上記したような有機反応性基含有オルガノアルコキシシランは、後述する金属アルコキシドとともに加水分解反応させたものを用いることができる。
また、上記シランカップリング剤において、アルコキシ基の代わりにクロロ基やアセトキシ基を有するものを用いることができる。これらのアルコキシ基、クロロ基、アセトキシ基等が加水分解し、シラノール基を形成するものであれば用いることができる。
ポリエステルポリオールまたはアクリルポリオールとシランカップリング剤の配合比(ポリエステルポリオールまたはアクリルポリオール/シランカップリング剤)は、重量比で1/1から100/1の範囲であることが好ましく、より好ましくは2/1から50/1の範囲である。
シランカップリング剤を溶解又は希釈するための溶媒は特に限定されるものではなく、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が単独および任意に配合されたものを用いることができる。しかし、シランカップリング剤を加水分解するために塩酸や酢酸等の水溶液を用いることがあるため、共溶媒としてイソプロピルアルコール等と極性溶媒である酢酸エチルを任意に混合した溶媒を用いることがより好ましい。
また、シランカップリング剤の配合時に反応を促進させるために反応触媒を添加することができる。添加される触媒としては、反応性および重合安定性の点から塩化錫(SnCl、SnCl)、オキシ塩化錫(SnOHCl、Sn(OH)Cl)、錫アルコキシド等の錫化合物であることが好ましい。これらの触媒は、配合時に直接添加してもよく、またメタノール等の溶媒に溶かして添加しても良い。触媒を1とするときシランカップリング剤のモル比は10ないし10000の範囲が好ましい。この範囲外であると十分な触媒効果が得られない。このモル比は、より好ましくは、100ないし2000の範囲である。
シランカップリング剤の使用量は、上記加水分解重縮合性有機金属化合物及び/又はその部分加水分解重縮合物(a)100重量部に対して1〜20重量部の範囲内であることが好ましい。シランカップリング剤が20重量部を超えるとゾルゲル層の剛性と脆性とが大きくなり、加工性及びガスバリア性が低下する。
第一のゾルゲル法においては、必要に応じて、上記加水分解重縮合性有機金属化合物及び/又はその部分加水分解重縮合物(a)とともに、ジルコニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシドなどの他の金属アルコキシドが1種又は2種以上用いられてもよい。
ジルコニウムアルコキシドとしては、置換基を有していてもよいアルコキシル基を少なくとも1つ有するジルコニウム化合物を用いることができる。好ましいジルコニウム化合物は次式(3):
R’mZr(OR’’)n (3)
(式中、R’及びR’’は低級アルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基であり、0≦m≦3、1≦n≦4、m+n=4である。R’及び/又はR’’が複数存在する場合、同一符号のR’及び/又はR’’は各々同一であっても異なっていても良い。)
で表され、その中でもテトラアルコキシドが特に好ましい。具体的には、Zr(OCH、Zr(OC、Zr(O−iso−C、Zr(OCなどを例示できる。
ジルコニウムアルコキシドを適量用いることによって、得られる積層体の靭性や耐熱性が向上する。その好ましい使用量は、上記加水分解重縮合性有機金属化合物及び/又はその部分加水分解重縮合物(a)100重量部に対して10重量部以下の範囲であり、好ましくは約5重量部である。ジルコニウムアルコキシドが10重量部を上回ると、ゾルゲル層の脆性が大きくなるので、基材、特に可撓性基材から剥離しやすくなる。
チタニウムアルコキシドとしては、置換基を有していてもよいアルコキシル基を少なくとも1つ有するチタニウム化合物を用いることができる。好ましいチタニウム化合物は次式(4):
R’mTi(OR’’)n (4)
(式中、R’及びR’’は低級アルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基であり、0≦m≦3、1≦n≦4、m+n=4である。R’及び/又はR’’が複数存在する場合、同一符号のR’及び/又はR’’は各々同一であっても異なっていても良い。)
で表され、その中でもテトラアルコキシドが特に好ましい。具体的には、Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC、Ti(OCなどが例示される。
チタニウムアルコキシドを適量用いることによって、得られる皮膜の熱伝導率が低くなり、積層体の耐熱性が著しく向上する。その好ましい使用量は、上記加水分解重縮合性有機金属化合物及び/又はその部分加水分解重縮合物(a)100重量部に対して5重量部以下の範囲であり、好ましくは約3重量部である。チタニウムアルコキシドが5重量部を上回ると、ゾルゲル層の脆性が大きくなるので、基材、特に可撓性基材から剥離しやすくなる。
アルミニウムアルコキシドとしては、置換基を有していてもよいアルコキシル基を少なくとも1つ有するアルミニウム化合物を用いることができる。好ましいアルミニウム化合物は次式(5):
R’mAl(OR’’)n (5)
(式中、R’及びR’’は低級アルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基であり、0≦m≦2、1≦n≦3、m+n=3である。R’及び/又はR’’が複数存在する場合、同一符号のR’及び/又はR’’は各々同一であっても異なっていても良い。)
で表され、その中でもトリアルコキシドが特に好ましい。具体的には、Al(OCH、Al(OC、Al(OC、Al(O−iso−Cなどを例示できる。
アルミニウムアルコキシドを適量用いることによって、得られる積層体の靭性や耐熱性が向上する。その好ましい使用量は、上記加水分解重縮合性有機金属化合物及び/又はその部分加水分解重縮合物(a)100重量部に対して10重量部以下の範囲であり、好ましくは約5重量部である。アルミニウムアルコキシドが10重量部を上回ると、ゾルゲル層の脆性が大きくなるので、基材、特に可撓性基材から剥離しやすくなる。
第1のゾルゲル法で用いられるゾルゲル法触媒としては、非水溶性又は水溶性の第一級、第二級又は第三級アミン類、水酸化アンモニウムを用いることができるが、特に水に実質的に不溶でありかつ有機溶媒に可溶な第三級アミンが好適に用いられる。第三級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミンなどがあり、特にN,N−ジメチルベンジルアミンが好適である。第三級アミンを用いる場合の使用量は、加水分解重縮合性有機金属化合物及び/又はその部分加水分解重縮合物(a)、シランカップリング剤(c)及び必要に応じ添加される他の金属アルコキシド、の合計量100重量部当り、通常0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.5重量部である。なお、鉱酸をゾルゲル法触媒として用いることも可能であり、その場合には、アミン触媒を使用しなくてもよい。
第1のゾルゲル法に用いられる鉱酸は、上記ゾルゲル法触媒として用いられるほか、後述のアセタール化触媒としても用いられる。鉱酸は、ゾルゲル法触媒となるアミン触媒が重縮合反応を十分に促進する場合には必ずしも必要でない。
鉱酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などが用いられる。鉱酸の使用量は、加水分解重縮合性有機金属化合物及び/又はその部分加水分解重縮合物(a)、シランカップリング剤(c)及び他の金属アルコキシドに含まれるシリケート部分のアルコキシド分の総モル量に対し、通常0.001〜0.05モル%である。
第1のゾルゲル法においては、上記加水分解重縮合性有機金属化合物及び/又はその部分加水分解重縮合物(a)、及び、必要に応じて添加される他の金属アルコキシドの合計1モル当量に対して、0.8〜2モル、特に1.0〜1.6モルの水を用いることが好ましい。水の量が2モルを上回ると、上記加水分解重縮合性有機金属化合物及び/又はその部分加水分解重縮合物(a)と金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となり、さらに、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い、多孔性の複合ポリマーとなる傾向があらわれる。多孔性の複合ポリマーは、基材、特に可撓性基材のガスバリア性を改善することが困難である。一方、水の量が0.8モルを下回ると、加水分解反応が進行しにくくなる。
第一のゾルゲル法に用いるゾルゲル層用組成物には、上記以外の公知の添加物、例えば硬化触媒、濡れ性改良剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤などの無機系又は有機系の各種添加剤や無機層状化合物等を加えても良い。
有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール性水酸基含有溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類;メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート等のアセテート類;エチルフェノールエーテル、プロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類などが挙げられる。この中では、加水分解反応時の安定性や保存安定性に優れている点で、アルコール性水酸基含有化合物が好適に用いられ、その中でもメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類が特に好適である。これらから1種または2種以上を組み合わせて溶媒として使用できるが、溶媒の選択に際しては、使用する加水分解重縮合性有機金属化合物及び/又はその部分加水分解重縮合物(a)、水溶性高分子(b)、シランカップリング剤(c)、その他の金属アルコキシド、ゾルゲル法触媒、鉱酸、等を考慮して決定するとよい。溶媒の使用量は、通常、組成物中の固型分の合計100重量部当り、30〜100重量部である。ここで固型分とは、組成物の構成成分のうち溶剤を除く全ての成分であり、溶剤でない限り液状成分も固型分に含まれる。
第1のゾルゲル法によれば、本発明のゾルゲル層(I)は、例えば基材としてプラスチックフィルムを用いる場合、以下のようにして形成することができる。先ず、上記加水分解重縮合性有機金属化合物及び/又はその部分加水分解重縮合物(a)、シランカップリング剤(b)、水溶性高分子(c)、ゾルゲル法触媒、鉱酸、水、有機溶媒、及び、必要に応じて金属アルコキシドを混合して塗工液を調製する。この塗工液中では時間経過とともに次第に上記(a)、(b)、(c)及びその他の金属アルコキシドの各成分相互の重縮合反応が進行し、塗工前から徐々に複合ポリマーが形成される。次いで、基材である上記プラスチックフィルム上に、常法によりこの塗工液を塗布し、乾燥する。
ゾルゲル層用組成物を含む溶液の塗布方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の技術を適宜利用することができる。例えば、ロールコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、ノズルコーティング法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法、カーテンコーティング法、フローコーティング法、スクリーン印刷、グラビア印刷、曲面印刷などの各種印刷法など、あるいはこれらを組み合わせた方法を採用できる。なかでも、ダイコーティング法は、ゾルゲル層用組成物を含む溶液を安定に保つことができ好ましい。
塗膜は、塗工後に乾燥させることにより、重縮合がさらに進行し、複合ポリマーの層が形成される。好ましくは上記の操作を繰り返して、複数の複合ポリマー層を積層する。最後に、上記塗工液を塗布したフィルムを90℃以上で、かつ基材の融点以下の温度、好ましくは、150〜200℃の範囲の温度で、30秒〜10分間加熱すると、ゾルゲル層(I)を積層したフィルムが得られる。
ゾルゲル層を積層したフィルムを、必要に応じてアセタール化処理してもよい。具体的にはゾルゲル層を積層したフィルムを、酸を含むアルデヒド溶液に浸漬する。アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドなどが好適に用いられる。このようなアセタール化処理を施すことにより前記ゾルゲル層(I)中に微量存在する水溶性高分子に起因する未反応の水酸基がアルデヒドと反応してアセタール化され、ゾルゲル層の耐水性(耐湿性)が向上する。
第1のゾルゲル法によるゾルゲル層(I)の生成機構は、以下に述べるように、複数の反応が組み合わされた複合的な反応と推測される。先ず、加水分解重縮合性有機金属化合物及びその他の金属アルコキシドは、添加された水によって、加水分解される。次いで加水分解により生じた水酸基からゾルゲル法触媒の働きによって、プロトンが奪われ、加水分解生成物同士が脱水重縮合する。このとき、同時にシランカップリング剤も加水分解されて、該シランカップリング剤のアルコキシ基が水酸基となる。さらに、触媒の働きにより該シランカップリング剤のエポキシ基の開環も起こり水酸基が生じる。そして、加水分解されたシランカップリング剤と加水分解されたアルコキシシラン、及びその他の金属アルコキシドとの重縮合反応も進行する。さらに水溶性高分子が水酸基を有する場合には、該水溶性高分子が有する水酸基との反応も生じる。生成する重縮合物は、Si−O−Si、Si−O−Zr、Si−O−Ti、Si−O−Alなどの結合からなる無機物質部分と、主にシランカップリング剤及び水溶性高分子に起因し、さらに加水分解重縮合性有機金属化合物やその他の金属アルコキシドがアルキル基等の有機基を有する場合にはそれらにも起因する有機物質部分とを含有する複合ポリマーである。
一例として、テトラアルコキシシランと、シランカップリング剤と、PVAを反応させる場合には、先ず、テトラアルコキシシランから誘導される(6)式に示される部分構造を有し、さらにシランカップリング剤に由来する部分構造を有する直鎖状のポリマーが生成する。
Figure 0004821234
(式(6)中、Rは低級アルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基であり、2つのRは各々異なっていてもよい。qは正の整数を表す。)
このポリマーはOR基を直鎖状のポリマー主鎖から分岐した形で有する。このOR基は、鉱酸が触媒となって加水分解されてOH基となる。そして、テトラアルコキシシランとシランカップリング剤から生じたポリマーのOH基と、式(7)で表されるPVAのOH基が、ゾルゲル法触媒(塩基触媒)の働きにより脱プロトン化し、重縮合が進行する。
Figure 0004821234
(式(7)中、rは正の整数を表す。)
その結果、Si−O−Si結合の直鎖状連鎖を2本のPVAの直鎖状連鎖で挟み込んだ構造を有する(8)式に示される複合ポリマーが生じると考えられる。
Figure 0004821234
上記複合ポリマーは結晶性を有し、該複合ポリマーを含有する重縮合物は、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造をとる。このような構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやPVA)と同様であり、さらに、極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高く分子鎖剛性も高いため、良好なガスバリア性を示す。(8)式に示されるポリマーのSi−O−CH結合は、PVAのアセチル化やホルミル化により形成される安定な結合状態と同様に安定である。このようなガスバリア性をもたらす複合ポリマーを生じさせるためには水の添加量が重要であり、上述したようにアルコキシド類1モルに対して水の量を0.8モル〜2モル、特に1.0〜1.6モルに調節することが好ましい。
上記の反応は常温で進行し、ゾルゲル層用塗工液は調製中に粘度が増加する。この塗工液を、例えばフィルム状基材等に塗布し、自然乾燥後、引き続き加熱して水、有機溶媒、及び重縮合反応により生成したアルコールを除去すると、重縮合反応が完結し、前記フィルム状基材上に透明なゾルゲル層(I)が形成される。複合ポリマー層を複数積層した場合には、層間の複合ポリマー同士も縮合し、層と層との間が強固に結合する。さらに、シランカップリング剤の有機反応性基や、該シランカップリング剤の加水分解によって生じた水酸基がフィルム状基材表面の官能基と結合するため、フィルム状基材表面とゾルゲル層(I)との接着性も良好である。
第1のゾルゲル法で得られるゾルゲル層(I)の乾燥後の厚さは、ガスバリア性積層体の用途により異なるため一義的に規定することはできないが、ゾルゲル層(I)の乾燥後の厚さが0.01〜20μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることがさらに好ましく、0.5〜5μmであることが特に好ましい。ゾルゲル層(I)の乾燥後の厚さが0.01μm未満の場合には、ゾルゲル層(I)が均一にならない恐れがあり、また、ガスバリア性、基材との密着性、透明性、可撓性、印刷性、耐湿性、耐屈曲性が充分に発現しない恐れがある。一方、ゾルゲル層(I)の乾燥後の厚さが20μmを超える場合には、ゾルゲル層(I)にクラックが生じる可能性が高まる。
(第2の方法)
第2のゾルゲル法は、活性水素が結合した窒素原子を有する有機化合物(I)、及び、前記活性水素と反応しうる官能基を有する有機化合物(II)をゾルゲル法により反応させる方法である。第2のゾルゲル法では、有機化合物(I)、有機化合物(II)とともに、さらに下記式(1)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解縮合物(III)を反応させることが好ましく、さらに、その他の成分を反応させてもよい。
Figure 0004821234
(式中、R1は水素原子または前記活性水素と反応しない官能基を有していてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R2は水素原子または前記活性水素と反応しない置換基を有していても良い炭素原子数1〜4のアルキル基又はアシル基であり、mは0以上の整数であり、nは1以上の整数であり、m+n=4であり、m及び/又はnが2以上の場合には同一符号で表される複数のR1及び/又はR2は夫々異なっていてもよい)
この方法では一般に、(1)上記有機化合物(I)、有機化合物(II)及び、必要に応じて有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解縮合物(III)及び/又はその他の任意成分を溶剤中で反応させて塗工液を調製する工程、(2)基材にこの塗工液を塗布する工程、(3)基材上の塗膜を硬化及び乾燥させる工程によりゾルゲル層(II)を形成する。
本願において有機化合物(I)の活性水素とは、反応性が強く各種の試薬と反応する水素原子をいい、具体的には、分子中に、−NH−(式中、Nには他に水素原子が結合していない)や−NHとして存在する。
有機化合物(I)の分子量は特に限定されるものではないが、形成されるゾルゲル層の製膜性や可撓性を考慮すると、高分子量であることが好ましい。有機化合物(I)の分子量が小さすぎると基材上に形成されたゾルゲル層の可撓性が劣ったり、ゾルゲル層用組成物を基材上にコーティングする際の成膜性が劣ったりする恐れがある。このため、有機化合物(I)の数平均分子量は250以上であることが好ましく、300以上であることがより好ましい。一方、分子量が大きすぎると、最終的に形成されるガスバリア層の透明性や可撓性が不充分なものとなる恐れがある。このため、有機化合物(I)の数平均分子量は200,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましく、10,000以下であることが特に好ましい。ただし、数平均分子量を正確に決定できないような複雑な構造を持つものや、様々な構造の物質の混合物等も有機化合物(I)として本発明で使用可能である。
有機化合物(I)の具体例としては、エタノールアミンなどの低分子化合物や、ポリアルキレンイミン、ポリアリルアミンなどの高分子化合物が挙げられる。
ポリアルキレンイミンとしては、ポリメチレンイミン、ポリエチレンイミン、ポリプロピレンイミン、ポリイソプロピレンイミン、ポリブチレンイミン、ポリイソブチレンイミン、およびそれらの誘導体などが挙げられる。ポリアルキレンイミンは各種公知の合成方法を用いて調製することができ、また、市販品を用いてもよい。例えば、株式会社日本触媒製のエポミンシリーズ;エポミンSP−003、エポミンSP−006、エポミンSP−012、エポミンSP−018、エポミンSP−103、エポミンSP−110、エポミンSP−200、エポミンSP−300、エポミンSP−1000、エポミンSP−1020(いずれも商品名)等のポリエチレンイミンを用いることができる。
ポリアリルアミンとしては、各種公知の方法で合成したものを用いることができるほか、日東紡績株式会社製のPAA−L、PAA−H(いずれも商品名)などを用いることができる。
上記列挙した有機化合物(I)のなかでは、ゾルゲル層の透明性、耐熱性、可撓性、密着性を考慮すると、ポリアルキレンイミンが好ましく、特にポリエチレンイミンが好ましい。これらから選ばれる有機化合物(I)は1種のみ単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
有機化合物(II)が有する、有機化合物(I)の活性水素と反応しうる官能基としては、特に制限されるものではないが、エポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、オキサゾリニル基、(メタ)アクリル基、アルデヒド基、ケトン基、アルキルハライド基などを例示することができる。活性水素との反応容易性、耐熱水性を考慮すると、エポキシ基であることが好ましい。なお、有機化合物(II)をゾルゲル層用組成物に含ませた場合には、基材にコーティングする際の成膜性を向上させる上で特に効果がある。
活性水素と反応しうる官能基としてエポキシ基を含む化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シラン、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル等のモノ又はジグリシジルエーテル類;グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類;アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、フェニルグリシジルエーテル等の脂肪族および芳香族モノ又はジグリシジルエステル類;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルなどの芳香環またはその水素添加環(核置換誘導体も含む)を有するグリシジルエーテル類;グリシジル基を官能基として有するオリゴマー類(例えば下記式(9)で表されるビスフェノールAジグリシジルエーテルオリゴマー)などが挙げられる。
Figure 0004821234
(式中、pは1以上の整数を示す。)
活性水素と反応しうる官能基を含む化合物の他の具体例としては、γ−イソシアノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のイソシアネート類;酒石酸、アジピン酸等のジカルボン酸類;ポリアクリル酸等のカルボキシル基含有重合体;オキサゾリニル基含有重合体などが挙げられる。
第2のゾルゲル法に用いるゾルゲル層用組成物には、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解縮合物(III)がさらに含まれていてもよい。
Figure 0004821234
(式中、R1は水素原子または前記活性水素と反応しない官能基を有していてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R2は水素原子または前記活性水素と反応しない置換基を有していても良い炭素原子数1〜4のアルキル基又はアシル基であり、mは0以上の整数であり、nは1以上の整数であり、m+n=4であり、m及び/又はnが2以上の場合には同一符号で表される複数のR1及び/又はR2は夫々異なっていてもよい)
式(1)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解縮合物(III)は、ゾルゲル層の耐湿性を向上させ、雰囲気の湿度が大きくなっても十分なガスバリア性を保持することができる。その他にも、ゾルゲル層に耐水性を付与し、基材への密着性、ハードコート性、耐熱性を高める効果がある。また、過酷な保存環境下(例えば、20℃、90%RH程度の高湿状態下)に晒された場合であっても、優れたガスバリア性を維持しうる。なお、この有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解縮合物(III)は、有機化合物(I)が有する活性水素と反応し得る官能基を有さない点で、有機化合物(II)とは明確に異なるものである。
式(1)において、R及び/又はRが有機化合物(I)の活性水素と反応しない官能基を有している場合には、置換基を除く部分の炭素数が1〜4である。有機化合物(I)に含まれる活性水素と反応しない官能基としては、特に限定されるものではないが、ビニル基が挙げられる。ビニル基を有する場合、耐熱性、耐煮沸性が向上する効果がある。炭素数1〜4のアルキル基及びアシル基に含まれる炭素数1〜4のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基といった直鎖アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基といった分岐アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基といった環状(脂環式)アルキル基のいずれであってもよい。この中では、緻密なゾルゲル層を形成する上での反応容易性の観点から、メチル基又はエチル基が好ましい。
式(1)において、mとnの合計(m+n)はSiの価数、すなわち4である。形成されるガスバリア層の耐熱性、耐煮沸性、耐水性を考慮すると、一分子中のRが3つ以上(n≧3)、特に4つ(n=4)であることが好ましい。
有機ケイ素化合物(III−1)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジブトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン類およびこれらの錯体化合物、メチルトリアセトキシシラン、トリメチルシラノール、並びにこれらの化合物を含む高分子有機ケイ素化合物類等が挙げられる。この中では、Rが3つ以上であるトリ又はテトラアルコキシシランが好ましく、テトラアルコキシシランがより好ましく、特にテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。有機ケイ素化合物(III−1)は、1種のみ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
第2のゾルゲル法では、有機ケイ素化合物(III−1)の代わりに、又は有機ケイ素化合物(III−1)に加えて、有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(III−2)を含んでもよい。ゾルゲル層を形成する際における有機化合物(II)及び有機ケイ素化合物(III−1)の不本意な乾燥を防止するためには、有機ケイ素化合物(III−1)を予め加水分解縮合させておくことが効果的であるからである。第2のゾルゲル法での加水分解縮合反応は、空気中に存在する水分によっても進行するが、酸又は塩基等の公知の触媒を用いて反応効率を向上させてもよい。作業性を考慮すると、加水分解反応は溶媒中で行うことが好ましい。
第2のゾルゲル法に用いるゾルゲル層用組成物には、第1のゾルゲル法に用いる組成物と同様に、硬化触媒、濡れ性改良剤、可塑剤、消泡剤、増粘剤などの無機系又は有機系の各種添加剤を、必要に応じて添加してもよい。
溶媒は、有機化合物(I)、有機化合物(II)、有機ケイ素化合物および/または有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(III)やその他の任意成分を溶解しうるものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、前記第1のゾルゲル法で使用する溶媒と同様のもの、及び水が使用できる。それらのうち、加水分解反応時の安定性や保存安定性に優れている点でアルコール性水酸基含有溶媒が好ましく、特に、メタノール、エタノールなどのアルコール類が好ましい。これらから1種または2種以上を組み合わせて溶媒として使用できる。また、溶媒は作業性の向上を図るため、ゾルゲル層用組成物を調製した後、そのまま成形体にコーティングできる化合物を選択することが好ましい。
ゾルゲル層用組成物を得る際の配合量は、使用する成分の種類や添加剤の有無などに応じて決定されるが、有機化合物(I)および有機化合物(II)の配合比率を、100:5〜100:50程度とすることが一般的である。有機化合物(I)の配合量が少なすぎる場合には、ガスバリア層の可撓性、耐衝撃性が劣る恐れがある。一方、有機化合物(II)の配合量が少なすぎる場合には、ガスバリア層の耐水性、耐湿性、成形体への密着性が劣る恐れがある。有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解縮合物(III)の配合量は、有機化合物(I)および有機化合物(II)の配合量を100質量部としたときに、通常は10〜100質量部程度である。配合量が10質量部未満である場合には有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解縮合物(III)を加える効果が充分に得られない恐れがあり、一方、100質量部を超える場合には、ガスバリア層の可撓性が劣る恐れがある。なお、「有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解縮合物(III)の配合量」とは、両者の合計の配合量を意味するものであり、いずれか一方のみがゾルゲル層用組成物中に含まれる場合には、一方の配合量を意味するものである。
溶媒の配合量は、特に限定されないが、ゾルゲル層用組成物を含む溶液の全量に対して、通常20〜97質量%、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは70〜95質量%、特に好ましくは75〜90質量%の範囲である。溶媒の配合量が20質量%未満の場合には、ゾルゲル層用組成物を含む溶液の反応安定性が劣る恐れがあり、また塗工中に、ゾルゲル層用組成物を含む溶液の粘度が上昇して均一塗工ができなくなる可能性がある。一方、97質量%を超える場合には、ゾルゲル層用組成物を含む溶液を調製する際の生産性が劣ることがあるほか、有効成分が低濃度となり過ぎるため、必要なゾルゲル層の厚さを確保できない場合がある。
上述の有機化合物(I)、有機化合物(II)、及び、好ましくは式(1)の有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解縮合物(III)を混合することによって、ゾルゲル層用組成物を得ることができる。ゾルゲル層用組成物の調製方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、以下の方法を用いることができるが、これらに何ら制限されるべきものではない。
(1) 有機化合物(I)、有機化合物(II)、及び、必要に応じて有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解縮合物(III)、さらにその他の任意成分を溶媒中に配合し、これらを反応させる方法。
(2) 溶媒中で、有機化合物(I)と有機化合物(II)とを反応させ、次に有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解縮合物(III)を加える方法。
なお、乾燥の際に有機ケイ素化合物(III−1)の蒸発を防ぐ観点からは、有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(III−2)を配合したガスバリア層用組成物を用いることがより好ましい。この加水分解縮合反応は公知の触媒を用いることができ、溶媒中で反応させることが有利である。
有機化合物(I)、有機化合物(II)および有機ケイ素化合物及び/又はその加水分解縮合物(III)を含む組成物を反応させる際の条件は、使用する化合物および配合量によって決定され、組成物中に有機化合物(I)の未反応物が実質的に残存しない条件とすることが好ましい。未反応の有機化合物(I)が残存していると、得られるガスバリア層の安定性が低下する恐れがあるからである。例えば、30〜80℃程度で、0.5〜5時間程度反応させればよい。
得られたゾルゲル層用組成物は、第1のゾルゲル法と同様の塗布方法で、基材上に塗布することができる。なお、基材上にゾルゲル層用組成物を含む溶液を塗布するに際しては、基材上の同一部位に同一組成のゾルゲル層用組成物を含む溶液を数回に分けて繰り返し塗布するか、又は、異なる組成のものを複数回塗布して、多層構造のゾルゲル層(II)を形成してもよい。
基材上に形成したゾルゲル層用組成物の塗膜を硬化及び乾燥させる工程においては、加熱又は必要に応じて加湿を加えることによって、ハードコート性に優れた緻密なゾルゲル層を速やかに形成することができる。ただし、加熱を行う場合には、基材及び積層体を形成するその他の材料の耐熱温度以下で加熱することが好ましい。ここで、基材及び積層体を形成するその他の材料の耐熱温度とは、実質上基材及び積層体を形成するその他の材料の特性が保持できる上限の温度のことを意味する。基材としてプラスチックを使用する場合には、基材の耐熱温度とはガラス転移点、結晶化温度又は分解点を意味する。
高温多湿の環境下においても長期間に渡ってガスバリア性を持続させ、着色や気泡発生等の欠陥発生を防止するためには、ゾルゲル層用組成物の塗膜を硬化・乾燥した後に熟成(エージング)させることが好ましい。熟成は、加熱処理やコロナ処理によって行うことが好ましい。
基材にゾルゲル層用組成物を含む溶液を塗布して得られるゾルゲル層(II)の乾燥後の厚さは、前記第1のゾルゲル法より得られるゾルゲル層と同様に0.01〜20μmであることが好ましく、0.1〜10μmであることがさらに好ましく、0.5〜5μmであることが特に好ましい。
(環状オレフィン樹脂層)
本発明で用いられる環状オレフィン樹脂とは、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロノネン、シクロデセンなどの単環状オレフィンモノマー及びその誘導体、ビシクロペンテン、ビシクロヘキセン、ノルボルネン等のビシクロヘプテン、ビシクロオクテン、ビシクロノネン、ビシクロデセン、トリシクロノネン、トリシクロデセン、トリシクロドデセン、テトラシクロドデセンなどの縮合多環系オレフィンモノマー及びその誘導体のうち少なくともひとつをモノマー単位として有する重合体である。
なお、例えば、3−(3−シクロヘキセニル)シクロヘキセン、3−(3−シクロペンテニル)シクロペンテン、4−(4−シクロペンテニル)シクロペンテン等の2個以上の単環構造が単結合や2価の化学構造を介して連結した多官能オレフィンモノマーも、重合反応時に単環状オレフィンモノマー又は一組の縮合多環オレフィンモノマーとして機能している限り、本発明における環状オレフィンモノマーとして用いることができる。
環状オレフィン樹脂は、上記環状オレフィンモノマーの単独重合体、2種以上の上記環状オレフィンモノマーの共重合体、または1種または2種以上の環状オレフィンモノマーとその他のオレフィンとの共重合体のいずれであってもよい。好ましくは、1種又は2種以上の環状オレフィンモノマー、及び必要に応じてα−オレフィンをメタセシス重合により単独重合または共重合させ、その後、水素添加反応などにより残った2重結合を還元して飽和させて得られる重合体である。特にノルボルネンおよびその誘導体をモノマーとして用いて合成された、いわゆるノルボルネン樹脂が好適であり、さらに、ノルボルネンおよびその誘導体をメタセシス重合により単独重合または共重合させ、その後、水素添加反応などにより残った2重結合を還元して飽和させて得られる重合体が適している。このような環状オレフィン樹脂は、いくつか市販されており、例えばアートン(商品名、JSR株式会社製)、ゼオネックス(商品名、日本ゼオン株式会社製)などが利用できる。
さらに、本発明で用いる環状オレフィン樹脂としては、撥水性を有する材料、好ましくは23℃での水の接触角が60度以上、さらに好ましくは80度以上であることが好ましい。本発明では、このような撥水性材料をガスバリア性積層体に適用して、水蒸気など、概して水素結合性のガス成分が前記ガスバリア性積層体表面に吸着することを防ぎ、ガスバリア性に優れた積層体を提供することを可能にする。
本発明において接触角とは、図2に示すように、液体―気体界面が固体表面と接する点においてなす角度、すなわち固体表面上に置かれた液滴がとる安定な状態における角度(θ)のことである。この接触角θの物理的意味を説明する。図2の安定状態において、固体−液体、固体−気体、気体−液体の3つの界面が交わる点(接触点0)における界面張力の力学的釣り合いを考えると、接触点0に3つの界面張力α12、α13、α23が作用している。接触点0が左右に動かないためには、3つの界面張力の合力の作用方向成分がゼロでなければならない。
従って、
α13=α12+α23cosθ (式A)
すなわち、
cosθ = (α13−α12)/α23 (式B)
が得られる。
式Bはヤングの式あるいはヤング−デュプレの式と呼ばれており、接触角θと固体−液体界面張力α12、固体−気体界面張力α13、気体−液体界面張力α23の関係を表している。
式Bは−1<(α13−α12)/α23<1のときにのみ適用でき、1≦(α13−α12)/α23のときはθ=0°となり、液体は固体表面上に無限に広がって固体表面を完全に濡らす状態である。一方、(α13−α12)/α23≦−1のときは、θ=180°となり、液体は完全にはじかれた状態となる。
本発明において、環状オレフィン樹脂に対する水の接触角の測定方法は、協和界面科学社の接触角計(型番CA-Z)を用いて求めた値である。すなわち、被測定対象物の表面上に、純水を一滴(一定量)滴下させ、一定時間経過後、顕微鏡やCCDカメラを用い、水滴形状を観察し、物理的に接触角を求めた。この方法により測定された水との接触角を本発明における水との接触角とする。
環状オレフィン樹脂層は、主成分である環状オレフィン樹脂の主骨格が炭素から構成されるため、前述の撥水性のほか、塗工性、環境安全性に優れており、本発明のガスバリア性積層体形成材料として好適である。
環状オレフィン樹脂層は、1種又は2種以上の環状オレフィン樹脂に加えて他の樹脂、添加剤等の他の成分を含有していてもよいが、環状オレフィン樹脂層の撥水性を充分確保するために、環状オレフィン樹脂層用組成物の溶剤を除く全量中に、環状オレフィン樹脂を20質量%以上含有していることが好ましい。
環状オレフィン樹脂層は、環状オレフィン樹脂を溶媒に溶解させて溶液とし、該塗工用溶液をゾルゲル層上に塗布し、その後加熱して溶媒を蒸発させる、いわゆる溶液溶解法によるか、環状オレフィン樹脂を加熱して溶融させて基材上に塗布し、その後徐冷する、いわゆる熱溶融法により形成することができる。
溶液溶解法により塗布する場合、使用する溶媒は環状オレフィン樹脂を溶解することができ、沸点が80〜200℃、さらに好ましくは90〜180℃、特に100〜150℃のものを用いることが好ましい。特に25℃において固形分濃度10重量%であっても樹脂を均一に溶解できる溶媒が好ましい。沸点が低いものは乾燥しやすく使用しやすいが、低すぎる場合には環状オレフィン樹脂の塗膜が乾燥中において表面からの溶媒の揮発が速すぎるため、数分の1mmから数mm程度の幅で高さ数〜数百μmの波状の乾燥ムラができ、表面が粗くなるという問題がある。沸点が高いものは表面が滑らかになるが、高すぎる場合には乾燥効率が悪い。樹脂を溶解しにくい溶媒では、固形分濃度が高い溶液が得られないため、必要な乾燥後厚さに達するための塗工量が多量になるだけでなく、溶媒の蒸発・乾燥過程で塗膜が濁りやすいという問題がある。
環状オレフィン樹脂を溶解する溶媒としては、芳香族炭化水素系溶剤やハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤等を用いることができ、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、トリメチルベンゼン、ジエチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、クロロベンゼン、シクロヘキサン、クロロホルム等が挙げられ、その中でもキシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンが好ましい。
溶媒は、単一溶媒でも、混合溶媒でもよい。また、これらの溶媒以外でも、上記芳香族炭化水素系溶剤やハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤と混合して使用することができ、25℃において、固形分濃度で10重量%以上の樹脂を均一に溶解できるものであれば、ベンゼンやシクロヘキサンの他にテトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、n−ヘキサン、n―オクタン等の直鎖の炭化水素等を含んでいてもよい。
また熱溶融法により環状オレフィン樹脂層用塗工材料をゾルゲル層の上に塗布する場合は、環状オレフィン樹脂のみ又はこれを主成分とする組成物を280℃以上に加熱して溶融させ、加熱したダイヘッド等を用いて、ゾルゲル層上へ塗工する。この際、自然又は強制冷却することで樹脂を硬化させる。
環状オレフィン樹脂層形成用溶液又は熱溶融液を塗布するに先立ち、被塗布面であるゾルゲル層の表面に、コロナ放電処理、熱処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、酸素を含む雰囲気中で200〜400nm付近の波長の紫外線照射、紫外線オゾン処理、基材表面の洗浄、粗面化処理、薬品処理等の表面改質やアンカーコート層の形成等の表面処理を行ってもよい。ゾルゲル層の表面処理は、基材上に表面処理を行う場合と同様に行うことができる。
環状オレフィン樹脂層形成用溶液又は熱溶融液の塗布方法としては、通常用いられる、ディップコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法等、塗布面上に均一に塗布可能な方法であれば任意の方法を用いることができる。
(ガスバリア性積層体の積層構造の変形例)
以上に述べたような方法によって、基材の少なくとも一面側に、少なくとも一つのゾルゲル層と、該ゾルゲル層の基材から遠い側に隣接して環状オレフィン樹脂層が積層された基本的積層構造を有する、本発明に係るガスバリア性積層体が得られる。
本発明に係るガスバリア性積層体は、上記の基本的積層構造を有する限り、実施形態を変形することができる。例えば、前記ゾルゲル層とそれに隣接した前記環状オレフィン樹脂層を交互に2組以上積層してもよく、また、基材の両面にゾルゲル層と環状オレフィン樹脂層からなる積層構造を設けてもよい。
さらに、本発明のガスバリア性積層体は、該ゾルゲル層と前記環状オレフィン樹脂層以外にも、任意の層を有していても良い。例えば、前記アンカーコート層や、ハードコート層、保護層、透明導電層、カラーフィルターの着色層等を、前記ゾルゲル層と前記環状オレフィン樹脂層間以外の任意の位置に設けてもよい。
(本発明に係るガスバリア性積層体により得られる効果)
このようにして形成される本発明に係るガスバリア性積層体は、乾式の製造プロセスを用いる必要がなく、該積層体に含まれる各層を全て湿式のプロセスのみで製造することも可能であるために低コストで生産できる。
しかも、本発明に係るガスバリア性積層体は、湿式の製造プロセスで製造されるにもかかわらず非常に高いガスバリア性を有している。本発明のように、ゾルゲル層と環状オレフィン樹脂層が隣接した積層構造が形成されると、前記2つの各層が接する界面が生じ、結合の歪んだ空間が形成される。このような空間は、通常の無機膜や有機膜が単一でとりうる結合により形成される空間よりも狭い空間となる。そのため、酸素や水蒸気等のガスの透過を妨げる効果の高い複合バリア膜として作用すると考えられる。
また、ゾルゲル層の基材よりも遠い側に隣接して積層された環状オレフィン樹脂層は、その撥水作用によってゾルゲル層表面へのガス成分の吸着を抑制するので、ガスバリア性を向上させる効果を発揮する。特に、23℃での水の接触角が60度以上である環状オレフィン樹脂層を用いる場合には、その撥水作用によるガスバリア性向上の効果が非常に大きい。
また、本発明においては、ガスバリア性積層体の各層を湿式プロセスで形成できることから、膜中にピンホール等の欠陥が生じにくくなり、さらに欠陥が生じたとしても次の層を形成する際に穴埋め効果が生じ、欠陥の少ない複合バリア膜を形成できる。
従って、本発明に係るガスバリア性積層体は、非常に優れたガスバリア性能を発揮することができ、しかも低コストで生産することができる。
特に、本発明では、汎用樹脂であるポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などのプラスチックを主体とする基材を用いる場合にも、高度なガスバリア性積層体を提供することができるという利点もある。プラスチック基材を用いることにより、軽量で形状加工の自由度が大きいガスバリア性積層体が得られ、可撓性の高ガスバリア性積層体も得られる。
また、本発明では、可撓性が大きいプラスチックフィルムの長尺状基材を用いることも可能である。長尺状基材をロール上に巻き取った形態で生産ラインに供給し、使用する場合には、高ガスバリア性積層体を効率良く連続生産することができ、製造コストを下げる効果がさらに高い。
以下に実施例を示して発明をさらに詳細に説明する。
(ゾルゲル層用組成物Aの調製)
ゾルゲル層用組成物Aの全原料組成を表1に示す。
Figure 0004821234
まず、第1液として、テトラエトキシシラン(加水分解重縮合性有機金属化合物(a))10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し、加水分解させ、SiO換算で固形分が3重量%の加水分解溶液を調製した。
次に、第2液として、水‐イソプロピルアルコール溶液(水:イソプロピルアルコール=90:10(重量比))97重量%と、ポリビニルアルコール(水溶性高分子(b))3重量%との混合液を得た。
上記第1液と第2液を60対40の重量混合比で混合し、ゾルゲル層用組成物Aを得た。
(ゾルゲル層用組成物Bの調製)
ゾルゲル層用組成物Bの全原料組成を表2に示す。
Figure 0004821234
有機化合物(I)としてポリエチレンイミン(18.4g:株式会社日本触媒製エポミンSP-018)、有機化合物(II)としてγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(16.7g)、および溶媒としてメタノール(517.4g)を含む混合液を、60℃で3時間反応させ、室温まで冷却した。
次に、この反応液に水(8.8g)とメタノール(55.5g)との混合液を加えて30分間反応させ、さらに有機ケイ素化合物の加水分解縮合物(III)としてテトラメトキシシランの加水分解縮合物(137.0g:多摩化学工業株式会社製、Mシリケート51)とメタノール(246.3g)との混合液を加えた。これを室温で1時間反応させて、ゾルゲル層用組成物Bを得た。
(環状オレフィン樹脂層用組成物の調製)
環状オレフィン樹脂(日本ゼオン製、ゼオネックス 480R)をシクロヘキサン溶媒に3重量%の濃度で溶解させて、環状オレフィン樹脂層用組成物を得た。
(実施例1)
基材として厚さ12μmのポリエステルフィルム(PETフィルム)(ユニチカ製)を用意し、表面処理が施されていない未処理面側にゾルゲル層用組成物Aを、乾燥後の厚さが10μmになるようにバーコート法を用いて塗布し、硬化温度を120℃で1分間乾燥後、さらに熟成し、ゾルゲル層Aを形成した。次に環状オレフィン樹脂層用組成物を、乾燥後の厚さが10μmとなるようにバーコート法により塗布した後、80℃、30分間乾燥させ環状オレフィン樹脂層を形成し、実施例1のガスバリアフィルムを作製した。
(実施例2)
実施例1において環状オレフィン樹脂層を溶液溶解法により形成し、乾燥後の厚さを10μmとした代わりに、環状オレフィン樹脂層を熱溶融法により形成し、乾燥後の厚さを20μmとした以外は実施例1と同様にガスバリアフィルムを作製した。具体的には、実施例1と同様にしてゾルゲル層を形成した後、280℃で溶融させた環状オレフィン樹脂を、冷却後の厚さが20μmとなるようにバーコート法により塗布し、室温で放置することで実施例2のガスバリアフィルムを作製した。
(実施例3)
実施例1において、ゾルゲル層Aの上に環状オレフィン樹脂層を形成した後、該環状オレフィン樹脂層の上に、最初のゾルゲル層Aと同じ方法で、さらに第2のゾルゲル層Aを形成した。ただし、第2のゾルゲル層Aの厚さは3μmとした。このようにして実施例3のガスバリアフィルムを作製した。
(実施例4)
実施例3において、第2のゾルゲル層Aの上に、実施例1の環状オレフィン樹脂層と同じ方法で第2の環状オレフィン樹脂層を形成した。ただし、第2の環状オレフィン樹脂層の厚さは10μmとした。このようにして、ゾルゲル層Aと環状オレフィン樹脂層を交互に二組積層した実施例4のガスバリアフィルムを作製した。
(実施例5)
基材として、実施例1と同じ、厚さ12μmのポリエステルフィルム(PETフィルム)(ユニチカ製)を用意した。このPETフィルムの未処理面側に、ゾルゲル層用組成物Bを乾燥後の厚さが10μmになるようにバーコート法を用いて塗布し、120℃で1分乾燥後、さらに60℃で24時間熟成しゾルゲル層Bを形成した。
次に環状オレフィン樹脂層用組成物を、乾燥後の厚さが10μmとなるようにバーコート法により塗布した後、80℃、30分間乾燥させ環状オレフィン樹脂層を形成し、実施例5のガスバリアフィルムを作製した。
(比較例1)
ゾルゲル層Aを形成しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例1のガスバリアフィルムを作製した。
(比較例2)
環状オレフィン樹脂層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして比較例2のガスバリアフィルムを作製した。
(比較例3)
ゾルゲル層を形成しなかった以外は、実施例2と同様にして比較例3のガスバリアフィルムを作製した。
(比較例4)
環状ポリオレフィン樹脂層を形成する代わりに、エポキシ樹脂層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、比較例4のガスバリアフィルムとした。エポキシ樹脂層は、下記エポキシ樹脂組成物を用意して、乾燥後の膜厚が10μmとなるようにバーコート法により塗布した後、100℃で1時間乾燥させて形成した。
<エポキシ樹脂組成物>
まず、二官能エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:172)と、ハロゲン化二官能フェノール類としてテトラブロモビスフェノールA(水酸基当量:272)とを、エポキシ基/フェノール性水酸基=1.00/1.00となるように配合した。これに、触媒として二官能エポキシ樹脂1モルに対して水素化リチウムを0.05モル、イミダゾールを0.05モル添加した。そして、溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミドを用い、溶液の固形分濃度が20重量%となるように配合を調整した。これを加熱(120℃、10時間)して重合させて、高分子量エポキシ重合体を合成した。次いで、上記の高分子量エポキシ重合体をメチルエチルケトンで希釈して、硬化性エポキシ樹脂組成物とした。
(比較例5)
基材としてノルボルネン樹脂基材(JSR製、アートンフィルム、厚み100μm)を用いた。この基材に、比較例4で用いたエポキシ樹脂を乾燥後厚み10μmとなるようバーコート法により塗布し、100℃で1時間乾燥させ、エポキシ樹脂層を形成した。さらにその上に、ゾルゲル層用組成物Aを、乾燥後の厚さが10μmとなるようバーコート法を用いて塗布した。続いて、硬化温度120℃で1時間乾燥、さらに熟成し、ゾルゲル層Aを形成して、比較例5のガスバリアフィルムとした。
(参考例1)
実施例1において、環状オレフィン樹脂層の上に、さらに、最初の環状オレフィン樹脂層と同じ方法で第2の環状オレフィン樹脂層を形成した。ただし、第2の環状オレフィン樹脂層の厚さは10μmとした。このようにして参考例1のガスバリアフィルムを作製した。
(参考例2)
実施例3において、第2のゾルゲル層Aの上に、最初のゾルゲル層Aと同じ方法で、さらに第3のゾルゲル層Aを形成した。ただし、第3のゾルゲル層Aの厚さは10μmとした。このようにして参考例2のガスバリアフィルムを作製した。
(ガスバリア性積層体のガスバリア性評価)
作製したガスバリアフィルムのガスバリア性を以下の方法で評価した。測定結果を表3に示す。
(1)酸素ガス透過率測定
酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製、OXTRAN2/20)を用い、23℃、90%RHの条件で測定した。
(2)水蒸気透過率測定
水蒸気透過率測定装置(MOCON社製、PERMATRAN−W 3/31)を用い、40℃、90%RHの条件で測定した。
Figure 0004821234
表3に示した結果から、本実施例において作製したガスバリアフィルムは、酸素透過率、水蒸気透過率ともに良好であった。特に、ゾルゲル層/環状オレフィン樹脂層の積層構造を二組重ねた実施例4のガスバリアフィルムは、非常に低い酸素透過率及び水蒸気透過率を示した。
本発明に係るガスバリア性積層体の一例の積層構造を模式的に示す横断面図である。 液体の接触角に関する説明図である。
符号の説明
101…ガスバリア性積層体
1…基材
2…アンカーコート層
3…ゾルゲル層
4…環状オレフィン樹脂層

Claims (6)

  1. 基材上に、少なくともゾルゲル層と環状オレフィン樹脂層を夫々1層以上含む複数の層を積層してなり、その積層構造中において少なくとも一つのゾルゲル層の基材から遠い側に該ゾルゲル層に隣接して環状オレフィン樹脂層が積層されており、蒸着膜を含まず、
    前記ゾルゲル層が、ゾルゲル法により少なくとも下記成分を反応させた重縮合反応生成物により形成されていることを特徴とする、ガスバリア性積層体。
    (a)下記式(2’)で表される加水分解重縮合性有機金属化合物及び/又はその部分加水分解重縮合物
    Figure 0004821234
    (式中、R は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R は水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基又はアシル基であり、mは0以上の整数であり、nは1以上の整数であり、m+n=4であり、m及び/又はnが2以上の場合には同一符号で表される複数のR 及び/又はR は夫々異なっていてもよい)
    及び
    (b)水溶性高分子
  2. 前記ゾルゲル層が、さらに、(c)シランカップリング剤を反応させた重縮合反応生成物により形成されていることを特徴とする、請求項に記載のガスバリア性積層体。
  3. 前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のガスバリア性積層体。
  4. 基材上に、少なくともゾルゲル層と環状オレフィン樹脂層を夫々1層以上含む複数の層を積層してなり、その積層構造中において少なくとも一つのゾルゲル層の基材から遠い側に該ゾルゲル層に隣接して環状オレフィン樹脂層が積層されており、蒸着膜を含まず、
    前記ゾルゲル層が、ゾルゲル法により少なくとも下記成分を反応させた反応生成物により形成されていることを特徴とする、ガスバリア性積層体。
    (I)活性水素が結合した窒素原子を有する有機化合物、
    (II)前記活性水素と反応しうる官能基を有する有機化合物、及び、
    (III)下記式(1)で表される有機ケイ素化合物および/またはその加水分解縮合物
    Figure 0004821234
    (式中、Rは水素原子または前記活性水素と反応しない官能基を有していてもよい炭素原子数1〜4のアルキル基であり、Rは水素原子または前記活性水素と反応しない置換基を有していても良い炭素原子数1〜4のアルキル基又はアシル基であり、mは0以上の整数であり、nは1以上の整数であり、m+n=4であり、m及び/又はnが2以上の場合には同一符号で表される複数のR及び/又はRは夫々異なっていてもよい)。
  5. 前記環状オレフィン樹脂層の23℃での水の接触角が60度以上であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
  6. 前記環状オレフィン樹脂層が、溶液溶解法または熱溶融法により形成されることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
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